(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1層の前記共重合体中における単量体単位としての(メタ)アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびメタアクリル酸メチルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の太陽電池用保護シート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔太陽電池用保護シート(1)〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る太陽電池用保護シート1Aは、基材11と、基材11の一方の面(
図1中では上面)に積層された熱可塑性樹脂層12Aとを備えている。この太陽電池用保護シート1Aは、太陽電池モジュールの裏面保護シート(バックシート)として好ましく用いられるものである。
【0029】
基材11としては、一般的には、電気絶縁性を有し、かつ熱可塑性樹脂層12Aが積層可能なものであればよく、通常は樹脂フィルムを主体とするものが用いられる。
【0030】
基材11に用いられる樹脂フィルムとしては、一般に太陽電池モジュール用バックシートにおける樹脂フィルムとして用いられているものが選択される。このような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン(商品名)などのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂からなるフィルムまたはシートが用いられる。これらの樹脂フィルムのなかでも、ポリエステル系樹脂からなるフィルムが好ましく、特にPETフィルムが好ましい。
【0031】
なお、上記樹脂フィルムは、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、蓚酸アニリド系、シアノアクリレート系、トリアジン系等が挙げられる。
【0032】
樹脂フィルムの熱可塑性樹脂層12Aが積層される側の面には、熱可塑性樹脂層12Aとの密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0033】
基材11の厚さは、太陽電池モジュールに要求される電気絶縁性、水蒸気バリア性等に基づいて適宜設定される。例えば、基材11が樹脂フィルムである場合、その厚さは10〜300μmであることが好ましい。より具体的には、基材11がPETフィルムである場合、電気絶縁性および軽量化の観点から、その厚さは10〜300μmであることが好ましく、20〜250μmであることがより好ましく、30〜200μmであることが特に好ましい。
【0034】
本実施形態における熱可塑性樹脂層12Aは、太陽電池用保護シート1Aを太陽電池モジュールの封止材に接着するためのものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態における熱可塑性樹脂層12Aは、単層からなり、熱可塑性樹脂を主成分とし、かつ顔料を含有する。
【0035】
顔料としては、酸化チタン、タルク、酸化マグネシウム、酸化セリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよびカーボンブラックが挙げられ、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0036】
熱可塑性樹脂層12Aは、上記の顔料を含有すると、押出コーティングによって熱可塑性樹脂層12Aを基材11に形成したときでも、熱可塑性樹脂が結晶化するときに、その結晶構造中に顔料が入り込み、当該顔料によって熱可塑性樹脂が拘束されることで、熱可塑性樹脂層12Aは加熱溶融状態からの冷却時に収縮し難くなり、太陽電池用保護シート1Aのカール量は小さいものとなる。これにより、太陽電池用保護シート1Aのカールに起因して太陽電池モジュールに反りが生じることを抑制することができる。具体的には、太陽電池用保護シート1Aを300mm×300mmの正方形に切り出して水平なテーブルに載置した際、垂直方向へのカール量が20mm以下であると、太陽電池モジュールの反りを抑制することができるが、上記顔料を含有する熱可塑性樹脂層12Aを備えた太陽電池用保護シート1Aによれば、当該カール量を20mm以下に抑えることができる。
【0037】
上記の顔料の中でも、発色性、入手容易性、コスト等の面から、白色顔料としては酸化チタンが好ましく、黒色顔料としてはカーボンブラックが好ましい。
【0038】
顔料の粒子径は、特に限定されないが、平均粒径として0.005〜10μmであることが好ましく、特に0.01〜5μmであることが好ましい。
【0039】
顔料は、熱可塑性樹脂層12A中に2.5〜35質量%含まれることが好ましく、特に2.5〜32.5質量%含まれることが好ましく、さらには3.0〜30質量%含まれることが好ましい。中でも顔料として酸化チタンを使用する場合、酸化チタンは、熱可塑性樹脂層12A中に3.0〜30質量%含まれることが好ましく、特に5.0〜25質量%含まれることが好ましく、さらには7.5〜20質量%含まれることが好ましい。また、顔料としてカーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックは、熱可塑性樹脂層12A中に2.5〜30質量%含まれることが好ましく、特に2.75〜25質量%含まれることが好ましく、さらには3.0〜20質量%含まれることが好ましい。
【0040】
顔料の含有量が上記の下限値以上であることで、太陽電池用保護シート1Aのカール量を小さく抑えることができるとともに、熱可塑性樹脂層12Aを十分に所望の色または反射率にすることができる。また、顔料の含有量が上記の上限値以下であることで、太陽電池モジュールの封止材に対する熱可塑性樹脂層12Aの接着性を維持することができる。
【0041】
本実施形態における熱可塑性樹脂層12Aは熱可塑性樹脂を主成分とするが、熱可塑性樹脂は熱融着作用を有するため、熱可塑性樹脂層12Aは、太陽電池モジュールの封止材に対する接着性が高いものとなる。
【0042】
熱可塑性樹脂層12Aの主成分としての熱可塑性樹脂は、密度が875〜920kg/m
3、特に880〜915kg/m
3であり、示差走査熱量計によって得られる融解熱量ΔHが100J/g以下、特に95J/g以下であるオレフィン系樹脂であることが好ましい。なお、密度は、JIS K7112:1999に準じて測定して得られる値とする。ここで、融解熱量ΔHの下限値は、密度との関係や各樹脂の骨格でおのずと定まるが、理論上は0であることが好ましい。
【0043】
上記のように低密度または超低密度で、かつ融解熱量ΔHが小さい、すなわち結晶性の低いオレフィン系樹脂は、加熱溶融状態から冷却したときにも収縮率が小さい。したがって、当該オレフィン系樹脂を熱可塑性樹脂層12Aの主成分として使用することで、押出コーティングによって熱可塑性樹脂層12Aを基材11に形成したときでも、基材11に向かって働く応力が生じ難く、したがって太陽電池用保護シート1Aのカール量はより小さいものとなる。これにより、太陽電池用保護シート1Aのカールに起因して太陽電池モジュールに反りが生じることをより効果的に抑制することができる。
【0044】
ここで、オレフィン系樹脂の密度が875kg/m
3未満であると、熱可塑性樹脂層12Aにタックが生じて、巻き取った太陽電池用保護シート1Aにブロッキングが発生し、太陽電池用保護シート1Aにブロッキング跡が付いたり、巻き取った太陽電池用保護シート1Aを巻き出すことができなくなったりするおそれがある。一方、オレフィン系樹脂の密度が920kg/m
3を超えたり、オレフィン系樹脂の融解熱量ΔHが100J/gを超えたりすると、太陽電池用保護シート1Aのカール量が大きくなる傾向がある(ただし、上記顔料の配合によってカールを抑制することは可能)。
【0045】
上記オレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1〜20g/10minであることが好ましく、特に2〜10g/10minであることが好ましい。オレフィン系樹脂のMFRが上記範囲内にあることで、熱可塑性樹脂層12Aを押出コーティングによって形成することができる。
【0046】
オレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m
3以上、915kg/m
3未満)、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880kg/m
3以上、910kg/m
3未満)などのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン−ポリプロピレン重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、シクロオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0047】
上記オレフィン系樹脂の中でも、単量体単位としてエチレンを60〜100質量%、特に70〜99.5質量%含有するポリエチレン系樹脂が好ましく、さらには、単量体単位としてエチレンを60〜100質量%、特に70〜99. 5質量%含有する超低密度ポリエチレンが好ましい。かかるポリエチレン系樹脂は、加工適性に優れるとともに、太陽電池モジュールの封止材、特に同じエチレン系であるエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる封止材に対して親和性が高く、接着性に非常に優れる。
【0048】
熱可塑性樹脂層12Aは、前述したオレフィン系樹脂を60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。
【0049】
熱可塑性樹脂層12Aは、上記オレフィン系樹脂以外にも、必要に応じて、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0050】
熱可塑性樹脂層12Aの厚さは、被着体に対して所望の接着性を発揮するとともに、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。具体的には、熱可塑性樹脂層12Aの厚さは、1〜200μmであることが好ましく、電気絶縁性および軽量化などの観点から、10〜180μmであることがより好ましく、50〜150μmであることが特に好ましく、80〜120μmであることがさらに好ましい。
【0051】
なお、本実施形態における熱可塑性樹脂層12Aは、単層であるため、材料コストおよび製造コストの面で有利である。
【0052】
ここで、
図2に示すように、基材11における上記熱可塑性樹脂層12Aが積層されない側の面(
図2中では下面)には、フッ素樹脂層13が設けられることが好ましい。このようにフッ素樹脂層13を設けることで、太陽電池用保護シート1Aの耐候性および耐薬品性が向上する。なお、基材11が樹脂フィルムからなる場合、当該樹脂フィルムのフッ素樹脂層13が積層される側の面は、フッ素樹脂層13との密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されることが好ましい。
【0053】
フッ素樹脂層13は、フッ素を含む層であれば特に制限されず、例えば、フッ素含有樹脂を有するシート(フッ素含有樹脂シート)や、フッ素含有樹脂を含む塗料を塗布してなる塗膜などによって構成される。これらの中でも、太陽電池用保護シート1Aの軽量化のため、フッ素樹脂層13をより薄くする観点から、フッ素含有樹脂を有する塗料を塗布してなる塗膜が好ましい。
【0054】
フッ素含有樹脂シートとしては、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)またはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を主成分とする樹脂をシート状に加工したものが用いられる。PVFを主成分とする樹脂としては、例えば、デュポン社製の「Tedlar」(商品名)が挙げられる。ECTFEを主成分とする樹脂としては、例えば、Solvay Solexis社製の「Halar」(商品名)が挙げられる。ETFEを主成分とする樹脂としては、例えば、旭硝子社製の「Fluon」(商品名)が挙げられる。
【0055】
フッ素樹脂層13がフッ素含有樹脂シートである場合、接着層を介して、基材11にフッ素樹脂層13が積層される。接着層は、基材11およびフッ素含有樹脂シートに対して接着性を有する接着剤から構成される。かかる接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤などが用いられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
一方、フッ素樹脂層13がフッ素含有樹脂を有する塗料を塗布してなる塗膜である場合、通常、接着層を介することなく、フッ素含有樹脂を含有した塗料を基材11に直接塗布することにより、基材11にフッ素樹脂層13が積層される。
【0057】
フッ素含有樹脂を含有する塗料としては、溶剤に溶解または水に分散されたものであって、塗布可能なものであれば特に限定されない。
【0058】
塗料に含まれるフッ素含有樹脂としては、本発明の効果を損なわず、フッ素を含有する樹脂であれば特に限定されないが、通常、塗料の溶媒(有機溶媒または水)に溶解し、架橋可能であるものが用いられる。フッ素含有樹脂としては、架橋性官能基を有するフルオロオレフィン樹脂を用いることが好ましい。架橋性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基などが挙げられる。
【0059】
架橋性官能基を有するフルオロオレフィン樹脂の具体例としては、旭硝子社製の「LUMIFLON」(商品名)、セントラル硝子社製の「CEFRAL COAT」(商品名)、DIC社製の「FLUONATE」(商品名)などのクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類、ダイキン工業社製の「ZEFFLE」(商品名)などのテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類などが挙げられる。これらの中でも、耐候性および顔料分散性などの観点から、CTFEを主成分としたポリマーおよびTFEを主成分としたポリマーが好ましく、「LUMIFLON」および「ZEFFLE」が特に好ましい。
【0060】
塗料は、上述したフッ素含有樹脂の他に、架橋剤、架橋触媒、溶媒等を含んでいてもよく、さらに必要であれば、顔料、充填剤等の無機化合物を含んでいてもよい。
【0061】
フッ素含有樹脂の塗膜は、耐候性および耐擦傷性を向上させるため、架橋剤により架橋していることが好ましい。架橋剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、金属キレート類、シラン類、イソシアネート類またはメラミン類が好適に用いられる。太陽電池用保護シート1Aを屋外において長期間使用することを想定した場合、耐候性の観点から、架橋剤としては、脂肪族のイソシアネート類が好ましい。
【0062】
塗料を基材11に塗布する方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、
バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等によって、得られるフッ素樹脂層13が所望の厚さになるように塗布すればよい。
【0063】
フッ素樹脂層13の厚さは、耐候性、耐薬品性、軽量化などを考慮して設定され、5〜50μmであることが好ましく、特に10〜30μmであることが好ましい。
【0064】
ここで、フッ素樹脂層13は、熱可塑性の材料からなるものであってもよく、その場合、塗料の塗布ではなく、押出コーティング法によって形成することができる。かかるフッ素樹脂層13は、基材11に直接押出コーティングしてもよいし、基材11との間に、基材11との接着力を高めることのできる他の層を介在させてもよい。例えば
図3に示すように、フッ素樹脂層13と基材11との間に、第2の熱可塑性樹脂層12Cを介在させてもよい。この場合、基材11に対して、第2の熱可塑性樹脂層12Cとフッ素樹脂層13とを共押出コーティングすることが好ましい。
【0065】
熱可塑性の材料からなるフッ素樹脂層13としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等、またはそれらの変性ポリマーを主成分とするものが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性の材料からなるフッ素樹脂層13は、高耐候性を有している利点がある。上記樹脂の中でも、基材11または第2の熱可塑性樹脂層12Cとの密着性の観点から、ETFEが特に好ましい。
【0066】
第2の熱可塑性樹脂層12Cとしては、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m
3以上、915kg/m
3未満)、中密度ポリエチレン(MDPE,密度:915kg/m
3以上、942kg/m
3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942kg/m
3以上)などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、オレフィン系エラストマー(TPO)、シクロオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも特に好ましいものとして、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体およびエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(EGMA)が挙げられる。このような樹脂は、官能基を有し、極性を有しているため、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。上記樹脂の中でも、官能基を含有しているフッ素樹脂からなるフッ素樹脂層13およびPET等からなる基材11の両方への接着性が良好であるEGMAが特に好ましい。
【0067】
第2の熱可塑性樹脂層12Cの厚さは、基材11に対する所望の接着性を発揮するとともに、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。具体的には、第2の熱可塑性樹脂層12Cの厚さは、2〜100μmであることが好ましく、5〜75μmであることが特に好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましい。
【0068】
また、基材11が樹脂フィルムからなる場合、基材11における上記熱可塑性樹脂層12Aが積層されない側の面には、
図4に示すように、基材11とフッ素樹脂層13との間に蒸着層14が設けられてもよいし、
図5に示すように、接着層15を介して金属シート16が積層されてもよいし、さらに蒸着層14または金属シート16の表面(
図4および
図5中では下面)には、上述したフッ素樹脂層13が設けられてもよい。このように蒸着層14または金属シート16を設けることで、太陽電池用保護シート1Aの防湿性および耐候性を向上させることができる。
【0069】
なお、樹脂フィルムからなる基材11の蒸着層14または接着層15が積層される側の面は、蒸着層14または接着層15との密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されることが好ましい。
【0070】
蒸着層14は、金属もしくは半金属、または金属もしくは半金属の酸化物、窒化物、珪化物などの無機材料から構成され、かかる材料から構成されることで、基材11(太陽電池用保護シート1A)に防湿性(水蒸気バリア性)および耐候性を付与することができる。
【0071】
蒸着層14を形成する蒸着方法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法などの化学気相法、または真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理気相法が用いられる。これらの方法の中でも、操作性や層厚の制御性を考慮した場合、スパッタリング法が好ましい。
【0072】
この蒸着層14の原料となる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトウリム(Na)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)などが挙げられる。半金属としては、例えば、ケイ素(Si)、ホウ素(B)などが挙げられる。これらの金属または半金属の酸化物、窒化物、酸窒化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸窒化アルミニウムなどが挙げられる。
【0073】
蒸着層14は、一種の無機材料からなるものであっても、複数種の無機材料からなるものであってもよい。蒸着層14が複数種の無機材料からなる場合、各無機材料からなる層が順に蒸着された積層構造の蒸着層であってもよいし、複数種の無機材料が同時に蒸着された蒸着層であってもよい。
【0074】
蒸着層14の厚さは、水蒸気バリア性を考慮して適宜設定され、用いる無機材料の種類や蒸着密度などによって変更される。通常、蒸着層14の厚さは、5〜200nmであることが好ましく、特に10〜100nmであることが好ましい。
【0075】
一方、金属シート16も、上記蒸着層14と同様に、基材11(太陽電池用保護シート1A)に防湿性(水蒸気バリア性)および耐候性を付与することができる。金属シート16の材料としては、かかる機能を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム−鉄合金等のアルミニウム合金などの金属が挙げられる。
【0076】
金属シート16の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、ピンホール発生頻度の低さ、機械強度の強さ、水蒸気バリア性の高さ、および軽量化などの観点から、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが特に好ましい。
【0077】
接着層15は、基材11および金属シート16に対して接着性を有する接着剤から構成される。接着層15を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤などが用いられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
接着層15の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、通常は、1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmであることが特に好ましい。
【0079】
なお、以上の実施形態では、基材11の一方の面に熱可塑性樹脂層12Aが積層された太陽電池用保護シート1Aを例示したが、本発明の太陽電池用保護シートはこれに限定されず、基材11の他方の面(上記一方の面とは反対側の面)にも熱可塑性樹脂層が積層されてもよい。
【0080】
〔太陽電池用保護シート(2)〕
図6に示すように、第2の実施形態に係る太陽電池用保護シート1Bは、第1の実施形態に係る太陽電池用保護シート1Aと同様に、基材11と、基材11の一方の面(
図6中では上面)に積層された熱可塑性樹脂層12Bとを備えているが、熱可塑性樹脂層12Bは、基材11上に積層された第1層121と、第1層121上に積層された第2層122との2層から構成される。
【0081】
第2層122は、第1の実施形態に係る太陽電池用保護シート1Aの熱可塑性樹脂層12Aと同様の材料からなる。したがって、第2層122は、熱可塑性樹脂、好ましくは前述したオレフィン系樹脂を主成分とし、かつ前述した顔料を含有する。
【0082】
ただし、顔料は、第2層122中に2.5〜35質量%含まれることが好ましく、特に2.5〜32.5質量%含まれることが好ましく、さらには3.0〜30質量%含まれることが好ましい。中でも顔料として酸化チタンを使用する場合、酸化チタンは、第2層122中に3.0〜30質量%含まれることが好ましく、特に5.0〜25質量%含まれることが好ましく、さらには7.5〜20質量%含まれることが好ましい。また、顔料としてカーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックは、第2層122中に2.5〜30質量%含まれることが好ましく、特に2.75〜25質量%含まれることが好ましく、さらには3.0〜20質量%含まれることが好ましい。
【0083】
第2層122の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、15〜150μmであることが特に好ましく、25〜125μmであることがさらに好ましい。
【0084】
第1層121は、基材11に対して接着性を示す材料からなる。第1層121が基材11に対して接着性を示す材料からなることで、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1Bは、基材11と熱可塑性樹脂層12Bとの接着性に優れるものとなる。一方、第2層122は、熱可塑性樹脂、特に前述したオレフィン系樹脂の優れた熱融着作用により、太陽電池モジュールの封止材に対する接着力が高い。これらの接着力の高さから、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1Bは層間剥離し難く、これにより、太陽電池モジュールの内部を長期間にわたって保護することができる。
【0085】
第1層121は、エチレンと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種との共重合体(以下「共重合体F」ということがある。)を主成分とすることが好ましい。上記材料からなる第1層121は、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。
【0086】
上記共重合体Fは、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。また、上記共重合体Fは、常温でアモルファス(非結晶)であり、弾性を有するものである。したがって、仮に第2層122が加熱溶融状態から冷却したときに収縮したとしても(顔料の含有によって収縮は抑制されるが)、第1層121が共重合体Fを主成分とすることで、当該第1層121によってその収縮応力を緩和することができる。これにより、共押出コーティングにて第1層121および第2層122を基材11に形成したときでも、基材11に向かって働く応力が生じ難く、したがって太陽電池用保護シート1Bのカール量はより小さいものとなる。
【0087】
第1層121は、好ましくは、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、またはエチレンと酢酸ビニルとの共重合体を主成分とし、それら共重合体の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられ、中でもアクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチルが好ましい。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
第1層121は、特に、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とするのが好ましく、それら共重合体の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
上記共重合体F中における単量体単位としての(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルの合計含有量は、2〜40質量%であることが好ましく、3〜35質量%であることが特に好ましい。すなわち、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体では(メタ)アクリル酸の含有量、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体では(メタ)アクリル酸エステルの含有量、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体では酢酸ビニルの含有量は、2〜40質量%であることが好ましく、3〜35質量%であることが特に好ましい。
【0091】
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルまたは酢酸ビニルの含有量が上記範囲内にあることで、前述した基材11に対する高い接着力およびカール抑制効果がより顕著なものとなる。なお、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルの含有量が2質量%未満の場合は、基材11および第2層122に対する接着力が低くなる場合があり、40質量%以上の場合は、十分な凝集力が得られず、太陽電池用保護シート1Bを巻き取ったときに、巻きずれが発生するおそれがある。
【0092】
第1層121は、共重合体Fを主成分として含有するのが好ましく、具体的には、当該共重合体Fを60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することが特に好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましい。第1層121は、当然、共重合体Fのみからなるものであってもよい。
【0093】
第1層121は、上記主成分とする樹脂以外にも、必要に応じて、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。ただし、第1層121が顔料を含むと、接着性が低下し、基材11に対する密着性が低くなるおそれがあるため、第1層121は顔料を含まないことが好ましい。
【0094】
第1層121の厚さは、5〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることが特に好ましく、15〜75μmであることがさらに好ましい。
【0095】
ここで、第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率は、1:9〜7:3であることが好ましく、1.5:8.5〜6.5:3.5であることが特に好ましく、2:8〜6:4であることがさらに好ましい。第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率が上記の範囲内にあることで、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1Bは、カール量がより小さいものとなる。
【0096】
第1層121の構成樹脂(共重合体F)および第2層122のオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1〜20g/10minであることが好ましく、特に2〜10g/10minであることが好ましい。両樹脂のMFRが上記範囲内にあることで、第1層121および第2層122を共押出コーティングによって形成することができる。
【0097】
なお、本実施形態における熱可塑性樹脂層12Bは、第1層121および第2層122からなるものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限り、他の層を備えていてもよい。例えば、第1層121と第2層122との間に第3層を備えていてもよい。
【0098】
また、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1Bは、第1の実施形態に係る太陽電池用保護シート1Aと同様に、他の層、例えばフッ素樹脂層13、第2の熱可塑性樹脂層12C、蒸着層14、接着層15、金属シート16等を備えていてもよい。
【0099】
〔太陽電池用保護シートの製造方法〕
上記第1の実施形態に係る太陽電池用保護シート1A(一例として
図1に示す太陽電池用保護シート1A)を製造するには、上記熱可塑性樹脂層12Aを構成する熱可塑性樹脂組成物を、基材11の少なくとも一方の面に押出コーティングして、基材11に熱可塑性樹脂層12Aを形成することが好ましい。
【0100】
具体的には、Tダイ押出機やTダイ製膜機等を使用して、熱可塑性樹脂層12Aを形成する樹脂組成物を溶融・混練し、基材11を一定の速度にて移動させながら、その基材11の一方の面に、溶融した樹脂組成物を押し出して積層し、基材11上に熱可塑性樹脂層12Aを形成し、太陽電池用保護シート1Aを得る。
【0101】
また、上記第2の実施形態に係る太陽電池用保護シート1B(一例として
図6に示す太陽電池用保護シート1B)を製造するには、上記熱可塑性樹脂層12Bの第1層121を構成する第1の樹脂組成物と、第2層122を構成する第2の樹脂組成物とを、第1の樹脂組成物が基材11側となるように、基材11の少なくとも一方の面に共押出コーティングして、基材11上に積層された第1層121と、第1層121上に積層された第2層121とからなる熱可塑性樹脂層12Bを形成することが好ましい。
【0102】
具体的には、Tダイ製膜機等を使用して、上記第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物をそれぞれ溶融・混練し、基材11を一定の速度にて移動させながら、その基材11の一方の面に、溶融した第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を共押出コーティングして積層し、基材11上に第1層121および第2層122からなる熱可塑性樹脂層12Bを形成し、太陽電池用保護シート1Bを得る。
【0103】
上記のような(共)押出コーティング法によれば、高い生産性で安価に太陽電池用保護シート1を製造することができる。また、太陽電池モジュールの封止材に対して太陽電池用保護シート1A,1Bを接着するための接着剤層を別途設ける必要がないため、当該接着剤の分解等による経時劣化を防止することができる。
【0104】
なお、
図2〜
図5に示すように、基材11に他の層が形成されている場合には、基材11の当該他の層が形成されていない側の面に、熱可塑性樹脂層12A,12Bを形成すればよい。
【0105】
熱可塑性樹脂層12A,12Bを形成する樹脂組成物を溶融する温度は、溶融した樹脂組成物の温度(熱)によって基材11が変形しない程度とし、80〜350℃であることが好ましく、150〜300℃であることが特に好ましい。
【0106】
また、熱可塑性樹脂層12A,12Bを形成する樹脂組成物のTダイ製膜機からの吐出量は、目的とする熱可塑性樹脂層12A,12Bの厚みや基材11の移動速度に応じて適宜調整される。
【0107】
基材11は、例えば、ロール・トゥ・ロール方式により一定速度にて、長手方向に移動(搬送)され、その移動速度は、熱可塑性樹脂層12A,12Bを形成する樹脂組成物のTダイ製膜機からの吐出量に応じて適宜調整される。
【0108】
上記のような(共)押出コーティング法によれば、基材11の一方の面に、Tダイ製膜機から溶融した樹脂組成物を(共)押出コーティングして積層するだけで、基材11に熱可塑性樹脂層12A,12Bを強固に接合することができ、高い生産性で太陽電池用保護シート1A,1Bを製造することができる。
【0109】
〔太陽電池モジュール〕
図7は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの概略断面図である。本実施形態に係る太陽電池モジュール10は、光電変換素子である結晶シリコン、アモルファスシリコン等からなる複数の太陽電池セル2と、それら太陽電池セル2を封止する電気絶縁体からなる封止材(充填層)3と、封止材3の表面(
図7中では上面)に積層されたガラス板4と、封止材3の裏面(
図7中では下面)に積層された、裏面保護シート(バックシート)としての太陽電池用保護シート1(上記実施形態における太陽電池用保護シート1A,1B)とから構成されている。
【0110】
太陽電池用保護シート1は、熱可塑性樹脂層12Aまたは熱可塑性樹脂層12Bの第2層122が封止材3と接するように、封止材3に積層されており、熱可塑性樹脂、好ましくは前述したオレフィン系樹脂を主成分とするそれらの層によって、封止材3に対する接着力は高いものとなっている。特に、太陽電池用保護シート1として太陽電池用保護シート1Bを使用した場合には、基材11と熱可塑性樹脂層12Bとの接着性にも優れる。これらの接着力の高さから、本実施形態に係る太陽電池モジュール10の内部は、太陽電池用保護シート1によって長期間にわたって保護される。さらに、本実施形態における太陽電池用保護シート1はカール量が小さいため、得られる太陽電池モジュール10に反りが生じることは抑制されている。したがって、太陽電池モジュール10の反りに起因して、太陽電池モジュール10の設置時に不具合を生じたり、太陽電池モジュール10が破損したりすることは防止される。
【0111】
封止材3の材料は、オレフィン系樹脂であることが好ましく、例えば、熱可塑性樹脂層12Aまたは熱可塑性樹脂層12Bの第2層122の主成分として例示したオレフィン系樹脂であることが好ましく、特に酸素等に対するガスバリア性が高いこと、架橋が容易であること、入手のし易さ等の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)であることが好ましい。封止材3の材料がオレフィン系樹脂であると、オレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層12Aまたは熱可塑性樹脂層12Bの第2層122との親和性が大きくなり、熱可塑性樹脂層12A,12Bと封止材3との接着力がより高くなる。
【0112】
上記太陽電池モジュール10を製造する方法は特に限定されず、例えば、封止材3を構成する2枚のシートで太陽電池セル2をサンドイッチし、当該シートの一方の露出面に太陽電池用保護シート1、他方の露出面にガラス板4を設置し、それらを加熱しながらプレスして一体化することにより、太陽電池モジュール10を製造することができる。このとき、太陽電池用保護シート1は、熱可塑性樹脂層12A,12Bと封止材3との熱融着により、封止材3に接合されることとなる。
【0113】
なお、
図8に示すように、ガラス板4の替わりに、太陽電池用保護シート1を表面保護シート(フロントシート)として使用することもできる。この場合、太陽電池セルにフレキシブル基板を用いれば、フレキシブル性を有する太陽電池モジュールを得ることができる。このように、太陽電池モジュールをフレキシブル化することにより、ロール・トゥ・ロールで大量生産することが可能となる。また、フレキシブル性を有する太陽電池モジュールは、アーチ状や放物線状の壁面を有する物体にもフィットさせることができるので、ドーム状の建築物や高速道路の防音壁などに設置することが可能となる。
【0114】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0115】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0116】
〔実施例1〕
基材としてのPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製,商品名:メリネックスS,厚さ125μm)の一方の面にコロナ処理(出力2000W)を施した。そして、Tダイ製膜機により、ポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 43−1,密度:905kg/m
3,融解熱量ΔH:79J/g)97.5質量部と顔料としての酸化チタン(石原産業社製,商品名:タイペーク CR−60,平均粒径:0.21μm)2.5質量部との混合物を温度300℃で溶融し、厚さ150μmになるように上記PETフィルムのコロナ処理面に押出コーティングして、熱可塑性樹脂層を形成し、
図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
【0117】
ここで、上記ポリエチレン系樹脂の密度は、JIS K7112:1999に準じて測定した。また、上記ポリエチレン系樹脂の融解熱量ΔHは、以下のようにして測定した。
【0118】
<融解熱量測定>
上記ポリエチレン系樹脂について、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製,型番:Q2000)を用いて、下記の条件で熱量変化の測定を行い、データを採取した。
・サンプル調整条件
−40℃から250℃まで昇温速度20℃/分で加熱を行った。
・測定条件
250℃で5分間保持した後に、降温速度20℃/分で−40℃まで冷却を行い、熱量の変化を測定した。
得られたデータより固化に伴うピークの面積を算出し、これを融解熱量ΔH(J/g)とした。
【0119】
〔実施例2〕
ポリエチレン系樹脂の配合量を85.0質量部、酸化チタンの配合量を15.0質量部とする以外、実施例1と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0120】
〔実施例3〕
ポリエチレン系樹脂の配合量を65.0質量部、酸化チタンの配合量を35.0質量部とする以外、実施例1と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0121】
〔実施例4〕
酸化チタンを酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製,商品名:#500,平均粒径:5μm)に変更する以外、実施例2と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0122】
〔実施例5〕
酸化チタンを酸化セリウム(シーアイ化成社製,商品名:Nano Tek CeO
2,平均粒径:0.012μm)に変更する以外、実施例2と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0123】
〔実施例6〕
酸化チタンをタルク(日本タルク社製,商品名:MICRO ACE P−3,平均粒径:5.0μm)に変更する以外、実施例2と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0124】
〔実施例7〕
酸化チタンを炭酸カルシウム(日東粉化工業社製,商品名:NN#500,平均粒径:4.4μm)に変更する以外、実施例2と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0125】
〔実施例8〕
酸化チタンをカーボンブラック(三菱化学社製,商品名:#45L,平均粒径:0.024μm)に変更し、ポリエチレン系樹脂の配合量を97.0質量部、カーボンブラックの配合量を3.0質量部とする以外、実施例1と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0126】
〔実施例9〕
基材としてのPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製,商品名:メリネックスS,厚さ125μm)の一方の面にコロナ処理(出力2000W)を施した。そして、Tダイ製膜機により、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 30BA02,アクリル酸ブチル含有量:30質量%,以下「共重合体A」という。)と、ポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 43−1,密度905kg/m
3)85.0質量部および顔料としての酸化チタン(石原産業社製,商品名:タイペーク CR−60,平均粒径:0.21μm)15.0質量部の混合物とを、それぞれ温度300℃で溶融し、各厚さが40μmおよび110μmになるように、そして共重合体Aが基材側となるように、上記PETフィルムのコロナ処理面に対して直接共押出コーティングし、第1層(共重合体A:厚さ40μm)および第2層(密度905kg/m
3のポリエチレン系樹脂:厚さ110μm)からなる熱可塑性樹脂層を形成し、
図6に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
【0127】
〔実施例10〕
第2層における酸化チタンをカーボンブラック(三菱化学社製,商品名:#45L,平均粒径:0.024μm)に変更し、ポリエチレン系樹脂の配合量を97.0質量部、カーボンブラックの配合量を3.0質量部とする以外、実施例9と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0128】
〔比較例1〕
酸化チタンを配合せず、ポリエチレン系樹脂の配合量を100.0質量部とする以外、実施例1と同様にして太陽電池用保護シートを作製した。
【0129】
〔試験例1〕<カール量測定>
実施例または比較例で得られた太陽電池用保護シートを300mm×300mmの正方形に切り出し、水平なテーブルに置き、四隅のテーブル面からの垂直距離(mm)を測定した。得られた4箇所の各距離の平均値を算出し、これをカール量(mm)とした。結果を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
表1から分かるように、実施例の太陽電池用保護シートは、カール量が小さいものであった。