特許第5714809号(P5714809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5714809茶エキスの製造方法、茶粉末の製造方法及び茶エキス又は茶粉末に含まれるカテキン中のメチル化カテキンの濃度を高める方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714809
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】茶エキスの製造方法、茶粉末の製造方法及び茶エキス又は茶粉末に含まれるカテキン中のメチル化カテキンの濃度を高める方法。
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   A23F3/16
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2009-149942(P2009-149942)
(22)【出願日】2009年6月24日
(65)【公開番号】特開2011-4635(P2011-4635A)
(43)【公開日】2011年1月13日
【審査請求日】2012年4月23日
【審判番号】不服2013-17557(P2013-17557/J1)
【審判請求日】2013年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】篠田 有希
(72)【発明者】
【氏名】渋市 郁雄
【合議体】
【審判長】 紀本 孝
【審判官】 千壽 哲郎
【審判官】 山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−298792(JP,A)
【文献】 特開2008−189628(JP,A)
【文献】 特開2006−141242(JP,A)
【文献】 特公平1−44234(JP,B2)
【文献】 特開平5−306279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル化カテキンを含む茶葉から茶抽出液を得る抽出工程と、
前記茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得る清澄化工程と、
酢酸エチルにより、Bx35〜70°まで濃縮された前記清澄液を液−液分配する液−液分配工程とを有し、
前記液−液分配工程後に酢酸エチル層に含まれる酢酸エチルを除去する茶エキスの製造方法。
【請求項2】
メチル化カテキンを含む茶葉から茶抽出液を得る抽出工程と、
前記茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得る清澄化工程と、
酢酸エチルにより、Bx35〜70°まで濃縮された前記清澄液を液−液分配する液−液分配工程とを有し、
前記液−液分配工程後に酢酸エチル層に含まれる可溶性固形分を粉末化する茶粉末の製造方法。
【請求項3】
前記清澄化工程は、遠心分離を行うことにより前記茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得る工程である請求項1又は2に記載の茶エキスの製造方法又は茶粉末の製造方法。
【請求項4】
前記抽出工程における抽出温度よりも低い温度まで前記茶抽出液を冷却する工程と、前記茶抽出液を濾過する工程とを、前記抽出工程と前記清澄化工程との間にさらに有する請求項1から3のいずれかに記載の茶エキスの製造方法又は茶粉末の製造方法。
【請求項5】
前記抽出工程は、80〜120℃の熱水を用いて茶抽出液を抽出する工程である請求項1から4のいずれかに記載の茶エキスの製造方法又は茶粉末の製造方法。
【請求項6】
前記液−液分配工程後の酢酸エチル層に対して水を加えながら酢酸エチルを除去し、水層中に含まれるメチル化カテキンを吸着樹脂に吸着させる吸着工程と、
アルコール溶液により前記吸着工程後の吸着樹脂からメチル化カテキンを溶出させる溶出工程とをさらに有し、
前記溶出工程で得られた溶出液を濃縮する請求項1、3、4又は5に記載の茶エキスの製造方法。
【請求項7】
前記液−液分配工程後の酢酸エチル層に対して水を加えながら酢酸エチルを除去し、水層中に含まれるメチル化カテキンを吸着樹脂に吸着させる吸着工程と、
アルコール溶液により前記吸着工程後の吸着樹脂からメチル化カテキンを溶出させる溶出工程とをさらに有し、
前記溶出工程で得られた溶出液に含まれる可溶性固形分を粉末化する請求項2から5のいずれかに記載の茶粉末の製造方法。
【請求項8】
前記アルコール溶液のアルコールの濃度が20〜70質量%である請求項6又は7の茶エキスの製造方法又は茶粉末の製造方法。
【請求項9】
茶葉から得たメチル化カテキン成分を含む抽出液を、酢酸エチルにより液−液分配し、酢酸エチル層をエキス化又は粉末化することで、茶エキス又は茶粉末に含まれるカテキン中のメチル化カテキンの濃度を高める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶エキスの製造方法、茶粉末の製造方法及び茶エキス又は茶粉末に含まれるカテキン中のメチル化カテキンの濃度を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
べにふうき等の特定の茶葉に含まれる成分としてメチル化カテキンがある。このメチル化カテキンは、抗アレルギー作用、抗酸化作用、動脈硬化抑制作用、血糖上昇抑制作用、脂肪蓄積抑制作用等の様々な作用を持つことが知られている。このようにメチル化カテキンは有用な成分であるため、べにふうき等の茶葉から得られるメチル化カテキンを様々な製品に添加することが検討されている。
【0003】
例えば、抗アレルギー作用を有するメチル化カテキンを有効量含む機能性飲食品が開示されている(特許文献1)。この機能性飲食品によれば、抗アレルギー作用のある成分を手軽に且つ安心して摂取できるとされている。また、メチル化カテキンを有効成分として含有する抗肥満剤、この抗肥満剤を含有する飲食品が開示されている(特許文献2)。また、べにふうき茶葉から得られる抽出液に浸して製造するマスクが開示されている(特許文献3)。このマスクを使用することで、メチル化カテキンがマスクを装着した人の口を介して体内に入ることにより、消臭効果、抗菌効果及び抗アレルギー効果を奏するとされている。このようにべにふうき等の茶葉から得られるメチル化カテキンを含有させた製品の開発が盛んに行われている。
【0004】
ところで、メチル化カテキンを含む飲食品、メチル化カテキンを含む製品等を摂取、使用することにより充分な効果を得るためには、一定量以上のメチル化カテキンを摂取する必要がある。
【0005】
上記のような一定量以上のメチル化カテキンを摂取するためには、茶葉からその一定量以上のメチル化カテキンを抽出する必要がある。この際、簡便な方法でメチル化カテキンを抽出しようとすると併せてメチル化カテキン以外のカテキン類も多く抽出される。その結果、メチル化カテキンを一定量以上摂取するためにメチル化カテキンを含む抽出物を製品等に添加すると、添加後の製品等にはさらに多くのカテキン類が含まれることになる。
【0006】
メチル化カテキンも含め上記カテキン類は、酸化により色が変化(褐変)することが知られている。この褐変は製品の製造後の流通や製品の保存の期間にも進行し外観品質を低下させるとともに、不快味や不快臭を発生することが知られている。製品等に生じるこのような風味、香味、外観品質、保存性等の品質低下は、製品等に含まれるカテキン類の量が多くなるほど顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−328848号公報
【特許文献2】特開2006−298792号公報
【特許文献3】特開2009−106490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メチル化カテキンを製品等に含有させる際には、茶葉から得られるメチル化カテキンを含む茶エキス、メチル化カテキンを含む茶粉末を使用する。上記のような品質低下の問題を解消するために、茶エキス、茶粉末に含まれる総カテキン中のメチル化カテキンの濃度を高める技術が求められている。
【0009】
また、上記の通り、メチル化カテキンを添加する製品(添加対象物)には、飲食品、日用品等の安価且つ大量に生産されるものも多い。したがって、メチル化カテキン濃度を容易で且つ安価に高める方法が求められている。
【0010】
さらに、メチル化カテキンを添加した製品等には、メチル化カテキンを体内に取り入れる際に健康に悪影響を与えるものであってはならない。したがって、メチル化カテキンを含む茶エキス、茶粉末は、総カテキン含量中のメチル化カテキンの濃度を高めつつ健康に悪影響を与えないことが必要になる。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、健康を害さず且つ総カテキン含量中のメチル化カテキンの濃度が高い茶エキス、茶粉末を得る方法であって、容易で且つ安価にその茶エキス及び茶粉末を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、茶葉から得られた茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得て、酢酸エチルによりこの清澄液を液−液分配し、酢酸エチル層から茶エキス、茶粉末を得ることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0013】
(1) メチル化カテキンを含む茶葉から茶抽出液を得る抽出工程と、前記茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得る清澄化工程と、酢酸エチルにより前記清澄液を液−液分配する液−液分配工程とを有し、前記液−液分配工程後に酢酸エチル層に含まれる酢酸エチルを除去する茶エキスの製造方法。
【0014】
(2) メチル化カテキンを含む茶葉から茶抽出液を得る抽出工程と、前記茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得る清澄化工程と、酢酸エチルにより前記清澄液を液−液分配する液−液分配工程とを有し、前記液−液分配工程後に酢酸エチル層に含まれる可溶性固形分を粉末化する茶粉末の製造方法。
【0015】
(3) 前記清澄化工程は、遠心分離を行うことにより前記茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得る工程である(1)又は(2)に記載の茶エキスの製造方法又は茶粉末の製造方法。
【0016】
(4) 前記抽出工程における抽出温度よりも低い温度まで前記茶抽出液を冷却する工程と、前記茶抽出液を濾過する工程とを、前記抽出工程と前記清澄化工程との間にさらに有する(1)から(3)のいずれかに記載の茶エキスの製造方法又は茶粉末の製造方法。
【0017】
(5) 前記抽出工程は、80〜120℃の熱水を用いて茶抽出液を抽出する工程である(1)から(4)のいずれかに記載の茶エキスの製造方法又は茶粉末の製造方法。
【0018】
(6) 前記液−液分配工程後の酢酸エチル層に対して水を加えながら酢酸エチルを除去し、水層中に含まれるメチル化カテキンを吸着樹脂に吸着させる吸着工程と、アルコール溶液により前記吸着工程後の吸着樹脂からメチル化カテキンを溶出させる溶出工程とをさらに有し、前記溶出液を濃縮する(1)、(3)、(4)又は(5)に記載の茶エキスの製造方法。
【0019】
(7) 前記液−液分配工程後の酢酸エチル層に対して水を加えながら酢酸エチルを除去し、水層中に含まれるメチル化カテキンを吸着樹脂に吸着させる吸着工程と、アルコール溶液により前記吸着工程後の吸着樹脂からメチル化カテキンを溶出させる溶出工程とをさらに有し、前記溶出液に含まれる可溶性固形分を粉末化する(2)から(5)のいずれかに記載の茶粉末の製造方法。
【0020】
(8) 前記アルコール溶液のアルコールの濃度が20〜70質量%である(6)又は(7)の茶エキスの製造方法又は茶粉末の製造方法。
【0021】
(9) 茶葉から得たメチル化カテキン成分を含む抽出液を、酢酸エチルにより液−液分配し、酢酸エチル層をエキス化又は粉末化することで、茶エキス又は茶粉末に含まれるカテキン中のメチル化カテキンの濃度を高める方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、べにふうき等の茶葉から得られる茶エキス、茶粉末に含まれる総カテキン中のメチル化カテキンの濃度を高めつつ、健康に悪影響を与えない茶エキス及び茶粉末を容易且つ安価で製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
本発明の茶エキス及び茶粉末の製造方法、茶エキス又は茶粉末に含まれるカテキン中のメチル化カテキンの濃度を高める方法は、茶葉から得た抽出液を清澄化すること及び清澄化後に得られる清澄液を、酢酸エチルを用いて液−液分配することが特徴である。以下、本発明の茶エキスの製造方法、茶粉末の製造方法について説明する。
【0025】
<茶エキスの製造方法>
本発明の茶エキスの製造方法は、メチル化カテキンを含む茶葉から茶抽出液を得る抽出工程と、茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得る清澄化工程と、酢酸エチルにより清澄液を液−液分配する液−液分配工程とを有し、液−液分配工程後に酢酸エチル層に含まれる酢酸エチルを除去する酢酸エチル除去工程とを有する。
【0026】
[抽出工程]
抽出工程はメチル化カテキンを含む茶葉から茶抽出液を得る工程である。本工程では、茶葉からメチル化カテキンを抽出することが目的である。
【0027】
抽出液を得るために用いる茶葉は、メチル化カテキンを含むものであれば特に限定されない。メチル化カテキンを含む茶葉として好ましくは、べにふうき、べにふじ、べにほまれ、べにひかり、青心大パン、くりたわせ、ゆたかみどり、かなやみどり、おくみどり、するがわせ、ゆたかみどり等の品種の茶葉であり、最も好ましくは、べにふうきである。また、本発明における茶葉は、生葉ではなく製茶された茶葉(荒茶を含む)を意味し、木茎等も含まれる。
【0028】
メチル化カテキンとは、例えば、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、EGCG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、ECG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、ECG4”Meという)、エピガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、EGCG4”Meという)、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、GCG3”Meという)、カテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、CG3”Meという)、カテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、CG4”Meという)、ガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、GCG4”Meという)、エピガロカテキン−3−O−メチルエチルガレート、エピカテキン−3−O−メチルエチルガレート、エピカテキン−3−O−(3,5−O−ジメチル)ガレート及びこれらの異性化体を指す。
【0029】
茶葉から抽出液を得る方法は特に限定されず、従来公知の一般的な方法で行うことができる。本発明において抽出工程は、以下の熱水を抽出溶媒として用いて茶葉から抽出液を得る工程であることが好ましい。
【0030】
熱水を抽出溶媒とする際の熱水は、温度が80〜120℃の熱水であることが好ましい。抽出液に含まれる総カテキン中のメチル化カテキンの濃度がより高まるからである。熱水を抽出溶媒として茶葉からメチル化カテキンを抽出する場合には、用いる熱水の温度が高いほど多くのメチル化カテキンが抽出されるが、熱水の温度が高すぎる場合には、メチル化カテキンが抽出されにくくなる。抽出溶媒の熱水が上記温度範囲であれば、抽出液に含まれる総カテキン中のメチル化カテキンの濃度を高めることができる。
【0031】
熱水の温度以外の抽出条件も特に限定されるものではなく、熱水としては水道水、蒸留水、イオン交換水等の熱水を用いることができるが、イオン交換水の熱水を用いることが好ましい。また、熱水にはアスコルビン酸又はその塩等の有機酸、有機塩、pH調製剤、水質調製剤等を添加してもよい。
【0032】
また、熱水を用いて茶葉からメチル化カテキンを抽出する際の抽出時間は、1〜2時間であることが好ましい。
【0033】
また、抽出に使用する湯の量は、茶葉(約1kg)に対して2〜100倍、より望ましくは10〜50倍、程度である。
【0034】
抽出方法も特に限定されず、従来公知の静置抽出、撹拌抽出、カラム抽出等の抽出方法を用いることができるが、本発明においては、カラム抽出方法が好ましい。カラムとは、内部に茶葉と茶抽出液とを分離するメッシュを有する。メッシュの形状は特に限定されない。また、メッシュのサイズは10〜1000メッシュであることが好ましい。また、カラムの高さ(L)と内径(D)との比(L/D)は特に限定されないが0.2〜20であることが好ましい。
【0035】
従来公知のカラム抽出方法としては、所定量の水をタンクに入れてカラムに循環供給する方法、抽出用の熱水をカラムの一方側から供給して他方側から排出する方法等が挙げられる。具体的には、前者は茶から得られた抽出液をカラム抽出機内に再度戻し、この操作を繰り返す抽出方法であり、後者は抜き出した抽出液をカラム抽出機内に再度戻すことなく一度の通水により抽出する方法である。本発明においては、前者の循環供給させる方法が好ましい。
【0036】
[清澄化工程]
清澄化工程とは、茶抽出液中の懸濁物質を分離させて清澄液を得る工程である。本工程は茶抽出液から微細な茶粒子等の懸濁物質を除く工程であり、茶エキス及び茶粉末に含まれる総カテキン中のメチル化カテキン濃度を高めるために必須の工程である。
【0037】
清澄化を行うことで液−液分配時の分離を良くして、溶媒使用量を減らして、効率良くメチル化カテキンの濃度を高めるという効果がある。また、商品に利用する場合、透明度を上げたり、保存中の濁度・沈殿を減少させるという効果がある。
【0038】
清澄液を得るために茶抽出液を清澄化する方法は特に限定されないが、例えば、濾過、遠心分離等の方法で清澄化することができる。本発明においては遠心分離による清澄化が好ましい。
【0039】
遠心分離の条件は特に限定されないが、温度は0〜80℃であることが好ましく、回転数は500〜20000rpm/minであることが好ましい。また、遠心分離後の上清を分離回収することが好ましい。
【0040】
抽出工程と清澄化工程との間に、抽出工程における抽出温度よりも低い温度まで茶抽出液を冷却する工程と、茶抽出液を濾過する工程とをさらに有することが好ましい。冷却する工程では、茶抽出液の温度が0〜80℃になるまで冷却することが好ましい。また、濾過する工程ではメッシュサイズが10〜1000メッシュの濾材で濾過することが好ましい。さらには、サイクロン、珪藻土での濾過でもよい。茶抽出液を冷却後に濾過してもよいし、濾過後に冷却してもよい。また、濾過工程、冷却工程を複数設けてもよい。
【0041】
[液−液分配工程]
液−液分配工程は、酢酸エチルにより上記清澄液を液−液分配する工程である。本工程は、清澄液からメチル化カテキンを酢酸エチル層に移す工程である。メチル化カテキンは、メチル化カテキン以外の他のカテキン類と比較して酢酸エチル層に移りやすい。その結果、最終的に得られる茶エキスや茶粉末に含まれる総カテキン中のメチル化カテキンの濃度を高めることができると考えられる。
【0042】
特に上記清澄化工程後の清澄液を、酢酸エチルを用いて液−液分配することが本発明の特徴である。清澄液を用いれば、分離を良くして効率化につながるという理由で最終的に得られる茶エキス、茶粉末に含まれる総カテキン中のメチル化カテキン濃度を高めることができる。
【0043】
酢酸エチルを用いて清澄液を液−液分配するときの条件は特に限定されない。清澄液の0.2〜20倍の量の酢酸エチルを用いて液−液分配を行うことが好ましい。また、液−液分配の操作を2〜10回繰り返し行うことが好ましい。
【0044】
本発明においては、酢酸エチルを用いて液−液分配を行う前に清澄液を、濃縮することが好ましい。濃縮の程度は特に限定されないが、Bx2〜70°まで濃縮することが好ましい。
【0045】
[酢酸エチル除去工程]
酢酸エチル除去工程とは、液−液分配工程後に酢酸エチル層に含まれる酢酸エチルを除去する工程である。上記の通り、酢酸エチル層に含まれる総カテキン中のメチル化カテキン濃度は高い。この酢酸エチル層から人体に有害な酢酸エチルを取り除くことで、総カテキン中のメチル化カテキン濃度の高い安全な茶エキスを得ることができる。
【0046】
酢酸エチル層から酢酸エチルを取り除く方法は特に限定されないが、従来公知の一般的な方法で取り除くことができる。本発明において酢酸エチル層から酢酸エチルを取り除く方法としては、以下の方法が好ましい。
【0047】
酢酸エチル層から酢酸エチルの取り除く好ましい方法とは、先ず、操作の容易性から酢酸エチル層を濃縮する。次いで、濃縮後の酢酸エチル層に水を加え、水を加えた酢酸エチル層の濃縮を行う。水を加えることで、酢酸エチルに溶けきれなくなったカテキン類は水層に移る。水を加えて濃縮することでカテキン類の析出を抑えつつ、酢酸エチル層から酢酸エチルを容易に取り除くことができる。なお、この方法で酢酸エチル層から酢酸エチルを取り除く際には、水を加えながら濃縮操作を続けてもよいし、水を加える操作と濃縮操作とを繰り返してもよい。
【0048】
酢酸エチル層から酢酸エチルが取り除かれたことを確認後、所望のBxまで濃縮することで総カテキン含量中のメチル化カテキン濃度が高い茶エキスを得ることができる。
【0049】
本発明においては、酢酸エチルを取り除いた後のエキスに含まれるメチル化カテキンを吸着樹脂に吸着させる吸着工程と、アルコール溶液により吸着工程後の吸着樹脂からメチル化カテキンを溶出させる溶出工程とをさらに有することが、茶エキスに含まれる総カテキン含量中のメチル化カテキン濃度を高める上で好ましい。溶出工程で得られる溶出液を濃縮することで、さらにメチル化カテキン濃度の高い茶エキスを得ることができる。
【0050】
[吸着工程]
吸着工程とは、液−液分配工程後の酢酸エチル層に対して水を加えながら酢酸エチルを除去し、水層中に含まれるメチル化カテキンを吸着樹脂に吸着させる工程である。なお、「酢酸エチル層に対して水を加えながら酢酸エチルを除去」とは、上記酢酸エチル除去工程の好ましい除去方法と同様の操作を指す。
【0051】
吸着樹脂は、従来公知のものを使用することができる。従来公知の吸着樹脂としては、スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂、イオン交換樹脂、活性炭、オクタデシル化シリカゲル等の吸着樹脂を挙げることができる。
【0052】
吸着方法は特に限定されず、従来公知の吸着方法でメチル化カテキンを上記のような吸着樹脂に吸着させることができる。従来公知の吸着方法としては、例えば、吸着剤をカラムに充填し、カラムに酢酸エチル除去後のエキスを通す方法や、上記エキスに吸着樹脂をそのまま混合する方法等が挙げられる。
【0053】
[溶出工程]
溶出工程とは、アルコール溶液により上記吸着工程後の吸着樹脂からメチル化カテキンを溶出させる工程である。
【0054】
溶出溶媒は特に限定されず、使用する吸着樹脂の種類等に応じて適宜変更することができる。従来公知の抽出溶媒としては、例えば、水、アルコール溶液、ケトン溶液、エステル溶液、エーテル溶液等を挙げることができる。本発明において好ましい抽出溶媒は、アルコール溶液であり、その中でもエタノール溶液が好ましい。
【0055】
最終的に、上記の溶出工程で得られた溶出液を所望のBxまで濃縮することで、総カテキン含量中のメチル化カテキンの濃度が高い茶エキスを得ることができる。
【0056】
<茶粉末の製造方法>
茶粉末の製造方法は、抽出工程、清澄化工程、液−液分配工程までは茶エキスの製造方法と同じである。茶粉末の製造方法では、液−液分配工程後の酢酸エチル層に含まれる可溶性固形分を粉末化する。
【0057】
粉末化する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。従来公知の方法としては、例えば、スプレードライ法、真空乾燥法、凍結乾燥法、ドラムドライヤー法、マイクロ波乾燥法等を挙げることができる。本発明においては、スプレードライ法が好ましい。
【0058】
本発明においては、酢酸エチルが茶粉末に含まれないようにするために、酢酸エチル層に対して水を加えながら濃縮操作を行うことにより酢酸エチルを除去して得られるメチル化カテキン水溶液を粉末化することが好ましい。酢酸エチル層に含まれる酢酸エチルを除去は、上記茶エキスを製造する方法で記載した方法と同じ方法で行うことができる。
【0059】
茶エキスの製造方法の場合と同様に、酢酸エチルを取り除いた後のエキスに含まれるメチル化カテキンを吸着樹脂に吸着させる吸着工程と、アルコール溶液により吸着工程後の吸着樹脂からメチル化カテキンを溶出させる溶出工程とをさらに有することが、茶粉末に含まれる総カテキン含量中のメチル化カテキン濃度を高める上で好ましい。溶出工程で得られる溶出液を粉末化することで、さらにメチル化カテキン濃度の高い茶粉末を得ることができる。
【0060】
<メチル化カテキンの濃度を高める方法>
本発明のメチル化カテキンの濃度を高める方法は、茶葉から得たメチル化カテキン成分を含む抽出液を、酢酸エチルにより液−液分配し、酢酸エチル層をエキス化又は粉末化することを特徴とする。
【0061】
上述の通り、酢酸エチルを用いた液−液分配工程は、エキス又は粉末中に含まれる総カテキン中のメチル化カテキン濃度を高めることに寄与する。
【0062】
エキス化する方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができる。本発明においては、上記茶エキスの製造方法における、酢酸エチル除去工程と同様の方法でエキス化することが好ましい。
【0063】
粉末化する方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができる。本発明においては、上記茶粉末の製造方法と同様にスプレードライ法により粉末化することが好ましい。そして、酢酸エチルが茶粉末に含まれないようにするために、酢酸エチル層に対して水を加えながら濃縮操作を行うことにより酢酸エチルを除去して得られるメチル化カテキン水溶液を粉末化することが好ましい。酢酸エチル層に含まれる酢酸エチルを除去は、上記茶エキスを製造する方法で記載した方法と同じ方法で行うことができる。
【0064】
<添加対象物>
本発明の製造方法により得られた茶エキス、茶粉末、及び本発明のメチル化カテキン濃度を高める方法により得られた茶エキス、茶粉末は、様々な製品に添加することができる。添加可能な製品の具体例としては、菓子・ケーキ類、パン、麺類、大豆加工品、ゼリー、ヨーグルト、氷菓、アイスクリーム、乳製品、卵加工品、練り製品、油脂、調味料等の食品、炭酸飲料、果汁、果汁飲料、乳性飲料、茶飲料、コーヒー飲料等の飲料、チューハイ・ビール類等の酒類、サプリメント等の健康食品、医薬品、ティッシュ・ペーパー、ウェット・ティッシュ、紙製おしぼり、おしぼり、手ぬぐい、タオル、ハンカチ、足拭き用マット、クッション、ドアカバー等の日用品、香水、化粧品、洗口剤、歯磨、洗剤、石鹸、シャンプー、リンス、入浴剤、芳香剤等の香粧品等を挙げることができる。
【0065】
本発明を用いて得られた茶エキス、茶粉末は、含まれる総カテキン中のメチル化カテキン濃度が高い。その結果、茶エキス、茶粉末を添加後にメチル化カテキンの添加対象物中の含量が所望のメチル化カテキン量になるように上記のような添加対象物に添加したときに、添加後の添加対象物に含まれる総カテキン量を抑えることができる。その結果、カテキン類の酸化による風味、香味、外観品質、保存性等の品質低下を抑えることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
<抽出温度の検討>
[検討例1]
80℃の熱水を用いて、べにふうき茶葉50kgから茶抽出液を得た。熱水の使用量は茶葉の質量の50倍とし、抽出時間は1時間とした。得られた茶抽出液を20℃まで冷却した。冷却した茶抽出液を200メッシュのフィルターを用いて濾過した。濾過後の茶抽出液を遠心分離した。遠心分離の条件は、2000rpm、5分間とした。遠心分離後の上清を分離回収し清澄液を得た。清澄液に含まれるメチル化カテキン濃度をHPLC法という方法で測定した。メチル化カテキン濃度はエキス100g当たり24mgであった。
【0068】
[検討例2]
熱水の温度を90℃に変更した以外は検討例1と同様の方法で清澄液に含まれるメチル化カテキン濃度測定した。メチル化カテキン濃度はエキス100g当たり24mgであった。
【0069】
[検討例3]
熱水の温度を100℃に変更した以外は検討例1と同様の方法で清澄液に含まれるメチル化カテキン濃度測定した。メチル化カテキン濃度はエキス100g当たり28mgであった。
【0070】
[検討例4]
熱水の温度を110℃に変更し、加圧抽出した以外は検討例1と同様の方法で清澄液に含まれるメチル化カテキン濃度測定した。メチル化カテキン濃度はエキス100g当たり24mgであった。
【0071】
[検討例5]
熱水の温度を120℃に変更した以外は検討例4と同様の方法で清澄液に含まれるメチル化カテキン濃度測定した。メチル化カテキン濃度はエキス100g当たり22mgであった。
【0072】
[検討例6]
熱水の温度を130℃に変更した以外は検討例4と同様の方法で清澄液に含まれるメチル化カテキン濃度測定した。メチル化カテキン濃度はエキス100g当たり19mgであった。
【0073】
熱水の温度を140℃に変更した以外は検討例4と同様の方法で清澄液に含まれるメチル化カテキン濃度測定した。メチル化カテキン濃度はエキス100g当たり14mgであった。
【0074】
以上の通り、80〜120℃の熱水を用いて茶抽出液を抽出することでメチル化カテキン濃度が高まることが確認された。
【0075】
[検討例7]
20℃の水を用いて、茶葉100kgから茶葉抽出液を得た。水の使用量は茶葉の質量の100倍とし、抽出時間は2時間とした。得られた茶抽出液を15℃まで冷却した。冷却した茶抽出液を400メッシュのフィルターを用いてろ過した。ろ過後の茶抽出液を1000rpmで10分間遠心分離して上清を分離回収し清澄液を得た。清澄液に含まれるカテキン類の種類と量をHPLCにて分析した。分析結果を表1に示した。
【0076】
[検討例8]
20℃の水を、40℃の湯に変更した以外は、検討例7と同様の方法で清澄液を得て、澄液に含まれるカテキン類の種類と量をHPLCにて分析した。分析結果を表1に示した。
【0077】
[検討例9]
20℃の水を、60℃の湯に変更した以外は、検討例7と同様の方法で清澄液を得て、澄液に含まれるカテキン類の種類と量をHPLCにて分析した。分析結果を表1に示した。
【0078】
[検討例10]
20℃の水を、80℃の湯に変更した以外は、検討例7と同様の方法で清澄液を得て、澄液に含まれるカテキン類の種類と量をHPLCにて分析した。分析結果を表1に示した。
【0079】
[検討例11]
20℃の水を、100℃の湯に変更した以外は、検討例7と同様の方法で清澄液を得て、澄液に含まれるカテキン類の種類と量をHPLCにて分析した。分析結果を表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
80〜100℃の熱水を用いて茶抽出液を抽出することで、清澄液に含まれるメチル化カテキン濃度が高まることが確認された。
【0082】
<液−液分配工程の検討>
べにふうき茶葉475gを表1に示す溶媒で3回抽出後、得られた抽出液を減圧濃縮し、減圧濃縮後の濃縮液をスプレードライ法により粉末化させた。得られた茶粉末に含まれるカテキン類の種類と量をHPLC法という方法で分析した。分析結果を表2に示した。
【0083】
【表2】
【0084】
表1の結果から明らかなように、酢酸エチルとジエチルエーテルでメチル化カテキン濃度が高くなった。茶粉末1gを得るのに必要な茶葉の量を確認した。ジエチルエーテルの場合には茶粉末1gを得るために59.4gの茶葉が必要であった。一方、酢酸エチルの場合には茶粉末1gを得るのに14.0gの茶葉が必要であった。他の溶媒は酢酸エチルとほぼ同様であった。以上より最もメチル化カテキンの精製度が高く、収率の良い溶媒は酢酸エチルであることが確認された。また、ヘキサン、トルエンについても検討したが、分離できずエキスが得られなかった。
【0085】
<実施例1>
93℃の熱水を用いて、べにふうき茶葉100kgから茶抽出液を得た。熱水の使用量は茶葉の質量の13倍とし、抽出時間は2時間とした。得られた茶抽出液を20℃まで冷却した。冷却した茶抽出液を200メッシュのフィルターを用いて濾過した。濾過後の茶抽出液を遠心分離した。遠心分離の条件は、2000rpm、5分間とした。遠心分離後の上清を分離回収し清澄液を得た。清澄液をBx35°まで濃縮した。この濃縮した清澄液を90℃まで加熱し殺菌処理した。殺菌後の抽出液に酢酸エチルを加えて液−液分配を行った。液−液分配後の酢酸エチル層を質量が1/20になるまで濃縮した。その後、濃縮した酢酸エチル層に水を加えながら濃縮操作を続けた。酢酸エチルが除去されたことをGC法で確認した後、Bx70°まで濃縮した。濃縮後のエキスをスプレードライ法により粉末化して茶粉末を得た。得られた粉末をメチル化カテキン含量が17mg/100mlになるように調整して、酸化防止剤としてビタミンCを配合し、PETボトルにホットパック充填した。HPLCにてホットパック充填後の溶液中に含まれるカテキン類の種類と量を分析した。その結果、表3に示すカテキン類が表3に示す量含まれることが確認された。
【0086】
<実施例2>
酢酸エチル層から酢酸エチルを除去するまでは実施例1と同様の方法で行い、除去後のエキスを、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を充填したカラムに通し、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂にメチル化カテキン等の成分を吸着させ、溶出溶媒として40%エタノールを用い溶出液を得た後、この溶出液を減圧濃縮して、濃縮後のエキスをスプレードライ法により粉末化した以外は実施例1と同様の方法で茶粉末を得た。得られた茶粉末に含まれるカテキン類の種類と量を実施例1と同様の方法で分析した。分析結果を表3に示した。
【0087】
<比較例1>
Bx35°まで濃縮した清澄液を90℃まで加熱し殺菌処理するまでは実施例1と同様の方法で行い、殺菌後の抽出液をスプレードライ法により粉末化した以外は実施例1と同様の方法で茶粉末を得た。得られた茶粉末に含まれるカテキン類の種類と量を実施例1と同様の方法で分析した。分析結果を表3に示した。
【0088】
<実施例3>
濃縮した酢酸エチル層に水を加えながら濃縮する操作までは、実施例1と同様の方法で行い、その後、酢酸エチル層の酢酸エチルが除去されたことを実施例1と同様の方法で確認し、さらに濃縮を続けてBx70°まで濃縮し最後に殺菌して茶エキスを得た。得られた茶エキスに含まれるカテキン類の種類と量を実施例1と同様の方法で分析した。分析結果を表4に示した。
【0089】
<比較例2>
濃縮した清澄液を90℃まで加熱し殺菌処理を行うまでは、実施例1と同様の方法で行った。殺菌後の清澄液に含まれるカテキン類の種類と量を実施例1と同様の方法で分析した。分析結果を表4に示した。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
実施例の結果と比較例の結果とを比べると、実施例では、総カテキン含量中のメチル化カテキン濃度が高いことが確認された。
【0093】
<保存性評価>
実施例1、2及び比較例1のホットパック充填後の溶液を60℃の加速保存試験に供して理化学分析を行った。具体的には、保存前、60℃の温度環境で6日間保存、60℃の温度環境で9日間保存のそれぞれについて、色調色差、色度、濁度、香味劣化、褐変、沈殿、濁りの評価を行った。
【0094】
[色調色差の評価]
色差計(日本電色工業社製)を用いて各溶液の色調を測定し、それぞれの色調をL×a×bの空間座標で表し、6日間保存の溶液の色調と保存前の溶液の色調、9日間保存の溶液の色調と保存前の溶液の色調から色差ΔEを算出した。実施例1についての測定結果、算出結果を表5、実施例2についての測定結果、算出結果を表6、比較例1についての測定結果、算出結果を表7に示した。
【0095】
[色度、濁度の評価]
色度は保存前、保存後(6日間、9日間)の各溶液の1cmセル中、波長420nmにおける吸光度を色度とした。濁度は保存前、保存後(6日間、9日間)の各溶液中の1cmのセル中、波長720nmにおける吸光度を濁度とした。実施例1の色度、濁度の測定結果を表5、実施例2の色度、濁度の測定結果を表6、比較例1の色度、濁度の測定結果を表7に示した。
【0096】
[官能評価]
保存前、保存後(6日間、9日間)の各溶液について、香味劣化、褐変、沈殿、濁りに関する官能評価を行った。官能評価は専門のパネル4名による7段階で評価した。数字が小さくなる程、劣化、褐変及び退色が進み、沈殿、濁りが増えることを意味する。実施例1の官能評価の結果を表5、実施例2の官能評価の結果を表6、比較例1の官能評価の結果を表7に示した。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
実施例1、2の溶液は比較例1の溶液と比べて色調色差の変化が小さいこと及び褐変し難いことが確認された。また、実施例1、2の溶液は比較例1の溶液と比べて香味劣化が小さいことが確認された。また、実施例1、2の溶液には濁り、沈殿物は観察されなかったが、比較例1の溶液では濁り、沈殿物が観察された。以上より、実施例1、2の溶液は風味、香味、外観品質、保存性等の品質低下が小さいことが確認された。
【0101】
実施例1の溶液の結果と実施例2の溶液の結果とを比較すると、品質低下の程度の差が大きくないことが確認された。したがって、実施例1の方法によれば、低コスト且つ簡便な方法で品質低下の問題を解決できることが確認された。
【0102】
[初期香味評価]
実施例1、2及び比較例1のホットパック充填後の溶液の初期香味評価を行った。初期香味評価は専門のパネル5名による±3の7段階(比較例1の評価を基準(0)とした)の官能評価とした。評価項目は「渋み・苦味の良さ」、「渋味・苦味の強さ」、「飲みやすさ」とした。評価結果を表8に示した。
【0103】
【表8】
【0104】
実施例1、2の溶液は比較例1の溶液と比べて、苦味・渋味が弱く飲みやすいことが確認された。また、実施例1、2の溶液は比較例1の溶液と比べて、苦味・渋味の良さが高いことから香味が良いと考えられる。