特許第5714844号(P5714844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714844
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20150416BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   F01N3/24 N
   F01N3/08 BZAB
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-161910(P2010-161910)
(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公開番号】特開2012-21505(P2012-21505A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2013年6月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 寿行
(72)【発明者】
【氏名】本木 智春
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−155404(JP,A)
【文献】 特開2009−36109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられた選択的接触還元型触媒装置と、前記選択的接触還元型触媒装置の上流に設けられて前記排気通路に還元剤を供給する還元剤噴射装置と、前記排気通路に設けられ、前記還元剤噴射装置により噴射された還元剤を排気ガスと混合する混合部とを備え、該混合部は、混合部に流入した排気ガスが方向を変えて混合部から流出するように設定される排気ガス浄化装置において、
前記混合部に風向板を設け、該風向板は前記混合部に流入した排気ガスを前記還元剤噴射装置の噴射方向に変えるように設定され、前記風向板は、前記還元剤噴射装置よりも上流に配置されることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記噴射方向は、前記混合部より下流であって前記選択的接触還元型触媒装置より上流の排気通路の下流方向である請求項1記載の排気ガス浄化装置
【請求項3】
前記風向板は、複数枚設けられた請求項1又は請求項2記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガス中からNOx(窒素酸化物)を還元除去する排気ガス浄化装置として、排気通路中に配置された選択的還元触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)の上流側で還元剤(尿素水)を噴射し、排気ガスの熱で尿素を加水分解してアンモニアを生成し、排気ガスとともにSCRに流入させて、排気ガス中のNOxを窒素等に効率的に分解して浄化する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
このような排気ガス浄化装置の一態様として、排気通路中に排気ガスと尿素水とを混合する混合部(ミキサーチャンバー)4を設けたものがある。この混合部4は、図3に示すように排気ガス入口部4aと排気ガス出口部4bとが直交して形成されており、排気ガスが排気ガス入口部4aから排気ガス出口部4bへ流れるようになっている。また混合部4の一側面に尿素水噴射装置7が取り付けられ、尿素水噴射装置7より尿素水を排気通路3に向けて混合部4内に噴射している。このとき、尿素と排気ガスを混合するために、図4に示すように混合部4にフィン41,41を設け、排気ガスをフィン41,41に沿って旋回させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−303826号公報
【特許文献2】特開2003−184542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、尿素水噴射装置7から混合部4内に噴射された尿素水が、旋回しながら混合部4内に入ってくる排気ガスの流れの影響を受けて噴射口70側に戻ってしまい、混合部内壁40に付着したり、キャップ6壁面を伝わって尿素水噴射装置7の先端部に付着し、それが原因で混合部内壁40や尿素水噴射装置7の先端部が腐食してしまう場合があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、還元剤(尿素水)が噴射口側に戻ることなく、混合部内壁や尿素水噴射装置の先端部が腐食しないようにした排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の排気ガス浄化装置は、内燃機関の排気通路に設けられ、選択的接触還元型触媒装置と、前記選択的接触還元型触媒装置の上流に設けられて前記排気通路に還元剤を供給する還元剤噴射装置と、前記排気通路に設けられ、前記還元剤噴射装置により噴射された還元剤を排気ガスと混合する混合部とを備え、該混合部は、混合部に流入した排気ガスが方向を変えて混合部から流出するように設定される排気ガス浄化装置において、前記混合部に風向板を設け、該風向板は前記混合部に流入した排気ガスを前記還元剤噴射装置の噴射方向に変えるように設定されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記風向板は、その一端が前記混合部の排気ガス入口部に取り付けられると共に、他端が混合部の排気ガス出口部に向かって斜めに突出して取り付けられるのが好ましい。
【0009】
また、前記風向板は、複数枚設けてもよい。
【0010】
前記構成によれば、混合部の排気ガス入口部に、混合部に流入した排気ガスを還元剤噴射装置の噴射方向に変えるための風向板を設けたので、排気ガスの流れが風向板によって還元剤(尿素水)の噴射する方向と同方向となり、したがって噴射された尿素水が排気ガスによって噴射口側に逆流することがない。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる排気ガス浄化装置によれば、還元剤(尿素水)が噴射口側に戻ることなく、混合部内壁や尿素水噴射装置の先端部が腐食しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す排気ガス浄化装置の排気通路の混合部に取り付けた尿素水噴射装置と風向板との関係を概略的に示す断面図である。
図3図3は、従来の排気ガス浄化装置の排気通路の混合部に取り付けた尿素水噴射装置を概略的に示す断面図である。
図4図4は、図3の排気ガス浄化装置の混合部を排気通路側から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
なお、図1図2の本実施形態において、図3図4の従来例で示した部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付して説明する。
【0015】
図1に示すように本実施形態の排気ガス浄化装置1は、エンジン(内燃機関)2の排気通路3に、上流側から順に、ディーゼルパティキュレートデフューザー装置8(以下、DPD装置8という)、混合部(ミキサーチャンバー)4、選択的接触還元型触媒装置(Selective Catalytic Reduction)9(以下、SCR9という)が配置されている。またSCR9の上流に還元剤噴射装置(尿素水噴射装置)7が設けられ、還元剤噴射装置7から排気通路3に還元剤(尿素水)を供給するようになっている。
【0016】
DPD装置8は、セラミックフィルターで捕集した粒子状物質(PM)を排気温度制御により効率的に燃焼させ、フィルターを生成するもので、例えば上流側に酸化触媒装置を下流側に触媒付きフィルター装置を有して構成されている。
【0017】
混合部4は、還元剤を排気ガスと混合するためのもので、混合部4に流入した排気ガスが方向を変えて混合部4から流出するように設定されている。混合部4は、所定の空間を有する断面ひょうたん形の箱状に形成され、図1に示すように一側面にDPD装置8と接続する入口側接続部43を有し、同じ一側面であって還元剤噴射装置7の噴射方向に排気通路3と接続する出口側接続部44を有している。混合部4の出口側接続部44とは反対側の他側面に、取付板42を介して還元剤噴射装置7が取り付けられている。入口側接続部43は、DPD装置8からの排気ガスを混合部4内に流入する入口であり、出口側接続部44は、混合部4内の排気ガスと還元剤を排気通路3へ流出する出口である。混合部4には、入口側接続部43と出口側接続部44の間の流路に排気ガス入口部4aが形成され、出口側接続部44に向かう側の流路に排気ガス出口部4bが形成されている。
【0018】
SCR9は、排気ガス中のNOxに対してアンモニアと選択的に反応させることにより、NOxを窒素に還元して浄化するものである。エンジン2の出口からSCR9までの排気通路3中に還元剤(尿素水)を噴射し、排気ガスと還元剤とを混合して排気ガスの熱で尿素を加水分解してアンモニアを発生させ、発生したアンモニアをSCR9で排気ガス中のNOxに対して選択的に反応させることによりNOxを窒素に還元して浄化している。
【0019】
SCR9の上流側に配置される還元剤噴射装置7は、前記したように混合部4の一側面に取付板42を介して取り付けられ、還元剤を噴射する噴射口70が排気通路3の中心線Xの延長上に配置され、還元剤は、排気通路3の軸方向(排気ガス出口部4b側)へ向けて混合部4内に噴射される。還元剤噴射装置7は、図示しない還元剤噴射制御装置(コントロールユニット)により、図示しない貯蔵タンクから図示しない配管を経由して供給されてくる還元剤を混合部4内に直接噴射する。
【0020】
噴射した還元剤が、排気ガスの流れによって噴射口70側へ戻ることがないように、排気ガスの流れを還元剤の噴射方向と同方向にさせる必要がある。
【0021】
本発明の大きな特徴は、混合部4の排気ガス入口部4aに風向板5を設け、この風向板5は混合部4に流入した排気ガスを還元剤噴射装置7の噴射方向に変えるように設定されていることにある。
【0022】
風向板5は、例えば板厚が3mm程度の平板状の鉄板で形成され、図2に示すように、混合部4の排気ガス入口部4aから排気ガス出口部4bに向かって、排気ガスの流れ方向に対して垂直な軸周りに傾斜されている。すなわち、風向板5は、所定間隔を隔てて複数枚(図示の例では3枚)平行に配置され、その一端50が排気ガス入口部4aに取り付けられると共に、他端51が排気ガス出口部4bへ向けて斜めに突出して排気ガス出口部4bに取り付けられている。風向板5の一端50から他端51に向けての傾斜角度θは、図2の紙面上方から見て還元剤噴射装置7近傍の混合部内壁40に対して、例えば40度から50度の範囲で設けられ、混合部4に流入した排気ガスを還元剤噴射装置7の噴射方向に変えるように設定されている。
【0023】
風向板5を設けることによって、混合部4に流入した排気ガスは、風向板5に沿って積極的に曲げられて還元剤噴射装置7の噴射方向に変えられることになる。また、風向板5を複数枚取り付けることで隙間を作り、排気ガスを強く効率的に流すことができる。
【0024】
このような構成による排気ガス浄化装置1によれば、排気ガスは、エンジン2の出口から排気通路3を経てDPD装置8で排気ガス中の粒子状物質(PM)が燃焼され、さらに排気ガスは、SCR9より上流側の還元剤噴射装置7から噴射される還元剤と混合部4で混合され、排気ガスの熱で尿素を加水分解してアンモニアを発生させ、発生したアンモニアをSCR9で排気ガス中のNOxと選択的に反応させてNOxを還元して浄化する。
【0025】
このとき、本発明では、混合部4の排気ガス入口部4aに、混合部4に流入した排気ガスを還元剤噴射装置7の噴射方向に変えるための風向板5を設けているので、混合部4に流入した排気ガスは、還元剤噴射装置7の噴射方向に変えられ、噴射された還元剤が排気ガスによって噴射口70側へ戻されることがない。
【0026】
図3図4に示す従来の排気ガス浄化装置にあっては、排気ガス入口部4aと排気ガス出口部4bが直交している混合部4に流れてくる排気ガスは、混合部4を通るとき、フィン41,41に沿って旋回され、渦を巻いたりし、このため還元剤が噴射口70へ逆流してしまう。本発明によれば、排気ガスが風向板5によって還元剤噴射装置7の噴射方向に変えられ、排気ガスの流れが還元剤の噴射方向と一致し、排気ガスによって還元剤を逆流させることがない。
【0027】
なお、風向板5は、図2では3枚設けているが、4枚以上設けてもよく、あるいは噴射口70に近い側に取り付けられている風向板5のみの1枚だけでもよい。また風向板5の形状は、平板状に限定されることなく、排気ガス出口部4b側へ多少湾曲していてもよい。また風向板5の排気ガス出口部4bへの突出量は、特に限定せず、排気ガスの流れを排気ガス入口部4aから排気ガス出口部4bへ曲げて還元剤噴射装置7の噴射方向に変えることができるものであればよい。要は、風向板5は、排気ガスの流れの向きを排気ガス入口部4aから排気ガス出口部4bに向かって還元剤噴射装置7の噴射方向に変えることができ、排気通路3内に噴射された還元剤が、排気ガスによって噴射口70側へ逆流するのを防ぐことがきるものであればよい。
【0028】
また、本実施形態では、SCR9の上流の排気通路3上にDPD装置8を配置した例を示したが、DPD装置8を省略してもよい。
【0029】
以上説明したように本発明によれば、排気ガスによって還元剤が噴射口70側に戻ることがなく、混合部内壁40や還元剤噴射装置7の先端部への還元剤の付着を防止でき、混合部内壁40や還元剤噴射装置7の先端部が腐食しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 排気ガス浄化装置
3 排気通路
4 混合部(ミキサーチャンバー)
4a 排気ガス入口部
4b 排気ガス出口部
5 風向板
7 還元剤噴射装置(尿素水噴射装置)
9 選択的接触還元型触媒装置(SCR)
50 風向板の一端
51 風向板の他端
図1
図2
図3
図4