(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に配置された複数の導体からなる第1の導体パターンと、前記第1の方向と交差する第2の方向に配置された複数の導体からなる第2の導体パターンとを備えた位置検出装置における位置検出方法であって、
信号送信部によって、前記第1の導体パターンにスペクトラム拡散コードを供給し、
前記第2の導体パターンを構成する複数の導体を、互いが隣接する少なくとも第1の導体群と第2の導体群とに区分けし、導体選択部によって、前記第1の導体群を構成する各導体を選択する方向と前記第2の導体群を構成する各導体を選択する方向とが互いに異なるように前記複数の導体を選択するとともに、前記第1の導体群と前記第2の導体群の隣接する側に配置された導体の切替タイミングが一致するように前記複数の導体を選択し、
指示体による位置指示に基づいて、前記第2の導体パターンに生起した信号を信号検出部によって検出することを特徴とする位置検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された位置検出装置では、信号を検出する側のY軸電極を順次切り替えているため、位置検出対象となる範囲(面積)が大きくなってY軸電極の数が多くなると、1回の走査の時間、すなわち位置検出に時間がかかることになる。この位置検出に時間がかかる点については、走査領域を複数に分割し、各分割領域について同時に走査を行うことにより走査時間の短縮を図ることが考えられる。
【0005】
図15は、走査領域を複数に分割して各分割領域について同時に走査を行う場合の概略的な動作を示す図である。
図15に示す例では、走査領域全体がN分割されるものとし、各分割領域がブロック1、2、・・・、Nで示されている。各ブロックに含まれる縦線が電極(Y軸電極あるいはX軸電極)を、各ブロックの上部に配置された矢印が走査順番をそれぞれ示している。このように各ブロックにおける走査を並行して行うことにより、走査領域全体の走査時間を1/Nに短縮することが可能になり、位置検出の高速化が可能となる。
【0006】
図16は、X軸電極をN分割する場合に用いる切替スイッチS
1〜S
Nの具体例を示す図である。
図16に示すように、各切替スイッチS
1〜S
NではX軸電極を同じ方向(下から上)に順番に選択する。
【0007】
図17は、Y軸電極をN分割する場合に用いる切替スイッチT
1〜T
Nの具体例を示す図である。
図17に示すように、各切替スイッチT
1〜T
NではY軸電極を同じ方向(左から右)に順番に選択する。
【0008】
ところで、走査領域を複数に分割して各分割領域毎に並行して走査を行う場合には、指示体が高速に移動すると、本来連続した領域として検出されるはずの検出範囲が不連続になってしまい、別々の指示体を検出したかのような誤検出のおそれがあるという問題があった。
【0009】
図18は、検出範囲の説明図である。
図18(A)には走査領域と人体の指先(指示体)の位置との対応関係が示されている。また、
図18(B)には指先の検出結果が示されている。
図18において、A、B、Cは指先の位置がブロックの境界に重ならない場合の例を、D、Eは指先の位置がブロックの境界(一点鎖線で示されている)に重なる場合の例が示されている。なお、電極の選択が左から右に向かった順番に行われるものとする。
【0010】
指先の位置がブロックの境界に重ならない場合であって、指先の位置が静止している場合には、Aで示すようにほぼ円形の領域が検出範囲として得られる。指先の位置が上方向に移動している場合には、Bに示すように、右上斜め方向に長軸が配置された楕円形状の領域が検出範囲として得られる。反対に、指先の位置が下方向に移動している場合には、Cに示すように、右下斜め方向に長軸が配置された楕円形状の領域が検出範囲として得られる。
【0011】
一方、指先の位置がブロックの境界に重なる場合であって、例えば、指先の位置が上方向に移動している場合には、Dに示すように、右上斜め方向に長軸が配置された楕円形状の領域がブロックの境界で分断された検出範囲として得られる。この場合に、指先の移動速度が増すと、Eに示すように、楕円形状の分断された2つの領域が完全に分離してしまう。
【0012】
これは、複数のブロック毎の同時検出を行うことによる現象である。ブロックの異なる隣り合う導体を検出する場合においては、1つのブロック分の走査時間の差が検出結果の遅れとして生じることとなる。例えば、
図17において、導体X
7と導体X
8が属するブロックに着目すると、最初に導体X
0、X
8、・・が選択されて信号が検出される。次に導体X
1、X
9、・・が選択されて信号が検出される。導体X
7が選択されるまでには、7回の切換えが行われる。したがって、導体X
7と導体X
8については、検出時間に7回分の選択・検出の差が出てくる。そのため、隣り合うブロックに跨るように指先が移動していると、検出結果が分離するような現象が起きる。
【0013】
したがって、1走査時間に対応して得られた検出結果に基づいて指示体の位置を判定する場合には、完全に分離した2つの領域が別々の指示体に対応するものとして誤検出することになる。
【0014】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、指示体の位置の誤検出を防止することができる位置検出装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、本発明の位置検出装置は、第1の方向に配置された複数の導体からなる第1の導体パターンと、第1の方向と交差する第2の方向に配置された複数の導体からなる第2の導体パターンと、第1の導体パターンに接続されて第1の導体パターンにスペクトラム拡散コードを供給する信号送信部と、指示体による位置指示に基づいて、第2の導体パターンに生起した信号を検出する信号検出部とを備えた位置検出装置であって、第2の導体パターンを構成する複数の導体を、互いが隣接する少なくとも第1の導体群と第2の導体群とに区分けし、第1の導体群を構成する各導体を選択する方向と第2の導体群を構成する各導体を選択する方向とが互いに異なるように複数の導体を選択するとともに、第1の導体群と第2の導体群の隣接する側に配置された導体の切替タイミングが一致するように複数の導体の選択を行う導体選択部を備えている。
【0016】
導体パターンを構成する複数の導体を第1の導体群と第2の導体群に区分けし、それぞれの導体群毎に導体を選択するとともに所定方向にこの選択導体を切り替える場合に、隣接する2つの導体群のそれぞれにおいて導体を切り替える方向を互いに異ならせているため、これら2つの導体群の境界近傍における導体の選択タイミングをあわせることができ、指示体が移動した場合であっても、この指示体に対応して検出された領域が、導体を切り替えるタイミングがずれることにより分断されることがなく、指示体の位置を誤検出することを防止することができる。
【0017】
また、信号を検出する側の第2の導体パターンについて区分けした場合に、隣接する導体群の境界近傍に配置された導体の信号を検出する時間的なずれを少なくすることができ、導体を切り替えるタイミングがずれることにより生じる指示体の位置の誤検出を防止することができる。
【0018】
また、上述した第1の導体パターンについて、第1の導体群と第2の導体群の区分けがされるとともに、信号送信部は、第1の導体群と第2の導体群毎に異なるスペクトラム拡散コードを並行して供給することが望ましい。スペクトラム拡散コードを供給する側の第1の導体パターンについて区分けした場合に、隣接する導体群の境界近傍に配置された導体にスペクトラム拡散コードを供給する時間的なずれを少なくすることができ、導体を切り替えるタイミングがずれることにより生じる指示体の位置の誤検出を防止することができる。
【0019】
また、上述した複数の第1の導体パターンの区分けと複数の第2の導体パターンの区分けは同時に行うようにしてもよい。この場合であっても、導体を切り替えるタイミングがずれることにより生じる指示体の位置の誤検出を防止することができる。
【0020】
また、上述した導体選択部は、第1の導体群を構成する各導体を選択する方向と、第2の導体群を構成する各導体を選択する方向のそれぞれを、各導体の選択が1巡する毎に選択する順番を反転させることが望ましい。選択する順番を反転させた場合には、1巡する選択動作を何回か繰り返して得られた信号を平均化することにより、指示体が移動した際の検出範囲のゆがみを緩和することができ、さらに誤検出を防止することができる。
【0021】
また、上述した導体選択部は、第1の導体群および第2の導体群の少なくとも一方における導体の選択を、隣接配置された複数本の導体を対象に行うことが望ましい。これにより、信号検出部で検出する信号のレベルを増大することができ、信号の受信感度の向上による検出精度の向上が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した一実施形態の位置検出装置について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の位置検出装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の位置検出装置100は、人体の指等によって構成される指示体の位置を検出するためのものであり、センサ部10、送信部20、受信部30、制御回路40を備えている。なお、「指示体」には、先端部に導電体を備え、人体を通して対地接続される経路にて指検出と同じ原理で静電界を吸い上げることにより検出するペンや、ペン自体から信号を送信するペンも含まれる。
【0025】
センサ部10は、所定方向(第1の方向)に等間隔で配置された複数の送信導体11からなる送信導体群12(第1の導体パターン)と、複数の送信導体11の配列方向と直交する向き(第2の方向)に等間隔で配置された複数の受信導体13からなる受信導体群14(第1の導体パターン)とからなる導体パターンを備える。
【0026】
図2は、センサ部10の断面図であり、1本の送信導体11に沿った部分的な横断面が示されている。
図2に示すように、第1ガラス基板15、送信導体11、スペーサ16、受信導体13、第2ガラス基板17の順番で積層されており、第2ガラス基板17の表面に指示体が接近したときにその位置が検出されるようになっている。
【0027】
送信導体11および受信導体13は、平板形状を有しており、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜からなる透明電極膜や銅箔等を用いて形成される。本実施形態では、送信導体11は、所定間隔(例えば3.2mm間隔)で64本が垂直方向(Y方向)に並んでいる。また、受信導体13は、所定間隔(例えば3.2mm間隔)で128本が水平方向(X方向)に並んでいる。
図1において、Y
0〜Y
63は64本の送信導体11のそれぞれに対応しており、Y
0〜Y
63の順番で送信導体11が並んでいる。また、X
0〜X
127は128本の受信導体13のそれぞれに対応しており、X
0〜X
127の順番で受信導体13が並んでいる。
【0028】
スペーサ16は、絶縁体であって、例えばPVB(PolyVinyl Butyral)、EVA(Ethylene Vinyl Acetate)やシリコンラバー等を用いて形成される。第1および第2ガラス基板15、17は、代わりに合成樹脂等からなるシート状(フィルム状)基材を用いるようにしてもよい。
【0029】
図1に示す送信部20は、クロック発生回路21、多周波信号供給回路22、送信導体選択回路23を含んで構成されている。クロック発生回路21は、所定周波数の基準信号を生成する。多周波信号供給回路22は、クロック発生回路21から出力される基準信号を用いて16種類の周波数f
0、f
1、・・・、f
15の信号を生成し、これらの信号を並行して出力する。
【0030】
図3は、多周波信号供給回路22の詳細構成を示す図である。多周波信号供給回路22は、16種類の周波数f
0、f
1、・・・、f
15の信号を別々に発生する16個の信号生成部22−0、22−1、・・・、22−15を備えている。各信号生成部22−0〜22−15は、クロック発生回路21から出力される基準信号に基づいて周波数f
0〜f
15の信号を生成する。例えば、各信号生成部22−0〜22−15は、クロック発生回路21から出力される基準信号を分周あるいは逓倍して所定周波数の信号を生成する。あるいは、各信号生成部22−0〜22−15は、互いに周期が異なる正弦波の波形データを保持する波形データROMを有しており、クロック発生回路21から出力される基準信号に同期してこの波形データを読み出すことにより、周波数f
0〜f
15の正弦波信号を生成する。
【0031】
送信導体選択回路23は、多周波信号供給回路22から並行して出力される16個の信号の供給先となる送信導体11を選択するとともに、選択先となる送信導体11を順番に切り替える。
【0032】
図4は、送信導体選択回路23の詳細構成を示す図である。送信導体選択回路23は、16種類の周波数f
0、f
1、・・・、f
15の信号が別々に入力される16個の切替スイッチ23−0、23−1、・・・、23−15を備えている。本実施形態では、64本の送信導体11は、16のブロックB0〜B15に分割されてグループ分け(区分け)が行われている。また、隣接する2つのブロックの一方が第1の導体群に、他方が第2の導体群にそれぞれ対応する。
【0033】
ブロックB0にはY
0〜Y
3で示される互いに隣接配置された4本の送信導体11が含まれる。切替スイッチ23−0は、信号生成部22−0から出力される周波数f
0の信号の供給先となる送信導体11を、Y
3、Y
2、Y
1、Y
0の順番で所定の時間間隔で繰り返し切り替える。なお、
図4では、切替スイッチ23−0〜23−15内において図示された矢印によって送信導体11の切替方向が示されている。
【0034】
ブロックB1にはY
4〜Y
7で示される互いに隣接配置された4本の送信導体11が含まれる。切替スイッチ23−1は、信号生成部22−1から出力される周波数f
1の信号の供給先となる送信導体11を、Y
4、Y
5、Y
6、Y
7の順番で所定の時間間隔で繰り返し切り替える。
【0035】
他のブロックB2〜B15および切替スイッチ23−2〜23−15についても同様であり、切替スイッチ23−2〜23−15のそれぞれは、対応する信号生成部22−2〜22−15から出力される信号の供給先となる送信導体11を所定の順番および時間間隔で繰り返し切り替える。なお、切替スイッチ23−0〜23−15における送信導体11の切替順番の詳細については後述する。
【0036】
図1に示す受信部30は、受信導体選択回路31、増幅回路32、アナログ−デジタル変換回路(A/D)33、信号検出回路34、位置算出回路35を含んで構成されている。
【0037】
図5は、受信導体選択回路31および増幅回路32の詳細構成を示す図である。受信導体選択回路31は、対応する8本の受信導体13を順番に切り替える16個の切替スイッチ31−0、31−1、・・・、31−15を備えている。本実施形態では、128本の受信導体13は、16のブロックD0〜D15に分割されてグループ分け(区分け)されている。また、隣接する2つのブロックの一方が第1の導体群に、他方が第2の導体群にそれぞれ対応する。
【0038】
ブロックD0には、X
0〜X
7で示される互いに隣接配置された8本の受信導体13が含まれる。切替スイッチ31−0は、これら8本の受信導体13の中から1本を選択するとともに、X
0、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7の順番で所定の時間間隔で繰り返しこの選択状態を切り替える。なお、
図5では、切替スイッチ31−0〜31−15内において図示された矢印によって受信導体13の切替方向が示されている。
【0039】
ブロックD1には、X
8〜X
15で示される互いに隣接配置された8本の受信導体13が含まれる。切替スイッチ31−1は、これら8本の受信導体13の中から1本を選択するとともに、X
15、X
14、X
13、X
12、X
11、X
10、X
9、X
8の順番で所定の時間間隔で繰り返しこの選択状態を切り替える。
【0040】
他のブロックD2〜D15および切替スイッチ31−2〜31−15についても同様であり、切替スイッチ31−2〜31−15のそれぞれは、対応するブロックD2〜D15に含まれる互いに隣接配置された8本の受信導体13の中から1本を選択するとともに、所定の順番および時間間隔で繰り返しこの選択状態を切り替える。なお、切替スイッチ31−0〜31−15における受信導体13の切替順番の詳細については後述する。
【0041】
増幅回路32は、16個の電流−電圧変換回路(I/V)32−0、32−1、・・・、32−15と切替スイッチ32Aとを備えている。電流−電圧変換回路32−0〜32−15のそれぞれは、切替スイッチ31−0〜31−15のそれぞれと一対一に対応している。電流−電圧変換回路32−0〜32−15のそれぞれは、対応する切替スイッチ31−0等によって選択された受信導体13から出力される電流Iを所定の利得で増幅するとともに電圧Vに変換する。切替スイッチ32Aは、16個の電流−電圧変換回路32−0〜32−15から出力される信号(電圧)を順番に選択してアナログ−デジタル変換回路33に入力する。
【0042】
アナログ−デジタル変換器33は、切替スイッチ32Aによって順番に選択される16個の電流−電圧変換回路32−0〜32−15のそれぞれの出力電圧を所定ビット数のデータに変換する。
【0043】
信号検出回路38は、アナログ−デジタル変換器33から出力されるデータに基づいて、多周波信号供給回路22から出力される16種類の周波数f
0、f
1、・・・、f
15の各成分の信号レベルを検出する。
【0044】
図6は、信号検出回路38によって検出される信号レベルの説明図である。
図6(A)には送信導体11と受信導体13のクロスポイント(交差する位置)に指示体としての人体の指が接近していない状態が示されている。また、
図6(B)にはクロスポイントに指が接近した状態が示されている。
図6(A)に示すように、クロスポイントに指が接近していない状態では、このクロスポイントにおいて送信導体11と受信導体13とがスペーサ16を介して容量結合しており、送信導体11から出た電界は受信導体13に向かって収束する。したがって、送信導体11に所定周波数(f
0〜f
15のいずれか)の信号が供給されると、送信導体11と容量結合した受信導体13から容量結合の程度に応じた電流を取り出すことができる。一方、
図6(B)に示すように、クロスポイントに指が接近した状態では、受信導体13から電流を取り出すことができる点は指が接近していない状態の場合と同じであるが、送信導体11と受信導体13の間の容量結合の程度が異なる。すなわち、送信導体11から出た電界の一部は指に向かって収束するため、受信導体13との間の容量結合の程度が弱くなり、受信導体13から取り出される電流が減少する。
【0045】
本実施形態では、1本の受信導体13と交差する16本の送信導体11のそれぞれに、16種類の周波数f
0、f
1、・・・、f
15の信号が並行して供給されているため、この受信導体13に対応するデータにはこれら16種類の周波数成分が含まれる。信号検出回路34では、これら16種類の周波数成分を別々に抽出し(例えば、同期検波を行って抽出する)、それぞれの周波数成分に対応する信号レベルを検出する。
【0046】
信号検出回路34によって検出された信号レベルは、クロスポイントの位置に対応させて格納される。例えば、送信導体11を特定するY
0〜Y
63と受信導体13を特定するX
0〜X
127の組合せをクロスポイントの位置を示すアドレスとし、このアドレスとこのクロスポイントに対応する信号レベルとの組合せが格納される。なお、一の受信導体13から出力される信号に含まれる16種類の周波数成分を考えた場合に、その時点で送信導体群12の各ブロックB0〜B15のそれぞれにおいていずれの送信導体11に信号を供給しているかがわかっているため、各周波数毎に信号の供給先となる送信導体11を特定することができる。
【0047】
位置算出回路35は、送信導体選択回路23内の各切替スイッチ23−0〜23−15による切替動作と、受信導体選択回路31内の各切替スイッチ31−0〜31−15による切替動作とが一巡したタイミング、すなわち、センサ部10の送信導体群12の全ての送信導体11と受信導体群13の全ての受信導体14とが交差する全てのクロスポイントに対応する信号レベルの検出動作が終了したタイミングで、信号レベルが低下しているクロスポイントを指が接近している位置として算出する。
【0048】
上述した送信導体選択回路23、受信導体選択回路31が導体選択部に、増幅回路32、アナログ−デジタル変換回路33、信号検出回路34が信号検出部にそれぞれ対応する。また、クロック発生回路21、多周波信号供給回路22が信号送信部、多周波信号供給部に対応する。
【0049】
次に、切替スイッチ23−0〜23−15における送信導体11の切替順番と、切替スイッチ31−0〜31−15における受信導体13の切替順番について説明する。本実施形態では、送信導体群12のブロックB0−0〜B0−15のそれぞれにおいて、送信導体11の切替順番が、隣接するブロックについて互いに反対方向になるように設定されている。また、受信導体群14のブロックD0−0〜D0−15のそれぞれにおいて、受信導体13の切替順番が、隣接するブロックについて互いに反対方向になるように設定されている。
【0050】
図7は、送信導体群12側に設けられた切替スイッチ23−0〜23−15のそれぞれにおける切替順番を示す図である。ブロックB0に対応する切替スイッチ23−0では、信号の供給先となる送信導体11がY
3、Y
2、Y
1、Y
0の順番で切り替えられる。ブロックB1に対応する切替スイッチ23−1では、信号の供給先となる送信導体11が、隣接するブロックB0の各送信導体11の切替順番とは反対に、Y
4、Y
5、Y
6、Y
7の順番で切り替えられる。同様に、ブロックB2に対応する切替スイッチ23−2では、信号の供給先となる送信導体11が、隣接するブロックB1の各送信導体11の切替順番とは反対に、Y
11、Y
10、Y
9、Y
8の順番で切り替えられる。ブロックB3に対応する切替スイッチ23−3では、信号の供給先となる送信導体11が、隣接するブロックB2の各送信導体11の切替順番とは反対に、Y
12、Y
13、Y
14、Y
15の順番で切り替えられる。このようにして、ブロックB15までの各ブロックに対応する切替スイッチでは、信号の供給先となる送信導体11が、隣接するブロックの各送信導体11の切替順番とは反対の順番で切り替えられる。
【0051】
このようにして送信導体11の切替動作を行うことにより、隣接する2つのブロックに着目すると、これら2つのブロックにおいて隣接する2つの送信導体11(例えば、ブロックB0とブロックB1に着目した場合にはY
3、Y
4で示された2本の送信導体11)が選択されるタイミングを一致させることができるため、指が高速に移動している場合であっても隣接する2つのブロックにおける指の検出範囲が
図18(B)においてEで示されるように2つの領域に分断されることを回避することができる。
【0052】
図8は、受信導体群14側に設けられた切替スイッチ31−0〜31−15のそれぞれにおける切替順番を示す図である。ブロックD0に対応する切替スイッチ31−0では、信号を取り出す受信導体13がX
0、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7の順番で切り替えられる。ブロックD1に対応する切替スイッチ31−1では、信号を取り出す受信導体13が、隣接するブロックD0の各受信導体13の切替順番とは反対に、X
15、X
14、X
13、X
12、X
11、X
10、X
9、X
8の順番で切り替えられる。同様に、ブロックD2に対応する切替スイッチ31−2では、信号を取り出す受信導体13が、隣接するブロックD1の各受信導体13の切替順番とは反対に、X
16、X
17、X
18、X
19、X
20、X
21、X
22、X
23の順番で切り替えられる。ブロックD3に対応する切替スイッチ31−3では、信号を取り出す受信導体13が、隣接するブロックD2の各受信導体13の切替順番とは反対に、X
31、X
30、X
29、X
28、X
27、X
26、X
25、X
24の順番で切り替えられる。このようにして、ブロックD15までの各ブロックに対応する切替スイッチでは、信号を取り出す受信導体11が、隣接するブロックの各受信導体11の切替順番とは反対の順番で切り替えられる。
【0053】
このようにして受信導体13の切替動作を行うことにより、隣接する2つのブロックに着目すると、これら2つのブロックにおいて隣接する2つの受信導体13(例えば、ブロックD1とブロックD2に着目した場合にはX
15、X
16で示された2本の受信導体13)が選択されるタイミングを一致させることができるため、指が高速に移動している場合であっても隣接する2つのブロックにおける指の検出範囲が
図18(B)においてEで示されるように2つの領域に分断されることを回避することができる。
【0054】
図9は、2つのブロックD0、D1の境界を含むように指先がセンサ部10上に置かれた場合であって、指先の位置が上方向に高速に移動した場合の検出結果を示す図である。上述したように、これら2つのブロックD0、D1では、これらの境界に向かう向きに受信導体の切り替えが行われるため、
図9(A)に示すように、境界を含むように置かれた指先が上方向に高速移動した場合には、
図9(B)に示すように、境界に近づくにつれて指先の検出位置が上方向にずれることになるが、2つのブロックD0、D1のそれぞれに対応する検出範囲d1、d2が分断されることはない。
【0055】
図10は、送信導体11の切替タイミングを示す図である。
図10において、Tは送信導体11の選択状態を切り替える時間間隔(周期)である。送信導体群12の各ブロックには4本の送信導体11が含まれるため、時間4Tでこれら4本の送信導体11に対する切替動作が行われ、その後、時間4Tで同じ順番で切替動作が繰り返される。
【0056】
また、
図11は受信導体13の切替タイミングを示す図である。
図11において、tは受信導体13の選択状態を切り替える時間間隔(周期)である。受信導体群14の各ブロックには8本の受信導体13が含まれるため、時間8tでこれら8本の受信導体13に対する切替動作が行われ、その後、時間8tで同じ順番で切替動作が繰り返される。また、時間8tは送信導体12の切替周期Tに対応しており、8本の受信導体13に対する切替動作が一巡する毎に送信導体11の切り替えが行われる。
【0057】
このように、本実施形態の位置検出装置100では、複数の送信導体11と複数の受信導体13のそれぞれを複数のブロック(グループ)に分けて、それぞれのブロック毎に送信導体11あるいは受信導体13を選択するとともに所定方向にこの選択導体を切り替える場合に、隣接する2つのブロックのそれぞれにおいて導体を切り替える方向を互いに反対としているため、これら2つのブロックの境界近傍における導体の選択タイミングをあわせることができ、指示体が移動した場合であっても、この指示体に対応して検出された領域が、導体を切り替えるタイミングがずれることにより分断されることがなく、指示体の位置を誤検出することを防止することができる。
【0058】
また、電気特性を検出する側の受信導体13側をグループ分けした場合に、隣接するブロックの境界近傍に配置された受信導体13の電気特性を検出する時間的なずれを少なくすることができ、受信導体13を切り替えるタイミングがずれることにより生じる指示体の位置の誤検出を防止することができる。
【0059】
また、所定周波数の信号を供給する側の送信導体11側をグループ分けした場合に、隣接するブロックの境界近傍に配置された送信導体11に信号を供給する時間的なずれを少なくすることができ、送信導体11を切り替えるタイミングがずれることにより生じる指示体の位置の誤検出を防止することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
ところで、第1の実施形態では、送信導体群12側に設けられた切替スイッチ23−0〜23−15のそれぞれにおける送信導体11の切り替えや、受信導体群14側に設けられた切替スイッチ31−0〜31−15のそれぞれにおける受信導体13の切り替えは、常に一定方向になるように行われていた。例えば、送信導体群12側のブロックB0に対応する切替スイッチ23−0に着目すると、信号の供給先となる送信導体11が常にY
3、Y
2、Y
1、Y
0の順番で切り替えられる。また、受信導体群14側のブロックD0に対応する切替スイッチ31−0に着目すると、信号を取り出す受信導体13が常にX
0、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7の順番で切り替えられる。この切替順番は、切替対象の導体が一巡する毎に反転させるようにしてもよい。
【0061】
図12は、送信導体群12側に設けられた切替スイッチ23−0〜23−15における導体の切替順番をフレーム毎に反転させた場合の具体例な切替順番を示す図である。なお、各ブロックに含まれる全ての送信導体11の選択が終了する時間長が1フレームに対応している(
図13についても同様である)。例えば、ブロックB0に着目すると、フレーム1では送信導体11がY
3、Y
2、Y
1、Y
0の順番で切り替えられるが、フレーム2では切替順番が反転して送信導体11がY
0、Y
1、Y
2、Y
3の順番で切り替えられる。以後、3番目以降の奇数フレームではフレーム1と同じ順番で送信導体11が切り替えられ、4番目以降の偶数フレームではフレーム2と同じ順番で送信導体11が切り替えられる。
【0062】
図13は、受信導体群14側に設けられた切替スイッチ31−0〜31−15における導体の切替順番をフレーム毎に反転させた場合の具体例な切替順番を示す図である。例えば、ブロックD0に着目すると、フレーム1では受信導体13がX
0、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7の順番で切り替えられるが、フレーム2では切替順番が反転して受信導体13がX
7、X
6、X
5、X
4、X
3、X
2、X
1、X
0の順番で切り替えられる。以後、3番目以降の奇数フレームではフレーム1と同じ順番で受信導体13が切り替えられ、4番目以降の偶数フレームではフレーム2と同じ順番で受信導体13が切り替えられる。
【0063】
このように、導体の切替方向をフレーム毎に反転させる場合には、フレーム間で平均化することによって検出物体がセンサ部10の表面を移動した際の検出範囲のゆがみを緩和することができる。なお、
図12に示した送信導体群12側の送信導体11の切替順番をフレーム毎に反転させる手法と、
図13に示した受信導体群14側の受信導体13の切替順番をフレーム毎に反転させる手法は、同時に実施してもよいが、どちらか一方のみを実施するようにしてもよい。
【0064】
(第3の実施形態)
また、上述した各実施形態では、各ブロック内において1本の送信導体11に選択的に信号を供給するようにしたが、同時に2本(あるいはそれ以上の本数)の送信導体11に信号を供給するようにしてもよい。2本の送信導体11に同時に信号を供給する場合には受信導体13から出力される信号レベル(電流値)も大きくなるため、SN比を向上させることができる。
【0065】
また、上述した各実施形態では、各ブロック内において1本の受信導体13から出力される電流値を検出するようにしたが、隣接する2本(あるいはそれ以上の本数)の受信導体13から出力される電流値を検出するようにしてもよい。この場合には、受信感度を向上させることができる。
【0066】
なお、2本の送信導体11に同時に信号を供給する場合には、検出データの縦横のアスペクトを合わせるためにも、2本の受信導体13から出力される電流値を同時に検出することが望ましい。また、2本の送信導体11に同時に信号を供給する場合には、1本の送信導体11に信号を供給する場合に比べて検出物体に対応する検出信号のカーブ(包絡線)が緩慢(ぼやけた感じ)になり、検出クロスポイント間の検出信号のレベル変化がなだらかになってリニアリティが向上する。すなわち、センサ部10の表面を軽く触って指先を動かした際に、接触座標を計算してみるとその変化が滑らかになるという効果がある。
【0067】
図14は、2本の受信導体13を同時に選択する場合の具体的な切替順番を示す図である。図において、「16〜32」の数字は、X
16〜X
32で示される受信導体13に対応している。
図14では、主に隣接する2つのブロックD2、D3に着目して各受信導体13の切替順番が示されている。また、隣接する2つのブロックD2、D3の境界に存在する1本の受信導体11(X
24)は、両方のブロックD2、D3に属しており、各ブロックにおいて所定のタイミングで選択されるようになっている。
図14に示す例では、ブロックD2では、送信導体13がその並びの順に2本ずつ選択されて切り替えられる。一方、隣のブロックD3では、送信導体13が2本ずつ選択される点は同じであるが、選択される順番は並びの順ではなく、並びの順に対して部分的に逆戻りするようにジグザグに切り替えるようにしている。これにより、2つのブロックD2、D3に共通に含まれる受信導体13(X
24)を2つのブロックD2、D3において同時に選択することを回避することができる。
【0068】
なお、
図14に示す例では、2つのブロックD2、D3の中のブロックD3のみについて受信導体13をジグザグに切り替えるようにしたが、共通の受信導体13(X
24)の選択タイミングをずらすようにして両方のブロックD2、D3において同様の切り替えを行ってもよい。また、
図14に示す例では、受信導体13の切替手法の具体例について説明したが、同様に送信導体11の切り替えを行うようにしてもよい。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した各実施形態では、送信導体11と受信導体13とが直交する場合を説明したが、90度以外の角度で交差する場合にも本発明を適用することができる。
【0070】
また、上述した各実施形態では、送信導体11を切り替える周期Tの間に、受信導体群14の各ブロックに含まれる8本の受信導体13の切り替えを行ったが、反対に、受信導体13を切り替える周期tの間に、送信導体群12の各ブロックに含まれる4本の送信導体11の切り替えを行うようにしてもよい。
【0071】
また、上述した各実施形態では、送信導体群12および受信導体群14のそれぞれをともに15個のブロックにグループ分けしたが、ブロックの数は変更可能であり、送信導体群12のブロック数と受信導体群14のブロック数を異ならせるようにしてもよい。また、受信導体群14に含まれる各受信導体13毎に電流を検出する構成を設けて、受信導体13側の切替動作を省略するようにしてもよい。
【0072】
また、上述した各実施形態では、送信導体11側に供給する信号として多周波信号を想定したが、供給信号は多周波信号以外の信号であってもよい。例えば、複数の拡散符号信号、具体的にはスペクトラム拡散コードを各ブロックに分けた送信導体11に供給する位置検出装置においても、同様の効果を得ることができる。また、特定の拡散符号の位相をずらして各ブロックに分けた送信信号11に供給する位置検出装置においても同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、上述した各実施形態では、送信導体11側に信号を供給するとともに受信導体13側から出力される電流を検出する静電容量方式の位置検出装置100に本発明を適用したが、例えば、特開2009−162538号公報に開示されているように、互いに交差する2種類の導体(電極)のそれぞれの静電容量値を検出して指示体の位置を検出する静電容量方式の位置検出装置についても本発明を適用することができる。また、導体を順番に切り替える位置検出装置であれば、静電容量方式以外の方式を採用したものであっても本発明を適用することができる。