(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5714684
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】傘型螺旋水車
(51)【国際特許分類】
F03B 3/12 20060101AFI20150416BHJP
F03B 7/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
F03B3/12
F03B7/00
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-228086(P2013-228086)
(22)【出願日】2013年11月1日
【審査請求日】2013年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 鉄兵
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】小島 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 祐矢
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−221882(JP,A)
【文献】
仏国特許発明第557189(FR,A)
【文献】
国際公開第2012/098363(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/143709(WO,A1)
【文献】
仏国特許発明第827487(FR,A)
【文献】
特表2011−527396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/12
F03B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転胴と、該回転胴の外周面へ螺旋状に設けられた複数枚の回転羽根とを有し、
前記回転胴は円錐形であり、
前記回転羽根は、前記回転胴の外周面から、垂直な角度から前記回転胴の外周面に対して90°以下の角度で上方へ立設するように設けられ、前記回転胴の上部から下部にかけて各回転羽根間の距離が徐々に拡がっており、
前記回転胴の頂部を上方にして回転軸を縦向きに設置し、上方から落下してくる流水圧を受けて回転する、傘型螺旋水車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転胴と、該回転胴の外周面へ螺旋状に設けられた回転羽根とを有し、上方から流れてくる流水圧を受けて回転する螺旋水車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の螺旋水車として、例えば下記特許文献1が提案されている。特許文献1の螺旋水車は、中空円筒形の回転胴と、該回転胴の外周面へ螺旋状に設けられた回転羽根とを有する。ここでの回転羽根は、回転胴の外周面から径方向外方に向けて延在しており、上方の始端から下方の終端にかけて全体的に螺旋の傾斜角度は同じである。すなわち、始端から終端にかけて回転羽根は同じ螺旋ピッチで設けられている。一方、回転胴の下端部のみは、その他の部位と比べて小径となっている。そのうえで、斜面とされた水路上へ螺旋水車を斜め横置きに設置し、斜面の上方から流れてくる流水圧を回転羽根が受けることで、螺旋水車が回転する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−174198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、螺旋水車の回転力を生み出す水の流れを斜面によって確保し、螺旋水車は基本的に横置きとしているので、十分な水の流れを作るための高低差を設けるには比較的大きな設置面積を必要とする。これでは、狭小な敷地や屋内等に螺旋水車を設けるには不向きである。
【0005】
この問題を解決するには、単純には特許文献1のような螺旋水車を縦向きに設置したうえで、水を自由落下させることが考えられる。しかしながら、このような螺旋水車を単に縦向きに設置すると、次のような問題が生じる。先ず、このように衝動式の縦型螺旋水車とした場合、流水が回転羽根を伝うことで水の位置エネルギーが螺旋水車の運動(回転)エネルギーに変換されることになるが、このとき、螺旋水車を回転させるには流水速度がある程度速くなければならない。具体的には、流水速度が回転軸方向の水車螺旋面の移動速度より速ければ水の位置エネルギーが螺旋水車の回転力として作用するが、流水速度が回転軸方向の水車螺旋面の移動速度と同等であれば、水は単に螺旋水車と一体となって流動(落下)していくのみであり、螺旋水車の回転力は生じない。さらに、流水速度が回転軸方向の水車螺旋面の移動速度よりも小さいと、水は遠心力によって外方へ飛び出すように力が作用してしまう。ここで、回転軸方向の水車螺旋面の移動速度は、回転羽根が回転軸を一巻きする間の回転軸方向距離と回転速度の積である。
【0006】
ここで、特許文献1のような螺旋水車を縦向きに設置した場合、螺旋水車の上部では流水速度が速いが、水の位置エネルギーが螺旋水車の回転エネルギーとして利用されることで、回転羽根を伝って下方へ流動して行くにしたがって流水速度は徐々に減衰していく特性を有する。したがって、単に螺旋水車を縦向きに設置したところで、流水圧を受けて回転力を生み出しているのは螺旋水車の上部のみであり、中間部や下方部では水が螺旋水車と一体的に流動したり螺旋水車の外方へ飛び出したりするだけで、回転力は生み出されないおそれがある。これでは、回転羽根の始端から終端にかけて全体的に水の位置エネルギーを有効利用できず非効率であるばかりか、螺旋水車をコンパクト化する意味においても無駄が生じてしまう。
【0007】
そこで、上記課題に鑑みて本発明者らが鋭意検討の結果、螺旋水車を縦向きに設置して設置面積のコンパクト化を図りながら、当該螺旋水車を末広がりなテーパー形状とし、且つ回転羽根の設置形状を変更することで上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するものであって、縦向きに設置して設置面積をコンパクト化しながら、回転羽根の全体において流水から効率良く回転力を得られる、傘型螺旋水車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段として、本発明の螺旋水車(水車装置のランナ)は、回転胴と、該回転胴の外周面へ螺旋状に設けられた複数枚の回転羽根とを有し、前記回転胴が円錐形となった傘型を呈する。前記回転羽根は、前記回転胴の外周面から上方へ立設するように設けられており、前記回転胴の上部から下部にかけて各回転羽根間の距離が徐々に拡がっている。そして、前記回転胴の頂部を上方にして回転軸を縦向きに設置したうえで水を上方から落下させ、その流水圧を受けて回転する構成となっている。
【0010】
本発明では、螺旋水車の回転軸を縦向きにして水を上方から落下させていることで、螺旋水車ないしこれを使用した水車装置の設置面積を従来よりも大幅に小さくすることができる。
【0011】
この場合、螺旋水車に衝突して回転羽根を伝い流れる流水速度は、螺旋水車の下方へ行くほど遅くなることで、水の流水断面の増加に対し水が行き場を失うと乱流が発生し運動エネルギーの損失が大きくなる特性を有する。したがって、流水圧を受けて螺旋水車の回転力を得るには、流水速度の低下に伴い流水断面(水が流れる軌跡の直径)を大きくする必要がある。例えば、流水速度が1/4となれば、4倍の流水断面が必要となる。そこで、本発明では回転胴を円錐形として末広がりな傘型としていることで、下方へ行くほど流水断面が大きくなり、回転羽根全体で無駄なく回転力を得ることができる。
【0012】
そのうえで、回転胴の上部から下部にかけて各回転羽根間の距離を拡げていることで流水速度の低下が抑えられ、回転羽根全体において効率良く回転力を得ることができる。
【0013】
さらに、回転羽根は回転胴から立設していることで、当該回転羽根は水が外周方向に飛散することを防止するガイド壁としても機能する。これにより、エネルギー(流水量)の損失を避けながらより効率よく回転力を得ることができる。この効果は、回転羽根を垂直な角度から前記回転胴の外周面に対して90°以下の角度で立設させておけば、確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の傘型螺旋水車によれば、縦向きに設置して設置面積をコンパクト化しながら、回転羽根の全体において流水から効率良く回転力を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明する。本実施形態1の螺旋水車10は、
図1,2に示すように、回転ベースとなる回転胴11と、回転胴11の外周面へ螺旋状に設けられた複数枚の回転羽根12とを有し、全体としては末広がりな傘型となっている。回転胴11は円錐形を呈し、上方から衝突する水を各回転羽根12へ効率よく分水するため、最頂部は尖っている。回転胴11の下面には、水力発電の発電機等に連結される連結棒等が接続されることになる。
【0017】
回転羽根12は、回転胴11の頂部から下端部にかけて複数枚(本実施形態では6枚)並行して設けられている。回転羽根12が複数枚並設されていることで、単位水量に対して得られる回転力が大きくなる。さらに、水が複数枚の羽根に分かれて流入すると1枚あたりの流入量が小さくなるため、流量に対して水車体積を小さくすることができる。また、螺旋水車10を縦型の衝動式水車としたことに対応させて、回転羽根12は、螺旋水車10の上部から下部にかけて隣り合う回転羽根12間の距離が徐々に拡がるように設けられている。
【0018】
回転羽根12は、回転胴11の外周面から上方に向けて立設している。なお、回転羽根12の高さ寸法(立設寸法)は、上方の始端から下方の終端にかけてほぼ同じである。回転羽根12の立設角度は、垂直な角度から回転胴11の外周面に対して90°以下の角度とすることが好ましい。この範囲の角度で立設していることで流水圧を的確に受け止めて効率良く回転力を得られると共に、水が螺旋水車10の径方向外方へ飛散することを防止してエネルギー損失も低減することができる。回転羽根12の立設角度が垂直より内側(回転軸側)へ傾斜していると、水が径方向内側(回転軸側)へ押圧されながら流動することで、効率よく回転力を得難い。一方、回転羽根12の立設角度が回転胴11の外周面に対して90°より大きいと、回転羽根12によって水が螺旋水車10の外方へ飛散することを的確に防止できず、エネルギー損失が大きくなるおそれがある。
【0019】
なお、各回転羽根12の上端面は、回転胴11の頂部とほぼ同じ高さとなるように設計されている。すなわち、水の分水路が螺旋水車10の頂部から始まるように設計されている。これにより、螺旋水車10へ上方から水が衝突した直後から回転力を得ることができる。
【0020】
当該螺旋水車10は回転軸が縦向きとなるように設置され、水は螺旋水車10の上方から自由落下させればよい。このような構成の螺旋水車10は、典型的には水力発電装置に適用することができる。そこで、当該螺旋水車10を使用した水力発電装置の一例を
図3に示す。
図3に示すように、水力発電装置100は、縦向きに設置された螺旋水車10が内部に収容されたケーシング101と、ケーシング101の上方へ連続する自由落下部102と、自由落下部102の上方に設けられた水槽103とを有する。ケーシング101内には、螺旋水車10が回転自在に設けられており、当該螺旋水車10の下方に発電機105が設けられている。符号106は、水力発電に使用した水の排水管である。水槽103内には水力発電に使用するための水が貯留されており、自由落下部102内を水が自由落下していくことになる。符号107は、水槽103に水を供給する給水管である。なお、水槽103の排水口直下には、ハニカム状の細孔を有する整流器108が設けられている。これにより、水が自由落下していく際に外方へ拡散することが防止される。また、水槽103の排水口及び整流器108の中心と螺旋水車10の回転軸とは同軸上にあり、自由落下する水は螺旋水車10の回転胴11の頂部を中心に衝突するよう設計されている。
【0021】
この水力発電装置100によれば、給水管107を通して供給された水力発電に使用するための水Wは、一旦水槽103に貯留されることで、排水口における水圧の変動が調整される。螺旋水車10へ流入する水の径と流速は、水槽103内の貯水量や整流器108の細孔径等によって調整することができる。整流器108を介して自由落下した水Wは、整流されていることで、外方へ拡散することなく1本のきれいな柱状となって落下していき、縦向きに設置した螺旋水車10の頂部へ衝突する。このとき、自由落下する水Wは下方へいくほど(落下距離が大きくなるほど)落下速度が速くなるため、水柱の直径は徐々に小さくなる。そのうえで、水(位置エネルギー)の損失を無くすため、回転羽根12の始端の外形寸法(外径)は、自由落下する水柱の直径より大きくしておくことが好ましい。
【0022】
螺旋水車10に衝突した水Wは、衝突直後に頂部において各回転羽根12へ分水され、
図1に示すように、各回転羽根12が流水圧を受けて螺旋水車10が水Wの流動方向と反対方向に回転する。このとき、螺旋水車10を末広がりな傘型となっていること、各回転羽根12を回転胴11の頂部から下端部にかけて設けていること、各回転羽根12が立設していること、及び各回転羽根12間の距離が回転胴11の上部から下部にかけて徐々に拡がっていることで、エネルギー損失が少なく螺旋水車10全体で回転力を効率良く得られる。各回転羽根12を抜け落ちた水Wは、排水管106から排水されていく。
【0023】
(変形例)
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、これらに限られることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、さらに種々の変形が可能である。例えば、回転羽根12の並設枚数は、6枚に限らず2枚〜8枚程度の間で適宜変更することができる。
【0024】
回転胴11の内部は、中実でもよいし、中空でも良い。中空円錐形としていれば、内部空間に発電機を収容するなど有効利用することもできる。回転羽根12は、必ずしも回転胴11の頂部から下端部にかけて全体的に配す必要はなく、頂部及び/又は下端部から所定量隔てた位置から回転羽根12を設けることもできる。また、回転胴11の頂部はかならずしも尖っている必要はなく、頂部が平坦な円錐台形とすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
10 螺旋水車
11 回転胴
12 回転羽根
100 水力発電装置
103 水槽
108 整流器
W 水
【要約】
【課題】縦向きに設置して設置面積をコンパクト化しながら、水車全体において流水から効率良く回転力を得られる、傘型螺旋水車を提供する。
【解決手段】円錐形の回転胴11と、該回転胴11の外周面へ螺旋状に設けられた複数枚の回転羽根12とを有する。回転羽根12は、回転胴11の外周面から上方へ向けて立設しており、回転胴11の上部から下部にかけて隣り合う回転羽根12間の距離が拡がっている。回転胴11の頂部を上方にして回転軸を縦向きに設置し、上方から落下してくる流水圧を受けて回転する。
【選択図】
図2