特許第5714905号(P5714905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5714905運搬道路条件を改善するためのシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714905
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】運搬道路条件を改善するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/00 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   E01C23/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-528900(P2010-528900)
(86)(22)【出願日】2008年10月10日
(65)【公表番号】特表2011-500991(P2011-500991A)
(43)【公表日】2011年1月6日
(86)【国際出願番号】US2008011679
(87)【国際公開番号】WO2009048622
(87)【国際公開日】20090416
【審査請求日】2011年8月29日
(31)【優先権主張番号】11/974,240
(32)【優先日】2007年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【復代理人】
【識別番号】100115624
【弁理士】
【氏名又は名称】濱中 淳宏
(74)【復代理人】
【識別番号】100187698
【弁理士】
【氏名又は名称】坂巻 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100077481
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100088915
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 和夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョニー アール.グレイナー
(72)【発明者】
【氏名】リュー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バービン ジェイ.ヴィヤス
【審査官】 ▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−116029(JP,A)
【文献】 特開2008−197860(JP,A)
【文献】 特開2009−068239(JP,A)
【文献】 特開2007−072667(JP,A)
【文献】 特開2004−162388(JP,A)
【文献】 特開2007−122701(JP,A)
【文献】 特開2006−112127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00
E01C 23/00
E01C 23/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬道路面条件を改善する方法であって、
運搬経路上で動作する少なくとも1つの機械に関連する性能データを収集する工程と、
性能データに基づき少なくとも1つの機械のそれぞれに関する転がり抵抗を決定する工程と、
前記運搬経路の一部に関連する以前に格納された前記少なくとも1つの機械のそれぞれに関する転がり抵抗と、前記運搬経路の一部の少なくとも1つの機械のそれぞれに関する現在の転がり抵抗を平均化する平均転がり抵抗を決定する工程と、
前記少なくとも1つの機械に関する平均転がり抵抗が、前記運搬経路の一部が正常に働いているかどうかを判定する閾値抵抗値を越えた場合、前記運搬経路の一部を異常であると特定する工程と、
前記異常であると特定された運搬経路の一部に対する前記平均転がり抵抗を低減するための改修提案を生成する工程と、
前記改修提案に基づき少なくとも1つの機械の性能をシミュレートする工程と、
模擬性能の結果を出力する工程と、
前記改修提案を実施する工程と、を含み、
前記性能データを収集する工程は、少なくとも1つの機械に関連する駆動軸トルクとGPSデータを収集することを含み、
前記少なくとも1つの機械のそれぞれに関する転がり抵抗を決定する工程は、
前記機械に関連する有効積算勾配を駆動軸トルクに基づき計算することと、
前記少なくとも1つの機械が位置する地形の実際勾配をGPSデータに基づき推定することと、
前記少なくとも1つの機械のそれぞれに関する転がり抵抗を少なくとも1つの機械に関連する有効積算勾配と少なくとも1つの機械が位置する実際勾配に基づき計算することと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記改修提案を実施する工程に関連する費用を過去に実施された類似の運搬経路の改修提案に関連する費用データに基づき推定する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記模擬性能の結果を出力する工程は、1つまたは複数の改修提案と、模擬性能の結果と、改修提案を実施する工程に伴う見積り費用と、を含む運搬経路改修報告を生成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
作業環境内で動作する機械とデータ通信を行うとともに、少なくとも1つの機械に関連する性能データを収集するように構成された状態監視システムと、
前記状態監視システムと通信で結合されるとともに、前記性能データに基づき少なくとも1つの機械のそれぞれに関する転がり抵抗を決定するように構成されたトルク推定器と、
前記トルク推定器および前記状態監視システムと通信で結合された性能シミュレータと、を含む運搬経路管理システムであって、
前記性能シミュレータは、前記運搬経路の一部に関連する以前に格納された前記少なくとも1つの機械のそれぞれに関する転がり抵抗と、前記運搬経路の一部の少なくとも1つの機械のそれぞれに関する現在の転がり抵抗とを平均化する平均転がり抵抗を決定し、前記少なくとも1つの機械に関する平均転がり抵抗が、前記運搬経路の一部が正常に働いているかどうかを判定する閾値抵抗値を越えた場合、前記運搬経路の一部を異常であると特定し、前記異常であると特定された運搬経路の一部に対する前記平均転がり抵抗を低減するための改修提案を受信し、前記改修提案に基づき少なくとも1つの機械の性能をシミュレートし、模擬性能の結果を出力するように構成され、
前記性能データは少なくとも1つの機械に関連する駆動軸トルクとGPSデータを含み、
前記少なくとも1つの機械のそれぞれに関する転がり抵抗を決定する工程は、
前記機械に関連する有効積算勾配を駆動軸トルクに基づき計算することと、
前記少なくとも1つの機械が位置する地形の実際勾配をGPSデータに基づき推定することと、
前記少なくとも1つの機械のそれぞれに関する転がり抵抗を少なくとも1つの機械に関連する有効積算勾配と少なくとも1つの機械が位置する地形の実際勾配に基づき計算することと、を含む、運搬経路管理システム。
【請求項5】
前記状態監視システムは、機械の搭載データ収集器に無線で結合され、機械の動作中に搭載データ収集器から性能データを受信するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記性能シミュレータと前記トルク推定器は、同じコンピュータシステム上で動作するように構成された1つのソフトウェアモジュールに含まれる、請求項4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般には運搬経路の運用管理に関し、より詳細には運搬道路条件を改善するためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの作業環境、特に共通タスクを実行するように協働する一団の機械を採用する作業環境では、作業環境の生産性、効率および収益性は様々な相関因子に依存し得る。例えば、鉱区から材料を発掘して生産施設まで輸送するために重機を採用する鉱山環境では、鉱山の生産性は一団の機械のそれぞれの健全性と生産性に直接依存する。輸送車両、運搬車等のあるタイプの機械に関しては、機械生産性はまた作業環境条件(例えば、地形条件、天候状況等)に依存するかもしれない。これは、これらの条件が機械の速度、操作性、および牽引力にしばしば影響を与えるからである。
【0003】
運搬道路における構造的欠陥の早期発見は運搬道路事業の良好な保守に肝要である。これは、機械の重量と、運搬道路に関連する高い交通量は運搬道路面を非常に急速に劣化させる軽微な構造的欠陥をもたらし得るからである。運搬道路の構造的欠陥を検出するために、従来の作業環境の多くは運搬道路監視および維持プログラムを実施する。これらの運搬道路監視および維持プログラムは、目視検査、試運転検査、および必要に応じた緊急検査(例えば、機械オペレータ報告に基づく)等の初歩的な欠陥検出技術を含む。これらの手動方法は時間浪費的でありかつ不便なことに加え、運搬道路欠陥を検知するための信頼性がしばしば低い。例えば目視検査技術はヒューマンエラーの影響を受けやすいであろう。これは目に見えない表面下欠陥および他の問題が察知されずに存在し得るからである。試運転検査は、目視検査よりいくぶん信頼できるが、運搬経路が通常動作中に経験する交通および荷重条件をシミュレートするのにしばしば有効ではない。これは、これらの試験は試験の実行中の運搬道路を遮断することをしばしば指示するからである。機械オペレータ報告に基づく緊急検査は通常、運搬道路欠陥が現れた後にそれを検知するだけであり、これは予防保守手順を実施するにはしばしば遅すぎる。したがってタイムリーに運搬道路欠陥を効果的に検知して是正するためには、運搬道路欠陥を特定し、かつこれらの欠陥を解決するための是正処置を決定する自動システムが必要であろう。
【0004】
時間浪費的な手動検査技術に依存することなく運搬道路条件の変化を効率的に特定するための1つの従来手法はSchricker社による(特許文献1)に記載されている。(特許文献1)では、道路に沿って移動する1つまたは複数の機械から複数のパラメータを感知することにより道路の状態の変化を検出する方法について記載されている。1つまたは複数の機械のそれぞれの抵抗係数を計算するとともに一団の機械の平均抵抗係数を決定するために、感知されたパラメータを使用することができる。平均抵抗係数が閾値を越えた場合、道路区間の変化(すなわち、欠陥または故障)を特定および/または是正することができる。
【0005】
(特許文献1)に記載の方法等のいくつかの従来方法は、一団の機械の性能に基づく道路条件の変化の検出を可能にすることができるが、ある状況では制限され得る。例えば、これらの従来システムは運搬道路条件の変化を検知することができるが、これらの従来システムは運搬道路条件の変化を是正または対処する予測的解決策を解析する能力を備えていない。その結果、鉱山オペレータおよび/または作業環境管理者は、運搬経路および/またはそれに関連する1つまたは複数の機械の性能、予算および/または長期的な健全性に対する修理および/または改修の影響を完全に理解することなしに、運搬道路修理および/または改修を行う必要がある。
【0006】
また、(特許文献1)に記載されたもののように運搬道路条件の変化を検知するための従来方法の多くは、性能モデルと、ユーザがある機械または運搬道路パラメータに対して変更を行い作業環境における実施の前にこれらの変更を試験することを可能にするシミュレーションソフトウェアと、に統合することができない。その結果、従来システムは運搬道路改善のための試行錯誤的方法に限定されることが多い。この方法では、運搬道路の改善が実施され、そしてこれらの改善の影響はその後の運搬道路事業において判断される。必要に応じ、調整は所望の性能目標が達成されるまで運搬経路性能を段階的に改善するために行われることがある。これらの試行錯誤法は効果的かもしれないが、特に変更/試験工程の何回かの繰り返しが必要な場合、しばしば時間浪費的でありかつ高価である。したがって、費用を管理しつつ運搬道路条件を効果的かつ確実に改善するためには、問題の運搬道路条件を特定するとともに実施に先立って1つまたは複数の運搬道路改善選択肢提案を試験するシステムと方法が必要であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,817,936号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
運搬経路条件を改善するためのここに開示されるシステムと方法は、上に述べられた問題の1つまたは複数を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様によると、本開示は運搬道路面条件を改善する方法に関する。本方法は、運搬経路上で動作する少なくとも1つの機械と関連する性能データを収集する工程と、性能データに基づき少なくとも1つの機械のそれぞれの転がり抵抗を決定する工程とを含む。少なくとも1つの機械のそれぞれの転がり抵抗に基づき平均転がり抵抗を決定することができる。少なくとも1つの機械の平均転がり抵抗が閾値抵抗値を越えた場合、運搬経路の一部は異常であると特定することができる。運搬経路の異常部分に対する改修提案を生成することができ、この改修提案に基づき少なくとも1つの機械の性能をシミュレートすることができる。本方法はまた、少なくとも1つの機械の模擬性能(simulated performance)の結果を出力する工程を含むことができる。
【0010】
別の態様によると、本開示は運搬道路面条件を改善する方法に関する。本方法は、運搬経路上で動作する少なくとも1つの機械に関連する性能データを収集し、性能データに基づき少なくとも1つの機械のそれぞれのギアチェンジの回数を監視する工程を含む。ギアチェンジの平均回数は、少なくとも1つの機械のそれぞれのギアチェンジの回数に基づき決定されてよい。運搬経路の1つまたは複数の部分は、ギアチェンジの平均回数が閾値限界を越えた場合、異常であると特定されてよい。運搬経路の1つまたは複数の異常部分に対する改修提案を生成することができ、改修提案に基づき少なくとも1つの機械の性能をシミュレートすることができる。模擬性能の結果を出力することができる。
【0011】
さらに別の態様によると、本開示は運搬経路管理システムに関する。本システムは、作業環境内で動作する機械とデータ通信を行うとともに少なくとも1つの機械に関連する性能データを収集するように構成された状態監視システムを含むことができる。本システムはまた、状態監視システムと通信で結合されるとともに性能データに基づき少なくとも1つの機械のそれぞれの転がり抵抗を決定するように構成されたトルク推定器を含むことができる。本システムはさらに、トルク推定器と状態監視システムとに通信で結合された性能シミュレータを含むことができる。性能シミュレータは少なくとも1つの機械のそれぞれの転がり抵抗に基づき平均転がり抵抗を決定するように構成されてよい。性能シミュレータはまた、少なくとも1つの機械の平均転がり抵抗が閾値抵抗値を越えた場合、運搬経路の一部が異常であると特定するように構成されてよい。性能シミュレータはさらに、運搬経路の異常部分に対する改修提案を受信し、この改修提案に基づき少なくとも1つの機械の性能をシミュレートし、この模擬性能の結果を出力するように構成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示実施形態による例示的な作業環境を示す図である。
図2図1の作業環境に関連するある部品を説明する概略図である。
図3】ある開示実施形態による運搬道路面条件を改善するための例示的な一方法を示すフローチャートである。
図4】ある開示実施形態による運搬道路面条件を改善するための別の例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、本開示実施形態による例示的な作業環境100を示す。作業環境100は、採鉱、建設、エネルギー探査および/または生成、製造、輸送、農業等の商業的または工業的タスク、あるいは他の産業タイプに関連する任意のタスクを実行するように協働するシステムと装置を含むことができる。図1に示す例示的な実施形態によると、作業環境100は、通信ネットワーク130を介し運搬経路管理システム135に結合される1つまたは複数の機械120a、120bを含む採鉱環境を含むことができる。作業環境100は、1つまたは複数の機械120a、120bの状態、健全性および性能に関連する情報を監視、収集、フィルタ処理するとともに、この情報を運搬経路管理システム135および/または加入者170等の1つまたは複数のバックエンドシステムまたはエンティティに配信するように構成されてよい。追加の部品および/または上に掲載されたものとは異なる部品を作業環境100内に含んでよいと考えられる。
【0014】
図1に示すように、機械120a、120bは1つまたは複数の掘削機120aと1つまたは複数の輸送機械120bを含むことができる。掘削機120aは、鉱山から材料を取り出すとともにその材料を1つまたは複数の輸送機械120b上に載せるように構成された任意の機械を具現することができる。掘削機120aの非限定的な例としては、バケツタイプ掘削機、電磁気式リフト装置、バックホウローダ、ブルドーザ等が挙げられる。輸送機械120bは、例えば連接台車、ダンプカー、または材料を輸送するように構成された他の任意のトラックなど作業環境100内で材料を輸送するように構成された任意の機械を具現することができる。図1に示す機械の数、大きさおよびタイプはあくまで例示的であり、限定することを意図していない。したがって、作業環境100は、追加の部品、上に掲載されたものより少ない部品および/またはそれとは異なる部品を含んでよいと考えられる。例えば、作業環境100は、スキッドステアローダ、トラックタイプトラクタ、材料移動車両、または作業環境100の事業に寄与し得る他の好適な固定または移動式機械を含むことができる。
【0015】
一実施形態では、機械120a、120bのそれぞれは、機械120a、120bの1つまたは複数の部品に関連する情報を監視、収集、および/または配信するための搭載データ収集および通信装置を含むことができる。図2に示すように、機械120a、120bはそれぞれ、特には、通信線122を介し1つまたは複数のデータ収集器125に結合されたセンサまたは電子制御モジュール等の1つまたは複数の監視装置121;1つまたは複数の送受信器装置126;および/または機械120a、120bの操作に関連する情報を監視、収集および通信するための他の部品を含むことができる。機械120a、120bのそれぞれはまた、運搬経路管理システム135等の非搭載システムから情報、警報信号、オペレータ命令、または他のメッセージまたは命令を受信するように構成されてよい。上記部品は例示的であって、限定することを意図していない。したがって、本開示実施形態は、機械120a、120bのそれぞれが追加部品および/または上に掲載されたものとは異なる部品を含むことを想定している。
【0016】
監視装置121は、1つまたは複数の機械120a、120bに関連する性能データを収集するための任意の装置を含むことができる。例えば、監視装置121は、エンジンおよび/または機械の速度および/または場所;流体圧力、流速、温度、汚染レベル、および/または流体の粘度;電流および/または電圧レベル;流体(すなわち、燃料、油等)消費速度;荷重レベル(すなわち、積載値、最大積載量限界のパーセント値、積載量履歴、積載量分布等);変速機出力比、スリップ等;運搬勾配と牽引データ;駆動軸トルク;計画され実行される保全および/または修理作業の間隔;および機械120a、120bの他の動作パラメータ等の、動作パラメータを測定するための1つまたは複数のセンサを含むことができる。
【0017】
一実施形態では、輸送機械120bはそれぞれ、駆動軸に加えられたトルクを監視するための少なくとも1つのトルクセンサ121aを含むことができる。あるいは、トルクセンサ121aは駆動軸上のトルクを計算または導出することができるパラメータを監視するように構成されてよい。1つまたは複数の監視装置121は作業環境100に関連するある環境特徴を監視するように構成されてよいと考えられる。例えば、1つまたは複数の機械120a、120bは、機械が移動する表面に関連する実際勾配を測定する傾斜計を含むことができる。1つまたは複数の監視装置121を機械の場所データの収集専用にしてもよいとも考えられる。例えば、機械120a、120bはそれぞれ、機械に関連する場所データ(例えば、緯度、経度、高度等)を監視するためのGPS装置を含むことができる。
【0018】
データ収集器125は、監視装置121により収集された性能データを受信、収集、パッケージ化、および/または配信するように構成されてよい。本明細書で使用されるように用語「性能データ」は、1つまたは複数の機械120にあるいはその構成部品またはサブシステムの任意のものに関連する少なくとも1つの動作態様を示す任意のタイプのデータを指す。性能データの非限定的例としては、燃料レベル、油圧、エンジン温度、冷却材流量、冷却液温度、タイヤ空気圧等の健全性情報、あるいは機械120a、120bの1つまたは複数の部品またはサブシステムの健全性を示す他の任意のデータが挙げられる。代替案としておよび/または追加として、性能データは、エンジン出力状態(例えば、エンジンの運転、アイドル、オフ状態)、エンジン時間、回転速度、機械対地速度、機械の場所および高度、動作中の機械の現在のギア等の状態情報、あるいは機械120の状態を示す他の任意のデータを含むことができる。任意選択的に、性能データはまた、作業進捗情報、荷重対容量比、シフト期間、運搬統計値(重量、積載量等)、燃料効率等のある生産性情報、あるいは機械120の生産性を示す他の任意のデータを含んでよい。代替案としておよび/または追加として、性能データは、機械120a、120bの1つまたは複数の態様または部品を制御するための制御信号を含むことができる。データ収集器125は、機械の動作中に通信線122を介し1つまたは複数の監視装置から性能データを受信することができる。
【0019】
一実施形態によると、データ収集器125は、通信ネットワーク130を介し運搬経路管理システム135に受信データを自動的に送信することができる。代替案としてまたは追加として、データ収集器125は、運搬経路管理システム135へのその後の送信のために、所定期間の間受信データをメモリ内に格納することができる。例えば、機械と運搬経路管理システム135間の通信路が一時的に利用不可能となった場合、性能データを検索することができ、通信路が復元されるとその後送信することができる。
【0020】
通信ネットワーク130は、機械120a、120bと運搬経路管理システム135等の非搭載システムとの間の双方向通信を提供する任意のネットワークを含むことができる。例えば通信ネットワーク130は、例えば衛星通信システム等の無線ネットワーキングプラットホームにわたって機械120a、120bと運搬経路管理システム135とを通信で結合することができる。代替案としておよび/または追加として、通信ネットワーク130は、1つまたは複数の機械120a、120bと運搬経路管理システム135とを通信で結合するための適切な1つまたは複数の広帯域通信プラットホーム(例えば、セルラー、ブルートゥース、マイクロ波、ポイントツーポイント無線、ポイントツーマルチポイント無線、マルチポイントツーマルチポイント無線、または多くの部品をネットワーク化するための他の任意の適切な通信プラットホーム等)を含むことができる。衛星無線通信ネットワークとして通信ネットワーク130を例示したが、通信ネットワーク130は例えばイーサネット(登録商標)、光ファイバー、導波管等の有線ネットワーク、あるいは他の任意のタイプの有線通信ネットワークを含んでよいと考えられる。
【0021】
運搬経路管理システム135は、1つまたは複数の個々の機械の性能または動作を監視、解析、最適化、および/または制御することにより運搬経路の性能を改善するように協働する1つまたは複数のハードウェア部品および/またはソフトウェアアプリケーションを含むことができる。運搬経路管理システム135は、機械120a、120bから収集した性能データを収集、配信、解析、および/または管理するための状態監視システム140を含むことができる。運搬経路管理システム135はまた、駆動軸トルクを決定し、有効積算勾配(total effective grade)を推定し、転がり抵抗を計算し、および/または機械または機械駆動系の性能を示すことができる他の適切な特徴を決定するためのトルク推定器150を含むことができる。運搬経路管理システム135はまた、作業環境100内で動作する機械の性能ベースのモデルをシミュレートするとともに、作業環境生産性を改善するために機械120a、120bの動作パラメータおよび/または運搬経路の物理的特徴を調整する性能シミュレータ160を含むことができる。
【0022】
状態監視システム140は、機械120a、120bに関連する性能データを受信、解析、送信、および/または配信するように構成された任意のコンピュータシステムを含むことができる。状態監視システム140は、通信ネットワーク130を介し1つまたは複数の機械120に通信で結合されてよい。状態監視システム140は、機械120a、120bのそれぞれに関連する性能データを収集し広めるように構成された集中型サーバおよび/またはデータベースを具現することができる。収集されると、状態監視システム140は、データタイプ、優先度等に従って性能データを分類および/またはフィルタ処理する。重大または最優先データの場合には、状態監視システム140は、重大事象を経験した機械を特定する「緊急」または「重大」メッセージを1人または複数の作業現場要員(例えば、修理技術者、プロジェクト管理者等)に送信するように構成されてよい。例えば、機械が使えなくされるか、非認可作業領域に入るか、あるいは重大なエンジン動作条件を経験した場合、状態監視システム140は、プロジェクト管理者、現場職長、シフト管理者、機械オペレータ、および/または修理技術者に機械に関する潜在的な問題を示すメッセージ(テキストメッセージ、電子メール、ページング等)を送信することができる。
【0023】
状態監視システム140は、ある開示実施形態による処理を実行するハードウェアおよび/またはソフトウェア部品を含むことができる。例えば、図2に例示されるように、状態監視システム140は、1つまたは複数の送受信器装置126、中央処理装置(CPU)141、通信インターフェース142、記憶装置143、ランダムアクセスメモリ(RAM)モジュール144および読み取り専用メモリ(ROM)モジュール145を含む1つまたは複数のコンピュータ可読メモリ装置、表示装置147、および/または入力装置148を含むことができる。上記部品は例示的であり、限定することを意図していない。状態監視システム140は上に掲載されたものの代替および/または追加部品を含んでよいと考えられる。
【0024】
CPU141は、ある開示実施形態による1つまたは複数の処理を実行するために命令を実行しデータを処理する1つまたは複数の処理装置であってよい。例えば、CPU141は、状態監視システム140が機械120a、120bのデータ収集器125から性能データを要求および/または受信することを可能にするソフトウェアを実行することができる。CPU141はまた、収集された性能データを記憶装置143に格納するソフトウェアを実行することができる。さらに、CPU141は、状態監視システム140が1つまたは複数の機械120a、120bから収集された性能データを解析し、機械に関する潜在的問題を特定する診断および/または予後解析を行い、あらゆる潜在的問題を機械オペレータまたは加入者170に通知し、および/または機械性能を改善するための勧告を含むカスタマイズ作業分析報告を提供する、ことを可能にするソフトウェアを実行することができる。
【0025】
CPU141は、状態監視システム140に関連する1つまたは複数の部品間の通信媒体を提供するように構成することができる共通情報バス146に接続されてよい。例えば、共通情報バス146は、複数の装置との間で情報を通信するための1つまたは複数の部品を含むことができる。CPU141は、以下に説明されるように、ある開示実施形態による方法を実行するために例えば記憶装置143、RAM144、および/またはROM145等のコンピュータ可読媒体装置に格納された一連のコンピュータプログラム命令を実行することができる。
【0026】
通信インターフェース142は、送受信器装置126を介し状態監視システム140と遠隔システム(例えば、機械120a、120b)間の双方向データ通信用に構成された1つまたは複数の構成要素を含むことができる。例えば、通信インターフェース142は、1つまたは複数の変調器、復調器、マルチプレクサ、デマルチプレクサ、ネットワーク通信装置、無線装置、アンテナ、モデム、あるいは状態監視システム140と遠隔システムまたは部品間の双方向通信インターフェースを支援するように構成された他の任意の装置を含むことができる。
【0027】
1つまたは複数のコンピュータ可読媒体装置は、状態監視システム140のCPU141により使用される情報、命令、および/またはプログラムコードを格納するように構成された記憶装置143、RAM144、ROM145、および/または他の任意の磁気データ、電子データ、フラッシュデータ、または光学データコンピュータ可読媒体装置を含むことができる。記憶装置143は、磁気ハードドライブ、光ディスクドライブ、フロッピードライブ、フラッシュドライブ、あるいは他の任意のこのような情報格納装置を含むことができる。ランダムアクセスメモリ(RAM)装置144は、CPU141により情報と命令を格納する任意の動的記憶装置を含むことができる。RAM144はまた、CPU141により実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を格納するために使用されてよい。動作中に、オペレーティングシステム(図示せず)のいくつかの部分またはすべての部分をRAM144内にロードすることができる。さらに、読み取り専用メモリ(ROM)装置145は、CPU141により情報と命令を格納するための任意の静的記憶装置を含むことができる。
【0028】
状態監視システム140は、機械120a、120bのそれぞれに関連する性能データを解析するように構成されてよい。一実施形態によると、状態監視システム140は、それぞれの機械に関連する閾値(これらは工場設定であってもよいし、製造者推奨であってよいし、および/またはユーザ設定であってもよい)に基づいて1つまたは複数の機械120a、120bに関連する性能データを解析するための診断ソフトウェアを含むことができる。例えば、状態監視システム140に関連する診断ソフトウェアは、特定の機械から受信されたエンジン温度測定値と所定の限界エンジン温度とを比較することができる。測定されたエンジン温度が限界温度を越えた場合、状態監視システム140は、警報を発生し、機械オペレータ、現場管理者、修理技術者、配送係、または他の任意の適任者または適正エンティティのうちの1つまたは複数に通知することができる。
【0029】
別の実施形態によると、状態監視システム140は1つまたは複数の機械120a、120bに関連する生産性を監視し解析するように構成されてよい。例えば、状態監視システム140は、それぞれの機械に関連するユーザ定義の生産性閾値に基づき1つまたは複数の機械120a、120bに関連する性能データを解析する生産性ソフトウェアを含むことができる。生産性ソフトウェアは、それぞれの機械120a、120bに関連する生産性レベルを監視するとともに、オペレータまたは機械の生産性データを定期的に受け取るプロジェクト管理者、機械オペレータ、修理技術者、または他の任意のエンティティ(例えば、人事部、オペレータ訓練・認証事業部等)のために生産性報告を生成するように構成されてよい。例示的な一実施形態によると、生産性ソフトウェアは、機械に関連する生産性レベル(例えば、特定の機械により移動された材料の量)とそれぞれの機械に対し設定された所定生産性割り当てとを比較することができる。生産性レベルが所定割り当て未満であった場合、機械の生産性不足を示す生産性通知を生成して機械オペレータおよび/またはプロジェクト管理者に提供することができる。
【0030】
状態監視システム140は、1つまたは複数の他のバックエンドシステムとデータ通信を行ってもよいし、詳細解析のためにある性能データをこれらのシステムに配信するように構成されてよい。例えば、状態監視システム140は、トルク推定器150に通信で結合されてもよいし、機械駆動軸に関連する性能データをトルク推定器150に提供するように構成されてもよい。代替案としてまたは追加として、状態監視システム140は性能シミュレータ160とデータ通信を行ってもよいし、詳細解析のために性能データを性能シミュレータ160に提供するように構成されてもよい。トルク推定器150と性能シミュレータ160は、状態監視システム140の外部のスタンドアロンシステムとして例示されたが、トルク推定器150と性能シミュレータ160の内の1つまたは両方は状態監視システム140のサブシステムとして含まれてよいと考えられる。
【0031】
トルク推定器150は、状態監視システム140からある性能データを受信/収集し、受信された動作データに基づき1つまたは複数の機械120a、120bに関連する駆動軸トルクを決定するように構成されたハードウェアまたはソフトウェアモジュールを含むことができる。トルク推定器150はトルクセンサ121aにより収集された性能データに基づき駆動軸トルクを決定するように構成されてよい。代替案としてまたは追加として、駆動軸トルクは、機械の性能データと既知の設計パラメータとに基づいて推定されてよい。例えば、エンジン動作速度と作動ギアとに基づき、トルク推定器150は電子参照テーブルにアクセスし、この参照テーブルを使用して特定の積載重量における機械の駆動軸トルクを推定することができる。
【0032】
推定機械駆動軸トルクが決定されると、トルク推定器150は1つまたは複数の機械の有効積算勾配を推定することができる。例えば、トルク推定器150は、次のような有効積算勾配(TEG:total effective grade)値を推定することができる。
【0033】
【数1】
【0034】
式中、RPは機械牽引力を指し、GMWは総機械重量を指し、MAは機械の加速を指し、AGはその機械が位置する地形の実際勾配を指す。搭載データ監視装置121を使用して総機械重量と機械加速を監視することができる。機械に関連する監視GPSデータに基づき実際勾配を推定することができる。例えば、搭載GPS装置から集められた高精度GPSデータから導出される機械の緯度、経度および高度に基づいて実際勾配を決定することができる。一実施形態によると、位置の垂直変化(GPSデータに関連する高度データに基づく)と位置の水平変化(GPSデータに関連する緯度と経度のデータに基づく)との比を計算することにより実際勾配を決定することができる。代替案としてまたは追加として、実際勾配は、例えば傾斜計等の搭載データ監視装置を使用して計算されてよい。牽引力は次のように決定することができる。
【0035】
【数2】
【0036】
式中、DATは機械駆動軸に加えられるトルクを指し、LPTRは低パワートレイン減少係数を指し、PTEはパワートレインの効率を指し、TDRRはタイヤの動的回転半径を指す。牽引力の実時間計算中にギアの変化を監視することにより低パワートレイン減少を決定することができる。機械から収集された実時間性能データに基づきパワートレイン効率を計算することができる。監視されたタイヤ空気圧、速度および総機械重量に基づきタイヤ動的回転半径を推定することができる。
【0037】
有効積算勾配が決定されると、トルク推定器150は1つまたは複数の機械120a、120bに関連する転がり抵抗を決定することができる。転がり抵抗値は次のように計算することができる。
RR=TEG−(AG+EL)
式中、ELは機械の効率損失を指す。効率損失は、入力電力効率と出力電力効率との差として推定することができ、特定のエンジン動作速度と荷重条件における経験的な試験データに基づいて推定することができる。説明したように、実際勾配は、収集されたGPAデータに関連する計算に基づき決定することができ、および/または搭載傾斜計を使用して監視することができる。
【0038】
性能シミュレータ160は、様々な動作または環境条件下の機械120a、120bの性能をシミュレートするように構成されてよい。シミュレーション結果に基づき、性能シミュレータ160は、機械120a、120bの所望性能および/または作業環境100を実現するために1つまたは複数の動作条件を決定することができる。
【0039】
性能シミュレータ160は、部品または機械シミュレーションソフトウェアを含む任意のタイプのコンピュータシステムであってよい。シミュレーションソフトウェアは、機械の実時間動作から収集された経験的なデータに基づいて機械またはその構成部品の任意のものに対応する解析モデルを構築するように構成されてよい。モデルが構築されると、性能シミュレータ160は、特定の動作条件(例えば、荷重条件、環境条件、地形条件、運搬経路設計条件等)下でモデルを解析し、特定条件に基づき機械の模擬性能データを生成することができる。
【0040】
一実施形態によると、性能シミュレータ160は、それぞれの機械120a、120bに関連する理想設計モデルを含むことができる。これらの理想モデルは、理想性能データ(すなわち、(理想動作条件下で)設計されるような機械の性能に基づくデータ)を生成するために電子的にシミュレートされてよい。機械が老化するにつれ機械に関連する部品が通常の摩耗、ストレス、および/または動作中の機械に対する損傷により非理想的振る舞いを呈し始め得ることを当業者は認識するであろう。これらの非理想に合致するより現実的な性能シミュレーションを提供するために、理想モデルは、機械120a、120bから収集された実際の性能データに基づいて編集されてよく、こうしてそれぞれの機械および/またはその個々の部品の実際的または経験的モデルを生成することができる。
【0041】
性能シミュレータ160は、様々な動作条件下で機械の性能と生産性を予測するために実際のモデルをシミュレートすることができる。例えば、性能シミュレータ160は、各模擬条件に関連する速度、トルク出力、エンジン状態、燃料消費速度、温室効果ガス排出レベル、運搬経路完成時間等を決定するために、機械動作および/または運搬経路表面状態下で運搬車120bの実際のモデルをシミュレートすることができる。一実施形態では、性能シミュレータ160は、運搬経路設計に対する変更または改善がどのように運搬車120bの性能に影響を与えるかを判断するために、運搬経路表面に関連する様々な物理条件(例えば、勾配レベル、摩擦レベル、平滑度、密度、硬度、水分含有量等)下で運搬車120bの実際のモデルをシミュレートするように構成されてよい。
【0042】
例示的な一実施形態によると、状態監視システム140および/または性能シミュレータ160の1つまたは複数は、運搬経路の一部分に関連する性能データの傾向を監視するように構成されてよい。例えば、性能シミュレータ160は、運搬経路上で動作する1つまたは複数の機械に関連する実時間の有効積算勾配を監視するように構成されてよい。高精度GPSデータを使用して、性能シミュレータ160は、実時間の有効積算勾配データと有効積算勾配データが収集された時の機械の特定の位置とを関連付けることができる。性能シミュレータ160は、監視された有効積算勾配データの傾向を特定するとともに、1つまたは複数の機械の性能を不必要に制限し得る運搬経路に関る潜在的問題を特定するためにこれらの傾向と運搬経路の特定の部分とを関連付けるように構成されてよい。
【0043】
別の例示的な実施形態によると、性能シミュレータ160は、機械120a、120bが運搬経路作業中に過剰回数のギアチェンジをいつ行うかを判断することにより運搬道路条件に起因する1つまたは複数の機械120a、120bに関連する性能不足を検知するように構成されてよい。性能シミュレータ160は、運搬経路の特定の部分に対応する1つまたは複数の機械120a、120bに関連するギアチェンジ(例えば、低速への切り替え、高速への切り替え等)の回数を監視し記録するように構成されてよい。性能シミュレータ160は1つまたは複数の運搬経路区間に関連するギアチェンジの平均回数を計算するように構成されてよい。性能シミュレータ160は、さらなる性能シミュレーションおよび/または解析のために、閾値許容レベルを越えるギアチェンジの平均回数を有する運搬経路の区間を特定することができる。
【0044】
さらに別の実施形態によると、性能シミュレータ160および/または状態監視システム140は、機械120a、120bに関連する実際勾配データの差に基づいて運搬道路の一部分における異常を検出するように構成されてよい。例えば、性能シミュレータは、機械120a、120bから収集されたGPSデータに基づいて各機械に関連する実時間の実際勾配データを監視するように構成されてよい。性能シミュレータ160は、運搬道路の区間毎に平均実際勾配を決定するとともに平均実際勾配の傾向を監視するように構成されてよい。性能シミュレータ160は、運搬道路に関る潜在的問題を特定するために実際勾配データの傾向の変化を検知しこの変化を監視するように構成されてよい。例えば、運搬道路の特定の区間の平均実際勾配が減少傾向を呈する場合、性能シミュレータ160は、この減少と過度の運搬道路摩耗とを関連付け、この減少の原因を特定するためにこの区間の検査を命じることができる。
【0045】
1つまたは複数の機械に関連する性能上の問題を引き起こし得る特定の運搬経路区間を特定することに加え、性能シミュレータ160は、特定の運搬経路区間に関連する欠陥を是正するための1つまたは複数の解決策を決定するために機械モデルをシミュレートするように構成されてよい。例えば、運搬経路区間上を移動する機械の平均有効積算勾配が閾値を越えた場合、性能シミュレータ160は修正された運搬経路パラメータを使用して1つまたは複数の機械または機械類の性能をシミュレートすることができる。一実施形態によると、性能シミュレータ160は、例えば、区間に関連する表面パラメータ(例えば、勾配、密度、摩擦等)を調整し、調整された表面パラメータで機械の性能をシミュレートすることができる。
【0046】
性能シミュレータ160はまた、部品故障を予測しおよび/または機械の特定部品またはサブシステムの残り寿命を推定するために、実際の機械モデル(すなわち、実際の機械データから導出または生成されたモデル)をシミュレートする診断および/または予後シミュレーションツールを含むことができる。例えば、エンジンおよび/または変速機に関連する性能データに基づき、性能シミュレータ160は、エンジン、駆動系、差動ブレーキ、あるいは機械の他の部品またはサブシステムの残り寿命を予測することができる。したがって、性能シミュレータ160は、1つまたは複数の運搬道路パラメータの変化が1つまたは複数のこれらの部品の寿命にどのように影響を与え得るかを予測することができる。例えば、性能シミュレータ160は、特定の運搬道路区間の勾配が1.5%低減されることによりエンジン、変速機および/または駆動系への歪を低減した場合に駆動系の残り寿命が15%増加し得るということを推定することができる。性能シミュレータ160は、鉱山オペレータ、プロジェクト管理者、機械オペレータ、および/または作業環境100の保守部門にこのデータを定期的に報告することができる。
【0047】
性能シミュレータ160は性能シミュレーションの結果を出力するように構成されてよい。例えば、性能シミュレータ160は状態監視システム140の表示装置147を介し模擬性能データを出力することができる。代替案としておよび/または追加として、性能シミュレータ160は、作業環境100に関連する運搬道路改修報告165を生成することができる。運搬経路改修報告165は、機械動作パラメータおよび/または運搬経路調整パラメータに対する変更提案に対応する性能シミュレーション結果を含むことができる。代替案としてまたは追加として、運搬経路改修報告165は、容認できない機械性能に関連する1つまたは複数の運搬経路区間、および/またはこれら1つまたは複数の運搬経路区間に対する改修提案(これらの区間に関連する機械性能を改善し得る)を一覧表にした紙ベースまたは電子的報告を含むことができる。
【0048】
性能シミュレータ160は、運搬経路改修データの1人または複数の加入者170に運搬経路改修報告165を配信するように構成されてよい。加入者170の例としては、プロジェクト管理者、鉱山所有者、修理技術者、シフト管理者、人事管理部門要員、あるいは運搬経路改修報告165を受信するように指定してよい他の任意の人物またはエンティティが挙げられる。
【0049】
状態監視システム140、トルク推定器150、および/または性能シミュレータ160の1つまたは複数は、単一の統合型ソフトウェアパッケージまたはハードウェアシステムとして含まれてよいと考える。代替案としてまたは追加として、これらのシステムは、他のシステムの1つまたは複数の動作を容易にするように相互作用または協働するように構成された個別のスタンドアロンモジュールを具現することができる。例えば、トルク推定器150は性能シミュレータ160とは別のスタンドアロンシステムとして図示され説明されたが、トルク推定器150は、性能シミュレータ160と同じコンピュータシステム上で動作するように構成されたソフトウェアモジュールとして含まれてもよいと考えられる。
【0050】
本開示実施形態による処理と方法は、運搬経路上で動作する1つまたは複数の機械に関連する監視された性能データに基づき運搬道路面欠陥を特定するための解決策を提供することができる。具体的には、本明細書に記載の特徴と方法は、複数の機械を非効率的に動作させ得る運搬経路の区間をプロジェクト管理者、装置所有者、および/または鉱山オペレータが特定できるようにする。さらに、本開示実施形態による処理と特徴は、標準性能以下の運搬経路区間に関連する運搬道路パラメータを調整および/または変更するための勧告を行い、この勧告に基づき機械の性能をシミュレートし、模擬性能結果を加入者に提供することができる。図3図4には、機械性能データに基づき作業環境における運搬道路面条件を改善するための例示的な方法を示すフローチャート300と400をそれぞれ提供する。
【0051】
図3に示すように、運搬経路上で動作する少なくとも1つの機械から性能データを収集することができる(工程310)。例えば、運搬経路管理システム135の状態監視システム140は作業環境100において動作する各機械から性能データを受信/収集することができる。一実施形態によると、状態監視システム140は、機械120a、120bのそれぞれに関連するデータ収集器125からデータを自動的に受信することができる。代替案としてまたは追加として、状態監視システム140は機械120a、120bのそれぞれに対しデータ要求を行い、この要求に応答した各機械から性能データを受信することができる。
【0052】
性能データが収集されると、少なくとも1つの機械のそれぞれに関連する転がり抵抗はそれぞれの機械に関連する性能データに基づき決定/計算されてよい(工程320)。例えば、トルク推定器150はトルクセンサ121aから受信したデータに基づき駆動軸トルクを決定することができる。あるいはトルク推定器150は、エンジン動作条件、ギア選択、および機械から受信した他のデータに基づき、電子参照テーブル(機械のタイプとモデルに関連する経験的な試験データからコンパイルされる)を使用し駆動軸トルクを決定することができる。駆動軸トルクが決定/推定されると、トルク推定器150は各機械に関連する有効積算勾配を計算/推定することができる。トルク推定器150は、運搬経路の有効積算勾配と実際勾配、および機械の効率損失に基づき機械転がり抵抗を決定することができる。
【0053】
一実施形態によると、転がり抵抗値は運搬経路上での機械動作中に連続的に決定/計算されてよい。例えば、状態監視システム140は1つまたは複数の機械から性能データを連続的に収集するので、トルク推定器150は収集された性能データの各組に対応する転がり抵抗値を計算することができる。各転がり抵抗値は、一組の性能データが収集された時の機械の時間と場所に対応するタイムスタンプと場所情報(例えばGPSデータ)でタグ付けされてよい。転がり抵抗値と位置データとを関連付けることにより、性能シミュレータ160は、転がり抵抗値の傾向を監視し、これらの傾向と特定の運搬経路区間とを関連付けることができる。
【0054】
個々の機械に関連する転がり抵抗値に基づき、1つまたは複数の運搬経路区間の平均機械転がり抵抗を決定することができる(工程330)。例えば、性能シミュレータ160は、運搬経路区間に関連する以前に格納された転がり抵抗データと、この区間の現在の転がり抵抗データを平均化することができる。
【0055】
性能シミュレータ160は、運搬経路区間に関連する平均転がり抵抗とこの区間の閾値抵抗値とを比較することができる(工程340)。平均転がり抵抗が閾値抵抗値を越えなかった場合(工程340:No)(特定の運搬経路区間は正常に働いていることを示す)、処理は工程310に戻り性能データを監視し続けることができる。閾値抵抗値は、機械120a、120bの所望性能に基づき運搬経路管理者により規定されてよい。あるいは部品寿命を延長するために、閾値抵抗値は機械120a、120bのそれぞれの製造者推奨動作パラメータに基づき決定されてよい。例えば、製造者は、機械の保証を持続するために満たさなければならない特定の動作パラメータ(例えば、温度、燃料レベル、エンジン動作速度およびレベル等)を規定することができる。製造者の指針に基づき、機械を推奨性能指針内で動作させておく閾値抵抗値を設定することができる。したがって、閾値抵抗値を越える実際の抵抗値を有する個々の機械には機械性能の原因を診断する保守のためのフラグを立てることができる。
【0056】
一方、平均転がり抵抗が閾値抵抗値を越えた場合(工程340:Yes)(運搬経路に、および/またはその中で動作する機械の大多数に関する潜在的問題を示す)、運搬経路改修提案を生成することができる(工程350)。一実施形態によると、ユーザ(例えば加入者)が運搬経路に対する改修提案を生成し、これらの変更を、入力装置148を介し性能シミュレータ160に提供することができる。代替案としてまたは追加として、性能シミュレータ160は運搬経路に対する改修提案を自動的に生成するように構成されてよい。例えば、性能シミュレータ160は、特定の運搬経路区間の平均転がり抵抗が閾値をどれほど越えるかに依存して、この運搬経路区間の平均転がり抵抗を低減するためにこの区間の勾配に対する低減推奨を生成するように構成されてよい。
【0057】
運搬経路改修提案は運搬道路面に対する任意の好適な改修を含むことができる。例えば、運搬道路改修は、運搬道路面の勾配に対する変更または修理;ある材料(例えば、コンクリート、砂利、アスファルト等)の追加または除去による運搬経路密度または表面摩擦に対する変更;運搬経路表面のくぼみ、割れ、または他の変形に対する修理;運搬経路長または設計速度に対する変更あるいは運搬経路上の機械性能を改善し得る運搬経路表面に対する他の任意の変更を含むことができる。
【0058】
運搬経路改修が生成されると、1つまたは複数の機械に関連する性能ベースのモデルを、改修提案に対してシミュレートすることができる(工程360)。説明したように、機械に関連する性能ベースのモデルは、機械から収集される実際の性能データに基づいて生成されてよい。性能シミュレータ160は運搬経路改修提案を使用して性能ベースのモデルをシミュレートすることができる。実際の変更を行う前に改修提案を電子的にシミュレートし解析することにより、加入者170および/またはプロジェクト管理者に、機械および/または運搬経路性能に対する改修提案の潜在的な影響の予測を提供することができる。
【0059】
運搬経路に対する改修提案に対応する機械性能がシミュレートされると、性能シミュレータ160はシミュレーション結果を出力することができる(工程370)。例えば、性能シミュレータ160は、運搬経路管理システム135の表示装置147上にシミュレーション結果を出力することができる。代替案としてあるいは追加として、性能シミュレータ160は、1つまたは複数の運搬道路問題区間を特定する運搬経路改修報告165を生成することができる。運搬経路改修報告165は、転がり抵抗、および/または問題区間に対応する他の性能統計値(例えば、燃料消費量、温室効果ガス排出レベル、駆動系の予想寿命等)を含むことができる。運搬経路改修報告165はまた、1つまたは複数の機械の性能および/または作業環境100を改善するための1つまたは複数の勧告だけでなくこれらの勧告に対応する模擬性能データも含むことができる。
【0060】
異常または不完全な運搬道路条件を特定するために追加のおよび/または異なる機械動作パラメータを使用してよいと考えられる。例えば、運搬道路区間に関連する潜在的問題を特定するために転がり抵抗の傾向を監視することに加えて、性能シミュレータ160は、機械120a、120bのそれぞれに関連する変速機シフトパターンを特定することにより異常運搬道路面条件を特定することができる。各タイプの機械は適度なエンジンおよび変速機動作領域で最も効率的であるように設計されているので、運搬経路条件が確実にこれらの効率的な動作レベルで機械が動作できるようにすることは有利であろう。したがって、特定の機械がセカンドギアの1750RPMで最も効率的に動作する場合、機械に必要回数以上のギアシフトを行わせる運搬道路条件は機械効率および/または生産性を低減すると考えられる。図4には、運搬経路上で動作する機械により行なわれるギアシフトの回数に基づき運搬道路面条件を改善するための例示的な方法を示すフローチャート400を提供する。
【0061】
図4に示すように、状態監視システム140は少なくとも1つの機械から機械性能データを受信/収集することができる(工程410)。例えば、運搬経路管理システム135の状態監視システム140は作業環境100において動作する各機械から性能データを受信/収集することができる。一実施形態によると、状態監視システム140は機械120a、120bのそれぞれに関連するデータ収集器125からこのデータを自動的に受信することができる。代替案としてあるいは追加として、状態監視システム140は機械120a、120bのそれぞれにデータ要求を行い、この要求に応答した各機械から性能データを受信することができる。
【0062】
性能データに基づき、状態監視システム140は、少なくとも1つの機械のそれぞれに関連するギアチェンジの回数を決定し、各ギアチェンジの回数、時間、場所をメモリ内に記録する(工程420)。例えば、状態監視システム140は、機械120a、120bから受信した変速機および/またはエンジンデータに基づき機械120a、120bのそれぞれのギアチェンジの回数を数えることができる。各ギアチェンジに関しては、状態監視システムはギアチェンジが発生した時間およびギアチェンジに対応するGPSデータ(例えば、場所および高度データ)を記録することができる。それぞれのギアチェンジの場所を監視することにより、性能シミュレータ160は特定の運搬経路区間上で発生したギアチェンジの回数を決定することができるであろう。
【0063】
性能シミュレータ160は、1つまたは複数の機械120a、120bに関連するギアチェンジデータに基づき特定の運搬経路区間に関連するギアチェンジの平均回数を決定することができる(工程430)。性能シミュレータ160は、特定の運搬経路区間に関連するギアチェンジの平均回数と閾値限界とを比較することができる(工程440)。ギアチェンジの平均回数に対応する閾値限界は、正常な積載量および動作条件下の運搬経路上で健全な機械を動作させることにより集められた試験データに基づいて設定されてよい。場合によっては、運転手シフトエラー、積載量変動等を考慮に入れるために、試運転で観測されたギアチェンジの回数にバッファを加えてもよい。したがって、特定の運搬経路区間では4回のギアチェンジが発生しなければならないと試験データが示す場合、閾値ギアチェンジ限界は5回のギアチェンジ(すなわち、オペレータまたは機械シフトエラーを考慮するために試験データの4回のギアチェンジに1回のバッファ分のギアチェンジを足す)として設定されてよい。
【0064】
ギアチェンジの平均回数が閾値限界を越えなかった場合(工程440:No)(機械は運搬道路条件による過度のギアシフトを経験していないことを示す)、本処理は工程410に進み機械120a、120bの性能を監視し続けることができる。一方、ギアチェンジの平均回数が閾値限界を越えた場合、運搬経路改修提案を生成することができる(工程450)。一実施形態によると、ユーザ(例えば加入者)が運搬経路に対する改修提案を生成し、これらの変更を、入力装置148を介し性能シミュレータ160に提供することができる。代替案としてまたは追加として、性能シミュレータ160は運搬経路に対する改修提案を自動的に生成するように構成されてよい。例えば、性能シミュレータ160は、運搬経路区間上で動作する機械のギアチェンジの平均回数を低減するためにこの区間の勾配に対する変更勧告を生成するように構成されてよい。図3に関し上に説明したように、運搬経路改修提案は運搬道路面に対する任意の好適な改修を含むことができる。
【0065】
運搬経路改修が生成されると、1つまたは複数の機械に関連する性能ベースのモデルをこの改修提案に対しシミュレートすることができる(工程460)。説明したように、機械に関連する性能ベースのモデルは、機械から収集された実際の性能データに基づいて生成されてよい。性能シミュレータ160は運搬経路改修提案を使用して性能ベースのモデルをシミュレートすることができる。実際の変更を行う前に改修提案を電子的にシミュレートし解析することにより、加入者170および/またはプロジェクト管理者に、機械および/または運搬経路性能に対する改修提案の潜在的な影響の予測を提供することができる。
【0066】
運搬経路に対する改修提案に対応する機械性能がシミュレートされると、性能シミュレータ160はシミュレーション結果を出力することができる(工程470)。例えば、性能シミュレータ160は、運搬経路管理システム135の表示装置147上にシミュレーション結果を出力することができる。代替案としてまたは追加として、性能シミュレータ160は1つまたは複数の運搬道路問題区間を特定する運搬経路改修報告165を生成することができる。運搬経路改修報告165は、転がり抵抗、および/または問題区間に対応する他の性能統計値(例えば、燃料消費量、温室効果ガス排出レベル、駆動系予想寿命等)を含むことができる。運搬経路改修報告165はまた、1つまたは複数の機械および/または作業環境100の性能を改善するための1つまたは複数の勧告およびこれらの勧告に対応する模擬性能データを含むことができる。
【0067】
一実施形態によると、改修提案に関連する実施費用の推定値をコンパイルすることができる(工程480)。この推定値は、提案された勧告の範囲と規模、および類似の運搬経路改善プロジェクトに関連する過去の費用データに基づいてよい。この費用見積りは、改修提案に関連する費用見積りデータを含む運搬経路改修報告165を更新/生成することができる性能シミュレータ160に提供されてよい。
【0068】
運搬経路に対する改修提案に対応する機械性能がシミュレートされ、改修提案の実施に伴う費用が推定されると、性能シミュレータ160はシミュレーション結果を出力することができる(工程490)。上記のように、運搬経路改修報告165は、ギアチェンジおよび/または問題区間に対応する他の性能統計値(例えば、転がり抵抗、燃料消費量、温室効果ガス排出レベル、駆動系予想寿命等)を含むことができる。運搬経路改修報告165はまた、1つまたは複数の機械の性能および/または作業環境100を改善するための1つまたは複数の勧告だけでなく、これらの勧告に対応する模擬性能データとこれら勧告の実施に関連する費用見積りを含むことができる。
【0069】
開示された実施形態に関連するシステムと方法は主として鉱山および工事環境の運搬道路に関連し説明されたが、本明細書に記載のシステムと方法は任意の道路面に適用可能であると考えられる。例えば、本明細書に記載のシステムと方法は、従来の州間高速自動車道および他の舗装面上で採用され、これらの表面上で操作される機械または車両の性能低下をもたらし得る早期摩耗に関連するであろう変化と異常を特定することができる。
【0070】
一例として、上記システムと方法は舗装ハイウェーの建設中に採用されてよい。新しい道路の1つまたは複数の層の傾斜水平化(grading)と配置の間に、道路面のいかなる異常も特定するために、運搬道路管理システム135を装備した車両を運搬道路上で1回または複数回の「試験運転」を行うことができる。建設段階で異常を早期に検出することにより、これらのタイプの異常が運搬道路上で操作される機械の性能に与える影響を最小限に抑えるかまたはなくすために、これらの異常を是正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
開示された実施形態に関連する方法とシステムは、運搬道路上の機械の実時間動作中に収集される機械性能データに基づき運搬道路条件に関連する問題を特定するための解決策を提供する。本明細書に記載のシステムと方法はまた、機械の性能に対する改修提案の有効性を判断するために性能ベースの機械モデルをシミュレートすることにより、ユーザが運搬道路改修提案を試験できるようにする。本明細書に記載の処理と特徴を採用する作業環境は、加入者が、異常運搬道路区間を効果的に特定し、この異常区間に対する改修提案に基づき1つまたは複数の機械の性能をシミュレートすることを可能にするシステムを提供することができる。その結果、加入者は、運搬経路の所望の性能、生産性、および費用目標に基づいて複数の運搬道路改修選択肢から選択することができる。
【0072】
開示された実施形態は鉱山環境における運搬道路条件を改善することに関連して説明されたが、これらは、機械性能データに基づき運搬道路欠陥を自動的に検知しこれらの欠陥を是正するための可能な運搬道路改善選択肢を解析することが有利と考えられる任意の環境に適用可能である。一実施形態によると、運搬道路条件を改善するための本開示のシステムと方法は、一団の機械に関連する性能データを監視しこれら一団の機械に関する潜在的問題を診断するネットワーク接続された工事現場環境の一部として実施されてよい。その結果、本明細書に記載のシステムと方法は、単一統合システムにおける機械と運搬道路の健全性と生産性の両方を監視するための統合的解決法を提供することができる。
【0073】
運搬道路条件を改善するための本開示のシステムと方法は、いくつかの利点を有すると考えられる。例えば、本明細書に記載のシステムと方法は、運搬道路欠陥を特定するための解決策を提供し、これらの欠陥を修理するための選択肢を提案し、機械および/または運搬道路の性能、健全性、および生産性に関し各選択肢が有する費用と利点を特定するために提案選択肢のそれぞれを解析することができる。その結果、鉱山オペレータと作業環境管理者は、どの運搬道路改善選択肢が運搬道路の長期的な生産性、健全性、予算、および性能目標と合致するかを迅速かつ客観的に決定する能力を備えることができる。
【0074】
さらに、本開示の運搬道路改善システムは著しい費用優位性を有することができる。例えば、運搬道路欠陥を修理するための1つまたは複数の提案選択肢をシミュレートすることにより、本開示のシステムは、ユーザが、いかなる実際の改善費も費やす前にある運搬道路改善選択肢を段階的に試験することができるようにする。その結果、試行錯誤的運搬道路改善方法による費用と生産性損失を低減することができる。
【0075】
本発明の範囲から逸脱することなく、運搬道路条件を改善する本開示のシステムと方法に対し様々な変形と修正をなし得ることは当業者に自明である。本開示の他の実施形態は本明細書の考察と本開示の実行から当業者に自明である。本明細書と例はあくまで例示的であると考えられ、本開示の真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示されることを意図している。
図1
図2
図3
図4