(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715061
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】カテーテルホルダ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20150416BHJP
A61B 19/02 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
A61M25/00
A61B19/02 505
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-531881(P2011-531881)
(86)(22)【出願日】2010年9月2日
(86)【国際出願番号】JP2010065021
(87)【国際公開番号】WO2011033939
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2009-214998(P2009-214998)
(32)【優先日】2009年9月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中元 良
(72)【発明者】
【氏名】三觜 健太
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−290395(JP,A)
【文献】
特表2004−524912(JP,A)
【文献】
特表2001−505449(JP,A)
【文献】
特開平10−286263(JP,A)
【文献】
特表2008−510579(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0186010(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0149914(US,A1)
【文献】
米国特許第05830183(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/08
A61B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを収納するホルダチューブの一部に取り付ける取付部と、
当該取付部と一体的に構成され、前記ホルダチューブから露出する前記カテーテルの非収納部を保持する複数の保持部と、を有し、
前記複数の保持部は、ヒンジ状に回動自在な第1の部材に設けられた凹部および第2の部材に設けられた凹部によって構成され、
前記第1の部材および前記第2の部材が閉じるとき、前記第1の部材に設けられた凹部および前記第2の部材に設けられた凹部が互いに合わさって前記非収納部を挟む、複数の挟持部を含むことを特徴とするカテーテルホルダ。
【請求項2】
前記第1の部材および前記第2の部材に設けられたストッパ部を有し、当該ストッパ部は、互いに係合して前記第1の部材および前記第2の部材を開かないように規制し、離脱して前記第1の部材および前記第2の部材を開閉可能な状態にする請求項1に記載のカテーテルホルダ。
【請求項3】
前記第1の部材および前記第2の部材が閉じることによって互いに係合し、前記第1の部材および前記第2の部材が開くことによって離脱する、前記第1の部材および前記第2の部材に設けられた係合部を有する請求項1または請求項2に記載のカテーテルホルダ。
【請求項4】
複数の前記保持部は、前記カテーテルの軸方向に交わる断面の形状がアンダーカット形状をなす、前記非収納部に嵌合する複数の凹部を含む請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のカテーテルホルダ。
【請求項5】
前記取付部は、アンダーカット形状をなす凹部からなり、前記第1の部材に設けられ、前記第1の部材および前記第2の部材が開いた際に、前記ホルダーチューブを外れずに保持するように構成される、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のカテーテルホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテルをパッケージするために用いるカテーテルホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、一般に、例えば特許文献1に記載されているような円形に巻かれたホルダチューブに収納され、そしてコネクタやシースの一部等、ホルダチューブから露出する非収納部が保持された状態でパッケージされる。
【0003】
このようなパッケージの主流なものとして、ホルダチューブとともにカテーテル全体を台紙に固定して袋に入れる方法、ホルダチューブとともにカテーテル全体をトレーに収める方法、および非収納部の一箇所をホルダチューブに繋いで袋に入れる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290395号公報
【発明の概要】
【0005】
しかし、台紙またはトレーを用いる方法では、カテーテル全体を台紙またはトレーによって受けるため、台紙またはトレーをカテーテル全体の大きさに合わせて設ける必要があり、非収納部の一箇所をホルダチューブに繋ぐ方法に比べ、パッケージに用いる部材の容量が大きく、かさばり易い。一方、非収納部をホルダチューブに繋ぐ方法では、非収納部が一箇所だけで保持されるため、台紙やトレーを用いる場合に比べ非収納部を安定的に保持することが難しい。特に、高機能化されたカテーテルでは、電気的な接続部を含む等の要因によって根元が重く、また、光ファイバ等の信号路が通る等の要因によって折れ易いといった状況があり、このような高機能化されたカテーテルを、非収納部の一箇所をホルダチューブに繋いでパッケージすることは困難である。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決するためになされたものであり、コンパクトで、カテーテルの非収納部を安定的に保持し得るカテーテルホルダを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するための本発明のカテーテルホルダは、カテーテルを収納するホルダチューブの一部に取り付ける取付部と、当該取付部と一体的に構成され、前記ホルダチューブから露出する前記カテーテルの非収納部を保持する複数の保持部と、を有
し、前記複数の保持部は、ヒンジ状に回動自在な第1の部材に設けられた凹部および第2の部材に設けられた凹部によって構成され、前記第1の部材および前記第2の部材が閉じるとき、前記第1の部材に設けられた凹部および前記第2の部材に設けられた凹部が互いに合わさって前記非収納部を挟む、複数の挟持部を含むことを特徴とする。
【0008】
上記のように構成した本発明のカテーテルホルダは、ホルダチューブの一部に取り付ける取付部を有するため、台紙やトレーのようにカテーテル全体に取り付ける必要がなくコンパクトであり、また、複数の保持部を有するため、カテーテルの非収納部を安定的に保持し得る。
【0009】
また、第1の部材と第2の部材とを開くことによって複数の挟持部による保持が一度に解除され
るため、カテーテルの取り外しが容易である。
【0010】
前記カテーテルホルダが、前記第1の部材および前記第2の部材に設けられたストッパ部を有し、当該ストッパ部が、互いに係合して前記第1の部材および前記第2の部材を開かないように規制し、離脱して前記第1の部材および前記第2の部材を開閉可能な状態にするようにすれば、前記第1の部材および前記第2の部材が意図せず開くのを防止できる。
【0011】
前記第1の部材および前記第2の部材が閉じることによって互いに係合し、前記第1の部材および前記第2の部材が開くことによって離脱する、前記第1の部材および前記第2の部材に設けられた係合部を有するようにすれば、係合部の係合力を調整することによって、非収納部を保持するための保持力、および第1の部材と第2の部材との開け易さを調整できる。
【0012】
複数の前記保持部が、前記カテーテルの軸方向に交わる断面の形状がアンダーカット形状をなす、前記非収納部に嵌合する複数の凹部を含むようにすれば、カテーテルホルダをたわませ、複数の凹部を広げることによって、複数の凹部による保持が一度に解除され、カテーテルの取り外しが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態のカテーテルホルダ、非収納部、およびホルダチューブを示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態のカテーテルホルダを示す斜視図である。
【
図3A】第1実施形態の保持部を開いて示す部分拡大斜視図である。
【
図3B】第1実施形態の保持部を閉じて非収納部を収納した状態を示す部分拡大斜視図である。
【
図4A】第1実施形態のストッパ部を拡大して示す部分拡大斜視図である。
【
図4B】第1実施形態のストッパ部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図5】第1実施形態の取付部を拡大して示す部分拡大斜視図である。
【
図6A】第2実施形態のカテーテルホルダを示す斜視図である。
【
図6B】第2実施形態の係合部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図7A】第3実施形態のカテーテルホルダで非収納部を収納した状態を示す斜視図である。
【
図7B】第3実施形態の保持部を拡大して示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態において、各実施形態で共通する機能を有する部材については、類似の符号を付し、また、重複する説明は省略する。
【0015】
<第1実施形態>
図1、および
図2において説明すると、第1実施形態に係るカテーテルホルダ100は、カテーテルをパッケージするために用いるものであり、ヒンジ状に回動自在な構成片110(第1の部材)および構成片120(第2の部材)を有する。カテーテルホルダ100はまた、構成片110および構成片120に設けられ、これらを開かないように規制するツメ114、124(ストッパ部)を有する。また、カテーテルホルダ100は、カテーテルを収納するホルダチューブ20の一部に取り付ける凹部115(取付部)と、凹部115と一体的に構成され、ホルダチューブ20から露出するホルダチューブ20に収納されないカテーテルの非収納部10を保持する複数の保持部101、102、103と、を有する。非収納部10は、カテーテルと他の器具とを接続するコネクタ12、およびコネクタ12から伸びるシース14を含む。
【0016】
カテーテルホルダ100の3つの保持部101、102、103は、1つの保持部101がコネクタ12を保持し、他の2つの保持部102、103がシース14を保持する。保持部102、103は、シース14の根元を保持する。
【0017】
複数の保持部101、102、103は、構成片110および構成片120が閉じて非収納部10を挟む複数の挟持部である。そして複数の保持部101、102、103は、構成片110に設けられた凹部111、112、113、および構成片120に設けられた凹部121、122、123によって構成される。
【0018】
凹部111および凹部121は、これらが保持するコネクタ12の部位に合う形状を有する。同様に、凹部113および凹部123、ならびに凹部112および凹部122は、それぞれが保持するシース14の部位に合う形状を有する。
【0019】
図3において凹部111および凹部121を例に説明すると、凹部111および凹部121が保持するコネクタ12の部位は円筒形状で、凹部111および凹部121は、互いに合わさってコネクタ12が嵌る円筒形状の穴部を形成する。また図示しないが、凹部113および凹部123、ならびに凹部112および凹部122についても同様であり、これらはシース14が嵌る穴部を形成する。
【0020】
凹部111および凹部121の各々において、カテーテルの軸方向に交わる断面の形状は半円形状である。また、凹部112および凹部122、ならびに凹部113および凹部123についても同様で、カテーテルの軸方向に交わる断面の形状は半円形状である。つまり、凹部111、112、113、121、122、123においては、カテーテルの軸方向に交わる断面の形状が、カテーテル軸まわりを180°より大きく360°未満で囲むアンダーカット形状でなく、構成片110および構成片120を開くことによって、保持部101、102、103は保持力を失う。
【0021】
コネクタ12、またはシース14は、部位によって形状が異なり、カテーテルの軸方向に沿って段差を有する。そしてこのような段差が、カテーテルホルダ100、具体的には凹部111、凹部112、または凹部113に引掛るため、構成片110および構成片120を開いて保持力が失われても、カテーテルの軸方向のズレ、ひいては落下が防止される。このようなカテーテルのズレを防止するため、コネクタ12やシース14の外周面に突起を設けてもよい。
【0022】
図4に示すように、ツメ114、124は、互いに係合して構成片110および構成片120を開かないように規制し、離脱して構成片110および構成片120を開閉可能な状態にする。一方のツメ114は、ツメ114を離脱させるための押し部116と一体的に構成されている。そして押し部116を押すことによって、ツメ114は傾き、引掛りが解除される。
【0023】
カテーテルホルダ100は、ツメ114、124を1組有する。ツメ114、124を複数組有してもよいが、ツメ114、124を1組外すだけで構成片110および構成片120を開閉可能な状態にできるため、複数組外す場合に比べ操作が簡単で、カテーテルの取り外しが容易である。
【0024】
図5に示すように凹部115においては、カテーテルの軸方向に交わる断面の形状が、半円形状でなく、アンダーカット形状をなしている。ホルダチューブ20と凹部115とは嵌合して固定されている。このためホルダチューブ20は、構成片110および構成片120を開いた際に、カテーテルホルダ100から外れず、カテーテルホルダ100に残る。ホルダチューブ20を凹部115に押し込む、またはカテーテルホルダ100をたわませて凹部115を広げることによって、ホルダチューブ20を凹部115に嵌合させることができる。
【0026】
カテーテルホルダ100は、ホルダチューブ20の一部に取り付ける凹部115を有するため、台紙やトレーのようにカテーテル全体に取り付ける必要がなくコンパクトであり、また、複数の保持部101、102、103を有するため、カテーテルの非収納部10を安定的に保持し得る。
【0027】
複数の保持部101、102、103が、構成片110および構成片120が閉じて非収納部10を挟む複数の挟持部であるため、構成片110および構成片120を開くことによって複数の保持部101、102、103による保持が一度に解除され、カテーテルの取り外しが容易である。
【0028】
また構成片110と構成片120との嵌合を解いた場合、上記の様にホルダチューブ20は凹部123側ではなく常に凹部115側に嵌合するようになっている。すなわち術者は構成片の嵌合を解く動作を行う場合に、どちらの構成片にホルダチューブ20が嵌合しているかを予め予測できるため、カテーテルホルダからカテーテルの取り外しを効率的に行うことができる。
【0029】
本実施形態と異なり、複数の保持部がそれぞれ独立しており、別々に解除するような場合、各保持を解除する度にコネクタ12やシース14を押さえておく必要があり、繰り返しカテーテルに負荷がかかる。一方、本実施形態のカテーテルホルダ100では、複数の保持が一度に解除され、カテーテルに繰り返し負荷がかからず、カテーテルへの負荷を抑制できる。
【0030】
ツメ114、124が、互いに係合して構成片110および構成片120を開かないように規制し、離脱して構成片110および構成片120を開閉可能な状態にするため、構成片110および構成片120が意図せず開くのを防止できる。
【0031】
<第2実施形態>
第2実施形態は第1実施形態と略同様であるが、非収納部10を保持するための保持力を調整するフック217、227(係合部)を有する点で、第2実施形態は第1実施形態と異なる。
【0032】
図6に示すようにフック217、227は、構成片210および構成片220に設けられ、構成片210および構成片220が閉じることによって互いに係合し、構成片210および構成片220が開くことによって離脱する。
【0033】
このようなフック217、227を有するため、第2実施形態のカテーテルホルダ200は、フック217、227の係合力を調整することによって、非収納部10を保持するための保持力、および構成片210および構成片220の開け易さを調整できる。例えば、フック217とフック227との係合力を強めることによって、保持力を強められ、逆にフック217とフック227との係合力を弱めることによって、構成片210および構成片220を空け易くなる。つまり保持力と開け易さという、相反する要素を、フック217とフック227との係合力を変えることによって調整できる。
【0034】
<第3実施形態>
図7において説明すると、第3実施形態のカテーテルホルダ300は、第1実施形態の構成片110と略同様であるが、構成片120を有さず、複数の凹部311、312、313の形状が構成片110の凹部111、112、113と異なる。
【0035】
凹部311、312、313の各々において、カテーテルの軸方向に交わる断面の形状は、半円形状でなく、アンダーカット形状をなしている。そして凹部311、312、313は、コネクタ12およびシース14と嵌合し保持する。
【0036】
カテーテルホルダ300は、このような凹部311、312、313を有するため、カテーテルホルダ300をたわませ、複数の凹部311、312、313を広げることによって、複数の凹部311、312、313による保持が一度に解除され、カテーテルの取り外しが容易である。またアンダーカットの深さによって非収納部10を保持するための保持力を調整できる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。例えば、非収納部を保持する箇所は3箇所に限定されず、2つであってもよいし、3つより多くてもよい。また、本発明は、複数の保持部がコネクタのみを保持する形態、および複数の保持部がシースのみを保持する形態を含む。
【0038】
また、本発明は、非収納部に嵌合する第3実施形態の凹部を、第1及び第2実施形態に適用した形態を含む。つまり保持部が、挟持部と、アンダーカット形状の凹部とを含む構成を有してもよい。この場合、第1の部材および第2の部材が開いても、凹部が非収納部を保持しているため、第1の部材および第2の部材を開いた際、カテーテルホルダからカテーテルが意図せず外れるのを防止できる。また、非収納部を保持するアンダーカット形状の凹部、および取付部を、第1の部材および第2の部材のうちの同じ一方に設けると、第1の部材および第2の部材を開いた際、カテーテルがねじれず好ましい。
【0039】
また、係合部は、フックに限定されず、例えば互いに嵌合する凹部と凸部であってもよい。
【0040】
さらに、本出願は、2009年9月16日に出願された日本特許出願番号2009−214998号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0041】
10 非収納部、
12 コネクタ、
14 シース、
20 ホルダチューブ、
100、200、300 カテーテルホルダ、
101、102、103 保持部、
110、120、210、220 構成片(第1の部材、第2の部材)、
115 凹部(取付部)、
114、124 ツメ(ストッパ部)、
217、227 フック(係合部)、
311、312、313 凹部。