(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダンパを内蔵せず、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚と、ダンパを内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚とを平行配置したフロントフォークであって、
スプリング脚が、
車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブの内部の中央に設け、車軸側チューブの内部の中央に設けたガイドロッドのガイドをガイドシリンダに挿入してなり、
車体側チューブの内部でガイドシリンダの周囲に設けたばね受と、車軸側チューブとの間に、懸架スプリングを介装してなり、
ダンパ脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ダンパシリンダを車体側チューブの内部の中央に設け、車軸側チューブの内部の中央に設けたピストンロッドのピストンをダンパシリンダに挿入してなり、
フロントフォークの正面視で、スプリング脚のガイドシリンダに設けられてガイドロッドを挿入かつ支持するロッドガイドのブッシュと、ダンパ脚のダンパシリンダに設けられてピストンロッドを挿入かつ支持するロッドガイドのブッシュとが、同一高さ位置に位置付けられてなるフロントフォーク。
前記スプリング脚における車体側チューブの外部に設けた操作部により該ばね受を該車体側チューブの軸方向に沿って変位できるばね荷重調整装置が、ガイドシリンダの周囲に設けられる請求項1に記載のフロントフォーク。
前記スプリング脚が、ガイドシリンダの内部にガイドロッドのガイドが区画する内側空気ばね室と、車体側チューブと車軸側チューブがガイドシリンダにおける少なくとも上記内側空気ばね室の外側に区画する外側空気ばね室とを有してなる請求項1〜4のいずれかに記載のフロントフォーク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフロントフォークは、第2ダンパ脚において懸架スプリングを省略したとしても、第1ダンパ脚と第2ダンパ脚の両方に大重量で部品点数の多いダンパを内蔵しており、軽量化、コスト低減を実現できない。
【0005】
そこで、本出願人は、フロントフォークの軽量化、コスト低減を図るため、特許文献1に記載のフロントフォークにおける第2ダンパ脚を、
図10に示す如く、ダンパを内蔵せず、金属からなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚1に変更することを考えた。
図10に示したフロントフォーク1は、車体側チューブ2と車軸側チューブ3を互いに挿入し、ガイドシリンダ4を車軸側チューブ3の内部の中央に設け、車体側チューブ2の内部の中央に設けたガイドロッド5の先端ガイド6をガイドシリンダ4に挿入する。そして、車体側チューブ2の内部でガイドロッド5の周囲に設けたばね荷重調整装置7の上ばね受8と、車軸側チューブ3の底部との間に、懸架スプリング9を介装する。
【0006】
しかしながら、
図10に示したフロントフォーク1にあっては、車体側チューブ2の側に上ばね受8を設け、車軸側チューブ3の側にガイドシリンダ4を設けており、ガイドシリンダ4と上ばね受8は軸方向に対向配置されて相対移動する。このため、ガイドシリンダ4と上ばね受8の軸方向の対向間隔として、フロントフォーク1の伸縮ストロークの最大値を超える長さを確保する必要があり、フロントフォーク1の全長が大きくなるし、懸架スプリング9のばね長さも必要以上に長くなる。懸架スプリング9のばね長さが必要以上に長くなるから、懸架スプリング9の上端が車軸側チューブ3の先端よりも上方に飛び出て胴曲りし、車軸側チューブ3の先端が懸架スプリング9の外周に干渉する機会が多くなり、車軸側チューブ3と懸架スプリング9のフリクション、損傷、摩耗粉の発生、異音を生ずるおそれがある。
【0007】
尚、フロントフォークを構成するスプリング脚にあっては、空気ばね効果を上げるとともに、金属ばねからなる懸架スプリングのフリクションを低減するために、潤滑オイルを装填する必要がある。このオイル量を増すと大重量になるという不都合がある。
【0008】
また、フロントフォークを構成するダンパ脚とスプリング脚にあっては、それら両脚の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制することが望まれる。
【0009】
本発明の課題は、ダンパ脚とスプリング脚とを平行配置したフロントフォークにおいて、スプリング脚のコンパクトを図ることにある。
【0010】
本発明の他の課題は、スプリング脚のオイル量を低減しながら、空気ばね効果を上げるとともに、金属ばねからなる懸架スプリングのフリクションを低減することにある。
【0011】
本発明の他の課題は、ダンパ脚とスプリング脚の剛性のバランスをとることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、ダンパを内蔵せず、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚と、ダンパを内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚とを平行配置したフロントフォークであって、スプリング脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブの内部の中央に設け、車軸側チューブの内部の中央に設けたガイドロッドのガイドをガイドシリンダに挿入してなり、車体側チューブの内部でガイドシリンダの周囲に設けたばね受と、車軸側チューブとの間に、懸架スプリングを介装して
なり、ダンパ脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ダンパシリンダを車体側チューブの内部の中央に設け、車軸側チューブの内部の中央に設けたピストンロッドのピストンをダンパシリンダに挿入してなり、フロントフォークの正面視で、スプリング脚のガイドシリンダに設けられてガイドロッドを挿入かつ支持するロッドガイドのブッシュと、ダンパ脚のダンパシリンダに設けられてピストンロッドを挿入かつ支持するロッドガイドのブッシュとが、同一高さ位置に位置付けられてなるようにしたものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記スプリング脚における車体側チューブの外部に設けた操作部により該ばね受を該車体側チューブの軸方向に沿って変位できるばね荷重調整装置が、ガイドシリンダの周囲に設けられるようにしたものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、前記スプリング脚における車体側チューブと車軸側チューブに囲まれる内部空間の下部に油室が設けられ、上部に空気室が設けられてなり、油室の油面より下位のガイドロッドまわりに空気封入ケースが設けられるようにしたものである。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、
前記スプリング脚の車体側チューブとダンパ脚の車体側チューブを同一径にするとともに、スプリング脚の車軸側チューブとダンパ脚の車軸側チューブを同一径にし、スプリング脚のガイドシリンダとダンパ脚のダンパシリンダを同一径にするとともに、スプリング脚のガイドロッドとダンパ脚のピストンロッドを同一径にするようにしたものである。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項
1〜4のいずれかに係る発明において更に、
前記スプリング脚が、ガイドシリンダの内部にガイドロッドのガイドが区画する内側空気ばね室と、車体側チューブと車軸側チューブがガイドシリンダにおける少なくとも上記内側空気ばね室の外側に区画する外側空気ばね室とを有してなるようにしたものである。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項
5に係る発明において更に、
前記スプリング脚が、内側空気ばね室の空気圧を調整するための内側空気圧調整部と、外側空気ばね室の空気圧を調整するための外側空気圧調整部とを有してなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
(請求項1)
(a)スプリング脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブの内部の中央に設け、車軸側チューブの内部の中央に設けたガイドロッドのガイドをガイドシリンダに挿入してなり、車体側チューブの内部でガイドシリンダの周囲に設けたばね受と、車軸側チューブとの間に、懸架スプリングを介装してなる。従って、ガイドシリンダとばね受が軸方向で対向配置されて相対移動するものでなく、ガイドシリンダとばね受の軸方向の対向間隔に、スプリング脚の伸縮ストロークの最大値を超える長さを確保する必要がなくなり、設計の自由度が向上する。特に、スプリング脚の全長が小さくなり、懸架スプリングのばね長さも必要以上に長くする必要がなくなる。
【0020】
また、懸架スプリングの上端はガイドシリンダの外周によりガイドされて胴曲りを抑制される。懸架スプリングの上端が仮に車軸側チューブの先端よりも上方に飛び出ることがあっても、胴曲りを抑制されている懸架スプリングの外周が車軸側チューブの先端に干渉する機会は少ない。車軸側チューブと懸架スプリングのフリクション、損傷、摩耗粉の発生、異音を防止できる。
(b)フロントフォークの正面視で、スプリング脚のガイドシリンダに設けられてガイドロッドを挿入かつ支持するロッドガイドのブッシュと、ダンパ脚のダンパシリンダに設けられてピストンロッドを挿入かつ支持するロッドガイドのブッシュとが、同一高さ位置に位置付けられる。ダンパ脚とスプリング脚の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0021】
(請求項2)
(
c)スプリング脚において、車体側チューブの内部の中央に設けられるガイドシリンダは、減衰力発生装置等を内蔵するものでない。従って、ガイドシリンダの周囲にばね荷重調整装置を設け、このばね荷重調整装置の操作部を車体側チューブの外部に設けることができる。スプリング脚にばね荷重調整装置を装備できる。
【0022】
(請求項3)
(
d)スプリング脚における車体側チューブと車軸側チューブに囲まれる内部空間の下部に油室が設けられ、上部に空気室が設けられてなり、油室の油面より下位のガイドロッドまわりに空気封入ケースが設けられる。スプリング脚の油室に装填する潤滑オイルのオイル量を低減しながら、空気封入ケースの容積分だけその油面レベルをかさ上げできる。これにより、空気室の圧縮比を高くし、空気ばね効果を上げることができる。また、油室のオイルの飛散高さ範囲も高くなり、金属ばねからなる懸架スプリングのフリクション低減効果も上げることができる。
【0024】
(請求項
4)
(e)スプリング脚の車体側チューブとダンパ脚の車体側チューブを同一径にするとともに、スプリング脚の車軸側チューブとダンパ脚の車軸側チューブを同一径にし、スプリング脚のガイドシリンダとダンパ脚のダンパシリンダを同一径にするとともに、スプリング脚のガイドロッドとダンパ脚のピストンロッドを同一径にする。ダンパ脚とスプリング脚の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0025】
(請求項
5)
(f)スプリング脚が、ガイドシリンダの内部にガイドロッドのガイドが区画する内側空気ばね室と、車体側チューブと車軸側チューブがガイドシリンダにおける少なくとも上記内側空気ばね室の外側に区画する外側空気ばね室とを有する。スプリング脚における車体側チューブと車軸側チューブに囲まれる内部空間に設けられる空気室を、ガイドシリンダの内外の内側空気ばね室と外側空気ばね室に2分した。内側空気ばね室と外側空気ばね室のそれぞれは、2分化された分だけ小スペースになって高圧縮比になり、内側空気ばね室の空気ばねのばね力F1と、外側空気ばね室の空気ばねのばね力F2が大きくなり、スプリング脚の全体の空気ばね力(F1+F2)を大きくできる。
【0026】
スプリング脚の全体の空気ばね力を大きくできる分だけ、スプリング脚の金属ばねからなる懸架スプリングのばね力を小さくでき、結果として懸架スプリングの線径を小にし、軽量化できる。
【0027】
(g)スプリング脚の全体の空気ばね力(F1+F2)を、内側空気ばね室のばね力F1と外側空気ばね室のばね力F2に分担する分だけ、内側空気ばね室の空気圧と外側空気ばね室の空気圧を低減しながら全体の空気ばね力(F1+F2)を大きくとれる。これにより、内側空気ばね室のシール部材と外側空気ばね室のシール部材に及ぼすシール負荷を低減しながら、一定の空気ばね力特性を確保できる。
【0028】
(h)スプリング脚が金属ばねからなる懸架スプリングに、内側空気ばね室と外側空気ばね室の空気ばねを併用する。従って、伸縮ストロークの後半のばね力を内側空気ばね室と外側空気ばね室の空気ばねのばね力の立上りにより大きくし、踏ん張りのあるばね力特性を得ることができる。そして、伸縮ストロークの初期〜中間域のばね力は、懸架スプリングにより確保することで、適度に大きくならず、乗り心地の良いばね力特性を得ることができる。
【0029】
(i)スプリング脚が金属ばねからなる懸架スプリングに、内側空気ばね室と外側空気ばね室の空気ばねを併用する。従って、万が一、内側空気ばね室と外側空気ばね室の空気が抜けても、1名乗車分程度の荷重は懸架スプリングにより支持でき、走行継続できる。
【0030】
(j)スプリング脚が、ダンパを内蔵していないから、内側空気ばね室と外側空気ばね室の空気がダンパの油温の影響を受けて上昇することがなく、内側空気ばね室と外側空気ばね室の空気ばねのばね力特性が大きく変化せずに安定化する。
【0031】
(請求項
6)
(k)スプリング脚が、内側空気ばね室の空気圧を調整するための内側空気圧調整部と、外側空気ばね室の空気圧を調整するための外側空気圧調整部とを有する。内側空気ばね室の空気圧と外側空気ばねの空気圧を調整することにより、スプリング脚の全体の空気ばね力特性を多様に変更できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施例1)(
図1〜
図9)
フロントフォークAは、ダンパ20を内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚10と、ダンパを内蔵せず、金属ばねからなる懸架スプリング150を内蔵するスプリング脚110とを平行配置した。
【0034】
(ダンパ脚10)(
図1、
図2〜
図4)
ダンパ脚10は、
図1、
図2〜
図4に示す如く、車体側チューブ(アウタチューブ)11に、車軸側チューブ(インナチューブ)12をブッシュ13A、13B、シール部材13Cを介し密封して摺動自在に挿入し、車体側チューブ11と車軸側チューブ12の内部に単筒型ダンパ20を配置している。ダンパ20は、ダンパシリンダ21を車体側チューブ11の内部の中央に吊下げ、車軸側チューブ12の内部の中央に立設したピストンロッド22のピストン23をダンパシリンダ21に挿入し、ダンパ20(ダンパシリンダ21及びピストンロッド22)の外側を油溜室24としている。油溜室24では、油室25と空気室26が自由界面を介して接している。
【0035】
車体側チューブ11は車体側に支持され、車軸側チューブ12は車軸に結合される。車体側チューブ11の上端部にはダンパシリンダ21の上端部が螺着、密封され、ダンパシリンダ21の上部開口端はフォークボルト31により閉塞、密封される。
【0036】
車軸側チューブ12の下端部には車軸ブラケット32が螺着、密封され、車軸側チューブ12の内部の車軸ブラケット32上にはピストンロッド22の下端部が立設され、このピストンロッド22まわりの車軸ブラケット32上にはオイルロックカラー33Aが固定されている。ピストンロッド22の下端部が、車軸ブラケット32の底部に外側から係入、密封されるボトムボルト32Aに螺着されるとともに、ロックナット32Bで固定される。オイルロックカラー33Aは、車軸側チューブ12の下端面と車軸ブラケット32の底部との間に挟み止めされる。ピストンロッド22はダンパシリンダ21の下部開口端に螺着したロッドガイド34のブッシュ35、シール部材36に密封して摺動自在に支持され、ダンパシリンダ21の内部に挿入されている。尚、ロッドガイド34の外周部にはオイルロックピース33Bが設けられている。
【0037】
ダンパ20は、メインバルブ装置(伸側減衰力発生装置)40と、サブバルブ装置(圧側減衰力発生装置)50とを有している。ダンパ20は、メインバルブ装置40とサブバルブ装置50が発生する減衰力により、スプリング脚110の懸架スプリング150と空気ばねによる衝撃力の吸収に伴う車体側チューブ111と車軸側チューブ112の伸縮振動を制振する。
【0038】
(メインバルブ装置40)
メインバルブ装置40は、ピストンロッド22の上端部のピストン23により、ダンパシリンダ21の内部をピストン側油室41Aと、ロッド側油室41Bに区画する。ピストン23は、伸側減衰バルブ42Aを備えてピストン側油室41Aとロッド側油室41Bを連絡する伸側流路42と、圧側減衰バルブ(チェックバルブ)43Aを備えてピストン側油室41Aとロッド側油室41Bを連絡する圧側流路43とを備える。
【0039】
(サブバルブ装置50)
サブバルブ装置50は、ダンパシリンダ21の上部開口端に設けたフォークボルト31の中央にガイドパイプ51を吊下げ、ガイドパイプ51の下端部のサブピストン52をダンパシリンダ21の内部でピストン23に相対配置し、ピストン側油室41Aの上方にサブタンク室53を区画形成する。サブピストン52は、圧側減衰バルブ54Aを備えてピストン側油室41Aとサブタンク室53を連絡する圧側流路54と、伸側減衰バルブ(チェックバルブ)55Aを備えてピストン側油室41Aとサブタンク室53を連絡する伸側流路55とを備える。
【0040】
サブバルブ装置50は、ダンパシリンダ21の内部のガイドパイプ51まわりにフリーピストン56を移動可能に設けるとともに、フリーピストン56とフォークボルト31との間に介装される圧縮コイルばねからなる加圧スプリング57によりフリーピストン56をサブピストン52の側に向けて付勢する。
【0041】
サブバルブ装置50は、ピストンロッド22の外周に付着した油溜室24の油をシール部材36からダンパシリンダ21の内部に持ち込み、油室41A、41B、サブタンク室53の油圧を高圧化する。この高圧化した油圧によりフリーピストン56が上昇端まで移動すると、ダンパシリンダ21に設けてある油孔58がサブタンク室53を油溜室24の空気室26に連通し、サブタンク室53の高圧油を油溜室24の側に戻す。
【0042】
(スプリング脚110)(
図1、
図5〜
図7)
スプリング脚110は、
図1、
図5〜
図7に示す如く、車体側チューブ(アウタチューブ)111に、車軸側チューブ(インナチューブ)112をブッシュ113A、113B、シール部材113Cを介し密封して摺動自在に挿入する。スプリング脚110は、ガイドシリンダ121を車体側チューブ111の内部の中央に吊下げ、車軸側チューブ112の内部の中央に立設したガイドロッド122の先端ガイド123をガイドシリンダ121に摺動自在に挿入している。スプリング脚110は、ガイドシリンダ121及びガイドロッド122の外側を油溜室124としている。油溜室124では、油室125と空気室126が自由界面を介して接している。また、ガイドシリンダ121の内部を空気室127にしている。
【0043】
車体側チューブ111は車体側に支持され、車軸側チューブ112は車軸に結合される。車体側チューブ111の上部開口端にキャップ130及びフォークボルト131により閉塞、密封される。キャップ130は車体側チューブ111に螺着され、フォークボルト131はキャップ130に螺着される。キャップ130の下端部にはガイドシリンダ121が連結されて吊下げられる。
【0044】
車軸側チューブ112の下端部には車軸ブラケット132が螺着、密封され、車軸側チューブ112の内部の車軸ブラケット132上にはガイドロッド122の下端部が立設され、このガイドロッド122まわりの車軸ブラケット132上にはオイルロックカラー133Aが固定されている。ガイドロッド122の下端部が、車軸ブラケット132の底部に外側から係入、密封されるボトムボルト132Aに螺着されるとともに、ロックナット132Bで固定される。オイルロックカラー133Aは、車軸側チューブ112の下端面と車軸ブラケット132の底部との間に挟み止めされる。ガイドロッド122はガイドシリンダ121の下部開口端に螺着したロッドガイド134のブッシュ135に摺動自在に支持され、ガイドシリンダ121の内部に挿入されている。ガイドシリンダ121の内部に挿入されたガイドロッド122の先端部にガイド123が螺着され、ガイド123とロッドガイド134の間にリバウンドスプリング136が介装されている。尚、ロッドガイド134の外周部にはオイルロックピース133Bが設けられている。
【0045】
スプリング脚110は、フォークボルト131及びガイドシリンダ121の周囲にばね荷重調整装置140を装備している。ばね荷重調整装置140は、車体側チューブ111の上部開口端のフォークボルト131に外部から操作部141を挿入、密封して枢支し、車体側チューブ111の内部に挿入された操作部141の外周に沿う軸方向に抜け止めプレート142、アジャスタボルト143を設ける。操作部141はアジャスタボルト143を固定的に螺着され、抜け止めプレート142を介してフォークボルト131から抜け止めされる。アジャスタボルト143には筒状アジャスタナット144が螺着され、アジャスタナット144の下端側の周方向複数位置には下向き爪144Aが設けられ、アジャスタナット144の下向き爪144Aはキャップ130に設けた回り止め孔を通って、キャップ130に吊下げられているガイドシリンダ121の周囲に突出している。操作部141がフォークボルト131への挿入部に設けたクリック機構145により一定回転角毎の節度感をもって外部から回転操作されるとき、アジャスタボルト143に対して螺動するアジャスタナット144が回り止めされて上下動する。アジャスタナット144の下向き爪144Aは、ガイドシリンダ121の周囲に設けられているスプリングシート146、スプリングカラー147を介して、上ばね受148を支持している。
【0046】
スプリング脚110は、車体側チューブ111と車軸側チューブ112の内周と、ガイドシリンダ121とガイドロッド122の外周の環状間隙(油溜室124)をばね収容室151とし、金属ばねからなる懸架スプリング150をこのばね収容室151に配置している。懸架スプリング150は、ばね荷重調整装置140の上ばね受148と、車軸ブラケット132上に設けてあるオイルロックカラー133Aの外周部からなる下ばね受149の間に介装される。懸架スプリング150は、ガイドシリンダ121の外周にガイドされ、車軸側チューブ112の内周に沿って伸縮する。ばね荷重調整装置140の操作部141によるアジャスタナット144の位置調整により、懸架スプリング150の初期荷重を調整できる。
【0047】
スプリング脚110は、懸架スプリング150のばね収容室151における上部を空気室126とするとともに、ガイドシリンダ121の内部の空気室127と連通している。操作部141は、空気室126、127の封入空気圧を調整する空気バルブ128を備える。そして、スプリング脚110の圧側行程で圧縮される空気室126と空気室127により、空気ばねを形成する。ガイドシリンダ121の空気室127を上下動するガイド123は、上下の空気室127を連絡する空気流路123Aを備える。
【0048】
スプリング脚110は、油溜室124(ばね収容室151)の油室125に潤滑オイルを装填している。車体側チューブ111と車軸側チューブ112の摺動部、ガイドシリンダ121とガイドロッド122の摺動部、懸架スプリング150と車軸側チューブ112、ガイドシリンダ121との摺動部を潤滑する。
【0049】
従って、フロントフォークAにあっては、ダンパ脚10のダンパ20における伸側減衰力発生装置40の伸側減衰バルブ42Aと圧側減衰力発生装置50の圧側減衰バルブ54Aが発生する減衰力により、スプリング脚110の懸架スプリング150、空気ばね(空気室126、127)による衝撃力の吸収に伴う車体側チューブ111と車軸側チューブ112の伸縮振動を制振する。
【0050】
尚、フロントフォークAにあっては、ダンパ脚10、スプリング脚110の軽量化のため、ダンパ脚10のピストンロッド22、スプリング脚110のガイドロッド122を中空にしている。ガイドロッド122(ピストンロッド22も同一構造)は、
図6に示す如く、中空部の両端部をプラグ122Aで密封している。
【0051】
また、フロントフォークAにあっては、ダンパ脚10とスプリング脚110の剛性のバランスを図るため、ダンパ脚10の車体側チューブ11とスプリング脚110の車体側チューブ111を同一長、同一径(同一肉厚)にするとともに、ダンパ脚10のピストンロッド12とスプリング脚110のガイドロッド122を同一長、同一径(同一肉厚)にしている。また、ダンパ脚10のダンパシリンダ21とスプリング脚110のガイドシリンダ121を同一長、同一径(同一肉厚)にするとともに、ダンパ脚10のピストンロッド22とスプリング脚110のガイドロッド122を同一長、同一径(同一肉厚)にしている。
【0052】
また、フロントフォークAにあっては、ダンパ脚10とスプリング脚110の剛性のバランスを図るため、フロントフォークAの正面視(
図1)で、ダンパ脚10のダンパシリンダ21に設けられてピストンロッド22を挿入かつ支持するロッドガイド34のブッシュ35と、スプリング脚110のガイドシリンダ121に設けられてガイドロッド122を挿入かつ支持するロッドガイド134のブッシュ135を、同一高さ位置に位置付けている。また、ダンパ脚10の車体側チューブ11に設けられて車軸側チューブ12を挿入かつ支持するブッシュ13Aと、スプリング脚110の車体側チューブ111に設けられて車軸側チューブ112を挿入かつ支持するブッシュ113Aを、同一高さ位置に位置付けている。
【0053】
従って、フロントフォークAによれば以下の作用効果を奏する。
(a)スプリング脚110が、車体側チューブ111と車軸側チューブ112を互いに挿入し、ガイドシリンダ121を車体側チューブ111の内部の中央に設け、車軸側チューブ112の内部の中央に設けたガイドロッド122のガイド123をガイドシリンダ121に挿入してなり、車体側チューブ111の内部でガイドシリンダ121の周囲に設けたばね受148と、車軸側チューブ112との間に、懸架スプリング150を介装してなる。従って、ガイドシリンダ121とばね受148が軸方向で対向配置されて相対移動するものでなく、ガイドシリンダ121とばね受148の軸方向の対向間隔に、スプリング脚110の伸縮ストロークの最大値を超える長さを確保する必要がなくなり、設計の自由度が向上する。特に、スプリング脚110の全長が小さくなり、懸架スプリング150のばね長さも必要以上に長くする必要がなくなる。
【0054】
また、懸架スプリング150の上端はガイドシリンダ121の外周によりガイドされて胴曲りを抑制される。懸架スプリング150の上端が仮に車軸側チューブ112の先端よりも上方に飛び出ることがあっても、胴曲りを抑制されている懸架スプリング150の外周が車軸側チューブ112の先端に干渉する機会は少ない。車軸側チューブ112と懸架スプリング150のフリクション、損傷、摩耗粉の発生、異音を防止できる。
【0055】
(b)スプリング脚110において、車体側チューブ111の内部の中央に設けられるガイドシリンダ121は、減衰力発生装置等を内蔵するものでない。従って、ガイドシリンダ121の周囲にばね荷重調整装置140を設け、このばね荷重調整装置140の操作部141を車体側チューブ111の外部に設けることができる。スプリング脚110にばね荷重調整装置140を装備できる。
【0056】
(c)フロントフォークAの正面視で、スプリング脚110のガイドシリンダ121に設けられてガイドロッド122を挿入かつ支持するロッドガイド134のブッシュ135と、ダンパ脚10のダンパシリンダ21に設けられてピストンロッド22を挿入かつ支持するロッドガイド34のブッシュ35とが、同一高さ位置に位置付けられる。ダンパ脚10とスプリング脚110の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0057】
(d)スプリング脚110の車体側チューブ111とダンパ脚10の車体側チューブ11を同一径にするとともに、スプリング脚110の車軸側チューブ112とダンパ脚10の車軸側チューブ12を同一径にし、スプリング脚110のガイドシリンダ121とダンパ脚10のダンパシリンダ21を同一径にするとともに、スプリング脚110のガイドロッド122とダンパ脚10のピストンロッド22を同一径にする。ダンパ脚10とスプリング脚110の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0058】
図8、
図9に示したスプリング脚110Aがスプリング脚110と異なる点は、車体側チューブ111と車軸側チューブ112に囲まれる内部空間の下部に油室125が設けられ、上部に空気室126が設けられるとき、油室125の油面より下位のガイドロッド122まわりに空気封入ケース160を設けたことにある。空気封入ケース160は、ガイドロッド122の外周に嵌合される中空樹脂成形体からなり、上下2分割体161、162がOリング163を挟んで合体し、上分割体161の先端細径部161AがOリング164を介してガイドロッド122の外周に嵌合し、かつ止め輪165で抜け止めされ、下分割体162の先端細径部162AがOリング166を介してガイドロッド122の内周に嵌合する。空気封入ケース160の内部には空気が封入されている。
【0059】
スプリング脚110にあっては、スプリング脚110Aの油室125に装填する潤滑オイルのオイル量を低減しながら、空気封入ケース160の容積分だけその油面レベルをかさ上げできる。これにより、空気室126の圧縮比を高くし、空気ばね効果を上げることができる。また、油室125のオイルの飛散高さ範囲も高くなり、金属ばねからなる懸架スプリング150のフリクション低減効果も上げることができる。
【0060】
(実施例2)(
図11〜
図16)
フロントフォーク200は、ダンパ20を内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚10と、ダンパを内蔵せず、金属ばねからなる懸架スプリング240を内蔵するスプリング脚210とを平行配置した。
【0061】
ダンパ脚10は、実施例1で
図1、
図2〜
図4に示したものと同一であり、説明を省略する。
【0062】
(スプリング脚210)(
図11〜
図14)
スプリング脚210は、
図11〜
図14に示す如く、車体側チューブ(アウタチューブ)211に、車軸側チューブ(インナチューブ)212をブッシュ213A、213B、シール部材213Cを介し密封して摺動自在に挿入する。スプリング脚210は、ガイドシリンダ221を車体側チューブ211の内部の中央に吊下げ、車軸側チューブ212の内部の中央に立設したガイドロッド222の先端ガイド223をガイドシリンダ221に摺動自在に挿入している。
【0063】
車体側チューブ211は車体側に支持され、車軸側チューブ212は車軸に結合される。車体側チューブ211の上部開口端はキャップ230及びフォークボルト231により閉塞、密封される。キャップ230は車体側チューブ211に螺着され、フォークボルト231はキャップ230に螺着される。キャップ230の下端部にはガイドシリンダ221が連結されて吊下げられる。
【0064】
車軸側チューブ212の下端部には車軸ブラケット232が螺着、密封され、車軸側チューブ212の内部の車軸ブラケット232上にはガイドロッド222の下端部が立設されている。ガイドロッド222の下端部が、車軸ブラケット232の底部に外側から係入、密封されるボトムボルト232Aに螺着されるとともに、ロックナット232Bで固定される。ガイドロッド222はガイドシリンダ221の下部開口端に螺着したロッドガイド234のブッシュ235に摺動自在に支持され、ガイドシリンダ221の内部に挿入されている。ガイドシリンダ221の内部に挿入されたガイドロッド222の先端部にガイド223が螺着され、ガイド223とロッドガイド234の間にリバウンドスプリング236が介装されている。
【0065】
スプリング脚210は、車体側チューブ211と車軸側チューブ212の内周と、ガイドシリンダ221とガイドロッド222の外周の環状間隙をばね収容室241とし、金属ばねからなる懸架スプリング240をこのばね収容室241に配置している。懸架スプリング240は、ガイドシリンダ221の外周に固定的に設けた上ばね受242と、車軸ブラケット232の底面に着座させてあるボトムピース243の上に設けてある下ばね受244の間に介装される。ボトムピース243は、車軸ブラケット232の底面と、この車軸ブラケット232に螺着される車軸側チューブ212の下端面に挟み止めされる。懸架スプリング240は、ガイドシリンダ221の外周にガイドされ、車軸側チューブ212の内周に沿って伸縮する。
【0066】
スプリング脚210は、ガイドシリンダ221の内部にガイドロッド222の先端ガイド223が区画する内側空気ばね室250と、車体側チューブ211と車軸側チューブ212がガイドシリンダ221における少なくとも内側空気ばね室250の外側に区画する外側空気ばね室260とを有する。
【0067】
内側空気ばね室250は、ガイドシリンダ221においてガイドロッド222が存在しない側の内部に、フォークボルト231の中心部に螺着されて固定された仕切板251と、ガイドロッド222の先端ガイド223とに挟まれて区画される。内側空気ばね室250は、先端ガイド223がガイドシリンダ221の内周に対して設けたシール部材223Aと、仕切板251がガイドシリンダ221の内周に対して設けたシール部材251Aにより気密に封止される。
【0068】
内側空気ばね室250の空気圧は内側空気圧調整部252により調整される。内側空気圧調整部252は、フォークボルト231の外界に臨む中心部に取着された空気バルブからなり、フォークボルト231と仕切板251の中心軸上に穿設した孔253、254により内側空気ばね室250に連通し、内側空気ばね室250の封入空気圧を調整する。内側空気圧調整部252は、空気圧注入器の注射針が刺通できるゴム膜からなるものでも良い。
【0069】
外側空気ばね室260は、車体側チューブ211と車軸側チューブ212がガイドシリンダ221の外側に区画する空間260Aと、ガイドシリンダ221においてガイドロッド222が存在する側の内部で、ガイドロッド222を挿入かつ支持するロッドガイド234と、ガイドロッド222の先端ガイド223とに挟まれて区画され、ガイドシリンダ221に設けた孔261により空間260Aに連通される空間260Bとからなる。空間260Bには前述のリバウンドスプリング236が配置されている。車体側チューブ211と車軸側チューブ212はそれらの摺動部に前述のシール部材213Cを介して気密に摺動する。空間260Aの上部は、キャップ230が車体側チューブ211の内周に対して設けたシール部材230Aと、フォークボルト231がキャップ230の内周に対して設けたシール部材231Aにより気密に封止される。空間260Aの下部は、ボトムピース243が車軸側チューブ212の内周、車軸ブラケット232の底面に対して設けたシール部材243A、243Bと、ボトムボルト232Aが車軸ブラケット232の内周に対して設けたシール部材243Cにより気密に封止される。
【0070】
尚、外側空気ばね室260は空間260Aのみからなるものでも良い。このとき、空間260Bは空間260Aと連通せず、ガイドロッド222の中空部264を介して外部に大気解放することができる。
【0071】
外側空気ばね室260の空気圧は外側空気圧調整部262により調整される。外側空気圧調整部262は、ボトムボルト232Aの外界に臨む中心部に取着された空気バルブからなり、ボトムボルト232Aの中心軸上に設けた孔263と、ガイドロッド222の中空部264と、ガイドロッド222に設けた孔265により空間260B、ひいては空間260Aに連通し、外側空気ばね室260(空間260A、260B)の封入空気圧を調整する。外側空気圧調整部262は、空気圧注入器の注射針が刺通できるゴム膜からなるものでも良い。
【0072】
スプリング脚210は、圧側工程で圧縮される内側空気ばね室250と外側空気ばね室260のそれぞれにより、空気ばねを形成する。
【0073】
スプリング脚210は、外側空気ばね室260(ばね収容室241)の下部に潤滑オイルを装填した油室を形成できる。車体側チューブ211と車軸側チューブ212の摺動部、ガイドシリンダ221とガイドロッド222の摺動部、懸架スプリング240と車軸側チューブ212、ガイドシリンダ221との摺動部を潤滑する。
【0074】
従って、フロントフォーク200にあっては、ダンパ脚10のダンパ20における伸側減衰力発生装置40の伸側減衰バルブ42Aと圧側減衰力発生装置50の圧側減衰バルブ54Aが発生する減衰力により、スプリング脚210の懸架スプリング240、内側空気ばね室250の空気ばね、外側空気ばね室260の空気ばねによる衝撃力の吸収に伴う車体側チューブ211と車軸側チューブ212の伸縮振動を制振する。
【0075】
尚、フロントフォーク200にあっては、ダンパ脚10、スプリング脚210の軽量化のため、ダンパ脚10のピストンロッド22、スプリング脚210のガイドロッド222を中空にしている。
【0076】
また、フロントフォーク200にあっては、ダンパ脚10とスプリング脚210の剛性のバランスを図るため、ダンパ脚10の車体側チューブ11とスプリング脚210の車体側チューブ211を同一長、同一径(同一肉厚)にするとともに、ダンパ脚10のピストンロッド12とスプリング脚210のガイドロッド222を同一長、同一径(同一肉厚)にしている。また、ダンパ脚10のダンパシリンダ21とスプリング脚210のガイドシリンダ221を同一長、同一径(同一肉厚)にするとともに、ダンパ脚10のピストンロッド22とスプリング脚210のガイドロッド222を同一長、同一径(同一肉厚)にしている。
【0077】
また、フロントフォーク200にあっては、ダンパ脚10とスプリング脚210の剛性のバランスを図るため、フロントフォーク200の正面視(
図11)で、ダンパ脚10のダンパシリンダ21に設けられてピストンロッド22を挿入かつ支持するロッドガイド34のブッシュ35と、スプリング脚210のガイドシリンダ221に設けられてガイドロッド222を挿入かつ支持するロッドガイド234のブッシュ235を、同一高さ位置に位置付けている。また、ダンパ脚10の車体側チューブ11に設けられて車軸側チューブ12を挿入かつ支持するブッシュ13Aと、スプリング脚210の車体側チューブ211に設けられて車軸側チューブ212を挿入かつ支持するブッシュ213Aを、同一高さ位置に位置付けている。
【0078】
従って、フロントフォーク200によれば以下の作用効果を奏する。
(a)スプリング脚210が、車体側チューブ211と車軸側チューブ212を互いに挿入し、ガイドシリンダ221を車体側チューブ211の内部の中央に設け、車軸側チューブ212の内部の中央に設けたガイドロッド222のガイド223をガイドシリンダ221に挿入してなり、車体側チューブ211の内部でガイドシリンダ221の周囲に設けたばね受242と、車軸側チューブ212との間に、懸架スプリング240を介装してなる。従って、ガイドシリンダ221とばね受242が軸方向で対向配置されて相対移動するものでなく、ガイドシリンダ221とばね受242の軸方向の対向間隔に、スプリング脚210の伸縮ストロークの最大値を超える長さを確保する必要がなくなり、設計の自由度が向上する。特に、スプリング脚210の全長が小さくなり、懸架スプリング240のばね長さも必要以上に長くする必要がなくなる。
【0079】
また、懸架スプリング240の上端はガイドシリンダ221の外周によりガイドされて胴曲りを抑制される。懸架スプリング240の上端が仮に車軸側チューブ212の先端よりも上方に飛び出ることがあっても、胴曲りを抑制されている懸架スプリング240の外周が車軸側チューブ212の先端に干渉する機会は少ない。車軸側チューブ212と懸架スプリング240のフリクション、損傷、摩耗粉の発生、異音を防止できる。
【0080】
(b)フロントフォーク200の正面視で、スプリング脚210のガイドシリンダ221に設けられてガイドロッド222を挿入かつ支持するロッドガイド234のブッシュ235と、ダンパ脚10のダンパシリンダ21に設けられてピストンロッド22を挿入かつ支持するロッドガイド34のブッシュ35とが、同一高さ位置に位置付けられる。ダンパ脚10とスプリング脚210の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0081】
(c)スプリング脚210の車体側チューブ211とダンパ脚10の車体側チューブ11を同一径にするとともに、スプリング脚210の車軸側チューブ212とダンパ脚10の車軸側チューブ12を同一径にし、スプリング脚210のガイドシリンダ221とダンパ脚10のダンパシリンダ21を同一径にするとともに、スプリング脚210のガイドロッド222とダンパ脚10のピストンロッド22を同一径にする。ダンパ脚10とスプリング脚210の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0082】
(d)スプリング脚210が、ガイドシリンダ221の内部にガイドロッド222のガイド223が区画する内側空気ばね室250と、車体側チューブ211と車軸側チューブ212がガイドシリンダ221における少なくとも上記内側空気ばね室250の外側に区画する外側空気ばね室260とを有する。スプリング脚210における車体側チューブ211と車軸側チューブ212に囲まれる内部空間に設けられる空気室を、ガイドシリンダ221の内外の内側空気ばね室250と外側空気ばね室260に2分した。内側空気ばね室250と外側空気ばね室260のそれぞれは、2分化された分だけ小スペースになって高圧縮比になり、内側空気ばね室250の空気ばねのばね力F1と、外側空気ばね室260の空気ばねのばね力F2が大きくなり、スプリング脚210の全体の空気ばね力(F1+F2)を大きくできる。
【0083】
スプリング脚210の全体の空気ばね力を大きくできる分だけ、スプリング脚210の金属ばねからなる懸架スプリング240のばね力を小さくでき、結果として懸架スプリング240の線径を小にし、軽量化できる。
【0084】
(e)スプリング脚210の全体の空気ばね力(F1+F2)を、内側空気ばね室250のばね力F1と外側空気ばね室260のばね力F2に分担する分だけ、内側空気ばね室250の空気圧と外側空気ばね室260の空気圧を低減しながら全体の空気ばね力(F1+F2)を大きくとれる。これにより、内側空気ばね室250のシール部材223A、251Aと外側空気ばね室260のシール部材213C、230A、231A、243A、243B、243Cに及ぼすシール負荷を低減しながら、一定の空気ばね力特性を確保できる。
【0085】
(f)スプリング脚210が金属ばねからなる懸架スプリング240に、内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気ばねを併用する。従って、伸縮ストロークの後半のばね力を内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気ばねのばね力の立上りにより大きくし、踏ん張りのあるばね力特性を得ることができる。そして、伸縮ストロークの初期〜中間域のばね力は、懸架スプリング240により確保することで、適度に大きくならず、乗り心地の良いばね力特性を得ることができる。
【0086】
(g)スプリング脚210が金属ばねからなる懸架スプリング240に、内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気ばねを併用する。従って、万が一、内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気が抜けても、1名乗車分程度の荷重は懸架スプリング240により支持でき、走行継続できる。
【0087】
(h)スプリング脚210が、ダンパを内蔵していないから、内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気がダンパの油温の影響を受けて上昇することがなく、内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気ばねのばね力特性が大きく変化せずに安定化する。
【0088】
(i)スプリング脚210が、内側空気ばね室250の空気圧を調整するための内側空気圧調整部252と、外側空気ばね室260の空気圧を調整するための外側空気圧調整部262とを有する。内側空気ばね室250の空気圧と外側空気ばねの空気圧を調整することにより、スプリング脚210の全体の空気ばね力特性を多様に変更できる。
【0089】
図15、
図16に示したスプリング脚210Aがスプリング脚210と異なる点は、フォークボルト231及びガイドシリンダ221の周囲にばね荷重調整装置270を設けたことにある。
【0090】
ばね荷重調整装置270は、キャップ230にフォークプレート271を螺着して固定的に設け、フォークプレート271がキャップ230の内周に対して気密に封止されるシール部材271Aを備える。そして、フォークプレート271にフォークボルト231を回転可能に枢支し、フォークボルト231がフォークプレート271の内周に対して気密に封止されるシール部材231Aを備える。フォークボルト231は、フォークプレート271の内側面に下方から衝接するフランジ部231Fを備えるとともに、キャップ230の縮径部に上方から衝接する下端面を備えることにより、キャップ230とフォークプレート271の間で軸方向に保持され、フォークプレート271の内周に枢支される。
【0091】
ばね荷重調整装置270は、フォークボルト231のフランジ231F直下の外周雄ねじ部に筒状アジャスタナット272が螺着され、アジャスタナット272の下向き爪272Aはキャップ230に設けた回り止め孔を通って、キャップ230に吊下げられているガイドシリンダ221の周囲に向けて突出している。フォークボルト231がフォークプレート271への挿入部に設けたクリック機構273により一定回転角毎の節度感をもって外部から回転操作されるとき、フォークボルト231に対して螺動するアジャスタナット272が回り止めされて上下動する。アジャスタナット272の下向き爪272Aは、ガイドシリンダ221の周囲に設けられているスプリングシート274、スプリングカラー275を介して、上ばね受276を支持している。この上ばね受276が、スプリング脚210における上ばね受242に代わるものになり、車軸ブラケット232の底面に着座させてあるボトムピース243の下ばね受244との間に、懸架スプリング240を介装するものになる。
【0092】
ばね荷重調整装置270のフォークボルト231の回転操作によるアジャスタナット272の位置調整により、懸架スプリング240の初期荷重を調整できる。
【0093】
スプリング脚210Aにあっては、車体側チューブ211の内部の中央に設けられるガイドシリンダ221が、減衰力発生装置等を内蔵するものでない。従って、ガイドシリンダ221の周囲にばね荷重調整装置270を設け、このばね荷重調整装置270の操作部としてのフォークボルト231を車体側チューブ211の外部に設けることができる。スプリング脚210Aにばね荷重調整装置270を装備できる。
【0094】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、ダンパ脚において、車体側チューブをインナチューブとし、車軸側チューブをアウタチューブとしても良いし、ダンパシリンダを車軸側チューブに設け、ピストンロッドを車体側チューブに設けても良い。
【0095】
また、スプリング脚において、車体側チューブをインナチューブとし、車軸側チューブをアウタチューブとしても良い。