特許第5714871号(P5714871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714871
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】電動モータ、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/17 20060101AFI20150416BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20150416BHJP
   H02K 1/12 20060101ALI20150416BHJP
   H02K 5/14 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   H02K1/17
   H02K7/116
   H02K1/12 A
   H02K5/14
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-248804(P2010-248804)
(22)【出願日】2010年11月5日
(65)【公開番号】特開2012-105367(P2012-105367A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】川島 義親
(72)【発明者】
【氏名】時崎 哲平
(72)【発明者】
【氏名】小島 直希
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−047184(JP,A)
【文献】 特開2007−049884(JP,A)
【文献】 特開2007−006688(JP,A)
【文献】 特開2001−028864(JP,A)
【文献】 特開2002−199652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/17
H02K 1/12
H02K 5/14
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部を有するヨークと、
前記筒部の内周面に固定され、周方向に沿ってN極およびS極の磁極が交互になるように配置された4個の永久磁石と、
前記永久磁石よりも径方向内側に回転自在に支持されたアーマチュアと、
前記アーマチュアに給電を行う複数のブラシと、これらブラシを保持し、径方向の一方向に長くなるように形成されたブラシホルダと、
を備えた電動モータにおいて、
前記筒部に、径方向で対向する少なくとも1対の第1平坦部と、これら1対の第1平坦部を連結する少なくとも1対の弧状部と、を形成し、
4個の前記永久磁石は、それぞれ前記弧状部に配置されるとともに、前記第1平坦部および弧状部の一部を交互に挟んで隣り合うように配置され、
前記筒部の対向する前記第1平坦部の幅をL1とし、対向する前記弧状部の幅をR1としたとき、
前記第1平坦部の幅L1、および前記弧状部の幅R1は、
L1<R1
を満たすように設定され、
かつ、前記ブラシホルダの短手方向に、対向する前記第1平坦部を配置したことを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
前記筒部の開口部に、前記ブラシホルダを収納可能なブラシホルダ収納部を一体成形したことを特徴とする請求項に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記ブラシホルダを、この外形状が軸方向平面視で長円形状となるように形成すると共に、前記ブラシホルダ収納部の周壁を、前記ブラシホルダの外形状に対応するように軸方向平面視で長円形状に形成し、
前記ブラシホルダ収納部の周壁を、1対の平坦壁と、これら1対の平坦壁の長手方向端部に跨るように形成された1対の弧状壁とにより構成し、
前記ヨークの前記第1平坦部と、前記ブラシホルダ収納部の前記平坦壁とを面一としたことを特徴とする請求項に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記アーマチュアは、周方向に10個のティースが形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記アーマチュアの回転軸と直交する出力軸を有し、少なくとも1対の前記第1平坦部は、前記出力軸に沿う方向と直交するように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動モータ。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の電動モータを、車両のパワーウィンドウ、サンルーフ、電動シートおよびワイパ装置の少なくとも何れか1つの駆動用として用いたことを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両に搭載される電動モータ、およびこの電動モータを用いた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータとして、例えば、有底筒状のヨークの内周面に永久磁石を複数配置し、この永久磁石よりも径方向内側にアーマチュアを回転自在に設けたブラシ付きの電動モータがある。アーマチュアは、回転軸に外嵌固定されたアーマチュアコアと、複数のセグメントが配設されたコンミテータとを有している。アーマチュアコアには、径方向外側に向かって延びる複数のティースが設けられ、これらティース間に軸方向に長いスロットが複数形成されている。これらスロットから巻線が挿通され、各ティースに集中巻や分布巻にて巻線が巻装されている。
【0003】
巻線は、コンミテータのセグメントに導通している。各セグメントは給電を行うためのブラシに摺接しており、このブラシを介して巻線に電流が供給されるようになっている。
巻線に電流が供給されると磁界が形成され、この磁界と永久磁石との間に生じる磁気的な吸引力や反発力によってアーマチュアが回転する。
【0004】
ところで、近年、このように構成された電動モータにおいては、さらなる小型化および高性能化が望まれている。そこで、例えばNdFeB(ネオジム−鉄−ボロン)系の磁石粉末からなる異方性希土類ボンド磁石を4極設けた電動モータが提案されている。このように、磁力の高い希土類の永久磁石を多極化することにより、電動モータの小型化および高性能化を図ろうとしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−33843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の電動モータは、円筒状のヨークの内周面にリング状もしくは瓦状の永久磁石を配置しているため、電動モータの外形の大きさは、主に永久磁石の加工厚さに制約を受けている。したがって、電動モータの性能を維持しつつ更なる小型化を図るのには限界がある。
【0007】
そこで本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、永久磁石の厚さに依存することなく小型化を図ることができる電動モータ、およびこの電動モータを用いた駆動装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る電動モータは、筒部を有するヨークと、前記筒部の内周面に固定され、周方向に沿ってN極およびS極の磁極が交互になるように配置された4個の永久磁石と、前記永久磁石よりも径方向内側に回転自在に支持されたアーマチュアと、前記アーマチュアに給電を行う複数のブラシと、これらブラシを保持し、径方向の一方向に長くなるように形成されたブラシホルダと、を備えた電動モータにおいて、前記筒部に、径方向で対向する少なくとも1対の第1平坦部と、これら1対の第1平坦部を連結する少なくとも1対の弧状部と、を形成し、4個の前記永久磁石は、それぞれ前記弧状部に配置されるとともに、前記第1平坦部および弧状部の一部を交互に挟んで隣り合うように配置され、前記筒部の対向する前記第1平坦部の幅をL1とし、対向する前記弧状部の幅をR1としたとき、前記第1平坦部の幅L1、および前記弧状部の幅R1は、
L1<R1
を満たすように設定され、かつ、前記ブラシホルダの短手方向に、対向する前記第1平坦部を配置したことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項に係る電動モータは、前記筒部の開口部に、前記ブラシホルダを収納可能なブラシホルダ収納部を一体成形したことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項に係る電動モータは、前記ブラシホルダを、この外形状が軸方向平面視で長円形状となるように形成すると共に、前記ブラシホルダ収納部の周壁を、前記ブラシホルダの外形状に対応するように軸方向平面視で長円形状に形成し、前記ブラシホルダ収納部の周壁を、1対の平坦壁と、これら1対の平坦壁の長手方向端部に跨るように形成された1対の弧状壁とにより構成し、前記ヨークの前記第1平坦部と、前記ブラシホルダ収納部の前記平坦壁とを面一としたことを特徴としている。
また、本発明の請求項4に係る電動モータは、前記アーマチュアは、周方向に10個のティースが形成されていることを特徴としている。
また、本発明の請求項5に係る電動モータは、前記アーマチュアの回転軸と直交する出力軸を有し、少なくとも1対の前記第1平坦部は、前記出力軸に沿う方向と直交するように形成されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項に係る駆動装置は、上記の電動モータを、車両のパワーウィンドウ、サンルーフ、電動シートおよびワイパ装置の少なくとも何れか1つの駆動用として用いたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電動モータによれば、ヨークの筒部に第1平坦部を形成することにより、筒部を円筒状に形成した場合よりも電動モータを小型化することができる。また、第1平坦部を避けた位置に永久磁石を配置することで、永久磁石の厚さに依存することなく電動モータの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の減速機構付モータ装置の部分断面図である。
図2図1のA−A線に沿った断面図である。
図3第1参考形態における電動モータの横断面図である。
図4第1参考形態の減速機構付モータ装置の説明図である。
図5第2参考形態の電動モータの横断面図である。
図6第2参考形態の減速機構付モータ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図1および図2を用いて第1実施形態の電動モータ2およびこの電動モータ2を用いた減速機構付モータ装置1(請求項の「駆動装置」に相当)の説明をする。
図1および図2に示す電動モータ2を用いた減速機構付モータ装置1は、例えば車両のパワーウィンドウ、サンルーフ、電動シートおよびワイパ装置の少なくとも何れか1つの駆動用として用いられる。
【0020】
(電動モータ)
電動モータ2は、ヨーク5の筒部53内にアーマチュア6が回転自在に設けられ、筒部53の開口部53b側に形成されたブラシホルダ収納部90に、ブラシホルダ22が内嵌固定されたものである。
ヨーク5は、例えば鉄等の金属からなる有底筒状の部材であり、例えば深絞りによるプレス加工等により成型される。
【0021】
ヨーク5の大部分を占める筒部53は、軸方向から見て、中心軸Oを挟んで径方向で対向する1対の第1平坦部61と、1対の第1平坦部61を連結する弧状部63と、により構成されている。
第1平坦部61の離間距離は、筒部53内に配置されるアーマチュア6の直径よりも若干広くなるように設定される。
弧状部63は、対向する第1平坦部61のそれぞれの周方向端部を連結している。弧状部63の曲率中心は、軸方向から見てアーマチュア6の回転中心と同一となるように設定される。また、弧状部63の内周面63aの曲率半径は、アーマチュア6の半径よりも若干大きくなるように設定される。
【0022】
ヨーク5の筒部53の内周面53aには、永久磁石7が設けられている。永久磁石7には、ネオジ焼結磁石およびネオジボンド磁石の希土類磁石や、フェライト磁石等が使用される。永久磁石7は、軸方向から見て略円弧形状に形成されており、互いに平行な内周面7aおよび外周面7bと、これらの間に配置された側面7cとを有している。
【0023】
永久磁石7の内周面7aの曲率半径は、アーマチュア6の半径よりも若干大きくなるように設定される。また、永久磁石7の外周面7bの曲率半径は、筒部53に形成された弧状部63の内周面63aの曲率半径と略同一となるように設定される。また、永久磁石7の軸方向の長さは、ヨーク5の筒部53の軸方向の長さと略同一に設定される。
【0024】
上述のように形成された永久磁石7は、外周面7bを筒部53の弧状部63側に向けて、弧状部63の内周面63aに4個固定されている。なお、永久磁石7は、弧状部63の内周面63aに接着材等により貼付される。
【0025】
4個の永久磁石7は、周方向に沿ってN極およびS極の磁極が交互になるように配置されている。そして、4個の永久磁石7は、N極およびS極の磁極がそれぞれ対向するように配置されている。また、隣り合う永久磁石7のピッチ角は、約90°になるように設定されている。すなわち、電動モータ2は、2極対のモータを構成している。
【0026】
ここで、対向する第1平坦部61の幅をL1とし、対向する弧状部63の幅をR1としたとき、第1平坦部61の幅L1、および弧状部63の幅R1が、
L1<R1・・・(1)
を満たすように設定されている。
【0027】
そして、図2に示すように、筒部53の1対の第1平坦部61は、後述するブラシホルダ収納部90に形成された1対の平坦壁91と面一になるように設けられている。また、筒部53の第1平坦部61は、後述するブラシホルダ22の短手方向(図2における左右方向)に配置されている。
【0028】
ヨーク5の底壁51の略中央には、中心軸Oに沿って外側に突出するボス19が形成されている。ボス19の内周面には、円環状の金属等からなる軸受18が圧入固定されている。モータ回転軸3の一端側(図1における右側)は、軸受18を介してヨーク5のボス19に軸支されている。
【0029】
また、ボス19の底部には、スラストプレート34が設けられている。スラストプレート34は、スチールボール35を介してモータ回転軸3のスラスト荷重を受けている。スチールボール35は、モータ回転軸3とスラストプレート34との間の摺動抵抗を減少するとともにモータ回転軸3の芯ズレを吸収している。
【0030】
ヨーク5の筒部53には、開口部53b側(図1における左側)に、ブラシホルダ収納部90が一体成形されている。ブラシホルダ収納部90の周壁90aは、後述のブラシホルダ22を収納するためのものである。ブラシホルダ収納部90の周壁90aは、軸方向から見て略長円形状に形成されており、径方向の一方向(図2における上下方向)が長手方向となり、径方向の他方向(図2における左右方向)が短手方向となっている。
ブラシホルダ収納部90は、短手方向で対向する1対の平坦壁91と、長手方向において平坦壁91の周方向端部を連結する1対の弧状壁92とを有している。
【0031】
一方、ブラシホルダ収納部90の弧状壁92と、筒部53の弧状部63との間には、段差壁93が設けられている。段差壁93によって、筒部53の弧状部63とブラシホルダ収納部90の弧状壁92とが連続的に一体形成された状態になっている。さらに、1対の平坦壁91は、筒部53に形成された1対の第1平坦部61と面一になるように設けられている。
前述のとおり、第1平坦部61の幅L1、および弧状部63の幅R1は(1)式を満たしている。したがって、筒部53に設けられた1対の第1平坦部61、および1対の弧状部63のうち、より狭小な幅L1を有する1対の第1平坦部61が、ブラシホルダ22の短手方向に配置される。
【0032】
ブラシホルダ収納部90側の周壁90aには、電動モータ2をウォームギヤ減速機構4に締結固定するための外フランジ部52が設けられている。
外フランジ部52は、ブラシホルダ収納部90の長手方向に沿って長くなるように軸方向平面視略5角形状に形成され、かつ頂点となる部分が長手方向に位置するように形成されている。また、外フランジ部52の短手方向の幅は、ブラシホルダ収納部90に設けられた1対の平坦壁91の幅よりも若干大きくなるように設定されている。
【0033】
また、外フランジ部52の長手方向における一端側(図2における上側)には、頂点となる部分にボルト孔(不図示)が1つ形成されると共に、他端側(図2における下側)には各角部にそれぞれボルト孔(不図示)が形成されている。各ボルト孔には、ボルト24が挿通される。
【0034】
(アーマチュア)
ヨーク5の筒部53内に回転自在に設けられたアーマチュア6は、モータ回転軸3に外嵌固定されたアーマチュアコア8と、アーマチュアコア8に巻装されたアーマチュアコイル(不図示)と、モータ回転軸3の他端側に配置されたコンミテータ10とを備えている。アーマチュアコア8は、電磁鋼板等からなるリング状の板部材11を軸方向に複数枚積層したものである。
【0035】
図2に示すように、板部材11の外周部には、軸方向から見て略T字状に形成された10個のティース12が、周方向に沿って等間隔かつ放射状に配置されている。各ティース12は、径方向に延出する巻胴部12aと、巻胴部12aの先端に設けられ周方向に張り出した外周部12bとで構成されている。
【0036】
アーマチュアコア8の外周には、軸方向に沿って延在する溝状のスロット13が形成されている。スロット13は、モータ回転軸3に複数枚の板部材11を外嵌固定することにより形成され、隣接するティース12の外周部12b間に形成される。前述のとおりティース数が10個であるため、ティース12間のスロット13も10スロット形成される。また、ティース12が周方向に沿って等間隔に配置されているため、各スロット13も周方向に沿って等間隔に複数形成される。
【0037】
各スロット13間には、樹脂等の絶縁材料からなるインシュレータ(不図示)が設けられている。そして、ティース12の巻胴部12aに、インシュレータを介して巻線(不図示)が巻装される。これにより、アーマチュアコア8の外周に、複数のアーマチュアコイル(不図示)が形成される。
【0038】
モータ回転軸3の他端側(図1における左側)に外嵌固定されるコンミテータ10の外周面には、導電材で形成されたセグメント15が10枚取り付けられている。
セグメント15は、軸線方向に長い板状の金属片により形成されている。そして、セグメント15は、互いに離間して絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に固定されている。したがって、電動モータ2は、永久磁石7が4個、スロット13が10スロット、セグメント15が10枚の、4極10スロット10セグメントで構成された直流モータとなっている。
【0039】
各セグメント15のアーマチュアコア8側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ(不図示)が一体成形されている。ライザには、アーマチュアコイルの巻線が掛け回わされ、巻線は例えばヒュージングによりライザに固定されている。これにより、セグメント15と、これに対応するアーマチュアコイルとが導通される。
【0040】
セグメント15には、このセグメント15に電力を供給するためのブラシ(不図示)が摺接されている。このブラシは、ブラシホルダ収納部90の周壁90aに収納されているブラシホルダ22に設けられている。より詳しくは、ブラシホルダ22には、ブラシがスプリング21を介して付勢された状態で、出没自在に内装されている。これらブラシの先端部は、スプリング21によって付勢され、これによりコンミテータ10に摺接した状態になっている。そして、ブラシホルダ22や、ブラシ、スプリング21等によりブラシホルダユニット20を構成している。
【0041】
ブラシが収納されるブラシホルダ22は、軸方向から見て、ブラシホルダ収納部90の内周形状と略同一に形成されている。すなわち、ブラシホルダ22は、ブラシホルダ収納部90と同様に略長円形状に形成されており、短手方向(図2における左右方向)で対向する1対の平坦壁(不図示)と、長手方向(図2における上下方向)において、平坦壁の周方向端部を連結する1対の弧状壁(不図示)とを有している。そして、ヨーク5に形成された1対の第1平坦部61、およびブラシホルダ収納部90に形成された1対の平坦壁91は、ブラシホルダ22の短手方向に配置される。
【0042】
上述のように形成された電動モータ2は、ヨーク5の外フランジ部52に形成されたボルト孔にボルト24を挿通し、ウォームギヤ減速機構4に螺合することで固定される。
ウォームギヤ減速機構4には、ウォーム軸25およびウォームホイール26を収納するギヤハウジング23が設けられている。
【0043】
ギヤハウジング23に形成されたウォーム軸収容部27には、ウォーム軸25が収容されている。ウォーム軸25は、電動モータ2のモータ回転軸3の他端側(図1における左側)に、カップリング等のジョイント部材88を介して連結されている。
【0044】
ウォーム軸25は、モータ回転軸3と同軸上に設けられている。また、ウォーム軸25の両端側は、ウォーム軸収容部27に設けられた軸受け40,41によって回転自在に支持されている。なお、ウォーム軸25の他端側(図1における左側)には、モータ回転軸3と同様にスラストプレート38およびスチールボール37が設けられ、ウォーム軸25のスラスト荷重を受けている。
【0045】
ウォーム軸25に噛合されるウォームホイール26には、出力軸28が設けられている。出力軸28は、ウォームホイール26とともに回転可能に連結されており、電動モータ2のモータ回転軸3の直交方向に沿うように設けられている。そして、出力軸28が回転することにより、車両のパワーウィンドウやサンルーフ、電動シート、ワイパ装置等の電装品を動作させる。
【0046】
(効果)
本実施形態によれば、ヨーク5の筒部53に第1平坦部61を形成することにより、筒部53を円筒状に形成した場合よりも、電動モータ2を小型化することができる。また、第1平坦部61を避けた位置に永久磁石7を配置することで、永久磁石7の厚さに依存することなく電動モータ2の小型化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、筒部53の開口部53bに、ブラシホルダ22を収納可能なブラシホルダ収納部90を一体成形しているので、低コストにブラシホルダ収納部90を形成することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、ヨーク5の第1平坦部61と、ブラシホルダ収納部90の短手方向に配置された平坦壁91とが面一になるように形成されている。さらに、第1平坦部61の幅L1、および弧状部63の幅R1は(1)式を満たすように形成されている。したがって、より狭小な幅L1を有する1対の第1平坦部61をブラシホルダ22の短手方向に配置することにより、ブラシホルダ収納部90を設けた場合であっても、電動モータ2全体の小型化ができる。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、減速機構付モータ装置1の駆動源に上述した小型な電動モータ2を採用しているので、減速機構付モータ装置1の小型化ができる。
【0050】
第1参考形態
次に、第1参考形態について、図3および図4を用いて説明する。第1実施形態の電動モータ2には、ヨーク5に1対の第1平坦部61が形成されていた。しかし、第1参考形態の電動モータ2には、ヨーク5に2対の第1平坦部61が形成されており、隣接する各第1平坦部61を跨るように2対の弧状部63が形成されている点で、第1実施形態の電動モータ2とは異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成部分については、詳細な説明を省略する。
【0051】
図3および図4に示すように、2対の第1平坦部61のうち1対の第1平坦部61は、第1実施形態と同様に、ブラシホルダ22(図1参照)の短手方向(図3における左右方向)に設けられている。さらに、第1参考形態のヨーク5では、2対の第1平坦部61のうち他の1対の第1平坦部61が、ブラシホルダの長手方向(図3における左右方向)に設けられている。すなわち、ヨーク5には、第1平坦部61が90°ピッチで4個設けられている。また、弧状部63は、第1平坦部61と同様に90°ピッチで4個設けられており、隣接する第1平坦部61の周方向端部を連結している。そして、各弧状部63の内周面には4個の永久磁石7が固定されている。
【0052】
ここで、第1参考形態では、第1実施形態と同様に、対向する2対の第1平坦部61の幅をL1とし、対向する2対の弧状部63の幅をR1としたとき、第1平坦部61の幅L1、および弧状部63の幅R1が、
L1<R1・・・(1)
を満たすように設定されている。
【0053】
そして、図4に示すように、筒部53に形成された2対の第1平坦部61のうち1対の第1平坦部61は、ブラシホルダ収納部90に形成された1対の平坦壁91と面一になるように設けられている。また、1対の第1平坦部61およびブラシホルダ収納部90の平坦壁91は、ブラシホルダ(不図示)の短手方向(図4における左右方向)に配置されている。また、弧状部63は、ブラシホルダの短手方向以外の部分に配置されている。すなわち、筒部53に設けられた2対の第1平坦部61、および2対の弧状部63のうち、より狭小な幅L1を有する1対の第1平坦部61が、ブラシホルダの短手方向に配置されている。
【0054】
第1参考形態の効果)
第1参考形態によれば、弧状部63の幅よりも狭い幅を有する2対の第1平坦部61を形成することで、ブラシホルダの短手方向に加えて、長手方向においても電動モータ2の筒部53の小型化ができる。したがって、第1実施形態の効果に加えて、レイアウト性に優れた小型な電動モータ2、およびこの電動モータ2を使用した小型な減速機構付モータ装置1の提供ができる。
【0055】
第2参考形態、断面8角形のヨーク)
次に、第2参考形態について、図5および図6を用いて説明する。第1実施形態では、1対の第1平坦部61と、1対の弧状部63とにより、筒部53が断面略長円形状に形成されていた。また、第1参考形態では、2対の第1平坦部61と、2対の弧状部63とにより、筒部53が断面略長円形状に形成されていた。
しかし、第2参考形態では、筒部53が断面8角形状に形成されている点で、第1実施形態の電動モータ2とは異なっている。なお、第1実施形態および第1参考形態と同様の構成部分については、詳細な説明を省略する。
【0056】
図5および図6に示すように、第2参考形態の筒部53は断面8角形状に形成されており、2対の第1平坦部61と、隣接する第1平坦部61の周方向端部を直線的に連結する2対の第2平坦部62と、により形成されている。そして、第2平坦部62の内面62aには、平板形状に形成された永久磁石7が固定されている。
【0057】
筒部53の径方向における第1平坦部61の離間距離は、アーマチュア6の直径よりも若干広くなるように設定されている。また、筒部53の径方向における第2平坦部62の離間距離は、アーマチュア6の直径に、2個の永久磁石7の幅を加えた寸法よりも若干広くなるように設定されている。
さらに、対向する第1平坦部61の幅をL1とし、対向する第2平坦部62の幅をL2としたとき、第1平坦部61の幅L1、および第2平坦部62の幅L2が、
L1<L2・・・(2)
を満たすように設定されている。
【0058】
そして、図6に示すように、筒部53の1対の第1平坦部61は、ブラシホルダ収納部90に形成された1対の平坦壁91と面一になるように設けられている。また、筒部53の第1平坦部61およびブラシホルダ収納部90の平坦壁91は、ブラシホルダ(不図示)の短手方向(図6における左右方向)に配置されている。すなわち、筒部53に設けられた1対の第1平坦部61、および1対の第2平坦部62のうち、より狭小な幅L1を有する1対の第1平坦部61が、ブラシホルダの短手方向に配置されている。
【0059】
第2参考形態の効果)
第2参考形態によれば、筒部53を断面8角形状に形成することで、第1実施形態のように筒部53に弧状部63(図2参照)を形成した場合よりも、さらに電動モータ2の小型化ができる。
また、第2平坦部62の内面62aに永久磁石7を固定するので、永久磁石7を平板形状に形成することができる。これにより、永久磁石7を略円弧形状に形成する場合と比較して、加工コストを低減させることができる。とりわけ、曲面を形成しにくいネオジ焼結磁石やネオジボンド磁石等の希土類磁石には効果的である。
さらに、第2平坦部62の内面62aに形成された平坦面に平板状の永久磁石7を固定しているので、特に接着剤を用いて固定する場合には、永久磁石7を強固に固定することができる。
【0060】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
第1実施形態および各参考形態では、電動モータ2にウォームギヤ減速機構4を連結した場合について説明した。しかしながら、電動モータ2の連結先はウォームギヤ減速機構4に限られるものではなく、電動モータ2をウォームギヤ減速機構4以外のアクチュエータ機構や、他の外部機器に連結するようにしてもよい。
【0061】
第1実施形態および各参考形態では、減速機構付モータ装置1(駆動装置)が、例えば車両のパワーウィンドウ、サンルーフ、電動シートおよびワイパ装置の少なくとも何れか1つの駆動用として用いられる場合について説明した。しかしながら、減速機構付モータ装置1の用途はこれらに限られるものではなく、例えば車両の電動パワーステアリングや車両以外の電装品など、さまざまな装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
2 電動モータ
5 ヨーク
6 アーマチュア
7 永久磁石
22 ブラシホルダ
53 筒部
53a 内周面
53b 開口部
61 第1平坦部
62 第2平坦部
63 弧状部
90 ブラシホルダ収納部
90a 周壁
91 平坦壁
92 弧状壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6