特許第5714995号(P5714995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714995
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】マスキングシート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20150416BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20150416BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20150416BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150416BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20150416BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150416BHJP
   B05D 1/32 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   B32B27/00 M
   B32B27/26
   C09J7/02 Z
   C09J133/00
   C09J11/06
   B05D1/32 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-151006(P2011-151006)
(22)【出願日】2011年7月7日
(65)【公開番号】特開2013-18130(P2013-18130A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233675
【氏名又は名称】日鉄住金ドラム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595178748
【氏名又は名称】王子タック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】井村 治郎
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 均
(72)【発明者】
【氏名】小澤 正
(72)【発明者】
【氏名】塚田 力
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−338913(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0291300(US,A1)
【文献】 特開2010−126650(JP,A)
【文献】 特開2009−024130(JP,A)
【文献】 特開平04−281874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
C09J 1/00−201/10
B05B15/00− 15/12
B05C 7/00− 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面基材と、該表面基材の片面に設けられた粘着剤層とを備え、前記粘着剤層は、アクリル系粘着主剤とエポキシ系硬化剤とを含有する2液硬化型アクリル系粘着剤によって形成され、且つ、ゲル分率が75%以上であり、
アクリル系粘着主剤の質量平均分子量が90万以上であることを特徴とするマスキングシート。
【請求項2】
前記表面基材の透気度が200秒以上である、請求項1に記載のマスキングシート。
【請求項3】
ドラム缶の開口部を塞ぐ際に使用される、請求項1または2に記載のマスキングシート。
【請求項4】
前記粘着剤層は直線状とされ、前記表面基材の片面に、複数本が互いに平行に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマスキングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物を塗装する際に非塗装部を設けるためのマスキングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
金属成形体や樹脂成形体等の被塗物においては、意匠性向上や表面保護のために、表面を塗装することがある。その際、被塗物表面の全面を塗装せずに、部分的に塗装しない部分(以下、「非塗装部」)を設けることがある。非塗装部を設ける方法としては、塗装の前に、表面基材の片面に粘着剤層が形成されたマスキングシートを被塗物表面に貼着する方法が広く知られている。例えば、特許文献1には、開口部を有する容器を塗装する際に、容器内部に塗料が入り込まないように開口部にマスキングシートを貼着して塞ぐことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−49065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、被塗物に貼着されたマスキングシートは、塗料の加熱乾燥後に剥離される。ところが、特許文献1に記載のマスキングシートにおいては、塗料の加熱乾燥後に被塗物から剥離すると、粘着剤の一部が非塗装部に残ることがあった。粘着剤が被塗装部に残ると、被塗物が容器である場合には容器の内容物に粘着剤が混入するおそれがあり、また、不必要な粘着性を生じることで埃等が付着する問題が発生するため、残った粘着剤を除去しなければならなかった。
本発明は、被塗物に貼着した状態で加熱した後、剥離しても粘着剤が被塗物に残りにくいマスキングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]表面基材と、該表面基材の片面に設けられた粘着剤層とを備え、前記粘着剤層は、アクリル系粘着主剤とエポキシ系硬化剤とを含有する2液硬化型アクリル系粘着剤によって形成され、且つ、ゲル分率が75%以上であり、アクリル系粘着主剤の質量平均分子量が90万以上であることを特徴とするマスキングシート。
]前記表面基材の透気度が200秒以上である、[1]に記載のマスキングシート。
]ドラム缶の開口部を塞ぐ際に使用される、[1]または[2]に記載のマスキングシート。
[4]前記粘着剤層は直線状とされ、前記表面基材の片面に、複数本が互いに平行に配置されている、[1]〜[3]のいずれかに記載のマスキングシート。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマスキングシートは、被塗物に貼着した状態で加熱した後に剥離しても粘着剤が被塗物に残りにくい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のマスキングシートの一実施形態を示す平面図である。
図2図1のI−I’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<マスキングシート>
本発明のマスキングシートの一実施形態について説明する。
図1および図2に、本実施形態のマスキングシートを示す。本実施形態のマスキングシート10は、ドラム缶の開口部を塞ぐようにドラム缶に貼着されるものであり、円形状の表面基材11と、表面基材11の片面に設けられた粘着剤層12とを備える。本実施形態における粘着剤層12は直線状であり、表面基材11の片面に複数本設けられ、複数本の粘着剤層12は互いに平行に配置されている。
【0009】
(表面基材)
表面基材11としては、例えば、紙類、フィルム類等を適宜使用できる。紙類としては、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙等の紙類、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル等の各種高分子フィルム、蒸着紙、合成紙、布、不織布、金属ホイル等から適宜選択される。さらに、これらの積層体を使用することもできる。これらの中でも、安価な点では、紙類が好ましい。
表面基材11の厚さは10〜200μmであることが好ましい。表面基材11の厚さが前記下限値以上であれば、塗装の際に塗料が通過することを防ぎやすく、前記上限値以下であれば、可撓性を向上させることができる。
【0010】
表面基材11の透気度は200秒以上であることが好ましく、300秒以上であることがより好ましい。ここで、透気度は、王研式透気度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000)に従って測定した値である。前記透気度は数値が高い程、透気性が小さくなり、表面基材11の透気度が前記下限値以上であれば、塗装の際に塗料が通過することを充分に防ぐことができる。
【0011】
(粘着剤層)
粘着剤層12は、アクリル系粘着主剤とエポキシ系硬化剤とを含有する2液硬化型アクリル系粘着剤によって形成されており、具体的には、アクリル系粘着主剤がエポキシ系硬化剤によって架橋して硬化した硬化物を含む層である。
粘着剤層12には、必要に応じて、粘着性を向上させるための粘着付与剤が含まれていてもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
【0012】
アクリル系粘着主剤は、アクリル単量体単位を有するアクリル重合体からなる。アクリル系単量体単位は、アクリル単量体に由来する。
アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
これらの中でも、粘着性に優れることから、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。アクリル酸n−ブチル単位とアクリル酸2−エチルヘキシル単位とを有するアクリル系粘着主剤を用いると、特に金属に対してある程度高い粘着性を発揮するため、粘着剤層12が粘着付与剤を含有しなくてもよくなる。粘着付与剤は分子量が小さめで、耐熱性が低いため、粘着剤層12が粘着付与剤を含まない場合には、粘着剤層12の耐熱性をより向上させることができる。そのため、マスキングシート10を塗被物に貼着した状態で加熱した後、剥離しても粘着剤が塗被物に残ることをより防止できる。
【0013】
アクリル系粘着主剤は、硬化剤による硬化が容易になることから、架橋性アクリル単量体単位を有することが好ましい。
架橋性アクリル単量体単位は、架橋性アクリル単量体に由来する。架橋性アクリル単量体としては、カルボキシル基含有共重合性モノマー、ヒドロキシ基含有共重合性モノマー、アミノ基含有共重合性モノマー、グリシジル基含有共重合性モノマーが挙げられる。
カルボキシル基含有共重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グラタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸やその無水物などが挙げられる。
ヒドロキシ基含有共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミドなどが挙げられる。
グリシジル基含有共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0014】
アクリル系粘着主剤における架橋性アクリル単量体単位の含有量は0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。架橋性アクリル単量体単位の含有量が前記下限値以上であれば、充分に架橋でき、再剥離性を高くでき、前記上限値以下であれば、充分な粘着力を確保できる。
【0015】
アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は80万以上であることが好ましく、90万以上であることがより好ましい。本明細書において、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。アクリル系粘着主剤の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、粘着剤層12の耐熱性をより高くできる。
また、アクリル系粘着主剤が重合によって容易に得られる点では、アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は200万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましい。
【0016】
粘着剤層12のゲル分率は75%以上であることが必須であり、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。ここで、ゲル分率は、以下の方法により測定された値である。
すなわち、粘着剤層12を採取し、精秤したものを酢酸エチル中に浸漬し、40℃、12時間放置してゾル分を溶解させてアクリル樹脂溶液を得る。このアクリル樹脂溶液を、150メッシュのフィルタを用いて濾過し、フィルタ上に残った固形物を100℃、30分間で乾燥し、乾燥後の固形物の質量を精秤する。そして、{(乾燥後の固形物の質量[g])/浸漬前のアクリル樹脂[g]×100}の式より、ゲル分率を求める。
粘着剤層12のゲル分率が前記下限値未満であると、粘着剤層12の耐熱性が不充分になる。そのため、マスキングシート10を、粘着剤層12により塗被物に貼着した状態で加熱した後に剥離すると、粘着剤が塗被物に残ることがある。
一方、ゲル分率が高すぎると、粘着性が低下する傾向にあるため、ゲル分率は98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。
ゲル分率を前記範囲にする方法としては、硬化剤の添加量を調整する方法、硬化時の温度を調整する方法が挙げられる。具体的には、硬化剤の添加量を多くする程、あるいは、硬化時の温度を高くする程、ゲル分率が高くなる。
【0017】
本発明における硬化剤は、エポキシ系硬化剤である。ここで、エポキシ系硬化剤とは、分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物のことである。エポキシ系硬化剤の具体例としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物が挙げられるが、汎用性の点からは、グリシジルエーテル型エポキシ化合物が好ましい。グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型等が挙げられる。
【0018】
アクリル系粘着主剤と硬化剤との割合は、粘着主剤100質量部に対して硬化剤が0.5〜3.0質量部であることが好ましく、0.7〜1.5質量部であることがより好ましい。硬化剤の添加量が前記下限値以上であれば、剥離後に粘着剤が被塗物に残ることをより防止でき、前記上限値以下であれば、充分な粘着性を確保できる。
【0019】
<剥離シート付きマスキングシート>
上記マスキングシート10は、ドラム缶に貼着される前には離型シートが積層されて、剥離シート付きマスキングシートとされている。
離型シートとしては、離型シート用基材と該離型シート用基材の片面に設けられた離型層とを有する積層シート、あるいは、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
積層シートにおける離型シート用基材としては、紙類、高分子フィルムが使用される。離型層を構成する離型剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系離型剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系離型剤が好ましく用いられる。
【0020】
(製造方法)
離型シート付きマスキングシートの製造方法としては、離型シートの離型処理面の上に、直線状の粘着剤層12を複数本平行に形成し、その粘着剤層12の上に表面基材11を貼着する方法、表面基材11の片面に、直線状の粘着剤層12を複数本平行に形成し、その粘着剤層12の上に離型シートを貼着する方法が挙げられる。
【0021】
(使用方法)
上記剥離シート付きのマスキングシートの使用方法の一例について説明する。
本使用例では、まず、離型シートを粘着剤層12から剥離し、これにより露出した粘着剤層12により、マスキングシート10を、ドラム缶の開口部を塞ぐように貼着する。その際の貼着は、ラベラーを用いてもよいし、手作業でもよい。
次いで、ドラム缶の表面をスプレー塗装し、加熱乾燥する。加熱温度は、塗料に含まれる樹脂および溶剤の種類に応じて調整される。
次いで、開口部からマスキングシート10を剥離する。剥離方法としては、粘着テープに貼り付け、転写させて剥離する方法や、吸引して剥離する方法、手作業で剥離する方法が挙げられる。
上記マスキングシート10の使用方法によれば、スプレー塗装の際に開口部から塗料がドラム缶の内部に入り込むことを防止できる。
【0022】
(作用効果)
本実施形態のマスキングシート10においては、粘着剤層12のゲル分率が高く、また、エポキシ系硬化剤を使用して粘着剤層を形成するため、耐熱性に優れる。そのため、ドラム缶に貼着した状態で加熱乾燥した後、ドラム缶から剥離しても、粘着剤がドラム缶に残らず、粘着剤を除去する作業が不要になる。
また、マスキングシート10においては、複数本の粘着剤層12が互いに平行に配置されているため、加熱によってドラム缶内部の空気が膨張した場合でも、膨張した空気を、粘着剤層12,12同士の間の粘着剤層のない部分を通って外部に容易に放出させることができる。したがって、加熱乾燥時のドラム缶内部の空気の膨張によるマスキングシート10の剥離を防止できる。
【0023】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、上記マスキングシートは円形状であったが、非塗装部の形状に応じて選択すればよく、楕円形状や多角形状(例えば、三角形状、四角形状等)であってもよい。
また、粘着剤層は、表面基材の片面にドット状で設けられていてもよいし、表面基材の片面の全面に設けられていてもよい。
また、本発明のマスキングシートは、ドラム缶の周面や上面に貼着されてもよい。さらには、被塗物はドラム缶に限らず、例えば、各種金属や樹脂の成形品、壁、柱、天井、床等の構造物であってもよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」のことである。
また、以下の例において、アクリル系粘着主剤の質量平均分子量、表面基材の透気度、粘着剤層のゲル分率は、以下の方法で測定して求めた値である。
[アクリル系粘着主剤の質量平均分子量]
アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶解した試料をゲルパーミエーションクラマトグラフィ(ポンプ:PU−980、検出器:RI−2031Plus、日本分光株式会社製)を用いて測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。
[表面基材の透気度]
透気度は、王研式透気度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000)に従って測定した値である。
[粘着剤層のゲル分率]
マスキングシートの粘着剤層を採取し、精秤したものを酢酸エチル中に浸漬し、40℃、12時間放置してゾル分を溶解させてアクリル樹脂溶液を得た。このアクリル樹脂溶液を、150メッシュのフィルタを用いて濾過し、フィルタ上に残った固形物を100℃、30分間で乾燥し、乾燥後の固形物の質量を精秤した。そして、{(乾燥後の固形物の質量[g])/浸漬前のアクリル樹脂[g]×100}の式より、ゲル分率を求めた。
【0025】
(実施例1)
アクリル酸2−エチルヘキシル単位とアクリル酸n−ブチル単位とアクリル酸4−ヒドロキシブチル単位を主成分として有するアクリル系粘着主剤(質量平均分子量:100万)100部に、架橋剤としてエポキシ系硬化剤(グリシジルエーテル型エポキシ化合物)0.9部を配合して、2液硬化型粘着剤を得た。
上記2液硬化型粘着剤を、離型シート(王子タック株式会社製青グラシン82)に、ナイフコータにより塗工し、100℃、3分間加熱して、粘着剤層(厚さ:30μm)を形成した。
上記粘着剤層の露出面に、アート紙(王子製紙社製N金藤片面、透気度:3800秒、厚さ:78μm)を貼り合わせて、離型シート付きのマスキングシートを得た。このマスキングシートの粘着剤層のゲル分率を測定したところ、89%であった。
【0026】
(実施例2)
エポキシ系硬化剤の配合量を1.2部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型シート付きのマスキングシートを得た。このマスキングシートの粘着剤層のゲル分率を測定したところ、97%であった。
【0027】
参考例3)
アクリル系粘着主剤として質量平均分子量が35万のものを用い、エポキシ系硬化剤の配合量を0.5部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型シート付きのマスキングシートを得た。このマスキングシートの粘着剤層のゲル分率を測定したところ、75%であった。
【0028】
(実施例4)
表面基材として、上質紙(透気度:180秒)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型シート付きのマスキングシートを得た。
【0029】
(比較例1)
エポキシ系硬化剤の配合量を0.3部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型シート付きのマスキングシートを得た。このマスキングシートの粘着剤層のゲル分率を測定したところ、70%であった。
【0030】
(比較例2)
アクリル系粘着主剤の質量平均分子量を35万とし、エポキシ系硬化剤の配合量を0.3部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型シート付きのマスキングシートを得た。このマスキングシートの粘着剤層のゲル分率を測定したところ、60%であった。
【0031】
(比較例3)
エポキシ系硬化剤の代わりにイソシアネート系硬化剤(三井化学社製D110N)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型シート付きのマスキングシートを得た。このマスキングシートの粘着剤層のゲル分率を測定したところ、75%であった。
【0032】
各実施例および各比較例のマスキングシートについて、塗料の通過防止性、加熱時の剥離防止性、剥離後の糊残りを以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
[塗料の通過防止性]
内容積1Lのスチール缶の開口部にマスキングシートを貼着し、フタル酸樹脂系の塗料をスプレー塗装し、風速12m/秒の熱風乾燥機中で、150℃、15分間放置した。その後、マスキングシートを剥離し、マスキングシートを通過した塗料のマスキング部への付着の状況を目視により観察し、以下の基準で評価した。
×:マスキング部に塗料の付着あり。
○:マスキング部に塗料の付着はないが、マスキングシートの粘着剤層側に塗料の染み出しがある。
◎:マスキング部に塗料の付着なし、且つ、マスキングシートの粘着剤層側に塗料の染み出しなし。
[加熱時の剥離防止性]
内容積1Lのスチール缶の開口部にマスキングシートを貼着し、風速12m/秒の熱風乾燥機中で、150℃、15分間放置した。このときのマスキングシートの剥離状況を目視により観察し、以下の基準で評価した。
×:熱風乾燥中に、マスキングシートが剥離し、開口部から脱落した。
○:マスキングシートの剥離が一部で見られたが、開口部からの脱落はなかった。
◎:マスキングシートの剥離なし
[剥離後の糊残り]
上記加熱時の剥離防止性を評価した後に、マスキングシートを剥離して、糊残りの状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
×:糊残りあり。
○:糊残りなし。
【0033】
【表1】
【0034】
硬化剤としてエポキシ系硬化剤を用いて形成した粘着剤層を備え、その粘着剤層のゲル分率が75%以上であった実施例1,2,及び参考例3のマスキングシートでは、剥離後の糊残りが防止されていた。
これに対し、粘着剤層のゲル分率が75%未満であった比較例1,2の粘着剤層、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を用いて形成した粘着剤層を備えた比較例3のマスキングシートでは、剥離後の糊残りが見られた。
【0035】
また、アクリル系粘着主剤の質量平均分子量が80万以上であった実施例1,2,4のマスキングシートは、加熱時の剥離防止性にも優れていた。
また、表面基材の透気度が200秒以上であった実施例1,2及び参考例3のマスキングシートは、塗料の通過防止性にも優れていた。
【符号の説明】
【0036】
10 マスキングシート
11 表面基材
12 粘着剤層
図1
図2