特許第5714739号(P5714739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5714739
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】壁面ブロックおよび擁壁
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20150416BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20150416BHJP
   E02B 3/14 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   E02D17/20 103H
   E02D29/02 304
   E02B3/14 301
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-53433(P2014-53433)
(22)【出願日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年11月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112093
【氏名又は名称】ヒロセ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】佐原 邦朋
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−323418(JP,A)
【文献】 特開平10−168908(JP,A)
【文献】 特開2012−062625(JP,A)
【文献】 特開平09−310365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18〜17/20
E02D 29/02
E02B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形を呈するブロック本体と、該ブック本体の周面に複数の凹凸の係合要素を形成した壁面ブロックであって、
前記ブロック本体の両側面上半に連続して形成した凸部側の係合要素である縦突条と、
前記ブロック本体の両側面下半に連続して形成した凹部側の係合要素である縦条溝とを少なくとも有し、
前記縦突条および縦条溝が互いに縦方向へ向けてスライド嵌合可能であり、
前記縦条溝の下半に、ブロック本体の側面中間から下面へ向けて縦突条を誘導する拡張入口を形成したことを特徴とする、
壁面ブロック。
【請求項2】
前記ブロック本体の上面および下面に係合要素としてそれぞれ形成した突条と条溝とを有し、前記突条および条溝が互いに嵌合可能であることを特徴とする、請求項1に記載の壁面ブロック。
【請求項3】
矩形を呈するブロック本体の周面に複数の凹凸の係合要素を形成した壁面ブロックを縦横方向に組み立てて構成する擁壁であって、
前記請求項1に記載した複数の壁面ブロックで構成し、
前記各壁面ブロックの縦方向の接合面が同一線上に揃い、各壁面ブロックの横方向の接合面が壁面ブロックの半分の高さで上下にずれた千鳥配置となるように、隣り合う左右の壁面ブロックの間で、前記縦突条と縦条溝とが互いに嵌合し合うことを特徴とする、
擁壁。
【請求項4】
前記擁壁が壁面ブロックの背面に補強材を接続し、該補強材を壁面ブロックの背面の盛土中に敷設した補強土壁であることを特徴とする、請求項に記載の擁壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留用、護岸用、法面用等の壁面ブロックおよび擁壁に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート二次製品の壁面ブロックは広く知られており、その大半は全体形状が矩形を呈していて、擁壁の設置位置にコンクリート製の基礎を設け、この基礎上に壁面ブロックを縦横方向へ向けて千鳥状に組み立てている。
この種の擁壁は、壁面ブロックが正確でかつ強固に構築されていないと、施工後に地震等によって壁面ブロックが移動したり、擁壁面の形状が変わってしまったりする。
壁面ブロックのずれや孕み出しを防止する手段として、ブロック本体の上下両面、左右両面、または上下左右の四面に凸の係合要素と凹の係合要素を形成し、これらの凹凸の係合要素を相互に嵌合させることが知られている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−41993号公報号公報
【特許文献2】特開2013−170404号公報
【特許文献3】特開平10−219657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した壁面ブロックまたは擁壁には次のような問題点を有する。
<1>従来の擁壁は単に壁面ブロックを載せ置きしてあるため、隣り合う左右の壁面ブロック間では鉛直荷重を十分に伝達することができない。
そのため、浸食等により基礎を消失したり、大地震等により一部の壁面ブロックが破損したりすると、消失範囲に面した壁面ブロックが連鎖的に自重落下して擁壁が崩落する危険がある。
<2>凹凸の係合要素を相互に嵌合させるためには、壁面ブロックの向きや角度を正確に位置合わせしなければならず、壁面ブロックの位置合わせ作業に多くの時間と労力を要する。
殊に壁面ブロックが大型化して重量が増すほど組み立て作業が難しくなる。
<3>壁面ブロックの位置合わせが不正確であると、係合要素の破損や噛み込みといった問題や、既設の壁面ブロックが共倒れする場合があり、大変危険である。
<4>勾配のある擁壁を構築する場合には、壁面ブロックを擁壁の傾斜角度に一致させて吊り上げ、さらに擁壁の傾斜方向に沿って斜めに落とし込んで組み付けなければならず、壁面ブロックの組み付け作業が益々困難となる。
殊に、壁面ブロックの組み付け作業は、裏込材や背面土砂等の支持部材が存在しない状況で行わなければならないために、より多くの時間と労力を要する。
<5>壁面ブロックの背面に接続した補強材を盛土へ敷設する補強土壁では、壁面ブロックに土圧が発生しないことを前提とし、盛土の土圧は補強材の敷設長を長くするか、補強材の使用本数を増やすことで対抗しており、施工コストが嵩む要因になっている。
<6>従来の補強土壁では壁面ブロックを盛土法面の保護材として扱うために、ブロック本体の躯体厚をできるだけ薄くして軽量化を図っている。
そのため、盛土の転圧時にブロック背面に土圧が作用して壁面ブロックが前傾し易く、盛土の法面側を十分に転圧できないといった問題点があった。
<7>東日本大地震では、津波により大半の擁壁が壊滅的な被害を受けた。
この経験を活かすべく、施工性と経済性を犠牲にすることなく、擁壁の強度的弱点を解消できる技術の提案が望まれている。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、施工性と経済性を犠牲にすることなく、擁壁の強度的弱点を解消できる擁壁技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、矩形を呈するブロック本体と、該ブック本体の周面に複数の凹凸の係合要素を形成した壁面ブロックであって、前記ブロック本体の両側面上半に連続して形成した凸部側の係合要素である縦突条と、前記ブロック本体の両側面下半に連続して形成した凹部側の係合要素である縦条溝とを少なくとも有し、前記縦突条および縦条溝は互いに縦方向へ向けてスライド嵌合が可能であり、前記縦条溝の下半に、ブロック本体の側面中間から下面へ向けて縦突条を誘導する拡張入口を形成したことを特徴とする。
本発明の他の実施形態において、前記ブロック本体の上面および下面に係合要素としてそれぞれ形成した突条と条溝とを有し、前記突条および条溝は互いに嵌合可能である。
前記ブロック本体の縦突条と縦条溝は、ブロック本体の上下面を接合させて組み付けたときに、縦突条の上面が下位のブロック本体の縦条溝の上面と当接し、かつ縦突条の下面が下位のブロック本体の上面と当接する寸法関係にするとよい。
さらに本発明は、矩形を呈するブロック本体の周面に複数の凹凸の係合要素を形成した壁面ブロックを縦横方向に組み立てて構成する擁壁であって、前記した壁面ブロックで構成し、前記各壁面ブロックの縦方向の接合面が同一線上に揃い、各壁面ブロックの横方向の接合面が壁面ブロックの半分の高さで上下にずれた千鳥配置となるように、隣り合う左右の壁面ブロックの間で、前記縦突条と縦条溝とが互いに嵌合し合うようにした。さらに隣り合う上下の壁面ブロックの間でも、突条と条溝とが互いに嵌合し合うようにしてもよい。
本発明の他の実施形態において、壁面ブロックの背面に補強材を接続し、該補強材を壁面ブロックの背面の盛土中に敷設した補強土壁に適用してもよい。

【発明の効果】
【0007】
本発明は以上説明したとおりであるから、施工性と経済性を犠牲にすることなく、擁壁の強度的弱点を解消することができる。
さらに壁面ブロックを補強土壁に適用した場合は、壁面ブロックの重量を活用して盛土法面側の十分な締め固めが可能になるだけでなく、補強土壁全体の安定性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一部を破断した擁壁の斜視図
図2】一部を省略した擁壁の正面図
図3A】上面側から矢視した壁面ブロックの斜視図
図3B】下面側から矢視した壁面ブロックの斜視図
図4A】上面側から矢視した最下段用の補助壁面ブロックの斜視図
図4B】下面側から矢視した最上段用の補助壁面ブロックの斜視図
図5】最下段用の補助壁面ブロックと壁面ブロックを用いた擁壁工の正面図
図6】壁面ブロックを用いた擁壁工の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
<1>擁壁の概要。
図1,2を参照して説明すると、擁壁10はブロック積擁壁、大型ブロック積擁壁、控え壁擁壁、もたれ式擁壁、補強土壁等を含み、ブロック本体25の周端面(上下面および左右側面)にそれぞれ係合要素を形成した複数の壁面ブロック20を千鳥状に組み立てて構成する。
各ブロック本体25の周端面に複数の係合要素を形成したのは、隣り合う複数の壁面ブロック20の間で面的な一体化を図るためである。
【0011】
本発明における千鳥とは、図2に示すように各壁面ブロック20の縦方向の接合面が同一線上に揃い、各壁面ブロック20の横方向の接合面が壁面ブロック20の半分の高さで上下にずれた形態を意味する。
本例では擁壁10が所定の傾斜角θを有する場合について説明するが、擁壁10は鉛直であってもよい。
【0012】
擁壁10の背面には、裏込砕石31を介して盛土や切土等の背面土砂30が形成してあって、擁壁10が裏込砕石31を介して背面土砂30の法面を保護している。
なお、裏込砕石31は必須ではなく、背面土砂30の法面を擁壁10の背面で直接保護する場合もある。
壁面ブロック20は単体で用いることの他に、壁面ブロック20の背面に各種の補強材を接続して用いてもよい。
【0013】
<2>壁面ブロック。
図3A,3Bを参照して説明すると、壁面ブロック20は正面形状が正方形、長方形等の矩形を呈し、全体形状が立方体を呈するブロック本体25を有する。
ブロック本体25の縦横長、および躯体厚は使途に応じて適宜選択するものとする。またブロック本体25の素材はコンクリート製に限定されず、樹脂製、廃棄プラスチックと廃アスファルトの混合物等の公知の素材が適用可能である。
【0014】
ブロック本体25の上面と下面には、それぞれ連続した上面突条21および上面突条21に嵌合可能な下面条溝22を形成している。
本発明では、ブロック本体25の左右両側面の上半に縦突条23を形成するとともに、ブロック本体25の左右両側面の下半に縦条溝24を形成している。
これら複数の係合要素21〜24は、ブロック本体25と一体に形成してある。
【0015】
<3>ブロック上下面の係合要素。
ブロック本体25の上下面の係合要素である上面突条21と下面条溝22について説明する。
<3.1>上面突条。
上面突条21はブロック本体25の上面の両端部を除いたほぼ全面に亘って形成した凸部側の係合要素である。
本例では上面突条21を連続して形成した形態を示すが、間欠的に形成してもよい。
【0016】
<3.2>下面条溝。
下面条溝22はブロック本体25の下面の全長に亘って形成した凹部側の係合要素であり、上面突条21に対応した断面形状を呈する。
【0017】
<3.3>上面突条と下面条溝の断面形状。
上面突条21と下面条溝22は互いに嵌合可能な断面形状を呈していて、本例では断面が台形を呈する場合について説明するが、その他には例えば断面が半円形、半楕円形等のテーパ形状、または矩形を呈していてもよい。
【0018】
<4>ブロック両側面の係合要素。
ブロック本体25の左右両側面の係合要素である縦突条23と縦条溝24について説明する。
本発明で使用する壁面ブロック20は、ブロック本体25の左右両側面に、縦方向に沿って上位の縦突条23と下位の縦条溝24の二種類の係合要素を直列に形成している。
ブロック本体25の左右両側面に左右対称で二種類の係合要素を形成したのは、組立後に隣り合う左右の壁面ブロック20,20でその中央に位置する壁面ブロック20を支持させるためである。
【0019】
<4.1>縦突条。
縦突条23はブロック本体25の左右両側面の上半に形成した凸部側の係合要素であり、ブロック本体25の高さの半分の長さを有する。
縦突条23の上面はブロック本体25の上面と同一面に形成してある。
【0020】
<4.2>縦条溝。
縦突条23に対応した断面形状を呈する縦条溝24は、ブロック本体25の左右両側面の下半に形成した凹部側の係合要素であり、ブロック本体25の高さの半分の長さを有する。
縦条溝24の上端は閉鎖され、その下端は縦突条23を縦方向に沿って導入可能なように開放されている。
縦突条23の下面と縦条溝24の上面は段差のない同一面として形成してある。
【0021】
<4.3>縦突条と縦条溝の断面形状。
縦突条23と縦条溝24は互いにスライド嵌合が可能な断面形状を呈していて、本例では断面が台形を呈する場合について説明するが、その他の断面形状としては、例えば半円形、半楕円形等のテーパ形状、矩形、またはT字形を呈していてもよい。
【0022】
<4.4>拡張入口。
縦条溝24の下半には、ブロック本体25の側面中間から下面へ向けて縦条溝24の溝幅が徐々に拡張した拡張入口26を形成している。
拡張入口26は、壁面ブロック20の組み付けの際に、縦突条23を縦条溝24へ案内して縦突条23と縦条溝24との嵌合を円滑に行うためのものである。
【0023】
本例では拡張入口26を縦条溝24に対してブロック本体25の表面側のみに形成した場合について示すが、拡張入口26を縦条溝24に対してブロック本体25の裏面側のみ、或いはブロック本体25の表裏両面側に形成してもよい。
【0024】
<4.5>縦突条と縦条溝の関係。
ブロック本体25の下半に形成した左右一対の縦突条23と、ブロック本体25の下半に形成した左右一対の縦条溝24は、壁面ブロック20の上下面を接合させて組み付けたときに、縦突条23の上面が縦条溝24の上面と当接し、かつ縦突条23の下面が下位の壁面ブロック20の上面と当接する寸法関係になっている。
【0025】
<4.6>縦突条と縦条溝の上下関係。
ブロック本体25に対して縦突条23と縦条溝24を上下逆に形成した場合には、壁面ブロック20の組み立ては可能であるが、下位の壁面ブロック20が消失すると同列に位置する壁面ブロック20が次々と落下してしまう。
本発明ではこのような事態を回避するため、ブロック本体25に対して上半に縦突条23を形成し、下半に縦条溝24を形成した。
【0026】
<5>補助壁面ブロック。
図4A,4Bを参照して擁壁10の最下段と最上段の欠損部分を封鎖する補助壁面ブロック20A、20Bについて説明する。
【0027】
<5.1>最下段用の補助壁面ブロック。
補助壁面ブロック20Aは擁壁10の最下段の欠損部分を封鎖するブロックであり、既述した壁面ブロック20の中心から下端を切り取り、上半のみで構成する。
補助壁面ブロック20Aは、壁面ブロック20の半分の高さのブロック本体25を有する。
ブロック本体25の横方向の長さ、および躯体厚は壁面ブロック20と同一であり、さらに補助壁面ブロック20Aはブロック本体25の上面に上面突条21を有するとともに、ブロック本体25の左右両側面に縦突条23を有している。
【0028】
<5.2>最上段用の補助壁面ブロック。
補助壁面ブロック20Bは擁壁10の最上段の欠損部分を封鎖するブロックであり、既述した壁面ブロック20の中心から上端を切り取り、下半のみで構成する。
補助壁面ブロック20Bは、壁面ブロック20の半分の高さのブロック本体25を有する。
ブロック本体25の横方向の長さ、および躯体厚は壁面ブロック20と同一であり、さらに補助壁面ブロック20Bはブロック本体25の下面に下面条溝22を有するとともに、ブロック本体25の左右両側面に縦条溝24と拡張入口26を有している。
【0029】
なお、補助壁面ブロック20A,20Bは必須ではなく、他のブロック、或いは場所打ちコンクリート等で代用することも可能である。
【0030】
[擁壁の施工方法]
図2,6を参照しながら擁壁10の施工方法について説明する。
【0031】
<1>基礎工。
擁壁10を支持するコンクリート製の基礎28を構築する。基礎28の上面は擁壁の勾配に応じて傾斜している。
【0032】
<2>補助壁面ブロックの敷設。
基礎28上に所定の間隔を隔てて補助壁面ブロック20Aを横一列に敷設する。
【0033】
<3>一段目の壁面ブロックの組み付け。
隣り合う補助壁面ブロック20A,20Aの間に壁面ブロック20を真上から落とし込んで組み付ける。
この際、壁面ブロック20の側面下半に形成した係合素子(縦条溝24)を既設の補助壁面ブロック20Aの側面に形成した係合素子(縦突条23)に差し込んで、左右に隣り合う両ブロック20,20A間を係合して擁壁の一段目を組み立てる。
各補助壁面ブロック20Aの上方に壁面ブロック20の上半が突出することで、一段目の両ブロック20A,20の上部の輪郭は連続した凹凸形状を呈する。
【0034】
<4>二段目以降の壁面ブロックの組み付け。
一段目の隣り合う壁面ブロック20,20の間に二段目用の壁面ブロック20を一段目と同様に縦方向にスライドさせて組み付ける。
この際、組付け予定の壁面ブロック20の側面下半に形成した係合素子(縦条溝24)を一段目の壁面ブロック20の側面上半に形成した係合素子(縦突条23)に差し込むとともに、壁面ブロック20の下面に形成した係合素子(下面条溝22)を下段の補助壁面ブロック20Aの上面に形成した係合素子(上面突条21)に嵌合させて擁壁の二段目の組み立てを終了する。
以降は同様に各壁面ブロック20の側面下半と側面上半に形成した各係合素子(縦条溝24と縦突条23)同士と、各壁面ブロック20の上下面に形成した係合素子(上面突条21と下面条溝22)同士をそれぞれ嵌合しながら、壁面ブロック20を組み付けて三段目以降を順次組み立てる。
各壁面ブロック20は上下左右の各係合素子を介して、上下左右に位置する周囲6枚の壁面ブロック20に係合して支持される。
最上段の左右に隣り合う壁面ブロック20の間に既述した補助壁面ブロック20Bを組み付け擁壁工を終了する。
【0035】
<5>拡張入口の作用。
図1.6を参照して拡張入口26の作用について説明する。
壁面ブロック20は縦条溝24の下部に、縦突条23を誘導するための拡張入口26を形成している。
そのため、既設の壁面ブロック20が傾斜していても、クレーンで吊り下げた壁面ブロック20を縦向きにして落とし込む際に、縦突条23の真上に幅広の拡張入口26を位置させるだけの操作で、縦突条23を縦条溝24へ誘導して嵌合することができる。
したがって、嵌合予定の縦突条23と縦条溝24との間に多少の位置づれがあっても、壁面ブロック20の正確な位置合わせが不要であり、短時間のうちに簡単に組み立てできる。
【0036】
拡張入口26は単に縦突条23を縦条溝24へ誘導するだけでなく、縦条溝24と協働して既設の壁面ブロック20の組み付け角度に修正することができる。
すなわち、拡張入口26を通じて縦突条23を縦条溝24へ誘導する過程で、組み立て予定の壁面ブロック20の向きが縦方向から徐々に傾斜を開始し、縦条溝24と縦突条23とが嵌合することで、組み立て予定の壁面ブロック20の向きが既設の壁面ブロック20の傾斜角θに一致する。
組み立て予定の壁面ブロック20は、傾斜角θを維持したまま下位の壁面ブロック20の上面に当接するまで自重でスライドする。
したがって、壁面ブロックを水平にスライドさせて組み付ける形態と比べて、組立作業が非常に簡単である。
この効果は壁面ブロック20が大型化して重量が増すほど顕著である。
【0037】
さらに、組み立て予定の壁面ブロック20が縦方向にスライドする際、側面下半の係合要素(縦条溝24)が既設の壁面ブロック20の側面上半の係合要素(縦突条23)に係合して壁面ブロック20の傾倒を左右両側の既設の壁面ブロック20が支持する。
したがって、組み立て予定の壁面ブロック20の過大な傾倒を防止するために特別な支持手段を必要としない。
【0038】
[擁壁の特性]
図2を参照して擁壁10の特性について説明する。
【0039】
<1>擁壁の変形抑制。
壁面ブロック20は上下左右の係合素子(上面突条21、下面条溝22、縦突条23、縦条溝24)を介して、上下左右に位置する周囲6枚の壁面ブロック20と嵌合して強固に固定されている。
したがって、擁壁10に土圧が作用しても擁壁10の孕み出しを確実に阻止できるだけでなく、擁壁10の背面に空洞が形成されても、周囲の壁面ブロック20で支持して擁壁10の変形を拘束することができる。
【0040】
<2>壁面ブロックの鉛直荷重の分散支持。
一般に矩形を呈する壁面ブロックの縦方向の接合面を同一線上に揃えて千鳥状に配置した場合、壁面ブロックの鉛直荷重(自重)は下位の壁面ブロックが支持だけである。
これに対してブロック本体25の側面に二種類の係合要素(縦突条23、縦条溝24)を形成した本発明の壁面ブロック20にあっては、各縦突条23の下面が左右に隣接する複数の壁面ブロック20の上面と当接しているので、壁面ブロック20の鉛直荷重を真下に位置する壁面ブロック20だけでなく、左右に隣接する複数の壁面ブロック20へも分散して支持させることができる。
【0041】
<3>壁面ブロックの崩落防止。
各壁面ブロック20はその側面に形成した縦突条23の下面が、左右に隣接する壁面ブロック20の上面と当接して支持される。
さらに各壁面ブロック20はその側面に形成した縦突条23が左右に隣接する壁面ブロック20の躯体内に入り込み、入り込んだ縦突条23の上下面が隣接する上下一対の壁面ブロック20の上面と縦条溝24の上面で挟持されている。
上記した複数の要因により、本願発明では擁壁10を構成する各壁面ブロック20の上下左右間の連結強度がきわめて強固になる。換言すれば擁壁10の強度的弱点を解消することができる。
そのため、基礎28の一部を消失したり、大地震等により一部の壁面ブロック20が破壊されても周囲の壁面ブロック20が自立可能であるため、壁面ブロック20が連鎖的に自重落下するのを効果的に抑止できて、擁壁10の崩落防止効果が高くなる。
【0042】
[変形例]
先の壁面パネル20はパネル本体25の上面に突条を形成し、下面に条溝を形成した形態について説明したが、突条と条溝を逆にしても同様の作用効果を得ることができる。
さらに、パネル本体25の下面に突条を形成する場合、下面の中央を除いて下面の両側に間欠的に突条を形成してもよい。
【0043】
[他の実施形態]
壁面ブロック20の背面に補強材を接続し、この補強材を背面土砂30(盛土)中へ敷設する補強土壁として構成してもよい。
補強材には、引張強度に優れた公知のベルト材、ストリップ材、グリッド材等が使用可能である。
さらに壁面ブロック20との接続手段としては、壁面ブロック20の躯体内に補強材を挿通させた折り返す方式、ボルト連結方式、または接着方式等を適用することができる。
【0044】
従来の補強土壁では、壁面ブロックに土圧がほとんど作用しないとされていたため、できるだけ軽量に設計していた。
これに対し本発明では、積極的に壁面ブロック20を重量化して、補強材による盛土の強材作用と、重量化した壁面ブロック20(擁壁10)による土圧の抵抗作用の併用によって、補強土壁の安定性を高めるようにしたものである。
さらに壁面ブロック20を重量化すると、壁面ブロック20の安定性が増して法面側の盛土の転圧を十分に行えるといった利点も得られる。
殊に本例では壁面ブロック20を補強材と一体化して土圧に抵抗できるから、大規模地震や豪雨等により擁壁10の背面に過大な土圧が作用しても、補強土壁の崩落を確実に抑止することができる。
【0045】
壁面ブロック20を重量化する手段としては、ブロック本体25を従来ブロックの縦横寸法(例えば600mm×1200mmまたは600mm×600mm)と略同一寸法とした場合、ブロック本体25の躯体厚を厚くする。
より望ましくはブロック本体25の躯体厚を、概ねブロック本体25の高さの1/2程度(250〜350mm)にすると、経済性と安定性の両立が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
10・・・・・擁壁
20・・・・・壁面ブロック
21・・・・・上面突条
22・・・・・下面条溝
23・・・・・縦突条
24・・・・・縦条溝
25・・・・・ブロック本体
26・・・・・拡張入口
28・・・・・基礎
【要約】
【課題】構造が簡単で強固に組み付けできる壁面ブロックと、この壁面ブロック使用した擁壁を提供すること。
【解決手段】ブロック本体25の両側面上半に形成した縦突条23と、ブロック本体25の両側面下半に形成した縦条溝24と、ブロック本体25の上下面に形成した突条および条溝とを具備し、縦突条23および縦条溝24を互いに縦方向へ向けたスライド嵌合可能に構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6