(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714629
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ダム排砂門開閉制御装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20150416BHJP
E02B 8/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
E02B7/20 105
E02B7/20 106
E02B7/20 107
E02B8/00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-42600(P2013-42600)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-169590(P2014-169590A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2013年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【弁理士】
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】川口 敬司
(72)【発明者】
【氏名】守屋 満弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 道徳
(72)【発明者】
【氏名】矢野 貴裕
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−040354(JP,A)
【文献】
特開2008−095420(JP,A)
【文献】
特開平09−217334(JP,A)
【文献】
特開2003−343413(JP,A)
【文献】
特開2010−275825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20〜9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車発電機のトリップ時にダムに設けられたダム排砂門を開いて下流河川への責任放流量を確保するためのダム排砂門開閉制御装置であって、
前記責任放水量を示すALR設定値が格納されたALR設定値メモリと、
前記水車発電機からトリップ信号が入力されると、前記ALR設定値メモリから読み出した前記ALR設定値と前記ダムに設けられたダム水位計から入力されるダム水位とに基づいて所定の制御曲線を用いて排砂門開度を演算して、該演算した排砂門開度に基づいて前記ダム排砂門の開閉制御を行うための前記ダム排砂門開閉制御手段とを具備し、
前記所定の制御曲線が、前記ALR設定値によって示される前記責任放水量から前記ダム水位をパラメータとして前記排砂門開度を演算するためのものである、
ことを特徴とする、ダム排砂門開閉制御装置。
【請求項2】
逆調整池式水力発電所に設置された水車発電機(3)のトリップ時にダム排砂門(6)を開いて下流河川(7)への責任放流量を確保するためのダム排砂門開閉制御装置(10)であって、
前記責任放水量を示すALR設定値が格納されたALR設定値メモリ(14)と、
前記水車発電機からトリップ信号(STR)が入力されると、前記ALR設定値メモリから読み出した前記ALR設定値と前記調整池式水力発電所の逆調整池(1)に設けられたダム水位計(130)から入力されるダム水位とに基づいて所定の制御曲線を用いて排砂門開度を演算して、該演算した排砂門開度に基づいて前記ダム排砂門の開閉制御を行うための前記ダム排砂門開閉制御手段とを具備し、
前記所定の制御曲線が、前記ALR設定値によって示される前記責任放水量から前記ダム水位をパラメータとして前記排砂門開度を演算するためのものである、
ことを特徴とする、ダム排砂門開閉制御装置。
【請求項3】
前記所定の制御曲線が、横軸を前記排砂門開度とし、縦軸を前記逆調整池と前記下流河川との間に設けられた排砂水路(5)の流量とし、前記ダム水位をパラメータとするダム排砂門QHカーブであり、
前記ダム排砂門開閉制御手段が、前記ALR設定値によって示される前記責任放水量を前記排砂水路の流量に変換して、該変換した排砂水路の流量と前記ダム水位とに基づいて前記ダム排砂門QHカーブを用いて前記排砂門開度を演算する排砂門開度演算手段を備える、
ことを特徴とする、請求項2記載のダム排砂門開閉制御装置。
【請求項4】
前記ダム排砂門開閉制御手段が、
前記水車発電機から前記トリップ信号が入力されると、前記ALR設定値メモリから読み出した前記ALR設定値と前記ダム水位計から入力される前記ダム水位とに基づいて前記ダム排砂門QHカーブを用いて前記排砂門開度を演算するための排砂門開度演算部(15)と、
該排砂門開度演算部によって演算された前記排砂門開度と現在の排砂門開度との差分である排砂門開度偏差を求めるための排砂門開度偏差検出部(16)と、
該排砂門開度偏差検出部によって求められた前記排砂門開度偏差に基づいて前記現在の排砂門開度を修正し、該修正した排砂門開度となるように前記ダム排砂門の開閉制御を行うための排砂門制御部(17)と、
を備えることを特徴とする、請求項3記載のダム排砂門開閉制御装置。
【請求項5】
前記水車発電機の運転時に、前記ALR設定値メモリから読み出した前記ALR設定値と前記ダム水位計から入力される前記ダム水位とに基づいて所定の他の制御曲線を用いてガイドベーン開度を演算して、該演算したガイドベーン開度に基づいて前記水車発電機のガイドベーンの開閉制御を行うためのガイドベーン開閉制御手段をさらに具備し、
前記所定の他の制御曲線が、前記ALR設定値によって示される前記責任放水量から前記ダム水位をパラメータとして前記ガイドベーン開度を演算するためのものである、
ことを特徴とする、請求項2乃至4いずれかに記載のダム排砂門開閉制御装置。
【請求項6】
前記所定の他の制御曲線が、横軸を前記ガイドベーン開度とし、縦軸を前記逆調整池と前記水車発電機との間に設けられた導水路(2)の流量とし、前記ダム水位をパラメータとするPQHカーブであり、
前記ガイドベーン開閉制御手段が、前記ALR設定値によって示される前記責任放水量を前記導水路の流量に変換して、該変換した導水路の流量と前記ダム水位とに基づいて前記PQHカーブを用いて前記ガイドベーン開度を演算することを特徴とする、請求項5記載のダム排砂門開閉制御装置。
【請求項7】
前記ガイドベーン開閉制御手段が、
前記ALR設定値と前記ダム水位とに基づいて前記PQHカーブを用いて前記ガイドベーン開度を演算するためのガイドベーン開度演算部(11)と、
該ガイドベーン開度演算部によって演算された前記ガイドベーン開度と現在のガイドベーン開度との差分であるガイドベーン開度偏差を求めるためのガイドベーン開度偏差検出部(12)と、
該ガイドベーン偏差検出部によって求められた前記ガイドベーン開度偏差に基づいて前記現在のガイドベーン開度を修正し、該修正したガイドベーン開度となるように前記水車発電機の前記ガイドベーンの開閉制御を行うためのガイドベーン制御部(13)と、
を備えることを特徴とする、請求項6記載のダム排砂門開閉制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆調整池式水力発電所に設置された水車発電機のトリップ時にダム排砂門の開閉制御を行うのに好適なダム排砂門開閉制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム式水力発電所では、下流河川7に責任放流(河川維持流量および水利流量(生活用水・農業用水・工業用水など)の確保)を行うために、
図4に示すような逆調整池式水力発電所を設けている。
【0003】
そのため、逆調整池式水力発電所では、常時は、水車発電機3のガイドベーン開閉制御(水車発電機負荷制御)を行うための水車発電機負荷制御装置(ALR)120からガイドベーン開度制御信号S
GVを水車発電機3に出力して、水車発電機3のガイドベーン開度を自動制御することにより、決められた水量で水車発電機3を運転している。
【0004】
また、水車発電機3を点検で停止させる場合には、以下のようにして、ダム排砂門6を開いて逆調整池1(貯水池)から排砂水路5を介して下流河川7に放流することにより、責任放流量を確保している。
(1)作業員がダム排砂門6を現地手動操作で開く。
(2)ダム排砂門制御盤110が設置されている場合には、ダム排砂門制御盤110が、水車発電機負荷制御装置120からのガイドベーン開度信号S
AGVに基づいて求めた水車発電機使用水量とダム水位計130からダム水位信号S
DLによって示される逆調整池1の水位(以下、「ダム水位」と称する。)とに基づいて排砂門開度を算出し、算出した排砂門開度となるようにダム排砂門6の開閉を行うためのダム排砂門モータ(不図示)を駆動して、ダム排砂門6を自動で開く。
【0005】
さらに、水車発電機3がトリップ(非常停止)した場合には、以下のようにして、ダム排砂門6を開いて逆調整池1から排砂水路5を介して下流河川7に放流することにより、責任放流量を確保している。
(1)制御員が制御所(遠方)からダム排砂門6を開く。
(2)ダム排砂門制御盤110が設置されている場合には、ダム排砂門制御盤110が、水車発電機3からトリップ信号S
TRが入力されると、過大放流を防止のために、ダム排砂門6を所定の開度(たとえば、リミットスイッチにより機械式に決まった位置)まで開いたのちに制御員が制御所からダム排砂門6の開操作または閉操作を行って流量調整する。
【0006】
なお、下記の特許文献1には、水車の異常発生時には水車および放流弁を適正に制御して安定した運転制御を可能とするために、水車を水車駆動制御部によりガイドベーン開度を変更して流水量を調整する一方、放流弁を放流弁駆動制御部により放流弁開度を変更して流水量を調整するようにし、水車駆動制御部および放流弁駆動制御部にガイドベーン開度および放流弁開度が常時入力するようにし、水車の内部事故などの異常発生時には、水車のガイドベーンを閉止して駆動を停止する一方、放流弁の開度を異常発生時における水車のガイドベーン開度(流水量)に対応する開度とするようにした水力発電設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−343413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の逆調整池式水力発電所における責任放流方法では、ダム排砂門制御盤110が設置されている場合でも、水車発電機3のトリップ時には、過大放流を防止のために、ダム排砂門制御盤110によってダム排砂門6を所定の開度まで開いたのちに制御員が制御所から責任放流開度までダム排砂門6の開操作または閉操作を行う必要があるという問題があった。
【0009】
上記の特許文献1に開示された水力発電設備では、以下に示すような問題がある。
(1)ガイドベーン開度から流水量を再演算するため、演算値に誤差が生じる。
(2)演算値で放流弁を制御するため、再度誤差が生じる。
(3)水車制御機能と流水量の再演算による放流弁制御機能との二重制御機能になっている。
【0010】
本発明の目的は、水車発電機のトリップ時の下流河川への責任放流量を自動的に確保することができるダム排砂門開閉制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1のダム排砂門開閉制御装置は、水車発電機のトリップ時にダムに設けられたダム排砂門を開いて下流河川への責任放流量を確保するためのダム排砂門開閉制御装置であって、
前記責任放水量を示すALR設定値が格納されたALR設定値メモリと、前記水車発電機からトリップ信号が入力されると、前記ALR設定値メモリから読み出した前記ALR設定値と前記ダムに設けられたダム水位計から入力されるダム水位とに基づいて所定の制御曲線を用いて排砂門開度を演算して、該演算した排砂門開度に基づいて前記ダム排砂門の開閉制御を行うための前記ダム排砂門開閉制御手段
とを具備
し、前記所定の制御曲線が、前記ALR設定値によって示される前記責任放水量から前記ダム水位をパラメータとして前記排砂門開度を演算するためのものであることを特徴とする。
本発明の第2のダム排砂門開閉制御装置は、逆調整池式水力発電所に設置された水車発電機(3)のトリップ時にダム排砂門(6)を開いて下流河川(7)への責任放流量を確保するためのダム排砂門開閉制御装置(10)であって、
前記責任放水量を示すALR設定値が格納されたALR設定値メモリ(14)と、前記水車発電機からトリップ信号(STR)が入力されると、前記ALR設定値メモリから読み出した前記ALR設定値と前記調整池式水力発電所の逆調整池(1)に設けられたダム水位計(130)から入力されるダム水位とに基づいて所定の制御曲線を用いて排砂門開度を演算して、該演算した排砂門開度に基づいて前記ダム排砂門の開閉制御を行うための前記ダム排砂門開閉制御手段
とを具備
し、前記所定の制御曲線が、前記ALR設定値によって示される前記責任放水量から前記ダム水位をパラメータとして前記排砂門開度を演算するためのものであることを特徴とする。
ここで、
前記所定の制御曲線が、横軸を前記排砂門開度とし、縦軸を前記逆調整池と前記下流河川との間に設けられた排砂水路(5)の流量とし、前記ダム水位をパラメータとするダム排砂門QHカーブであり、前記ダム排砂門開閉制御手段が
、前記ALR設定値によって示される
前記責任放水量を前記排砂水路の流量に変換して、該変換した排砂水路の流量と前記ダム水位とに基づいて
前記ダム排砂門QHカーブを用いて前記排砂門開度を演算する排砂門開度演算手段を備えてもよい。
前記ダム排砂門開閉制御手段が、前記水車発電機から
前記トリップ信
号が入力されると、
前記ALR設定値メモ
リから読み出した前記ALR設定値と前
記ダム水位
計から入力される前記ダム水位とに基づいて前記ダム排砂門QHカーブを用いて前記排砂門開度を演算するための排砂門開度演算部(15)と、該排砂門開度演算部によって演算された前記排砂門開度と現在の排砂門開度との差分である排砂門開度偏差を求めるための排砂門開度偏差検出部(16)と、該排砂門開度偏差検出部によって求められた前記排砂門開度偏差に基づいて前記現在の排砂門開度を修正し、該修正した排砂門開度となるように前記ダム排砂門の開閉制御を行うための排砂門制御部(17)とを備えてもよい。
前記水車発電機の運転時に、
前記ALR設定値メモリから読み出した前記ALR設定値と
前記ダム水位計から入力される前記ダム水位とに基づいて
所定の他の制御曲線を用いてガイドベーン開度を演算して、該演算したガイドベーン開度に基づいて前記水車発電機のガイドベーンの開閉制御を行うためのガイドベーン開閉制御手段をさらに具備
し、前記所定の他の制御曲線が、前記ALR設定値によって示される前記責任放水量から前記ダム水位をパラメータとして前記ガイドベーン開度を演算するためのものであってもよい。
前記所定の他の制御曲線が、横軸を前記ガイドベーン開度とし、縦軸を前記逆調整池と前記水車発電機との間に設けられた導水路(2)の流量とし、前記ダム水位をパラメータとするPQHカーブであり、前記ガイドベーン開閉制御手段が
、前記ALR設定値によって示される
前記責任放水量を前記導水路の流量に変換して、該変換した導水路の流量と前記ダム水位とに基づいて
前記PQHカーブを用いて前記ガイドベーン開度を演算してもよい。
前記ガイドベーン開閉制御手段が、前記ALR設定値と前記ダム水位とに基づいて前記PQHカーブを用いて
前記ガイドベーン開度を演算するためのガイドベーン開度演算部(11)と、該ガイドベーン開度演算部によって演算された
前記ガイドベーン開度
と現在のガイドベーン開度との差分であるガイドベーン開度偏差を求めるためのガイドベーン開度偏差検出部(12)と、該ガイドベーン偏差検出部によって求められた前記ガイドベーン開度偏差に基づいて前記現在のガイドベーン開度を修正し、該修正したガイドベーン開度となるように前記水車発電機の前記ガイドベーンの開閉制御を行うためのガイドベーン制御部(13)とを備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダム排砂門開閉制御装置は、以下に示す効果を奏する。
(1)水車発電機のトリップ時にALR設定値およびダム水位に基づいてダム排砂門の開閉制御を行うことにより、水車発電機のトリップ時の下流河川への責任放流量を自動的に確保することができるとともに、下流河川の水位変動を大幅に抑制することができる。
(2)水車発電機のトリップ時のダム排砂門の開閉制御を行う際に、制御所における制御員による操作をなくすことができるため、業務の効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例によるダム排砂門開閉制御装置10の構成を示す図である。
【
図2】PQHカーブおよびダム排砂門QHカーブについて説明するための図である。
【
図3】
図1に示したダム排砂門開閉制御装置10を
図4に示した水車発電機負荷制御装置120およびダム排砂門制御盤110の代わりに使用できることについて説明するための図である。
【
図4】従来の逆調整池式水力発電所における責任放流方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の目的を、水車発電機のトリップ時にALR設定値およびダム水位に基づいてダム排砂門QHカーブを用いてダム排砂門の開閉制御を行うことにより実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明のダム排砂門開閉制御装置の実施例について図面を参照して説明する。
本発明のダム排砂門開閉制御装置は、水車発電機負荷制御装置120がALR設定値(責任放流量)およびダム水位に基づいてPQHカーブ(
図2(a)に示すように、横軸をガイドベーン開度とし、縦軸を導水路2の流量とし、ダム水位をパラメータとした制御曲線)を用いて水車発電機使用水量を責任放流量に保つようにガイドベーン開閉制御を行う機能を備えていることに鑑みて、水車発電機3のトリップ時にALR設定値およびダム水位に基づいてダム排砂門QHカーブ(
図2(b)に示すように、横軸を排砂門開度とし、縦軸を排砂水路5の流量とし、ダム水位をパラメータとした制御曲線)を用いてダム排砂門6の開閉制御を行うことにより、水車発電機3のトリップ時の下流河川7への責任放流量を自動的に確保できるようにすることを特徴とする。
【0016】
そのため、本発明の一実施例によるダム排砂門開閉制御装置10は、
図1に示すように、ガイドベーン開度演算部11(以下、「GV開度演算部11」と称する。)と、ガイドベーン開度偏差検出部12(以下、「GV開度偏差検出部12」と称する。)と、ガイドベーン制御部13(以下、「GV制御部13」と称する。)と、制御所からの指令値に基づくALR設定値を示すALR設定値データが格納されているALR設定値メモリ14と、排砂門開度演算部15と、排砂門開度偏差検出部16と、排砂門制御部17とを具備する。
【0017】
ここで、GV開度演算部11、GV開度偏差検出部12、GV制御部13およびALR設定値メモリ14は、
図4に示した水車発電機負荷制御装置120と同様に、ALR設定値およびダム水位に基づいてPQHカーブを用いて水車発電機3のガイドベーン開閉制御を行う機能を実現するためのものである。
【0018】
すなわち、GV開度演算部11は、ALR設定値メモリ14から読み出したALR設定値データによって示されるALR設定値と逆調整池1に設置されたダム水位計130からのダム水位信号S
DLによって示されるダム水位とに基づいてPQHカーブを用いてガイドベーン開度を演算する(ALR設定値によって示される責任放水量を導水路2の流量に変換して、変換した導水路2の流量とダム水位とに基づいてPQHカーブを用いてガイドベーン開度を演算する)ためのものである。
【0019】
GV開度偏差検出部12は、GV開度演算部11によって演算されたガイドベーン開度とGV制御部13からのガイドベーン開度信号S
AGVによって示される現在のガイドベーン開度との差分であるガイドベーン開度偏差を求めるためのものである。
【0020】
GV制御部13は、GV開度偏差検出部12によって求められたガイドベーン開度偏差に基づいて現在のガイドベーン開度を修正して、修正したガイドベーン開度となるように水車発電機3のガイドベーン開閉制御を行うためのガイドベーン開度制御信号S
GVを生成するためのものである。
GV制御部13によって生成されたガイドベーン開度制御信号S
GVは、水車発電機3に出力される。
【0021】
これにより、
図4に示した水車発電機負荷制御装置120と同様に、水車発電機3の運転中の下流河川7への責任放流量を自動的に確保することができる。
【0022】
排砂門開度演算部15、排砂門開度偏差検出部16および排砂門制御部17は、水車発電機3のトリップ時にALR設定値およびダム水位に基づいてダム排砂門QHカーブを用いてダム排砂門6の開閉制御を行う機能を実現するためのものである。
【0023】
すなわち、排砂門開度演算部15は、水車発電機3からトリップ信号S
TRが入力されると、ALR設定値メモリ14から読み出したALR設定値データによって示されるALR設定値とダム水位計130からのダム水位信号S
DLによって示されるダム水位とに基づいてダム排砂門QHカーブを用いて排砂門開度を演算する(ALR設定値によって示される責任放水量を排砂水路5の流量に変換して、変換した排砂水路5の流量とダム水位とに基づいてダム排砂門QHカーブを用いて排砂門開度を演算する)ためのものである。
【0024】
排砂門開度偏差検出部16は、排砂門開度演算部15によって演算された排砂門開度と排砂門制御部17からの排砂門開度信号S
ASSによって示される現在の排砂門開度との差分である排砂門開度偏差を求めるためのものである。
【0025】
排砂門制御17は、排砂門開度偏差検出部16によって求められた排砂門開度偏差に基づいて現在の排砂門開度を修正して、修正した排砂門開度となるようにダム排砂門6の開閉制御をするための排砂門開度制御信号S
SSを生成するためのものである。
排砂門制御17によって生成された排砂門開度制御信号S
SSは、ダム排砂門6の開閉を行うためのダム排砂門モータ(不図示)に出力される。
【0026】
これにより、水車発電機3のトリップ時の下流河川7への責任放流量を自動的に確保することができる。
【0027】
なお、
図4に示したダム排砂門制御盤110の水車発電機3のトリップ時の機能以外のすべての機能をダム排砂門開閉制御装置10に追加することにより、
図3に示すようにダム排砂門開閉制御装置10を水車発電機負荷制御装置120およびダム排砂門制御盤110の代わりに使用することができる。
【0028】
また、本発明のダム排砂門開閉制御装置は、高ダム直下の責任放流用発電所や責任放流バルブについても適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 逆調整池
2 導水路
3 水車発電機
4 放水路
5 排砂水路
6 ダム排砂門
7 下流河川
10 ダム排砂門開閉制御装置
11 GV開度演算部
12 GV開度偏差検出部
13 GV制御部
14 ALR設定値メモリ
15 排砂門開度演算部
16 排砂門開度偏差検出部
17 排砂門制御部
110 ダム排砂門制御盤
120 水車発電機負荷制御装置
130 ダム水位計
S
AGV ガイドベーン開度信号
S
ASS 排砂門開度信号
S
DL ダム水位信号
S
GV ガイドベーン開度制御信号
S
SS 排砂門開度制御信号
S
TR トリップ信号