(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714891
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/139 20060101AFI20150416BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20150416BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20150416BHJP
F16D 43/21 20060101ALI20150416BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20150416BHJP
【FI】
F16F15/139 D
F16F15/134 A
F16D7/02 A
F16D43/21
B60K6/36ZHV
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-293093(P2010-293093)
(22)【出願日】2010年12月28日
(65)【公開番号】特開2012-141000(P2012-141000A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】594079143
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】道関 文章
(72)【発明者】
【氏名】竹下 仁人
(72)【発明者】
【氏名】山口 正浩
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−106948(JP,A)
【文献】
特開2002−181085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/139
F16F 15/134
F16D 7/02
F16D 43/21
B60K 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車の動力伝達機構を構成する湿式リミッタ付きダンパにおいて、ドライブプレートが連結するフロントカバーとリヤカバーとで構成する外ケース内には潤滑油を満たし、外ケースの外周内側には複数枚のライニングプレートとプレート及び皿バネを有した多板構造のリミッタ部を備え、該リミッタ部の内径側には複数本のダンパスプリングを備えたダンパ部を設け、上記リミッタ部のプレートの外周に設けたスプライン歯を外ケース内周面に形成したスプライン歯と噛み合わせ、またライニングプレート内周に設けたスプライン歯は上記ダンパ部の入力部材外周の連結部に形成したスプライン歯と噛み合わせ、そして、上記ダンパ部の軸方向の位置決めをする為に上記連結部のスプライン歯底には小さい突起を設けて複数のライニングプレート間に位置させ、ダンパ部の中心には出力軸が嵌る軸穴を形成したハブを取着したことを特徴とするリミッタ付きダンパ。
【請求項2】
上記ダンパ部は入力部材となる中央ディスクを、出力部材であって上記ダンパスプリングをバネ収容空間に収容しているAプレートとBプレートにて挟み込んだ請求項1記載のリミット付きダンパ。
【請求項3】
出力部材となるBプレートと入力部材と成る中央ディスク又はダンパスプリングを直列する為の中間部材の間にはフリクション部材を介在し、該フリクション部材にはバネ力を付勢し、上記ダンパスプリングの変形に伴って入力部材と出力部材が相対捩れ回転した時に、一定角度の滑り摩擦を発生するようにした請求項2記載のリミッタ付きダンパ。
【請求項4】
上記中央ディスクをAプレートとBプレートにて挟み込むと共に、A・B両プレートの外周側には僅かな隙間を設けて内周側にてのみ中央ディスクが滑り接触可能とした請求項2、又は請求項3記載のリミッタ付きダンパ。
【請求項5】
概略リング状の上記中央ディスク内周にはバネ押えを設け、隣り合うバネ押え間に2本のダンパスプリングを直列して配置すると共に、両ダンパスプリングの間には上記ハブのフランジに軸支した中間部材の外周に突出するセパレータを介在し、この中間部材の係止溝にフリクション部材の係止片を所定の回転角度の遊びを設けて係合し、出力部材であるBプレート側との間で相対捩れ回転角度が一定以上になった場合に滑り摩擦を発生するようにした請求項2、請求項3、又は請求項4記載のリミッタ付きダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車に取付けることが出来、安定したトルク容量が確保される湿式のリミッタ付きダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車にはリミッタ付きダンパが取付けられ、衝撃トルクを緩和すると共に所定のトルクを超えるとスリップするように設定されている。従って、過大トルクが原因でダンパ及びその他のユニット(変速部)が破損しないような構造と成っている。そこで、一般的なハイブリッド車の場合、モータとエンジンを使い分け、エンジン効率が良い領域ではエンジンが作動するが、これらのトルクは出力軸へ伝達されて車軸を回転駆動している。そして、エンジンから延びるクランクシャフトと上記出力軸との間にはリミッタ付きダンパを介在している。
【0003】
上記リミッタ付きダンパは複数本のダンパスプリングを備え、そして外周部にはリミッタを設けている。リミッタ付きダンパとクランクシャフトとの間にはフライホイールが介在し、リミッタ付きダンパの外周はフライホイールにネジ止めされ、フライホイールの内周はクランクシャフトにネジ止めされている。ハイブリッド車では、エンジンによる走行時やモータによるエンジン始動時に走行負荷やエンジン負荷の変動により過大なトルクが発生することがあり、そこで、過大なトルクが発生した際にはリミッタが働いて滑りを発生する構造と成っている。
【0004】
しかし、従来のリミッタトルクはそのバラツキが大きく、所定のトルクに達しても該リミッタが働かない場合が多い。すなわち、リミッタに設けている摩擦材の摩擦係数(μ)のバラツキが大きいことに起因する。特に、従来のような乾式摩擦材の係合面にはサビが発生することで摩擦係数(μ)が増大し、それに伴いリミッタトルクが極端に大きくなる。その結果、過大なトルクでダンパ及びその他のユニット(変速部)が破損する。
【0005】
従って、従来ではリミッタトルクのバラツキを考慮して、動力伝達機構及び変速機構を設計しなくてはならず、出力軸の外径、及びダンパスプリング等の寸法は必然的に大きくなる。しかし、下限のリミッタトルクはスリップしないようにエンジントルク及びエンジン始動トルク以上は必要である。
【0006】
特開2008−273235号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパ」は、出願人が平成19年4月25日に出願した発明であり、ハイブリッド車の動力伝達機構を構成するリミッタ付きダンパであって、リミッタトルクのバラツキを抑制した構造としている。そこで、ドライブプレートが連結するフロントカバーとリヤカバーとで構成する外ケース内には複数本のダンパスプリングを備えたダンパを設けている。ダンパのディスクの外周には摩擦材を設けた外周プレートを取付けると共に皿バネにて押圧したリミッタプレートで挟み込み、ダンパの中心部には出力軸が嵌る軸穴を形成したハブを取着し、上記外ケース内には潤滑油が充填されている。
【0007】
この他にも、出願人は数件の「リミッタ付きダンパ」に関する特許出願を行なって来ている。
特開2008−273256号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパの取付け構造」
特開2008−274968号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパ」
特開2008−274969号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパ」
特開2009−062022号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパの取付け構造」
特開2009−243535号に係る「リミッタ付きダンパ」
特開2010−106948号に係る「リミッタ付きダンパ」
【0008】
ところで、これらリミッタ付きダンパは湿式であって、外ケース内には潤滑油が充填され、トルク容量を確保する為に外周プレートには湿式の摩擦材が貼着され、該外周プレートにバネ力を付勢する為の皿バネが用いられている。すなわち、皿バネが圧縮されることでバネ力を発生し、摩擦材を貼着した外周プレートをリミッタプレートと外ケースとの間で挟み込むことができる。ここで、該皿バネは一定幅のリング体を成し、軸方向の荷重に対して圧縮されて傾斜角が変化し、より平面に近づく。
【0009】
この際、皿バネのリング体は外周側が引張れて伸び、内周側は圧縮される。何れの変形も弾性域ではあるが、この変形量に基づく皿バネのバネ力は大きく、伝達されるトルク容量はリミッタ付きダンパの組付け誤差にも大きく影響する。特に、皿バネを大きく圧縮変形させて組付ける場合には僅かの誤差で、発生するバネ力の変化は大きくなる。
【0010】
また、皿バネの材料となるバネ材の材質変化によっても圧縮歪みと荷重(応力)の関係は変わってしまう。特に、圧縮量(歪み)が大きくなるにしたがって荷重(応力)の変化は大きくなる。このようなことから、皿バネに作用する荷重を比較的小さくする方が安定した伝達トルク容量が確保される。その為には、小さい荷重で摩擦面を拡大した多板式リミッタを採用することが好ましい。
【0011】
多板式リミッタを備えたリミッタ付きダンパとして特開2008−304008号に係る「トルク変動吸収装置」が知られている。このトルク変動吸収装置は、ダンパ部を外周に配置することで、トルクリミット機能を備えたトルク変動吸収装置の高捩れ性能、ダンピング性能を向上させるとしている。そこで、フライホイールから内周ハブ部材への動力伝達経路にダンパ部、リミッタ部、及びヒステリシス部を有している。
【0012】
従って、リミッタ部はダンパ部より内径側に配置され、その為に所定のトルクを伝達する為には、該リミッタ部を構成する皿バネのバネ力を大きくしなくてはならない。すなわち、リミッタ部を内径側に配置する場合、同じトルク容量を確保する為には該皿バネのバネ力を強化して大きな荷重に耐える必要があり、特開2008−273235号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパ」などに使用される皿バネと同じような上記問題が発生する。
【0013】
【特許文献1】特開2008−273235号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパ」
【特許文献2】特開2008−273256号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパの取付け構造」、
【特許文献3】特開2008−274968号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパ」
【特許文献4】特開2008−274969号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパ」、
【特許文献5】特開2009−062022号に係る「ハイブリッド車用のリミッタ付きダンパの取付け構造」、
【特許文献6】特開2009−243535号に係る「リミッタ付きダンパ」
【特許文献7】特開2010−106948号に係る「リミッタ付きダンパ」
【特許文献8】特開2008−304008号に係る「トルク変動吸収装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、ハイブリッド車に装着される従来のリミッタ付きダンパには上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、十分で安定したトルク容量が確保され、しかも外径寸法を小さくして重量を軽減することが出来るように構成したハイブリッド車用のリミッタ付きダンパを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のリミッタ付きダンパはクランクシャフトのトルクを出力軸へ伝達するに際して、間にダンパとリミッタを介在しており、この基本構造は従来と同じである。外ケースの外周内側にリミッタ部を備え、リミッタ部は多板構造とし、互いに摩擦係合することが出来る複数枚のライニングプレートとプレートを備えている。そして、外ケースとプレートの間には皿バネを介在してバネ力を付勢し、ライニングプレート及びプレートは互いに圧接される。
【0016】
そして、上記リミッタ部のプレートの外周にはスプライン歯を設け、このスプライン歯は外ケースの内周面に設けたスプライン歯と噛み合い、また、ライニングプレート内周にもスプライン歯を設け、このスプライン歯はダンパ部の入力部材外周に設けたスプライン歯と噛み合っている。ここで、ライニングプレートの軸方向位置決めをする為に入力部材の外周に設けた上記スプライン歯底には小さい突起を設けている。
【0017】
ダンパ部には複数本のダンパスプリングをリミッタ部より内径側に備え、ダンパスプリングが伸縮変形することで、入力部材とハブに取付けられる出力部材は相対捩れ回転する。また、ダンパスプリングを直列状態で配列する為に中間部材を回転可能に軸支すると共にセパレータを両ダンパスプリングの間に介在することも出来る。そして、本発明のリミッタ付きダンパは湿式構造とし、その為に外ケースを備えて内部に収容し、外ケース内には潤滑油が満たされる。上記外ケースはフライホイールを兼ねたフロントカバーとリヤカバーとが溶接され、ダンパ部の中心には上記ハブが取着され、このハブに設けた軸穴には上記出力軸が嵌っている。
【0018】
一方、本発明では入力部材又はダンパスプリングを直列する為の中間部材と出力部材との間にフリクション部材を介在し、入力部材と出力部材との間で相対捩れ回転角が一定以上になった場合に滑り摩擦を発生するようにしている。ただし、本発明では入力部材から入力されてハブへ伝達される出力部材の具体的な構造は限定しないことにする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るリミッタ付きダンパは外ケースに収容されると共に、外ケース内には潤滑油が満たされた湿式構造であり、その為に該リミッタ部の摩擦材は常に一定の摩擦係数となる。すなわち、摩擦材係合面にサビ付きはなく、リミッタトルクのバラツキを抑えることが出来る。そして、リミッタ部は皿バネを外ケースとの間に介在して複数枚のライニングプレートとプレートを有す多板構造としていることで摩擦面は増大し、皿バネを大きく圧縮してバネ力を増大しなくても発生する摩擦力は大きくなり、必要な伝達トルク容量は確保される。
【0020】
すなわち、皿バネの圧縮変形量を抑えることで安定したバネ力が発生する為に、必要とする伝達トルク容量がバラ付くことなく確保される。しかも、本発明のリミッタ付きダンパはリミッタ部が外ケース外周内側に配置されることで、同じ伝達トルクに対してのリミッタ部に作用する荷重は小さくなり、トルク容量を安定させる大きな要件となる。このように、リミッタ部を外ケース外周内側に配置すると共に多板構造としている為に、該リミッタ部を収容する外ケース外径を小さくコンパクト化することが可能となり、ハイブリッド車両に搭載し易く、また回転に伴う消費エネルギーは少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るリミッタ付きダンパを示す実施例。
【
図4】リミッタ付きダンパの一部断面を含む平面図。
【
図5】本発明に係るリミッタ付きダンパを示す他の実施例。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明に係るリミッタ付きダンパを示す実施例であり、断面図を表している。同図の1はリミッタ部、2はダンパ部、3は外ケースを夫々示している。上記ダンパ部2はトルクコンバータに使用されるものと基本構造は同じであり、複数のダンパスプリング4,4・・を備え、各ダンパスプリング4,4・・はAプレート5とBプレート6によって挟まれると共に、Aプレート5とBプレート6に形成したバネ収容空間7に収容されている。
【0023】
そして、Aプレート5とBプレート6はリベットにて組み合わされ、間にはダンパ部2の入力部材である中央ディスク8が挟まれ、上記ダンパスプリング4,4・・・が伸縮変形することで、中央ディスク8とAプレート5及びBプレート6が相対回転を行うことに成る。そして、中央ディスク8はAプレート5とBプレート6にて挟み込まれると共に、A・B両プレート5,6の外周側には僅かな隙間を設けて内周側にてのみ中央ディスクが滑り接触可能としている。従って、中央ディスク8とA・B両プレート5,6間で発生する相対回転に伴うヒステリシスのバラツキを抑え、しかも振動を抑制することが出来る。
【0024】
そして、中間部材9が上記円盤状中央ディスク8の内径側に配置されて、対を成して配列した2本のダンパスプリング4,4の間に該中間部材9のセパレータ18が介在することで直列状態に連結している。また、中央ディスク8の外周はL形に屈曲して連結部10が形成され、この連結部10は上記リミッタ部1と連結している。
【0025】
ところで、リミッタ部1はエンジンから外ケース3に入力されたトルクをダンパ部2へ伝達し、しかし一定以上の大きな衝撃トルクが発生した場合にはスリップすることが出来る構造としている。該リミッタ部1は
図2に詳細図を示すように、皿バネ11、プレート12a,12b、ライニングプレート13a,13bを有し、リング状のプレート12a,12bの外周に設けたスプライン歯は外ケース3の内周に形成しているスプライン歯14と噛み合い、またリング状のライニングプレート13a,13bの内周に形成したスプライン歯は中央ディスク8の連結部10の外周に形成したスプライン歯15と噛み合っている。
【0026】
ライニングプレート13a,13bの両面には摩擦材が貼着され、皿バネ11のバネ力の作用でプレート12a,12bとライニングプレート13a,13bは互いに圧接している。従って、外ケース3の回転トルクは該リミッタ部1を介して中央ディスク8へ伝達される。しかし、トルクが一定以上になるとプレート12a,12bとライニングプレート13a,13bとはスリップすることが出来る。ここで、連結部10のスプライン歯15の歯底には突起16が設けられ、両ライニングプレート13a,13bによって該突起16が挟まれることで、ダンパ部2の軸方向の位置決めがされる。
【0027】
皿バネ11は一定幅のリング体であり、無荷重の時には僅かに傾斜しているが荷重が作用して圧縮度が大きくなるとより平坦化し、プレート12a,12b及びライニングプレート13a,13bを皿バネ11のバネ力によって押圧している。本発明ではリミッタ部1を多板構造としていることで、同じ大きさのバネ力にて発生する摩擦力は大きくなり、その結果、伝達することが出来るトルク容量は拡大する。従って、トルク容量に変化がなければ皿バネ11の圧縮にて作用するバネ力は小さくて済む。すなわち、小さい圧縮で所定の摩擦力を発生して必要なトルク容量を確保することが出来る。
【0028】
中央ディスク8はリング状を成し、その内周には
図3に示しているようにバネ押え17,17・・が突出し、隣り合うバネ押え17,17の間には2本のダンパスプリング4,4が直列状態を成して配置されている。勿論、2本のダンパスプリング4,4はAプレート5とBプレート6にて形成されているバネ収容空間7に収容されている。そして、この直列したダンパスプリング4,4の間にセパレータ18が介在し、該セパレータ18はハブ19のフランジ20に軸支されているリング状の中間部材9の外周から突出している。従って、ダンパスプリング4,4が圧縮変形することで、ハブ19に取着しているAプレート5及びBプレート6に対して中央ディスク8が相対的に速く回転するが、この場合、中間部材9が回転することで直列している両ダンパスプリング4,4は均等に圧縮変形することが出来る。
【0029】
図4はリミッタ付きダンパの一部断面を含む正面図を表している。外ケース3はフロントカバー21とリヤカバー22とが組み合わされ、その外周が溶接されていて、エンジンのクランクシャフトに取着したドライブプレート23が連結している。外ケース3の中心には軸穴24を有すハブ19が設けられ、Bプレート6の内周部にはハブ19が固定されている。外ケース3はフライホイールとしても機能するフロントカバー21とリヤカバー22が溶接されて構成され、リヤカバー22の中心にはスリーブ25を形成し、該スリーブ25はハブ19と同心を成している。
【0030】
このように、Bプレート6の内周部はハブ19のフランジ20にリベット26,26・・にて固定され、上記中間部材9は該フランジ20の外周に回転可能に軸支され、また、フランジ外周部にはフリクション部材27とワッシャ28が取付けられている。ここで、該フリクション部材27の外周にはL形に屈曲した係止片29,29・・・を有し、これら係止片29,29・・・は中間部材9の内周に設けた係止溝30,30・・・に係止することが出来る(
図3参照)。また、ワッシャ28はその内周にL形に屈曲した係止片31,31・・・を設け、これら係止片31,31・・・はBプレート6の内周部に形成している係止溝に係止している。そして、Bプレート6の内周部とワッシャ28との間には皿バネ32が介在している。
【0031】
従って、該皿バネ32のバネ力がワッシャ28及びフリクション部材27に作用し、フリクション部材27とワッシャ28との相対回転を抑制する摩擦力が発生する。上記のようにワッシャ28の係止片31,31・・・はBプレート6の係止溝に係止し、フリクション部材27の係止片29,29・・・は中間部材9の係止溝30,30・・・に係止していることで、Bプレート6と中間部材9との間の相対回転を抑制する摩擦力を発生することが出来る。
【0032】
中間部材9はダンパスプリング4,4・・の伸縮に伴って回転するが、上記フリクション部材27によってその回転が抑制される。ここで、中間部材9に設けている係止溝30は係止片29より長く、所定の角度は係止片29に規制されることなく回転し、一定角度以上回転したところで係止片29に当接する。すなわち、係止片29は所定の回転角度の遊びを設けて係止溝30に係合することが出来る。
【0033】
ところで、ダンパスプリング4,4・・・の伸縮変形に伴って中間部材9が所定の角度以上回転し、フリクション部材27の係止片29,29・・・に係止溝30、30・・・の先端が当接するならば、中間部材9と共にフリクション部材27が回転する。しかし、該フリクション部材27には皿バネ32のバネ力が付勢されて、回転する際にはワッシャ28との間で所定の滑り摩擦力が伴う。従って、ダンパスプリング4,4・・・の伸縮変形と共に、フリクション部材27の滑り摩擦によって大きな衝撃トルクが緩和・吸収される。その為に、ダンパスプリング4としてはバネ定数の比較的低いものを用いることも可能と成る。
【0034】
一方、
図4に示しているように、フロントカバー17にはその外周部にセットブロック33,33・・・が溶接され、これらセットブロック33,33・・・にはドライブプレート23がネジ止めにて取付けられ、該ドライブプレート23はクランクシャフト(図示なし)と連結される。そして、フロントカバー21の中心にはクランクシャフトのセンター穴に嵌るセンター部34が設けられている。従って、クランクシャフトのトルクは上記ドライブプレート23を介して外ケース3へ伝達され、リミッタ部1及びダンパ部2を回転することが出来る。
【0035】
ところで、普通の衝撃トルク及びトルク変動はダンパスプリング4,4・・の伸縮変形によって吸収され、そしてダンパスプリング4,4・・の伸縮変形量が大きくなった場合には、ダンパスプリング4,4・・・の伸縮変形に伴って回転する中間部材9の回転がフリクション部材27にて抑制される。すなわち、該衝撃トルクの一部はフリクション部材27の摩擦回転によって吸収される。さらに大きな衝撃トルクが発生した場合には、ダンパ部2に設けている補助ダンパスプリング35,35・・にて緩和される。
【0036】
そして、さらに大きなトルクが入力した場合、ダンパ部2のダンパスプリング4,4・・・及び補助ダンパスプリング35,35・・・は伸縮変形するが、上記リミッタ部1が作動して空転する。本発明では外ケース3内に潤滑油が満たされており、リミッタ部1が空転するリミットトルクはほぼ一定となる。すなわち、潤滑油にてプレート13a,13bの摩擦材係合面がサビ付くことはなく、常に一定の摩擦係数が保たれる。又、本発明に係るリミッタ付きダンパは外ケース3内に潤滑油が満たされることで、外ケース3の内部に設けているダンパ部2を構成する中央ディスク8、Aプレート5、Bプレート6、中間部材9、ダンパスプリング4,4・・、及びフリクション部材27などを潤滑することが出来る。
【0037】
図1に示したリミッタ付きダンパの実施例では、ダンパ部2の入力部材である中央ディスク8は出力部材と成るAプレート5とBプレート6によって挟まれ、複数のダンパスプリング4,4・・・を介して連結した構造としている。しかし、本発明では上記入力部材及び出力部材の具体的な構造は
図1に示す場合に限定しないことにする。また、連結部10のスプライン歯15の歯底には突起16が設けられ、両ライニングプレート13a,13bによって該突起16が挟まれることで、ダンパ部2の軸方向の位置決めがされる。
ただし、ダンパ部2を位置決めする手段として連結部10のスプライン歯底に突起16を設ける場合に限るものではなく、連結部外周に形成した溝にワッシャを嵌めることも可能である。
【0038】
図5は本発明に係るリミッタ付きダンパを示す他の実施例である。同図の1はリミッタ部、2はダンパ部、3は外ケースを夫々示しており、その構造は前記
図1に示したリミッタ付きダンパと共通している。しかし、リミッタ付きダンパでは、クランクシャフトと連結する為のドライブプレート38の構造を異にしている。すなわち、ドライブプレート38はその外周にフライホイール36を溶接して組み合わせて構成している。
【0039】
このように、ドライブプレート外周にフライホイール36を取着してフロントカバー21と連結することで、リミッタ付きダンパ全体の強度が向上すると共にイナーシャが増し、しかし、内径側は板材で形成したドライブプレート38である為に大幅な重量の増加は抑えられる。このように、ドライブプレート外周にフライホイール36を取着してイナーシャを増すことで車両振動を抑制する効果も得られる。ここで、ドライブプレート外周にフライホイール36を取着する手段と同図に示す溶接に限ることなく、リベット止めする場合もある。そして、溶接する場合には、ドライブプレート38の外周に成形したフランジ37の変形を考慮し、同図のようにリヤ側を溶接する方が好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 リミッタ部
2 ダンパ部
3 外ケース
4 ダンパスプリング
5 Aプレート
6 Bプレート
7 バネ収容空間
8 中央ディスク
9 中間部材
10 連結部
11 皿バネ
12 プレート
13 ライニングプレート
14 スプライン歯
15 スプライン歯
16 突起
17 バネ押え
18 セパレータ
19 ハブ
20 フランジ
21 フロントカバー
22 リヤカバー
23 ドライブプレート
24 軸穴
25 スリーブ
26 リベット
27 フリクション部材
28 ワッシャ
29 係止片
30 係止溝
31 係止片
32 皿バネ
33 セットブロック
34 センター部
35 補助ダンパスプリング
36 フライホイール
37 フランジ
38 ドライブプレート