【実施例】
【0062】
(例1)
本例では、反応器内に挿入された2つの試料に対してイオン性液体と共にマイクロ波加熱系を使用することを示し、解乳化剤としてomimBF4イオン性液体を使用し、手動混合し、事前にベンゼンに可溶化されたILとエマルジョンの分散相としての蒸留水を添加する。
【0063】
この試験における合成エマルジョンは、以下の初期特性:含水率=31.7%及びD(05)=3.5μmを示す。処理時間は、13.5分間である。
【0064】
図1は、実験に亘ってマイクロ波反応器の赤外線センサ及びガス膨張センサにより与えられる印加電力曲線及び加熱曲線を示す。ガスセンサが、位置1に設置される石英のフラスコのエマルジョンの中に浸漬され、IRセンサが、石英の各フラスコの裏面外側での温度を提供することは、指摘するに値する。石英のフラスコの厚みが大きいので、両センサの測定値の間に有意差がある。系がいかなる遊離水の形成も示さない場合、ガスセンサの温度は、IRセンサにより明示される温度よりも約30℃高い。
【0065】
遊離水が系内に形成されるにつれて、この水はフラスコの底に蓄積し、著しい量のマイクロ波放射を吸収し、これは分離水の温度の増大の結果として熱に変換される。故に、この種の試験における遊離水の形成は、IRセンサを介して明示される温度の増加により容易に確認され得る。
【0066】
図1は、ILが添加されたフラスコ1及び5についてのこの種の挙動を示す。我々は、ILを添加した又は添加しない結果としての加熱曲線の別の挙動をも示す。
【0067】
加熱曲線において観察された結果は、各フラスコ内で得られた分離の効率を決定することにより実験終了時に確認される。
【0068】
フラスコ3及び7は、遊離水形成を示さず、開始される重力沈降のプロセスも有さない。ILを添加したフラスコ1及び5において、遊離水の形成と、少なくとも30%の効率とが示される。
【0069】
以下の表1に、FRと称される別々のフラスコについて例1において得られた初期及び最終の含水率と分離効率(SE%)とを列挙する。
【表1】
【0070】
図2は、初期エマルジョン並びにマイクロ波を介した処理の後のフラスコ3及び7内にある非分解エマルジョンの液滴径分布(DSD)を示す。試料3及び7では、より大きな液滴径に関する分布の発生を介する凝集プロセスの開始に注意が必要である。しかし、この凝集は相対的にスムーズであり、プロセスの間に十分に大きな直径を有する液滴を形成して重力で沈降することが生じるのに十分でない。この点で、マイクロ波の印加でも遊離水の形成を開始するために効果的でないので、エマルジョンは十分に安定であると考えることができる。
【0071】
これらの実験において使用したILの濃度が、本出願人がこの方法を開発することにつながった研究において用いられた、典型的には解乳化剤で用いられるものの範囲と同等の上で示された濃度の範囲の下限であることにも注意するべきである。マイクロ波と共にこれらの低濃度のILを添加することの効果は、相乗効果によるエマルジョンの破壊効率の増加を明らかに促進する。
【0072】
(例2)
本例において、マイクロ波及び従来の加熱の系を、omimBF4イオン性液体と共に使用するが、それは手動で混合され、ベンゼンにおいて可溶化されたILとエマルジョンの分散相としての蒸留水との添加が行われる。
【0073】
従来の加熱系と同様にマイクロ波反応器内に配置した試料の内の2つにイオン性液体を挿入する。この試験における合成エマルジョンは、以下の初期特性:含水率=32.9%及びD(0.5)=3.1μmを示す。処理時間は30分間である。
【0074】
本例に亘ってマイクロ波反応器の赤外線センサ及びガス膨張センサにより与えられる加熱曲線は、
図1で示されたものと同様であり、フラスコ1及び5のIRセンサの温度の増加は、ILの添加による遊離水形成のプロセスの開始を示す。
【0075】
これらの結果は、各フラスコにおいて明示される初期含水率及び効率が示される以下の表2に列挙されるデータにより確認される。ILを添加したフラスコについては遊離水の形成が示され、ILが添加されないエマルジョンを含むフラスコは、遊離水形成や重力沈降の開始を示さない。
【0076】
表2は、誘電加熱に供した試料において用いられたものと同じ濃度でILが添加された従来の加熱試験において得られた結果をも示す。従来の試験の終了時、遊離水の形成を認めず、したがってフラスコの上部にあるエマルジョンは4.4%の含水率を示し、これは重力沈降のプロセスが開始したことを示す。
【表2】
【0077】
ここで示される結果に基づいて、使用されたイオン性液体は、W/Oエマルジョンにおいて解乳化剤としての役割を果たす(作用機構は依然として不明)と推測することができる。なお、ILのテンソアクティブがW/Oエマルジョンの安定性の増加を誘起する可能性がある場合、この効果は些細なものではない。
【0078】
表2のデータから結論を下すことができる別の一局面は、ILの解乳化効果がマイクロ波放射により強められることであり、このことは、ILとマイクロ波との併用が石油のW/Oエマルジョンの破壊における高度に有望な一局面であることを示唆する。
【0079】
(例3)
例1及び2におけるマイクロ波反応器内に配置されたフラスコ1及び5において得られた最終含水率の値の有意差を鑑み、且つこれらの有意差が、効果が不十分なエマルジョンとのILの混合方法(手動混合系)に起因し得ることを考慮して、機械的分散機を使用してイオン性液体を均質化する試験を行った。これに加えて、有害物質の使用を最小限に抑えるため、ILをベンゼンと混合することなくそのまま添加する。この試験において、マイクロ波加熱系を、omimBF4イオン性液体と共に使用するが、それにおいて、ホモジナイザにより混合物が作製され、いずれの溶媒も用いることなくILが添加され、蒸留水がエマルジョンの分散相として使用される。マイクロ波反応器内に配置された2つの試料においてイオン性液体を添加する。この実験において合成されたエマルジョンは、以下の初期特性:含水率=33.4%及びD(0.5)=3.1μmを有する。処理時間は30分間である。
【0080】
例3の実験に亘ってマイクロ波反応器の赤外線センサ及びガス膨張センサにより与えられる電力印加曲線及び加熱曲線は、
図1で示されたものと同様であり、フラスコ1及び5のIRセンサの温度の増加は、ILの添加による遊離水形成プロセスの開始を証明する。
【0081】
表3は、試料において認められた初期含水率及び効率の結果を示す。また、ILが添加された試料は、遊離水形成と、およそ60%の分離効率とを示した。なお、ILが添加された2つのフラスコは、非常に類似した効率の結果を示す。これに加えて、フラスコ3及び7は、遊離水形成や重力沈降プロセスの開始を示さない。
【表3】
【0082】
(例4)
この試験において、マイクロ波及び従来の加熱の系を、omimBF4イオン性液体と共に使用するが、それはホモジナイザにより混合され、溶媒の非存在下でILが添加され、分散相は蒸留水である。
【0083】
従来の加熱系におけるようにマイクロ波反応器内に配置された2つの試料においてイオン性液体を添加する。この試験における合成エマルジョンは、以下の初期特性:含水率=33.3%及びD(0.5)=3.2μmを示す。処理時間は30分間である。
【0084】
この試験の結果は、以前の試験において明らかにされたものと一致する。
【0085】
マイクロ波系におけるILの添加は、約50%の効率で、使用した2つのフラスコにおいて同様の値でエマルジョンの破壊をもたらす。
【0086】
ILを添加せずに処理した試料は、分散相からの水液滴の小さな凝集だけを示す。
【0087】
初期エマルジョン並びにフラスコ3及び7の非分解エマルジョンについての液滴径の分布は、
図2に示されたものと同様である。
【0088】
以下の表4は、これらの実験において得られた初期含水率データ及び分離効率を示す。
【表4】
【0089】
なお、従来の加熱を受ける系について、試料は遊離水形成を示さないが(SE=0)、エマルジョンは、重力沈降のプロセスを既に開始しており、このことはフラスコの上部にある残留エマルジョンにおける初期レベルの含水率を下回る含水率を示す。また、ILは、系の解乳化を促進し、その効果はマイクロ波の作用により増進される。
【0090】
(例5)
本例は、この報告において上で記載した添加方法c)に従って反応器に挿入された2つの試料においてomimBF4イオン性液体及びD942解乳化剤を使用するマイクロ波加熱系の使用を示す。
【0091】
エマルジョンにおけるD942解乳化剤の濃度は、0.056μL/gである。これらのエマルジョンにおいて用いられる分散相は、以下の初期特性をもたらす蒸留水である。
−D942による実験:含水率=32.2%及びD(0.5)=3.2μm。
−omimBF4による実験:含水率=34.6%及びD(0.5)=3.5μm。
【0092】
乳化剤が添加されるD492試験において、解乳化剤の性能に対する従来の方法及びマイクロ波加熱方法の効果を比較する目的で従来の加熱試験を行う。
【0093】
他の例のように、omimBF4イオン性液体及びD942A(その中のAは、エマルジョンに塩類が添加されないで実験が行われることを示す)による試験に亘ってマイクロ波反応器の赤外線センサ及びガス膨張センサにより与えられる電力印加曲線及び加熱曲線は、IRセンサの温度を増加させることにより化学添加剤を添加するフラスコ1及び5内の遊離水の形成を示す。化学添加剤の添加は、これらの試験において用いられる条件の下での遊離水の形成に不可欠である。加熱曲線において観察される結果を、各フラスコ内で得られた分離の効率を決定することにより試験終了時に確認する。フラスコ3及び7は両試験において遊離水形成を示さず、重力沈降のプロセスも開始しない。しかし、化学添加剤を有するフラスコ1及び5においては、両試験についての遊離水の形成及び高効率が言及される。
【0094】
以下の表5に、別々のフラスコについての初期及び最終の含水率と分離効率とを列挙する。
【表5】
【0095】
上の表5において、化学添加剤を使用する場合、主に使用された添加剤がD942乳化剤である場合、両試験において達成された効率は非常に高いことが言及される。この点で、解乳化剤の性能はわずかに優れている。高効率は、D942Aによる試験における合成エマルジョンに基づくD942解乳化剤を使用する従来の加熱試験においても認められる。
【0096】
この試験の効率は結果として83.4%の値になり、したがってこれはマイクロ波加熱による試験において認められたものよりわずかに低く、このことは誘電加熱法が解乳化作用を増進することを示す。
【0097】
初期エマルジョンと、両試験(イオン性液体及び解乳化剤)のためのマイクロ波処理の後のフラスコ3及び7にある非分解エマルジョンの液滴径分布(DSO)は、
図2について認められるものと非常に類似した形態を示し、凝集の開始を伴うが、それは、プロセスの間の重力沈降に十分に非常に大きな直径を有する液滴の形成をもたらすには不十分である。この点で、マイクロ波の印加でさえ遊離水の形成の開始に効果的でないので、前記エマルジョンは十分に安定であると考えることができる。
【0098】
(例6)
本例は、この報告において上で記載された添加方法c)を使用して反応器に挿入される2つの試料においてomimBF4イオン性液体及びD942B解乳化剤(その中のBは、NaClの存在下で添加剤により実験が行われることを示す)を使用するマイクロ波加熱系の使用を示す。これらのエマルジョンにおいて用いられる分散相は、50g/LのNACl濃度を有するブラインである。両試験において、以下の初期特性:含水率=31.5%及びD(0.5)=2.8μmを有する同じエマルジョンを使用する。D942乳化剤の濃度は、0.056μL/gである。
【0099】
例6の試験に亘ってマイクロ波反応器の赤外線センサ及びガス膨張センサにより得られる電力印加曲線及び加熱曲線は、
図1のものと同様の形態を示し、故に示されない。
【0100】
結果は、各フラスコにおいて明示された効率が示される表6のデータにより確認される。ILが添加されたフラスコにおいて遊離水形成が言及されるが、一方でILが添加されないエマルジョンを含有するフラスコにおいては、遊離水形成や重力沈降の開始は認められない。
【0101】
表6において、両方の化学添加剤(IL及び解乳化剤)は、行われた試験において同様の解乳化の結果を生じたことが言及される。エマルジョンにおける分散相としてのブラインの使用は、分散相中においてNaClを用いることのないより以前の試験において用いられたエマルジョンよりも安定なエマルジョンの形成をもたらす。
【表6】
【0102】
安定性の増加は、フラスコ3及び7に挿入された試料についての破壊試験終了時に測定されるDSD(液滴径分布)を用いて立証され得る(この点については、
図3及び4を参照すること)。なお、マイクロ波を介した破壊試験の後で測定されたDSDは、初期エマルジョンの分布と比較した場合、いかなる関連の変化も示さないが、このことは凝集プロセスがまだ開始されていないことを意味する。なお、分散相中においてNaClを用いることのないエマルジョンによる試験において、化学添加剤を用いずにエマルジョンの凝集現象の開始が認められる。エマルジョンの安定性の増加に伴い、分離に対するD942B解乳化剤の性能はより低くなり、これにより、D942A試験(分散相中においてNaClを用いることのないエマルジョン)と比較した場合、解乳化効率はより低くなる。一方で、これらのより安定なエマルジョンについて、イオン性液体の添加により行われた試験は、omimBF4A試験(分散相中においてNaClを用いることのないエマルジョン)において認められたものと同等の性能を示すが、これにより、フラスコ1において添加された試料の特定の場合においても効率がより高くなる。これらの結果は、水相がある割合の塩を含むエマルジョンにおけるILの向上した性能を示す。
【0103】
(例7)
本例は、ホモジナイザにより混合され、溶媒を用いることなくILが添加されたomimPF6イオン性液体を用いるマイクロ波及び従来の加熱の系の使用を示す。従来の加熱系におけるように、マイクロ波反応器内に配置される試料の内の2つにおいてイオン性液体を添加する。このエマルジョンにおいて使用される分散相は蒸留水である。この試験における合成エマルジョンは、以下の初期特性:含水率=50.9%及びD(0.5)=2.5μmを示す。処理時間は30分間である。
【0104】
マイクロ波系におけるILの添加は、約78%の効率で、使用する2つのフラスコにおいて同様の値でエマルジョンの破壊をもたらす。
【0105】
添加されたILで処理されない試料は、重力沈降の開始を示すフラスコの上部の含水率の減少を示すにもかかわらず、遊離水のあらゆる形成を示す。
【0106】
これらの結果は、合成エマルジョンが、エマルジョンに組み込まれる高含水率のため、より以前の試験において使用されたエマルジョンよりも安定でないことを示す。分散相の液滴の数の増加は、液滴とそれらのその後の凝集との間の接触に好都合である。このように、重力の作用により沈降し得るより大きな直径の液滴が形成される。
【0107】
以下の表7は、これらの実験において得られた初期及び最終の含水率と分離効率とのデータを示す。
【0108】
従来の加熱を受けた系について、試料は遊離水形成を示し、プロセスの効率は70.0%であり、それはマイクロ波照射が使用される試験において認められた効率よりもわずかに低いことが明らかである。また、ILは系の解乳化を促進し、その効果はマイクロ波の作用により増進される。
【表7】
【0109】
D942解乳化剤の誘電体加熱曲線
解乳化剤が、イオン性液体について認められるものと同等の加熱速度を有するのかどうかを決定するため、D942乳化剤の試料のマイクロ波加熱試験を行い、水及びイオン性液体についてのより以前の研究において算出された曲線と比較する。
【0110】
加熱試験は、ロータが定電力(1000W及び500W)を維持しながら位置するマイクロ波空洞内の照射から成る。
【0111】
ロータに、位置1で15mLの解乳化剤の試料を充填し、位置3、5及び7で15mLの水の試料を充填する。
図5及び
図6は、関連の3成分:水、IL及びD942についての加熱曲線(温度対時間)を示す。
【0112】
なお、
図5及び6において、研究された温度範囲内のより高い加熱速度を示す化合物はILである。この結果は、500Wの定電力の下で算出される曲線を主に使用して示される。
【0113】
解乳化剤の加熱に関して、両方の試験についておよそ90℃の温度限界に言及することが可能であり、その後、系は、ゼロの加熱速度を達成する。D492解乳化剤の試料において認められた結果は、解乳化剤の可溶化において使用された溶媒の内の1つに起因した可能性があった。
【0114】
解乳化の効率に実質的に影響する別の実験条件は、プロセスの温度である。
【0115】
図7は、別々の処理温度で行われたomimBF4についての試験とomimPF6についての試験との結果のグラフを示す。
【0116】
これらの試験に用いた条件は:30分間の作業時間、30%近くのエマルジョンの含水率、蒸留水の分散相、約3μmの平均液滴径、及び急速な加熱プロファイル、である。明示された加熱プロファイルが、120℃のより高い温度で行われる試験についても、最高3分間で各試験における所望の温度に到達することを可能にすることは、指摘するに値する。
【0117】
図7から、プロセスの温度に伴って処理の効率が増加することが認められる。この効果は、omimPF6により行われる試験についてとりわけ強められる。これらの試験において認められた温度の影響は、凝集速度及び水液滴沈降速度並びに油相の粘度及び中間相のイオン性液体の拡散速度が温度によって広く影響されるに相違なく、それによってより高い温度が適用される場合に急速な解乳化動力学がもたらされるという事実により説明され得る。