【実施例】
【0057】
安定化した二酸化塩素が単一の口腔細菌および混合細菌懸濁液に及ぼす殺菌特性を試験するために、特定濃度(0.1%〜0.8%(w/v)の濃度範囲)の溶液をインビトロで、細菌を含むアッセイにおいて試験した。実験には、着香剤無添加および着香剤添加の両方の口内リンス溶液の試験が含まれていた。
【0058】
安定化した二酸化塩素の静菌特性を試験するために、0.1%(w/v)濃度の安定化した二酸化塩素を含む溶液をインビトロで口腔細菌について試験した。
【0059】
材料:
アクチノマイセス・ビスコーサス ATCC 43146
アクチノマイセス・オドントリチカス ATCC 17929
カンピロバクター・レクタス ATCC 33238
エンテロコッカス・フェカーリス ATCC 10741
フソバクテリウム・ヌクレアタム ATCC 49256
ミクロモナス(ペプトストレプトコッカス)・ミクロス ATCC 33270
ポルフィロモナス・ジンジバリス ATCC 49417
プレボテラ・インターメディア ATCC 25611
ストレプトコッカス・サングイニス ATCC 10556
ストレプトコッカス・オラーリス ATCC 35037
着香剤を含む口内リンス
着香剤を含まない口内リンス
Difco(商標)中和ブロス(約800mL)
強化TSBYE(約400mL)
人工唾液+5%トリプトン+5%酵母エキス(約2,500mL)(AS+T+Y)
0.147g/L 塩化カルシウム(CaCl
2)
0.426g/L リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)
1.68g/L 炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)
90〜50mL遠心管
25mL、10mL、5mLおよび0.1mLピペット
ピペットエイドピペッター
9個の無菌エルレンマイヤーフラスコ
無菌試験管
39−各選択寒天、合計312のプレート用(48時間、前還元したもの)
最適増殖培地および選択寒天(培地を24時間、前還元したもの):
CRブロスおよびCR寒天−カンピロバクター・レクタス
BHIBブロスおよびBHIB pH=9.6寒天−エンテロコッカス・フェカーリス
TSBYEインベルターゼ処理ブロスおよびMSss/MSN寒天−ストレプトコッカス・サングイニスおよびストレプトコッカス・オラーリス
シェードラー(Schaedler)ブロスおよびCVE寒天−フソバクテリウム・ヌクレアタム
PmブロスおよびMSCN寒天−ミクロモナス・ミクロス
PgブロスおよびBPB+MUP寒天−ポルフィロモナス・ジンジバリス
BHIBブロスおよびCFAT+MUP寒天−アクチノマイセス・ビスコーサス
ETSBYE−すべての細菌用
血液寒天
安定化した二酸化塩素リンスの殺菌活性の測定を、歯肉炎、歯周の疾患および健康状態に関連する個々の口腔細菌の懸濁液について実施した。下記の細菌を個々にマイクロタイタープレートアッセイシステムによりアッセイした:ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、フソバクテリウム・ヌクレアタム、ミクロモナス・ミクロス、アクチノマイセス・ビスコーサス、アクチノマイセス・オドントリチカス、ストレプトコッカス・サングイニス、ストレプトコッカス・オラーリス、カンピロバクター・レクタスおよびエンテロコッカス・フェカーリス。
【0060】
実験に用いた細菌は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)分離株であり、最初に口腔感染症から得られた。すべての細菌がクリオライブラリーとして−90℃で永久保存されている。
【0061】
初代培養物をその種に適した標準強化培地で嫌気チャンバー(Coy)内において37℃で48時間、増殖させた。細胞を遠心により収穫し、前還元した無菌培地で2回洗浄した。細胞を前還元した無菌培地に懸濁し、細胞濃度と分光分析による吸光度との標準曲線に基づいて標準濃度に調整した。
【0062】
殺菌アッセイをマイクロタイタープレート設定で実施した。アッセイ成分は、標準化した細菌懸濁液(出発細胞濃度10
6〜10
7CFU/mL)、抗菌剤希釈液、および無菌培地からなっていた。無菌蒸留水に希釈したある範囲の濃度のリンスを用いた。陽性対照は0.12%クロルヘキシジンからなり、陰性対照は無菌蒸留水(dH
2O)であった。多数回の実験において、着香剤もアッセイに際して含有させた。
【0063】
マイクロタイタープレートをアッセイ時点間は嫌気チャンバー内でインキュベートした。試料を種々の期間で取り出して、Spiral Plate 4000システムを用いるらせん平板培養法により生存細胞数を測定するために処理した。らせん平板培養システムを用いて、細菌細胞数および抗菌薬感受性の程度を測定した。1、5および10分間の曝露時間について観察した。
【0064】
統計分析を実施する前にデータを正規化するために、粗微生物数をまずlog
10値に換算した。これは標準法であり、抗菌アッセイにおいて細菌数を評価するために広く用いられている。データを大部分は一元分散分析(ANOVA)により分析した。場合により、不等分散が生じた際にはノンパラメトリック クルスカル−ウォリス(Kruskall−Wallis)ANOVAによってもデータを分析した。前者の場合、統計的有意性がみられた際には、グループ間の差を判定するためにチューキー−クレイマー事後検定(Tukey−Kramer post−test)を行なった。後者の場合、ダンの多重比較検定(Dunn’s multiple comparison’s test)を行なった。統計的有意性をα=0.05に設定した。データをスチューデントのt−検定により分析した。
【0065】
グラム陰性嫌気性菌における全般的傾向を観察して、これらの細菌は0.1%(w/v)濃度の安定化した二酸化塩素リンスに対して、より感受性であった(データは示していない)。1分間曝露後の生存細胞数の減少がフソバクテリウム・ヌクレアタムについてみられたが、データは統計的に有意ではなかった。同様に、生存細胞の減少がポルフィロモナス・ジンジバリスについてみられた。しかし、10分間曝露の実験では接種菌の完全な死滅がみられた。
【0066】
嫌気性グラム陰性菌プレボテラ・インターメディアについては、わずかに異なる感受性プロフィールがみられた。統計的に有意の生存細胞数減少が1および5分間曝露の両方についてみられ、5分間で完全な死滅が起きた。
【0067】
カンピロバクター・レクタス実験からの結果は、口内リンス濃度に1分間曝露すると統計的に有意の生存細胞数減少がアッセイにおいて生じることを示す。この口内リンスは、カンピロバクター・レクタス(嫌気性グラム陰性菌)に対する1分間の曝露で>95%の死滅をもたらした。
【0068】
結論として、このリンスはグラム陰性嫌気性口腔細菌に対して細菌の生存性に対する強い作用を示した。さらに、これらの細菌を、歯周の疾患および感染症の発症および進行と関連する多菌混合物において試験した。
【0069】
多菌混合物の組成は、健康状態および疾患と関連する菌を含むように設計された(前記の個々の口腔細菌懸濁液の試験に用いたものと同じ細菌からなる)。
【0070】
この実験の目的は、混合細菌懸濁液を複数の時点で(0、17および36時間目)0.1%から0.8%(w/v)までの範囲の濃度の口内リンスに1分間曝露した際に懸濁液に対する殺菌作用があるかを判定することであった。下記の方法は0.4%(w/v)の口内リンス濃度について詳述したものであり、0.1%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%および0.8%(w/v)濃度を含む他の濃度については、それに応じてこれを変更した。
【0071】
実施した試験は、個々の細菌について行なったものと同様であり、口内リンスを混合細菌懸濁液に対して評価したにすぎない。それぞれの細菌(好気性菌については0.1mL、嫌気性菌については0.5mL)を50mLの最適増殖培地に接種し、24時間(好気性菌)および48時間(嫌気性菌)インキュベートした。インキュベーション期間が終了すると、25mLの細菌原液を7500×重力(7500×g)で10分間遠心し、25mLのETSBYEに再懸濁した。これらの再懸濁液からETSBYE中へ2回の10
−2希釈を行なった(0.1mLの再懸濁液を10mLのETSBYE中に)。元の増殖培養物のCFL/mLを求めるために、2回目の希釈液を血液寒天で平板培養した。混合懸濁液についてフソバクテリウム・ヌクレアタムの出発濃度を確認するために、3.5mLの初期培養物を6.5mLのシェードラーブロスに添加した。次いでこれを10
−2および10
−4希釈し、血液寒天およびCVE寒天でらせん平板培養した。
【0072】
次表は、35mLの1.2×10
8CFU/mL混合培養物懸濁液を作成するために添加した各細菌の容量を示す。混合懸濁液が作成されると、この懸濁液を10
−2および10
−3希釈し、それぞれ選択寒天および血液寒天でらせん平板培養した。A660は660nmにおける吸光度であり、これにより懸濁液中の細胞数を判定する。
【0073】
【表1】
【0074】
E. faecalis エンテロコッカス・フェカーリス
S. oralis ストレプトコッカス・オラーリス
S. sanguinis ストレプトコッカス・サングイニス
A. viscosus アクチノマイセス・ビスコーサス
C. rectus カンピロバクター・レクタス
F. nucleatum フソバクテリウム・ヌクレアタム
M. micros ミクロモナス・ミクロス
P. gingivalis ポルフィロモナス・ジンジバリス
*−−細菌がフラスコの底に付着したのでA660がきわめて低かった。フラスコの底を無菌ループで掻き取ってそれらを懸濁させると、そのアッセイのCFU/mL数は予想どおりになった;
**−−A660による濃度が2倍に見えたが、標準曲線によればわずかな差があり、したがってこの実験は予め計算したとおりに行なわれた。
【0075】
着香剤添加および無添加口内リンスの試験管を一緒に三重試験法で試験し、dH
2OおよびETSBYEの試験管(対照)を一緒に三重試験法で試験した。各管を下記に従って調製した:細菌懸濁液を添加し、遠心管を1分間ボルテックス撹拌した。この1分間の曝露の直後に、22mLを取り出し、22mLの中和ブロスを入れた遠心管に添加した。次いでこの遠心管を30秒間ボルテックス撹拌した。遠心管を還元し、次いで8,000×gで10分間遠心した。上清を取り出し、44mLの前還元したAS+T+Yを添加した。次いで遠心管を8,000×gでさらに10分間遠心した。上清を再び取り出し、3mLのAS+T+Yを添加した。10
−2希釈を行ない、選択寒天上にらせん播種した。次いで遠心管を37℃のインキュベーター内で17時間、嫌気的にインキュベートし、そして、その処理を繰り返した。この処理を0、17および36時間目に行なった。
【0076】
前記で実施した試験と同様に、マイクロタイタープレートをアッセイ時点間は嫌気チャンバー内でインキュベートした。種々の時点で試料を取り出して、Spiral Plate 4000システムを用いるらせん平板培養法により生存細胞数を測定するために処理した。
【0077】
前記の個々の細菌懸濁液の試験について行なったものと同じ方法で統計分析を実施した。
【0078】
多菌懸濁液に対する0.1%(w/v)濃度の口内リンスの作用についての結果を
図1に示す。グラム陰性嫌気性歯周病原菌であるカンピロバクター・レクタスの完全死滅が、0.1%(w/v)濃度の口内リンスへの2回目(17時間目)の曝露後に起きた。フソバクテリウム・ヌクレアタムおよびポルフィロモナス・ジンジバリスを含めた他の被験細菌の生存細胞数も有意に減少した。
図2は蒸留水曝露の対照を示す;これは、
図1と比較した場合に多菌細菌の死滅に対する口内リンスの有意の作用を指摘する。口内リンス溶液中に着香剤を含有させて実施した試験は、2回目の曝露後にカンピロバクター・レクタスおよびポルフィロモナス・ジンジバリスの両方の完全死滅を示した(データは示していない)。
【0079】
普通は口腔の健康状態に関連するグラム陽性菌は、0.1%(w/v)濃度の口内リンスでは複数回曝露計画後にほとんど変化を示さなかった。しかし、より高い濃度のリンス(0.4、0.5、0.6および0.8%)は、これよりはるかに高いレベルの殺菌活性を示した。これらの濃厚リンスに多菌懸濁液を曝露すると、すべてのグラム陰性菌およびグラム陽性菌が2回目の曝露直後に完全に死滅した。
【0080】
結果は、多菌懸濁液中の嫌気性グラム陰性歯周病原菌は安定化した二酸化塩素口内リンスへの複数回の短時間曝露に対して著しく感受性であることを示した。
図3に示すように、0.4%(w/v)の口内リンスはきわめて強い殺菌活性を示し、多菌懸濁液中のすべての細菌のレベルに有意の減少を生じた。より詳細には、4種類のグラム陽性菌(ストレプトコッカス・サングイニス、エンテロコッカス・フェカーリス、ストレプトコッカス・オラーリス、およびアクチノマイセス・ビスコーサス)のみが口内リンスへの初回曝露で生存した。重要なことに、ポルフィロモナス・ジンジバリス、フソバクテリウム・ヌクレアタムおよびカンピロバクター・レクタスなどのグラム陰性嫌気性菌は、口内リンスへの初回曝露後に完全に排除された。
【0081】
0.3%(w/v)リンスについての殺菌活性レベルは、0.1%(w/v)濃度のリンスときわめて類似していた(データは示していない)。0.4%(w/v)以上の濃度の口内リンスに応答して細菌生存量が急激に増加するので、この出来事はこの口内リンスによる細菌に対する指数的な死滅作用であると考えられる。この結果は、0.4、0.5、0.6および0.8%口内リンス試験からの結果を表わす図に表わされる。着香剤を含む、または含まない0.5%濃度の安定化した二酸化塩素では、
図4および6に示すように36時間をかけた複数回曝露後に多菌懸濁液中のすべての細菌の完全な死滅が生じる。
図4に示すように、2種類の口腔細菌のみが初回曝露後に生存し、17時間後の2回目の曝露で完全に死滅排除された;これら2種類の細菌はエンテロコッカス・フェカーリス(グラム陽性嫌気性菌)およびアクチノマイセス・ビスコーサス(グラム陽性好気性菌)であった。これらの有意差を明瞭に比較および観察するために、安定化した二酸化塩素への曝露により得られた結果を
図5および7に示す蒸留水曝露の対照と比較することができる。
【0082】
図8〜11は、着香剤を含む、または含まない(着香剤添加および無添加)0.6%および0.8%(w/v)濃度の口内リンスの殺菌活性を示す。0.6%濃度の口内リンスは、混合細菌懸濁液中のすべての細菌を着香剤無添加の口内リンス中での初回曝露後に完全に死滅させた。着香剤添加した口内リンス中での初回曝露で生存した唯一の細菌は、グラム陽性菌アクチノマイセス・ビスコーサスであった。しかしこの細菌は、17時間後の2回目の曝露後に死滅した。
図9に示すように、dH
2OおよびETSB−YE対照も0.6%リンスと共に分けて示す。対照には生存細胞があったことが分かる。
【0083】
試験した最高濃度0.8%(w/v)では、それぞれ
図10および11に示すように、着香剤添加および無添加の両方の口内リンスにおいて初回曝露後に生存細菌の徴候がなかった。この場合も、両図中の対照を口内リンスと比較することができる。
【0084】
結論として、0.8%(w/v)に及ぶ濃厚な安定化した二酸化塩素口内リンスは、グラム陰性嫌気性菌およびグラム陽性好気性菌/嫌気性菌に対する高レベルの殺菌活性をもつ。これらの結果は、口内リンスの殺菌作用と濃度との上昇ステップ関数関係を立証する。0.4%以上で多菌懸濁液において細菌死が有意に増大する。口腔細菌に対する0.1%および0.3%濃度の口内リンスから0.4%濃度の口内リンスへの作用の変化からみて、直線的な増大が起きるのではないと思われる。
【0085】
安定化した二酸化塩素リンスがポルフィロモナス・ジンジバリスなどの口腔細菌に及ぼす静菌作用を立証するために、歯垢の再増殖実験を実施した。アッセイ濃度10
6〜10
8CFU/mLに調整したポルフィロモナス・ジンジバリス懸濁液を0.1%(w/v)濃度の口内リンスに1分間曝露した。懸濁液を直ちに新鮮な培地中に希釈し、次いで嫌気チャンバー内において37℃でインキュベートした。
【0086】
安定化した二酸化塩素口内リンスは有効な静菌剤であって48時間にわたって口腔細菌の増殖を阻害することが証拠により示唆される。二酸化塩素の静菌特性は、それが外因性および内因性のタンパク性物質、口腔上皮、食物屑ならびに唾液の分解を阻止するのに有効な溶液であることを示す。最も重要なことであるが、これは歯垢および揮発性硫黄化合物の発生を制限するであろう。
【0087】
蒸留水または新鮮な培地に曝露した細胞は正常な増殖速度を示し、36時間のインキュベーション後に高い吸光度に達した。しかし、口内リンスに曝露した細胞は、着香剤添加および無添加のいずれであっても、48時間を超えて増殖することはできなかった。この作用はポルフィロモナス・ジンジバリスについて10
6〜10
7CFU/mLでみられた。ポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖阻害を、
図12に着香剤無添加0.1%(w/v)濃度口内リンスの結果として示す。得られたデータに基づいて、口内リンスへの短期間曝露がグラム陰性歯周病原菌ポルフィロモナス・ジンジバリスに対して有意の静菌作用をもつことが認められた。他の口腔細菌に対しても有効であると思われる。
【0088】
口内リンスへの着香剤添加も、ポルフィロモナス・ジンジバリス増殖を阻害する同じ作用をもつ(データは示していない)。着香剤は通常は殺菌特性をもつことが知られており、その作用がこれらの試験で認められた。さらに、着香剤は安定化した二酸化塩素口内リンスと共に使用した際に有益な効果をもつと判定できる。