(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自走車の後部に下降作業位置と上昇非作業位置とに昇降操作自在に連結された水田作業装置を備え、前記水田作業装置を田面から設定高さに維持するよう昇降操作する昇降制御手段を備え、前記水田作業装置に、田面から前記水田作業装置までの高さを検出する接地センサフロートを設けてある乗用型水田作業機であって、
前記自走車の後方でかつ前記接地センサフロートの左側、及び前記自走車の後方でかつ前記接地センサフロートの右側に、車体横向き軸芯まわりに回転駆動自在な左側及び右側の整地ロータを設け、
前記左側の整地ロータと前記右側の整地ロータとにわたって連結される伝動手段を設けずに、前記左側の整地ロータに動力伝達する左側の伝動手段を設け、前記右側の整地ロータに動力伝達する右側の伝動手段を設けて、
前記左側及び右側の伝動手段を、前記水田作業装置に位置する車体横向きの駆動軸と前記整地ロータとに連結されるとともに前記駆動軸まわりに上下揺動自在な伝動ケースを備えて構成し、
前記左側の整地ロータを前記水田作業装置のフレームに対して昇降自在に支持する複数の左支持手段を、前記左側の整地ロータの車体横向き軸芯に沿う方向に並べて設け、
前記右側の整地ロータを前記水田作業装置のフレームに対して昇降自在に支持する複数の右支持手段を、前記右側の整地ロータの車体横向き軸芯に沿う方向に並べて設け、
前記左側の整地ロータと前記右側の整地ロータが連動して昇降するように前記左支持手段と前記右支持手段を連動させる連動手段を設け、
前記左側又は前記右側の整地ロータを上昇側及び下降側に操作する駆動機構を設けてある乗用型水田作業機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自走車の通過跡に車輪跡や代掻き不良による荒れがあった場合、そのままの田面に苗植え作業や播種作業を行なえば、苗植え作業では、植付け苗の姿勢乱れなどの作業不良が発生しやすくなり、播種作業では、種子の異常な分散などの作業不良が発生しやすくなる。回転駆動自在な整地ロータによる田面の整地が行われるように、上記した従来の技術を適用した場合、昇降制御手段による水田作業装置の昇降制御に問題が発生することがあった。
つまり、従来の技術を適用した場合、回転駆動自在な整地ロータが水田作業装置の全幅にわたって位置し、整地ロータの掻き均しによる整地が行われた箇所を接地センサフロートが滑走していく。掻き均しによる整地が行われた田面では、掻き均しによる軟弱化が発生し、接地センサフロートに異常な沈下作動が発生して接地センサフロートが感知作動したと認識されて水田作業装置の不適切な対地高さ制御を実行される事態が発生しやすくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、回転駆動自在な整地ロータによる整地を行わせるものでありながら、水田作業装置の不適切な対地高さ制御の発生を回避しやすく、かつ整地ロータの昇降操作を構造簡単に行うことができる乗用型水田作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、自走車の後部に下降作業位置と上昇非作業位置とに昇降操作自在に連結された水田作業装置を備え、前記水田作業装置を田面から設定高さに維持するよう昇降操作する昇降制御手段を備え、前記水田作業装置に、田面から前記水田作業装置までの高さを検出する接地センサフロートを設けてある乗用型水田作業機において、
前記自走車の後方でかつ前記接地センサフロートの左側、及び前記自走車の後方でかつ前記接地センサフロートの右側に、車体横向き軸芯まわりに回転駆動自在な左側及び右側の整地ロータを設け、
前記左側の整地ロータと前記右側の整地ロータとにわたって連結される伝動手段を設けずに、前記左側の整地ロータに動力伝達する左側の伝動手段を設け、前記右側の整地ロータに動力伝達する右側の伝動手段を設けて、
前記左側及び右側の伝動手段を、前記水田作業装置に位置する車体横向きの駆動軸と前記整地ロータとに連結されるとともに前記駆動軸まわりに上下揺動自在な伝動ケースを備えて構成し、
前記左側の整地ロータを前記水田作業装置のフレームに対して昇降自在に支持する
複数の左支持手段
を、前記左側の整地ロータの車体横向き軸芯に沿う方向に並べて設け、
前記右側の整地ロータを前記水田作業装置のフレームに対して昇降自在に支持する
複数の右支持手段
を、前記右側の整地ロータの車体横向き軸芯に沿う方向に並べて設け、
前記左側の整地ロータと前記右側の整地ロータが連動して昇降するように前記左支持手段と前記右支持手段を連動させる連動手段を設け、
前記左側又は前記右側の整地ロータを上昇側及び下降側に操作する駆動機構を設けてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、整地ロータを接地センサフロートが滑走して行く箇所の左側と右側とに分散させて、接地センサフロートが滑走していく箇所を駆動型の整地ロータが接地センサフロートに先行していくことがないようにでき、そして左側及び右側の整地ロータに左側及び右側の伝動手段によって各別に動力伝達して左側及び右側の整地ロータを駆動することができ、接地センサフロートが整地ロータによる掻き均しが行なわれた箇所を滑走する場合の如く接地センサフロートに軟弱田面に起因した不適切な作動が発生することを回避しながら、接地センサフロートが滑走する箇所の左右側において、整地ロータの掻き均しによる整地が行なわれた箇所に作業を行なわせることができる。
【0008】
左側及び右側の整地ロータの回転支軸を一本の駆動回転自在な回転支軸によって構成して、左側及び右側の整地ロータに一本の回転支軸によって動力伝達すれば、左側及び右側の整地ロータが伝動手段によって一体昇降自在に連結される。この場合、伝動手段と接地センサフロートとの干渉を回避する手段が必要になり、伝動手段や回転支軸の構造が複雑になる。これに対し、本第1発明の構成によると、左側及び右側の整地ロータに左側及び右側の伝動手段によって各別に動力伝達するから、左側及び右側の整地ロータは、左側及び右側の伝動手段によって一体昇降自在に連結されない。しかし、本第1発明の構成によると、左側又は右側の整地ロータを駆動機構によって昇降操作すれば、これによって発生する左支持手段又は右支持手段の作動を連動手段によって右支持手段又は左支持手段に伝達させて右支持手段又は左支持手段を作動させることができ、左側及び右側の伝動手段と接地センサフロートとの干渉を防止する手段が不要で、左側及び右側の伝動手段を構造簡単に得ながら、右側又は左側の整地ロータを昇降させる駆動機構によって左側の整地ロータと右側の整地ロータとを共に昇降させることができる。
【0009】
したがって、左側及び右側の整地ロータの掻き均しによる整地が行われた箇所に作業を行なわせて、植付け苗の姿勢乱れや種子の異常分散などが発生しにくい良好な仕上がりの作業を行なうことができるものでありながら、接地センサフロートの軟弱田面に起因した不適切な作動に基づく昇降制御を防止した精度のよい昇降制御を行なわせ、この面からも良好な仕上がりの作業を行なうことができる。さらに、左側及び右側の整地ロータを水田作業装置の作業深さの設定に連係させて昇降調節させるなど、左側及び右側の整地ロータを駆動機構によって昇降操作できるものを、左側及び右側の伝動手段と接地センサフロートとの干渉を回避する手段を不要にして、かつ左側又は右側の整地ロータを昇降操作する駆動機構を設けるだけで構造簡単にできて安価に得ることができる。
本第1発明の構成によると、整地ロータと駆動軸とにわたって伝動ケースを連結するだけで整地ロータに動力伝達することができる。
整地反力などによって発生する整地ロータの荷重を伝動ケースに掛かりにくくしながら、整地ロータに整地反力による傾斜などが発生しないように、整地ロータを複数の支持機構によって安定的に支持させることができる。
したがって、整地ロータと駆動軸とにわたって連結した伝動ケースを備えるだけで構造簡単に整地ロータを駆動できるものでありながら、伝動ケースに掛かる整地ロータの荷重を抑制して伝動ケースの変形や破損を発生しにくくできる。
【0010】
本第2発明は、前記左支持手段及び前記右支持手段を、前記整地ロータと前記水田作業装置のフレームとにわたって連結するとともに前記自走車の後車輪の後方に配置し、
前記左側の整地ロータの外周側に、前記左支持手段の前記左側の整地ロータを支持する支持部材が入り込む凹入部を設け、
前記右側の整地ロータの外周側に、前記右支持手段の前記右側の整地ロータを支持する支持部材が入り込む凹入部を設けてある。
【0011】
左支持手段及び右支持手段の整地ロータを支持する支持部材を整地ロータの凹入部に入り込ませるものだから、支持部材が整地ロータの下方で整地ロータの外周側に突出することを防止でき、整地ロータによる整地が行われた田面に支持部材の通過跡が発生することを回避できる。
【0012】
本第2発明の構成によると、左支持手段及び右支持手段を後車輪の後方に配置したものだから、田面に後車輪のリムが入り込んで溝形の通過跡が発生した場合でも、その通過跡を整地ロータの凹入部が移動していき、リムの通過跡の両横側に発生した盛り上がり泥土に整地ロータの凹入部の内壁面が押圧して盛り上がり泥土をリムの通過跡に埋め戻していくようにできる。
【0013】
したがって、左支持手段及び右支持手段の支持部材による田面の荒れを回避することができるのみならず、整地ロータの凹入部を埋め戻し手段に有効利用してリムの通過跡を埋め戻して良好な仕上がりを得ることができる。
【0014】
本第3発明は、前記駆動機構を、前記自走車の後車輪よりも車体後方側に、前記後車輪の上端よりも低い配置高さで配置してある。
【0015】
本第3発明の構成によると、駆動機構を、水田作業装置の側面視で後車輪に対向した部位にコンパクトに設置することができる。
【0016】
したがって、左側及び右側の整地ロータを駆動機構によって昇降調節できるものでありながら、駆動機構の設置面からコンパクトな状態に得ることができる。
【0017】
本第4発明は、前記駆動機構を、前記左側の整地ロータ及び前記右側の整地ロータの前端よりも車体後方側に配置してある。
【0018】
本第4発明の構成によると、駆動機構を後車輪の後方に設置する場合でも、駆動機構が整地ロータと後車輪とを接近させることの障害にならず、整地ロータが後車輪に極力近づくようにして水田作業装置を自走車に連結することができる。
【0019】
したがって、左側及び右側の整地ロータを駆動機構によって昇降調節できるものでありながら、水田作業装置を自走車に極力近づけて連結して乗用型水田作業機の全長を極力短くできる。
【0020】
本第5発明
は、前記左支持手段及び前記右支持手段を、前記水田作業装置のフレームに上下揺動自在に支持された揺動リンク、前記整地ロータを回転自在に支持する支持部材、前記揺動リンクと前記支持部材とを連結する揺動自在な中間リンクを有したリンク機構を備えて構成してある。
【0021】
【0022】
本第5発明の構成によると、左支持手段及び右支持手段として、フレームから駆動軸まわりに揺動自在に延出する支持アームを採用することができなくても、揺動リンクのフレームに対する揺動、及び中間リンクによる揺動リンクと支持部材の連結により、伝動ケースを駆動軸まわりに上下揺動させながらリンク機構に昇降作動させることができ、整地ロータの昇降操作を行わせることができる。
【0023】
したがっ
て、左側及び右側の整地ロータを水田作業装置の作業深さの設定に連係させて昇降調節させるなど、整地ロータの昇降調節を行なわせることができる。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
本第6発明は、前記左側の整地ロータの後方を覆う左ロータカバー、及び前記右側の整地ロータの後方を覆う右ロータカバーを設け、
前記左ロータカバーを前記複数の左支持手段にわたって連結し、前記右ロータカバーを前記複数の右支持手段にわたって連結してある。
【0028】
本第6発明の構成によると、整地ロータによって泥土が跳ね上げられても、泥土をロータカバーによって受け止めさせて水田作業装置のフレームなどの装置部分に付きにくくできる。
【0029】
左支持手段及び右支持手段において、複数の支持手段を補強し合うとともにスムーズに連動して作動するようにロータカバーによって連結させて、支持手段による整地ロータの支持や昇降を強固にかつスムーズに行わせることができる。
【0030】
したがって、整地ロータによって跳ね上げられた泥土の装置部分への付着を防止できるのみならず、整地ロータの支持や昇降を強固にかつスムーズに行なわせることができるものを、ロータカバーを補強及び連動手段に利用して構造簡単に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る乗用型水田作業機の全体を示す側面図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係る乗用型水田作業機は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1,1、及び左右一対の駆動自在な後車輪2,2が装備された自走車を備え、この自走車の車体フレーム3の後部にリンク機構4を介して連結された水田作業装置10を備え、自走車の車体後部に設けた肥料タンク21が装備された施肥装置20を備えて構成してある。
【0033】
この乗用型水田作業機は、苗植え作業、及び植付苗に肥料を供給する施肥作業を行なう。
すなわち、自走車は、車体前部に設けたエンジン5、ミッションケース6、左右一対の前車輪1,1を支持する前輪駆動ケース7、左右一対の後車輪2,2を支持する後輪駆動ケース8を備え、エンジン5が出力した駆動力をミッションケース6の内部に位置する走行トランスミッション(図示せず)を介して前輪駆動ケース7及び後輪駆動ケース8に伝達して左右一対の前車輪1,1及び左右一対の後車輪2,2を駆動して走行する。自走車は、車体後部に設けた運転座席9aが装備された搭乗型の運転部9を備え、この運転部9に搭乗して操縦するよう搭乗型になっている。自走車は、車体前部の両横側に設けた予備苗収容装置30を備えている。左右の予備苗収容装置30は、上下四段に設けた予備苗棚30aを備え、各予備苗棚30aに予備のマット状苗を一枚ずつ載置して収容する。
【0034】
リンク機構4は、昇降シリンダ31によって車体フレーム3に対して上下に揺動操作されることにより、水田作業装置10をこれの下部に車体横方向に並んで位置する四つの接地フロート11及び一つの接地センサフロート12(
図4参照)が田面Tに接地した下降作業位置と、各接地フロート11及び接地センサフロート12が田面Tから高く上昇した上昇非作業位置とに昇降操作する。
【0035】
水田作業装置10を下降作業位置に下降させて自走車を走行させると、水田作業装置10は、エンジン5からの駆動力によって駆動されて、水田作業装置10の後部に車体横方向に並んで位置する八つの苗植付機構13(
図2,4参照)によって田面Tに苗植え付けを行なう。
【0036】
図1に示すように、施肥装置20は、前記肥料タンク21を備える他、この肥料タンク21の下部に連設された肥料繰出し機構22、この肥料繰出し機構22の肥料排出部に送風口が連通された電動ブロワ23を備えて構成してある。肥料繰出し機構22は、車体横方向に並んだ八つの肥料排出口を備えている。肥料繰出し機構22の各肥料排出口は、水田作業装置10の下部に車体横方向に並んで位置する八つの作溝施肥器24(
図2参照)のうちの対応する一つに肥料供給ホース25を介して接続されている。肥料繰出し機構22は、走行トランスミッションからの駆動力を後輪駆動ケース8に伝達する伝動系統から取り出した駆動力によって駆動される。
【0037】
つまり、施肥装置20は、肥料タンク21に貯留された粒状の肥料を肥料繰出し機構22によって肥料タンク21から各肥料排出口に繰出し、各肥料排出口に繰出した肥料を電動ブロワ23によって供給される搬送風によって肥料供給ホース25に供給する。各肥料供給ホース25は、供給された肥料を電動ブロワ23からの搬送風によって対応する作溝施肥器24に供給する。各作溝施肥器24は、対応する苗植付機構13による植付苗の近くで田面Tに溝を形成し、形成した溝に肥料供給ホース25からの肥料を供給する。これにより、施肥装置20は、水田作業装置10が八条の苗植え作業を行なうに伴い、各植付苗の横側近くに肥料を供給していく。
【0038】
水田作業装置10について詳述する。
図2は、水田作業装置10を示す側面図である。
図3は、水田作業装置10を示す正面図である。これらの図及び
図4に示すように、水田作業装置10は、前記八つの苗植付機構13、前記四つの接地フロート11、前記一つの接地センサフロート12を備える他、車体横向きの角形の鋼管材でなるメインフレーム14aを備えて構成されたフレーム14、このフレーム14の前部の上側に下端側ほど車体後方側に位置する傾斜姿勢で設けた一つの苗載せ台15を備えている。
【0039】
図2,4に示すように、水田作業装置10のフレーム14は、前記メインフレーム14aを備える他、このメインフレーム14aの車体横方向での中央部に取り付けたフィードケース16を備え、メインフレーム14aから車体後方向きに延出された四つの植付け駆動ケース17を備えて構成してある。四つの植付け駆動ケース17は、車体横方向に所定間隔を隔てて並んでいる。
【0040】
八つの苗植付機構13は、各植付け駆動ケース17の後端部の両横側に一つずつ位置するように配置されている。各苗植付機構13は、対応する植付け駆動ケース17の後端部に回転駆動自在に支持されている。各苗植付機構13は、植付け駆動ケース17に回転支軸13aを介して回転駆動自在に支持された回転ロータ13b、及び回転ロータ13bの両端部に回転駆動自在に設けた植付けアーム13cを備えて構成してある。各苗植付機構13は、自走車のミッションケース6の内部に設けた作業トランスミッション6aからの駆動力によって駆動される。すなわち、自走車の作業トランスミッション6aの出力が回転軸32(
図1参照)を介してフィードケース16に入力され、フィードケース16に入力された駆動力がフィードケース16から伝動軸33を介して植付け駆動ケース17の入力軸17aに伝達され、この入力軸17aの駆動力が伝動チェーン34を介して回転支軸13aに伝達される。各苗植付機構13は、駆動されると、各植付けアーム13cに設けてある植付爪13dの先端が回転軌跡を描いて苗載せ台15の下端部と田面Tとの間を上下に往復移動し、一方の植付けアーム13cの植付爪13dと他方の植付けアーム13cの植付爪13dとによって交互に、苗載せ台15に載置されたマット状苗の下端部から一株分の苗を取り出し、この苗を田面Tに持ち込んで植え付けるという苗植え運動を行なう。
【0041】
作業トランスミッション6aは、株間変速部(図示せず)を備えている。株間変速部は、変速操作されることにより、フィードケース16に伝達する駆動力の回転速度を変更して水田作業装置10の駆動速度を変更し、各苗植付機構13による植付苗の自走車進行方向での間隔(株間)を変更する。
【0042】
苗載せ台15は、車体横方向に並ぶ八つの苗載置部15aを備えている。苗載せ台15は、フィードケース16に設けた苗横送り機構35によって各苗植付機構13の苗植え運動に連動させて車体横方向に往復移送され、各苗植付機構13によるマット状苗の下端部からの苗の取出しがマット状苗の横方向での一端側から他端側にわたって行なわれるように、各苗載置部15aに載置されたマット状苗を対応する苗植付機構13に対して車体横方向に移送する。
【0043】
図5は、接地フロート11及び接地センサフロート12の支持構造を示す平面図である。この図及び
図10に示すように、各接地フロート11及び接地センサフロート12は、後端側の上部に設けた取付けブラケット11a又は12aを備えている。各接地フロート11及び接地センサフロート12の取付けブラケット11a又は12aは、車体横向きの一本のフロート支軸36から車体後方向きに延出した左右一対の支持アーム37,37に軸芯Pまわりに回転自在に支持されている。フロート支軸36は、水田作業装置10のフレーム14に回転自在に支持されている。
【0044】
したがって、各接地フロート11及び接地センサフロート12は、水田作業装置10のフレーム14に対して軸芯Pまわりに各別に揺動昇降するように支持されている。各接地フロート11及び接地センサフロート12の前端側は、水田作業装置10のフレーム14にリンク機構(図示せず)を介して昇降自在に連結されており、水田作業装置10が上昇非作業位置に上昇された場合、フレーム14から大きく垂れ下がらないようにリンク機構によって吊下げ支持される。
【0045】
図5,10に示すように、前記フロート支軸36は、これの車体横方向での中間部から苗載せ台15の裏面側に向けて一体回転自在に延出された植付深さ調節レバー40を備えている。この植付深さ調節レバー40をフロート支軸36の軸芯まわりにレバーガイド41(
図5参照)のガイド溝に沿わせて揺動調節することにより、フロート支軸36がフレーム14に対して回転して各支持アーム37を上下に揺動操作し、各接地フロート11及び接地センサフロート12の後端側のフレーム14に対する取り付け高さを変更できる。植付深さ調節レバー40をレバーガイド41に設けてある位置決め凹入部に係入させることにより、植付深さ調節レバー40が調節位置にレバーガイド41によって係止されてフロート支軸36を固定し、各接地フロート11及び接地センサフロート12の後端側を変更した取り付け高さに接地フロート11及び接地センサフロート12に作用する接地反力に抗して維持できる。
【0046】
つまり、各接地フロート11及び接地センサフロート12は、水田作業装置10を植付深さ調節レバー40の操作位置に対応した対地高さに接地支持し、八つの苗植付機構13による植付深さを植付深さ調節レバー40の操作位置に対応した植付け深さにする。植付深さ調節レバー40をフロート支軸36の軸芯まわりに揺動調節してレバーガイド41によって係止させることにより、各接地フロート11及び接地センサフロート12によって設定される水田作業装置10の対地高さを変更設定でき、八つの苗植付機構13による植付け深さを変更設定できる。
【0047】
図10に示すように、接地センサフロート12の前端側に連動ロッド18を介して連係させた植付深さ検出センサ42を水田作業装置10に設けてある。植付深さ検出センサ42を連係させた制御装置43に、前記昇降シリンダ31の操作弁44の電磁操作部を連係させてある。
【0048】
植付深さ検出センサ42は、連動ロッド18に操作アーム42aが連動された回転ポテンショメータによって構成してあり、接地センサフロート12を接地センサとして田面Tから水田作業装置10のフレーム14までの高さを検出し、検出結果を制御装置43に出力する。
すなわち、自走車の前後傾斜などに起因して水田作業装置10の対地高さが変化した場合、接地センサフロート12の前端側に作用する接地反力の大きさが変化して接地センサフロート12の前端側が軸芯Pまわりにフレーム14に対して昇降し、連動ロッド18が昇降操作されて植付深さ検出センサ42の操作アーム42aを揺動操作する。したがって、植付深さ検出センサ42は、接地センサフロート12の前端側のフレーム14に対する高さを基に、苗植付機構13の植付け深さを検出する。
【0049】
制御装置43は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、昇降制御手段46を備えている。昇降制御手段46は、植付深さ検出センサ42による検出結果を基に水田作業装置10のフレーム14の対地高さを検出し、この対地高さを基に操作弁44を操作して昇降シリンダ31を操作し、水田作業装置10のフレーム14の田面Tからの高さが設定対地高さになるよう水田作業装置10を昇降操作する。
【0050】
したがって、水田作業装置10は、自走車が前後に傾斜するなどしても、接地センサフロート12を接地センサとした昇降制御手段46による昇降制御によってフレーム14の田面からの高さが設定対地高さになる連結状態に調整され、八つの苗植付機構13による植付け深さが植付深さ調節レバー40によって設定された設定植付深さに等しくなる状態、あるいはほぼ等しくなる状態で苗植え作業を行なう。
【0051】
図10に示す昇降レバー47は、回転ポテンショメータ48を操作してこの回転ポテンショメータ48によって上昇及び下降指令などの指令を制御装置43に出力し、制御装置43によって操作弁44を切り換え操作させて水田作業装置10を昇降操作するものである。
図10に示す制御感度設定器49は、昇降制御手段46による水田作業装置10の昇降制御の制御感度を鈍感側や敏感側に変更調節するものである。
【0052】
接地センサフロート12は、これの両横側に位置する接地フロート11の接地面積よりも大きい接地面積を備えて田面Tの局所的な凹部に入り込みにくいように安定的に接地するように構成してある。このため、接地センサフロート12が接地フロート11よりも大型になるにもかかわらず、水田作業機全体としての前後長さを小に済ませてある。
すなわち、
図5に示すように、接地センサフロート12の前端12bが、接地センサフロート12の両横側に位置する接地フロート11の前端11bよりも車体前方側に位置する配置で接地センサフロート12及び四つの接地フロート11を配置してある。これにより、接地センサフロート12の接地フロート11よりも車体前方側に突出している前端側部分が後車輪2よりも車体内方側に位置する箇所に位置し、接地センサフロート12は、接地フロート11を自走車の後車輪2の後側に後車輪12に近づけて配置することを許容し、水田作業装置10を自走車に近づけて連結することを可能にしている。
【0053】
図3,4,5に示すように、水田作業装置10は、自走車の後方で、かつ接地センサフロート12の左横側に位置する一対の接地フロート11,11の前側に設けた整地ロータ50を備え、自走車の後方で、かつ接地センサフロート12の右横側に位置する一対の接地フロート11,11の前側に設けた整地ロータ50を備え、自走車の後方で、かつ接地センサフロート12の前側に設けた整地ローラ90を備えている。
【0054】
図2,5に示すように、左側及び右側の整地ロータ50は、整地ロータ50の後端が接地センサフロート12の前端12bよりも車体後方側に位置する状態で配置されている。
【0055】
図2〜5に示すように、左側の整地ロータ50は、整地ロータ50の回転支軸51の左側端部と植付け駆動ケース17とにわたって連結した伝動ケース61、整地ロータ50の回転支軸51とメインフレーム14aとにわたって連結した左右一対の左支持手段70L,70Lを介して水田作業装置10のフレーム14に支持されている。
【0056】
図2〜5に示すように、右側の整地ロータ50は、整地ロータ50の回転支軸51の右側端部と植付け伝動ケース17とにわたって連結した伝動ケース61、整地ロータ50の回転支軸51とメインフレーム14aとにわたって連結した左右一対の右支持手段70R,70Rを介して水田作業装置10のフレーム14に支持されている。
【0057】
左右一対の左支持手段70L,70L、及び左右一対の右支持手段70R,70Rは、整地ロータ50の車体横向き軸芯Xに沿う方向に並んでいる。左右一対の左支持手段70L,70Lのうちの左側の左支持手段70Lは、左側の整地ロータ50の回転支軸51の中間部とメインフレーム14aとにわたって連結されている。左右一対の左支持手段70L,70Lのうちの右側の左支持手段70Lは、左側の整地ロータ50の右側端部とメインフレーム14aとにわたって連結されている。左右一対の右支持手段70R,70Rのうちの左側の右支持手段70Rは、右側の整地ロータ50の左側端部とメインフレーム14aとにわたって連結されている。左右一対の右支持手段70R,70Rのうちの右側の右支持手段70Rは、右側の整地ロータ50の回転支軸51の中間部とメインフレーム14aとにわたって連結されている。
【0058】
図6は、左側の整地ロータ50に動力伝達する伝動手段60を示す断面図である。この図及び
図4に示すように、左側の整地ロータ50のための伝動手段60は、前記伝動ケース61を備える他、前記植付け駆動ケース17を備えて構成してある。
【0059】
前記伝動ケース61は、この伝動ケース61の入力軸62と、水田作業装置10に設けた車体横向きの駆動軸としての植付け駆動ケース17の入力軸17aとがジョイント63を介して一体回転及び脱着自在に連結していることにより、植付け駆動ケース17に連結している。植付け駆動ケース17と伝動ケース61の間の伝動系は、植付け駆動ケース17の入力軸17aの植付け駆動ケース17から露出した軸部分と、伝動ケース61の入力軸62の伝動ケース61から露出した部分とによって構成されており、植付け駆動ケース17および伝動ケース61から露出した状態になっている。伝動ケース61は、この伝動ケース61の出力軸64の角軸形端部64aと整地ロータ50の角筒形の回転支軸51とが一体回転自在に係合していることにより、回転支軸51に連結している。
【0060】
右側の整地ロータ50に動力伝達する伝動手段60の図示は省略するが、右側の整地ロータ50に動力伝達する伝動手段60は、左側の整地ロータ50に動力伝達する伝動手段60と同じ構造を備えて構成してある。
【0061】
図4,6に示すように、左側及び右側の整地ロータ50は、自走車に設けた作業トランスミッション6aからフィードケース16に伝達された駆動力を、前記伝動ケース61を備えて成る伝動手段60によって伝達されて、回転支軸51の車体横向きの軸芯Xまわりに回転駆動される。
【0062】
図2,3,4,5に示すように、整地ローラ90の支軸91の両端側を下端部で回転自在に支持する支持アーム92の上端側を、水田作業装置10のフレーム14におけるメインフレーム14aから車体前方向きに延出した左右一対の支持フレーム93,93の延出端部に支持させてあり、整地ローラ90は、支軸91の車体横向き軸芯Yまわりに遊動自在に支持されている。
【0063】
左右の支持アーム92は、支持フレーム93に連結ピン94を介して上下揺動自在に支持されている。各支持アーム92の上端側と、支持フレーム93に設けたバネホルダー95とにわたって鎮圧バネ96を連結してあり、各支持アーム92は、支持アーム92の上端側が高さ調節手段97に当接して受け止め支持されるまで鎮圧バネ96によって下降付勢されて、整地ローラ90を田面T側に下降付勢する。
【0064】
したがって、水田作業装置10は、自走車の通過跡に車輪跡や代掻き不良などによる荒れがあっても、左側及び右側の接地フロート11が滑走する箇所にあっては、接地フロート11に先立って整地ロータ50の掻き均しによる整地を行い、整地ロータ50および接地フロート11による整地を終えた箇所に苗植え付けを行ない、接地センサフロート12が滑走する箇所においては、掻き均しによって軟弱になった田面Tに接地センサフロート12が沈下する事態の発生を防止するように整地ローラ90の転動しながらの鎮圧による整地を行ない、整地ローラ90及び整地センサフロート12による整地を終えた箇所に苗植え付けを行なう。
【0065】
左側及び右側の整地ロータ50のための伝動手段60は、前記伝動ケース61の内部に設けたロータ変速部65を備えている。
【0066】
図6に示すように、ロータ変速部65は、伝動ケース61の入力軸62と出力軸64とにわたって巻回した高速伝動の巻き掛け伝動体66及び低速伝動の巻き掛け伝動体67を備え、入力軸62に高速伝動の巻き掛け伝動体66及び低速伝動の巻き掛け伝動体67を巻回するように設けた一対の輪体66a,67aと入力軸62とにわたって設けた速度切換え機構68を備えて構成してある。高速伝動の巻き掛け伝動体66および低速伝動の巻き掛け伝動体67は、チェーンによって構成してある。一対の輪体66a,67aは、チェーンスプロケットによって構成してある。
【0067】
図6に示すように、速度切換え機構68は、入力軸62の組み付け溝62aに摺動自在に係入された切換え体68a、及び伝動ケース61の支持部61aに摺動操作自在に貫設された操作軸68bを備えて構成してある。操作軸68bは、切換え体68aの一端側に相対回転自在に係合したシフトアーム68cを一体摺動自在に備えている。
【0068】
速度切換え機構68は、操作軸68bが高速付勢バネ68dに抗して摺動操作されると、切換え体68aがシフトアーム68cによって低速位置に摺動操作され、切換え体68aの切換え突部68eが高速伝動の巻き掛け伝動体66の輪体66aから離脱して低速伝動の巻き掛け伝動体67の輪体67aに係合し、入力軸62から輪体66aへの伝動を切りにして高速伝動の巻き掛け伝動体66を遊動状態に切換え、入力軸62から輪体67aへの伝動を入りにして低速伝動の巻き掛け伝動体67を伝動状態に切り換えるように低速入り状態になる。
【0069】
速度切換え機構68は、操作軸68bが高速付勢バネ68dによって摺動操作されると、切換え体68aの切換え突部68eが低速伝動の巻き掛け伝動体67の輪体67aから離脱して高速伝動の巻き掛け伝動体66の輪体66aに係入し、入力軸62から輪体67aへの伝動を切りにして低速伝動の巻き掛け伝動体67を遊動状態に切り換え、入力軸62から輪体66aへの伝動を入りにして高速伝動の巻き掛け伝動体66を伝動状態に切り換えるように高速入り状態になる。
【0070】
ロータ変速部65は、速度切換え機構68が高速入り状態に切り換え操作されることにより、整地ロータ50を高速で回転駆動するように高速状態に切り換わり、速度切換え機構68が低速入り状態に切り換え操作されることにより、整地ロータ50を低速で回転駆動するように低速状態に切り換わる。
【0071】
したがって、伝動手段60は、速度切換え機構68が高速入り状態に切り換え操作されることにより、伝動ケース61の入力軸62の駆動力をロータ変速部65によって高速側に変速して伝動ケース61の出力軸64から回転支軸51に伝達し、整地ロータ50を高速駆動する。伝動手段60は、速度切換え機構68が低速入り状態に切り換え操作されることにより、伝動ケース61の入力軸62の駆動力をロータ変速部65によって低速側に変速して伝動ケース61の出力軸64から回転支軸51に伝達し、整地ロータ50を低速駆動する。
【0072】
左側及び右側の整地ロータ50の伝動手段60における速度切換え機構68の操作軸68bは、
図1及び
図3に示す如く水田作業装置10の自走車に面する部位の一例としての苗載せ台15の裏面側における上部に揺動自在に設けた変速操作具69に操作ケーブル69aを介して連結されている。
【0073】
したがって、運転座席9aから車体後方向きに手を伸ばすことによって変速操作具69を揺動操作でき、変速操作具69を揺動操作することにより、左側及び右側の整地ロータ50のロータ変速部65を高速状態あるいは低速状態に変速操作でき、左側の整地ロータ50及び右側の整地ロータ50を共に高速駆動あるいは低速駆動されるように変速できる。
【0074】
図7(a),(b)は、左右一対の左支持手段70L,70Lのうちの左側の左支持手段70Lを示す側面図である。
図8(a),(b)は、左右一対の左支持手段70L,70Lのうちの右側の左支持手段70L、及び左右一対の右支持手段70R,70Rを示す側面図である。
図9は、左右一対の左支持手段70L,70L及び左右一対の右支持手段70R,70Rを示す正面図である。これらの図に示すように、各左支持手段70L及び各右支持手段70Rは、整地ロータ50の回転支軸51を軸支部71aで回転自在に支持する支持部材71を有したリンク機構を備えて構成してある。
【0075】
すなわち、各左支持手段70L及び各右支持手段70Rを構成するリンク機構は、前記支持部材71を備える他、この支持部材71に一端側が連結ピン72aを介して相対回転自在に連結した中間リンク72を備え、この中間リンク72の他端側に遊端側が連結ピン73aを介して相対回転自在に連結された揺動リンク73を備え、中間リンク72の中間部に遊端側が連結ピン74aを介して相対回転自在に連結された操作リンク74を備えて構成してある。
【0076】
揺動リンク73の基端側は、メインフレーム14aに固定されたステー75の支持部75aの上端側に枢支ピン73bを介して回転自在に支持されている。操作リンク74の基端側は、前記ステー75の支持部75aの上下方向での中間部に車体横向きの連動軸76を介して回転自在に支持されている。
【0077】
図7(a)及び
図8(a)は、左支持手段70L及び右支持手段70Rの整地ロータ50を下降操作した状態を示す側面図である。これらの図に示すように、左支持手段70L及び右支持手段70Rは、操作リンク74が連動軸76の車体横向きの軸芯まわりに下降側に揺動操作されることにより、整地ロータ50を下降操作する。
【0078】
すなわち、操作リンク74が下降側に揺動操作されると、中間リンク72が操作リンク74によって吊り下げ操作されて支持部材71を整地ロータ50の荷重によって下げ操作する。このとき、中間リンク72は、揺動リンク73による支持のために連結ピン74aの軸芯まわりに操作リンク74に対して回転しながら吊り下げ操作され、伝動ケース61が入力軸62の軸芯まわりで下降揺動することを可能にする。したがって、整地ロータ50が入力軸62の軸芯まわりに伝動ケース61と共にフレーム14に対して下降揺動する。
【0079】
図7(b)及び
図8(b)は、左支持手段70L及び右支持手段70Rの整地ロータ50を上昇操作した状態を示す側面図である。これらの図に示すように、左支持手段70L及び右支持手段70Rは、操作リンク74が連動軸76の車体横向きの軸芯まわりに上昇側に揺動操作されることにより、整地ロータ50を上昇操作する。
【0080】
すなわち、操作リンク74が上昇側に揺動操作されると、中間リンク72が操作リンク74によって吊り上げ操作されて支持部材71を整地ロータ50の荷重に抗して引き上げ操作する。このとき、中間リンク72は、揺動リンク73による支持のために連結ピン74aの軸芯まわりに操作リンク74に対して回転しながら吊り上げ操作され、伝動ケース61が入力軸62の軸芯まわりで上昇揺動することを可能にする。したがって、整地ロータ50が入力軸62の軸芯まわりに伝動ケース61と共にフレーム14に対して上昇揺動する。
【0081】
図7(a),(b)に示すように、左側の左支持手段70Lにおける操作リンク74に扇形ギヤ77を一体回転自在に備えさせ、この扇形ギヤ77に出力ギヤ78aが噛み合っている電動モータで成る昇降モータ78をステー75に支持させてある。この昇降モータ78は、出力ギヤ78aによって扇形ギヤ77を連動軸76の軸芯まわりに上昇側あるいは下降側に回転操作して、操作リンク74を上昇側や下降側に揺動操作する。
【0082】
扇形ギヤ77は、扇形ギヤ77の車体前方側端77aが扇形ギヤ77の回転軸芯である連動軸76の軸芯76cを超えて車体後方側に移動しない回転範囲で回転操作されるように設定されている。扇形ギヤ77の横側方が、ステー75の側板形の支持部75aによって覆われ、扇形ギヤ77の上方が、ステー75の天板部75bによって覆われている。
図1,2に示すように、昇降モータ78は、自走車の後車輪2よりも車体後方側で、かつ後車輪2の上端よりも低い配置高さに位置するように、さらに左側の整地ロータ50及び右側の整地ロータ50の前端50b(
図7参照)よりも車体後方側に位置するように、さらに車体上下方向視において伝動ケース61の上下揺動軸芯である入力軸62の軸芯と整地ロータ50の車体横向き軸芯Xとの間に位置するように配置してある。
図3に示すように、昇降モータ78は、車体前後方向視において苗横送り機構35が備える苗横送り軸35aから車体横外側に外れた箇所に位置するように配置してある。
【0083】
図3,9に示すように、前記連動軸76は、各左支持手段70L及び各右支持手段70Rの操作リンク74に一体回転自在に連結している中実軸部76aと、隣り合う一対の中実軸部76a,76aを一体回転自在に連結している筒軸部76bとを備えて構成してある。したがって、連動軸76は、各左支持手段70L及び各右支持手段70Rの操作リンク74を一体回転自在に連結して、左右一対の左支持手段70L,70Lと左右一対の右支持手段70R,70Rとを上昇側及び下降側に連動して作動するように連動させて、左側の整地ロータ50を昇降操作するように左側の左支持手段70Lに作用する昇降モータ78によって左側の整地ロータ50と右側の整地ロータ50とを連動させて下降及び上昇操作することを可能にしている。
【0084】
図10に示すように、昇降モータ78、及び前記連動軸76の一端側に連動させたロータ位置検出センサ80を制御装置43に連係させてある。制御装置43には、整地深さ設定器81及び設定植付深さ検出センサ45が連係されている。制御装置43は、自動高さ調節手段82を備えている。
【0085】
ロータ位置検出センサ80は、連動軸76に回転操作軸が連動された回転ポテンショメータによって構成してあり、連動軸76の回転位置を基に左側及び右側の整地ロータ50の水田作業装置10のフレーム14に対する車体上下方向での位置を検出し、この検出結果を制御装置43に出力する。
【0086】
設定植付深さ検出センサ45は、フロート支軸36に回転操作軸が連係された回転ポテンショメータによって構成してあり、フロート支軸36の操作位置を基に、植付深さ調節レバー40によって設定される設定植付け深さを検出し、検出結果を制御装置43に出力する。
【0087】
整地深さ設定器81は、左側及び右側の整地ロータ50の下端50aを接地センサフロート12の接地底面12cよりも設定間隔を隔てて低い配置高さに位置させる。その設定間隔を設定整地深さD(
図2,10参照)として設定し、設定整地深さDを制御手段43に出力する。整地深さ設定器81は、回転操作自在なダイヤル形の操作具を備え、操作具が回転操作されることにより、設定整地深さDを浅い側や深い側に変更して設定する。
【0088】
自動高さ調節手段82は、前記設定植付深さ検出センサ45及びロータ位置検出センサ80による検出結果、整地深さ設定器81による設定整地深さDを基に昇降モータ78を操作し、左側及び右側の整地ロータ50が接地センサフロート12のフレーム14に対する高さの変更にかかわらず設定整地深さDを維持するように左側及び右側の整地ロータ50を昇降調節する。
【0089】
したがって、植付深さ調節レバー40を操作して接地センサフロート12の水田作業装置10のフレーム14に対する高さを変更調節しても、この変更調節に連係して自動高さ調節手段82によって左側及び右側の整地ロータ50の昇降調節が行なわれ、左側及び右側の整地ロータ50は、整地深さ設定器81によって設定された設定整地深さDを維持してこの設定整地深さDで整地作用を行なう。
【0090】
図2,7,8に示すように、左側の整地ロータ50の後方に左ロータカバー85Lを設け、右側の整地ロータ50の後方に右ロータカバー85Rを設けてある。
各ロータカバー85L,85Rは、左側あるいは右側の整地ロータ50の外周囲に沿うように成形された湾曲形の鉄板によって構成してある。左及び右ロータカバー85L,85Rは、整地ロータ50によって跳ね上げられた泥土を接地フロート11などに掛からないように受け止めて田面Tに落下させる。
【0091】
左ロータカバー85L及び右ロータカバー85Rは、左及び右ロータカバー85L,85Rの上端側に左及び右ロータカバー85L,85Rの車体横方向での全長にわたって設けた管形の取付けバー85aを備えている。左ロータカバー85Lは、これの取付けバー85aが左右一対の左支持手段70,70の支持部材71と、左側の整地ロータ50のための伝動ケース61に設けた支持部61a(
図2参照)とにわたって連結されていることにより、左右一対の左支持手段70L,70Lおよび伝動ケース61にわたって連結されている。右ロータカバー85Rは、これの取付けバー85aが左右一対の右支持手段70R,70Rの支持部材71と、右側の整地ロータ50のための伝動ケース61に設けた支持部61a(
図2参照)とにわたって連結されていることにより、左右一対の右支持手段70R,70Rおよび伝動ケース61にわたって連結されている。
【0092】
図3,4,5に示すように、整地ローラ90は、整地ローラ90の車体横方向での中間部に設けた排水溝90aを備えており、整地ローラ90の前側に位置する水を整地ローラ90の前側に溜まりにくいように排水溝90aによって整地ローラ90の後方側に排出しながら整地を行う。
【0093】
整地ローラ90の排水溝90aは、水田作業装置10が上昇非作業位置に上昇された際、回転軸32を入り込ませて、整地ローラ90と回転軸32の当接を回避する。
【0094】
図2,4に示すように、各支持アーム92に作用する高さ調節手段97は、支持フレーム93に支持部材98を固設して設けたメネジ部に螺着されたネジ軸によって構成してある。ネジ軸は、回転操作自在な操作ノブ97aを備えている。
【0095】
つまり、植付深さ調節レバー40による接地センサフロート12のフレーム14に対する高さを変更調節しても、自動高さ調節手段82による整地ロータ50の高さ調節が行なわれても、各支持アーム92に作用する高さ調節手段97を操作ノブ97aの回転操作によって操作することにより、高さ調節手段97の支持アーム92に対するストッパ位置が変化し、高さ調節手段97が整地ローラ90を整地に適切な取り付け高さに調節する。
【0096】
すなわち、植付深さが中間位置から最浅位置の範囲では、整地ローラ90を最下限位置に設定してあっても、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも上側に位置している。
植付深さが中間位置から最深位置の範囲では、整地ローラ90を最下限位置に設定してあると、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも下側に位置する。したがって、高さ調節手段97を操作することにより、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも設定高さD1を隔てた高い配置高さで、かつ整地ロータ50の下端50aよりも高い配置高さに位置するように整地ローラ90の取り付け高さを調節することができる。
【0097】
図5に示すように、左右一対の左支持手段70L,70Lのうちの左側の左支持手段70Lは、自走車の左側の後車輪2の後方に配置し、左右一対の右支持手段70R,70Rのうちの右側の右支持手段70Rは、自走車の右側の後車輪2の後方に配置してあり、左側の整地ロータ50は、左側の後車輪2のリム2aの通過跡A(
図11,12参照)の埋め戻しを行い、右側の整地ロータ50は、右側の後車輪2のリム2aの通過跡A(
図11,12参照)の埋め戻しを行なう。
【0098】
つまり、
図5に示すように、左側の整地ロータ50及び右側の整地ロータ50の中間部に凹入部52を設け、左側の左支持手段70Lの支持部材71の軸支部71aは、整地ロータ50から下方の外部に突出して田面Tに通過跡を形成することがないように左側の整地ロータ50の凹入部52に配置し、右側の右支持手段70Rの支持部材71の軸支持部71aは、整地ロータ50から下方の外部に突出して田面Tに通過跡を形成することがないように右側の整地ロータ50の凹入部52に配置してある。
【0099】
図11は、後車輪2の通過跡Aを示す説明図である。この図に示すように、田面Tに後車輪2のリム2aが入り込むと、田面Tにリム2aの通過跡Aが溝形に形成され、この通過跡Aの両横側に、リム2aの泥土へ入り込みに起因した盛り上がり泥土Bが発生する。
図12は、リム2aの通過跡Aと、整地ロータ50の凹入部52との位置関係を示す説明図である。この図に示すように、整地ロータ50は、凹入部52にリム2aの通過跡Aが入り込む状態で後輪跡を移動していき、凹入部52の内壁面52aにより、盛り上がり泥土Bに押圧作用して盛り上がり泥土Bをリム2aの通過跡Aに向けて崩して通過跡Aに入り込ませる。
【0100】
〔別実施の形態〕
昇降モータ78を左右一対の左支持手段70L,70Lのうちの左側の左支持手段70Lに組み付けるに替え、左右一対の左支持手段70L,70Lのうちの右側の左支持手段70Lに組み付ける構成を採用して実施してもよい。また、昇降モータ78を左支持手段70Lに組み付けるに替え、右支持手段70Rに組み付ける構成を採用して実施してもよい。昇降モータ78を右支持手段70Rに組み付ける場合、左右一対の右支持手段70R,70Rのいずれの右支持手段70Rに組み付けてもよい。
【0101】
昇降モータ78に替えて、電動式や油圧式のシリンダを採用して実施してもよく、これら、昇降モータ78、シリンダなどを総称して駆動機構78と呼称する。