特許第5714714号(P5714714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5714714風力発電装置用の加熱装置を備えたロータブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714714
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】風力発電装置用の加熱装置を備えたロータブレード
(51)【国際特許分類】
   F03D 11/00 20060101AFI20150416BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   F03D11/00 A
   F03D1/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-537108(P2013-537108)
(86)(22)【出願日】2011年10月31日
(65)【公表番号】特表2013-545016(P2013-545016A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011069120
(87)【国際公開番号】WO2012059466
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2013年6月26日
(31)【優先権主張番号】102010043434.5
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】レンショヴ、ゲルハルト
【審査官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/058063(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0000066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 11/00
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置用ロータブレードであって、
ロータブレードの内部に固定されている電気的に稼動可能な少なくとも1つの加熱マット(400)を有し、
前記加熱マット(400)は、加熱要素を備えたシリコーンマットであり、該シリコーンマット(400)は、シリコーンを用いて該ロータブレード(100)の内部(200)に固定されていること
を特徴とする風力発電装置用ロータブレード。
【請求項2】
風力発電装置用ロータブレードであって、
ロータブレードの内部に固定されている電気的に稼動可能な少なくとも1つの加熱マット(400)を有し、
前記加熱マット(400)は、シリコーンゲル加熱マットを有するか、又は前記加熱マットは、シリコーンゲル加熱マットとして構成されており、そして加熱要素を有すること
を特徴とする力発電装置用ロータブレード。
【請求項3】
該ロータブレード(100)は、内部において、該ロータブレード(100)の長手方向に沿って延在する開口部(200)を有し、該開口部(200)の周部には、少なくとも1つの電気的に稼動可能な加熱マット(400)が設けられていること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の風力発電装置用ロータブレード。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載のロータブレードを有すること
を特徴とする風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置用ロータブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置は多くの様々な設置場所に設置されるので、周囲条件について、風力発電装置における氷結、特にそのロータブレードにおける氷結が起こるくらい、特に周囲温度が低くなることが起こり得る。このような氷結は、氷の剥離により風力発電装置の周囲にいる作業員に危険をもたらすことがあるので、不利である。更にロータブレードの氷結(凍結)は、風力発電装置のロータにアンバランス状態をもたらし、出力減少(Ertragsreduktion)をもたらすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 03/058063 A1
【特許文献2】DE 10 2004 042423 A1
【特許文献3】DE 10 2006 032387 A1
【特許文献4】DE 197 48 716 C1
【特許文献5】WO 03/023943 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、ロータブレードの除氷(氷結防止)を可能とする、風力発電装置用ロータブレードないし風力発電装置を設けることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、請求項1に記載の風力発電装置用ロータブレードにより解決される。
即ち、本発明の第1の視点により、風力発電装置用ロータブレードであって、ロータブレードの内部に固定されている電気的に稼動可能な少なくとも1つの加熱マットを有し、前記加熱マットは、加熱要素を備えたシリコーンマットであり、該シリコーンマットは、シリコーンを用いて該ロータブレードの内部に固定されていることを特徴とする風力発電装置用ロータブレードが提供される。
更に、本発明の第2の視点により、風力発電装置用ロータブレードであって、ロータブレードの内部に固定されている電気的に稼動可能な少なくとも1つの加熱マットを有し、前記加熱マットは、シリコーンゲル加熱マットを有するか、又は前記加熱マットは、シリコーンゲル加熱マットとして構成されており、そして加熱要素を有することを特徴とする風力発電装置用ロータブレードが提供される。
また、本発明の第の視点により、前記ロータブレードを有することを特徴とする風力発電装置が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
従って、ロータブレードの内部に固定されている電気的に加熱可能な少なくとも1つの加熱マットを備えた風力発電装置用ロータブレードが提供される。
【0007】
本発明の一視点により、加熱可能な加熱マットは、加熱要素を備えたシリコーンマットである。シリコーンマットは、シリコーンを用いてロータブレードの内部又は中空空間に固定される。
【0008】
本発明の別の一視点により、加熱マットは、シリコーンゲル加熱マットとして構成されており、そして電気的な加熱要素を有する。
【0009】
本発明の別の一視点により、風力発電装置は、上述のロータブレードを備える。
【0010】
本発明は、着氷を回避するために、風力発電装置用ロータブレードは、その電気的な加熱或いは暖めを可能にすることのできる少なくとも1つの加熱マット(ロータブレードの内部にないしロータブレードの内部輪郭に沿って固定されている)を備えるという思想に関する。
【0011】
加熱マットは、特に複数の部材から構成されるロータブレードにおいて使用することができる。また加熱マットの取り付けは、特に鋼材部分(鋼材セグメント)を有するロータブレードにおいて、簡単に可能というわけではない。
【0012】
本発明により、加熱マットは、ロータブレードの内部領域に固定される。加熱マットの固定は、例えば貼り付け法(接着法ないし貼着法)により行なうことができる。加熱マットを貼り付けるための接着剤は、例えば吹き付け法(スプレー法 Spritzverfahren)により施すことができ、それにより接着剤層の表面品質を改善することができる。或いはまた接着剤をローラにより施すことも可能である。
【0013】
或いはまた加熱マットは、粘着性の密封バンド又は粘着性のフォイル(フィルム)によりロータブレードの内部に固定することができる。
【0014】
ロータブレードの内部に加熱マットを設けることは有利であり、その理由は、このことが容易に実現可能であるためであり、この解決策は容易に標準化可能(skalierbar)であり、質量は僅かですみ、加熱マットは長い耐用年数を有し、加熱マットの装着は量産に向いており、それにかかるコストは僅かですみ、サービスフレンドリーであり、頑丈であり、鋼材製ロータブレードやGFK製(グラスファイバ強化プラスチック製)ロータブレードにおいても、CFK製(カーボンファイバ強化プラスチック製)ロータブレードにおいても使用可能である。
【0015】
本発明の更なる展開形態は、下位請求項の対象である。
即ち、本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)風力発電装置用ロータブレードであって、ロータブレードの内部に固定されている電気的に稼動可能な少なくとも1つの加熱マットを有すること。
(形態2)前記加熱マットは、加熱要素を備えたシリコーンマットであり、該シリコーンマットは、シリコーンを用いて該ロータブレードの内部に固定されていることが好ましい。
(形態3)前記加熱マットは、シリコーンゲル加熱マットを有するか、又は前記加熱マットは、シリコーンゲル加熱マットとして構成されており、そして加熱要素を有することが好ましい。
(形態4)該ロータブレードは、内部において、該ロータブレードの長手方向に沿って延在する開口部を有し、該開口部の周部には、少なくとも1つの電気的に稼動可能な加熱マットが設けられていることが好ましい。
(形態5)風力発電装置が前記ロータブレードを有すること。
【0016】
以下、本発明の長所及び実施例を、図面に関連して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施例による風力発電装置用ロータブレードの断面を示す図である。
図2】第1実施例による風力発電装置用ロータブレードのロータブレードの別の断面を示す図である。
図3】第2実施例による風力発電装置を模式的に示す図である。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の第1実施例による風力発電装置用ロータブレードの断面を示している。ロータブレード100は、内部において、このロータブレードの長手方向(縦方向)に沿って延在する開口部又は中空空間(或いは内部輪郭)200を有する。開口部200の周部には、少なくとも1つの、好ましくは複数の電気的な加熱マット400が設けられる。開口部200の内壁部と加熱マット400との間の接続部は、好ましくは良好な熱伝導性を有する。オプションとして接続部に電気的な絶縁特性をもたすこともできる。
【0019】
図2は、本発明によるロータブレード100の別の断面(切開展開図)を示している。ロータブレードの内部ないし開口部200の内部には、電気的に稼動可能な複数の加熱マット400を設けることができる。加熱マット400は、少なくとも1つの電気接続部410を有し、この電気接続部410を介し、必要とされる電力(電気エネルギー)を供給することができる。電力の供給により加熱マット400を例えば電気的に加熱することができ、その熱はロータブレードへ放出され、従ってロータブレードが同様に加熱される。加熱マット400の内部には、電気的に電気接続部410と接続されている電気的な加熱ワイヤ(電熱線)を設けることができる。
【0020】
本発明による加熱マットは、シリコーン加熱マット又はアルミニウムフォイル又はアルミニウムマットとして構成することができる。これらのシリコーン加熱マットは、シリコーンを吹きかけるないし吹き付けることによりロータブレードの内面部に固定することができる。この際、貼り付け時(接着時)に気泡の侵入が発生しないように注意しなくてはならない。そのような気泡の侵入は、これらの箇所において加熱マットの加熱の望まれない上昇を起こさせる作用をもつであろうが、その理由は、熱がこれらの箇所においてロータブレードへと排出され得ないためである。しかしながらシリコーンを用いた加熱マットの貼り付けは不利であり、その理由は、加熱マットが固定的に貼り付けられており、従って加熱マットが簡単には交換できないためである。
【0021】
本発明の別の一視点により、加熱マットは、シリコーンゲルにより貼り付ける(接着する)ことができ、ないし加熱マットを既にシリコーンゲル貼り付けマットとして構成することができる。加熱マットとしてゲル貼り付けマットの使用は、ゲル貼り付けマットを破壊することなく交換することができので、有利である。更にゲル貼り付けマットは、この際には望まれないエアロゾル(煙霧質)が発生しないので、同様に生産において有利である。更にゲル貼り付けマットの使用は、貼り付け時に気泡を回避することができ且つ接着剤層厚を迅速に信頼性をもって守ることができるので、有利である。
【0022】
加熱マットは、例えば、加熱マットに電気エネルギーが供給された場合に加熱される導電性繊維をもつことができる。
【0023】
本発明により、加熱マットは、ロータブレードを加熱し且つ氷結を回避するために、ロータブレード付根近傍の領域にも、ロータブレード先端部の領域又はロータブレードの中間領域にも使用することができる。
【0024】
本発明の一視点により、加熱マットは、内部に織物の設けられたシリコーンマットとして構成することができる。それに追加し、加熱繊維(フィラメント)が設けられている。加熱繊維は、織物として構成することもできる。
【0025】
図3は、第2実施例による風力発電装置を模式的に示している。風力発電装置は、タワー500と、このタワー上のゴンドラ300と、複数のロータブレード100とを有する。好ましくは、風力発電装置は、3つのロータブレード100を有する。第2実施例によるこれらのロータブレードは、第1実施例によるロータブレードに基づくことができる。
【符号の説明】
【0026】
100 ロータブレード
200 開口部ないし中空空間
300 ゴンドラ(ナセル)
400 加熱マット
410 電気接続部
500 タワー
図1
図2
図3