(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図9、
図10を用いて従来のリクライニング装置の一例を説明する。
図9は従来の車両のシート用のリクライニング装置の分解斜視図、
図10はシートの構成図である。
【0003】
図10に示すように、シート1は、着座者の臀部を支持するシートクッション2と、シートクッション2に対して前後方向に傾動可能に設けられ、着座者の背部を支持するシートバック3とからなっている。4はシートバック3の傾動の回転軸上に設けられ、シートバック3の傾動を許可/禁止するリクライニング装置である。
【0004】
リクライニング装置は、
図9に示すように、円周方向に沿った内歯7aが形成され、前記円周の中心軸に沿って貫通した穴7bが形成された第1部材7と、該第1部材7と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記円周の中心軸に沿って貫通した穴5bが形成された第2部材5とを有している。本従来例では、第1部材7がシートバック3側に、第2部材5がシートクッション2側に取り付けられている。
【0005】
第1部材7と第2部材5との間には、内歯7aと噛合可能な外歯10aを有した4つのポール10が配置されている。また、第2部材5には、前記各ポール10の両側面を挟み、各ポール10を半径方向に案内するガイド5aが形成されている。更に、第1部材7,第2部材5との間には、第1部材の穴7b、第2部材5の穴5bに回転可能に支持され、相対回転の回転軸上で回転するカム9が配置されている。カム9の周部には、各ポール10に応じて、周方向に沿って凹部9aと突部9bとが形成されている。また、各ポール10の外歯10aが形成された面と反対側の面には、カム9の突部9bが進入可能な凹部10bと、カム9の凹部9aに進入可能な突部10cとが形成されている。
【0006】
このため、カム9を一方の方向に回転させると、カム9の突部9bがポール10の外歯10aと反対側の面(以下、背面という)10dを押し、外歯10aが第1部材7の内歯7aに噛合する方向にポール10を追い込むようになっている。逆に、カム9を他方の方向に回転させると、カム9の突部9bがポール10の凹部10bに進入し、外歯10aが第1部材7の内歯7aから離れる方向にポール10を引き上げるようになっている。
【0007】
そして、各ポール10の背面10dは、カム9の突部9bによって押されると、外歯10aが内歯7aに噛合する方向へポール10を移動させる力と、第2部材5側から見て、反時計方向側のガイド5aの面へポール10を移動させる力とが発生する面(斜面)となっている。
【0008】
第1部材7には、中央部に穴11aが形成されたストッパプレート11が配置される。このストッパプレート11には4つの穴11aが形成され、これらの穴11aに、第1部材7に形成された4つの突部7eが嵌合することにより、ストッパプレート11は固定されている。そして、第2部材5に形成されたストッパ突起5cが第1部材7に固定されたストッパプレート11に形成された突部11bの立壁部11cに、第2部材5に形成されたストッパ突起5dが、第1部材7に固定されたストッパプレート11に形成された突部11bの立壁部11dにそれぞれ当接する範囲で、第1部材7と第2部材5との相対回転が可能となっている。即ち、シートバック3は、
図10において角度θの範囲で傾動可能となっている。
【0009】
また、外端部が第2部材5に係止され、内端部がカム9に係止されたスプリング13により、カム9は一方の方向、即ち、ポール10の外歯10aが第1部材7の内歯7aに噛合する方向に付勢されている。
【0010】
通常、スプリング13の付勢力により、第2部材5に設けられた各ポール10は、外歯10aが、第1部材7の内歯7aに噛合したロック位置にあり、第1部材7と第2部材5との相対回転は禁止され、シートバック3はシートクッション2に対して回転ができない状態(ロック状態)にある。
【0011】
スプリング13の付勢力に抗して、カム9を操作して、他方の方向に回転させると、各ポール10は、外歯10aと内歯7aとの噛合が解除されたロック解除位置に移動し、第1部材7と第2部材5との相対回転が可能な状態(アンロック状態)となり、シートバック3はシートクッション2に対して回転可能となる。
【0012】
カム9への操作力を解除すると、スプリング13の付勢力により、第2部材5に設けられた各ポール10の外歯10aが、第1部材7の内歯7aに噛合し、第1部材7と第2部材5との相対回転は禁止され、再びロック状態となる。
【0013】
更に、第1部材7には、円周方向に沿って円周の中心に向かって突出する突部7c、突部7dが形成されている。4つのポールのうちの1つのポール10’(
図9において一番下のポール)には、突部7c、突部7dの突出方向の頂部に乗り上げ可能な突起10dが形成されている。尚、突部7c、突部7dの突出量は、ポール10’の突起10dが乗り上げると、カム90を介して、ポール10’の外歯10a’が第1部材7の内歯7aより離れた位置でポール10’を保持する量に設定されている。
【0014】
よって、アンロック状態で、シートバック3をシートクッション2に対して回転させ、ポール10’の突起10dが突部7cまたは突部7d上に至ると、カム9への操作力を解除しても、ポール10’の突起10dが突部7cまたは突部7d上に乗り上げ、ポール10’はアンロック状態に保持される。更に、カム9を介して、ポール10’以外の3つのポール10もアンロック状態に保持される。よって、カム9を操作をしなくても、第1部材7と第2部材5との相対回転が可能となる。尚、本明細書では、この状態を「ロックフリー状態」という。
【0015】
そして、ロックフリー状態で、第1部材7と第2部材5とを相対回転し、ポール10’の突起10dが突部7cまたは突部7d上から外れると、ポール10’がロック状態に復帰する。次に、カム9を介して、ポール10’以外の3つのポール10もロック状態に復帰する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図9に示すリクライニング装置では、ロックフリー状態で、第1部材7と第2部材5とが相対回転し、ポール10’の突起10dが突部7cまたは突部7d上から外れ、ロックフリー状態が解除されると、最初に、ポール10’がアンロック状態からロック状態に復帰する。次に、ポール10’がロック状態に復帰するとカム9を介して、ポール10’以外の3つのポール10がアンロック状態からロック状態に復帰する。即ち、ポールのロック状態への復帰タイミングが異なる。
【0018】
よって、ポール10’がロック状態に復帰し、ポール10’以外の3つのポール10がまだロック状態に復帰していない状態は、ロック力が小さく、ポール10’以外の3つのポール10がロック状態に復帰してはじめて、所定のロック力が発生する。
【0019】
ロックフリー状態で、第1部材7と第2部材5とを相対回転させようとする力が大きな場合、ポール10’のみロック状態に復帰しても、ロック力が小さいので、ポール10’はロック解除され、ポール10、ポール10’の外歯10a、外歯10a’が、内歯7a上を滑る現象(歯飛び現象)が発生する問題点がある。
【0020】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ロックフリー状態が解除された際に、複数のポールが同時にロック状態へ復帰し、大きなロック力が瞬時に発生するリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
課題を解決する請求項1に係る発明は、円周方向に沿った内歯が形成された第1部材と、
前記内歯と噛合可能な外歯を有した複数のポールと、前記第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記各ポールの両側面を挟み、前記外歯が前記内歯と噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯から離れたアンロック位置の間で前記各ポールを案内するガイドが形成された第2部材と、前記外歯が前記第1部材の前記内歯に噛合することにより、前記第1部材と第2部材との相対回転が禁止されるリクライニング装置において、
前記第1部材の円周方向に沿って前記円周の中心に向かって突出する突部と、前記第1部材,前記第2部材の間に配置され、前記相対回転の回転軸上で回転可能な第1カムと、該第1カム,前記複数のポールのうち少なくとも2つ以上のポールの間に配置され、前記第1カムに押されると、前記ポールの外歯が設けられた面と反対側の面を押接し、前記外歯が前記内歯に噛合する方向へ前記各ポールを移動させると共に、前記突部の突出方向の頂部に乗り上げ可能な突起が形成された第2カムと、前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記ポールを付勢する付勢手段と、を設け、前記第2カムの突起が前記第1部材の突部の頂部に乗り上げると、すべての外歯が内歯より離れた位置で各ポールを保持することを特徴とするリクライニング装置である。
請求項2に係る発明は、前記第2カムが間に配置された前記ポールは、前記第2カムのみでロック位置方向に押接されることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置である。
【0022】
ポールの外歯が第1部材の内歯に噛合すると、第1部材と第2部材との相対回転が禁止された状態(ロック状態)となる。
【0023】
ロック状態で、付勢手段の付勢力に抗して、前記外歯が前記内歯から離れる方向へ前記各ポールを移動させると、第1部材と第2部材との相対回転が可能な状態(アンロック状態)となる。
【0024】
アンロック状態で、第1部材と第2部材とを相対回転させ、第2カムの突起が突部上に至ると、第2カムの突起が突部上に乗り上げ、全ての複数のポールはアンロック状態に保持される。よって、レリーズ手段を操作しなくても、第1部材と第2部材との相対回転が可能となるロックフリー状態となる。
【0025】
ロックフリー状態で、更に第1部材と第2部材とを相対回転し、第2カムの突起が突部上から外れると、第2カムは付勢手段の付勢力により少なくとも2つ以上のポールを押し、第2カムに押される2つ以上のポールはロック状態に復帰する。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る発明によれば、前記第1部材の円周方向に沿って前記円周の中心に向かって突出する突部と、前記第1部材,前記第2部材の間に配置され、前記相対回転の回転軸上で回転可能な第1カムと、該第1カム,前記複数のポールのうち少なくとも2つ以上のポールの間に配置され、前記第1カムに押されると、前記ポールの外歯が設けられた面と反対側の面を押接し、前記外歯が前記内歯に噛合する方向へ前記各ポールを移動させると共に、前記突部の突出方向の頂部に乗り上げ可能な突起が形成された第2カムと、前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記ポールを付勢する付勢手段と、を設け、前記第2カムの突起が前記第1部材の突部の頂部に乗り上げると、すべての外歯が内歯より離れた位置で各ポールを保持することにより、前記第1カムの突起が前記第1部材の突部の突出方向の頂部に乗り上げた状態(ロックフリー状態)で、第1部材と第2部材とが相対回転し、第2カムの突起が突部の頂部から外れると、付勢手段の付勢力により、少なくとも2つ以上のポールは同時にロック状態に復帰する。よって、大きなロック力が瞬時に発生する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
本実施の形態例のりクライング装置は、
図10に示すリクライニング装置4と同様に、シートバック3の傾動の回転軸上に設けられるものである。
【0030】
図1−
図7を用いて、本実施形態のリクライング装置を説明する。
図1は本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図、
図2は
図1のリクライニング装置を組み付けた際の矢印C方向から見た斜視図、
図3は
図1のリクライニング装置を組み付けた際の外周リング、ラチェットを取り除いた状態で、矢印C方向から見た図、
図4は
図3において、外周リング、ラチェットを組み付けた状態での切断線A−Aでの断面図、
図5は
図3において、外周リング、ラチェットを組み付けた状態での切断線B−Bでの断面図、
図6は
図1のリクライニング装置を組み付けた際の矢印D方向から見た図、
図7は
図1のリクライニング装置を組み付けた際の矢印E方向から見た図である。
【0031】
図1において、シートバック側に設けられるラチェット(第1部材)21は、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、円形凹部21aが形成されている。この円形凹部21aの内周面には、内歯23が円周方向全域に形成されている。また、円形凹部21aの中心には、貫通した穴21bが形成されている。
【0032】
シートクッション側に設けられるベースプレート(第2部材)25も、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、円形凹部25aが形成されている。この円形凹部25aの径は、ラチェット21の外径より若干大きく設定されている。そして、円形凹部25aに、ラチェット21が嵌め込まれ、ベースプレート25とラチェット21とは相対回転可能となっている。また、ラチェット21の中心には、貫通した穴25bが形成されている。なお、ベースプレート25の穴25bの径は、ラチェット21の穴21aの径より大きく設定されている。
【0033】
そして、ラチェット21の外周部と、ベースプレート25の外周部とは、リング状の外周リング27により挟持され、ラチェット21とベースプレート25とは、相対回転の軸(
図1においてO)方向に分離されることなく、相対回転可能に保持されている。
【0034】
ラチェット21の円形凹部21aとベースプレート25の円形凹部25aとが形成する空間には、カム本体31cと、第1軸部31aと第2軸部31bとからなる第1カム31が配置される。第1軸部31aはカム本体31cの一方の面側に形成され、ラチェット21の穴21aに回転可能に支持される。第2軸部31bは第1カム31の一方の面側に、第1軸部31aと同軸上となるように形成される。本実施形態では、第1軸部31a,第2軸部31bは、断面が同一小判形の円筒としている。
【0035】
第1カム31とラチェット21の円形凹部21aとの間には、レリーズプレート(レリーズ手段)33が配置される。このレリーズプレート33の中央部には、第1カム31の第1軸部31aの断面形状より若干大きな小判形の穴33aが形成されている。そして、この穴33aに、第1カム31の第1軸部31aが挿通することにより、第1カムと31とレリーズプレート33とは一体となって回転する。
【0036】
図1、
図2、
図3に示すように、レリーズプレート33とベースプレート25の円形凹部25aとの間には、円周方向に沿ってポール41とポール43とが交互に計4つ配置されている。更に、
図3に示すように、ポール41とポール43とは、円周の径方向に沿った線分に関して対称な形状(線対称形状)となっている。
【0037】
ポール41,ポール43の内歯23と対向する面には、内歯23に噛合可能な外歯41a,43aが形成されている。
【0038】
また、ベースプレート25の円形凹部25aには、ラチェット21方向に突出した2つの第1突出部35が円周方向に沿って180°間隔で形成さている。2つの第1突出部35の間には、2つの第2突出部37,2つの第3突出部39が円周方向に沿ってそれぞれ180°間隔で形成されている。第1突出部35の両側部は、ベースプレート25の円形凹部25aの底面と直交し、円周の半径方向と平行なガイド面35a,35bとなっている。第2突出部37の両側部は、ベースプレート25の円形凹部25aの底面と直交し、円周の半径方向と平行なガイド面37a,37bとなっている。第3突出部39の両側部は、ベースプレート25の円形凹部25aの底面と直交し、円周の半径方向と平行なガイド面39a,39bとなっている。
【0039】
そして、第1突出部35のガイド面35aと、第3突出部39のガイド面39aとの間隔はポール41の幅より若干広く設定され、これら2つのガイド面間にポール41が配置されることにより、第1突出部35、第3突出部39はポール41を円周の半径方向に案内するガイド(第1ガイド)として機能する。同様に、第1突出部35のガイド面35bと、第2突出部37のガイド面37aとは、ポール43の幅より若干広く設定され、これら2つのガイド面間にポール43が配置されることにより、第1突出部35、第2突出部37はポール43を円周の半径方向に案内するガイド(第1ガイド)として機能する。
【0040】
ポール41の外歯41aが形成された面と反対側の面(以下、背面という)の第1突出部35側には第1カム31方向に突出する突部41bが形成され、第3突出部39側には、凹部41cが形成されている。また、ポール43の外歯43aが形成された面と反対側の面(以下、背面という)の第1突出部35側には、第1カム31方向に突出する突部43bが形成され、第2突出部37側には、凹部43cが形成されている。
【0041】
そして、第2突出部37,第3突出部39を介して隣接する2つのポール41,ポール43を跨ぐように、2つの第2カム45が配置される。各第2カム45は、本体部45aと、内歯23に向かって延びるガイド部45bとからなっている。一方、第2突出部37のガイド面37bと、第3突出部39のガイド面39bとの間隔は、第2カム45のガイド部45bの幅より若干広く設定され、これら2つのガイド面間に第2カム45のガイド部45bが配置されることにより、第2突出部37、第3突出部39は第2カム45を円周の半径方向に案内するガイド(第2ガイド)として機能する。
【0042】
第2カム45の本体部45aのポール41,ポール43と対向する面側には、ポール41の凹部41c,ポール43の凹部43cに当接可能なロック部45d,45cが形成されている。
【0043】
第1カム31のカム本体31cの周部には、ポール41、ポール43の背面に形成された突部41b,突部43bが当接可能な4つのポール突起31dが形成されている。また、第1カム31のカム本体31cの周部には、第1カム31が一方の方向に回転すると、第2カム45の本体部45aのロック部45c,45dが形成された面と反対側の面(以下、背面という)を押して、外歯41a,外歯43aがラチェット21の内歯23に噛合する方向にポール41,ポール43を追い込む第2カム突起31eが形成されている。
【0044】
本実施の形態例では、
図8に示すように、第2カム45のロック部45cが当接するポール43の凹部43cの面は、第2カム45のロック部45cが押接すると、外歯43aがラチェット21の内歯23に噛合する方向にポール43を追い込む分力と、ポール43が第1突出部35側に押される分力とからなる力が発生するような斜面となっている。
【0045】
同様に、第2カム45のロック部45dが当接するポール41の凹部41cの面は、第2カム45のロック部45dが押接すると、外歯41aがラチェット21の内歯23に噛合する方向にポール41を追い込む分力と、ポール41が第1突出部35側に押される分力とからなる力が発生するような斜面となっている。
【0046】
即ち、第2カム45とポール41、43との押接のうち、第2カム45とポール41との押接は、ベースプレート(第2部材)25から見て時計方向側の第1ガイド35の面35aへポール41を移動させ、他の押接である第2カム45とポール43との押接は、ベースプレート(第2部材)25から見て反時計方向側の第1ガイド35の面35bへポール43を移動させている。
【0047】
ベースプレート25の穴25bには、外端部が穴25bの壁周面に形成された半径方向に延出する2つの溝25cのうちの一方の溝25cに係止され、内端部が第1カム31の断面形状が小判形の第2軸部31bに巻回されたスパイラルスプリング(付勢手段)47が配置されている。このスパイラルスプリング47の付勢力により、第1カム31は、ポール41,ポール43の外歯41a,外歯43aがラチェット21の内歯23に噛合する方向に付勢されている。
【0048】
ポール41,ポール43,第2カム45には、レリーズプレート33方向に突出する突起41d,突起43d,突起45eがそれぞれ形成されている。一方、レリーズプレート33には、ポール41の突起41d,ポール43の突起43dと、第2カム45の突起45eとがそれぞれ係合し、回転することにより、ポール41,ポール43,第2カム45を駆動するカム穴33bとカム穴33cとが形成されている。そして、カム穴33b,33cは、第1カム31(レリーズプレート33)を他方の方向に回転すると、外歯41a,外歯43aがラチェット21の内歯23から離れる方向にポール41,ポール43,第2カム45を引き上げるような形状に形成されている。
【0049】
ラチェット21の内壁面で、内歯23より円形凹部21aの底面側の内壁面には、円周方向に沿って円周の中心に向かって突出する一組の突部51が、前記円周の中心に関して点対称な位置に形成されている。各第2カム45には、この突部51の突出方向の頂部に乗り上げ可能な突起45fが形成されている。突部51の突出量は、第2カム45の突起45fが乗り上げると、外歯41a,外歯43aがラチェット21の内歯23より離れた位置でポール41,ポール43を保持する量に設定されている。そして、第2カム45の突起45fが突部51に乗り上げると、第1カム31の一方の方向への回転(ポール41,ポール43の外歯41a,外歯43aがラチェット21の内歯23に噛合する方向への回転)が禁止され、第1カム31を操作しなくても、ラチェット21とベースプレート25との相対回転が可能となる「ロックフリー状態」となる。
【0050】
また、、本実施形態では、ポール43の外歯43aがラチェット21の内歯23に噛合した状態で、ラチェット21とベースプレート25とを相対回転させると、ポール43から第2カム45へ作用する力は、第1カム31の第2カム突起31eと第2カム45との当接部に向かうようにした。
【0051】
同様に、ポール41の外歯41aがラチェット21の内歯23に噛合した状態で、ラチェット21とベースプレート25とを相対回転させると、ポール41から第2カム45へ作用する力は、第1カム31の第2カム突起31eと第2カム45との当接部に向かうようにした。
【0053】
通常、スパイラルスプリング47の付勢力により、第1カム31,レリーズプレート33,各第2カム45を介してベースプレート25側の各ポール41の外歯41a,各ポール43の外歯43aがラチェット21の内歯23に噛合したロック位置にあり、ラチェット21とベースプレート25との相対回転は禁止され、シートバックはシートクッションに対して回転ができない状態(ロック状態)にある。
【0054】
スプリング47の付勢力に抗して、第1カム31を操作して、他方の方向に回転させると、第1カム31と共に回転するレリーズプレート33が回転し、外歯41a,外歯43aがラチェット21の内歯23から離れる方向に各ポール41,各ポール43,各第2カム45が引き上げられ、各ポール41,各ポール43,各第2カム45は、外歯41a,外歯43aとラチェット21の内歯23との噛合が解除されたロック解除位置に移動し、ラチェット21とベースプレート25との相対回転が可能な状態(アンロック状態)となり、シートバック3はシートクッション2に対して回転可能となる。
【0055】
第1カム31への操作力を解除すると、スパイラルスプリング47の付勢力により、ベースプレート25に設けられたポール41,ポール43の外歯43a,外歯43aが、ラチェット21の内歯23に噛合し、ラチェット21とベースプレート25との相対回転は禁止され、再びロック状態となる。
【0056】
なお、アンロック状態で、シートバック3をシートクッション2に対して回転させ(ラチェット21とベースプレート25とを相対回転させ)、各第2カム45の突起45fが突部51上に至ると、第1カム31への操作力を解除しても、第2カム45の突起45fが突部51上に乗り上げ、レリーズプレート33を介して、全てのポール41、ポール43はアンロック状態に保持される「ロックフリー状態」となる。
【0057】
そして、ロックフリー状態で、シートバック3をシートクッション2に対して回転させ、各第2カム45の突起45fが突部51上から外れると、スパイラルスプリング47の付勢力により、第1カム31,レリーズプレート33,各第2カム45を介してベースプレート25側の各ポール41の外歯41a,各ポール43の外歯43aがラチェット21の内歯23に噛合し、ロック状態に復帰する。
【0058】
本実施形態によれば、各ポール41、各ポール43は同時にロック状態に復帰する。よって、大きなロック力が瞬時に発生する。
【0059】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定するものではない。上記実施の形態では、2つの第2カム45を用いたが、1つの第2カムで2つのポールを追い込み、他のポールは第1カムで追い込むようにしてもよい。この場合でも、2つのポールは同時にロック状態に復帰するので、大きなロック力が瞬時に発生する。
【0060】
さらに、上記実施の形態では、ラチェット21をシートバック側にベースプレート25をシートクッション側に設けたが、ラチェット21をシートクッション側に、ベースプレート25をシートバック側に設けてもよい。
【0061】
さらにまた、上記実施形態では、ポール41は、第1突出部35、第3突出部39、ポール43は第1突出部35、第2突出部37に案内されて円周の半径方向に直線移動するリクライニング装置であったが、
図8に示すような構成のリクライニング装置にも本発明は適用できる。
図8は他の実施形態を説明する図であり、ベースプレートを取り除いた状態でベースプレート側からラチェットを見た図である。
【0062】
図において、図示しないベースプレートと相対回転可能に設けられたラチェット105には、相対回転の円周方向に沿って内歯107が形成されている。
【0063】
4つのポール101は、図示しないベースプレートに設けられた断面形状が略半月状の突出部103を中心に回転可能に設けられている。ポール101の一方の回転端部側でラチェット105の内歯107に対向する面側には、内歯107に噛合可能な外歯109が形成されている。また、ポール101の他方の回転端部側でラチェット105の内歯107に対向する面と反対側の面に突部101aが形成されている。
【0064】
ベースプレートには、各ポール101の両側面を挟み、外歯109が内歯107と噛合するロック位置,外歯109が内歯107から離れたアンロック位置の間で各ポール101を案内するガイドとしての突出部111、突出部113が形成されている。
【0065】
ベースプレートと、ラチェット105との相対回転の軸上には、ラチェット105に回転可能に支持されたシャフト114が設けられている。ベースプレートと、ラチェット105との間には、シャフト114に固着され、シャフト114と共に回転する第1カム115が設けられている。この第1カム115の周部には、ポール101の外歯109が形成された面と反対側の面(以下、背面という)が当接可能な突起115a、115bが形成されている。図において、第1カム115が反時計方向に回転すると、突起115a、突起115bがポール101の突部101aを押して、外歯109が内歯107から離れる方向にポール101を回転させる。
【0066】
一方、隣接する2つのポール101を跨ぐように2つの第2カム117が配置されている。第1カム115は、図において、時計方向に回転すると、第2カム117を押し、第2カム117は2つのポール101の外歯109が設けられた面と反対側の面を押して、外歯109が内歯107に噛合する方向にポール101を回転させる。また、本形態では、第2カム117が当接するポール101の面は、外歯109がラチェット105の内歯107に噛合する方向にポール101を追い込む力と、ポール101が突出部111に押される力とが発生するような斜面となっている。
【0067】
即ち、本形態例では、第2カム117と2つのポール101の押接のうち、第2カム1117と一方のポール101との押接は、ベースプレート(第2部材)から見て時計方向側の突出部111の面へポール101を移動させ、他の押接である第2カム117と他方のポール101との押接は、ベースプレートから見て反時計方向側の突出部111の面へポール101を移動させている。
【0068】
そして、ラチェット105には、円周方向に沿って円周の中心に向かって突出する一組の突部121が、前記円周の中心に関して点対称な位置に形成されている。各第2カム117には、この突部121の突出方向の頂部に乗り上げ可能な突起117aが形成されている。突部121の突出量は、第2カム117の突起117aが乗り上げると、外歯109がラチェット105の内歯107より離れた位置でポール101を保持する量に設定されている。