特許第5714866号(P5714866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714866
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】鋏
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/20 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   B26B13/20
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-237491(P2010-237491)
(22)【出願日】2010年10月22日
(65)【公開番号】特開2012-85961(P2012-85961A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳
【審査官】 足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−104665(JP,A)
【文献】 実開昭62−061679(JP,U)
【文献】 特開2002−355776(JP,A)
【文献】 実開平03−123465(JP,U)
【文献】 特開昭52−41981(JP,A)
【文献】 実開昭63−171144(JP,U)
【文献】 国際公開第2006/064843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉中心部で回動中心線を中心に互いに回動可能に支持した一対の刀身において刃体は、開閉中心部よりも先端側で刃先を有するとともに開閉中心部よりも基端側で延設部を有する刃部と、この刃部の延設部に取着された取付部とを備え、この両刀身においてハンドルはこの刃体の取付部に取着され、
前記両刀身のうち第一の刀身においては、
刃体の取付部が、刃部の延設部に沿って延び、開閉中心部に対し近い側に配設された露出部と、開閉中心部に対し遠い側に配設された連結部とを備え、この露出部と連結部とが互いに一体成形されて刃部の延設部に取着され、この露出部と連結部との境界部でこの露出部にはその境界部から連続する壁面が形成され、この境界部で連結部には突部が露出部の壁面に面して形成され、
この取付部の連結部には、樹脂により成形された取付部より硬度の小さい樹脂により成形された環状の把持部が前記ハンドルとして取着され、
この把持部が、連結部の外側に被覆された表部と、この表部と前記取付部の連結部とを有する支持部の両端部で表部に一体成形された指掛部とを備え、
この指掛部が、この支持部で互いに離間した両端部を結ぶ延設方向の両側でそれぞれ支持部の表部から延びる付根部を経て延びる両腕部を有し、支持部に対する相対向側でこの両腕部が互いに連続して閉じられた環状をなし、
この支持部の連結部の突部がこの両腕部のうち開閉中心部に対し近い側の腕部の付根部にくい込んで埋設され、
刃体の取付部で露出部の壁面が両腕部のうち開閉中心部に対し近い側の腕部に対し撓み許容間隙をあけて面し、
この把持部の指掛部を前記支持部よりも撓み易くし、
この把持部の指掛部が、開閉中心部の回動中心線に沿った方向へ撓むことができるとともに、その回動中心線に対し直交する方向を含む面に沿って撓むことができ、
この指掛部の両腕部のうち開閉中心部に対し遠い側の腕部は開閉中心部に対し近い側の腕部よりも撓みによる変位が大きくなり、
前記両刀身のうち第二の刀身においては、
刃体の取付部が、刃部の延設部に沿って延び、開閉中心部に対し近い側に配設された露出部と、開閉中心部に対し遠い側に配設された連結部とを備え、この露出部と連結部とが互いに一体成形されて刃部の延設部に取着され、この取付部には環部が前記ハンドルの一部として一体成形され、
刃体の取付部の露出部及び連結部と環部とには、樹脂により成形された取付部及び環部よりも硬度の小さい樹脂により成形された指掛部が前記ハンドルの一部として環部に沿って環状に取着されて露出し、
前記第一の刀身の取付部の露出部と前記第二の刀身の取付部の露出部とには両刀身を互いに閉じた際に当接し得る当接部が形成されている
ことを特徴とする鋏。
【請求項2】
前記第一の刀身において、指掛部の両腕部間で前記支持部の延設方向に沿う最大間隔をその支持部の両端部間の延設方向間隔より大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の鋏。
【請求項3】
前記第一の刀身の指掛部の両腕部において、開閉中心部の回動中心線に沿った方向の両側のうち、一方の側へ一方の腕部が撓み得るとともに、他方の側へ他方の腕部が撓み得ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋏。
【請求項4】
前記第一の刀身において、指掛部の両腕部は前記支持部の延設方向で互いに離間する向きへ膨らむ湾曲部を有していることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つの請求項に記載の鋏。
【請求項5】
前記第一の刀身において、指掛部の両腕部と支持部の表部とは同一材料により成形され、支持部の連結部を含んだ取付部は両腕部及び表部より硬質の同一材料により成形されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つの請求項に記載の鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに開閉可能に支持した一対の刀身の刃体に取着したハンドルを有する鋏において、そのハンドルに設けた指掛部の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鋏においては、例えば下記特許文献1に示すように、一対の刀身の刃部の基端側に取着した取付部に支持部を設け、この支持部に取着した指掛部のうち両腕部がこの支持部の両端部から延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−66206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鋏においては、指掛部に指を掛けて使用した際に、支持部の両端部に設けられた両腕部が指の動作に追従して幾らか変形するものの、使い勝手を良くするための改善の余地があった。
【0005】
この発明は、鋏において両刀身のハンドルの指掛部に指を掛けて使用した際に使い勝手をさらに良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜4)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる鋏において、開閉中心部2で回動中心線2aを中心に互いに回動可能に支持した一対の刀身3,4の刃体5,6は、開閉中心部2よりも先端側で刃先7a,8aを有するとともに開閉中心部2よりも基端側で延設部7b,8bを有する刃部7,8と、この刃部7,8の延設部7b,8bに取着された取付部9,10とを備え、この両刀身3,4の刃体5,6の取付部9,10にはハンドル11,12が取着されている。
前記両刀身3,4のうち第一の刀身3は、下記のように構成されている。
刃体5の取付部9は、刃部7の延設部7bに沿って延び、開閉中心部2に対し近い側に配設された露出部13と、開閉中心部2に対し遠い側に配設された連結部14とを備えている。この露出部13と連結部14とは互いに一体成形されて刃部7の延設部7bに取着されている。この露出部13と連結部14との境界部14aでこの露出部13には境界部14aから連続する壁面15が形成されている。この境界部14aで連結部14には突部16が露出部13の壁面15に面して形成されている。この取付部9の連結部14には、樹脂により成形された取付部9より硬度の小さい樹脂により成形された環状の把持部20が前記ハンドル11として取着されている。この把持部20は、連結部14の外側に被覆された表部21と、この表部21と前記取付部9の連結部14とを有する支持部22の両端部で表部21に一体成形された指掛部23とを備えている。この指掛部23は、この支持部22で互いに離間した両端部を結ぶ延設方向Xの両側でそれぞれ支持部22の表部21から延びる付根部24a,25aを経て延びる両腕部24,25を有し、支持部22に対する相対向側でこの両腕部24,25が互いに連続して閉じられた環状をなしている。この支持部22の連結部14の突部16はこの両腕部24,25のうち開閉中心部2に対し近い側の腕部24の付根部24aにくい込んで埋設されている。刃体5の取付部9で露出部13の壁面15が両腕部24,25のうち開閉中心部2に対し近い側の腕部24に対し撓み許容間隙28をあけて面している。この把持部20の指掛部23を刃体5の前記支持部22よりも撓み易くしている。この把持部20の指掛部23は、開閉中心部2における回動中心線2aに沿った方向へ撓むことができるとともに、その回動中心線2aに対し直交する方向を含む面に沿って撓むことができる。この指掛部23の両腕部24,25のうち、開閉中心部2に対し遠い側の腕部25は、開閉中心部2に対し近い側の腕部24よりも撓みによる変位が大きくなる。
前記両刀身3,4のうち第二の刀身4は、下記のように構成されている。
刃体8の取付部10は、刃部8の延設部8bに沿って延び、開閉中心部2に対し近い側に配設された露出部17と、開閉中心部2に対し遠い側に配設された連結部18とを備えている。この露出部17と連結部18とは互いに一体成形されて刃部8の延設部8bに取着されている。この取付部10には環部19が前記ハンドル12の一部として一体成形されている。刃体6の取付部10の露出部17及び連結部18と環部19とには、樹脂により成形された取付部10及び環部19よりも硬度の小さい樹脂により成形された指掛部29が前記ハンドル12の一部として環部19に沿って環状に取着されて露出している。
前記第一の刀身3の取付部9の露出部13と前記第二の刀身4の取付部10の露出部17とには両刀身3,4を互いに閉じた際に当接し得る当接部13a,17aが形成されている。
請求項1の発明は下記の特徴(イ)〜(ホ)を有している。
(イ) 第一の刀身3のハンドル11において、両腕部24,25を有する指掛部23は、支持部22よりも撓み易いので、開閉中心部2の回動中心線2aに沿った方向やその回動中心線2aに対し直交する方向に撓み易くなり、指掛部23に挿入した親指の動きに追従するように指掛部23が撓み得る。従って、ハンドル11の指掛部23に指を掛けて使用した際に使い勝手を良くすることができる。
(ロ) 第一の刀身3のハンドル11において、開閉中心部2に対し近い側で突部16を有する腕部24よりも、突部16を有しない腕部25が開閉中心部2に対し遠い側で撓み易くなる。従って、ハンドル11の指掛部23に指を掛けて使用した際に使い勝手を良くすることができる。
(ハ) 第一の刀身3のハンドル11において、開閉中心部2に対し近い側で突部16を有する腕部24と刃体5の取付部9の露出部13との間で撓み許容間隙28が形成されているため、その腕部24の変形可能範囲を広めることができる。従って、ハンドル11の指掛部23に指を掛けて使用した際に使い勝手を良くすることができる。
(ニ) 第一の刀身3のハンドル11において、連結部14を内側に有する支持部22は、指掛部23よりも撓みにくい。従って、親指を挿入した指掛部23が撓み易くなっても、指掛部23よりも撓みにくい支持部22により指を支えるので、両刀身3,4の開閉動作が安定し、ハンドル11の指掛部23に親指を掛けて使用した際に使い勝手を良くすることができる。
(ホ) 第二の刀身4のハンドル12において、環部19に沿って環状に成形された指掛部29は、第一の刀身3の指掛部23よりも撓みにくい。従って、例えば、第一の刀身3の指掛部23に親指を挿入し、第二の刀身4の指掛部29の内周に中指と薬指と小指とを挿入するとともに第二の刀身4の指掛部29の外周に人差し指を当てて使用する際に、第一の刀身3の指掛部23が親指の動きに追従するように撓んでも、第一の刀身3の指掛部23よりも撓みにくい第二の刀身4の指掛部29との組合せにより、指全体の動きが安定して使い勝手を良くすることができる。
【0010】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明にかかる第一の刀身3において、指掛部23の両腕部24,25間で前記支持部22の延設方向Xに沿う最大間隔L23をその支持部22の両端部間の延設方向間隔L22より大きくした。請求項2の発明では、両腕部24,25が指の動作に追従して変形し易くなる。
【0011】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明にかかる第一の刀身3の指掛部23の両腕部24,25において、開閉中心部2における回動中心線2aに沿った方向の両側のうち、一方の側へ一方の腕部24が撓み得るとともに、他方の側へ他方の腕部25が撓み得る。請求項3の発明では、両腕部24,25が指の捻り動作にも追従して変形し易くなる。
【0013】
請求項3の発明では、指掛部23に指を掛けて使用した際に両腕部24,25が指の捻り動作に追従して変形し易くなるので、使い勝手を良くすることができる。
【0014】
請求項1〜3のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項4の発明にかかる第一の刀身3において、指掛部23の両腕部24,25は前記支持部22の延設方向Xで互いに離間する向きへ膨らむ湾曲部26,27を有している。請求項4の発明では、両腕部24,25を把持し易い。
【0022】
請求項1〜4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明にかかる第一の刀身3において、指掛部23の両腕部24,25と支持部22の表部21とは同一材料により成形され、支持部22の連結部14を含んだ取付部9は両腕部23及び表部21より硬質の同一材料により成形されている。請求項5の発明では、取付部9及び支持部22の連結部14によりハンドル11の強度を維持するとともに、指掛部23の両腕部24,25及び支持部22の表部21によりハンドル11の感触を良くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、鋏において両刀身3,4のハンドル11の指掛部23,29に指を掛けて使用した際に使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は本実施形態にかかる文具鋏の表側を示す斜視図であり、(b)は同じく裏側を示す斜視図である。
図2】(a)は本実施形態にかかる文具鋏の表側を示す正面図であり、(b)は同じく裏側を示す背面図である。
図3】(a)は図2(a)のハンドルを示す部分拡大正面図であり、(b)は(a)の右側面図であり、(c)は(a)の左側面図であり、(d)は(a)の底面図である。
図4】(a)は図3(a)のハンドルから軟質樹脂部分を取り除いて示す部分拡大正面図であり、(b)(c)はそれぞれ(a)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態にかかる文具鋏について図面を参照して説明する。
図1に示す文具鋏において、図2に示す鋏本体1は、開閉中心部2で回動中心線2aを中心に互いに回動可能に支持された一対の刀身3,4を備えている。両刀身3,4において刃体5,6は、開閉中心部2よりも先端側で刃先7a,8aを有するとともに開閉中心部2よりも基端側で延設部7b,8bを有する刃部7,8と、図4に示すように刃部7,8の延設部7b,8bに取着された取付部9,10とからなる。両刀身3,4においてハンドル11,12は、刃体5,6の取付部9,10に取着されている。
【0027】
一方の刀身3(第一の刀身3)において刃体5の取付部9は、図4に示すように、刃部7の延設部7bに沿って延び、開閉中心部2に対し近い上側に配設された露出部13と、開閉中心部2に対し遠い下側に配設された連結部14とからなる。露出部13と連結部14とは互いに一体成形されて延設部7bに取着され、露出部13と連結部14との境界部外周で段差部14aが形成されているとともに、露出部13の外側面部には段差部14aから連続する凹状の壁面15が形成されている。段差部14aの付近で連結部14の上端部には突部16が壁面15に面して形成されている。刃部7の延設部7bの下端部は連結部14の下端部から突出している。また、他方の刀身4(第二の刀身4)において刃体6の取付部10は、図4に示すように、刃部8の延設部8bに沿って延び、開閉中心部2に対し近い上側に配設された露出部17と、開閉中心部2に対し遠い下側に配設された連結部18とからなる。露出部17と連結部18とは互いに一体成形されて延設部8bに取着され、取付部10には環部19がハンドル12の一部として一体成形されている。取付部9の露出部13と取付部10の露出部17とには両刀身3,4を互いに閉じた際に当接し得る当接部13a,17aが形成されている。ちなみに、取付部9の露出部13及び連結部14と取付部10の露出部17及び連結部18と環部19とは、それぞれ、同一の硬質樹脂、例えばポリプロピレン樹脂やABS樹脂などにより成形されている。
【0028】
一方の刀身3(第一の刀身3)において取付部9の連結部14には、図2,3に示すように、取付部9より硬度の小さい軟質樹脂、例えば、エラストマ樹脂やシリコーン樹脂などにより成形された環状の把持部20がハンドル11として取着されている。その軟質樹脂の硬度としてはショアA20〜ショアD50が好ましい。把持部20は、連結部14の外側に被覆された表部21と、連結部14と表部21とからなる支持部22の上下両端部で表部21に一体成形された指掛部23とからなる。指掛部23は、刃体5の支持部22で互いに離間した上端部下端部を結ぶ延設方向Xの上下両側のうち上側と下側とへそれぞれ刃体5の支持部22から延びる付根部24a,25aを経てその延設方向Xで互いに離間する上向き及び下向きへ延びる上下両腕部24,25を有し、支持部22に対する相対向側で互いに連続して閉じられている。上下両腕部24,25は前記延設方向Xにおいて互いに離間する上向き及び下向きへ膨らむ湾曲部26,27を有している。上下両腕部24,25の湾曲部26,27の頂上部26a,27a間で刃体5の支持部22の延設方向Xに沿う最大間隔L23は、その支持部22の上端部と下端部との間の延設方向間隔L22より大きく設定されている。支持部22の突部16はその支持部22から延びる上側の腕部24の付根部24aにくい込んで埋設されている。突部16を有しない下側の腕部25において支持部22の下端部から湾曲部27の頂上部27aまでの距離は、突部16を有する上側の腕部24において突部16から湾曲部26の頂上部26aまでの距離よりも大きく設定される。上下両腕部24,25において回動中心線2aの方向の厚みは、支持部22から離間するに従って細くなり、支持部22に対する対向側で最小となっている。支持部22の表部21及び指掛部23の上下両腕部24,25には多数の小凹部23aが滑止めとして配設されている。刃体5の取付部9で露出部13の壁面15は上側の腕部24に対し間隔をあけて面し、壁面15と上側の腕部24との間には撓み許容間隙28が形成されている。撓み許容間隙28を挟んで相対向する壁面15と腕部24とでは互いに色が異なっているとともに、硬質樹脂で成形された取付部9の露出部13と軟質樹脂により成形された指掛部23も互いに色が異なっている。
【0029】
他方の刀身4(第二の刀身4)において刃体6の取付部10の露出部17及び連結部18と環部19とには、前記指掛部23と同一の軟質樹脂により成形された指掛部29がハンドル12の一部として取着されている。指掛部29は硬質樹脂からなる環部19に沿って環状に形成され、指掛部29の外周の下側部分から上側部分付近にわたり環部19が露出しているとともに、環部19が露出していない指掛部29の内周全体で指が軟質樹脂に接触し得るため、指の感触が良くなる。例えば、指掛部29の内周の上側部分に人差し指が当てがわれる。
【0030】
図2に示すように、一方の刀身3の刃部7の表側には複数の模様部30aと複数の非模様部30bとが刃部7の長手方向へ先端側から基端側にわたり10mmずつの等間隔で並設されている。それらを目盛として利用する際、切断時に切断する長さを確認するための目安として使用することができる。
【0031】
図1に示すケース31において、表裏両側には出入口32から連続して切欠部33が形成されているとともに、表側には窓34が形成され、出入口32から両刀身3,4の刃部7,8が収容された際には開閉中心部2が切欠部33に係止されるとともに窓34から模様部30a及び非模様部30bの一部が見える。また、ケース31の表裏両側には先端部から出入口32にわたり複数の凹筋35が10mmずつの等間隔の目盛として並設されている。その目盛は、定規の代用として使用することもできる。
【0032】
一方の刀身3のハンドル11における指掛部23に例えば親指を挿入するとともに他方の刀身4のハンドル12における指掛部29に他の指を挿入して両刀身3,4を互いに開閉動作させると、刃体5の支持部22よりも柔軟な指掛部23は、開閉中心部2の回動中心線2aに沿った方向やその回動中心線2aに対し直交する方向に撓み易くなる。例えば、その回動中心線2aに沿った方向の両側向きA,Bのうち、上側の腕部24が一方の向きA側へ撓み得るとともに、下側の腕部25が他方の向きB側へ撓み得る。また、指掛部23の上下両腕部24,25は、その回動中心線2aに対し直交する方向を含む面に沿って撓み得る。
【0033】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 一方の刀身3のハンドル11において、上下両腕部24,25を有する指掛部23は、軟質樹脂により刃体5の支持部22よりも撓み易い形態に成形されているので、開閉中心部2の回動中心線2aに沿った方向やその回動中心線2aに対し直交する方向に撓み易くなり、指掛部23に挿入した親指の動きに追従するように指掛部23が撓み得る。特に、その回動中心線2aに沿った方向の両側向きA,Bのうち、上側の腕部24が一方の向きA側へ撓むとともに、下側の腕部25が他方の向きB側へ撓んで、両腕部24,25が指の捻り動作にも追従して変形し易くなる。その際、上側の腕部24側に隣接して撓み許容間隙28が形成されているため、上側の腕部24の変形可能範囲を広めることができる。また、突部16を有しない下側の腕部25は突部16を有する上側の腕部24よりも撓み易くなる。さらに、軟質樹脂により成形されて撓み易い指掛部23に滑止めとして小凹部23aが形成されているので、指の滑りを生じさせることなく指掛部23を容易に撓ませることができる。従って、ハンドル11の指掛部23に指を掛けて使用した際に使い勝手を良くすることができる。
【0034】
(2) 一方の刀身3のハンドル11において、硬質樹脂からなる連結部14を内側に有する支持部22は、軟質樹脂のみにより成形された指掛部23よりも撓みにくい。従って、親指を挿入した指掛部23が撓み易くなっても、指掛部23よりも撓みにくい支持部22により指を支えるので、両刀身3,4の開閉動作が安定する。従って、ハンドル11の指掛部23に親指を掛けて使用した際に使い勝手を良くすることができる。
【0035】
(3) 他方の刀身4のハンドル12において、硬質樹脂からなる環部19に沿って軟質樹脂により環状に成形された指掛部29は、一方の刀身3において軟質樹脂のみにより成形された指掛部23よりも撓みにくい。従って、例えば、その指掛部23に親指を挿入し、指掛部29の内周に中指と薬指と小指とを挿入するとともに指掛部29の外周に人差し指を当てて使用する際に、指掛部23が親指の動きに追従するように撓んでも、柔軟な指掛部23と指掛部23よりも撓みにくい指掛部29との組合せにより、指全体の動きが安定して使い勝手を良くすることができる。
【0036】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
【0038】
・ 前記実施形態で例示した鋏については、文具鋏として使用することができるが、前記実施形態と同様なハンドルを採用して、他の用途の鋏、例えばラシャ鋏やキッチン鋏などとしても使用することができる。
【0039】
・ 前記実施形態では、一方の刀身3の指掛部23において、刃体5の支持部22の上下両側から上側と下側とへそれぞれ互いに離間するように延びる付根部24a,25aを経て上向き及び下向きへ互いに離間するように延びる上下両腕部24,25を有している。そのほか、互いに接近するように延びる両付根部や、互いに平行に延びる両付根部を経て、上向き及び下向きへ互いに離間するように延びる上下両腕部としてもよい。
【0040】
・ 前記実施形態では、両刀身3,4のハンドル11,12を互いに閉じた際に当接し得る当接部13a,17aがいずれも硬質樹脂により成形されているが、両ハンドル11,12を構成する硬質樹脂や軟質樹脂を利用して、一方を硬質樹脂により成形するとともに他方を軟質樹脂により成形したり、両方共に軟質樹脂により成形して、両ハンドル11,12を互いに閉じた際の衝撃を和らげてもよい。
【0041】
・ 前記実施形態では、一方の刀身3の指掛部23において、回動中心線2aに沿った方向の両側向きA,Bのうち、上側の腕部24が一方の向きA側へ撓むとともに、下側の腕部25が他方の向きB側へ撓んで、両腕部24,25が指の捻り動作に追従して変形し得るが、両腕部24,25が共に一方の向きA側へ撓んだり他方の向きB側へ撓んだりすることもできる。
【0042】
・ 前記実施形態では、一方の刀身3の指掛部23において、両腕部24,25が回動中心線2aに対し直交する方向を含む面に沿って撓み得る。その撓み方向としては、支持部22の延設方向Xを例示することができるが、その延設方向X以外でこの面に沿うすべての方向に撓み得る。
【0044】
・ 前記実施形態では、一方の刀身3の指掛部23が中実軸状に成形されているが、その指掛部を中空軸状に成形してもよく、その中空部に空気や液体やゲルなどを入れてもよい。
【0045】
・ 前記実施形態では、支持部22の表部21及び指掛部23に多数の小凹部23aが滑止めとして配設されているが、その小凹部23a以外に、例えば突起や突条を滑止めとして配設してもよい。また、それらの滑止めの外形状としては、円形に限らず、三角形や四角形や楕円形や星形やハート形など、他の幾何学形状であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…鋏本体、2…鋏本体の開閉中心部、2a…回動中心線、3…第一の刀身、4…第二の刀身、5,6…刃体、7,8…刃部、7a,8a…刃先、7b,8b…延設部、9,10…取付部、11…第一の刀身のハンドル、12…第二の刀身のハンドル、13…露出部、13a…当接部、14…連結部、14a…段差部(境界部)、15…壁面、16…突部、17…露出部、17a…当接部、18…連結部、19…環部、20…把持部、21…表部、22…支持部、23…ハンドルの指掛部、24,25…指掛部の腕部、24a,25a…腕部の付根部、28…撓み許容間隙、29…ハンドルの指掛部、X…延設方向、L22…支持部の延設方向間隔、L23…腕部の最大間隔。
図1
図2
図3
図4