(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
競技用の車両には、通常、駆動力を有効に伝えるためにリミテッド・スリップ・ディファレンシャル・ギア(以下、LSD)が装着される。このLSDは、デファレンシャル・ギアの動作を制限し、駆動輪の空転を抑制する。
【0006】
旋回状態にある車両においては、内輪差が生じる。外側の駆動輪への負荷は、内側の駆動輪への負荷よりも大きい。外側駆動輪に装着されたタイヤの転動半径は、内側駆動輪に装着されたタイヤの転動半径よりも小さい。左右対称な断面形状を有するタイヤでは、外側タイヤの転動半径と内側タイヤの転動半径との差が大きい。このタイヤを装着した車両においては、LSDを介して駆動力を伝えると、内側に装着されたタイヤのグリップが抵抗となり、十分な旋回速度が得られないという問題がある。左右対称な断面形状は、タイヤの円滑な旋回走行を阻害してしまう。
【0007】
円滑な旋回走行の観点から、内側駆動輪に装着されたタイヤをスリップさせて走行させることがある。この場合、タイヤが早期に磨耗してしまう。
【0008】
本発明の目的は、旋回性能に優れる空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤでは、軸方向において、その断面の輪郭が左右非対称である。このタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、このトレッドの第一端から半径方向略内向きに延びる第一サイドウォールと、この第一サイドウォールよりも半径方向略内側に位置する第一ビードと、上記トレッドの第二端から半径方向略内向きに延びる第二サイドウォールと、この第二サイドウォールよりも半径方向略内側に位置する第二ビードと、上記第一ビードと上記第二ビードとの間に架け渡されたカーカスとを備えている。上記断面において、その最大高さを示す位置は軸方向における中心から上記第一ビードの側にずれている。上記最大高さを示す位置から上記第一端までの半径方向距離Aoは、この最大高さを示す位置から上記第二端までの半径方向距離Aiよりも小さい。このタイヤが車両に装着されたとき、この車両の幅方向において、上記第一ビードの側が外側に位置し、上記第二ビードの側が内側に位置する。
【0010】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、軸方向において、上記中心から上記最大高さを示す位置までの長さの最大幅に対する比率は5%以上30%以下である。
【0011】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記半径方向距離Aiと上記半径方向距離Aoとの差(Ai−Ao)は5mm以上25mm以下である。
【0012】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記第一ビードは第一コア及びこの第一コアから半径方向外向きに延びる第一エイペックスを備えている。上記第二ビードは、第二コア及びこの第二コアから半径方向外向きに延びる第二エイペックスを備えている。ビードベースラインからこの第一エイペックスの先端までの半径方向高さBoは、このビードベースラインからこの第二エイペックスの先端までの半径方向高さBiよりも大きい。
【0013】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記半径方向高さBoと上記半径方向高さBiとの差(Bo−Bi)は5mm以上30mm以下である。
【0014】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記カーカスは2枚以上のプライを備えている。このタイヤでは、それぞれのプライが上記第一コア及び上記第二コアの周りで折り返されることにより、この第一コアから第二コアに向かって延在する本体と、この本体から半径方向略外向きに延在する一対の折返し部とが形成されている。上記第一ビードの側において、ビードベースラインからその端までの半径方向高さが最大となる折返し部が第一折返し部とされ、上記第二ビードの側において、このビードベースラインからその端までの半径方向高さが最大となる折返し部が第二折返し部とされたとき、この第一折返し部の半径方向高さPoはこの第二折返し部の半径方向高さPiよりも大きい。
【0015】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記半径方向高さPoと上記半径方向高さPiとの差(Po−Pi)は10mm以上50mm以下である。
【0016】
好ましくは、この空気入りタイヤは、補強層をさらに備えている。このタイヤでは、この補強層は、上記第一サイドウォールの軸方向内側において、上記カーカスに沿って半径方向に延在している。
【0017】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、ビードベースラインから上記補強層の半径方向外側に位置する端までの半径方向高さの上記最大高さに対する比率は50%以上75%以下である。
【0018】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記補強層は並列された多数のコードを含んでいる。これらコードは、アラミド繊維からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、旋回状態にある車両において、外側に位置するタイヤの転動半径と内側に位置するタイヤの転動半径との差が小さい。このタイヤでは、円滑な旋回走行が達成されうる。このタイヤは、旋回性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
図1から3には、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2の断面が示されている。
図2には、このタイヤ2の断面の右半分が示されている。
図3には、このタイヤ2の断面の左半分が示されている。これら図において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。図中、一点鎖線CLはこのタイヤ2の軸方向における中心を表している。
図1に示されているように、このタイヤ2では、軸方向において、その断面の輪郭は左右非対称である。
【0023】
このタイヤ2は、トレッド4と、一対のサイドウォール6と、一対のビード8と、カーカス10と、ベルト12と、バンド14と、フォールド層16と、補強層18とを備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、サーキット、ジムカーナ等の競技用の車両に装着される。
【0024】
トレッド4は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、トレッド面20を備えている。このトレッド面20は、このタイヤ2の断面において、その輪郭の一部をなしている。このトレッド面20は、路面と接地する。図示されているように、このトレッド面20には溝は刻まれていない。このトレッド面20に溝が刻まれて、トレッドパターンが形成されてもよい。
【0025】
図1において、実線TL1はトレッド4の一方の端の部分におけるトレッド面20の仮想延長線を表している。実線SL1は、一方のサイドウォール6Fの端の部分におけるサイドウォール面22の仮想延長線を表している。この
図1では、この仮想延長線TL1と仮想延長線SL1との交点が符号P1で表されている。本明細書では、この交点P1がトレッド4の第一端と称される。この
図1において、実線TL2はトレッド4の他方の端の部分におけるトレッド面20の仮想延長線を表している。実線SL2は、他方のサイドウォール6Sの端の部分におけるサイドウォール面22の仮想延長線を表している。この
図1では、この仮想延長線TL2と仮想延長線SL2との交点が符号P2で表されている。本明細書では、この交点P2がトレッド4の第二端と称される。
【0026】
一対のサイドウォール6のうち、紙面において右側に位置するサイドウォール6F(以下、第一サイドウォール)は、トレッド4の第一端P1の部分から半径方向略内向きに延びている。左側に位置するサイドウォール6S(以下、第二サイドウォール)は、トレッド4の第二端P2の部分から半径方向略内向きに延びている。第一サイドウォール6F及び第二サイドウォール6Sは、架橋されたゴム組成物からなる。このタイヤ2では、第一サイドウォール6Fのゴム組成物は第二サイドウォール6Sのゴム組成物と同等である。
【0027】
このタイヤ2では、左右のサイドウォール6は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらに両サイドウォール6は、カーカス10の外傷を防止する。
【0028】
一対のビード8のうち、紙面において右側に位置するビード8F(以下、第一ビード)は第一サイドウォール6Fよりも半径方向略内側に位置している。左側に位置するビード8S(以下、第二ビード)は、第二サイドウォール6Sよりも半径方向略内側に位置している。
【0029】
第一ビード8Fは、第一コア24Fと、この第一コア24Fから半径方向外向きに延びる第一エイペックス26Fとを備えている。第一コア24Fは、リング状である。第一コア24Fは、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、第一コア24Fにスチール製ワイヤーが用いられる。第一エイペックス26Fは、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス26Fは、架橋されたゴム組成物からなる。この第一エイペックス26Fは、高い硬度を有する。
【0030】
第二ビード8Sは、第二コア24Sと、この第二コア24Sから半径方向外向きに延びる第二エイペックス26Sとを備えている。第二コア24Sは、リング状である。第二コア24Sは、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、第二コア24Sにスチール製ワイヤーが用いられる。このタイヤ2では、この第二コア24Sは、前述の第一コア24Fと同等である。第二エイペックス26Sは、半径方向外向きに先細りである。第二エイペックス26Sは、架橋されたゴム組成物からなる。この第二エイペックス26Sは、高い硬度を有する。このタイヤ2では、第二エイペックス26Sのゴム組成物は、前述の第一エイペックス26Fのゴム組成物と同等である。
【0031】
カーカス10は、2枚のプライ28からなる。これらプライ28は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。タイヤ2の内周面の側に位置するプライ28aは、第一コア24F及び第二コア24Sの周りで軸方向内側から外側に向かって折り返されている。これにより、このプライ28aには、第一コア24Fから第二コア24Sに向かって延在する本体30aと、この本体30aから半径方向略外向きに延在する一対の折返し部32aとが形成されている。トレッド4の内側においてプライ28aの外側に位置しているプライ28bは、第一コア24F及び第二コア24Sの周りで軸方向内側から外側に向かって折り返されている。これにより、このプライ28bには、第一コア24Fから第二コア24Sに向かって延在する本体30bと、この本体30bから半径方向略外向きに延在する一対の折返し部32bとが形成されている。
【0032】
図2において、実線BBLはビードベースラインを表している。このビードベースラインは、タイヤ2が装着されるリム(図示されず)のリム径(JATMA参照)を規定する線である。両矢印FPaは、折返し部32aの半径方向高さを表している。この高さFPaは、ビードベースラインから折返し部32aの端34aまでの半径方向高さで示される。両矢印FPbは、折返し部32bの半径方向高さを表している。この高さFPbは、ビードベースラインから折返し部32bの端34bまでの半径方向高さで示される。
【0033】
このタイヤ2の第一ビード8Fの側においては、折返し部32aの端34aは折返し部32bの端34bよりも半径方向外側に位置している。折返し部32aの高さFPaは、折返し部32bの高さFPbよりも大きい。このタイヤ2の第一ビード8Fの側においては、折返し部32aにおいて、ビードベースラインから折返し部32の端34までの半径方向高さが最大となる。このタイヤ2では、この折返し部32aが第一折返し部32Fとされ、この折返し部32aの高さFPaが第一折返し部32Fの高さPoとされる。なお、折返し部32bの高さFPbが折返し部32aの高さFPaよりも大きい場合、この折返し部32bが第一折返し部32Fとされる。さらにカーカス10が3枚以上のプライ28で構成される場合には、第一ビード8Fの側においてその半径方向高さが最大となる折返し部32が第一折返し部32Fとされる。
【0034】
図3において、実線BBLはビードベースラインを表している。両矢印SPaは、折返し部32aの半径方向高さを表している。この高さSPaは、ビードベースラインから折返し部32aの端までの半径方向高さで示される。両矢印SPbは、折返し部32bの半径方向高さを表している。この高さSPbは、ビードベースラインから折返し部32bの端までの半径方向高さで示される。
【0035】
このタイヤ2の第二ビード8Sの側においては、折返し部32aの端34aは折返し部32bの端34bよりも半径方向外側に位置している。折返し部32aの高さSPaは、折返し部32bの高さSPbよりも大きい。このタイヤ2の第二ビード8Sの側においては、折返し部32aにおいて、ビードベースラインから折返し部32の端34までの半径方向高さが最大となる。このタイヤ2では、この折返し部32aが第二折返し部32Sとされ、この折返し部32aの高さSPaが第二折返し部32Sの高さPiとされる。なお、折返し部32bの高さSPbが折返し部32aの高さSPaよりも大きい場合、この折返し部32bが第二折返し部32Sとされる。さらにカーカス10が3枚以上のプライ28で構成される場合には、第二ビード8Sの側においてその半径方向高さが最大となる折返し部32が第二折返し部32Sとされる。
【0036】
図示されていないが、それぞれのプライ28は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。バイアス構造のカーカス10が採用されてもよい。
【0037】
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層36a及び外側層36bからなる。図示されていないが、内側層36a及び外側層36bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、10°以上35°以下である。内側層36bのコードの傾斜方向は、外側層36aのコードの傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。
【0038】
バンド14は、ベルト12を覆っている。図示されていないが、このバンド14は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。バンド14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このコードによりベルト12が拘束されるので、ベルト12のリフティングが抑制される。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0039】
フォールド層16は、第一ビード8Fの周りを軸方向内側から外側に向かって折り返されている。フォールド層16は、第一ビード8Fとカーカス10の一部をなすプライ28bとの間に位置している。このタイヤ2の第二ビード8Sの部分には、このフォールド層16と同等の部材は設けられていない。このフォールド層16は、第一ビード8Fの部分の剛性向上に寄与しうる。
【0040】
図示されていないが、フォールド層16は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0041】
補強層18は、第一サイドウォール6Fの軸方向内側において、カーカス10に沿って延在している。この補強層18の半径方向外側に位置する端38(以下、外端)は、本体30bと折返し部32aとの間に位置している。この外端38は、半径方向において、折返し部32aの端34aよりも内側に位置している。この補強層18の外端38は、折返し部32aにより覆われている。この補強層18の半径方向内側に位置する端40(以下、内端)は、フォールド層16と折返し部32bとの間に位置している。この内端40は、フォールド層16と折返し部32bとの間に挟まれている。このタイヤ2では、この内端40は、第一コア24Fの上面42から半径方向外側に5mm離れた位置から第一エイペックス26Fの先端44Fから半径方向内側に10mm離れた位置までの範囲に配置される。このタイヤ2の第二サイドウォール6S及び第二ビード8Sの部分には、この補強層18と同等の部材は設けられていない。この補強層18は、このタイヤ2の第一サイドウォール6F及び第一ビード8Fの部分の剛性向上に寄与しうる。適度な剛性付与の観点から、この補強層18の厚みは0.6mm以上が好ましく、0.8mm以下が好ましい。
【0042】
図示されていないが、補強層18は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが半径方向に対してなす角度の絶対値は、35°から60°である。このタイヤ2では、コードは有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。特に好ましくは、アラミド繊維である。コード密度は、30エンズ/5cm以上が好ましく、75エンズ/5cm以下が好ましい。コードの繊度は、900dtex以上が好ましく、2200dtex以下が好ましい。特に好ましいコードの繊度は、1670dtexである。
【0043】
前述したように、このタイヤ2は競技用の車両に装着される。より詳細には、このタイヤ2は、この車両の幅方向において、第一ビード8Fの側が外側に位置し、第二ビード8Sの側が内側に位置するように装着される。この車両が旋回するとき、旋回外側のタイヤ2においては、その接地中心は車両の幅方向外側、換言すれば、第一ビード8Fの側に移動する。旋回内側のタイヤ2においては、その接地中心は車両の幅方向内側、換言すれば、第二ビード8Sの側に移動する。
【0044】
図1及び
図2において、符号PHは、ビードベースラインからの半径方向高さが最大となるトレッド面20上の位置を表している。換言すれば、符号PHはこのタイヤ2の最大高さを示す位置である。
図2中、この最大高さが両矢印Hで表されている。
図1において、両矢印Lはこのタイヤ2の中心CLからこの位置PHまでの軸方向長さを表している。両矢印Wは、このタイヤ2の軸方向における最大幅を表している。両矢印Aoは最大高さを示す位置PHからトレッド4の第一端P1までの半径方向距離を表している。この距離Aoは、第一ビード8Fの側におけるキャンバー量とも称される。両矢印Aiは最大高さを示す位置PHからトレッド4の第二端P2までの半径方向距離を表している。この距離Aiは、第二ビード8Sの側におけるキャンバー量とも称される。
【0045】
図示されているように、このタイヤ2では、その断面において、最大高さを示す位置PHが軸方向における中心CLから第一ビード8Fの側にずれている。しかも、距離Aoが距離Aiよりも小さい。本発明によれば、旋回状態にある車両において、外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との乖離が防止される。外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との差が小さいので、この車両は円滑に旋回しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。
【0046】
このタイヤ2では、長さLの最大幅Wに対する比率は5%以上が好ましく30%以下が好ましい。この比率が5%以上に設定されることにより、旋回状態にある車両において、外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との差が小さくなり、車両が円滑に旋回しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。この観点から、この比率は10%以上がより好ましい。この比率が30%以下に設定されることにより、旋回外側に位置するタイヤ2のショルダー部分への負荷が軽減される。このタイヤ2は、操縦安定性及び耐摩耗性に優れる。この観点から、この比率は20%以下がより好ましい。
【0047】
このタイヤ2では、距離Aiと距離Aoとの差(Ai−Ao)は5mm以上25mm以下が好ましい。この差(Ai−Ao)が5mm以上に設定されることにより、旋回状態にある車両において、外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との差が小さくなり、車両が円滑に旋回しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。この観点から、この差(Ai−Ao)は10mm以上がより好ましい。この差(Ai−Ao)が25mm以下に設定されることにより、このタイヤ2に十分な接地幅が確保される。このタイヤ2は、グリップ性能に優れる。この観点から、この差(Ai−Ao)は15mm以下がより好ましい。
【0048】
前述したように、
図2の両矢印Poは第一折返し部32Fの半径方向高さを表している。この高さPoは、ビードベースラインから折返し部32aの端34aまでの半径方向高さで示される。両矢印Boは、第一エイペックス26Fの半径方向高さを表している。この高さBoは、ビードベースラインからこの第一エイペックス26Fの先端44Fまでの半径方向高さで示される。両矢印Roは、補強層18の半径方向高さを表している。この高さRoは、ビードベースラインからこの補強層18の外端38までの半径方向高さで示される。
【0049】
前述したように、
図3の両矢印Piは第二折返し部32Sの半径方向高さを表している。前述したように、この高さPiは、ビードベースラインから折返し部32aの端34aまでの半径方向高さで示される。両矢印Biは、第二エイペックス26Sの半径方向高さを表している。この高さBiは、ビードベースラインからこの第二エイペックス26Sの先端44Sまでの半径方向高さで示される。
【0050】
このタイヤ2では、高さBoは高さBiよりも大きい。これにより、旋回状態にある車両においては、外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との乖離が防止される。外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との差が小さいので、この車両は円滑に旋回しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。
【0051】
このタイヤ2では、高さBoと高さBiとの差(Bo−Bi)は5mm以上30mm以下が好ましい。この差(Bo−Bi)が5mm以上に設定されることにより、旋回状態にある車両において、外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との差が小さくなり、車両が円滑に旋回しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。この観点から、この差(Bo−Bi)は15mm以上がより好ましい。この差(Bo−Bi)が30mm以下に設定されることにより、外側に位置するタイヤ2の撓み量が適切に維持される。このタイヤ2は、グリップ性能に優れる。この観点から、この差(Bo−Bi)は25mm以下がより好ましい。
【0052】
このタイヤ2では、高さPoは高さPiよりも大きい。これにより、旋回状態にある車両においては、外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との乖離が防止される。外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との差が小さいので、この車両は円滑に旋回しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。
【0053】
このタイヤ2では、高さPoと高さPiとの差(Po−Pi)は10mm以上50mm以下が好ましい。この差(Po−Pi)が10mm以上に設定されることにより、旋回状態にある車両において、外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との差が小さくなり、車両が円滑に旋回しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。この観点から、この差(Po−Pi)は20mm以上がより好ましい。この差(Po−Pi)が50mm以下に設定されることにより、外側に位置するタイヤ2の撓み量が適切に維持される。このタイヤ2は、グリップ性能に優れる。この観点から、この差(Po−Pi)は40mm以下が好ましい。
【0054】
このタイヤ2では、旋回状態にある車両において、外側に位置するタイヤ2の転動半径と内側に位置するタイヤ2の転動半径との差が小さくなり、車両が円滑に旋回しうるとの観点から、高さRoの高さHに対する比率は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。この比率は、75%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
【0055】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0057】
[実施例1]
図1、2及び3に示された構造を備え、下記の表7に示された仕様を備えた競技用タイヤを製作した。このタイヤのサイズは、「245/40R18」である。このタイヤでは、軸方向における中心から上記最大高さを示す位置までの長さLの、最大幅Wに対する比率(L/W)は17%とされた。左右のキャンバー量の差(Ai−Ao)は、12mmとされた。左右のエイペックス高さの差(Bo−Bi)は、20mmとされた。左右の折返し部高さの差(Po−Pi)は、30mmとされた。このタイヤは、第一サイドウォールの軸方向内側においてカーカスに沿って延在する補強層を備えている。この補強層の高さRoの最大高さHに対する比率(Ro/H)は、63%とされた。この補強層には、アラミド繊維からなるコードが含まれている。コードが半径方向に対してなす角度の絶対値は、45°とされた。コード密度は、35エンズ/5cmとされた。このコードの繊度は、1670dtexとされた。
【0058】
[実施例2−29及び比較例1−2]
補強層を設けることなく、比率(L/W)、差(Ai−Ao)、差(Bo−Bi)及び差(Po−Pi)を下記の表1から6の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−29及び比較例1−2のタイヤを得た。なお、比較例1は従来のタイヤである。この比較例1では、その断面の輪郭が左右対称とされている。
【0059】
[実施例30−34]
比率(Ro/H)を下記の表6及び7の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例30−34のタイヤを得た。
【0060】
[実施例35−39]
補強層に含まれるコードを下記の表7の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例35−39のタイヤを得た。なお、実施例35の補強層では、ナイロン繊維からなるコードが用いられた。コード密度は、53エンズ/5cmとされた。このコードの繊度は、1400dtexとされた。実施例36の補強層では、ポリエステル繊維からなるコードが用いられた。コード密度は、50エンズ/5cmとされた。このコードの繊度は、1670dtexとされた。実施例37の補強層では、レーヨン繊維からなるコードが用いられた。コード密度は、51エンズ/5cmとされた。このコードの繊度は、1840dtexとされた。実施例38の補強層では、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維からなるコードが用いられた。コード密度は、50エンズ/5cmとされた。このコードの繊度は、1670dtexとされた。実施例39の補強層では、その材質がスチールとされたコードが用いられた。コード密度は、38エンズ/5cmとされた。このコードの構成は、2+2 0.23とされた。
【0061】
[走行テスト]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに内圧が200kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が2000ccである競技用車両に装着した。ドライバーに、この車両をジムカーナコース(1周約1.5km)で運転させた。タイムトライアルを2回行い、ベストタイムに基づいて評価した。この結果が、下記の表1から8に示されている。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
表1から8に示されるように、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。