特許第5714945号(P5714945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許5714945-水噴射式スクリュ圧縮機 図000002
  • 特許5714945-水噴射式スクリュ圧縮機 図000003
  • 特許5714945-水噴射式スクリュ圧縮機 図000004
  • 特許5714945-水噴射式スクリュ圧縮機 図000005
  • 特許5714945-水噴射式スクリュ圧縮機 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714945
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】水噴射式スクリュ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20150416BHJP
   F04C 27/00 20060101ALI20150416BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20150416BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   F04C18/16 J
   F04C18/16 A
   F04C27/00 311
   F04C29/02 351
   F04C29/12 E
   F04C29/12 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-52868(P2011-52868)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2012-149631(P2012-149631A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-290058(P2010-290058)
(32)【優先日】2010年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】吉村 省二
(72)【発明者】
【氏名】野口 透
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−287413(JP,A)
【文献】 特開平10−252901(JP,A)
【文献】 特開昭62−186073(JP,A)
【文献】 実開昭56−155162(JP,U)
【文献】 特表平08−504915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 23/00
F04C 27/00
F04C 29/02
F04C 29/12
F16J 15/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに形成したロータ室内に収容された雌雄咬合するスクリュロータにより対象気体を圧縮し、内部に水を噴射して前記スクリュロータの潤滑を行う水噴射式スクリュ圧縮機において、
前記ロータ室と前記スクリュロータのロータ軸の軸受との間に、前記ロータ室側から順に、第1非接触シール、第2非接触シールおよびリップシールが設けられ、
前記第1非接触シールと前記第2非接触シールとの間に形成される加圧空間に、高圧の前記対象気体を導入する加圧連通路と、
前記第2非接触シールと前記リップシールとの間に形成される開放空間を、前記ケーシング外部に開放する開放連通路と、
吐出した前記対象気体から前記水を分離する水回収器とを備え、
前記水回収器において前記水を分離した前記対象気体を、減圧手段を介して前記加圧連通路に供給することを特徴とする水噴射式スクリュ圧縮機
【請求項2】
前記軸受は、高圧側の軸受であって、
前記第1非接触シールの前記ロータ室側に形成される流出空間を、前記ロータ室内の低圧空間または前記ロータ室に連通する前記対象気体の低圧流路に連通させる低圧連通路を備えることを特徴とする請求項1に記載の水噴射式スクリュ圧縮機
【請求項3】
前記水回収器において前記水を分離した前記対象気体を、ドライヤを介して前記加圧連通路に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の水噴射式スクリュ圧縮機
【請求項4】
前記加圧連通路または前記水回収器から前記加圧連通路までの流路に、該スクリュ圧縮機の運転停止時に閉鎖される開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項に記載の水噴射式スクリュ圧縮機
【請求項5】
前記ロータ軸の周囲に嵌装され、前記開放空間において径方向外側に突出する突出部が形成されたスリーブ部材を有することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の水噴射式スクリュ圧縮機
【請求項6】
前記第1非接触シールおよび前記第2非接触シールは、それぞれ、軸方向に間隔を開けて対向し合う対向面を形成する嵌合部材と、前記対向面にそれぞれ当接する2つのシールリングと、前記2つのシールリングの間に配置され、前記シールリングを前記対向面に押圧する弾性部材とを備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の水噴射式スクリュ圧縮機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水噴射式スクリュ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータ室内に収容された雌雄咬合するスクリュロータで対象気体を圧縮するスクリュ圧縮機では、対象気体を系内に封止、或いは、対象気体に外気などが混入するのを防止するために、ロータ軸のスクリュロータと軸受との間に軸封構造が設けられる。
【0003】
特許文献1に記載されているように、従来のスクリュ圧縮機では、吸込側の軸封装置としてリップシールが用いられ、吐出側の軸封装置としてメカニカルシールが用いられている。
【0004】
リップシールは安価で省スペースの軸封装置であるが、一般に、封止可能な最大圧力が0.3kgf/cm程度である。このため、リップシールは、高圧側では軸封が不十分になったり耐久性が著しく低下するおそれがあるので、低圧側の軸封にのみ使用可能である。一方、メカニカルシールは、高圧の軸封が可能であるが、非常に高価であると共に設置のためのスペースが大きいという問題がある。
【0005】
特許文献1に開示のスクリュ圧縮機では、リップシールを吸い込み側の軸の軸封として用いている他、吐出側の軸の軸封としても用いている。特許文献1のスクリュ圧縮機では、吐出側の軸の軸封のために用いられているリップシールに過剰な圧力が加わらないようにするため、スクリュロータとリップシールとの間にラビリンスシールを設け、さらに、ラビリンスシールとリップシールとの間の空間を吸込流路、もしくはロータ室の吸込側に近い中間圧力部に連通させる連通路を設けている。
【0006】
また、スクリュ圧縮機には、例えば特許文献2に記載されているように、ロータ室内に水を噴射して、潤滑および冷却を行う水噴射式のものがある。水噴射式スクリュ圧縮機の軸封装置としてリップシールを用いる場合、リップシールには、水を封止する機能が求められる。ところが、油と異なり、水は潤滑性が低いため、リップシールで水を封止するとリップシールの摩耗が大きくなってしまう。従って、水噴射式スクリュ圧縮機では、リップシールの寿命が短く、頻繁なメンテナンスが要求されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4559343号公報
【特許文献2】特開2000−45948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題点に鑑みて、本発明は、軸封装置の寿命が長い水潤滑式スクリュ圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明による水噴射式スクリュ圧縮機は、ケーシングに形成したロータ室内に収容された雌雄咬合するスクリュロータにより対象気体を圧縮し、内部に水を噴射して前記スクリュロータの潤滑を行う水噴射式スクリュ圧縮機において、前記ロータ室と前記スクリュロータのロータ軸の軸受との間に、前記ロータ室側から順に、第1非接触シール、第2非接触シールおよびリップシールが設けられ、前記第1非接触シールと前記第2非接触シールとの間に形成される加圧空間に、高圧の前記対象気体を導入する加圧連通路と、前記第2非接触シールと前記リップシールとの間に形成される開放空間を、前記ケーシング外部に開放する開放連通路と、吐出した前記対象気体から前記水を分離する水回収器とを備え、前記水回収器において前記水を分離した前記対象気体を、減圧手段を介して前記加圧連通路に供給するものとする。
【0010】
この構成により、高圧連通路を介して加圧した対象気体を導入することによって加圧空間を昇圧する。これにより、加圧空間の圧力が高圧に維持されるので、ロータ室から流出空間に漏出した水は、加圧空間に流入することができない。また、万が一、加圧空間さらには開放空間に水が漏出したとしても、漏出した水は開放空間から開放連通路を介して外部に放出されるので、シール空間の圧カを増大させることなく、漏出した水がリップシールまで到達することも抑制できる。このため、リップシールを破損させることがなく、水のリップシールへの進入による軸受用潤滑油の漏出も防止できる。
【0011】
また、本発明の水噴射式スクリュ圧縮機は、前記軸受が高圧側の軸受であって、前記第1非接触シールの前記ロータ室側に形成される流出空間を、前記ロータ室内の低圧空間または前記ロータ室に連通する前記対象気体の低圧流路に連通させる低圧連通路を備えてもよい。
【0012】
この構成によれば、低圧連通路を介して吐出圧より低いロータ室または吸込流路に接続することによって流出空間を減圧し、且つ、高圧連通路を介して加圧した対象気体を導入することによって加圧空間を昇圧する。これにより、流出空間よりも加圧空間の圧力が高くなるので、ロータ室から流出空間に漏出した水は、加圧空間に流入することができず、低圧連通路を通ってロータ室に環流される。また、万が一、加圧空間さらには開放空間に水が漏出したとしても、漏出した水は開放空間から開放連通路を介して外部に放出されるので、シール空間の圧カを増大させることなく、漏出した水がリップシールまで到達することも抑制できる。このため、リップシールを破損させることがない効果、水のリップシールへの進入による軸受用潤滑油の漏出の防止の効果が一層顕著となる。
【0013】
(削除)
【0014】
また、前記構成によれば、加圧空間に導入する対象気体に、水噴射式スクリュ圧縮機から吐出した対象気体の一部を流用することができ、加圧連通路に対象気体を供給するために付属設備を用意する必要がない。
【0015】
また、本発明の水噴射式スクリュ圧縮機は、前記水回収器において前記水を分離した前記対象気体を、ドライヤを介して前記加圧連通路に供給してもよい。
【0016】
この構成によれば、この構成によれば、加圧空間に導入する対象気体から、水回収器にて水を除去したうえ、さらにドライヤで水を除去することができ、各軸封手段に加圧連通路を介して水を供給してしまう恐れがない。
【0017】
また、本発明の水噴射式スクリュ圧縮機は、前記加圧連通路または前記水回収器から前記加圧連通路までの流路に、該スクリュ圧縮機の運転停止時に閉鎖される開閉弁が設けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、例えば、複数のスクリュ圧縮機をそれらの吐出側(水回収器以降の吐出流路)で接続した際に、停止されたスクリュ圧縮機の加圧連通路に、他の運転中のスクリュ圧縮機より吐出された対象気体の一部を供給してしまうことが防止され、対象気体を効率的に使用できる。
【0019】
また、本発明の水噴射式スクリュ圧縮機は、前記ロータ軸の周囲に嵌装され、前記開放空間において径方向外側に突出する突出部が形成されたスリーブ部材を有してもよい。
【0020】
この構成(突出部)によれば、ロータ室から漏出して開放空間に進入してきた水を、前記突出部の遠心力によって径方向外側に飛散させ、開放連通路を通じて、外部空間に排出できるので、漏出した水がリップシールまで到達する危険性をさらに低減できる。
【0021】
また、本発明の水噴射式スクリュ圧縮機において、前記第1非接触シールおよび前記第2非接触シールは、それぞれ、軸方向に間隔を開けて対向し合う対向面を形成する嵌合部材と、前記対向面にそれぞれ当接する2つのシールリングと、前記2つのシールリングの間に配置され、前記シールリングを前記対向面に押圧する弾性部材とを備えるものであってもよい。
【0022】
この構成によれば、非接触シールのシールリングとロータ軸とが万が一接触しても、径方向にシールリングが移動され得るため、非接触シールやロータ軸が大きく破損することがない。従って、非接触シール(シールリング)とロータ軸の間隙を極力狭くすることができ、軸封の効果をさらに増すことができるので、漏出した水がリップシールまで到達する危険性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態のスクリュ圧縮機の簡略化断面図である。
図2】本発明の第2実施形態のスクリュ圧縮機の簡略化断面図である。
図3図2の第1非接触シールの拡大断面図である。
図4】本発明の第3実施形態のスクリュ圧縮機の簡略化断面図である。
図5】本発明の第4実施形態のスクリュ圧縮機の簡略化断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る水噴射式スクリュ圧縮機の第1の実施形態である水噴射式スクリュ圧縮機1を簡略化して示す。スクリュ圧縮機1は、ケーシング2内に形成したロータ室3に収容された雌雄咬合する一対のスクリュロータ4で、対象気体(例えば空気)を圧縮して吐出するものであり、ロータ室3内に冷却、シールおよび潤滑のために、水が導入されるようになっている。
【0025】
ケーシング2には、ロータ室3に連通し、ロータ室3に圧縮すべき対象気体を供給するための吸込流路(低圧流路)5と、ロータ室3に連通し、ロータ室3内でスクリュロータ4によって圧縮された対象気体を排出するための吐出流路6と、スクリュロータ4のロータ軸7を吸込側および吐出側で、それぞれ、支持および軸封する構造を設置するための軸受軸封空間8,9が設けられている。
【0026】
ロータ軸7は、吸込側の軸受軸封空間8内に設置されたころ軸受10と、吐出側の軸受軸封空間9内に設置された2つの玉軸受11とで回転可能に支持され、吸込側の軸受軸封空間8を貫通して延伸し、不図示のモータに接続される。
【0027】
ころ軸受10の前記モータ側には、モータ側への異物(ころ軸受10の潤滑油など)の浸入を防ぐリップシール12が設置され、ころ軸受10のスクリュロータ4側には、ころ軸受10の潤滑油がロータ室3側に流出しないように封止するリップシール13と、吸込流路5からころ軸受10側に対象気体や潤滑流体が浸入しないように封止するリップシール14とが設けられている。
【0028】
ケーシング2には、ロータ室3の吐出側(高圧側)の端面を形成する隔壁部15が形成され、隔壁部15によってロータ室3と吐出側の軸受軸封空間9とを区分している。吐出側の軸受軸封空間9の隔壁部15と玉軸受11との間には、ロータ室3側から順番に、第1非接触シール16、第2非接触シール17およびリップシール18が設けられている。
【0029】
第1非接触シール16および第2非接触シール17は、ロータ軸7との間に0.02mm程度の小さい隙間を形成することにより、その隙間を通過しようとする流体に大きな圧力損失を発生させて、流体の通過を抑制する公知のラビリンスシールである。リップシール18は、玉軸受11の潤滑油が、ロータ室3側に漏出するのを防止できるような向きに配設されている。
【0030】
第1非接触シール16、第2非接触シール17およびリップシール18は、軸受軸封空間9をそれぞれ分割することにより、隔壁部15と第1非接触シール16との間に流出空間19を形成し、第1非接触シール16と第2非接触シール17との間に加圧空間20を形成し、第2非接触シール17とリップシール18との間に開放空間21を形成している。
【0031】
ケーシング2には、流出空間19をロータ室3の吸込流路5から隔離された圧縮途中の空間である低圧空間22に連通させる低圧連通路23と、加圧空間20に高圧の対象気体を導入するための加圧連通路24と、開放空間21をケーシング2の外部に連通させて大気開放する開放連通路25,26とが設けられている。
【0032】
さらに、水噴射式スクリュ圧縮機1は、吐出流路6から吐出された対象気体から水を分離する水回収器27を有し、水回収器27において分離して回収した水を吸込流路5に再供給する水供給配管28と、水回収器27において水を分離した対象気体の一部をフィルタ29および減圧弁30を介して加圧連通路24に導入する加圧配管31とを備える。減圧弁30は、対象気体を低圧空間22よりも若干高い程度の圧力まで減圧するように調整されている。例えば、低圧空間22の圧力が0.03MPa程度であれば、加圧空間20での圧力はそれより0.1MPa程度高い圧力(0.13MPa)程度に調整されている。尚、減圧弁30と加圧空間20までの加圧配管31には、減圧弁30とは別の減圧手段、例えばオリフィス等を介設してもよい。
【0033】
この水噴射式スクリュ圧縮機1では、流出空間19がロータ室3内の低圧空間22に連通し、加圧空間20に低圧空間22よりも高圧の対象気体を導入しているので、流出空間19の圧力が、加圧空間20の圧力よりも低くなる。このため、第1非接触シール16とロータ軸7との隙間には、加圧空間20から流出空間19に向かう対象気体の僅かな流れが生じ、ロータ室3から流出空間19に対象気体とともに流出した水が加圧空間20に進入することを防止する。これにより、リップシール18に水が到達して、リップシール18を破損させることを防止でき、玉軸受11の潤滑油の漏出を防止できる。
【0034】
また、加圧空間20からは、第2非接触シール17とロータ軸7との隙間を介して開放空間21に、対象気体が少しずつ流出する。開放空間21に流入した対象気体は、開放連通路25,26によって大気中に放出されるので、開放空間21の圧力は大気圧に維持される。これにより、万が一、例えば水噴射式スクリュ圧縮機1の停止時に、開放空間21に水が進入したとしても、その水を開放連通路25,26から大気に放出するので、リップシール18に与えるダメージを最低限度に留めることができる。
【0035】
続いて、図2に、本発明の第2実施形態である水噴射式スクリュ圧縮機1aを示す。尚、以降の実施形態において、先に説明した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0036】
本実施形態の水噴射式スクリュ圧縮機1aは、ロータ軸7の周囲に嵌装され、リップシール18が摺接するスリーブ部材32を有する。スリーブ部材32は、開放空間21内に延伸し、開放連通路25と開放連通路26との間において、径方向外側に環状に突出する突出部33が形成されている。
【0037】
このスリーブ部材32は、ロータ軸7と共に回転するので、万が一、水がロータ軸7を伝って開放空間21内に進入したとしても、突出部33が水を遠心力によって径方向外側に飛散させる。これにより、確実に水を開放連通路25,26から大気に放出することで、リップシール18に水が到達することを防止する。
【0038】
また、この水噴射式スクリュ圧縮機1aでは、低圧連通路23aは、吸込流路5に連通している。このため、減圧弁30は、対象気体を吸込流路5の圧力よりも僅かに高い圧力まで減圧するように調節される。さらに、本実施形態の第1非接触シール16aおよび第2非接触シール17aは、自己調芯機能を有するものである。
【0039】
図3に、本実施形態の第1非接触シール16aの構成を詳細に示す。図示しないが、第2非接触シール17aも、第1非接触シール16aと同じ構成である。第1非接触シール16aは、ケーシング2に形成された嵌合溝34に嵌合して配設され、軸方向に対向し合う対向面35を形成する2つの対向壁部36を備える嵌合部材37と、対向面35にそれぞれ当接し、内周がロータ軸7に近接する2つのシールリング38と、2つのシールリング38の間に配置され、シールリング38を対向面35に押圧する弾性部材39とからなる。
【0040】
シールリング38は、嵌合部材37の内部で径方向に移動できるように、嵌合部材37の内径よりも小さい外径を有しているが、通常、対向面35との間の摩擦力によって一定の位置に保持されている。しかしながら、シールリング38は、ロータ軸7に当接すると、ロータ軸7に押されて嵌合部材37内で径方向に滑り移動し、ロータ軸7に対して調芯される。
【0041】
この調芯機能により、第1非接触シール16aおよび第2非接触シール17aは、振動などによってロータ軸7と接触したとしても過剰な応力を受けないので、ロータ軸7との間の隙間を0.1mm程度にまで狭小化できる。このため、第1非接触シール16aおよび第2非接触シール17aは、より高い軸封能力を発揮して、水の通過を防止できる。
【0042】
続いて、図4に、本発明の第3実施形態である水噴射式スクリュ圧縮機1bを示す。本実施形態の水噴射式スクリュ圧縮機1bは、吐出側(高圧側)と同様に、ロータ室3と吸込側(低圧側)のロータ軸7のリップシール13との間に、ロータ室3側から順に、第1非接触シール40および第2非接触シール41が配設されている。第1非接触シール40および第2非接触シール41も、高圧側の第1非接触シール16および第2非接触シール17と同様の構成のラビリンスシールである。
【0043】
これにより、低圧側の軸受軸封空間8の中には、第1非接触シール40と第2非接触シール41との間に加圧空間42が形成され、第2非接触シール41とリップシール13との間に開放空間43が形成されている。ケーシング2には、加圧空間42に高圧の対象気体を導入するための加圧連通路44と、開放空間43をケーシング2の外部に連通させて大気開放する開放連通路45とが形成されている。加圧連通路44には、減圧弁30の下流側の加圧配管31から分岐した加圧配管46が接続され、対象気体が供給されるようになっている。
【0044】
本実施形態では、吸込側の軸受軸封空間8にも、対象気体が導入されて高圧に維持される加圧空間42を形成しているため、水噴射式スクリュ圧縮機1bが吸い込む対象気体の圧力、つまり、吸込流路5の圧力が大気圧より高い場合であっても、対象気体が加圧空間42に進入しない。これにより、水が対象気体に随伴して進入し、リップシール13に到達することによって、リップシール13を破損させたり、軸受用潤滑油を漏出させたりしない。
【0045】
さらに、図5に、本発明の第4実施形態である水噴射式スクリュ圧縮機1cを示す。本実施形態の水噴射式スクリュ圧縮機1cは、水回収器27の下流にドライヤ47が設けられ、ドライヤ47で除湿した対象気体を加圧配管31,46および加圧連通路24,44を介して加圧空間20,42に導入するようになっている。また、加圧配管31には、水噴射式スクリュ圧縮機1cの停止時に閉鎖される開閉弁48が設けられている。
【0046】
本実施形態では、ドライヤ47によって水蒸気までも除去した乾燥した対象気体が加圧空間20,42に供給されるので、リップシール18,13が露出する開放空間21,43に湿気が進入することがなく、リップシール18,13を完全なドライ状態に保つことができる。
【0047】
また、本実施形態の水噴射式スクリュ圧縮機1cは、複数台を並列に接続して使用したとしても、それぞれが開閉弁48を備えるので、停止中の噴射式スクリュ圧縮機1cの加圧空間20,42に他の噴射式スクリュ圧縮機1cから対象気体が導入されることがない。これにより、対象気体の無駄な消費がなく、台数制御による運転の効率化ができる。
【0048】
開閉弁48は、その動作を確実にするために、電力が供給されたときのみ開放するノーマルクローズタイプの単動式電磁開閉弁等であることが好ましい。尚、水回収器27とドライヤ47との間にいわゆる保圧逆止弁を設けることも好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1,1a,1b,1c…スクリュ圧縮
2…ケーシング
3…ロータ室
4…スクリュロータ
5…吸込流路(低圧流路)
6…吐出流路
7…ロータ軸
10…ころ軸受
11…玉軸受
15…隔壁部
16,16a,40…第1非接触シール
17,17a,41…第2非接触シール
13,18…リップシール
19…流出空間
20,42…加圧空間
21,43…開放空間
22…低圧空間
23,23a…低圧連通路
24,44…加圧連通路
25,26,45…開放連通路
27…水分離回収器
30…減圧弁
31,46…加圧配管
32…スリーブ部材
33…突出部
35…対向面
37…嵌合部材
38…シールリング
39…弾性部材
47…ドライヤ
48…開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5