(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714731
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】パターン付けされた柔軟性の透明な導電性シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20150416BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20150416BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
H01B5/14 B
H01B13/00 503D
B32B7/02 104
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-555722(P2013-555722)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公表番号】特表2014-511549(P2014-511549A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】CN2011001910
(87)【国際公開番号】WO2012122690
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2013年8月28日
(31)【優先権主張番号】201110058431.X
(32)【優先日】2011年3月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513218053
【氏名又は名称】ナンチャン オー−フィルム テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ツゥイ チェン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ユーロン
(72)【発明者】
【氏名】チェン リンセン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シャオホン
【審査官】
渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−284879(JP,A)
【文献】
特開2003−198185(JP,A)
【文献】
特開2000−277977(JP,A)
【文献】
特開平11−266095(JP,A)
【文献】
特開2003−266583(JP,A)
【文献】
特開2012−160291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
H01B 13/00
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン付けされた柔軟性の透明な導電性シートであって、前記シートは、下から上に、
柔軟性の透明な基板と、
前記基板に一体に結合された透明なインプリントグルーと、
前記透明なインプリントグルーの表面上に配置された導電性材料とを含み、
前記透明なインプリントグルーの前記表面は、パターン付けされると共に相互に連結されたトレンチ網状構造を備え、前記トレンチ網状構造の外部の面積全体は、前記シートの面積の80%を超え、前記トレンチの深さは、前記透明なインプリントグルーの厚さよりも小さく、前記導電性材料は、焼結前の導電性インキであると共に焼結後の導電性膜であり、前記導電性膜は、前記トレンチ網状構造の底部に均一に充填されると共に相互に連結され、前記導電性膜の厚さは、前記トレンチ網状構造の前記深さよりも小さく、前記シートは、前記導電性膜と、前記トレンチ網状構造の外部に位置する光透過領域とで形成された導電性網状構造を含み、
a×b>tという前提を満たすように前記トレンチ網状構造の幾何学的構造及び線幅dが定められ、tは、所望の透明な導電性シートの光透過率を表し、aは、前記透明な複合材料の可視光における光透過率を表し、bは、前記トレンチ網状構造の外部の光透過面積と前記シートの全面積の比を表し、
前記トレンチ網状構造に属する任意のトレンチの半径方向断面は、トレンチ幅よりも大きいトレンチ深さを有する長方形であり、前記トレンチ幅は、500nm〜10μmである、
パターン付けされた柔軟性の透明な導電性シート。
【請求項2】
前記パターン付けされると共に相互に連結されたトレンチ網状構造は、基本ユニットとして多角形トレンチ、丸形トレンチ、又はこれらの組み合わせを用いたトレンチ組み合わせであり、前記多角形の形状は、正方形、長方形、正六角形、正三角形及びこれらの組み合わせから成る群から選択され、2つの隣り合う基本ユニットは、共用側部を介して互いに連通し、或いは、2つの隣り合う基本ユニットは、別個のトレンチアレイを形成するよう単一のトレンチを介して互いに連通している、請求項1記載のパターン付けされた柔軟性の透明な導電性シート。
【請求項3】
前記透明なインプリントグルーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー及びUV硬化性ポリマーから成る群から選択された膜構造体であり、前記インプリントグルーの可視光に関する光透過率は、90%を超える、請求項1記載のパターン付けされた柔軟性の透明な導電性シート。
【請求項4】
前記導電性膜は、焼結後の通常の状態において中実の柔軟性膜構造を呈する金属、カーボンナノチューブ、グラフェン(graphene)インキ及び導電性ポリマー材料から成る群から選択された少なくとも1つである、請求項1記載のパターン付けされた柔軟性の透明な導電性シート。
【請求項5】
請求項1記載のパターン付けされた柔軟性の透明な導電性シートを製造する方法であって、
I.要望に従って導電性網状構造の三次元構造体を設計すると共に決定するステップを含み、前記導電性網状構造は、前記シートの透明なインプリントグルー上のトレンチ網状構造に従って調製され、前記トレンチ網状構造の外部の全面積は、前記シートの面積の80%を超え、前記トレンチの深さは、前記トレンチの幅よりも大きく、前記トレンチ幅は、500nm〜10μmであり、該導電性網状構造の三次元構造体を設計するステップは、
(1)前記透明な導電性シートを製造するための原材料を選択するステップを含み、前記原材料は、柔軟性の透明な基板、透明なインプリントグルー及び導電性材料を含み、
(2)前記透明なインプリントグルーを前記基板の表面上に一定の厚さで塗布して透明な複合材料を形成し、前記透明な複合材料の可視光における光透過率aを定めるステップを含み、
(3)a×b>tという前提で前記トレンチ網状構造の幾何学的構造及び線幅dを定めるステップを含み、tは、所望の透明な導電性シートの光透過率を表し、bは、前記トレンチ網状構造の外部の光透過面積と前記シートの全面積の比を表し、
(4)得られた前記トレンチ深さと組み合わされる前記導電性インキの抵抗及び固形分並びに前記透明な導電性シートの表面抵抗率の試験結果に従ってトレンチ深さhを定めるステップを含み、
II.リソグラフィ技術とマイクロエレクトロフォーミング又はダイヤモンド切断とを組み合わせたマイクロマシニングプロセスを用いて前記トレンチ網状構造と相補する微細構造を有するダイを製造するステップを含み、
III.インプリント技術を用いて前記透明なインプリントグルー上に前記トレンチ網状構造を形成するステップを含み、
IV.導電性インキを前記トレンチ網状構造内に充填して前記導電性インキを焼結するステップを含む、方法。
【請求項6】
ステップIVにおいて前記導電性インキを充填する方法は、スクラッチ又はエーロゾル印刷を含む、請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な導電性シートの製造方法に関し、特にインプリンティング(imprinting)及びスクラッチング(scratching)導電性インキ技術に基づく透明な導電性シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な導電性シートは、良好な導電率を有すると共に可視光において高い透過率を有するシートである。現在、透明な導電性シートは、例えばフラットパネルディスプレイ(平面型表示装置)、太陽電池デバイス、タッチパネル及び電磁遮蔽のような分野で広く用いられており、かくして極めて広い市場空間が得られている。軽量且つ薄型の方向に向かうデバイスの急速な開発により、柔軟性の(フレキシブルな)透明な導電性シートがその薄さ、軟らかさ等の特徴により研究の的になっている。
【0003】
柔軟性の透明な導電性シートは、一般に、2つの形式、即ち、パターン付け型と非パターン付け型に区分される場合がある。最も実用的な用途、例えばタッチスクリーンでは、前者は、使用前に透明な導電性膜(フィルム)をパターン付けするために露光、イメージング、エッチング及びクリーニングプロセスを必要とする場合が多い。他方、後者は、疑いもなく、生産効率が高いこと及び複雑であり且つ容易に環境汚染を生じさせるパターン付けプロセスが省かれていることにより透明な導電性シートの主要な開発方向である。
【0004】
ITO(インジウム錫酸化物)は、透明な導電性シートの市場を席巻している。パターン付けITO膜を製造する方法は、主として、スクリーン印刷、インキジェット印刷、及び半導体製造プロセスにおけるリフトオフ法を含む。しかしながら、インジウム鉱物資源の制限及びITOの貧弱な耐曲げ性に起因して、ナノメタル(nano-metal)材料を利用しているパターン付けされた透明な導電性シートは、上述の技術背景下において最適な解決手段となっている。
【0005】
ナノメタル材料を利用しているパターン付けされた透明な導電性シートの製造方法は、通常、次のステップ、即ち、まず最初に、ナノ粒子サイズを有する金属材料で導電性インキを調製するステップ、及び、次に改良型印刷法を実施して導電性インキを透明な基板の柔軟性表面上に印刷するステップ、最後に導電性インキを焼結して所望の導電性網状構造を形成するステップを含む印刷法である。網状組織のネットワーク電線の幅は、人間の目の解像力の限度を超えており、網状組織電線なしの柔軟性表面は、光透過領域である。表面抵抗率(surface square resistance )及び光透過率は、電線の幅及び幾何学的形状を変えることによって或る特定の範囲内で制御可能である。優れた性能を有するパターン付けされた柔軟性の透明な導電性シートは、日本の企業である大日本印刷(Dai Nippon Printing)、富士フィルム(Fujifilm)及びグンゼ(Gunze)並びにドイツ国企業であるポリアイシー(PolyIC)により印刷法を用いて得られている。これらのうちで、ポリアイシー社により得られるシートは、15μmのグラフィックス解像力、0.4〜1Ω/sqの表面抵抗率及び80%を超える光透過率を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それにもかかわらず、印刷法によって製造された透明な導電性シートの導電性網状構造は、透明な基板の表面上に露出した突出構造体であり、かくして、導電性網状構造の耐引掻き性及び掻き傷(スクラッチ)防止性能は、貧弱である。加うるに、この構造体のグラフィックス解像力は、印刷技術によって制限されており、これを高めることが殆どできない。高鮮明度(ハイデフィニション)という用途の要件を満たすため、網状構造のグラフィックス解像力を一段と減少させなければならない。最後に、印刷技術の制限に起因して、固定線幅の導電性インキの量も又、増やすのが困難であり、換言すると、線幅及び導電性インキが決定されていることを前提として、導電性材料の量を増大させたりシートの導電性を向上させたりすることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先行技術の欠点を解決するため、本発明は、パターン付けされた柔軟性の透明な導電性シート及び導電性網状構造を透明なポリマーの層のトレンチ中に埋め込み、導電性シートの耐引掻き性を向上させ、固定線幅中の導電性シートの体積を増大させ、かくして導電性シートの導電性を一段と向上させるように柔軟性の透明な導電性シートを製造する方法を提供する。
【0008】
本発明の一目的では、技術的解決手段は、次のように提供される。
【0009】
パターン付けされた柔軟性の透明な導電性シートは、下から上に、柔軟性の透明な基板と、基板に一体に結合された透明なインプリントグルーと、透明なインプリントグルーの表面上に配置された導電性材料とを含み、透明なインプリントグルーの表面は、パターン付けされると共に相互に連結されたトレンチ網状構造を備え、トレンチ網状構造の外部の面積全体は、シートの面積の80%を超え、トレンチの深さは、透明なインプリントグルーの厚さよりも小さく、導電性材料は、焼結前の導電性インキであると共に焼結後の導電性膜であり、導電性膜は、トレンチ網状構造の底部に均一に充填されると共に相互に連結され、導電性膜の厚さは、トレンチ網状構造の深さよりも小さく、シートは、導電性膜及びトレンチ網状構造の外部に位置する光透過領域で形成された導電性網状構造を含む。
【0010】
好ましくは、パターン付けされると共に相互に連結されたトレンチ網状構造は、基本ユニットとして多角形トレンチ
、丸形トレンチ、又はこれらの組み合わせを用いたトレンチ組み合わせであり、
多角形の形状は、正方形、長方形
、正六角形、正三角形及びこれらの組み合わせから成る群から選択され、2つの隣り合う基本ユニットは、共用側部を介して互いに連通し、或いは、2つの隣り合う基本ユニットは、別個のトレンチアレイを形成するよう単一のトレンチを介して互いに連通している。
【0011】
好ましくは、トレンチ網状構造に属する任意のトレンチの半径方向断面は、トレンチ幅よりも大きいトレンチ深さを有する長方形であり、トレンチ幅は、500nm〜10μmである。
【0012】
好ましくは、透明なインプリントグルーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー及びUV硬化性ポリマーから成る群から選択された膜構造体であり、インプリントグルーの可視光に関する光透過率は、90%を超える。
【0013】
好ましくは、導電性膜は、焼結後の通常の状態において中実の柔軟性膜構造を呈する金属、カーボンナノチューブ、グラフェン(graphene)インキ及び導電性ポリマー材料インキから成る群から選択された少なくとも1つである。
【0014】
加うるに、本発明の別の目的では、技術的解決手段は、次のように提供される。
【0015】
パターン付けされた柔軟性の透明な導電性シートを製造する方法は、I.要望に従って導電性網状構造の三次元構造体を設計すると共に決定するステップを含み、導電性網状構造は、シートの透明なインプリントグルー上のトレンチ網状構造に従って調製され、トレンチ網状構造の外部の全面積は、シートの面積の80%を超え、トレンチの深さは、トレンチの幅よりも大きく、II.リソグラフィ技術とマイクロエレクトロフォーミング又はダイヤモンド切断とを組み合わせたマイクロマシニングプロセスを用いてトレンチ網状構造と相補する微細構造を有するダイを製造するステップを含み、III.インプリント技術によりダイを用いて透明なインプリントグルー上にトレンチ網状構造を形成するステップを含み、IV.導電性インキをトレンチ網状構造内に充填して導電性インキを焼結するステップを含む。
【0016】
好ましくは、ステップIにおいて、導電性網状構造の三次元構造体の設計は、透明な導電性シートを製造するための原材料を選択するステップを含み、原材料は、柔軟性の透明な基板、透明なインプリントグルー及び導電性材料を含み、導電性網状構造の三次元構造体の設計は、透明なインプリントグルーを基板の表面上に一定の厚さで塗布して透明な複合材料を形成し、透明な複合材料の可視光における光透過率aを定めるステップと、a×b>tという前提でトレンチ網状構造の幾何学的構造及び線幅dを定めるステップとを更に含み、tは、所望の透明な導電性シートの光透過率を表し、bは、トレンチ網状構造の外部の光透過面積とシートの全面積の比を表し、導電性網状構造の三次元構造体の設計は、更に、得られたトレンチ深さと組み合わされる導電性インキの抵抗及び固形分並びに透明な導電性シートの表面抵抗率の試験結果に従ってトレンチ深さhを定めるステップを含む。
【0017】
好ましくは、ステップIVにおいて導電性インキを充填する方法は、スクラッチ又はエーロゾル印刷を含む。
【0018】
本発明は、以下の特徴及び利点を有する。
【0019】
導電性インキをトレンチ内に充填して焼結し、それにより透明な導電性シートの導電性網状構造を形成することが提案されている。基本的な着想は、十分な量の導電性インキを透明なインプリントグルーのトレンチ内に充填し、次に導電性インキを乾燥させて焼結され、それにより透明な導電性シートを形成することにある。導電性材料の特定の体積比は、一般に小さいので、その結果、導電性材料シートの厚さは、トレンチの深さよりも小さい。したがって、この方法によって得られる導電性網状構造は、透明なインプリントグルーのトレンチ中に埋め込まれて良好に保護され、従って耐引掻き性及び掻き傷防止性能が大幅に向上する。
【0020】
長方形断面のトレンチ及び1:1よりも大きい深さ/幅の比を用いて導電性インキの流れを閉じ込めることが提案される。焼結前において、印刷技術において得られた導電性シートの断面を
図1a及び
図1bに示されているように本質的に半球形に形作る。線幅が同一であるという条件の下では、その面積は、「幅よりも大きい深さ」を持つ長方形の面積よりも絶対に小さい。したがって、この方法は、固定された線幅を有する導電性シートの体積を最大にすることができ、かくして、透明な導電性シートの導電率を最大まで向上させる。これは、従来型の透明な導電性シートとは異なる第2の技術革新である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】焼結前の導電性インキの概略断面図である。
【
図1b】焼結前のトレンチ内に充填されている導電性インキの概略断面図である。
【
図2】本発明のトレンチ網状構造の実施形態によって焼結された透明な導電性シートの概略平面図である。
【
図3】
図2に示されている焼結後の透明な導電性シートの等角斜視図である。
【
図4】トレンチ網状構造を設計する方法の流れ図である。
【
図5】本発明のトレンチ網状構造の別の実施形態によって焼結された透明な導電性シートの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を詳細に説明するために図面を参照する。
【0023】
実施例1:基本ユニットとして正六角形トレンチを用いたトレンチ組み合わせによって透明な導電性シートを製造する。
【0024】
図示の実施形態では、
図2及び
図3を参照すると、パターン付けされた透明な導電性シートは、柔軟性の透明な基板11、基板11に一体に結合された透明なインプリントグルー12の層及び透明なインプリントグルー12のトレンチの底部に均一に充填された導電性膜13を有する。
【0025】
柔軟性の透明な基板11は、厚さ100μmのPETである。透明なインプリントグルー12は、厚さ5μmの無溶剤のUV硬化性アクリル樹脂である。透明なインプリントグルー12の表面上に構成されたトレンチ網状構造は、六角形アレイを形成している。六角形アレイの六角形外接円の半径rは、5μmに等しく、トレンチ幅dは、500nm〜10μm、好ましくは1μmであり、深さhは、2μmであり、側壁の角度は、約82°である。焼結される導電性膜13は、透明なインプリントグルー12の底部内に均一に充填されて相互連結された銀である。銀膜の厚さは、約300nmである。銀膜で満たされたトレンチ網状構造は、導電性網状構造を形成し、トレンチの外部の領域は、非導電性光透過領域である。トレンチの外部の全面積と透明な導電性シートの全面積の比cは、82.6%である。可視光における透明な導電性シートの光透過率は、72%であり、表面抵抗率は、2Ω/sqである。
【0026】
図4を参照すると、パターン付けされた柔軟性の透明な導電性シートを製造する方法は、特に、以下のステップを有する。
【0027】
I.導電性網状組織、即ちトレンチ網状組織の二次元パターンを要望に従って設計し、所望のトレンチ深さを定める。
図3に示されているように、設計プロセスでは、特に、光透過率が90%を超えるPETを選択し、この実施形態では、PETは、可視光においてa=90%の光透過率及び100μmの厚さを有し、透明なインプリントグルー12は、粘度が100cPの無溶剤UV硬化性アクリル樹脂であり、導電性インキは、粒子サイズが2〜10nm、固形分が約41%、粘度が53cP、表面張力が30ダイン/cmのナノ銀導電性インキであり、厚さ5μmのUVインプリントグルー12がPET11の表面上に塗布され、可視光における透明な複合基板の光透過率は、a=90%として定められ、t>72%(tは、絶対透過率を表す)の透明な導電性シートの透過率及びa×b>tの設計仕様に従って、b>80%を得、良好な等方性抵抗を備えた六角形ハニカムトレンチ網状構造を選択し、bを前提として、トレンチ幅d=1μmをダイ処理性能と組み合わせて定め、銀インキの固形分は、約32%であり、焼結温度は、140℃であり、焼結時間は、5分であり、抵抗率の測定値は、2.5μΩ・cmである。透明な導電性シートの表面抵抗率は、10Ω/sq未満であることが要求される。上述の条件下において、試験トレンチ深さhが2μmに等しい場合、結果として生じる表面抵抗率は、8Ω/sqであり、これは、設計要件を満たしている。
【0028】
II.DMDを利用したレーザ直接書込プレートセッタ(platesetter)を用いて、トレンチ網状構造を扁平なガラスの表面上に塗布されたフォトレジスト層中に構成し、次に、マイクロエレクトロフォーミング技術を用いてトレンチ網状構造と相補する微細構造を有するNi膜ダイを製造し、このダイをローラの表面上に塗布してローラダイを形成する。
【0029】
III.ロールツーロールUVインプリンティング技術を用いて、設計済みのトレンチ網状構造をPET11の表面の透明なインプリントグルー12上に形成する。透明なインプリントグルー12の硬化波長は、365nmであり、累積照射エネルギーが360〜500mj/cm
2に達すると、グルーが硬化する。
【0030】
IV.スクラッチ法を用いて導電性銀インキをトレンチ網状構造内に充填する。具体的に説明すると、このスクラッチ法は、次のステップ、即ち、(1)厚さ5μmの銀インキを透明なインプリントグルー12の表面上に塗布するステップ、(2)トレンチの外側に位置した銀インキを鋼スクレーパで掻き取るステップ、(3)赤外線支援熱風オーブンを用いて銀インキを焼結し、導電性インキ網状構造を形成するステップを含み、焼結温度は、140℃であり、焼結時間は、5分である。
【0031】
実施例2:基本ユニットとして正方形トレンチとのトレンチ組み合わせによって透明な導電性シートを製造する。
【0032】
この実施形態では、
図5を参照すると、パターン付けされた透明な導電性シートは、柔軟性の透明な基板11、基板11上に被着された透明なインプリントグルー12の層及び透明なインプリントグルー12のトレンチの底部に均一に充填された導電性膜13を有する。
【0033】
柔軟性の透明な基板11は、厚さ50μmのPCである。透明なインプリントグルー12は、厚さ6μmのPMMAである。透明なインプリントグルー12の表面中に構成されたトレンチ網状構造は、正方形アレイを形成している。正方形の辺の長さは、400μmであり、トレンチの幅dは、10μmであり、深さhは、11μmであり、側壁の角度は、約88°である。焼結される導電性膜13は、銅であり、これは、透明なインプリントグルー12の底部内に均一に充填されて相互連結される。銅膜の厚さは、約1μmである。銅膜で満たされたトレンチ網状構造は、導電性網状構造を形成し、トレンチの外部の領域は、非導電性光透過領域である。トレンチの外部の全面積と透明な導電性シートの全面積の比cは、95.5%である。可視光における透明な導電性シートの光透過率は、89%であり、表面抵抗率は、7Ω/sqである。
【0034】
図4を参照すると、パターン付けされた柔軟性の透明な導電性シートを製造する方法は、特に、以下のステップを有する。
【0035】
I.導電性網状組織、即ちトレンチ網状組織の二次元パターンを要望に従って設計し、所望のトレンチ深さを定める。
図3に示されているように、設計プロセスでは、特に、高い光透過率を有するPCを選択し、PCは、可視光においてa=91%の光透過率及び50μmの厚さを有し、透明なインプリントグルー12は、粘度が4000cPのPMMAであり、導電性インキは、粒子サイズが2〜10nm、固形分が約40%、粘度が8〜18cP、表面張力が17〜21mN/mのナノ銅導電性インキであり、厚さ15μmのPMMAがPET11の表面上に塗布され、可視光における透明な複合基板の光透過率は、a=91%として定められ、t>85%(tは、絶対透過率を表す)の透明な導電性シートの透過率及びa×b>tの設計仕様に従って、b>93%を得、抵抗スクウェア(resistance square :表面抵抗率を備えた正方形を意味する)アレイ型トレンチ網状構造を選択し、bを前提として、トレンチ幅d=10μmをエーロゾル印刷性能と組み合わせて定め、銅インキの固形分は、約40%であり、抵抗率は、5〜7μΩ・cmである。透明な導電性シートの表面抵抗率は、10Ω/sq未満であることが要求される。上述の条件下において、試験トレンチ深さhが11μmに等しい場合、結果として生じる表面抵抗率は、7Ω/sqであり、これは、設計要件を満たしている。
【0036】
II.ダイヤモンド切断プロセスを用いて設計されているトレンチ網状構造を銅表面上に彫刻し、次に、マイクロエレクトロフォーミング技術を用いてトレンチ網状構造と相補する微細構造を有するNi膜ダイを製造し、このダイをローラの表面上に塗布してローラダイを形成する。
【0037】
III.ロールツーロールUVインプリンティング技術を用いて、設計済みのトレンチ網状構造をPET11の表面のPMMA12上に形成する。PMMAのインプリンティング温度は、160℃である。
【0038】
IV.エーロゾル印刷技術を用いて銅インキをトレンチ網状構造中に充填する。パルスUV硬化システムを用いて銅インキを焼結して導電性銅網状構造を形成する。パルスエネルギーは、207J/パルスであり、周波数は、25パルス/sであり、時間は、1秒である。
【0039】
2つの実施形態に関する上述の詳細な説明は、本発明の技術的解決手段の理解を容易にすることを目的にしているが、本発明の実施形態の範囲を限定するものではない。説明した実施形態では、透明な導電性シートの光透過率は、トレンチ幅dと六角形外接円の半径rの比を変えることによって自由に制御でき、透明な導電性シートの表面抵抗率は、トレンチ深さh及び銀インキの固形分を変えることによって自由に制御できる。導電性インキとしては、焼結後の通常の状態において中実の柔軟性膜構造を呈する他の金属インキ、カーボンナノチューブインキ、グラフェンインキ又は導電性ポリマー材料インキが挙げられる。
【0040】
加うるに、上述のパターン化されると共に相互に連結されたトレンチ網状構造は、基本ユニットとして多角形トレンチを用いたトレンチ組み合わせであり、基本ユニットの形状は、正方形(実施例2)、長方形、丸形、正六角形(実施例3)、正三角形及びこれらの組み合わせから成る群から選択され、2つの隣り合う基本ユニットは、共用側部を介して互いに連通し、或いは2つの隣り合う基本ユニットは、別個のトレンチアレイ(図示せず)を形成するよう単一のトレンチを介して互いに連通する。