(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714732
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】センサ機能を有する点火プラグのためのインシュレータ及びセンサ機能を有する点火プラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/40 20060101AFI20150416BHJP
G01L 23/22 20060101ALI20150416BHJP
G01L 23/10 20060101ALI20150416BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20150416BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20150416BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
H01T13/40
G01L23/22
G01L23/10
H01T13/20 B
F02P13/00 301J
F02D45/00 368S
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-558469(P2013-558469)
(86)(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公表番号】特表2014-514689(P2014-514689A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012054789
(87)【国際公開番号】WO2012126880
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2013年11月14日
(31)【優先権主張番号】A392/2011
(32)【優先日】2011年3月18日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513233713
【氏名又は名称】ピーゾクリスト・アドヴァンスド・センソリクス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ストゥルムセック・ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】バウムガルトナー・マーティン
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−093646(JP,A)
【文献】
特開平03−216983(JP,A)
【文献】
特開2005−340069(JP,A)
【文献】
実開昭63−029876(JP,U)
【文献】
実公昭07−001062(JP,Y1)
【文献】
実公昭16−019413(JP,Y1)
【文献】
特開2008−226840(JP,A)
【文献】
実公昭48−011581(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/40
F02D 45/00
F02P 13/00
G01L 23/10
G01L 23/22
H01T 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(8)と、該ケーシング(8)内に配置された少なくとも1つの測定装置(12)とを備え、圧力測定装置(12)が、前記測定装置(12)のうち1つとして設けられているとともに圧力測定要素(12a)を備え、該圧力測定要素が前記ケーシング(8)の燃焼室側の凹部に配置されており、前記圧力測定要素が、センサダイヤフラムから圧力を負荷される圧電素子を備えた、センサ機能を有する点火プラグにおいて、
前記センサダイヤフラムが中心領域において肉厚部を備えていることと、該肉厚部が、前記圧電素子から離間するように完全に外方へ向けられていることとを特徴とする点火プラグ。
【請求項2】
当該点火プラグが、高電圧接続部を有するインシュレータ上部(2)を備えているとともに、前記燃焼室に対向する、前記インシュレータ上部(2)に比して小さな径又はこれと同一の径を有するインシュレータ下部(4)を備えていることと、前記インシュレータ下部(4)に、雄ネジを備えたキャップナット(7)が固定されていることとを特徴とする請求項1記載の点火プラグ。
【請求項3】
前記インシュレータ上部(2)へ向けられたショルダ部(6)を備えた少なくとも1つのカウンタ軸受が前記キャップナット(7)の固定のために前記インシュレータ下部(4)に設けられていることを特徴とする請求項2記載の点火プラグ。
【請求項4】
前記インシュレータ上部(2)へ向いた前記キャップナット(7)の縁部(7a)が、前記ショルダ部(6)が前記インシュレータ下部(4)に後方から係合するように内方へ向けて厚くされているか、又は折り曲げられていることを特徴とする請求項3記載の点火プラグ。
【請求項5】
前記ショルダ部(6)と前記キャップナット(7)の間に少なくとも1つの保持要素(9,10,11)が設けられており、該保持要素が、前記キャップナット(7)の保持範囲(7a)と前記インシュレータ下部(4)のショルダ部(6)の間の断面差を調整することを特徴とする請求項3記載の点火プラグ。
【請求項6】
前記キャップナット(7)が、その長手平面において分割されて構成されていることを特徴とする請求項3記載の点火プラグ。
【請求項7】
前記インシュレータ上部(2)及び前記インシュレータ下部(4)がそれぞれ中心点周辺に放射状に対称に構成されており、前記インシュレータ下部(4)及びこれに固定された前記キャップナット(7)の軸(U)が前記インシュレータ上部(2)の軸(O)に対して径方向にずらされているとともに、これにより前記インシュレータ下部(4)が前記インシュレータ上部(2)において偏心して当接していることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項8】
前記インシュレータ上部(2)が前記インシュレータ下部(4)と共に一体に構成されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項9】
少なくとも前記高電圧接続部が従来の点火プラグに相当することを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項10】
前記インシュレータ(1)が、前記キャップナット(7)によって前記ケーシング(8)のねじ穴(8b)に螺着されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項11】
貫通孔(8a)が前記ケーシング(8)において偏心して配置されており、前記インシュレータ下部(4)のみが偏心した前記貫通孔(8a)に収容されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項12】
貫通孔(8a)が点火プラグ軸に対して同軸に配置されているとともに、前記インシュレータ下部(4)に対して偏心して配置された前記インシュレータ上部(2)も同様に前記点火プラグ軸に対して同軸に配向されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項13】
前記インシュレータ下部(4)がその自由端へ向いた他のショルダ部(13)を有していること、及び
当該点火プラグの前記ケーシング(8)における貫通孔(8a)に前記インシュレータの前記ショルダ部(13)に対するストッパ(8c)が前記貫通孔(8a)の燃焼室側の端部から間隔をもって設けられており、該間隔は、前記インシュレータ(1)が前記貫通孔(8a)に螺着されるとすぐに前記他のショルダ部(13)の下方におけるインシュレータ端部(4a)の長さに関連して所望の点火位置が生じるよう設定されていること
を特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項14】
ユニオンナット(3)が前記インシュレータ上部(2)に設けられており、該ユニオンナットの長さが、前記ケーシング(8)におけるショルダ部(8d)から当該ユニオンナット(3)の上端部までの全体長さが通常の点火プラグに相当するように設定されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の点火プラグ。
【請求項15】
前記インシュレータ下部(4)における、前記インシュレータ上部(2)に隣接する上端部に、雄ネジを備えたキャップナット(7)が固定されていることを特徴とする請求項2記載の点火プラグ。
【請求項16】
前記インシュレータ下部(4)に、雄ネジを備えたキャップナット(7)が脱落不能に固定されていることを特徴とする請求項2記載の点火プラグ。
【請求項17】
前記インシュレータ下部(4)における、前記インシュレータ上部(2)に隣接する上端部に、雄ネジを備えたキャップナット(7)が脱落不能に固定されていることを特徴とする請求項2記載の点火プラグ。
【請求項18】
前記ショルダ部(6)が前記インシュレータ下部(4)における肉厚部又は周設されたくぼみによるものであることを特徴とする請求項3,15,16又は17記載の点火プラグ。
【請求項19】
前記保持要素がばねリング(9)、スナップリング(10)又は嵌入された湾曲棒(11)であることを特徴とする請求項5記載の点火プラグ。
【請求項20】
前記インシュレータ上部(2)が前記点火プラグ軸に対して径方向に対称に配向されていることを特徴とする請求項12記載の点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧接続部を有するインシュレータ上部と、燃焼室へ向きつつ前記インシュレータ上部に比して小さな径又はこれと同一の径を有するインシュレータ下部とを備えた、センサ機能を有する点火プラグのためのインシュレータと、インシュレータを収容するための貫通した孔を有するケーシングと、該ケーシング内に配置された少なくとも1つの測定装置とを備えた、センサ機能を有する点火プラグとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼過程の判定のための本質的な要素は、燃焼室内において生じる圧力である。このとき、できる限りわずかな追加的な手間を要するべきであり、特に圧力測定のために、燃焼室に追加的な穴を設けないで済むようにすべきである。そのため、点火プラグを追加的に圧力測定機能のために適応させることがすでに提案されている。このような点火プラグは、点火プラグのケーシングに配置された圧力測定装置を用いるものである。
【0003】
圧力測定装置のために利用できるスペースを拡大するために、圧力測定を行う点火プラグが開発された。インシュレータのためのこの点火プラグの長孔は点火プラグケーシングにおいて偏心して配置されているため、点火プラグケーシングにおける肉厚が一部は小さく、一部は大きく形成され、大きい肉厚部に圧力測定装置を配置することができる。例えば、特許文献1には、貫通しつつケーシングにおいて偏心して形成されたインシュレータの収容のための長孔が開示されており、この長孔では、大きい肉厚部の範囲に圧力測定装置が配置されている。このとき、インシュレータは、他部材で形成されているとともに、少なくとも、高電圧接続部を備えたインシュレータ上部と、燃焼室へ向いたインシュレータ下部とで構成されている。これらインシュレータ上部とインシュレータ下部の間には、絶縁性及び弾性を有する充填要素が配置されている。これにより、例えば特許文献2において設けられているようなオフセットされたアダプタ部なしに、従来の点火プラグにおけるような接続寸法が得られるとともに、同時にインシュレータの破損を回避することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1074828号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0441157号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、できる限り簡易な製造及び取付において点火位置の調整及び測定装置の配置についての大きな自由度を提供しつつも寸法及び接続寸法が従来の点火プラグに良好に対応する、冒頭に記載した種類のインシュレータを提供することにある。
【0006】
測定機能を有する点火プラグについての目的は、簡易かつ迅速な組立及び場合によっては電気部品の交換を可能とする構造的に簡易な発展形成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に基づき、インシュレータ下部に、好ましくはその前記インシュレータ上部に隣接する上端部に、雄ネジを備えたキャップナットが好ましくは脱落不能に固定されている。これにより、測定点火プラグのケーシングにおけるインシュレータの簡易かつ確実な取付が保障される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記インシュレータ上部へ向けられたショルダ部を備えた少なくとも1つのカウンタ軸受が前記キャップナットの固定のために前記インシュレータ下部に設けられており、好ましくは前記インシュレータ下部における肉厚部又は周設されたくぼみによるものである。これにより、測定点火プラグにおける組込へのインシュレータの簡易かつ迅速な準備が可能である。
【0009】
1つのバリエーションでは、前記インシュレータ上部へ向いた前記キャップナットの縁部が、前記ショルダ部が前記インシュレータ下部に後方から係合するように内方へ向けて厚くされているか、又は折り曲げられている。
【0010】
これに代えて、前記ショルダ部と前記キャップナットの間に少なくとも1つの保持要素が設けられており、好ましくはばねリング、スナップリング又は嵌入された湾曲棒である該保持要素が、前記キャップナットの保持範囲と前記インシュレータ下部のショルダ部の間の断面差を調整することも可能である。
【0011】
本発明の他の実施形態は、前記キャップナットがその長手平面において分割されて構成されていることを特徴としている。このとき、キャップナットの両半部は、ショルダ部に後方から係合するその部分においてまさにこれに後方から係合する長手位置に配置され得るとともに、接合されたナットをインシュレータにおいて固定するために、続いて隣接され、接合され得る。
【0012】
簡易な取付及び当該の組付空間の要件と同時に接続部をできる限り変更せずに維持することができるよう、本発明の他の実施形態によれば、前記インシュレータ上部及び前記インシュレータ下部がそれぞれ本質的に中心点周辺に放射状に対称に構成されており、前記インシュレータ下部の軸及びこれに固定された前記キャップナットが前記インシュレータ上部の軸に対して径方向にずらされているとともに、これにより前記インシュレータ下部が前記インシュレータ上部において偏心して当接している。
【0013】
このとき、好ましくは、前記インシュレータ上部が前記インシュレータ下部と共に一体に構成されている。
【0014】
さらに、前記高電圧接続部の少なくとも1つが本質的に従来の点火プラグに相当することが好ましい。
【0015】
上記目的を達成するため、点火プラグは、本発明によれば、前記インシュレータが、上述のように構成されているとともに、前記キャップナットによって前記ケーシングのねじ穴に螺着されている。このとき、このねじ穴は、点火プラグの長手軸に対して同軸又は平行に構成され得るか、又はこれに対して小さな角度をもって傾斜され得る。
【0016】
このような点火プラグは、好ましくは更に、前記孔が前記ケーシングにおいて偏心して配置されており、前記インシュレータ下部のみが偏心した前記孔に収容されていることを特徴としている。
【0017】
また、上述の点火プラグの好ましい実施形態は、前記孔が本質的に点火プラグ軸に対して同軸に配置されているとともに、前記インシュレータ下部に対して偏心して配置された前記インシュレータ上部も同様に前記点火プラグ軸に対して同軸及び好ましくは中心点周辺に放射状に対称に配向されていることを特徴としている。
【0018】
冒頭に記載し、場合によっては上述の特徴を有するインシュレータを備えたセンサ機能を有する点火プラグは、好ましくは、前記測定装置のうち1つとして圧力測定装置が設けられているとともに、前記ケーシングの燃焼室側の凹部に配置された圧力測定要素を備えていることを特徴としている。
【0019】
このとき、前記圧力測定要素がセンサダイヤフラムから圧力を負荷される圧電素子を備えており、前記センサダイヤフラムが中心領域において肉厚部を備えている。これにより、圧力測定を行う点火プラグにおいて、直列点火プラグの吸気空間が圧力測定を行う点火プラグの吸気空間によって、ハット上のダイヤフラムを有する側方の面取り部と共に置換されることで、直列点火プラグのデッドスペースを模造することができる。大きな側方のダイヤフラムによって、いずれにしても自動的に音響振動が部分的にフィルタ及び/又は平均化される。指示経路の存在時には、ダイヤフラムの中心領域における肉厚部によって指示経路長さが削減され得るとともに、そのため、音響振動周波数が明確に影響される。圧力測定要素の圧電素子上へのダイヤフラムの傾斜した載置により、ダイヤフラムは異なって形成されるが、中心領域における肉厚部を備えた特殊な形状により、ダイヤフラムの熱的な状態が均一化される。
【0020】
このとき、好ましい実施形態は、前記肉厚部が本質的に全体に対して外方へ、圧電素子から離れるように配向されていることを特徴としている。中実の部分が大部分においてセンサの外部に位置しているため、中実の外方へ向いて領域を有するこのようなダイヤフラム形状により、大部分は圧電式の圧力センサの非常にわずかな構造高さが可能である。上述のように形成されたダイヤフラムのガス側により、所定の体積におけるできる限り小さな表面を維持することも可能である。この結合の種類によって、径方向又は軸方向の固定が可能であるだけでなく、溶接過程によってダイヤフラムを2つの被覆面に固定することも可能である。
【0021】
本発明による点火プラグの他の実施形態は、前記インシュレータ下部がその自由端へ向いた他のショルダ部を有していること、及び当該点火プラグの前記ケーシングにおける前記孔に前記インシュレータの前記ショルダ部に対するストッパが前記孔の燃焼室側の端部から間隔をもって設けられており、該間隔は、前記インシュレータが前記孔に螺着されるとすぐに前記他のショルダ部の下方におけるインシュレータ端部の長さに関連して所望の点火位置が生じるよう設定されていることを特徴としている。
【0022】
このとき、好ましくは、ユニオンナットが前記インシュレータ上部に設けられており、該ユニオンナットの長さが、前記ケーシングにおけるショルダ部から当該ユニオンナットの上端部までの全体長さが通常の点火プラグに相当するように設定されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、できる限り簡易な製造及び取付において点火位置の調整及び測定装置の配置についての大きな自由度を提供しつつも寸法及び接続寸法が従来の点火プラグに良好に対応する、冒頭に記載した種類のインシュレータを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】第1の実施形態における取付の異なる段階でのインシュレータ及びキャップナットを示す図である。
【
図1b】第1の実施形態における取付の異なる段階でのインシュレータ及びキャップナットを示す図である。
【
図1c】第1の実施形態における取付の異なる段階でのインシュレータ及びキャップナットを示す図である。
【
図1d】第1の実施形態における取付の異なる段階でのインシュレータ及びキャップナットを示す図である。
【
図2】インシュレータにおけるキャップナットの取付のための他の実施形態を示す図である。
【
図3】インシュレータにおけるキャップナットの取付のための他の実施形態を示す図である。
【
図4】インシュレータにおけるキャップナットの取付のための他の実施形態を示す図である。
【
図5a】本発明によるインシュレータに対する好ましい構造を示す図である。
【
図5b】本発明によるインシュレータに対する好ましい構造を示す図である。
【
図6】1つ及び自体のインシュレータを備えた、異なる点火位置を有する点火プラグのための複数の例を示す図である。
【
図8】
図7におけるキャップナットの左側における半部と、
図7におけるキャップナットの右側における半部とをインシュレータに完全に取り付けられた状態で示す図である。
【
図9】本発明による他の実施形態におけるインシュレータの側面図である。
【
図10】
図9のインシュレータに追加部材と共に取り付けられたキャップナットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
図1に示されたインシュレータ1は、原則的に、点火プラグの各種類に対して適したものであるが、特にセンサ機能を備えた点火プラグに適している。インシュレータ1は、インシュレータ上部2を備えており、このインシュレータ上部は、高電圧接続部、好ましくはユニオンナット3として支持している。少なくとも高電圧接続部に役立つインシュレータ1の部分は、この好ましい実施形態においては、このように本質的に従来の点火プラグの対応する部分に相当する。インシュレータ1はシリンダの燃焼室の近傍においてインシュレータ下部4を備えており、このインシュレータ下部は、インシュレータ上部2に比して小さな径あるいは小さな断面積を有している。
図9の実施形態に示されているように、両インシュレータ部分2,4が同一の断面積又は径を有していてもよい。
【0027】
好ましくは一部材で構成されるインシュレータ上部2とインシュレータ下部4の間の移行部の範囲では、インシュレータ下部4の長さの一部にわたって断面狭窄部5が設けられており、この断面狭窄部は、場合によってはより小さな断面厚さ部から燃焼室の方向へ続くことが可能である。このとき、いかなる場合でもインシュレータ上部2に対向しつつこのインシュレータ上部の下側からいくらか離間したショルダ部6が形成されている。インシュレータ上部2及びインシュレータ下部4が同一の径を有する
図9によるインシュレータ1の実施形態において分かるように、断面狭窄部5は周設されたくぼみ、凹部又は溝によって形成されることができ、このくぼみ、凹部又は溝は、インシュレータ1の両部分2,4を分離するものである。そして、ショルダ部6は、インシュレータ下部4に対向する側において溝の縁部によって形成されている。
【0028】
インシュレータ1を好ましくは交換可能に点火プラグにおいて使用することができるよう、
図1aにおいてはまだインシュレータ1から分離されて示されつつ雄ネジを備えたキャップナット7がこの特有の実施形態に基づきより細くされたインシュレータ下部4に好ましくは脱落不能に固定されている。
図1bから分かるように、キャップナット7は、ショルダ部6を超えてインシュレータ下部4まで押し込まれている。これにより、例えばキャップナット7の上縁部7aの断面狭窄部5への折り曲げによって固定を行うことができる。そして、折り曲げられた上縁部7aがインシュレータ下部4におけるショルダ部6に係合することにより、各部材のうち少なくとも1つの機械的な損傷を伴わないで、インシュレータ1及びキャップナット7から成る分離不能なユニット(
図1c参照)が形成される。このユニットは、
図1dに示すように、1つの部材として点火プラグのケーシング8へ螺着され得る。
【0029】
脱落不能なキャップナット7の固定のための他の可能性は、接着による考え得る固定に加えて、
図2〜
図4に示されている。
【0030】
ショルダ部6とキャップナット7の間には少なくとも1つの保持要素9,10又は11が設けられることができ、この保持要素は、場合によって生じるキャップナット7の保持範囲とインシュレータ下部4のショルダ部6との間の断面の差を調整するものである。
図2に示すように、この保持要素は、例えばスリットが付された、すなわちインシュレータ下部4にわたって延在するばねリングであり得る。キャップナット7のインシュレータ下部4及び更にばねリング9を超えた押込み時には、このばねリングは、キャップナット7の上縁部7aにおいて、内方へ向いたエッジ部によって押圧される。キャップナット7を更に押し込んだ後、ばねリング9が再び広がり、場合によってはキャップナット7のエッジ部の後方で狭いエッジ部に係合する。そして、キャップナット7及びばねリング9は、1つのユニットとしてインシュレータ下部4におけるショルダ部6に後方から係合し、これによりキャップナット7が再び脱落不能にインシュレータ1に固定されている。
【0031】
図3に示された他の代替的なキャップナット7のための固定手法として、このキャップナットが、まず、ショルダ部6が自由に位置するまでインシュレータ下部4へ押し込まれることが考えられる。そして、キャップナット7の後には、スナップリング10が断面狭窄部5へ設置される。この断面狭窄部の周囲は、キャップナット7の上端部7aが再びショルダ部6上に載置されたスナップリング10を超えて、及びすなわちショルダ部6を再び超えて脱落することがないような大きさとなっている。
【0032】
図4には、キャップナット7のインシュレータ1における脱落不能な固定のための他の考えられる実施形態が示されている。ここで、キャップナット7は、好ましくはその上縁部7aにおいて内側に位置しつつ周設された溝7bを有している。接線方向の孔7cによって湾曲棒11が溝7bへ嵌入されることができ、その結果、この湾曲棒11は、断面狭窄部5の範囲においてインシュレータ下部4の周囲に巻き付けられ、ショルダ部6上に載置される。そして、キャップナット7の上縁部7aは、ショルダ部6上に載置された湾曲棒11に後方から係合し、これによりインシュレータ1から再び脱落することがない。
【0033】
上述の全てのバリエーションは、同様の厚さのインシュレータ下部4及びインシュレータ上部2を備えたインシュレータ1の実施形態においても当然想定することができる。一例として、
図10には湾曲棒11を備えたバリエーションが示されており、この湾曲棒は、インシュレータ1の周設された溝5へキャップナット7の周設された溝としても嵌入されている。
【0034】
本発明の他の実施形態が
図7及び
図8に示されている。ここでは、分離した位置において半部7dと共に示す
図7の分解図から分かるとおり、キャップナット7がその長手平面において分割して構成されている。キャップナット7の両半部7dは、そのインシュレータ1におけるショルダ部6に後方から係合する部分、好ましくはここでも上縁部7aにおいてまさにこれに後方から係合する長手位置に配置され、このように接合されたインシュレータ1におけるキャップナット7を
図8に示すように固定するために、インシュレータ1の周囲に並置されるとともに接合される。
【0035】
センサ機能を備えた点火プラグに対して特別に、
図5に示されるようなインシュレータ1の本発明による実施形態が特に好ましい。ここで点火プラグのケーシング8は、例えば圧力センサのような測定装置を収容する必要があるとともに、そのため、偏心した孔8aがインシュレータ1の収容のために設けられる必要がある。
【0036】
このとき、孔8aは、原則的には任意の小さな角度だけ点火プラグの長手軸に対して傾斜することができる。ここに示された例においては好ましい配置が示されており、これにおいては、孔8aが点火プラグの長手軸に対して同軸に配置されている。
【0037】
インシュレータ上部2及び場合によっては細いか、あるいはより小さな断面積で形成されたインシュレータ下部4は、それぞれ本質的に中心点周辺に放射状部分の対称配置を有するよう構成されている。孔8aの偏心度を点火プラグのケーシング8において、及び点火プラグの上部の所望の中心を通る構成において考慮に入れるために、このとき、インシュレータ下部4の軸U及びこれに固定されたキャップナット7(
図5では不図示)がインシュレータ上部2の軸Oに対してずらされている。したがって、燃焼室から見た
図5bの図示から明らかなとおり、インシュレータ下部4は偏心してインシュレータ上部2に当接している。
図5のこの実施形態においても、インシュレータ上部2及びインシュレータ下部4は、好ましくは一体的に構成されている。
【0038】
図1d及び
図5aにおいてすでに本発明によるインシュレータ1の測定機能を有する点火プラグのケーシング8内でのキャップナット7による取付が示唆されている。本発明の他の観点を説明するために、
図6a〜
図6cにはより多くの詳細を備えたこのような点火プラグが示されている。
【0039】
センサ機能を有する例示された点火プラグは、インシュレータ1を収容するための貫通した孔8aを有するケーシング8を備えている。さらに、少なくとも1つの好ましくは圧力測定装置である測定装置12がケーシング8内に配置されている。上述の部分で説明したように、インシュレータ1は、キャップナット7によってケーシング8のねじ穴8bへ螺着されている。好ましくは、測定装置12のために十分な設置空間を確保するためにケーシング8における孔8aが配置されているとともに、単にインシュレータ下部4のみが偏心した孔8a内に収容されている。インシュレータ1の好ましい実施形態においては、
図5a及び
図5bに示されているように、インシュレータ上部2に対して偏心して設けられつつ場合によっては細いインシュレータ下部4によって、インシュレータ上部2は、同軸に、かつ、好ましくは点火プラグ軸に対して中心点周辺に放射状に対称に配向されることができるとともに、これにより従来の点火プラグのような点火システムへの接続が許容される。
【0040】
原則的にはセンサ機能を備えた各任意の点火プラグに対して具体的なケーシング及び/又はインシュレータの形状にかかわらず設けられ得る圧力測定装置は、圧力測定要素12aを点火プラグのケーシング8の燃焼室側の端部に備えている。この圧力測定要素は、ケーシング8の燃焼室側の凹部内に配置されている。典型的には、圧力測定要素12aはセンサダイヤフラムから圧力によって負荷を受ける圧電素子を備えており、センサダイヤフラムは、個々の範囲において肉厚部を備えることができる。この肉厚部は、好ましくは本質的に全体に対して外方へ、圧電素子から離れる方向へ配向されている。
【0041】
圧力測定要素12aの外部に中実の部分を備えたこのダイヤフラム形状により、実際の圧力センサあるいは圧電素子の非常にわずかな構造高さが可能である。さらに、直列の点火プラグのデッドスペースが通常のセンサ点火プラグよりも良好に模造されることができる。直列点火プラグの吸気空間は、圧力を測定する点火プラグの吸気空間と、ダイヤフラムを備えたその側方の面取り部によって置換される。
【0042】
大きな側方のダイヤフラムによって音響振動が自動的に部分的にフィルタされるか、あるいは平均化され、特に指示経路が存在する場合には、中央の肉厚部を有するダイヤフラムの「ハット形状」が支持経路の長さを減少させることができ、そのため、音響振動周波数が明確に影響される。
【0043】
圧力測定要素12aの圧電素子上へのダイヤフラムの傾斜した載置により、ダイヤフラムは異なって形成されるが、中心領域における肉厚部を備えた特殊な形状により、ダイヤフラムの熱的な状態が均一化される。
【0044】
また、外方へ向いた肉厚部を備えた形状も、所定のあらかじめ定められた体積においてできる限り小さな表面を維持するのに好ましい。この結合の種類によって、いずれにしても径方向又は軸方向の固定が可能であるだけでなく、溶接過程によってダイヤフラムを2つの被覆面に固定することも可能である。
【0045】
実際の応用については、測定機能を有する点火プラグにおいて、点火位置の調整のための可能性が望まれている。従来の測定点火プラグの構造においては、各点火位置に対して1つの独立したインシュレータを設けなければならなかった一方、以下に説明する本発明によるインシュレータ構造と、インシュレータガイドを備える点火プラグのケーシングにおける取付の態様とにおいては、充足性が得られる。このことは、技術的及び業務上の手間並びにこれに伴う製造コスト及び在庫を大幅に削減するものである。
【0046】
本発明によるインシュレータ1は、自由端を有するインシュレータ下部4すなわち燃焼室へ向いた他のショルダ部13を備えている。他のショルダ部13の下方における燃焼室側のインシュレータ端部4aは、一定である。しかしながら、孔8aの点火プラグのケーシング8の下端部からの異なる間隔において、インシュレータ1のショルダ部13のためのストッパ8cが設けられている。このストッパ8cの孔8aの燃焼室側の端部に対する間隔は、インシュレータ1が孔8aに螺着されるとすぐに他のショルダ部13の下方におけるインシュレータ端部4aの長さに関連して所望の点火位置が生じるよう設定されている。このとき、点火プラグの全体の長さを一定に維持するために、インシュレータ上部2に設けられたユニオンナット3の長さが、ケーシング8におけるショルダ部8dからユニオンナット3の上端部までの全体長さが通常の点火プラグの全体長さに相当するように設定される。
【符号の説明】
【0047】
1 インシュレータ
2 インシュレータ上部
3 ユニオンナット
4 インシュレータ下部
4a インシュレータ端部
5 断面狭窄部
6 ショルダ部
7 キャップナット
7a キャップナットの上縁部
7b 溝
7c 孔
7d 半部
8 ケーシング
8a 孔
8b ねじ穴
8c ストッパ
8d ショルダ部
9 保持要素(ばねリング)
10 保持要素(スナップリング)
11 保持要素(湾曲棒)
12 (圧力)測定装置
12a 圧力測定要素
13 ショルダ部
O 軸
U 軸