特許第5714710号(P5714710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5714710チタン酸ビスマス亜鉛−チタン酸ビスマスカリウム−チタン酸ビスマスナトリウムに基づいた無鉛圧電材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714710
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】チタン酸ビスマス亜鉛−チタン酸ビスマスカリウム−チタン酸ビスマスナトリウムに基づいた無鉛圧電材
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/462 20060101AFI20150416BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20150416BHJP
   H01L 41/43 20130101ALI20150416BHJP
   H01L 41/333 20130101ALI20150416BHJP
【FI】
   C04B35/46 J
   H01L41/187
   H01L41/43
   H01L41/333
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-531549(P2013-531549)
(86)(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-545696(P2013-545696A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】US2010050947
(87)【国際公開番号】WO2012044309
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2013年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン,ユ,ホン
(72)【発明者】
【氏名】キャン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パターソン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ギボンズ,ブレイディ
(72)【発明者】
【氏名】マーディロヴィッチ,ピーター
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−047748(JP,A)
【文献】 特開2005−047745(JP,A)
【文献】 特開2001−151566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/46−35/493
H01L 41/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般化学式:xBi(Zn0.5Ti0.5)O−y(Bi0.50.5)TiO−z(Bi0.5Na0.5)TiO〔式中、x+y+z=1、かつx、y、zは0でない。〕を持ち、
ここで0.01<x≦0.19、0.28≦y≦0.50および0.40≦z≦0.65である、
無鉛圧電セラミックス材。
【請求項2】
前記材が標準的な大気環境下で安定なペロブスカイト構造を持つ固溶体を含有する、請求1に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【請求項3】
0.01≦x≦0.10、0.30≦y≦0.50および0.40≦z≦0.60である、請求項1もしくは2に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【請求項4】
前記セラミックス材が、チタン酸ジルコン酸鉛ペロブスカイトのものと同等かまたはそれを超える圧電ひずみ係数d33を持つ、請求項1〜3のいずれか一項に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【請求項5】
前記セラミックス材が200pm/Vから700pm/Vの範囲で最大圧電d33値を持つ、請求項1〜4のいずれか一項に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【請求項6】
前記セラミックス材が400pm/Vから650pm/Vの範囲で最大圧電d33値を持つ、請求項に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【請求項7】
前記セラミックス材が0.20パーセントから0.35パーセントの範囲で最大電気機械的ひずみ値を持つ、請求項1〜6のいずれか一項に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【請求項8】
前記セラミックス材がチタン酸ジルコン酸鉛ペロブスカイトのものと同等かまたはそれを超える疲労耐性を持つ、請求項1〜7のいずれか一項に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【請求項9】
00℃から500℃の範囲でキュリー温度(T)を持つ、請求項1〜8のいずれか一項に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【請求項10】
キュリー温度が300℃から400℃の範囲である、請求項に記載の無鉛圧電セラミックス材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には圧電セラミックス材に関し、より詳細にはチタン酸ビスマス亜鉛−チタン酸ビスマスカリウム−チタン酸ビスマスナトリウムを含有する三元組成に基づく無鉛圧電セラミックス材に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電セラミックス材(圧電セラミックス(piezoelectric ceramicsもしくは圧電セラミックス(piezoceramics)とも呼ばれる)は、アクチュエータ、振動子、共振器、センサおよびランダムアクセスメモリのような用途において広く使用されてきた。それらの圧電セラミックス材の中で、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ならびにその関連した固溶体が、その優れた圧電特性のために、ならびに製造過程においてドーピングによって容易に改質できるためにもっとも広く使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、多くの用途においてその望ましさを制限するようなPZTを用いることの欠点が存在する。一つの関心は、製造中にPZTから生じ得る高揮発性のPbOの毒性により生じ得る環境への影響である。PZT圧電セラミックスの他の欠点は、PZTに関連した強い疲労挙動である。疲労は、電気的繰り返し負荷の際に圧電材が、その切り替え可能な分極および電気機械的ひずみを失う現象である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本発明の例示的な実施態様の詳細な記載のために、添付の図表への参照がなされるであろう。
【0005】
図1図1は、特定の実施態様による圧電材の組成範囲を示す三元組成/相図である。
図2図2は、開示されるBZT−BKT−BNT組成物のいくつかの実施態様のX線回析パターンを示し、こららの組成物が単一のペロブスカイト相を持つことを示している。
図3図3は、開示される組成物の一実施態様によるBZT−BKT−BNT組成物の−60kV/cmから60kV/cmまでの範囲で印加される電界における分極及び電気機械的ひずみ値のグラフである。
図4図4は、開示される組成物の一実施態様による他のBZT−BKT−BNT組成物の−60kV/cmから60kV/cmまでの範囲で印加される電界における分極及び電気機械的ひずみ値のグラフである。
図5図5は、開示される組成物の一実施態様によるBZT−BKT−BNT組成物の60kV/cmで印加される単極性の電界における電気機械的ひずみ値(最大ひずみの%)のグラフである。
図6図6は、開示される組成物の一実施態様によるBZT−BKT−BNT組成物の−60kV/cmから60kV/cmまでの範囲で印加される双極性電界における電気機械的ひずみ値(最大ひずみの%)のグラフである。
【0006】
表記法と命名
以下の説明および請求項を通じて特定の用語が使用される。以下の説明において、ならびに以下の請求項において、用語「含む」および「含有する」は、オープンエンド(制限のない)様式で使用され、そしてそれゆえに、「〜を含むが、それらに限定されない」と意味すると解釈されるべきである。
【0007】
用語「キュリー温度」は、それ以上になると圧電材がその自発分極と圧電特性とを失う温度をさす。
【0008】
用語「分極ヒステリシス」は、極性状態を示す非線形分極特性を表す無鉛圧電セラミックス材をさす。
【0009】
用語「電気機械的ひずみ」は電界によって誘起されるひずみをさし、そして一つもしくはそれ以上の圧電係数(例えばd33およびd31)で共通に表され、ここでdij(単位pm/V)が印加される電界(V/m)に対するひずみに関連するテンソル特性である。d33係数は圧電共振、直接圧電効果、間接圧電効果などのような多くの異なる方法によって測定され得る。この開示と関連して、d33係数は最大電気機械的ひずみと印加される電界との間の比率によって計算される(d33=Smax/Emax)。しばしばこれは、有効圧電係数や正規ひずみあるいはd33として記載される。その使用の例はY.HirumaらのJ.Appl.Phys.103:084−121(2008)に見られる。
【0010】
圧電セラミックス材に関連して、用語「疲労」は、電気的繰り返し負荷の際に分極および電気機械的ひずみの消失の観測をさす。
【0011】
無鉛圧電材における成分の相対量もしくは割合は、モル分率もしくはモルパーセント(モル%)のいずれかによって表され、例えば0.01≦x≦0.1、0.3≦y≦0.5および0.4≦z≦0.6または10BZT−30BKT−60BNTといったものである。
【0012】
数値又は範囲をさすときの用語「約」は、測定の実施の際に起こり得る実験誤差から生じるより大きな値もしくはより小さな値を含むことを意図する。
【0013】
ここでは温度、比率、濃度、量および他の数値は範囲の形式で示され得る。そのような範囲の形式は単に利便性と簡潔さのためにのみ使用されるものであって、範囲の臨界点として明示的に示される数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される数値もしくはサブ範囲(sub−range)をもまた含むものであると柔軟に解釈されるべきである。例えば、約100℃から約500℃の温度範囲は100℃から500℃という明示的に示される臨界点のみでなく、250℃、300℃、350℃および400℃のようなすべての中間の温度、ならびに300℃から400℃などのようなすべてのサブ範囲までも含むと解釈すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は本発明のさまざまな実施態様に関する。開示される実施態様は、請求項を含む本開示の範囲を限定するものであると解釈されるべきでなく、使用されるべきでもない。さらに、以下の説明は広範な用途を含み、そして任意の実施態様の説明は実施態様の説明であることのみを意味し、請求項を含む開示の範囲がそれらの実施態様に限定されることを仄めかすことを意図しないということを当業者ならば理解するであろう。
【0015】
無鉛圧電セラミックス
図1について、三元組成/相図は、Bi(Zn0.5Ti0.5)O−(Bi0.50.5)TiO−(Bi0.5Na0.5)TiO系(ここではしばしばBZT−BKT−BNTと示される)三元組成に基づく無鉛圧電セラミックス材の全範囲を示す。例えば、無鉛圧電セラミックス材は一般化学式xBi(Zn0.5Ti0.5)O−y(Bi0.50.5)TiO−z(Bi0.5Na0.5)TiO〔式中、x+y+1=1、かつx、y、zは0でない〕を持ち得る。図1中の点線の左側の化学量論比を持つ組成物は、より不安定なペロブスカイト構造であり、そして多相を含み得る。図1中の点線の右側の影のついた領域中の化学量論比を持つ組成物は一般的に標準的な大気条件においてより安定な単相のペロブスカイト構造を持つ固溶体である。図1中の影のついた領域は、上述の一般化学式〔0.18≦x≦0.20、0.01≦y≦0.30および0.50≦z≦0.99の材を除く〕を持つ無鉛圧電セラミックス材を含む。これらの組成物は、表1に記載されるようにA〜IおよびK〜Nを含むがそれらに限定されない。ある実施態様においては、無鉛圧電セラミックス材は、図1のx=0.20で画定される線の右側の三元組成物に対応する上述の一般化学式〔式中、0<x≦0.20、0.01<y≦0.99および0.01<z≦0.99〕を持ち、そしてより安定な単相ペロブスカイト構造を含む。ある実施態様において、無鉛圧電セラミックス材は、図1のx=0.10によって画定される線の右側の三元組成物に対応する上述の一般化学式〔式中、0<x≦0.10、0.01<y≦0.99および0.01<z≦0.99〕を持つ。ある実施態様において、無鉛圧電セラミックス材は、図1の楕円で囲まれた三元組成物に対応する上述の一般化学式〔式中、0<x≦0.19、y=0.28〜0.50およびz=0.40〜0.65〕を持つ。上述の組成物は、表1にも記載されるように、C−Kを含むがそれらには限定されない。ある実施態様において、無鉛圧電セラミックス材は、図1のすべての三元組成物に対応する上述の一般化学式を持つが、0.01≦x≦0.20、0.01≦y≦0.99および0.01≦z≦0.75によって画定される三角形の先端のものを除く。いくつかの代表的な単相の安定なペロブスカイト構造を持つBZT−BKT−BNT材の化学量論比は、表1においてモルパーセントで示され、そして図1においてA−Nとして識別される。「O」および「P」によって示される組成物は、図1および表1に比較の目的で含められる二元組成物である。
【0016】
【表1】
【0017】
図1の黒い楕円によって囲まれる組成物の代表的なものである表1においてC〜IおよびKとして識別される組成物は、それらの安定な単相ペロブスカイトの最大のひずみ値を持ち、約200pm/Vから約700pm/Vの範囲の最大電気機械的ひずみ係数(d33)を示す。ある実施態様において、BZT−BKT−BNT組成物は約400pm/Vから約650pm/Vの範囲でd33係数を持つ。
【0018】
多くのBZT−BKT−BNT組成物のキュリー温度(T)は、約100℃から約500℃の範囲である。ある場合には組成物のTは約300℃と約400℃の間である。BZT、BKTおよびBNTの相対的比率は、三元組成物の製造中に変化し得、そのため産物は特定のキュリー温度範囲を持つであろう。組成物の所望の最終使用に応じて、セラミックス産物の操作温度はBZT−BKT−BNT組成物のTから異なる場合がある。例えば、ある場合には、操作温度はTよりも約100℃〜150℃低くなり得る。実際問題として、BZT−BKT−BMTセラミックス産物の最大操作温度はその脱分極温度である。
【0019】
代表的な組成物の分極ヒステリシスデータは強誘電的挙動を示し、電界誘起ひずみのプロットはバタフライループのように見え、他の強誘電体材料と整合する。これらの組成物の多くは、BKT−BNTおよびBKT−BZTの二元系のものと同等またはそれらを超える性能を持つ。表2はいくつかのBNT−BKTおよびBKT−BZT二元組成物の圧電データを示す。
【0020】
【表2】
【0021】
いくつかの実施態様において無鉛圧電セラミックス材は、一般化学式xBi(Zn0.5Ti0.5)O−y(Bi0.50.5)TiO−z(Bi0.5Na0.5)TiO〔式中、x+y+z=1、かつx、y、zは0でない。〕を持つ。多くの実施態様において、このセラミックス材は標準的な大気条件で安定なペロブスカイト構造を持つ固溶体である。例えば、ある実施態様において固溶体は0.01≦x≦0.2、0.01≦y≦0.99および0.01≦z≦0.75の割合を持つ。
【0022】
ある実施態様において、開示される無鉛圧電セラミックス材は0.01≦x≦0.1、0.3≦y≦0.5および0.4≦z≦0.6の割合を持つ。
【0023】
BZT−BKT−BNT材の性能は、通常のIEEE企画に従った圧電共振測定、低電界電気機械的ひずみ係数d33、疲労測定のためのポーリング試験、およびこれらの圧電性能の温度依存性によって評価され得る。代表的な組成物の分極ヒステリシスデータは強誘電的挙動を示し、電界誘起ひずみは予想通りバタフライループのように見える。BZT−BKT−BNT圧電セラミックスの多くに優れた疲労耐性が存在し、多くの場合で100万回の繰り返しのあとの最大分極は1パーセント以下の消失であった。これは従来のPZT材の疲労挙動と比較して極めて好適であった。BZT−BKT−BNT組成物の圧電ひずみ係数(d33およびd31)は、一般的にPZTのものよりも低い。比較によって、従来のPZT圧電セラミックスは典型的に以下のような圧電共振の性能、低電界d33および圧電性能の温度依存性を示す:εが約1000〜3400、d33が約200pm/V〜600pm/V、K33が約0.64〜0.75、ならびにTが約195℃〜365℃。
【0024】
ある実施態様において、開示されるBZT−BKT−BNT圧電セラミックス材は、チタン酸ジルコン酸鉛ペロブスカイトのものと同等かもしくはそれを超える圧電ひずみ係数(d33)を持つ。ある実施態様において、当該セラミックス材は、電界において約0.20パーセント〜約0.35パーセント伸びの範囲の最大電気機械的ひずみを持つ。
【0025】
ある実施態様において、開示される無鉛圧電セラミックス材は、チタン酸ジルコン酸鉛ペロブスカイトのものを超える疲労耐性を示す。ある実施態様において、BZT−BKT−BNT圧電セラミックス材は、約200pm/Vから約700pm/Vの範囲の最大高電界圧電d33値を示し、そしてある場合には、約400pm/Vから約650pm/Vの範囲の値を示す。
【0026】
多くの用途において、圧電セラミックスの疲労耐性が最大圧電ひずみ性能よりもより重要であり、開示されるBZT−BKT−BNTセラミックス材が有利であり得る。BZT−BKT−BNT組成物の多くがドープされるPZT材の圧電性能を満たすかまたはそれを超え、そしてそのような材を用いる装置の寿命の間に最小の崩壊を示すかまたはまったく崩壊しないような一定のひずみをもたらす。改善された圧電性能を持つ多くのBZT−BKT−BNTセラミックス材は従来のPZT系圧電セラミックスと同等かまたはそれを超え、そしてアクチュエータ、振動子、共振器、センサおよびランダムアクセスメモリを含むがそれらに限定されない同様の潜在的な用途を持つ。それらの用途のいくつかは圧電セラミックス中に鉛を含まないことによりより多くの利益を得るであろう。
【0027】
無鉛圧電セラミックスの製造
A.セラミックスディスク
ここに記載されるすべての無鉛BZT−BKT−BNT組成物は、少なくとも99%の純度のBi、NaCO、KCO、ZnOおよびTiO出発粉末を用いる任意の好適な固相合成方法によって製造し得る。生じる産物のキュリー温度(T)は、一般的に約100℃と約500℃の間である。圧電セラミックスのTは、出発粉末の相対量の変化によって増加したり減少したりし得る。BZT、BKTおよびBNTの相対量は産物が特定の範囲のTを持つように調整できる。従来のセラミックス材を製造する固相合成方法に従って、所望のセラミックス産物を製造するために粉末が粉砕され、成型され、そして焼成される。粉砕は、当業者に知られるように湿潤もしくは乾燥型の粉砕であり得る。例えば出発粉末に混合するために、ならびに焼成後の破砕のために、高エネルギー振動粉砕が使用できる。粉末は好適な液体(例えばエタノールもしくは水、または液体の混合物)と混合され、そして好適な高密度粉砕メディア(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)ビーズ)によって湿潤粉砕できる。粉砕された粉末は焼成され、バインダーと混合され、所望の形状(例えばペレット)に成型され、そして高い焼結密度を持つセラミックス産物を製造するために焼結された。試験のために、セラミックスディスクが電気的測定の前に好適な厚さ(例えば0.9mm)へと研磨され、そして銀ペースト(例えばHeraeus C1000)がディスクの両側に塗布された。目的の最終使用に応じて高密度BZT−BKT−BNTセラミックスディスクもしくはペレットは、例えば圧電アクチュエータとしての使用に好適なように約0.5μmから約1μmの範囲の厚さへと研磨され得る。
【0028】
B.セラミックス薄膜
BZT−BKT−BNTセラミックス材の意図する用途が薄膜産物を必要とするとき、製造方法は、硝酸ビスマス、チタンイソプロポキシドのような化学的前駆体を用いる化学溶液堆積、または焼結もしくはホットプレスされたセラミックス目的物を用いるスパッタリングを含むように修正され得る。任意の好適なスパッタリングもしくは化学堆積方法がこの目的に使用できる。ある場合には生じる薄膜セラミックスは約50nmから約10μmの範囲の厚さを持ち得る。
【0029】
C.圧電複合体
圧電複合体の使用を必要とするセンサもしくは振動子のような最終使用のために、上述の焼結BZT−BKT−BNTセラミックス材がこの目的のために改質される。セラミックス粉末は所望の粒径を得るためにひかれるかまたは粉砕され、そして0〜3圧電複合体を作り出すためにポリマーマトリックスへと充填される。セラミックス粉末は射出成型もしくは同様の技術を用いて焼結ロッドもしくは繊維へと成型でき、そして1〜3圧電複合体を作り出すためにポリマーマトリックスへと充填される。ポリマーは、最終使用に応じてPVDFのような圧電またはエポキシのような非圧電であり得る。
【実施例】
【0030】
実施例1:BZT−BKT−BNT組成物の作製
無鉛三元組成物は、少なくとも99%の純度のBi、NaCO、KCO、ZnOおよびTiO出発粉末を用いる固相合成方法によって作製された。適切な量のこれらの粉末が以下の相対割合(モルパーセント)を持つBZT−BKT−BNT組成物を得るために混合された:10−30−60、10−35−55、10−40−50、10−45−45、5−35−60、5−40−55および5−45−50。6時間の高エネルギー振動粉砕が開始粉末の混合および焼成後粉砕のために使用された。15容量%の粉末を含有するエタノール混合物がおおよそ9.53ミリメートル(3/8インチ)径の高密度YSZビーズによって粉砕された。YSZの除去後、カバーされたるつぼ内にて6時間900℃で粉砕された粉末の焼成が実施された。焼成された粉末は、3重量%のポリビニルブチラール(PVB)バインダー溶液中で混合され、そして粉末は150MPaの圧力で12.7mmペレットへと一軸コールドプレスされた。400℃のバインダー燃焼の後、ペレットはカバーされたるつぼ内にて、2時間1100℃(5%BZT)または5時間1050℃(10%BZT)で焼結された。電気的測定の前に、セラミックスディスクが平滑で平行な表面をもつ0.9mmの厚さに研磨された。銀ペースト(Heraeus C1000)が30分間650℃で両側に焼き付けられた。
【0031】
実施例2:BKT−BNT−BZT組成物の圧電および電解誘起ひずみ性能の測定
実施例1のBZT−BKT−BNT組成物がX線回析試験へと供され、そして生じるXRDパターンが図2に示された。そこでは以下の相対割合を持つ代表的なBZT−BKT−BNT組成物が単相ペロブスカイト構造を示す:10−30−60、10−35−55、10−40−50、10−45−45、5−35−60、5−40−55および5−45−50。これらの組成物において第2の相の証拠が見られなかった。
【0032】
図3および4は、5−45−50(図3)および10−40−50(図4)の相対割合を持つBZT−BKT−BNT組成物の−60kV/cmから60kV/cmの範囲で印加される(双極性)電界における分極および電気機械的ひずみ値を示す。図中の矢印は、分極およびひずみのデータを示す。データは図3において強誘電的挙動からの緩やかなシフトを示し、一定の度合いの分極残留と強誘電体材料の特徴であるよく形成されるバタフライ様のひずみループとを伴う。逆により高いBZT成分(図4)において、残留における減少が見られ、ひずみループは自然により放物線状になった。分極は、Sawyer−Tower回路を利用するRadiant Premier II Ferroelectric Test Systemを用いて測定された。電気機械的ひずみはRadiant装置に直接統合された光学干渉計を用いて測定された。
【0033】
実施例3:BZT−BKT−BNTの電界誘起ひずみ
0.1Bi(Zn0.5Ti0.5)O−0.4(Bi0.50.5)TiO−0.5(Bi0.5Na0.5)TiOセラミックス(表1および図1における組成物「F」)が実施例1に記載されるように調製され、そしてその圧電性能および電界誘起ひずみが実施例2に記載されるように調べられた。図5に見られるように、Hewlett−Packard圧電インクジェットプリントヘッドの典型的な操作条件と類似した60kV/cmの単極駆動電界において0.27%の最大ひずみが観測された。最大電界における最大ひずみによって計算される有効d33係数は、単極性電界(図5)において452pm/Vであり、そして双極性電界(図6)において568pm/Vであった。セラミックス材の係数d33の直接的な測定もまた、デュアルビームレーザ干渉計によって実施できる。これ及び他の代表的なBZT−BKT−BNTセラミックスの双極性電界において測定されるひずみ値は、他の公知の無鉛組成物の最良値(d33が約300pm/Vから約400pm/V)よりもかなり上にあり、そしてドープされたPZTセラミックス(d33が約400pm/Vから約600pm/V)に匹敵する。0.1Bi(Zn0.5Ti0.5)O−0.4(Bi0.50.5)TiO−0.5(Bi0.5Na0.5)TiOセラミックスの脱分極温度および他の代表的なBZT−BKT−BNTセラミックスのそれは、200℃もしくはそれ以上であり、またはドープされたPZT材と少なくとも等しい。
【0034】
上述の説明は本発明の原理およびさまざまな実施態様の例示を意味する。上述の開示が完全に評価されると、数多くの変更や修正が当業者に明白となる。以下の請求項がそのような変更や修正をすべて包含すると解釈されることが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6