(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、前記第1可動部及び前記第2可動部が回動可能となるように、かつ、前記第1可動部及び前記第2可動部が前記第1可動部及び前記第2可動部の厚さ方向に変位不可能となるように、幅が細く、厚さが厚く、かつ、長さが短い、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の力学量MEMSセンサ。
前記受力部が力学量を受けていない状態では、前記第1静電容量と前記第2静電容量とは略等しい容量であり、かつ、前記第3静電容量と前記第4静電容量とは略等しい容量である、
請求項18に記載の力学量MEMSセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以降説明する各実施の形態は、個々に独立したものではなく、適宜、組み合わせることが可能であり、かつ、その組み合わせの効果も主張可能なものとする。同一の要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。本実施の形態は、多軸力学量センサとして、力学量の一つである力を3軸で検出する力センサの例である。3軸の力センサは、X方向、Y方向、Z方向の力を検出可能である。
図1Aは、本実施の形態に係る力センサ100の上面図である。
図1Bは、力センサ100の封止基板を省略した下面透視図である。
図1Cは、力センサ100の封止基板及び固定電極を省略した下面透視図である。
図1Dは、
図1Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0015】
図1A〜1Dに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、可動支持部10と封止部20とを備え、可動支持部10と封止部20とが接合部22により封止接合されている。可動支持部10及び封止部20は、上面視で略正方形状であり、略同じサイズである。
【0016】
可動支持部10は、主に、シーソー部(可動部)30A〜30D(いずれかをシーソー部30とも称する)、受力部40、ダイアフラム60、突起61を備えている。封止部20は、主に、封止基板21、固定電極対(対向電極対)50A〜50D(いずれかを固定電極対50とも称する)を備えている。
【0017】
なお、力センサの面方向が水平方向、X方向(X軸方向)もしくはY方向(Y軸方向)であり、力センサの厚さ方向が垂直方向、もしくはZ方向(Z軸方向)である。Z方向正側の面を上面、Z方向負側の面を下面と称する場合があり、力を印加する側の面を力印加面、力印加面と対向する反対側の面を非力印加面と称する場合がある。本実施の形態では、上面が力印加面であり、下面が非力印加面である。また、可動支持部10及び封止部20の各基板(各層)において、可動電極もしくは固定電極が形成される側の面を主面(表面)、主面と対向する反対側の面を背面(裏面)とも称する。可動支持部10及び封止部20において、上面視または下面視で中央側を内側、外周端側を外側と称する。
【0018】
可動支持部10は、SOI(Silicon on Insulator)基板で構成されている。SOI基板は、3層構造の基板であり、上面側(力印加側)から順に、第1のシリコン層11、SiO
2の絶縁膜12、第2のシリコン層13が積層形成されている。
【0019】
第1のシリコン層11は、シーソー部30を支持する支持基板でもある。また第1のシリコン層11は、導電性を有するシリコン層である。
【0020】
第1のシリコン層11の背面中央部にダイアフラム60が形成されており、さらにダイアフラム60の内側の中央部に突起61が形成されている。ダイアフラム60及び突起61は、第1のシリコン層11の外形と同様に、上面視で略正方形状である。
【0021】
ダイアフラム60は、第1のシリコン層11の周辺部11aよりも膜厚の薄い薄肉部であり、可撓性を有し、突起61への力の印加に応じて弾性変形する。第1のシリコン層11は所定の膜厚であり、突起61部分を除く中央部を背面側からエッチングにより膜厚を薄くすることで、ダイアフラム60が形成されている。
【0022】
突起61は、ダイアフラム60よりも厚く、例えば、第1のシリコン層11の周辺部11aと同じ厚さである。ダイアフラム60よりも厚く突出しているため、力を受けやすくすることができ、力の印加点を特定できることから、力の検出精度が向上する。
【0023】
第1のシリコン層11の主面側(下面側)の第2のシリコン層13では、中央部に受力部40が形成され、受力部40の周囲に4つのシーソー部30A〜30Dが形成されている。受力部40が、シーソー部30A〜30Dに囲まれているとも言える。受力部40のX方向両側にシーソー部30A及び30Cが配置され、受力部40のY方向両側にシーソー部30B及び30Dが配置されている。受力部40とシーソー部30A〜30Dは、それぞれヒンジビーム33A〜33D(いずれかをヒンジビーム33とも称する)により連結されている。
【0024】
第2のシリコン層13は所定の膜厚であり、主面側からエッチングすることにより、受力部40、シーソー部30A〜30D、ヒンジビーム33A〜33D等が形成されている。このため、第2のシリコン層13の受力部40、シーソー部30A〜30D、ヒンジビーム33A〜33D等は、略同じ厚さである。第2のシリコン層13は、第1のシリコン層11と同様に、導電性を有するシリコン層であり、受力部40、シーソー部30A〜30D、ヒンジビーム33A〜33D等の全体が導通し、電気的に接続されている。
【0025】
受力部40は、受力板41及びストッパー42を有している。受力板41は、受力部40の中央に略正方形状に形成されている。受力板41(受力部40)は、突起61に対応する位置に形成されている。突起61が受力板41(受力部40)に対応する位置に形成されているとも言える。突起61上(主面側の上)に絶縁膜12を介して受力板41(受力部40)が形成されており、受力板41は絶縁膜12を介して突起61(第1のシリコン層11)に固定支持されている。すなわち、突起61に力が印加されると、印加された力が絶縁膜12を介して受力板41に伝達される。
【0026】
ストッパー42は、受力板41の周囲の角部(四隅)のそれぞれに、受力板41を拡張するように、略L字型に形成されている。ストッパー42は、受力部40の位置が傾いて変位した場合に、封止部20側に接触する接触部である。ストッパー42には、エッチングホール43が形成されている。エッチングホール43は、ストッパー42を貫通する貫通孔であり、開口部が略正方形状である。エッチングホール43は、ストッパー42の形状に合わせて絶縁膜12を犠牲層エッチング可能なように配置されている。主面側からエッチングホール43を介して絶縁膜12をエッチングすることにより、ストッパー42の下の絶縁膜12を除去する。これにより、ストッパー42を第1のシリコン層11から離間し、受力板41に支持された構造となる。
【0027】
受力板41の各辺(端部)の中央部には、ストッパー42は形成されておらず、各辺の中央部にヒンジビーム33A〜33Dが結合されている。受力部41の各辺(端部)に凹部が形成され、凹部の窪みにヒンジビーム33A〜33Dが結合されているとも言える。
【0028】
ヒンジビーム(連結部)33A〜33Dは、断面が略四角形状であり、細長いビーム状に形成され、可撓性及び可捻性(可捩性)を有する結合支持部材である。ヒンジビーム33A〜33Dは、受力部40の変位に応じて撓み、シーソー部30A〜30Dを回転変位させる。
【0029】
シーソー部30A〜30Dは、受力部40の各辺(端部)と対向する位置に、それぞれ配置されている。シーソー部30A〜30Dは、同じ構造であり、受力部40を中心に対称構造の形状及び配置となっている。シーソー部30A〜30Dは、可動電極31A〜31D(いずれかを可動電極31とも称する)を有し、可動電極31A〜31Dが、トーションビーム32A〜32D(いずれかをトーションビーム32とも称する)に支持されている。シーソー部30A〜30Dが、可動電極31A〜31Dとトーションビーム32A〜32Dを有しているとも言える。
【0030】
可動電極31A〜31Dは、上面視で四角形状であり、四角形の対向する2辺(端部)の中央に凹部を有している。可動電極31A〜31Dは、略H字型に形成されているとも言える。可動電極31A〜31Dの凹部の窪みにヒンジビーム33A〜33Dが結合されている。可動電極31A〜31Dは、凹部の無い2辺(端部)の中央で、トーションビーム32A〜32Dにより固定部15に結合支持されている。トーションビーム32A〜32Dの形成箇所が、可動電極31A〜31D(シーソー部30A〜30D)が回転可動する回転軸35A〜35D(いずれかを回転軸35とも称する)となる。
【0031】
可動電極31A〜31Dには、エッチングホール34が形成されている。エッチングホール34は、受力部40のエッチングホール43と同様に形成される。すなわち、エッチングホール34は、可動電極31A〜31Dを貫通する貫通孔であり、開口部が略正方形状である。エッチングホール34は、可動電極31A〜31Dの形状に合わせて絶縁膜12を犠牲層エッチング可能なように配置されている。主面側からエッチングホール34を介して絶縁膜12をエッチングすることにより、可動電極31A〜31Dの下の絶縁膜12を除去する。これにより、可動電極31A〜31Dは、第1のシリコン層11から離間し、トーションビーム32A〜32Dにより固定部15に支持された構造となる。
【0032】
トーションビーム32A〜32Dは、断面が略四角形状であり、細長いビーム状に形成され、可捻性(可捩性)を有する結合支持部材である。トーションビーム32A〜32Dは、シーソー部30A〜30Dを回転軸35A〜35Dまわりに捻れるように支持している。すなわち、シーソー部30A〜30Dは、回転軸35A〜35Dを中心に回動可能となるように、トーションビーム32A〜32Dを介して固定部15に支持されている。
【0033】
トーションビーム32は、幅が細く、長さが短く、厚さが厚い形状であることが好ましい。すなわち、回動可能となるように細く、Z方向に変位不可能となるように短く厚い。これにより、並進剛性を高く、回転剛性を低くできるため、シーソー部30の並進変位を抑えることができ、シーソー部30の回転による容量変化のみ検出できる。力センサ100の検出原理については後述する。
【0034】
また、ヒンジビーム33の回転剛性は、トーションビームの回転剛性以下であることが好ましい。本実施の形態のように3軸にシーソー部30を配置しても、シーソー部30が回転しやすく、他軸に影響を及ぼしにくいので、力を精度良く検出することができる。
【0035】
なお、弾性変位するダイアフラム60、トーションビーム32、ヒンジビーム33のZ方向のバネ剛性の関係は、トーションビーム32及びヒンジビーム33よりも、ダイアフラム60の方が高い(ダイアフラム60のZ剛性>>トーションビーム32及びヒンジビーム33のZ剛性)ことが好ましい。これにより、センサ感度をダイアフラム60の寸法で規定することができる。
【0036】
固定部15は、第2のシリコン層13の周辺部13aに任意の形状で形成される。この例では、固定部15は、外周部からシーソー部30A〜30Dの近傍まで連続して形成されている。固定部15は、第1のシリコン層11の周辺部11aの上(主面側の上)に絶縁膜12を介して形成されている。固定部15は、絶縁膜12を介して第1のシリコン層11に固定支持されることで、シーソー部30A〜30Dを支持している。
【0037】
シーソー部30A〜30D、ヒンジビーム33A〜33D、受力部40は、同じ厚さであり、周辺部13aは、これらの各部と同じ厚さでも良いが、各部よりもわずかに(数μm)厚いほうが好ましい。周辺部13aを厚くすることにより、封止部20により封止した場合に、固定電極などとの間にギャップを形成し易い。
【0038】
第2のシリコン層13のうち、シーソー部30A〜30Dの外側の周辺部13aには、貫通電極14が形成されている。貫通電極14は、第2のシリコン層13及び絶縁膜12を貫通し、第1のシリコン層11と第2のシリコン層13及び接合部22とを電気的に接続する。
【0039】
接合部22は、力センサ100の周辺部において、シーソー部30及び受力部40を囲むように、可動支持部10の第2のシリコン層13と封止部20の封止基板21とを封止接合している。接合部22は、導電性を有する金属拡散接合部材であり、例えば、Cu−Sn(銅−錫)合金等である。
【0040】
封止基板21は、シーソー部30A〜30D、受力部40を含む可動支持部10の全体を封止する基板である。封止基板21は、例えば、シリコン基板、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic:低温同時焼成セラミックス)基板、LSI(Large Scale Integration)などである。例えば、封止基板21中には上面側の電極電位を下面側に引き出すビア(不図示)が配置され、封止基板21の背面(下面側)にはこのビアにつながった外部端子(不図示)が配置され、外部の検出回路等が接続される。また、必要に応じて、封止基板21の内部には、検出回路等の回路や配線が設けられる。封止基板21は、LSIで構成することが好ましい。これにより、センサ構造に近い部分に処理回路を配置できるため、ノイズの影響を受けにくい。
【0041】
封止基板21の主面上(上面側)に、固定電極対50A〜50Dが形成されている。固定電極対50A〜50Dは、それぞれ固定電極51A及び52A、51B及び52B、51C及び52C、51D及び52D(いずれかを固定電極51及び52とも称する)を含んでいる。固定電極51A〜51D、52A〜52Dは、金属など導電性を有する導電膜であり、封止基板21上にパターニングされて形成されている。
【0042】
固定電極51A〜51D、52A〜52Dは、それぞれシーソー部30A〜30Dの可動電極31A〜31Dに対応する位置に配置され、可動電極31A〜31Dとともに容量素子を構成する。シーソー部30A〜30Dの回転軸35A〜35Dに対し、外側に固定電極51A〜51Dが配置され、内側に固定電極52A〜52Dが配置されている。例えば、封止基板21中に配置されたビア(不図示)を介し外部の検出回路等で、あるいは封止基板21中に構成されたLSIで、これら容量素子の静電容量を検出することができる。
【0043】
次に、本実施の形態に係る力センサ100の動作原理について説明する。
図2は、力センサ100における、可動電極の変位動作と静電容量の関係を示している。
【0044】
シーソー部30の可動電極31のうち、回転軸35に対して一端側(外側)の可動電極部311と固定電極51とが対向しており、可動電極部311と固定電極51とによって第1の容量素子511が構成される。可動電極31のうち、回転軸35に対して他端側(内側)の可動電極部312と固定電極52とが対向しており、可動電極部312と固定電極52とによって第2の容量素子521が構成される。本実施の形態では、シーソー部30の全体に連続する1つの可動電極31の例について説明するが、可動電極部311と可動電極部312とで別々に分離された電極であってもよい。例えば、シーソー部30は、回転軸35を挟んで第1の可動電極(可動電極部311)と第2の可動電極(可動電極部312)とを有し、第1の可動電極と固定電極51が第1の容量素子511を構成し、第2の可動電極と固定電極52が第2の容量素子521を構成するものとしてもよい。
【0045】
可動電極31は、印加された力に応じて回転軸35を中心にα方向またはβ方向へ回転変位する。突起61に力が印加されると、受力部40が作用し、ヒンジビーム33を介してシーソー部30の内側端部(
図2の右側)に、Z軸の正側または負側に力が加わる。これにより、可動電極31が回転軸35を中心にして回転する。
【0046】
図2は、可動電極31が、初期状態からα方向に回転した例である。この場合、可動電極31の可動電極部311と固定電極51とが離れるため、可動電極部311と固定電極51間の第1の容量素子511の静電容量が減少する(C−ΔC)。また、可動電極31の可動電極部312と固定電極52とが近づくため、可動電極部312と固定電極52間の第2の容量素子521の静電容量が増大する(C+ΔC)。
【0047】
この第1の容量素子511と第2の容量素子521の容量差(Cs=(C+ΔC)−(C−ΔC)=2ΔC)を求めることにより、差動検知方式で力の検出を行う。
図25のように一般的な差動検知方式では、導体層が3層必要であったのに対し、
図2の方式では、2層の導体層により差動検知方式を実現できる。さらに、本実施の形態では、複数のシーソー部30を用いて、シーソー構造の変形モード(シーソー部の回転方向)の違いを利用し、差動検知方式により3軸方向の力を検出する。
【0048】
図3は、力センサ100における、シーソー部30と回転軸35の配置イメージを示している。
図3は、可動支持部10のみを主面側(下面側)から見た斜視図である。
【0049】
シーソー部30Aでは、回転軸35AがY方向に延びている。このため、シーソー部30Aは、回転軸35Aを中心に、X方向及びZ方向の力に応じて、αA方向またはβA方向に回転する。シーソー部30Aの回転軸35Aより外側の容量を容量A
1とし、回転軸35Aより内側の容量を容量A
2とする。シーソー部30Aは、αA方向に回転すると、容量A
1が減少しつつ容量A
2が増加し、また、βA方向に回転すると、容量A
1が増加しつつ容量A
2が減少する。
【0050】
シーソー部30Aは、Z軸の負方向に力が印加されると、αA方向に回転し、Z軸の正方向に力が印加されると、βA方向に回転する。シーソー部30Aは、X軸の正方向に力が印加されると、βA方向に回転し、X軸の負方向に力が印加されると、αA方向に回転する。シーソー部30Aは、Y軸方向の力に対してはヒンジビーム33AがX軸周りに捩れることで変位しない。
【0051】
シーソー部30Cでは、回転軸35CがY方向に延びている。このため、シーソー部30Cは、回転軸35Cを中心に、X方向及びZ方向の力に応じて、αC方向またはβC方向に回転する。シーソー部30Cの回転軸35Cより外側の容量を容量C
1とし、回転軸35Cより内側の容量を容量C
2とする。シーソー部30Cは、αC方向に回転すると、容量C
1が増加しつつ容量C
2が減少し、また、βC方向に回転すると、容量C
1が減少しつつ容量C
2が増加する。
【0052】
シーソー部30Cは、Z軸の負方向に力が印加されると、βC方向に回転し、Z軸の正方向に力が印加されると、αC方向に回転する。シーソー部30Cは、X軸の正方向に力が印加されると、βC方向に回転し、X軸の負方向に力が印加されると、αC方向に回転する。シーソー部30Cは、Y軸方向の力に対してはヒンジビーム33CがX軸周りに捩れることで変位しない。
【0053】
シーソー部30Bでは、回転軸35BがX方向に延びている。このため、シーソー部30Bは、回転軸35Bを中心に、Y方向及びZ方向の力に応じて、αB方向またはβB方向に回転する。シーソー部30Bの回転軸35Bより外側の容量を容量B
1とし、回転軸35Bより内側の容量を容量B
2とする。シーソー部30Bは、αB方向に回転すると、容量B
1が減少しつつ容量B
2が増加し、また、βB方向に回転すると、容量B
1が増加しつつ容量B
2が減少する。
【0054】
シーソー部30Bは、Z軸の負方向に力が印加されると、αB方向に回転し、Z軸の正方向に力が印加されると、βB方向に回転する。シーソー部30Bは、Y軸の正方向に力が印加されると、βB方向に回転し、Y軸の負方向に力が印加されると、αB方向に回転する。シーソー部30Bは、X軸方向の力に対してはヒンジビーム33BがY軸周りに捩れることで変位しない。
【0055】
シーソー部30Dでは、回転軸35DがX方向に延びている。このため、シーソー部30Dは、回転軸35Dを中心に、Y方向及びZ方向の力に応じて、αD方向またはβD方向に回転する。シーソー部30Dの回転軸35Dより外側の容量を容量D
1とし、回転軸35Dより内側の容量を容量D
2とする。シーソー部30Dは、αD方向に回転すると、容量D
1が増加しつつ容量D
2が減少し、また、βD方向に回転すると、容量D
1が減少しつつ容量D
2が増加する。
【0056】
シーソー部30Dは、Z軸の負方向に力が印加されると、βD方向に回転し、Z軸の正方向に力が印加されると、αD方向に回転する。シーソー部30Dは、Y軸の正方向に力が印加されると、βD方向に回転し、Y軸の負方向に力が印加されると、αD方向に回転する。シーソー部30Dは、X軸方向の力に対してはヒンジビーム33DがY軸周りに捩れることで変位しない。
【0057】
次に、本実施の形態に係る力センサ100の具体的な動作例について説明する。
図4A、
図4B及び
図4Cは、Z軸の負方向に力Fzが印加された場合の力センサ100の状態を示している。
図4Aは、可動支持部10のみを主面側(下面側)から見た斜視図であり、
図4Bは、Y方向から見た側面断面図であり、
図4Cは、X方向から見た側面断面図である。例えば、力センサ100をロボットの皮膚に触覚センサとして配置した場合に、力Fzを圧覚力として検出することができる。
【0058】
図4A〜
図4Cに示すように、力FzがZ軸の負方向に印加されると、突起61の上面に力Fzが作用するため、突起61及び受力部40が、ダイアフラム60とともに、Z軸の負方向に沈み込むように変位する。受力部40の変位にしたがい、全てのヒンジビーム33A〜33Dが撓みつつ、Z軸の負方向に変位する。
【0059】
そうすると、
図4Bに示すように、シーソー部30Aは、ヒンジビーム33Aに引っ張られるため、内側端部がZ軸の負方向に変位し、回転軸35Aを中心にαA方向へ回転変位する。このため、シーソー部30Aの内側端部が固定電極52Aに近づくことにより、容量A
2が増加し、シーソー部30Aの外側端部が固定電極51Aから離れることにより、容量A
1が減少する。また、シーソー部30Cは、ヒンジビーム33Cに引っ張られるため、内側端部がZ軸の負方向に変位し、回転軸35Cを中心にβC方向に回転変位する。このため、シーソー部30Cの内側端部が固定電極52Cに近づくため、容量C
2が増加し、シーソー部30Cの外側端部が固定電極51Cから離れるため、容量C
1が減少する。
【0060】
さらに、
図4Cに示すように、シーソー部30Bは、ヒンジビーム33Bに引っ張られるため、シーソー部30Bの内側端部がZ軸の負方向に変位し、回転軸35Bを中心にαB方向に回転変位する。このため、シーソー部30Bの内側端部が固定電極52Bに近づくことにより、容量B
2が増加し、シーソー部30Bの外側端部が固定電極51Bから離れることにより、容量B
1が減少する。また、シーソー部30Dは、ヒンジビーム33Dに引っ張られるため、シーソー部30Dの内側端部がZ軸の負方向に変位し、回転軸35Dを中心にβD方向に回転変位する。このため、シーソー部30Dの内側端部が固定電極52Dに近づくことにより、容量D
2が増加し、シーソー部30Dの外側端部が固定電極51Dから離れることにより、容量D
1が減少する。
【0061】
このように、Z方向に力Fzが印加された場合(Fzモード)、シーソー部30C(第1の可動部)は第1の方向(例えばβC)に回転し、シーソー部30A(第2の可動部)は第1の方向と反対の第2の方向(例えばαA)に回転する。また、シーソー部30Dは第3の方向(例えばβD)に回転し、シーソー部30Bは第3の方向と反対の第4の方向(例えばαB)に回転する。すなわち、X方向で対向するシーソー部30A及び30Cと、Y方向で対向するシーソー部30B及び30Dは、それぞれ互いに逆方向に回転し、逆方向に傾く逆相傾斜となる。このため、Z方向に印加される力Fzは、次の(式1)のように各シーソー部30の差動の合計となる。
【数1】
【0062】
図5A、
図5B及び
図5Cは、X軸またはY軸の正方向に力Fxまたは力Fyが印加された場合の力センサ100の状態を示している。
図5Aは、力Fxまたは力Fy印加時の可動支持部10のみを主面側(下面側)から見た斜視図であり、
図5Bは、力Fx印加時のY方向から見た側面断面図であり、
図5Cは、力Fy印加時のX方向から見た側面断面図である。例えば、力センサ100をロボットの皮膚に触覚センサとして配置した場合に、力Fxまたは力Fyをせん断力として検出することができる。
【0063】
図5A及び
図5Bに示すように、力FxがX軸の正方向に印加されると、突起61に突起61の高さと力Fxに応じたY軸回りのモーメントが作用するため、突起61及び受力部40が、ダイアフラム60とともに、Y方向から見て斜めに傾くように変位する。受力部40のX軸の負側が、Z軸の正側に浮き上がり、受力部40のX軸の正側が、Z軸の負側に沈み込む。受力部40の変位にしたがい、X軸負側のヒンジビーム33Aは撓みつつ、Z軸の正方向に変位し、X軸正側のヒンジビーム33Cは撓みつつ、Z軸の負方向に変位する。
【0064】
そうすると、
図5Bに示すように、シーソー部30Aは、ヒンジビーム33Aに引っ張られるため、内側端部がZ軸の正方向に変位し、回転軸35Aを中心にβA方向に回転変位する。このため、シーソー部30Aの内側端部が固定電極52Aから離れることにより、容量A
2が減少し、シーソー部30Aの外側端部が固定電極51Aに近づくことにより、容量A
1が増加する。また、シーソー部30Cは、ヒンジビーム33Cに引っ張られるため、内側端部がZ軸の負方向に変位し、回転軸35Cを中心にβC方向に回転変位する。このため、シーソー部30Cの内側端部が固定電極52Cに近づくため、容量C
2が増加し、シーソー部30Cの外側端部が固定電極51Cから離れるため、容量C
1が減少する。
【0065】
このとき、受力部40は、Y方向に伸びるヒンジビーム33B及び33Dを軸として回転変位する。ヒンジビーム33B及び33DはY軸回りに容易に捩れることができるため受力部40の回転を阻害しない。また、ヒンジビーム33B及び33Dが捩れることでシーソー部30B及び30Dは変位しない。このようにX軸方向の力Fxを効果的に検知できるとともに、Y軸方向へのクロストークを抑えることができる。
【0066】
このように、X方向に力Fxが印加された場合(Fxモード)、シーソー部30C(第1の可動部)は第1の方向(例えばβC)に回転し、シーソー部30A(第2の可動部)は第1の方向と同じ方向、もしくは第2の方向(例えばαA)と反対の方向(例えばβA)に回転する。すなわち、X方向で対向するシーソー部30A及び30Cは、同じ方向に回転し、同じ方向に傾く同相傾斜となる。また、シーソー部30B及び30Dは変位しない。このため、力Fxは、次の(式2)のようにシーソー部30A及び30Cにおける差動の減算となる。
【数2】
【0067】
図5A及び
図5Cに示すように、力FyがY軸の正方向に印加されると、突起61に突起61の高さと力Fyに応じたX軸回りのモーメントが作用するため、突起61及び受力部40が、ダイアフラム60とともに、X方向から見て斜めに傾くように変位する。受力部40のY軸の負側が、Z軸の正側に浮き上がり、受力部40のY軸の正側が、Z軸の負側に沈み込む。受力部40の変位にしたがい、Y軸負側のヒンジビーム33Bは撓みつつ、Z軸の正方向に変位し、Y軸正側のヒンジビーム33Dは撓みつつ、Z軸の負方向に変位する。
【0068】
そうすると、
図5Cに示すように、シーソー部30Bは、ヒンジビーム33Bに引っ張られるため、内側端部がZ軸の正方向に変位し、回転軸35Bを中心にβB方向に回転変位する。このため、シーソー部30Bの内側端部が固定電極52Bから離れることにより、容量B
2が減少し、シーソー部30Bの外側端部が固定電極51Bに近づくことにより、容量B
1が増加する。また、シーソー部30Dは、ヒンジビーム33Dに引っ張られるため、内側端部がZ軸の負方向に変位し、回転軸35Dを中心にβD方向に回転変位する。このため、シーソー部30Dの内側端部が固定電極52Dに近づくことにより、容量D
2が増加し、シーソー部30Dの外側端部が固定電極51Dから離れることにより、容量D
1が減少する。
【0069】
このとき、受力部40は、X方向に伸びるヒンジビーム33A及び33Cを軸として回転変位する。ヒンジビーム33A及び33CはX軸回りに容易に捩れることができるため受力部40の回転を阻害しない。また、ヒンジビーム33A及び33Cが捩れることでシーソー部30A及び30Cは変位しない。このようにY軸方向の力Fyを効果的に検知できるとともに、X軸方向へのクロストークを抑えることができる。
【0070】
このように、Y方向に力Fyが印加された場合(Fyモード)、シーソー部30Dは第3の方向(例えばβD)に回転し、シーソー部30Bは第3の方向と同じ方向、もしくは第4の方向(例えばαB)と反対の方向(例えばβB)に回転する。すなわち、Y方向で対向するシーソー部30B及び30Dは、同じ方向に回転し、同じ方向に傾く同相傾斜となる。また、シーソー部30A及び30Cは変位しない。このため、力Fyは、次の(式3)のようにシーソー部30B及び30Dにおける差動の減算となる。
【数3】
【0071】
(式1)〜(式3)より、本実施の形態では、次の(式4)のようにマトリックス演算を行い、各方向の力を求める。マトリックス演算は、アナログ回路やデジタル回路を含むハードウェアまたはソフトウェア、もしくはその両方によって実現可能である。例えば、マトリックス演算を行う演算回路を、封止基板21に内蔵してもよいし、外部のマイクロコンピュータ等で実現してもよい。
【数4】
【0072】
(式4)のように、各容量の差動(容量差)に対し、変換マトリックスを乗算することで、各方向の力を得る。(式4)において、力Fx及び力Fyの演算については、各差動の係数を2とし、力Fzの演算については、各差動の係数を1としている。これは、力Fzの場合、全ての方向のシーソー部が可動して全ての容量の差動値が変化するのに対し、力Fx及び力Fyの場合、X方向またはY方向の2つのシーソー部のみが可動して2つの差動値のみが変化することから、力Fzの検出感度が、力Fx及び力Fyの検出感度の2倍となるためである。検出する力の方向の感度に応じて、変換マトリックスの係数を設定することで、精度よく力を検出することができる。
【0073】
以上の構成における本実施の形態の効果について説明する。従来技術では、3軸の力検知が可能である構造が開発されているが、出力値の直線性やオフセットなどで精度に課題がある。また、可動部を持つMEMSセンサでは、センサの使用時に可動部を外気から保護するための封止構造が必須であるが、封止が困難な構造であった場合に、ロボットへ装着し稼動させたときに異物が可動体や感応部の電極に入ってしまい誤作動の原因となる問題が発生する。
【0074】
例えば、特許文献1では、3軸(Fx,Fy,Fz)の力を検出可能であるが、Z方向の力Fzに関して差動検知ができないためZ軸の精度に影響が出る。また、特許文献1では、両側貫通した構造のため、実装時に封止が困難な構造となっている。したがって、直接、物体と接触する力センサに用いたときに、異物が可動体に入る可能性を有している。
【0075】
そこで、本実施の形態では、可動電極をシーソー構造のシーソー部とし、このシーソー部をX方向とY方向のそれぞれに2個配置し、シーソー部に対向する位置に固定電極を配置した。さらに、各シーソー部の差動容量をマトリックス演算し、3軸方向の力に分解することとした。これにより、静電容量方式を用いて、X方向、Y方向及びZ方向の3軸の力を検出でき、全軸で差動検知することができるため、3軸の全てにおいて精度良く力を検出することができる。
【0076】
また、シーソー構造とするため、ダイアフラムを利用することにより、力センサを封止構造とすることが可能となる。さらに、櫛歯のような微細構造が不要であるため、壊れにくい構造となっている。さらに、受力部を備えることにより、力が作用する箇所を特定でき、検出精度が向上する。
【0077】
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態は、実施の形態1に対し、可動支持部のみで力センサを構成した例である。
図6Aは、本実施の形態に係る力センサ100の上面図である。
図6Bは、
図6Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0078】
図6A及び
図6Bに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、封止部を有さず、可動支持部10のみを備えている。また、受力部及びシーソー部が配置される側(主面側)から力を印加するため、実施の形態1と比べて、力の印加方向(Z方向の向き)が逆となっている。
【0079】
可動支持部10は、主に、シーソー部30A〜30D、受力部40、固定電極対50A〜50Dを備えており、ダイアフラム及び突起は備えていない。実施の形態1と同様に、可動支持部10は、第1のシリコン層11、絶縁膜12、第2のシリコン層13を備えている。第2のシリコン層13では、中央に受力部40が形成され、受力部40の周囲に4つのシーソー部30A〜30Dが形成されている。受力部40とシーソー部30A〜30Dは、それぞれヒンジビーム33A〜33Dにより連結されている。この例では、受力部40は、ストッパー42を有さず、受力板41のみで構成されている。受力部40は、第1のシリコン層11に接合されていないため、ヒンジビーム33A〜33Dによりシーソー部30A〜30Dに支持された構造となる。
【0080】
シーソー部30A〜30Dの可動電極31A〜31Dは、トーションビーム32A〜32Dにより固定部15に固定されている。本実施の形態では、固定部15は、トーションビーム32ごと(シーソー部ごと)に形成されている。固定部15は、上面視で四角形状であり、第2のシリコン層13をエッチングすることで形成されている。
【0081】
また、本実施の形態では、第1のシリコン層11の主面上に、固定電極対50A〜50Dが形成されている。実施の形態1と同様に、固定電極対50A〜50Dは、それぞれ固定電極51A及び52A、51B及び52B、51C及び52C、51D及び52Dを含み、それぞれシーソー部30A〜30Dの可動電極31A〜31Dに対応する位置に配置されている。固定電極51A〜51D、52A〜52Dは、例えば、上面視で略長方形状であり、インプラント等により形成されている。例えば、第2のシリコン層13の周囲に外部接続端子を作製し、第1のシリコン層11の厚み方向に固定電極51及び固定電極52に接続されたTSV(Through Silicon Via)を作製し、外部の検出回路等に接続することで、可動電極31と固定電極51及び固定電極52間の静電容量を検知することができる。
【0082】
本実施の形態の動作原理は実施の形態1と同様である。例えば、Z軸の負方向に力Fzが印加された場合の状態、シーソー部30A及び30Cは、
図7のように動作する。力FzがZ軸の負方向に印加されると、印加された力に応じて受力部40が、Z軸の負方向に沈み込むように変位する。受力部40の変位にしたがい、シーソー部30A〜30Dの内側端部がZ軸の負方向に変位し、シーソー部30A〜30Dの外側端部がZ軸の正方向に変位する。すなわち、Z方向に力Fzが印加された場合(Fzモード)、シーソー部30A及び30C、シーソー部30B及び30Dは、互いに逆方向に回転する。
【0083】
また、X軸方向に力Fx、Y軸方向に力Fyが印加された場合も、実施の形態1と同様に、シーソー部30A及び30C、または、シーソー部30B及び30Dが、同じ方向に回転する。したがって、本実施の形態においても、実施の形態1と同様の原理で、3軸の力を検出できる。
【0084】
以上のように、本実施の形態では、封止部を有しない力センサにおいて、可動電極をシーソー構造のシーソー部とし、このシーソー部をX方向とY方向のそれぞれに2個配置し、シーソー部に対向する位置に固定電極対を配置した。また、4つのシーソー部と受力部がヒンジビームにより連結されている。これにより、実施の形態1と同様に、静電容量方式を用いて、X方向、Y方向及びZ方向の3軸の力を検出でき、全軸で差動検知することができるため、3軸の全てにおいて精度良く力を検出することができる。また、櫛歯のような微細構造が不要であるため、壊れにくい構造となっている。さらに、受力部により、力が作用する箇所を特定でき、検出精度が向上する。
【0085】
また、受力部とシーソー部とを連結するヒンジビームは、しなり、捩れることのできるビーム構造となっており、トーションビームの回転軸に対し垂直に向かって伸びている。これにより、受力部の変位を正確にシーソー部に伝達できるとともに、力の印加による各部材の破壊を防ぐことができる。
【0086】
また、受力部が、4つのシーソー部に囲まれて中心対称構造をとなっており、シーソー部が直交配置されている。これにより、力に応じて対称的な変形が可能であり、正確に力を検出することができる。
【0087】
(実施の形態3)
以下、図面を参照して実施の形態3について説明する。本実施の形態は、実施の形態2に対し、3個のシーソー部で力センサを構成した例である。
図8Aは、本実施の形態に係る力センサ100の上面図である。
図8Bは、
図8Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0088】
図8A及び
図8Bに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、実施の形態2と同様に、可動支持部10のみを備えている。可動支持部10は、主に、シーソー部30A〜30C、受力部40、固定電極対50A〜50Cを備えている。可動支持部10は、第1のシリコン層11、絶縁膜12、第2のシリコン層13を備えている。第2のシリコン層13では、中央に受力部40が形成され、受力部40の周囲に3つのシーソー部30A〜30Cが形成されている。受力部40を中心に対称構造とするため、シーソー部30A〜30Cは、受力部40を中心として120°の間隔で配置されている。
【0089】
受力部40とシーソー部30A〜30Cは、それぞれヒンジビーム33A〜33Cにより連結されている。実施の形態2と同様に、受力部40は、受力板41のみで構成され、ヒンジビーム33A〜33Cによりシーソー部30A〜30Cに支持されている。受力部40は、3つのシーソー部30A〜30Cに均等に力を伝達するため、上面視で略三角形状に形成されており、三角形の各頂点部にヒンジビーム33A〜33Cが結合されている。シーソー部30A〜30Cの可動電極31A〜31Cは、トーションビーム32により固定部15に固定されている。実施の形態2と同様に、固定部15は、トーションビーム32ごと(シーソー部ごと)に形成されている。
【0090】
第1のシリコン層11の主面上に、固定電極対50A〜50Cが形成されている。固定電極対50A〜50Cは、それぞれ固定電極51A及び52A、51B及び52B、51C及び52Cを含み、それぞれシーソー部30A〜30Cの可動電極31A〜31Cに対応する位置に配置されている。
【0091】
本実施の形態の動作原理は実施の形態1及び2と同様である。例えば、力FzがZ軸の負方向に印加されると、受力部40の変位に応じて、シーソー部30A〜30Cの内側端部がZ軸の負方向に変位し、シーソー部30A〜30Cの外側端部がZ軸の正方向に変位する。また、力FxがX軸の正方向に印加されると、受力部40の変位に応じて、シーソー部30Aの内側端部がZ軸の正方向に変位し、シーソー部30Cの内側端部がZ軸の負方向に変位し、シーソー部30Bは変位しない。また、力FyがY軸の正方向に印加されると、受力部40の変位に応じて、シーソー部30A及び30Cの内側端部がZ軸の正方向に変位し、シーソー部30Bの内側端部がZ軸の負方向に変位する。
【0092】
このため、本実施の形態では、次の(式5)のようにマトリックス演算を行い、各方向の力を求める。
【数5】
【0093】
(式5)のように、3つの容量の差動(容量差)に対し、変換マトリックスを乗算することで、3つの方向の力を得る。演算に用いる係数は、シーソー部30A〜30Cが配置される位置(角度)と、加わる力の向きに応じたシーソー部30A〜30Cの動作によって決まる。
【0094】
以上のように、少なくとも3個のシーソー部を備えた場合でも、実施の形態1及び2と同様に、3軸の力を検出でき、全軸で差動検知することができるため、精度良く力を検出することができる。また、櫛歯のような微細構造が不要であるため、壊れにくい構造となっている。さらに、受力部により、力が作用する箇所を特定でき、検出精度が向上する。
【0095】
(実施の形態4)
以下、図面を参照して実施の形態4について説明する。本実施の形態は、実施の形態2の力センサに対し、支持基板にダイアフラムを形成した例である。
図9Aは、本実施の形態に係る力センサ100の上面図である。
図9Bは、
図9Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0096】
図9A及び
図9Bに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、可動支持部10のみを備えている。第1のシリコン層側(背面側)から力を印加するため、実施の形態2と比べて、力の印加方向が逆となっている。
【0097】
可動支持部10は、主に、シーソー部30A〜30D、受力部40、固定電極対50A〜50D、ダイアフラム60を備えている。実施の形態1と同様に、第1のシリコン層11の中央にダイアフラム60が形成されている。このダイアフラム60に対し力が印加される。
【0098】
また、受力部40は、絶縁膜12を介して、ダイアフラム60(第1のシリコン層11)に接合されている。これにより、ダイアフラム60に印加された力が、受力部40に伝達される。
【0099】
その他については、実施の形態2と同様である。また、ダイアフラム60に対し力を印加するため、受力部及びシーソー部側の主面を封止部20により封止してもよい。本実施の形態の動作原理は実施の形態1及び2と同様である。
【0100】
以上のように、本実施の形態では、実施の形態2の構成の構成に対し、第1のシリコン層にダイアフラムを形成した。これにより、実施の形態2の効果に加えて、シーソー部作製面とは反対の面からの力印加が可能となる。したがって、力印加物がシーソー部など機械構造に接触する恐れが無く、また、封止するように実装しても、力を伝達することができる。
【0101】
(実施の形態5)
以下、図面を参照して実施の形態5について説明する。本実施の形態は、実施の形態2及び4の力センサに対し、突起を形成した例である。
【0102】
図10は、本実施の形態に係る力センサ100の側面断面図の一例である。
図10は、実施の形態2の
図6Bの力センサに対し突起を追加した例である。
図10に示すように、本実施の形態では、受力部40の力印加側(Z軸の正側)に、突起61を形成する。突起61は、上面視で、受力部40と同じ略正方形状である。突起61の厚さ(高さ)は、第2のシリコン層13よりも厚く、突出している。突起61をより厚く形成することにより、力の検出感度を向上することができる。
【0103】
図11は、本実施の形態に係る力センサ100の側面断面図の他の例である。
図11は、実施の形態4の
図9Bの力センサに対し突起を追加した例である。
図11に示すように、実施の形態1と同様に、ダイアフラム60の中央の力印加側(Z軸の負側)に突起61を形成する。突起61は、下面視で、受力部40と同じ略正方形状であり。突起61の厚さ(高さ)は、第1のシリコン層11と略同じである。ダイアフラム60よりも厚く突出しているため、力の検出感度が向上する。突起61をより厚くして、さらに、力の検出感度を向上させてもよい。
【0104】
以上のように、本実施の形態では、実施の形態2及び4の構成に対し、受力部に接続する突起を形成した。これにより、実施の形態2及び4の効果に加えて、受力部の面の高さを稼ぐことができるため、力Fx及び力Fyをうけたとき、モーメントが大きくなり、受力部の傾きが拡大することから、力の感度が向上する。また、突起により、力印加部が限定できるため、精度良く力を検出することができる。
【0105】
(実施の形態6)
以下、図面を参照して実施の形態6について説明する。本実施の形態は、実施の形態5の
図11の力センサに対し、さらに封止部20を備えた例である。
図12Aは、本実施の形態に係る力センサ100の封止基板を省略した下面透視図である。
図12Bは、
図12Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0106】
図12A及び
図12Bに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、実施の形態1と同様に、可動支持部10と封止部20とを備え、可動支持部10と封止部20とが接合部22により封止接合されている。
【0107】
可動支持部10は、主に、シーソー部30A〜30D、受力部40、ダイアフラム60、突起61を備えている。封止部20は、主に、封止基板21、固定電極対50A〜50Dを備えている。実施の形態1と同様に、封止基板21の主面上に、固定電極51A〜51D、52A〜52Dを含む固定電極対50A〜50Dが形成されている。固定電極51A〜51D、52A〜52Dは、上面視で略長方形状である。また、実施の形態1と同様に、第2のシリコン層13の周辺部13aには、貫通電極14が形成されている。
【0108】
以上のように、本実施の形態では、実施の形態4及び5の構成に対し、封止部20を備え、封止部側に固定電極を形成した。これにより、実施の形態4及び5の効果に加えて、力センサを封止することができ、シーソー部などへのゴミの混入や破損を防ぐことができる。固定電極を封止基板上に作製することで、支持基板の変形による固定電極の変形を防ぐことができ、精度よく力を検出することができる。固定電極が封止基板上に作製されるため、支持基板側のダイアフラムを広く作製できる。
【0109】
(実施の形態7)
以下、図面を参照して実施の形態7について説明する。本実施の形態は、実施の形態6の力センサに対し、受力部にストッパーを形成した例である。
図13Aは、本実施の形態に係る力センサ100の封止基板を省略した下面透視図であり、
図13Bは、その拡大図である。
図13Cは、
図13Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0110】
図13A〜
図13Cに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、実施の形態1と同様に、可動支持部10と封止部20とを備え、可動支持部10と封止部20とが接合部22により封止接合されている。可動支持部10は、主に、シーソー部30A〜30D、受力部40、ダイアフラム60、突起61を備えている。
【0111】
受力部40は、実施の形態1と同様に、受力板41、ストッパー42を有している。ストッパー42は、受力板41の周囲の角部(四隅)のそれぞれに、受力板41を拡張するように、略L字型に形成されている。ストッパー42は、受力板41の周囲に、耳状もしくは羽状に伸びているとも言える。ストッパー42は、受力部40の位置が傾いて変位した場合に、封止部20側に接触し、シーソー部30の変位を停止させる。
【0112】
また、
図13Cの代わりに、
図13Dのように、封止基板21の主面上の受力部40と対向する位置にダミー電極53を形成してもよい。ダミー電極53は、ストッパー42を含む受力部40と略同じサイズであり、上面視で略正方形状に形成されている。ダミー電極53は、受力部40と同じ電位である。ダミー電極53の厚さは、固定電極51及び52と略同じ厚さである。
【0113】
力Fx(または力Fy)が印加された場合、シーソー部30の先端が固定電極51及び52に接触し、電気的にショートする恐れがある。そこで、本実施の形態では、
図14に示すように、受力部40にストッパー42を形成しているため、過荷重印加時、シーソー部30の先端が固定電極51及び52に接触する前に、ストッパー42が封止基板21(絶縁体)もしくはダミー電極53(同電位電極)に接触する。これにより、シーソー部30が固定電極51及び52に接触しないため、電気的なショートを防ぐことができる。ストッパー42の封止部側の接触相手は、電位差がない、もしくは絶縁体が望ましい。これによりストッパー部のショートも防ぐことができる。
【0114】
また、
図13Bの拡大図に示すように、シーソー部30の可動電極31は、内側端部が回転軸35に向かって窪んだ凹部を有し、凹部の窪みに、ヒンジビーム33が連結されている。可動電極31は、回転軸35を中心に対称構造となっており、外側にも同じ凹部を有している。さらに、固定電極51,52も可動電極31と同じ形状であり、内側と外側に凹部を有している。これにより、外側の固定電極51と内側の固定電極52で容量が揃うため、同じ感度となり、差動検出の精度が向上する。
【0115】
以上のように、本実施の形態では、実施の形態6の構成に加えて、受力部にストッパーを形成した。これにより、シーソー部と固定電極の接触が抑えられるため、電気的なショートを防ぐことができる。
【0116】
また、シーソー部30の可動電極が回転軸に向かって窪んでおり、この窪みにヒンジビームが接続されている。シーソー部の回転軸の近くにヒンジビームを接続することで、シーソー部の回転角度が大きくなるため、検出感度が向上する。
【0117】
また、ヒンジビームを長く形成できるため、ヒンジビームの回転剛性が低くなり、受力部が回転しやすい。
図5Aに示したように、力Fyを受けた際に、X軸方向に配置されたヒンジビームがX軸回りに捩れるため、受力部が回転しやすく感度が向上する。また同時にX軸方向に配置されたシーソー部は変位しないため、クロストークを抑えることができる。
【0118】
また、ヒンジビームを長くすることにより、ヒンジビームが変形しやすくなる。したがって、ヒンジビームが変形する際の応力集中を防ぐことができ、ヒンジビームの破壊を防ぐことができる。
【0119】
(実施の形態8)
以下、図面を参照して実施の形態8について説明する。本実施の形態は、実施の形態2に対し、2個のシーソー部で2軸の力を検出する力センサを構成した例である。2軸の力センサでは、例えば、X方向、Z方向の力を検出可能である。
図15Aは、本実施の形態に係る力センサ100の上面図である。
図15Bは、
図15Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0120】
図15A及び
図15Bに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、実施の形態2と同様に、可動支持部10のみを備えている。可動支持部10は、主に、シーソー部30A及び30B、受力部40、固定電極対50A及び50Bを備えている。可動支持部10は、第1のシリコン層11、絶縁膜12、第2のシリコン層13を備えている。第2のシリコン層13では、中央に受力部40が形成され、受力部40の周囲に2つのシーソー部30A及び30Bが形成されている。この例では、X方向の両側にシーソー部30A及び30Bが形成されている。
【0121】
受力部40とシーソー部30A及び30Bは、それぞれヒンジビーム33A及び33Bにより連結されている。実施の形態2と同様に、受力部40は、受力板41のみで構成され、ヒンジビーム33A及び33Bによりシーソー部30A及び30Bに支持されている。
【0122】
シーソー部30A及び30Bの可動電極31A及び31Bは、トーションビーム32A及び32Bにより固定部15に固定されている。
図15Aの例では、固定部15は、トーションビーム32ごと(シーソー部ごと)に形成されている。なお、
図16のように固定部15を、トーションビーム32Aから32Bまで連続して1つに形成してもよい。
【0123】
また、第1のシリコン層11の主面上に、固定電極対50A及び50Bが形成されている。固定電極対50A及び50Bは、それぞれ固定電極51A及び52A、51B及び52Bを含み、それぞれシーソー部30A及び30Bの可動電極31A及び31Bに対応する位置に配置されている。
【0124】
本実施の形態の動作原理は実施の形態1及び2と同様である。実施の形態1及び2では、3軸の力を検出したのに対し、本実施の形態では、Z方向とX方向の2軸の力を検出可能である。
【0125】
例えば、力Fzが、Z軸の負方向に印加されると、受力部40の変位に応じて、シーソー部30A及び30Bの内側端部がZ軸の負方向に変位し、シーソー部30A及び30Bの外側端部がZ軸の正方向に変位する。すなわち、Z方向に力Fzが印加された場合(Fzモード)、シーソー部30A及びび30Bは、逆方向に回転する。
【0126】
また、X軸の正方向に力Fxが印加されると、受力部40の変位に応じて、シーソー部30Aの内側端部がZ軸の正方向に変位し、シーソー部30Bの内側端部がZ軸の負方向に変位する。すなわち、X方向に力Fxが印加された場合(Fxモード)、シーソー部30A及び30Bは、同じ方向に回転する。
【0127】
このため、本実施の形態では、次の(式6)のようにマトリックス演算を行い、各方向の力を求める。
【数6】
【0128】
(式6)のように、2つの容量の差動(容量差)に対し、変換マトリックスを乗算することで、2つの方向の力を得る。力Fzについても、力Fxについても、2つのシーソー部で検出するため、同じ感度であることから、どちらの力も同じ係数となっている。
【0129】
以上のように、少なくとも2個のシーソー部を備えた場合でも、2軸の力を検出でき、全軸で差動検知することができるため、精度良く力を検出することができる。また、櫛歯のような微細構造が不要であるため、壊れにくい構造となっている。さらに、受力部により、力が作用する箇所を特定でき、検出精度が向上する。
【0130】
(実施の形態9)
以下、図面を参照して実施の形態9について説明する。本実施の形態は、実施の形態8に対し、光学方式で可動部の変位を検出する例である。
図17Aは、本実施の形態に係る力センサ100の上面図である。
図17Bは、
図17Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0131】
図17A及び
図17Bに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、実施の形態8と同様に、可動支持部10のみを備えている。可動支持部10は、主に、シーソー部30A及び30B、受力部40を備えており、固定電極を備えていない。
【0132】
本実施の形態では、固定電極の代わりに光学式距離測定装置70a〜70dを備えている。
図17Bの例では、シーソー部30A及び30Bの上方に光学式距離測定装置70a〜70dを配置している。光学式距離測定装置70a〜70dは、固定電極と同様に、シーソー部30ごとに2個ずつ配置されている。光学式距離測定装置70a〜70dは、レーザー変位計や干渉測定計等であり、シーソー部30へ光を照射し、反射光を受光することで、シーソー部30までの距離Lを測定する。
【0133】
また、光学式で力を検出する他の例として、
図17Cのように構成してもよい。
図17Cでは、第1のシリコン層11の主面上に、固定電極の代わりに、発光ダイオード71a及び71b、フォトダイオード72a〜72dが配置されている。発光ダイオード71a及び71bは、シーソー部30A及び30Bの回転軸35A及び35Bに対向する位置に配置されている。フォトダイオード72a〜72dは、シーソー部30A及び30Bの両端部に対向する位置に配置されている。
【0134】
シーソー部30Aの両端部までの距離LをA
1、A
2とし、シーソー部30Bの両端部までの距離LをB
1、B
2とする。また、距離の変位がΔLとする。フォトダイオード72a〜72d(光学式距離測定装置70a〜70d)の出力は、ΔL=0の時にA
1=A
2、B
1=B
2である。フォトダイオード72a〜72dは、距離L+ΔLの時に出力減少し、距離L−ΔLの時に出力増加する光反射位置に配置されている。
【0135】
本実施の形態は、静電容量の代わりに距離を測定する例であり、動作原理は他の実施の形態と同様である。すなわち、力の印加により、シーソー部30が回転変位するため、シーソー部30と光学式距離測定装置70(フォトダイオード72)との距離が変化する。
【0136】
図17Bの例では、光学式距離測定装置70aは、シーソー部30Aから反射光の戻ってくる時間が減少するため、距離(L−ΔL)を検出する。光学式距離測定装置70bは、シーソー部30Aから反射光の戻ってくる時間が増加するため、距離(L+ΔL)を検出する。光学式距離測定装置70cは、シーソー部30Bから反射光の戻ってくる時間が増加するため、距離(L+ΔL)を検出する。光学式距離測定装置70dは、シーソー部30Bから反射光の戻ってくる時間が減少するため、距離(L−ΔL)を検出する。
【0137】
また、
図17Cの例では、フォトダイオード72aは、シーソー部30Aからの反射光量が減少するため、距離(L+ΔL)を検出する。フォトダイオード72bは、シーソー部30Aからの反射光量が増加するため、距離(L−ΔL)を検出する。フォトダイオード72cは、シーソー部30Bからの反射光量が増加するため、距離(L−ΔL)を検出する。フォトダイオード72dは、シーソー部30Bからの反射光量が減少するため、距離(L+ΔL)を検出する。
【0138】
このため、静電容量と同様に、距離の差動2ΔL=(L+ΔL)−(L−ΔL)を演算し、力を検出する。光学式においても、2軸の場合(式6)のマトリックス演算を行い、3軸の場合(式4)や(式5)のマトリックス演算を行うことで、各軸の力を検出することができる。
【0139】
以上のように、静電容量方式の代わりに光学方式の力センサとして構成することも可能である。この場合でも、実施の形態2や8等と同様に、複数軸で差動検知することができるため、精度良く力を検出することができる。また、シーソー部により、壊れにくい構造とすることができ、受力部により、検出精度を向上することができる。なお、光学式の他、磁気方式によりシーソー部の変位を検出してもよい。
【0140】
(実施の形態10)
以下、図面を参照して実施の形態10について説明する。本実施の形態は、実施の形態2の力センサに対し、受力部を周辺部に配置した例である。
図18Aは、本実施の形態に係る力センサ100の上面図である。
図18Bは、
図18Aにおける力センサ100のA−B側面断面図である。
【0141】
図18A及び
図18Bに示すように、本実施の形態に係る力センサ100は、可動支持部10のみを備えている。可動支持部10は、主に、シーソー部30A〜30D、受力部40、固定電極対50A〜50Dを備えている。
【0142】
可動支持部10は、第1のシリコン層11、絶縁膜12、第2のシリコン層13を備えている。第2のシリコン層13では、実施の形態2と同様に、4つのシーソー部30A〜30Dが形成されている。シーソー部30A〜30Dに囲まれた中央部には、受力部が形成されていない。
【0143】
シーソー部30A〜30Dの可動電極31A〜31Dは、トーションビーム32A〜32Dにより固定部15に固定されている。本実施の形態では、固定部15は、2つのトーションビーム32(シーソー部)と連結するように形成されている。固定部15は、上面視で略正方形状であり、正方形の第1の辺の中央部にトーションビーム32が連結され、第1の辺に接する第2の辺の中央部に他のトーションビーム32が連結されている。
【0144】
第1のシリコン層11の主面上に、固定電極対50A〜50Dが形成されている。固定電極対50A〜50Dは、それぞれ固定電極51A及び52A、51B及び52B、51C及び52C、51D及び52Dを含み、それぞれシーソー部30A〜30Dの可動電極31A〜31Dに対応する位置に配置されている。
【0145】
本実施の形態では、受力部40は、可動支持部10の周辺部、すなわち、シーソー部30A〜30Dの外側に、シーソー部30A〜30Dを囲むように形成されている。受力部40は、受力板41で構成されており、4つの辺部からなる四角形状に形成されている。受力部40の各辺部とシーソー部30A〜30Dが、それぞれヒンジビーム33A〜33Dにより連結されている。ヒンジビーム33A〜33Dは、受力部40の各辺部の略中央部に連結される。受力部40は、第1のシリコン層11に接合されていないため、ヒンジビーム33A〜33Dによりシーソー部30A〜30Dに支持されている。
【0146】
本実施の形態の動作原理は実施の形態1及び2と同様である。例えば、力FzがZ軸の負方向に印加されると、受力部40の変位に応じて、シーソー部30A〜30Dの外側端部がZ軸の負方向に変位し、シーソー部30A〜30Dの内側端部がZ軸の正方向に変位する。実施の形態1及び2とは、シーソー部30A〜30Dの回転方向は逆となるものの、Z方向に力Fzが印加された場合(Fzモード)、シーソー部30A及び30C、シーソー部30B及び30Dは、互いに逆方向に回転する。
【0147】
また、X軸の正方向に力Fxが印加されると、ヒンジビーム33D及び33Bが捩れることで、効果的に受力部40がヒンジビーム33D及び33Bを軸として回転変位する。この受力部40の変位に応じて、シーソー部30Aの外側端部がZ軸の正方向に変位し、シーソー部30Cの外側の端部がZ軸の負方向に変位する。この際、シーソー部30Bと30Dは実施の形態1及び2と同様に変位しない。実施の形態1及び2とは、シーソー部30A及び30Cの回転方向は逆となるものの、X方向に力Fxが印加された場合(Fxモード)、シーソー部30A及び30Cは、同じ方向に回転する。
【0148】
さらに、Y軸の正方向に力Fyが印加されると、ヒンジビーム33A及び33Cが捩れることで、効果的に受力部40がヒンジビーム33A及び33Cを軸として回転変位する。この受力部40の変位に応じて、シーソー部30Bの外側端部がZ軸の正方向に変位し、シーソー部30Dの外側端部がZ軸の負方向に変位する。この際、シーソー部30Aと30Cは実施の形態1及び2と同様に変位しない。実施の形態1及び2とは、シーソー部30B及び30Dの回転方向は逆となるものの、Y方向に力Fyが印加された場合(Fxモード)、シーソー部30B及び30Dは、同じ方向に回転する。
【0149】
本実施の形態では、実施の形態1及び2と比べて、力の印加に対してシーソー部30の回転方向が逆となるため、(式1)のマトリックス演算において、符号を変更することで、実施の形態1及び2と同様に、各方向の力が得られる。
【0150】
以上のように、実施の形態2の構成に対し、受力部を周辺部に形成するようにした。この場合でも、実施の形態2と同様に、3軸の力を検出でき、全軸で差動検知することができるため、精度良く力を検出することができる。また、櫛歯のような微細構造が不要であるため、壊れにくい構造となっている。
【0151】
(実施の形態11)
以下、図面を参照して実施の形態11について説明する。本実施の形態は、実施の形態5及び6の構成を、力学量の一つである加速度を検出する加速度センサに適用した例である。
【0152】
図19Aは、本実施の形態に係る加速度センサ101の上面図である。
図19Bは、
図19Aにおける加速度センサ101のA−B側面断面図である。
図19Bは、実施の形態5の
図10の構成において、突起61の代わりに質量体62を備えた例である。
【0153】
図19A及び
図19Bに示すように、受力部40の力印加側(Z軸の正側)に、質量体62を形成する。質量体62は、上面視で、受力部40と同じ略正方形状である。質量体62の厚さ(高さ)は、第2のシリコン層13よりも厚く、突出している。質量体62は、突起よりも質量が重い部材であり、例えば、金(Au)等で構成される。
【0155】
図20A及び
図20Bに示すように、ダイアフラム60の中央の力印加側(Z軸の正側)に、質量体62を形成する。質量体62は、上面視で、受力部40と同じ略正方形状であり。質量体62の厚さ(高さ)は、第1のシリコン層11と略同じである。
【0156】
このように、力センサの突起を質量体(大きな質量体)とすることで、慣性力を受力部で受けることができ、加速度を検出する加速度センサを構成することができる。加速度Azを受けたとき、質量体はZ方向に並進する。加速度Ax(Ay)を受けたとき、慣性力により質量体に力が作用するため、この力を、他の実施の形態と同様の原理で検知する。これにより、3軸の加速度検知が可能である。
【0157】
したがって、実施の形態5及び6と同様に、3軸の加速度を検出でき、全軸で差動検知することができるため、精度良く加速度を検出することができる。また、櫛歯のような微細構造が不要であるため、壊れにくい構造となっている。
【0158】
(実施の形態12)
以下、図面を参照して実施の形態12について説明する。本実施の形態では、実施の形態1の力センサを用いて力を検出する力検出回路の例について説明する。
【0159】
図21、
図22A及び
図22Bは、力検出回路及び力センサの接続の一例であり、チャージアンプ及び差分回路(差動回路)を用いた例である。この力検出回路は、実施の形態1の力センサ100に接続され、差動演算回路201〜204、マトリックス演算回路300を備える。力センサシステムが、力センサ100、差動演算回路201〜204、マトリックス演算回路300を備えるとも言える。この例は、電極間の容量変化を電圧出力として取出し、高精度に力を検出することができる。
【0160】
なお、ここでは、シーソー部30Aの容量をC
A1、C
A2とし、シーソー部30Bの容量をC
B1、C
B2とし、シーソー部30Cの容量をC
C1、C
C2とし、シーソー部30Dの容量をC
D1、C
D2とする。
【0161】
差動演算回路201〜204は、シーソー部30(固定電極対50)ごとに設けられる。差動演算回路201は、容量C
A1及びC
A2に接続され、容量C
A1及びC
A2の容量の差を示す差動電圧V
Aを出力する。差動演算回路202は、容量C
B1及びC
B2に接続され、容量C
B1及びC
B2の容量の差を示す差動電圧V
Bを出力する。差動演算回路203は、容量C
C1及びC
C2に接続され、容量C
C1及びC
C2の容量の差を示す差動電圧V
Cを出力する。差動演算回路204は、容量C
D1及びC
D2に接続され、容量C
D1及びC
D2の容量の差を示す差動電圧V
Dを出力する。
【0162】
差動演算回路201〜204は、同じ回路構成であるため、差動演算回路201の構成についてのみ説明する。差動演算回路201は、チャージアンプ210a、210b、差動アンプ220を備える。チャージアンプ210aは、容量C
A1の容量を電圧V
A1に変換し出力する。チャージアンプ210aは、オペアンプOPA
A1、抵抗211a、コンデンサ212aを備えている。
【0163】
シーソー部30Aの可動電極31Aには、接合部22の金属、第2のシリコン層13を介して、交流電源230が接続され、固定電極51Aは、オペアンプOPA
A1の反転入力端子に接続される。すなわち、シーソー部30Aの可動電極31Aと固定電極51A間の容量C
A1は、一端が交流電源230に接続され、他端がオペアンプOPA
A1の反転入力端子に接続される。オペアンプOPA
A1の非反転入力端子(+)はGNDに接続されている。抵抗211a及びコンデンサ212aは、オペアンプOPA
A1の反転入力端子と出力端子の間に並列に接続される。
【0164】
オペアンプOPA
A1の入力電圧V
0、コンデンサ212aの容量をC
fとすると、オペアンプOPA
A1の出力電圧V
A1は、次の(式7)となる。すなわち、容量C
A1の容量に応じた電圧V
A1が出力される。
【数7】
【0165】
チャージアンプ210bは、容量C
A2の容量を電圧V
A2に変換し出力する。チャージアンプ210bは、オペアンプOPA
A2、抵抗211b、コンデンサ212bを備えている。
【0166】
シーソー部30Aの可動電極31Aには、接合部22の金属、第2のシリコン層13を介して、交流電源230が接続され、固定電極52Aは、オペアンプOPA
A2の反転入力端子に接続される。すなわち、シーソー部30Aの可動電極31Aと固定電極52A間の容量C
A2は、一端が交流電源230に接続され、他端がオペアンプOPA
A2の反転入力端子に接続される。オペアンプOPA
A2の非反転入力端子(+)はGNDに接続されている。抵抗211b及びコンデンサ212bは、オペアンプOPA
A2の反転入力端子と出力端子の間に並列に接続される。
【0167】
差動アンプ220は、チャージアンプ210a、210bから出力された電圧V
A1、V
A2の差動電圧V
Aを出力する。差動アンプ220は、オペアンプ221、抵抗222〜225を備える。
【0168】
抵抗222は、オペアンプOPA
A1の出力端子とオペアンプ221の反転入力端子の間に接続される。抵抗223は、オペアンプOPA
A2の出力端子とオペアンプ221の非反転入力端子の間に接続される。さらに、オペアンプ221の非反転入力端子は、抵抗225を介してGNDに接続される。抵抗224は、オペアンプ221の反転入力端子と出力端子の間に接続される。
【0169】
オペアンプ221の出力電圧V
Aは、次の式(8)となる。すなわち、抵抗R1及びR2の比に応じて、電圧V
A1から電圧V
A2を差し引いた差動電圧が出力される。
【数8】
【0170】
マトリックス演算回路300は、ロジック回路等で構成され、差動演算回路201〜204が生成した差動電圧V
A〜V
Dを用いて、マトリックス演算を行う。マトリックス演算回路300は、次の(式9)の演算を行う。すなわち、差動電圧V
A〜V
Dに、(式9)の変換マトリックスを乗算し、Fx、Fy、Fzを求める。
【数9】
【0171】
図23、
図24A及び
図24Bは、力検出回路及び力センサの接続の一例であり、スイッチトキャパシタ方式の例である。この力検出回路は、実施の形態1の力センサ100に接続され、差動演算回路401〜404、マトリックス演算回路300を備える。力センサシステムが、力センサ100、差動演算回路401〜404、マトリックス演算回路300を備えるとも言える。この例は、検出回路をデジタル信号処理回路で構成できるためIC化に向いており、封止基板21のLSIに内蔵する場合に適している。
【0172】
差動演算回路401〜404は、シーソー部30(固定電極対50)ごとに設けられる。差動演算回路401は、容量C
A1及びC
A2に接続され、容量C
A1及びC
A2の容量の差を示す差動電圧V
Aを出力する。差動演算回路402は、容量C
B1及びC
B2に接続され、容量C
B1及びC
B2の容量の差を示す差動電圧V
Bを出力する。差動演算回路403は、容量C
C1及びC
C2に接続され、容量C
C1及びC
C2の容量の差を示す差動電圧V
Cを出力する。差動演算回路404は、容量C
D1及びC
D2に接続され、容量C
D1及びC
D2の容量の差を示す差動電圧V
Dを出力する。
【0173】
差動演算回路401〜404は、同じ回路構成であるため、差動演算回路401の構成についてのみ説明する。差動演算回路401は、スイッチング回路410、チャージアンプ420を備える。スイッチング回路410は、容量C
A1及びC
A2の充電/放電をスイッチングし、容量C
A1及びC
A2の容量差を出力する。
【0174】
スイッチング回路410は、スイッチ411〜416を備える。スイッチ411及び412は、電源Vdと電源−Vdの間に直列に接続され、スイッチ413及び414も、電源Vdと電源−Vdの間に直列に接続されている。シーソー部30Aの可動電極31Aには、接合部22の金属、第2のシリコン層13を介して、GNDが接続され、固定電極51Aは、スイッチ411及び412の間のノード410aに接続される。すなわち、シーソー部30Aの可動電極31と固定電極51A間の容量C
A1は、一端がGNDに接続され、他端がノード410aに接続される。
【0175】
シーソー部30Aの可動電極31Aには、接合部22の金属、第2のシリコン層13を介して、GNDが接続され、固定電極52Aは、スイッチ413及び414の間のノード410bに接続される。すなわち、シーソー部30Aの可動電極31と固定電極51B間の容量C
A2は、一端がGNDに接続され、他端がノード410bに接続される。第1のシリコン層11及び第2のシリコン層13は貫通電極14によって同電位、すなわちGNDになっているため、外部からの外乱に影響されにくい。このためノイズが小さいセンサとすることができる。スイッチ415は、ノード410aとノード410cの間に接続され、スイッチ416は、ノード410bとノード410cの間に接続される。
【0176】
例えば、スイッチ411をオン、スイッチ412をオフして、電源Vdを容量C
A1に印加して充電する。スイッチ413をオフ、スイッチ414をオンして、電源−Vdを容量C
A2に印加して充電する。容量C
A1及びC
A2が充電された状態で、スイッチ415及び416をオンすると、容量C
A1から容量C
A2を差し引いた容量に相当するチャージがノード410cに出力される。
【0177】
チャージアンプ420は、スイッチング回路410が生成した容量C
A1及びC
A2の容量差に応じたチャージを入力し、差動電圧V
Aを出力する。チャージアンプ420は、オペアンプ421、抵抗422、コンデンサ423、スイッチ424を備える。抵抗422は、ノード410cとオペアンプ421の反転入力端子に接続される。コンデンサ423及びスイッチ424は、オペアンプ421の反転入力端子と出力端子の間に接続されている。オペアンプ421の非反転入力端子はGNDに接続される。
【0178】
マトリックス演算回路300は、
図21と同様に、(式9)により、差動演算回路401〜404が生成した差動電圧V
A〜V
Dを用いて、マトリックス演算を行い、各方向の力を求める。
【0179】
以上のように、実施の形態1やその他の実施の形態において、本実施の形態のような検出回路を用いることで、力センサの差動検出結果に基づき、マトリックス演算を行い、精度よく力を検出することができる。
【0180】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。