(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714719
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】窓板を曲げる方法および装置
(51)【国際特許分類】
C03B 23/023 20060101AFI20150416BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
C03B23/023
B60J1/00 G
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-542539(P2013-542539)
(86)(22)【出願日】2011年12月8日
(65)【公表番号】特表2014-500222(P2014-500222A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011072170
(87)【国際公開番号】WO2012080072
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年9月10日
(31)【優先権主張番号】10194711.7
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルトウイン,ミヒヤエル
(72)【発明者】
【氏名】ドウンクマン,ベノ
(72)【発明者】
【氏名】ル・ニ,ジヤン−マリー
(72)【発明者】
【氏名】シユミツト,ローター
(72)【発明者】
【氏名】ラーダーマチエル,ヘルベルト
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−187691(JP,A)
【文献】
特表2008−526680(JP,A)
【文献】
特表2006−521271(JP,A)
【文献】
特表2008−526659(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0230116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/023−23/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓板を曲げる方法であって、
a.少なくとも1つの窓板(1、2)が可動曲げリングホルダ(3)を備える事前曲げリング(7a)内に配置され、可動曲げリングホルダ(3)は炉(4)内に移動させられ、窓板(1、2)は軟化温度まで加熱されて縁の最終湾曲の5%から50%まで事前曲げされ、
b.窓板(1、2)は吸引装置(5)によって持ち上げられ、事前曲げリング(7a)内で得られた湾曲を超えてさらに曲げられ、吸引装置(5)の対向枠組(8)の湾曲接触面(12)上の曲げの間、窓板(1、2)と、対向枠組(8)を包囲する吸引装置(5)のカバー(9)の空気バッフル(11)との間には、3mmから50mmの最小距離(18)があり、
c.窓板(1、2)は、吸引装置(5)によって可動曲げリングホルダ(3)上の最終曲げリング(7b)内に配置され、縁の最終湾曲まで曲げられ、窓板(1、2)の表面事前曲げが熱放射によって行われ、
d.窓板(1、2)は、第二吸引装置(15)によって最終曲げリング(7b)から持ち上げられ、対向金型(16)に対してプレスされて曲げられ、窓板(1、2)は最終曲げリング(7b)上に配置され、
e.窓板(1、2)は冷却される、方法。
【請求項2】
窓板(1)が吸引装置(5)によって縁の全体最終湾曲の100%から130%まで曲げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
窓板(1)が、縁の最終湾曲を局所的に異ならせて、第一吸引装置(5)によって曲げられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
窓板(1)が、空気流または下部曲げリングによって吸引装置(5、15)内で局所的に曲げられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
窓板(1)が、ガラス表面上で最大0.05K/mmから0.5K/mmの温度勾配で加熱される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
窓板(1)が、500℃から750℃の温度まで加熱される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
窓板(1)が、縁の局所的最終湾曲の10%から30%まで、事前曲げリング(7a)内で重力によって事前曲げされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
吸引装置(5)が1kg/m2から100kg/m2の吸引圧力を発生させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2つの窓板(1、2)が曲げられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
窓板を曲げるための炉であって、少なくとも:
a.可動曲げリングホルダ(3)上の事前曲げリング(7a)上で少なくとも1つの窓板(1、2)を予備加熱するための1つの予備加熱領域(A)と、
b.少なくとも湾曲接触面(12)を備える対向枠組(8)と、事前曲げされた窓板(1、2)をさらに曲げるための空気バッフル(11)で対向枠組(8)を包囲するカバー(9)とを含む、垂直移動可能な、曲げられた吸引装置(5)を備える1つの事前曲げ領域(B)と、
c.可動曲げリングホルダ(3)上の最終曲げリング(7b)上で窓板(1、2)の縁を最終湾曲し、熱放射によって窓板(1、2)を表面事前曲げするための、1つの加熱領域(C)と、
d.窓板(1、2)をさらに表面曲げするための、第二の垂直移動可能な吸引装置(15)、ならびに水平移動可能な曲げられた対向金型(16)を備える1つの第二曲げ領域(D)と、
e.1つの冷却領域(E)と、を含む炉。
【請求項11】
第二曲げ領域(D)に第三吸引装置(17)が設けられている、請求項10に記載の炉。
【請求項12】
領域(A)、(B)、(C)、(D)、および(E)を加熱するための加熱装置(6)を有する、請求項10または11に記載の炉。
【請求項13】
加熱装置(6)が、放射ヒータを含む、請求項12に記載の炉。
【請求項14】
加熱装置(6)が、個々の個別制御可能な加熱タイルまたは加熱場からなる配列を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の炉。
【請求項15】
積層される窓板を曲げるための、請求項10から14のいずれか一項に記載の炉の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓板を曲げる方法および装置、窓板を曲げるための炉、および炉の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
機器の局面に加えて、新しい自動車の開発は、設計要素によっても大きく決定される。これに関し、大きくて見やすい領域のため、フロントガラス設計の重要性が増している。この点において、フロントガラスの外観のみならず、省エネルギーおよび環境影響のための局面もまた、役割を果たしている。強力なマイクロプロセッサ、ならびにCAD(コンピュータ支援設計)支援ソフトウェアパッケージは、フロントガラスの空力抵抗のより良い適合および最適化も可能にする。このため、自動車における現代のフロントガラスは、ますます複雑な幾何形状を有するようになっている。具体的には、非常に低燃費な自動車もスポーツカーも、窓板形状、ならびにその実現に必要なガラス窓板湾曲方法を強く要求している。ガラス窓板の湾曲は、たとえば重力曲げとプレス曲げとの組み合わせを通じて、実現可能である。1つまたは複数のガラス窓板が曲げリング内に配置され、加熱される。このプロセスにおいて、ガラス窓板は、加熱されたガラス窓板に対して作用する重力の助けを借りて、曲げリングによって所定の幾何形状に沿って曲げられる。次に、加熱されたガラスは、負圧および適切な枠の助けを借りて、対応する形状になるよう曲げられる。
【0003】
より複雑な幾何形状は、単一の曲げプロセスでは通常は実現不可能である。これは、個別のまたは連続する曲げプロセスが任意に組み合わせられ得ないということのため、より困難となる。これらの要因は、求められる窓板形状を獲得する可能性を、明らかに制限する。具体的には、複雑な幾何形状を生じるための縁曲げと表面曲げとの組み合わせは、困難を伴ってのみ実現可能である。
【0004】
欧州特許第0677491A2号明細書は、ガラス窓板を湾曲および強化する方法を開示している。ガラス窓板はその軟化温度まで加熱され、装置内の2つの補完的形状の間でプレスされ、そして搬送リング内に移送される。窓板はその後、搬送リング内で強化および冷却される。
【0005】
欧州特許第1371616B1号明細書は、ガラス窓板を湾曲および強化する装置を開示している。装置はとりわけ、連続金型キャリア、曲げ温度までガラス窓板を加熱するための予備加熱部、重力による事前湾曲部、プレス金型を備える湾曲部、および冷却部を含む。
【0006】
欧州特許第1358131B1号明細書は、対になったガラス窓板を曲げる方法を開示している。これについては、1対のガラス窓板が、重力曲げによって枠の形状の曲げ金型内の水平位置で事前曲げされる。次に、事前曲げされたガラス窓板の対は、全面曲げ金型を用いてさらに曲げられる。
【0007】
米国特許出願公開第2008/0134722A1号明細書は、重ねられた窓板を曲げる方法および装置を開示している。窓板は、吸引金型によって持ち上げられ、対になる金型によってプレスされて、幾何形状にしたがって曲げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0677491号明細書
【特許文献2】欧州特許第1371616号明細書
【特許文献3】欧州特許第1358131号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0134722号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、最小限のプロセスステップにおいて迅速に、かつ最小限のエネルギー消費で、複雑な幾何形状の曲げさえも可能にする、窓板を曲げる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1から11に記載の方法および装置によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0011】
本発明による炉の使用は、請求項15に示される。
【0012】
本発明による窓板を曲げる方法は、縁曲げならびに表面曲げの組み合わせを可能にする。方法は、少なくとも1つの窓板、好ましくは第一窓板および第二窓板が、可動曲げリングホルダ上の事前曲げリング内に配置される、第一ステップを含む。方法は、1つの窓板および対になった窓板の曲げのいずれにも適している。事前曲げリングは好ましくは、5%から50%の縁の平均最終湾曲を有する。可動曲げリングホルダは次に炉内に移動し、窓板は少なくともガラスの軟化温度、好ましくは550℃から800℃まで、加熱装置によって事前曲げリング内で加熱される。軟化温度は、ガラスの組成によって決定される。事前曲げリング内に配置された窓板は、縁の局所的最終湾曲の5%から50%まで、重力の作用を通じて事前曲げされる。本発明の文脈において、「縁の最終湾曲」という用語は、全曲げリング縁または窓板縁の少なくとも30%の寸法または長さを有する窓板の縁または曲げリング縁の少なくとも一部の最終的な完成状態における、平均(最終)湾曲である。窓板は次のステップで(第一)吸引装置によって持ち上げられ、事前曲げリング内で得られた湾曲を超えて、さらに曲げられる。窓板は好ましくは、縁の最終湾曲の102%から130%まで曲げられる。曲げは、吸引装置内に位置する対向枠組の上で行われる。対向枠組は好ましくは、突起した湾曲接触面を備えるリングの形状を有する。吸引装置は、対向枠組に加えて、対向枠組を包囲する空気バッフルを備えるカバーを含む。空気バッフルは、持ち上げられた窓板の隣に位置し、対向枠組の接触面の湾曲中に、窓板が空気バッフルから3mmから50mmの距離になるように、設計されている。この距離は、窓板と空気バッフルとの間の中間空間における空気の連続的な吸引を可能にする。吸い込まれた空気は、接触面上に窓板を固定する負圧を発生する。吸引プロセスは、接触面の湾曲(曲率)にしたがって、窓板を曲げる。成形品の接触領域、具体的には窓板の接触面は、好ましくは可撓性または軟性材料で裏打ちされている。この材料は好ましくは、ガラス、金属、またはセラミックの耐火性繊維を含み、窓板上のスクラッチなどの損傷を防止する。窓板を持ち上げるための吸引装置の動作および構造の様態の記述は、米国特許出願公開第2008/0134722A1号明細書の[0036]および[0038]から[0040]まで、ならびに請求項1a)に見られる。窓板はその後、吸引装置によって可動曲げリングホルダ上の最終曲げリング内に配置される。最終曲げリングは好ましくは、事前曲げリングよりも少なくとも30%大きい縁の平均最終湾曲を有する。窓板の配置は、たとえば、吸引装置内の圧力低下により吸引圧力を上昇させることによって、行われることが可能である。事前曲げリングおよび最終曲げリングは、いずれの場合も、意図される窓板形状にしたがって曲げられる。曲げリングの外周および開口角度は、曲げられる窓板の幾何形状に対応する。事前曲げリングおよび最終曲げリングは、好ましくは同じ可動曲げリングホルダ上に設けられ、たとえばピンまたはブラケットの取り外しによって、事前曲げリングから最終曲げリングに変換されることが可能である。本発明の文脈において、「変換」という用語は、曲げリングの形状(幾何形状)を事前曲げリングから最終曲げリングに変更すること、および事前曲げリングを取り外して事前曲げリングの下に設けられた最終曲げリングに「アクセス可能にする」ことの、両方を意味する。最終曲げリング上に配置された窓板は、表面の熱放射によって事前曲げされる。このために、温度勾配は窓板の上方で設定され、異なる加熱によって異なる表面曲げが可能となる。加熱装置は好ましくは、個々の個別制御可能な加熱タイルの配列を含む。タイルの異なる熱放射の結果、窓板上に異なる温度領域が実現され得る。そして、窓板は第二吸引装置によって持ち上げられる。第二吸引装置は好ましくは第一吸引装置と同じ構造を有する。次のステップにおいて、窓板は対向金型に対してプレスされ、好ましくは窓板の表面で曲げられる。この対向金型の構造は、米国特許出願公開第2008/0134722A1号明細書の[0037]および
図2に記載されている。対向モードは、窓板の表面湾曲のネガ型の役割を果たし、窓板を曲げて最終表面幾何形状にする。そして窓板は、最終曲げリング上に配置されて冷却される。
【0013】
窓板は好ましくはガラス、特に好ましくは平板ガラス(フロートガラス)、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、および/またはソーダ石灰ガラスを含む。
【0014】
窓板は好ましくは、吸引装置によって持ち上げられ、縁の平均全体最終湾曲の100%から130%、好ましくは105%から120%まで曲げられる。「縁の全体最終湾曲」という用語は、百分率で表される窓板全体の均一な曲がりを指す。窓板は好ましくは、形状または大きさにおいて、縁の最終湾曲量を超える縁の湾曲を有するように、吸引装置内の曲げリング(対向枠組)の上で成形される。
【0015】
窓板は好ましくは、縁の最終湾曲を局所的に異ならせて、吸引装置によって曲げられる。「縁の局所的最終湾曲」という用語は、百分率で表される窓板全体の(縁の)不均一な(最終)湾曲を指す。
【0016】
窓板は好ましくは、空気流または下部曲げリングによって、第一および/または第二吸引装置内で局所的に曲げられる。「局所的に」という用語は、好ましくはノズルからの空気流によって、限られた領域内に付加的な湾曲が設定される、窓板の個別領域を意味する。あるいは、記載される局所的湾曲は、下方から適用される曲げリングによって行われることも可能である。
【0017】
窓板は好ましくは、ガラス表面上で最大0.05K/mmから0.5K/mm、好ましくは0.1K/mmから0.2K/mmの温度勾配で、加熱される。温度勾配の調整は好ましくは、個別に制御され(すなわち放射熱量が異なる)、窓板の上または下に配置された加熱装置を通じて、行われる。
【0018】
窓板は好ましくは500℃から750℃、特に好ましくは580℃から650℃の温度まで加熱される。
【0019】
窓板は好ましくは、平均最終湾曲の10%から30%まで、事前曲げリング内で重力によって事前曲げされる。
【0020】
吸引装置は好ましくは、1kg/m
2から100kg/m
2の吸引圧力を発生させる。この吸引圧力は、窓板を吸引装置に確実に固定し、対向枠組の上でこれを曲げるのに、十分である。
【0021】
本発明は、本発明による方法を用いて曲げられた窓板、特に1対の窓板を、さらに含む。
【0022】
本発明は、窓板を曲げるための、好ましくは対になった窓板を曲げるための炉を、さらに含む。炉は、炉内に設置された少なくとも1つの加熱装置と、事前曲げリングおよび/または最終曲げリングとしての曲げリングとともに炉の内外に移動可能な曲げリングホルダと、を含む。曲げリングは好ましくは、事前曲げリングおよび最終曲げリングの両方として、調整可能または変換可能である。事前曲げリングおよび最終曲げリングは、たとえば、ピンまたはブラケットの取り外しによって、事前曲げリングから最終曲げリングに変換されることが可能である。本発明の文脈において、「変換」という用語は、曲げリングの形状(幾何形状)を事前曲げリングから最終曲げリングに変更すること、および事前曲げリングを取り外して事前曲げリングの下に設けられた最終曲げリングに「アクセス可能にする」ことの、両方を意味する。予備加熱領域の中で、窓板(第一窓板および/または第二窓板)は軟化温度まで加熱される。第一曲げ領域において、第一の、垂直移動可能な、好ましくは凸状に曲がった吸引装置が、事前曲げ領域内の予備加熱領域に接続されている。吸引装置は、事前曲げリングから窓板を取り出し、窓板を曲げ、事前曲げされた窓板を最終曲げリング上に戻すことを、可能にする。吸引装置は、湾曲接触面を備える少なくとも1つの対向枠組を含む。接触面の湾曲は、好ましくは事前曲げリングの湾曲よりも大きい;好ましくは接触面の湾曲は、少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも90%である。対向枠組は空気バッフルを備えるカバーによって包囲されており、接触面と空気バッフルとの間には3mmから50mmの最小距離がある。空気バッフルは、湾曲接触面の最低点を超えて下方に突起している。可動曲げリング上に位置する窓板を加熱および強化するための加熱領域は、吸引装置に接続している。最終曲げリング上に配置された窓板は、熱放射によって表面で事前曲げされる。このために、温度勾配は窓板の上方で設定され、異なる加熱によって異なる表面曲げが可能となる。加熱装置は好ましくは、個々の個別制御可能な加熱タイルの配列を含む。タイルの異なる熱放射の結果、窓板上に異なる温度領域が実現され得る。第二曲げ領域は、窓板の移動方向で加熱領域に隣接して位置する。第二曲げ領域は、第二の垂直移動可能な吸引装置、ならびに水平および垂直移動可能な、好ましくは凹状に曲がった対向金型を、含む。第二吸引装置とともに、対向金型は、窓板の表面曲げを可能にする。この対向金型の構造は、米国特許出願公開第2008/0134722A1号明細書の[0037]および
図2に記載されている。処理方向において、冷却領域は第二曲げ領域に接続している。冷却領域は、本発明による炉の最終部分を構成する。予備加熱領域、第一曲げ領域、加熱領域、第二曲げ領域、および冷却領域は、処理方向において連続的に接続されて設けられている。本発明による炉は、予備加熱領域、第一曲げ領域、加熱領域、第二曲げ領域、冷却領域の領域に、加熱するための加熱装置を有する。加熱装置は、可動曲げリングホルダの下、横、または上にも設けられることが可能である。
【0023】
可動曲げリングホルダは好ましくは、炉の内外に位置する搬送装置によって移動させられる。
【0024】
第三吸引装置は好ましくは第二曲げ領域内に設けられる。これは、本発明による炉のサイクル時間を延長する。
【0025】
加熱装置は好ましくは放射ヒータ、特に好ましくは赤外線放射器を含む。
【0026】
加熱装置は好ましくは、個々の個別制御可能な加熱タイルの配列を含む。タイルの異なる熱放射の結果、窓板上に異なる温度領域が実現され得る。異なる温度領域は、窓板の表面の漸次加熱を可能にする。
【0027】
本発明は、積層される窓板、好ましくは自動車のフロントガラスを曲げるための、本発明による炉の使用を、さらに含む。
【0028】
本発明は、フロントガラスとして、好ましくは自動車のフロントガラスとしての、本発明による窓板の使用を、さらに含む。
【0029】
以下において、本発明は、図面、例示的実施形態、ならびに比較例を参照して、詳細に説明される。図面は純粋に模式的な描写であり、縮尺通りではない。これらはいかようにも本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による炉の断面図を示す。炉は、加熱装置(6)と、いずれの場合も事前曲げリング(7a)を有する搬送装置(10)によって炉の内外に移動可能な曲げリングホルダ(3)と、を含む。予備加熱領域(A)の内部において、窓板(1、2)はそれぞれのガラスの軟化温度まで加熱される。事前曲げ領域(B)において、第一の、垂直移動可能な、好ましくは凸状に曲がった吸引装置(5)が、予備加熱領域(A)に接続されている。吸引装置(5)は、曲げリングホルダ(3)から窓板(1、2)を取り出し、窓板(1、2)を事前曲げし、事前曲げされた窓板(1、2)を最終曲げリング(7b)上に配置することを、可能にする。事前曲げリング(7a)および最終曲げリング(7b)は、たとえばピンまたはブラケットの取り外しによって、事前曲げリング(7a)から最終曲げリング(7b)に変換されることが可能である。最終曲げリング(7b)上に配置された窓板(1、2)を加熱するための中間領域(C)は、事前曲げ領域(B)内の吸引装置(5)に接続されている。第二の垂直移動可能な、凸状に曲がった吸引装置(15)を備える最終曲げ領域(D)は、中間領域(C)の隣に位置している。第二の垂直移動可能な、凸状に曲がった吸引装置(15)は、水平方向に移動可能であり、窓板(1、2)の持ち上げおよび曲げを可能にする。第二の垂直移動可能な、凸状に曲がった吸引装置(15)はその基本的構造において、吸引装置(5)に対応する。吸引装置(5、15)の基本的構造は、米国特許出願公開第2008/0134722A1号明細書にも記載されている。対応する最終湾曲は、水平および垂直移動可能な凹状に曲がった対向金型(16)によって、凸状に曲がった吸引装置(15)で持ち上げられた窓板(1、2)に形成されることが可能である。窓板(1、2)は、凸状に曲がった吸引装置(15)と凹状に曲がった対向金型(16)との間でプレスされる。サイクル速度を速めるために、凸状に曲がった吸引装置(15)に加えて、もう1つの第三吸引装置(17)が設置されてもよい。第三吸引装置(17)は、窓板が第二吸引装置内で曲げられている間に、窓板を持ち上げることができる。プレスまたは曲げプロセスの終了後に、窓板(1、2)は凸状に曲がった吸引装置(5)によって最終曲げリング(7b)上に戻されることが可能である。冷却領域(D)は、本発明による炉の最終部分を形成する。予備加熱領域(A)、事前曲げ領域(B)、中間領域(C)、最終曲げ領域(D)、および冷却領域(E)は、連続的に接続されて設けられている。
【0032】
図2は、吸引装置(5)の断面図を示す。吸引装置(5)は、対向枠組(8)、および対向枠組(8)を包囲するカバー(9)を含む。対向枠組(8)は、最終曲げリング(7b)(図示せず)に対して全体的にまたは局所的に曲げられることが可能である。対向枠組は、最終曲げリング(7b)(図示せず)に対して「ネガ型」の役割を果たす。空気流(13)は、対向枠組(8)とカバー(9)との間の縁領域(14)にわたって、吸引装置(5)に吸い込まれる。結果的な負圧の助けを借りて、窓板(1、2)が吸引され、持ち上げられ、曲げられる。対向枠組(8)の第二窓板(2)との接触面(12)は好ましくは、ガラス、金属、またはセラミックの耐火性繊維などの、可撓性または軟性材料で裏打ちされている。
【0033】
図3は本発明による方法のフローチャートを示す。2つの窓板(1、2)は、可動曲げリング(3)上の事前曲げ曲げリング(7a)内に配置される。曲げリング(3)はその後、炉内に搬送される。窓板(1、2)は、放射加熱素子からなる加熱装置(6)によって、およそ580℃から650℃程度の窓板(1、2)の軟化温度まで加熱される。窓板(1、2)の加熱の間、事前曲げリング(7a)内に位置する窓板(1、2)は重力の力を借りて、得られる平均最終湾曲の5%から40%まで事前曲げされる。加熱装置は好ましくは、個々の個別制御可能な加熱タイルの配列を含む。タイルの異なる熱放射の結果、窓板(1、2)上に異なる温度領域が実現され得る。異なる温度領域は、窓板の表面の漸次加熱を可能にする。窓板(1、2)はその後、好ましくは凸状の吸引装置(5)によって持ち上げられ、平均最終湾曲の102%から130%まで曲げられる。次のステップにおいて、窓板(1、2)は凸状吸引装置(5)によって、可動曲げリングホルダ(3)上の最終曲げリング(7b)上に配置される。事前曲げリング(7a)および最終曲げリング(7b)は、いずれの場合も意図される窓板形状にしたがって曲げられる。事前曲げリング(7a)および最終曲げリング(7b)は、好ましくは同じ可動曲げリングホルダ(3)上に設けられ、事前曲げリング(7a)からのピンの取り外しによって、最終曲げリング(7b)に変換されることが可能である。窓板は、中間領域(C)において加熱される。最終曲げリング(7b)上に配置された窓板(1、2)は、熱照射によって表面内で事前曲げされる。このために、温度勾配は中間領域(C)において窓板(1、2)の上方で設定され、異なる加熱によって異なる表面曲げが可能となる。加熱装置(6)は好ましくは、個々の個別制御可能な加熱タイルの配列を含む。タイルの異なる熱放射の結果、窓板(1、2)上に異なる温度領域が実現され得る。そして、窓板は第二吸引装置(15)によって最終曲げ領域(D)内で持ち上げられ、好ましくは凹状の対向金型(16)に対してプレスされ、成形される。対向金型は、第二吸引装置(15)と比較して「逆の」幾何形状を有する。次に、窓板(1、2)は最終曲げリング(7b)上に配置されて冷却される。
【符号の説明】
【0034】
1 第一窓板
2 第二窓板
3 可動曲げリングホルダ
4 炉
5 (第一)吸引装置
6 加熱装置
7a 事前曲げリング
7b 最終曲げリング
8 対向枠組
9 カバー
10 搬送装置
11 空気バッフル
12 接触面
13 空気流
14 縁領域
15 第二吸引装置
16 対向金型
17 第三吸引装置
18 窓板と空気バッフルとの間の距離
A 予備加熱領域
B 事前曲げ領域
D 第二曲げ領域
C 加熱領域
E 冷却領域