特許第5714658号(P5714658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714658
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   B66B5/02 L
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-142124(P2013-142124)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-13735(P2015-13735A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2013年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 道臣
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−086889(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/033390(WO,A1)
【文献】 特開2008−050149(JP,A)
【文献】 特開昭59−149284(JP,A)
【文献】 特開2002−154759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力用電源からの電力と、建物の電気設備を作動させる電力を蓄電可能である建物側蓄電装置からの電力とによって運転可能であるエレベータと、前記動力用電源の健全時に前記エレベータを定格速度で運転する通常運転と、前記動力用電源の停電時に前記建物側蓄電装置からの電力によって前記エレベータを定格速度で運転する停電時運転とを切り替えて実行可能である制御装置とを備え、前記制御装置は、前記停電時運転として、前記動力用電源が停電した後、当該動力用電源の停電時の前記建物側蓄電装置の残存蓄電量に基づいた停電時運転可能最低時間経過前の期間に前記通常運転と同等の運転を行う停電時制限無し運転と、前記停電時運転可能最低時間経過後でかつ前記建物側蓄電装置の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に前記停電時制限無し運転と比較して前記エレベータの停止可能階床を制限して運転する停電時制限有り運転とを切り替えて実行可能であり、さらに、前記動力用電源の停電時に、前記建物側蓄電装置とは別に設けられ前記エレベータを作動させる電力を蓄電可能であるエレベータ側蓄電装置からの電力によって当該エレベータを定格速度より低速で運転する停電時継続運転を実行可能であり、前記停電時継続運転として、前記建物側蓄電装置の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった後、当該建物側蓄電装置の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった時の前記エレベータ側蓄電装置の残存蓄電量に基づいた停電時継続運転可能最低時間経過前の期間に停止可能階床を制限しないで運転する停電時継続制限無し運転と、前記停電時継続運転可能最低時間経過後でかつ前記エレベータ側蓄電装置の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に前記停電時継続制限無し運転と比較して前記エレベータの停止可能階床を制限して運転する停電時継続制限有り運転とを切り替えて実行可能であることを特徴とする、エレベータシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記動力用電源の停電時の前記建物側蓄電装置の残存蓄電量と、当該動力用電源の停電後に予測される前記建物の電気設備での消費電力量と、前記エレベータの前記停電時制限無し運転での消費電力量とに基づいて前記停電時運転可能最低時間を算出する、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記停電時制限有り運転では、前記停止可能階床以外へのカゴ呼び、前記停止可能階床以外での乗場呼び、及び、前記停止可能階床での所定方向以外の乗場呼びを無効とする、請求項1又は請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記動力用電源の停電後から前記停電時運転が作動するまでの期間に前記停電時継続運転を実行可能である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータシステムは、昇降路内を乗りかご(カゴ)が移動することにより、乗りかごを任意の階床に移動させる。このようなエレベータシステムは、停電時にバッテリの電力を用いて、乗りかごを運転する制御を実行する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−29669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、例えば、停電時の運転の点でさらなる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のエレベータシステムは、エレベータと、制御装置とを備える。エレベータは、動力用電源からの電力と、建物の電気設備を作動させる電力を蓄電可能である建物側蓄電装置からの電力とによって運転可能である。制御装置は、前記動力用電源の健全時に前記エレベータを定格速度で運転する通常運転と、前記動力用電源の停電時に前記建物側蓄電装置からの電力によって前記エレベータを定格速度で運転する停電時運転とを切り替えて実行可能である。前記制御装置は、前記停電時運転として、停電時制限無し運転と停電時制限有り運転とを切り替えて実行可能である。停電時制限無し運転は、前記動力用電源が停電した後、当該動力用電源の停電時の前記建物側蓄電装置の残存蓄電量に基づいた停電時運転可能最低時間経過前の期間に前記通常運転と同等の運転を行うものである。停電時制限有り運転は、前記停電時運転可能最低時間経過後でかつ前記建物側蓄電装置の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に前記停電時制限無し運転と比較して前記エレベータの停止可能階床を制限して運転するものである。さらに、前記制御装置は、前記動力用電源の停電時に、前記建物側蓄電装置とは別に設けられ前記エレベータを作動させる電力を蓄電可能であるエレベータ側蓄電装置からの電力によって当該エレベータを定格速度より低速で運転する停電時継続運転を実行可能である。前記制御装置は、前記停電時継続運転として、前記建物側蓄電装置の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった後、当該建物側蓄電装置の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった時の前記エレベータ側蓄電装置の残存蓄電量に基づいた停電時継続運転可能最低時間経過前の期間に停止可能階床を制限しないで運転する停電時継続制限無し運転と、前記停電時継続運転可能最低時間経過後でかつ前記エレベータ側蓄電装置の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に前記停電時継続制限無し運転と比較して前記エレベータの停止可能階床を制限して運転する停電時継続制限有り運転とを切り替えて実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係るエレベータシステムの通常運転、停電時運転、及び、停電時継続運転の一例を説明する線図である。
図3図3は、実施形態に係るエレベータシステムにおける制御の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示すブロック図である。図2は、実施形態に係るエレベータシステムの通常運転、停電時運転、及び、停電時継続運転の一例を説明する線図である。図3は、実施形態に係るエレベータシステムにおける制御の一例を説明するフローチャートである。
【0008】
本実施形態のエレベータシステム1Aは、図1に示すように、エレベータ1と、制御装置10とを備え、典型的には、停電状態においても種々の蓄電装置を用いて、サービスを継続することができるエレベータ電源バックアップシステムである。本実施形態のエレベータシステム1Aは、停電状態において、当該エレベータシステム1Aが適用される建物100に設けられる建物側蓄電装置としての建物側バッテリ102を用いて、停電時運転を実行可能である。またさらに、このエレベータシステム1Aは、停電状態において、停電時継続運転装置を構成するエレベータ側蓄電装置としてのエレベータ側バッテリ12を用いて、停電時継続運転を実行可能である。
【0009】
具体的には、エレベータ1は、動力用電源50からの電力と、建物100の電気設備101を作動させる電力を蓄電可能である建物側バッテリ102からの電力とによって運転可能である。また、エレベータ1は、動力用電源50の停電時には、建物側バッテリ102、又は、エレベータ側バッテリ12からの電力によって運転可能である。この場合、エレベータ1は、例えば、建物側バッテリ102の電力を優先して利用して運転を行うようにすることができる。
【0010】
エレベータ1は、カゴ2、カウンタウェイト3、メインロープ4、巻上機5等を含んで構成される。エレベータ1は、カゴ2とカウンタウェイト3とをメインロープ4で連結したいわゆるつるべ式のエレベータである。エレベータ1は、乗場6が設けられる。
【0011】
カゴ2は、建物100に設けられた昇降路7を昇降可能である。カゴ2は、カゴ呼び登録装置8、荷重検出器2a等を含んで構成される。カゴ呼び登録装置8は、カゴ2の内部に設けられる。カゴ呼び登録装置8は、利用者による操作入力に応じていわゆるカゴ呼び登録等を行う。荷重検出器2aは、カゴ2内の積載荷重を検出する。
【0012】
カウンタウェイト3は、カゴ2に対するつり合おもりである。
【0013】
メインロープ4は、昇降路7の上部(あるいは機械室等)に設けられた巻上機5のメインシーブ5aやそらせシーブ5b等に掛けられる。メインロープ4は、一端にカゴ2が接続され、他端にカウンタウェイト3が接続される。
【0014】
巻上機5は、例えば、動力を発生させる電動機(モータ)5cを有する。電動機5cは、動力用電源50、建物側バッテリ102、エレベータ側バッテリ12等から電力が供給される。巻上機5は、電動機5cが駆動することで、この電動機5cに連結されたメインシーブ5aが回転駆動する。そして、巻上機5は、メインシーブ5aとメインロープ4との間に生じる摩擦力を利用してメインロープ4を電動で巻き上げる。また、電動機5cは、回生発電も可能である。つまり、この電動機5cは、いわゆる回転電機であり、供給された電力を機械的動力に変換する電動機としての機能(力行機能)と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。
【0015】
乗場6は、建物100において、カゴ2が着床可能な各エレベータ停止階床に設けられる。各乗場6は、乗場呼び登録装置9等を含んで構成される。乗場呼び登録装置9は、利用者による操作入力に応じていわゆる乗場呼び登録等を行う。
【0016】
制御装置10は、運転制御装置11、エレベータ側バッテリ12、電源制御装置13等を含んで構成される。
【0017】
運転制御装置11は、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU(中央演算処理装置)、ROM、RAM、バックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を備えている。ROM(Read Only Memory)は、所定の制御プログラム等を予め記憶している。RAM(Random Access Memory)は、CPUの演算結果を一時記憶する。バックアップRAMは、予め用意されたマップデータ、対応するエレベータ1の仕様等の情報を記憶する。運転制御装置11は、種々のセンサ、検出器、荷重検出器2a、カゴ呼び登録装置8、乗場呼び登録装置9、電源制御装置13等のエレベータ1の各部と電気的に接続される。運転制御装置11は、エレベータ1の各部の動作を統括的に制御する。運転制御装置11は、例えば、カゴ呼び登録装置8、乗場呼び登録装置9等への利用者からの操作入力に応じて、巻上機5の駆動を制御し、カゴ2を昇降路7内で昇降させる。これにより、エレベータ1は、カゴ2を呼び登録に応じて指定された目的階に移動させることができる。
【0018】
ここで、本実施形態のエレベータ1は、上述したように、動力用電源50や建物側バッテリ102から電力が供給されると共に、ここではさらにエレベータ側バッテリ12が設けられる。
【0019】
動力用電源50は、主にエレベータ1の通常運転時に利用される主電源である。動力用電源50は、典型的にはいわゆる商用電源(三相交流電源)等が用いられるが、例えば、自家発電機器等を用いてもよい。この動力用電源50は、建物100の電気設備101を作動させるための電源としても用いられる。
【0020】
ここで、建物100の電気設備101は、建物100に設置され、電力が供給されることで作動する種々の電気機器を含む。電気設備101としては、例えば、建物100の照明機器、上下水道ポンプ、各種セキュリティ機器、空調機器、機械駐車場駆動装置、医療機器等のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0021】
建物側バッテリ102は、エレベータ1や建物100の電気設備101を作動させる電力を蓄電可能である。建物側バッテリ102は、例えば、建物100の機械室、防災センタ等に設けられる。建物側バッテリ102は、動力用電源50の健全時、及び、当該動力用電源50からの電力供給が停止した停電時の双方で用いられる電源である。建物側バッテリ102は、典型的にはいわゆる蓄電池(二次電池)等が用いられる。建物側バッテリ102は、典型的には、動力用電源50からの電力が供給されて充電される。建物側バッテリ102は、電流計102a、電圧計102bが設けられている。電流計102a、電圧計102bは、電源制御装置13等を介して運転制御装置11にそれぞれ検出値を送信することができる。
【0022】
一方、エレベータ側バッテリ12は、主に動力用電源50からの電力供給が停止した停電時に利用される非常用の補助電源であり、動力用電源50の停電時にエレベータ1を運転するための電源である。エレベータ側バッテリ12は、建物側バッテリ102とは別に設けられエレベータ1を作動させる電力を蓄電可能である。エレベータ側バッテリ12は、典型的にはいわゆる蓄電池(二次電池)等が用いられる。エレベータ側バッテリ12は、電流計12a、電圧計12bが設けられている。電流計12a、電圧計12bは、電源制御装置13等を介して運転制御装置11にそれぞれ検出値を送信することができる。なお、エレベータ側バッテリ12は、主としてエレベータ1側で優先的に用いられるがこれに限らず、必要に応じて建物100の電気設備101側で用いることも可能である。
【0023】
電源制御装置13は、建物側バッテリ102やエレベータ側バッテリ12の充放電を制御するものである。電源制御装置13は、運転制御装置11、エレベータ側バッテリ12、建物側バッテリ102が接続されると共に、動力用電源50も接続される。電源制御装置13は、例えば、コンバータ装置、平滑コンデンサ、インバータ装置等を含む電気回路を有している。コンバータ装置は、動力用電源50から供給される交流を整流して直流に変換する。平滑コンデンサは、コンバータ装置で変換された直流を整流する。インバータ装置は、平滑コンデンサで平滑された直流を巻上機5の電動機5c等で使用可能な交流に変換する。
【0024】
また、電源制御装置13は、動力用電源50からの電力の供給状態に応じてエレベータ1を運転させる電力を適宜切り替えると共に、建物側バッテリ102、エレベータ側バッテリ12の充放電制御を行うことが可能になっている。電源制御装置13は、少なくとも動力用電源50、建物側バッテリ102、エレベータ側バッテリ12のいずれかから供給される電力を、エレベータ1を駆動させる電力として使用する。運転制御装置11は、この電力を用いて各部を作動させ、エレベータ1を運転させる。電源制御装置13は、例えば、後述するように、動力用電源50が健全である通常運転時には、カゴ2の移動に使用する電力として、動力用電源50から供給される電力を主に使用する。このとき、電源制御装置13は、建物側バッテリ102に蓄電されている電力を、動力用電源50からの電力をアシストする目的で利用することもできる。また、電源制御装置13は、動力用電源50の停電時には、カゴ2の移動に使用する電力として、建物側バッテリ102、あるいは、エレベータ側バッテリ12から供給される電力を使用する。また、電源制御装置13は、エレベータ1の通常運転時に動力用電源50から供給される電力の一部、通常運転時、停電時のエレベータ1の回生運転時に電動機5cによって回生発電された回生電力を利用してエレベータ側バッテリ12を充電することができる。電源制御装置13は、通常運転時、停電時のエレベータ1の回生運転時に電動機5cによって回生発電された回生電力を利用して建物側バッテリ102を充電することも可能である。
【0025】
上記のように構成されるエレベータシステム1Aは、通常運転として、利用者によりカゴ呼び登録装置8、乗場呼び登録装置9等を介してカゴ2の呼び操作が行われた場合、下記のように動作する。すなわち、エレベータ1は、カゴ呼び登録装置8、乗場呼び登録装置9等から運転制御装置11にこれに応じたカゴ呼び登録信号、乗場呼び登録信号が入力される。そして、エレベータ1は、運転制御装置11がこのカゴ呼び登録信号、乗場呼び登録信号に応じてカゴ2のカゴ呼び登録、あるいは、乗場呼び登録を行う。そして、運転制御装置11は、カゴ呼び登録、乗場呼び登録、種々のセンサ、検出器からの出力、カゴ2の現在の移動方向(昇降方向)等に基づいて、カゴ2が合理的に移動しながらそれぞれの呼びに応答するようにカゴ2の着床順序を定める。そして、運転制御装置11は、巻上機5を駆動制御し、カゴ2を目的の階床へと移動させる。これにより、エレベータ1は、カゴ2が昇降路7内を鉛直方向上下に昇降移動し、任意の目的階の乗場6に移動する。そして、エレベータ1は、カゴ2が目的階の乗場6に着床し、所定の着床位置に着床したことが検出されると、その後、運転制御装置11がカゴ2及び乗場6の扉14を開放する。これにより、乗場6で待機している利用者は、カゴ2内に乗り込むことが可能となり、また、カゴ2内の利用者は乗場6に降りることが可能となる。
【0026】
そして、本実施形態の制御装置10の運転制御装置11は、動力用電源50の停電状態においても、建物側バッテリ102によって停電時運転を実行可能である。つまり、本実施形態の制御装置10は、上記で説明した通常運転と、建物側バッテリ102を用いた停電時運転とを切り替えて実行可能である。
【0027】
ここで、通常運転とは、上述のように動力用電源50の健全時にエレベータ1を定格速度で運転する運転であり、主に動力用電源50からの電力によってカゴ2を昇降させる運転である。なお、制御装置10は、当該通常運転では、上述のようにさらに建物側バッテリ102の電力をアシスト電力として用いてもよい。制御装置10は、通常運転時には、エレベータ1と当該エレベータ1が設けられる建物100での電力使用状態とを連係させて、建物100の全体で電力のマネージメントを効率的に行い、省エネルギでエレベータ1を運用する。
【0028】
一方、停電時運転とは、通常運転とは異なる運転であり、動力用電源50の停電時の運転である。停電時運転とは、動力用電源50の停電時に建物側バッテリ102からの電力によってエレベータ1を定格速度で運転する運転であり、すなわち、建物側バッテリ102を用いてカゴ2を通常運転と同等の定格速度で昇降させる運転である。
【0029】
より詳細には、制御装置10の運転制御装置11は、停電時運転として、停電時制限無し運転と、停電時制限有り運転とを切り替えて実行可能である。停電時制限無し運転とは、動力用電源50が停電した後、当該動力用電源50の停電時の建物側バッテリ102の残存蓄電量に基づいた停電時運転可能最低時間経過前の期間に通常運転と同等の運転を行うものである。一方、停電時制限有り運転とは、停電時運転可能最低時間経過後でかつ建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に上記停電時制限無し運転と比較してエレベータ1の停止可能階床を制限して運転するものである。
【0030】
ここで、停電時運転可能最低時間とは、動力用電源50の停電時の建物側バッテリ102の残存蓄電量によって、エレベータ1において定格速度で通常運転と同等の運転を継続することができる最低限の時間に相当する。運転制御装置11は、典型的には、動力用電源50の停電時の建物側バッテリ102の残存蓄電量と、当該動力用電源50の停電後に予測される電気設備101での消費電力量と、エレベータ1の停電時制限無し運転での消費電力量とに基づいて停電時運転可能最低時間を算出することができる。この場合、運転制御装置11は、例えば、動力用電源50が停電した時点で、建物側バッテリ102の電流計102a、電圧計102bから電源制御装置13等を介して検出結果を受信する。そして、運転制御装置11は、当該検出結果に基づいて、建物側バッテリ102の電流値、電圧値から建物側バッテリ102の残存蓄電量を算出する。動力用電源50の停電後に予測される電気設備101での消費電力量は、予め実験等に応じて算出しておき、運転制御装置11の記憶部に記憶しておけばよい。また、運転制御装置11は、通常運転時に電気設備101での消費電力量を監視、学習しておき、これに基づいて動力用電源50の停電後に予測される電気設備101での消費電力量を推定してもよい。この場合、運転制御装置11は、動力用電源50の停電時に建物100の最低限の機能を確保するための電気設備101(例えば、照明やセキュリティ等)の作動を維持できる程度の消費電力量を推定するようにしてもよい。エレベータ1の停電時制限無し運転での消費電力量は、予め実験等に応じて算出しておき、運転制御装置11の記憶部に記憶しておけばよい。運転制御装置11は、例えば、停電時制限無し運転を実行した場合に、建物側バッテリ102の残存蓄電量が予め設定される所定パーセンテージになるまでの時間を、停電時運転可能最低時間として算出する。当該所定パーセンテージは、例えば、建物側バッテリ102が満充電である状態を100%とした場合に、運転可能蓄電量に対してマージン等を踏まえて設定されるパーセンテージである。また、上記運転可能蓄電量とは、残存蓄電量に対して設定される蓄電量であり、例えば、実験等に応じて予め設定される。運転可能蓄電量は、カゴ2が意図せず各階床の中間で停止してしまうことなく、所定の昇降行程の昇降を適正に完了するために必要な下限の蓄電量(言い換えれば、ラストランを可能とする最低限の蓄電量)に相当する。
【0031】
運転制御装置11は、動力用電源50が停電した場合、電源制御装置13の制御により電源系統が切り替えられて、通常運転から停電時運転に切り替える。このとき、運転制御装置11は、上述のように停電時運転可能最低時間を算出し、停電時運転可能最低時間経過前の期間においては、定格速度で停電時制限無し運転を行う。すなわち、この場合、運転制御装置11は、エレベータ1の停止可能階床を制限せず、通常運転と同等の運転を行う。
【0032】
そして、運転制御装置11は、停電時運転可能最低時間経過後でかつ建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に、停電時運転を、停電時制限無し運転から停電時制限有り運転に切り替える。すなわち、この場合、運転制御装置11は、定格速度でエレベータ1を運転すると共に、エレベータ1の停止可能階床を制限し、通常運転、停電時制限無し運転と比較して制限された運転を行う。この場合、運転制御装置11は、例えば、予め設定された停止禁止階にはカゴ2を停止させないようにする。ここでは、運転制御装置11は、停電時制限有り運転では、例えば、停止可能階床以外の階床(停止禁止階)へのカゴ呼び、停止可能階床以外の階床での乗場呼び、及び、停止可能階床での所定方向以外の乗場呼びを無効とする。運転制御装置11は、例えば、停止可能階床での所定方向以外の乗場呼びとして、基準階方向以外の乗場呼びを無効とする。このようにして、運転制御装置11は、通常運転、停電時制限無し運転と比較して制限された停電時制限有り運転を行う。
【0033】
ここで、上記基準階とは、このエレベータ1におけるサービスの基準となる階床であり、例えば、エントランス等が存在するロビー階等である。停止可能階床、及び、停止禁止階は、予め設定されてもよいし、防災センタや管理人室の監視装置から任意に設定できるようにしてもよい。例えば、建物100が高層の建築物である場合、停止可能階床は、高層階に設定され、停止禁止階は、基準階(例えば、1階)を除いた低層階に設定されてもよい。
【0034】
この結果、このエレベータシステム1Aは、動力用電源50が停電しても、建物側バッテリ102の電力によって停電時制限無し運転を行うことで、エレベータ1において定格速度で通常運転と同様のサービスを継続することができる。そして、エレベータシステム1Aは、動力用電源50が停電した後、停電時運転可能最低時間が経過すると、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合には、エレベータ1を停電時制限無し運転から停電時制限有り運転に切り替える。これにより、エレベータシステム1Aは、動力用電源50が停電している状態で、建物側バッテリ102の電力によって停電時制限有り運転を行うことで、停止可能階床をサービス性が優先される階床(例えば、高層階)に制限してサービスを継続することができる。したがって、エレベータシステム1Aは、動力用電源50の停電時においても、階段を利用しての移動が大変になる高層階等の階床へのサービス性を可能な限り損なわないような運転を実現することができる。よって、エレベータシステム1Aは、停電時の運転を適正に行うことができる。
【0035】
またさらに、本実施形態の運転制御装置11は、動力用電源50の停電状態において、上記建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった際に、エレベータ側バッテリ12によって停電時継続運転を実行可能である。
【0036】
ここで、停電時継続運転とは、通常運転や停電時運転とは異なる運転であり、動力用電源50の停電時の運転である。停電時継続運転とは、動力用電源50の停電時にエレベータ側バッテリ12からの電力によってエレベータ1を定格速度より低速で運転する運転である。これにより、エレベータ1は、停電時継続運転において、通常運転や停電時運転の場合と比較して、電動機5cの負荷を抑制し、電力使用量を抑制してカゴ2の昇降を継続することができる。
【0037】
より詳細には、制御装置10の運転制御装置11は、停電時継続運転として、停電時継続制限無し運転と、停電時継続制限有り運転とを切り替えて実行可能である。停電時継続制限無し運転とは、動力用電源50の停電時に、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった後、停電時継続運転可能最低時間経過前の期間に停止可能階床を制限しないで運転を行うものである。一方、停電時継続制限有り運転とは、停電時継続運転可能最低時間経過後でかつエレベータ側バッテリ12の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に停電時継続制限無し運転と比較してエレベータ1の停止可能階床を制限して運転するものである。
【0038】
ここで、停電時継続運転可能最低時間とは、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった時のエレベータ側バッテリ12の残存蓄電量に基づいた時間である。停電時継続運転可能最低時間とは、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった時のエレベータ側バッテリ12の残存蓄電量によって、定格速度より低速で全ての階床を停止可能階床として運転を継続することができる最低限の時間に相当する。運転制御装置11は、典型的には、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった時のエレベータ側バッテリ12の残存蓄電量と、エレベータ1の停電時継続制限無し運転での消費電力量とに基づいて停電時継続運転可能最低時間を算出することができる。この場合、運転制御装置11は、例えば、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった時点で、エレベータ側バッテリ12の電流計12a、電圧計12bから電源制御装置13等を介して検出結果を受信する。そして、運転制御装置11は、当該検出結果に基づいて、エレベータ側バッテリ12の電流値、電圧値からエレベータ側バッテリ12の残存蓄電量を算出する。エレベータ1の停電時継続制限無し運転での消費電力量は、予め実験等に応じて算出しておき、運転制御装置11の記憶部に記憶しておけばよい。運転制御装置11は、例えば、停電時継続制限無し運転を実行した場合に、エレベータ側バッテリ12の残存蓄電量が予め設定される所定パーセンテージになるまでの時間を、停電時継続運転可能最低時間として算出する。当該所定パーセンテージは、例えば、エレベータ側バッテリ12が満充電である状態を100%とした場合に、運転可能蓄電量に対してマージン等を踏まえて設定されるパーセンテージである。また、上記運転可能蓄電量とは、上記と同様に、残存蓄電量に対して設定される蓄電量であり、例えば、実験等に応じて予め設定される。
【0039】
運転制御装置11は、動力用電源50が停電した後、停電時運転で建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった場合、電源制御装置13の制御により電源系統が切り替えられて、停電時運転から停電時継続運転に切り替える。このとき、運転制御装置11は、上述のように停電時継続運転可能最低時間を算出し、停電時継続運転可能最低時間経過前の期間においては、定格速度より低速で停電時継続制限無し運転を行う。すなわち、この場合、運転制御装置11は、エレベータ1の停止可能階床を制限せずに運転を行う。
【0040】
そして、運転制御装置11は、停電時継続運転可能最低時間経過後でかつエレベータ側バッテリ12の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に、停電時継続運転を、停電時継続制限無し運転から停電時継続制限有り運転に切り替える。すなわち、この場合、運転制御装置11は、定格速度より低速でエレベータ1を運転すると共に、エレベータ1の停止可能階床を制限し、停電時継続制限無し運転と比較して制限された運転を行う。この場合、運転制御装置11は、例えば、予め設定された停止禁止階にはカゴ2を停止させないようにする。ここでは、運転制御装置11は、停電時継続制限有り運転では、停電時制限有り運転と同様に、例えば、停止可能階床以外の階床(停止禁止階)へのカゴ呼び、停止可能階床以外の階床での乗場呼び、及び、停止可能階床での所定方向以外の乗場呼びを無効とする。このときの停止可能階床、及び、停止禁止階は、停電時制限有り運転の場合と同様の階床に設定されてもよいし、停電時制限有り運転の場合とは異なる階床に設定されてもよい。このようにして、運転制御装置11は、停電時継続制限無し運転と比較して、さらに制限された停電時継続制限有り運転を行う。
【0041】
このエレベータシステム1Aは、動力用電源50が停電した後、停電時運転で建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満となった場合でも、エレベータ側バッテリ12の電力によって停電時継続制限無し運転を行う。この結果、このエレベータシステム1Aは、エレベータ1において定格速度より低速であるものの、全階床を停止可能階床としてサービスを継続することができる。そして、エレベータシステム1Aは、停電時継続運転可能最低時間が経過すると、エレベータ側バッテリ12の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合には、エレベータ1を停電時継続制限無し運転から停電時継続制限有り運転に切り替える。これにより、エレベータシステム1Aは、エレベータ側バッテリ12の電力によって停電時継続制限有り運転を行うことで、停止可能階床をサービス性が優先される階床(例えば、高層階)に制限してサービスを継続することができる。したがって、エレベータシステム1Aは、動力用電源50の停電後、建物側バッテリ102の残存蓄電量がなくなった場合でも、階段を利用しての移動が大変になる高層階等の階床へのサービス性を可能な限り損なわないような運転を実現することができる。この結果、エレベータシステム1Aは、動力用電源50の停電時に、建物側バッテリ102の電力、及び、エレベータ側バッテリ12の電力を計画的に利用し、停電時の運転を適正に行うことができる。
【0042】
一例として、エレベータシステム1Aは、例えば、図2に例示するように、通常運転、停電時運転、及び、停電時継続運転を使い分けることができる。図2の例では、エレベータシステム1Aは、通常運転においては、動力用電源50や建物側バッテリ102を用いて、定格速度で全階床(ここでは1階から9階)を停止可能階床(サービス階)としてエレベータ1の運転を行う。この場合、エレベータシステム1Aは、全階床へのカゴ呼び、全階床での乗場呼びを有効とする。また、エレベータシステム1Aは、停電時運転の停電時制限無し運転においては、建物側バッテリ102を用いて、定格速度で全階床(ここでは1階から9階)を停止可能階床としてエレベータ1の運転を行う。この場合も、エレベータシステム1Aは、全階床へのカゴ呼び、全階床での乗場呼びを有効とする。一方、エレベータシステム1Aは、停電時運転の停電時制限有り運転においては、建物側バッテリ102を用いて、定格速度で停止可能階床を制限してエレベータ1の運転を行う。この場合、エレベータシステム1Aは、停止可能階床以外の階床(ここでは、2階から5階)へのカゴ呼び、停止可能階床以外の階床での乗場呼び、及び、停止可能階床での所定方向(ここでは基準階である1階に向う方向)以外の乗場呼びを無効とする。さらに、エレベータシステム1Aは、停電時継続運転の停電時継続制限無し運転においては、エレベータ側バッテリ12を用いて、定格速度より低速で全階床(ここでは1階から9階)を停止可能階床としてエレベータ1の運転を行う。この場合、エレベータシステム1Aは、全階床へのカゴ呼び、全階床での乗場呼びを有効とする。一方、エレベータシステム1Aは、停電時継続運転の停電時継続制限有り運転においては、エレベータ側バッテリ12を用いて、定格速度より低速で停止可能階床を制限してエレベータ1の運転を行う。この場合、エレベータシステム1Aは、停止可能階床以外の階床(ここでは、2階から5階)へのカゴ呼び、停止可能階床以外の階床での乗場呼び、及び、停止可能階床での所定方向(ここでは基準階である1階に向う方向)以外の乗場呼びを無効とする。
【0043】
次に、図3のフローチャートを参照して制御装置10による制御の一例、ここでは、動力用電源50の停電時の制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0044】
まず、制御装置10の電源制御装置13は、動力用電源50の作動状態に基づいて、動力用電源50が停電したか否かを判定する(ステップST1)。制御装置10は、電源制御装置13により動力用電源50が健全であると判定された場合(ステップST1:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0045】
制御装置10の運転制御装置11は、電源制御装置13により動力用電源50の停電が復旧したと判定された場合(ステップST1:Yes)、停電時運転可能最低時間を算出する(ステップST2)。この場合、運転制御装置11は、建物側バッテリ102の電流計102a、電圧計102bから電源制御装置13等を介して検出結果を受信し、建物側バッテリ102の残存蓄電量等に基づいて停電時運転可能最低時間を算出する。
【0046】
次に、運転制御装置11は、電源制御装置13の制御により電源系統を切り替えて、通常運転から建物側バッテリ102を用いた停電時制限無し運転に切り替える(ステップST3)。
【0047】
次に、運転制御装置11は、動力用電源50の停電後、ステップST3で算出した停電時運転可能最低時間が経過したか否かを判定する(ステップST4)。運転制御装置11は、停電時運転可能最低時間が経過していないと判定した場合(ステップST4:No)、ステップST3の処理に移行し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0048】
運転制御装置11は、停電時運転可能最低時間が経過したと判定した場合(ステップST4:Yes)、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上であるか否かを判定する(ステップST5)。この場合、運転制御装置11は、再度、建物側バッテリ102の電流計102a、電圧計102bから電源制御装置13等を介して検出結果を受信し、建物側バッテリ102の残存蓄電量を算出する。
【0049】
運転制御装置11は、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上であると判定した場合(ステップST5:Yes)、停電時制限無し運転から停電時制限有り運転に切り替える(ステップST6)。その後、運転制御装置11は、ステップST5の処理に移行し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0050】
運転制御装置11は、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満であると判定した場合(ステップST5:No)、停電時継続運転可能最低時間を算出する(ステップST7)。この場合、運転制御装置11は、エレベータ側バッテリ12の電流計12a、電圧計12bから電源制御装置13等を介して検出結果を受信し、エレベータ側バッテリ12の残存蓄電量等に基づいて停電時継続運転可能最低時間を算出する。
【0051】
次に、運転制御装置11は、電源制御装置13の制御により電源系統を切り替えて、建物側バッテリ102を用いた停電時運転からエレベータ側バッテリ12を用いた停電時継続制限無し運転に切り替える(ステップST8)。
【0052】
次に、運転制御装置11は、建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満になった後、ステップST7で算出した停電時継続運転可能最低時間が経過したか否かを判定する(ステップST9)。運転制御装置11は、停電時継続運転可能最低時間が経過していないと判定した場合(ステップST9:No)、ステップST8の処理に移行し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0053】
運転制御装置11は、停電時継続運転可能最低時間が経過したと判定した場合(ステップST9:Yes)、エレベータ側バッテリ12の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上であるか否かを判定する(ステップST10)。この場合、運転制御装置11は、再度、エレベータ側バッテリ12の電流計12a、電圧計12bから電源制御装置13等を介して検出結果を受信し、エレベータ側バッテリ12の残存蓄電量を算出する。
【0054】
運転制御装置11は、エレベータ側バッテリ12の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上であると判定した場合(ステップST10:Yes)、停電時継続制限無し運転から停電時継続制限有り運転に切り替える(ステップST11)。その後、運転制御装置11は、ステップST10の処理に移行し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0055】
運転制御装置11は、エレベータ側バッテリ12の残存蓄電量が運転可能蓄電量未満であると判定した場合(ステップST10:No)、カゴ2を最寄階に停止させ停電時継続運転を終了し、現在の制御周期を終了して、次の制御周期に移行する。
【0056】
運転制御装置11は、動力用電源50が停電から復旧した場合には、電源制御装置13の制御により電源系統を切り替えて、エレベータ1を通常運転に復帰させる。
【0057】
なお、上述の制御装置10は、動力用電源50の停電後から建物側バッテリ102を用いた停電時運転が作動するまでの期間にエレベータ側バッテリ12を用いた停電時継続運転を実行可能である。例えば、上述のエレベータシステム1Aは、動力用電源50が停電した後、停電時運転可能最低時間を算出するために一定時間を要する場合がある。この場合、制御装置10は、動力用電源50の停電の直後は、一旦、エレベータ側バッテリ12を用いて停電時継続制限無し運転を行い、停電時運転可能最低時間の算出完了後に建物側バッテリ102を用いた停電時制限無し運転を行うようにしてもよい。これにより、エレベータシステム1Aは、動力用電源50の停電の直後もすぐにサービスを継続することができる。
【0058】
また、エレベータシステム1Aは、上述の停電時制限有り運転、停電時継続制限有り運転の際に、車椅子利用者等の特定の利用者に対する停止禁止階へのサービスを許容することもできる。この場合、エレベータシステム1Aは、例えば、カゴ2内や乗場6にIDカード等の識別情報を読み取ることができる読取装置を備える。そして、エレベータシステム1Aは、車椅子利用者等が、自身の識別情報や目的階等が書き込まれたIDカードの識別情報を当該読取装置に読み取らせることで、目的階が停止禁止階であってもカゴ2の当該停止禁止階への停止を許容するようにする。これにより、エレベータシステム1Aは、停電時制限有り運転や停電時継続制限有り運転の最中であっても、車椅子利用者等の特定の利用者に対するサービス性を適正に確保することができる。
【0059】
以上で説明したエレベータシステム1Aは、エレベータ1と、制御装置10とを備える。エレベータ1は、動力用電源50からの電力と、建物100の電気設備101を作動させる電力を蓄電可能である建物側バッテリ102からの電力とによって運転可能である。制御装置10は、動力用電源50の健全時にエレベータ1を定格速度で運転する通常運転と、動力用電源50の停電時に建物側バッテリ102からの電力によってエレベータ1を定格速度で運転する停電時運転とを切り替えて実行可能である。制御装置10は、停電時運転として、停電時制限無し運転と停電時制限有り運転とを切り替えて実行可能である。停電時制限無し運転は、動力用電源50が停電した後、当該動力用電源50の停電時の建物側バッテリ102の残存蓄電量に基づいた停電時運転可能最低時間経過前の期間に通常運転と同等の運転を行うものである。停電時制限有り運転は、停電時運転可能最低時間経過後でかつ建物側バッテリ102の残存蓄電量が運転可能蓄電量以上である場合に停電時制限無し運転と比較してエレベータ1の停止可能階床を制限して運転するものである。したがって、エレベータシステム1Aは、動力用電源50が停電した場合であっても、建物側バッテリ102の電力を用いて停電時の運転を適正に行うことができる。
【0060】
なお、上述した実施形態に係るエレベータシステムは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
以上で説明したエレベータシステムは、停電時継続運転装置を構成するエレベータ側蓄電装置(エレベータ側バッテリ12)を備えるものとして説明したがこれに限らない。
【0062】
以上で説明した実施形態、変形例に係るエレベータシステムによれば、停電時の運転を適正に行うことができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1A エレベータシステム
1 エレベータ
2 カゴ
3 カウンタウェイト
4 メインロープ
5 巻上機
6 乗場
7 昇降路
8 カゴ呼び登録装置
9 乗場呼び登録装置
10 制御装置
11 運転制御装置
12 エレベータ側バッテリ(エレベータ側蓄電装置)
13 電源制御装置
14 扉
50 動力用電源
100 建物
101 電気設備
102 建物側バッテリ(建物側蓄電装置)
図1
図2
図3