(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスクは、未印刷の前記基板に粘性材を第1の高さを有するように印刷する第1印刷を行うための小型部品用マスクと、前記小型部品用マスクにより印刷された前記第1の高さの粘性材を逃がすように基板接触面側に逃がし部が形成され、前記第1印刷後の前記基板に、粘性材を前記第1の高さよりも大きい第2の高さを有するように印刷する第2印刷を行うための大型部品用マスクとのうち、少なくとも前記大型部品用マスクを含み、
前記大型部品用マスクに対する前記印刷待機距離は、前記第1印刷によって前記基板上に形成された粘性材の前記第1の高さと、前記大型部品用マスクの上下方向のたわみ量とを考慮して設定されている、請求項2に記載の基板印刷装置。
印刷対象の基板に粘性材を印刷するためのマスクを用いて前記基板に第1印刷を行うように構成され、前記基板と前記マスクとの少なくとも一方を上下方向に移動させることにより、前記基板と前記マスクとの間の上下方向の距離を変更可能な第1印刷装置と、
印刷対象の基板に粘性材を印刷するためのマスクを用いて前記第1印刷装置による前記第1印刷後の前記基板に第2印刷を行うように構成され、前記基板と前記マスクとの少なくとも一方を上下方向に移動させることにより、前記基板と前記マスクとの間の上下方向の距離を変更可能な第2印刷装置とを備え、
前記第1印刷装置および前記第2印刷装置の少なくとも一方は、前記基板と前記マスクとを当接させる版合わせ動作よりも前の時点において、前記基板の印刷準備動作と並行して、前記基板と前記マスクとの間の上下方向の距離を、印刷後の前記基板と前記マスクとを離間させる版離れ距離から、前記版離れ距離よりも小さく、かつ、前記マスクと前記基板とが接触しない印刷待機距離に変更させるように構成されている、基板印刷システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような基板印刷装置では、基板印刷に要する時間の短縮が望まれている。基板印刷装置は回路基板の製造ラインに設置され、大量の基板を繰り返し印刷することから、上記各工程の内、いずれかの工程の作業時間が短縮されれば、所定の生産枚数全部を処理するために要する時間の短縮に寄与することが可能となる。
【0006】
また、プリント基板に実装される電子部品の小型化に伴い、0603サイズ(0.6mm×0.3mm)や0402サイズ(0.4mm×0.2mm)などの小型部品(極小部品)と、シールド部品などの大型部品とが混在して基板に実装されるようになっている。これらの小型部品(極小部品)と大型部品とに適切な転写量で粘性材を印刷するためには、厚みの小さい小型部品用の第1のマスクと、厚みの大きい大型部品用の第2のマスクとの2種類のマスクを用意して、1枚の基板に対する印刷を2回に分けて実施することが考えられる。この場合、1枚の基板に対して2回の印刷動作を実施する必要が生じるため、基板印刷に要する時間の短縮の必要性が高い。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、基板印刷に要する時間を短縮することが可能な基板印刷装置および基板印刷システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における基板印刷装置は、印刷対象の基板に粘性材を印刷するためのマスクと、基板とマスクとの少なくとも一方を上下方向に移動させることにより、基板とマスクとの間の上下方向の距離を変更可能な上下移動機構と、基板とマスクとを当接させる版合わせ動作よりも前の時点において、基板の印刷準備動作と並行して上下移動機構を動作させ、基板とマスクとの間の上下方向の距離を、印刷後の基板とマスクとを離間させる版離れ距離から、版離れ距離よりも小さく、かつ、マスクと基板とが接触しない印刷待機距離に変更させる制御を行う制御部とを備える。
【0009】
この発明の第1の局面による基板印刷装置では、上記のように、基板とマスクとを当接させる版合わせ動作よりも前の時点において、基板の印刷準備動作と並行して上下移動機構を動作させ、基板とマスクとの間の上下方向の距離を、印刷後の基板とマスクとを離間させる版離れ距離から、版離れ距離よりも小さく、かつ、マスクと基板とが接触しない印刷待機距離に変更させる制御を行う制御部を設けることによって、版合わせ動作の一部(基板とマスクとを接近させる動作)を版合わせ前の基板の印刷準備動作中に先行(並行)して実施することができる。これにより、版合わせ動作を実施するときには、予めマスクと基板とが印刷待機距離まで接近した状態から、版合わせ動作を開始することができるので、その分、版合わせのための上下方向の移動距離を短縮することができる。その結果、版合わせ動作に要する時間を短縮することができるので、基板印刷に要する時間を短縮することができる。
【0010】
上記第1の局面による基板印刷装置において、好ましくは、印刷待機距離は、少なくともマスクの上下方向のたわみ量を考慮して設定されている。ここで、基板印刷に用いるマスクは、開口が所定パターンで形成された板部材であるので、基板とマスクとを版合わせする前の基板とマスクとが離間した状態では上下方向にたわみが発生する。本発明では、少なくともマスクの上下方向のたわみ量を考慮して印刷待機距離を設定することによって、印刷待機距離をマスクのたわみを考慮した上で最大限小さくすることができる。これにより、版合わせ動作に先立って基板とマスクとをできるだけ接近させることができるので、版合わせ動作に要する時間をより短縮することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、マスクは、未印刷の基板に粘性材を第1の高さを有するように印刷する第1印刷を行うための小型部品用マスクと、小型部品用マスクにより印刷された第1の高さの粘性材を逃がすように基板接触面側に逃がし部が形成され、第1印刷後の基板に、粘性材を第1の高さよりも大きい第2の高さを有するように印刷する第2印刷を行うための大型部品用マスクと
のうち、少なくとも
大型部品用マスクを含み、大型部品用マスクに対する印刷待機距離は、第1印刷によって基板上に形成された粘性材の第1の高さと、大型部品用マスクの上下方向のたわみ量とを考慮して設定されている。このように構成すれば、小型部品のための第1印刷と大型部品のための第2印刷との2回に分けて印刷動作を実行する構成においても、マスクと基板とを印刷待機距離まで予め接近させた状態で版合わせを実施して、版合わせ動作に要する時間を短縮することができる。また、第2印刷の版合わせ時には、基板上には第1印刷による粘性材が形成されているので、本発明では、その点を考慮して、大型部品用マスクに対する印刷待機距離を、第1印刷によって基板上に形成された粘性材の第1の高さと、大型部品用マスクの上下方向のたわみ量とを考慮して設定することによって、第2印刷の際、基板上の粘性材と接触しないことを確保した印刷待機距離まで、大型部品用マスクと第1印刷後の基板とを予め接近させることができる。
【0012】
上記第1の局面による基板印刷装置において、好ましくは、印刷対象の基板を保持するとともに、水平方向に移動可能に構成された基板作業テーブルと、基板作業テーブルの上方でマスクを保持する印刷テーブルとをさらに備え、上下移動機構は、印刷テーブルに設けられマスクを上下方向に移動させるマスク昇降機構からなる。このように構成すれば、基板を保持する基板作業テーブル側の動作とは独立して、マスクを上下方向に移動させることができる。そのため、たとえば基板搬入時や、基板保持(固定)動作時や、その他基板を移動させて印刷準備を行う作業中など、版合わせ前の任意のタイミングでマスクと基板とを印刷待機距離まで接近させることができる。
【0013】
この発明の第2の局面における基板印刷システムは、印刷対象の基板に粘性材を印刷するためのマスクを用いて基板に第1印刷を行うように構成され、基板とマスクとの少なくとも一方を上下方向に移動させることにより、基板とマスクとの間の上下方向の距離を変更可能な第1印刷装置と、印刷対象の基板に粘性材を印刷するためのマスクを用いて第1印刷装置による第1印刷後の基板に第2印刷を行うように構成され、基板とマスクとの少なくとも一方を上下方向に移動させることにより、基板とマスクとの間の上下方向の距離を変更可能な第2印刷装置とを備え、第1印刷装置および第2印刷装置の少なくとも一方は、基板とマスクとを当接させる版合わせ動作よりも前の時点において、基板の印刷準備動作と並行して、基板とマスクとの間の上下方向の距離を、印刷後の基板とマスクとを離間させる版離れ距離から、版離れ距離よりも小さく、かつ、マスクと基板とが接触しない印刷待機距離に変更させるように構成されている。
【0014】
この発明の第2の局面による基板印刷システムでは、上記のように、第1印刷装置および第2印刷装置の少なくとも一方を、基板とマスクとを当接させる版合わせ動作よりも前の時点において、基板の印刷準備動作と並行して、基板とマスクとの間の上下方向の距離を、印刷後の基板とマスクとを離間させる版離れ距離から、版離れ距離よりも小さく、かつ、マスクと基板とが接触しない印刷待機距離に変更させるように構成する。これにより、第1印刷装置による第1印刷と第2印刷装置による第2印刷との2回に分けて印刷動作を実行する構成においても、版合わせ動作の一部(基板とマスクとを接近させる動作)を版合わせ前の基板の印刷準備動作中に先行(並行)して実施することができる。これにより、第1印刷および第2印刷の少なくとも一方において版合わせ動作を実施するときには、予めマスクと基板とが印刷待機距離まで接近した状態から、版合わせ動作を開始することができるので、その分、版合わせのための上下方向の移動距離を短縮することができる。その結果、版合わせ動作に要する時間を短縮することができるので、基板印刷に要する時間を短縮することができる。
【0015】
上記第2の局面による基板印刷システムにおいて、好ましくは、第1印刷装置は、印刷対象の基板に粘性材を第1の高さを有するように印刷する小型部品用マスクを用いて第1印刷を行うように構成され、第2印刷装置は、小型部品用マスクにより印刷された第1の高さの粘性材を逃がすように基板接触面側に逃がし部が形成され、第1印刷後の基板に、粘性材を第1の高さよりも大きい第2の高さを有するように印刷する大型部品用マスクを用いて第2印刷を行うように構成され、第2印刷装置は、第2印刷を実行する際、第1印刷後の基板と大型部品用マスクとを当接させる版合わせ動作よりも前の時点において、第1印刷後の基板と大型部品用マスクとの間の上下方向の距離を、第2印刷後の基板と大型部品用マスクとを離間させる版離れ距離から、版離れ距離よりも小さく、かつ、大型部品用マスクと第1印刷後の基板上の第1の高さの粘性材とが接触しない印刷待機距離に変更するように構成されている。このように構成すれば、大型部品用マスクを用いて第2印刷を行う際に、大型部品用マスクと第1印刷後の基板上の第1の高さの粘性材とが接触しない印刷待機距離まで、大型部品用マスクと第1印刷後の基板とを予め接近させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、基板印刷に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、
図1〜
図9を参照して、本発明の一実施形態による印刷装置100、200および基板印刷システム300の構造について説明する。なお、本実施形態では、本発明の「基板印刷装置」を印刷装置100および200にそれぞれ適用した例について説明する。
【0020】
本実施形態による印刷装置100および200は、
図1に示すように、装置本体内に搬送されるプリント基板(以下、「基板」という)5の上面に半田ペーストをマスク印刷する基板印刷装置である。本実施形態では、印刷装置100が小型部品用マスク(極小部品用マスク)6により第1印刷を行った後、印刷装置200が第1印刷後の基板5に対して大型部品用マスク7により第2印刷を行うことによって、1枚の基板5に対する半田印刷作業が実施される。また、本実施形態では、これらの印刷装置100と印刷装置200とによって、基板5に対する半田印刷を行う基板印刷システム300が構成されている。印刷装置100および200は、それぞれ、本発明の「第1印刷装置」および「第2印刷装置」の一例である。また、小型部品用マスク6および大型部品用マスク7は、共に、本発明の「マスク」の一例である。
【0021】
印刷装置100および200は、搬送方向(X方向)に延びる基板搬送ライン上で直列に接続されている。印刷装置100は、搬送方向上流側(X方向左側)のローダLDから未印刷の基板5を搬入し、第1印刷実行後、搬送方向下流側(X方向右側)の印刷装置200に第1印刷後の基板5を搬出するように構成されている。印刷装置200は、上流側の印刷装置100から第1印刷後の基板5を搬入し、第2印刷実行後、下流側装置Mに第2印刷後の基板5を搬出するように構成されている。なお、基板5の搬送方向がX方向であり、水平面内でX方向と直交する方向がY方向である。また、XおよびY方向と直交する上下方向がZ方向である。このような構成により、印刷装置100および200(基板印刷システム300)は、1本の搬送ラインを有するプリント回路基板の基板製造ラインの一部を構成している。
【0022】
印刷装置100の小型部品用マスク6には、
図2に示すように、たとえば0603サイズや0402サイズの小型部品のランドに対応したパターンの微小な開口6aが形成されている。小型部品用マスク6の厚みは、小型部品(極小部品)に適した厚みである第1の膜厚Th1(たとえば、約50μm〜約75μm)に形成されている。小型部品用マスク6を用いて半田印刷を行うことにより、基板5の表面(印刷面)には、小型部品に適した半田高さH1の半田Sd1が形成される。なお、半田高さH1は、第1の膜厚Th1と同じか、半田Sd1に作用する重力のため第1の膜厚Th1より僅かに小さい高さとなる。半田高さH1は、本発明の「第1の高さ」の一例である。また、半田Sd1は、本発明の「粘性材」の一例である。
【0023】
印刷装置200の大型部品用マスク7には、
図3に示すように、たとえばシールド部品などの大型部品のランドに対応したパターンの開口7aが形成されている。大型部品用マスク7の厚みは、小型部品用マスク6の厚みよりも大きく、大型部品に適した厚みである第2の膜厚Th2(たとえば、約150μm)に形成されている。また、大型部品用マスク7の基板接触面(下面)側には、小型部品用マスク6の開口パターンに対応する所定領域を覆うように凹状の逃がし部7bが形成されている。凹状の逃がし部7bの深さHdは、小型部品用マスク6の厚みTh1より大きい(すなわちTh2>Th1)。これにより深さHdは、小型部品用マスク6により形成される半田Sd1の半田高さH1よりも大きくなる。このため、小型部品用マスク6を用いた第1印刷後の基板5に対して大型部品用マスク7の版合わせを行うと、小型部品用マスク6により形成された半田Sd1が凹状の逃がし部7bの内部に収まり、大型部品用マスク7と半田Sd1とが非接触の状態に保たれる。この状態で大型部品用マスク7の半田印刷を行うことにより、基板5には、半田Sd1に追加して、大型部品に適した半田高さH2(第2の膜厚Th2と同じか作用する重力のため僅かに小さい。且つ、H2>H1)の半田Sd2が形成される。なお、半田高さH2は、本発明の「第2の高さ」の一例である。また、半田Sd2は、本発明の「粘性材」の一例である。
【0024】
したがって、印刷装置100と印刷装置200とは、1枚の基板5の半田印刷用の開口パターンを、厚みの異なる小型部品用マスク6(小型部品用の開口6aのパターン)と大型部品用マスク7(大型部品用の開口7aのパターン)とに分担し、個別に(順次)半田印刷を行う。これにより、部品サイズに応じたアスペクト比(半田高さ/半田底面積、すなわち、マスク厚み/開口面積)の半田Sd1および半田Sd2をそれぞれ基板5の表面(印刷面)上に形成することが可能である。この結果、基板5への部品実装後、リフロー処理によって部品接合を行う際に、大型部品に対する半田量が少なすぎて接合が不十分になったり、小型部品に対する半田量が多すぎて接合不良が生じたりすることを抑制して、適正な半田量での半田接合が可能となる。
【0025】
印刷装置100と印刷装置200とは、基板印刷に用いるマスクが互いに異なる点を除き、装置構成は同様であるので、印刷装置100の装置構成についてのみ説明する。
【0026】
図4および
図5に示すように、印刷装置100は、基台1と、基板5の保持および搬送を行う基板作業テーブル2と、マスク(小型部品用マスク6)を保持する印刷テーブル3と、スキージユニット4とを備えている。また、印刷装置100には、それぞれ一対のコンベアレールからなる、基板搬入のための搬入コンベア11と基板搬出のための搬出コンベア12とがX方向の両端に配置されている。また、印刷装置100には、以下に説明する各部の動作制御を行うための後述する制御装置80(
図6参照)が内蔵されている。
【0027】
基板作業テーブル2は、搬入コンベア11から基板5を受け取り、印刷作業時には基板5を支持して印刷テーブル3に対して固定し、印刷後の基板5を搬出コンベア12に搬送する機能を有している。
図5に示すように、基板作業テーブル2は、水平面内で移動可能に構成された可動台21と、可動台21上に配置された搬送方向(X方向)に延びる一対のコンベアレールからなる搬送コンベア22(
図4参照)と、搬送コンベア22上の基板5を搬送コンベア22から上方に離間した状態で印刷作業可能なように保持(固定)するためのクランプユニット23と、可動台21に設けられたマスク認識カメラ24とを含む。
【0028】
可動台21は、Y軸移動機構25と、Y軸移動機構25上に配置されたX軸移動機構26およびR軸移動機構27とによって、水平面内でY方向、X方向および鉛直軸(Z軸)回りのR方向に移動可能に構成されている。具体的には、Y軸移動機構25は、基台1上にY方向に延びるガイドレール25aと、Y方向に延びるねじ軸25bと、ねじ軸25bを回転駆動するサーボモータ(Y軸)25cとを有する。ガイドレール25a上にはX軸移動機構26およびR軸移動機構27を介して可動台21がY方向に移動可能に支持されており、サーボモータ25cを駆動することにより可動台21がY方向に移動する。
【0029】
X軸移動機構26は、Y軸移動機構25上に配置されたX方向に延びるガイドレール26aと、X方向に延びるねじ軸26bと、ねじ軸を回転駆動するサーボモータ(X軸)26c(
図6にのみ図示)とを有し、基板5マスクとの位置合わせの際にサーボモータ26cを駆動することによりガイドレール26a上の可動台21をX方向に小移動させる。また、R軸移動機構27は、詳細な図示を省略するが、可動台21をZ軸回りに回動可能に支持する回動軸(図示せず)と、可動台21を回動軸回りに回動させるサーボモータ(R軸)27a(
図6にのみ図示)とを有している。
【0030】
図4および
図5に示すように、一対のコンベアレールからなる搬送コンベア22は、X方向に延びるように設けられており、搬送コンベア22の位置を搬入コンベア11および搬出コンベア12のY軸座標に一致させることで、基板搬入および搬出が可能である。搬入コンベア11および搬出コンベア12は、印刷装置100のY2方向側の所定位置(同じY座標位置)に配置されている。
【0031】
図5に示すように、クランプユニット23は、一対のコンベアレールからなる搬送コンベア22をY方向両外側から抱え込むようにして可動台21上に設けられている。クランプユニット23は、基板5を把持して固定するためのクランプ機構51と、搬送コンベア22上の基板5を持ち上げて支持するための支持機構52とを含んでいる。クランプ機構51は、図示しないエアシリンダを駆動させてクランプ部51bをクランプ部51aに近付く方向に変位させることによって、搬送コンベア22上の基板5をY方向の両側から挟み込んで把持することが可能なように構成されている。なお、エアシリンダを逆方向に作動させればクランプが解除される。支持機構52は、バックアップピン52aとバックアップピン52aを上下に移動させる昇降機構52bとを含み、バックアップピン52aを基板5の下面に下側から接触させ、昇降機構52bによって搬送コンベア22上の基板5を持ち上げて支持するように構成されている。支持機構52によって持ち上げられた基板5がクランプ機構51によって把持されることにより、基板5が搬送コンベア22から上方に離間した状態で固定的に保持(クランプ)され、基板作業テーブル2上で基板5に印刷作業を行うことが可能となる。
【0032】
マスク認識カメラ24は、CCDエリアセンサなどからなり、X方向に延びるガイドレール24aを介して可動台21上に撮像方向を上方に向けて取り付けられている。このため、マスク認識カメラ24は、基板作業テーブル2の移動に伴ってY方向に移動可能で、図示しないサーボモータおよびねじ軸により可動台21上でX方向に移動可能となっている。マスク認識カメラ24は、印刷テーブル3に保持されたマスク(小型部品用マスク6)の下面側に付されたマスク認識マーク(図示せず)を下方から撮像して、マスク(小型部品用マスク6)の位置および姿勢を認識するために設けられている。
【0033】
また、
図4および
図5に示すように、基台1上には、搬入コンベア11および搬出コンベア12のそれぞれの上方を跨いでY方向に延びるように設けられた一対のフレーム構造体13が、X方向(基板搬送方向)に所定の間隔を隔てて一対配置されている。また、各々のフレーム構造体13は、門型構造を有しており、基台1のY方向の両端部近傍から上方に延びる一対の脚部13aと、脚部13aの上端同士を水平方向に繋ぐ梁部13bとを含んでいる。
【0034】
図5に示すように、印刷テーブル3は、一対のフレーム構造体13によりX方向の両側を支持され、基板作業テーブル2よりも上方の位置に配置されている。印刷テーブル3は、水平方向に固定で、上下方向(Z方向)に移動可能に構成されている。具体的には、印刷テーブル3は、マスクが着脱可能に組み付けられた略矩形状のマスク固定部材31と、マスク固定部材31を昇降(Z軸方向移動)させるマスク昇降機構32とを有している。なお、マスク昇降機構32は、本発明の「上下移動機構」の一例である。なお、上述の通り、印刷装置100のマスク固定部材31には、小型部品用マスク(極小部品用マスク)6が組み付けられている。一方、印刷装置200のマスク固定部材31には、大型部品用マスク7が組み付けられている。
【0035】
マスク昇降機構32は、一対のフレーム構造体13に支持されており、ガイド軸32a、ねじ軸32b、ねじ軸32bに螺合する昇降ナット32c、および、昇降ナット32cを駆動するZ軸モータ32dを含む。マスク昇降機構32は、昇降ナット32cを回転駆動することによりねじ軸32bを昇降させ、ねじ軸32bの先端に固定されたマスク固定部材31を昇降させるように構成されている。マスク昇降機構32は、マスク固定部材31に装着されたマスク(小型部品用マスク6)を上下方向(Z方向)に移動させることにより、基板作業テーブル2の基板5とマスク(小型部品用マスク6)との間の上下方向の距離を変更可能に構成されている。
【0036】
これにより、印刷時には、印刷テーブル3は、マスク昇降機構32によってZ2方向に下降して小型部品用マスク6を基板5の上面に当接させる版合わせ動作を行うとともに、印刷後には、Z1方向に上昇して小型部品用マスク6を基板5の上面から離間させる版離れ動作を行うように構成されている。なお、版合わせにおいて、印刷テーブル3が保持する小型部品用マスク6の基板5との水平面内における詳細な位置合わせ(X、YおよびR方向位置)は、基板作業テーブル2(X軸移動機構26、Y軸移動機構25およびR軸移動機構27)によって実施される。
【0037】
図4および
図5に示すように、スキージユニット4は、X方向に延びる可動梁42の中央部で支持され、印刷テーブル3の上方に配置されている。スキージユニット4は、小型部品用マスク6の上面(Z1側)に対してペースト状の半田を押圧しながらY方向に往復して摺動するスキージ41と、印刷時にスキージ41を昇降させる図示しない昇降機構と、小型部品用マスク6に対するスキージ41の傾き方向および傾き角度を変更するための図示しないスキージ角度可変機構とを含む。また、可動梁42は、一対のフレーム構造体13の上面上にY方向に沿って延びるように設けられた一対のガイドレール43上で移動可能に支持されている。そして、可動梁42は、フレーム構造体13にY方向に沿って設けられた図示しないねじ軸およびサーボモータ(スキージ軸)44(
図6にのみ図示)によってY方向に移動可能に構成されている。スキージユニット4は、版合わせのため下降したマスク(小型部品用マスク6)に当接するまでスキージ41を下降させた上で、可動梁42の移動に伴ってスキージユニット4をスキージ41ごとY方向に移動させることにより、印刷動作を行うように構成されている。そして、スキージユニット4は、印刷動作後スキージ41を上昇させてマスク(小型部品用マスク6)から離れるようにするとともに、版離れのため上昇するマスク(小型部品用マスク6)に対して距離を保つべく、さらにスキージ41を上昇させる。
【0038】
また、フレーム構造体13のY1方向側には、基板認識カメラ15がX方向に移動可能に設けられている。具体的には、X方向に延びる梁14が一対のフレーム構造体13に両端を支持されており、基板認識カメラ15が梁14に設けられたガイドレール15aによりX方向に移動可能に支持されている。基板認識カメラ15は、図示しないねじ軸およびカメラ軸(X軸)モータによってX方向に駆動される。基板認識カメラ15は、CCDエリアセンサなどからなり、撮像方向を下方に向けて設置されている。基板認識カメラ15は、基板作業テーブル2がY1方向に移動し基板5が基板認識カメラ15の下方に位置した状態で、基板5の上面に付された図示しない基板認識マークを撮像して、クランプユニット23に把持された基板5の位置および姿勢を認識するように構成されている。
【0039】
また、
図6に示すように、制御装置80は、演算処理部81、記憶部82、外部入出力部83、画像処理部84およびモータ制御部85によって主に構成されている。また、制御装置80は、表示ユニット86と接続されている。なお、演算処理部81は、本発明の「制御部」の一例である。
【0040】
演算処理部81はCPUからなり、印刷装置100(200)の動作を全般的に統括している。記憶部82は、演算処理部81が実行可能な制御プログラムなどが格納されている動作プログラム記憶部82aと、印刷動作を行う際に必要となるデータ類が格納されている制御データ記憶部82bとを含んでいる。
【0041】
また、外部入出力部83は、各種センサ類およびアクチュエータ類からの入出力を制御する機能を有している。画像処理部84は、基板認識カメラ15およびマスク認識カメラ24の各々が撮像した画像データの処理を行って、印刷装置100(200)の動作に必要とされるデータを内部的に生成する。
【0042】
モータ制御部85は、演算処理部81から出力される制御信号に基づいて、印刷装置100の各サーボモータ(基板作業テーブル2のY軸移動機構25、X軸移動機構26およびR軸移動機構27の各サーボモータ、印刷テーブル3のサーボモータ(Z軸)32d、スキージユニット4のサーボモータ44など)を制御するように構成されている。また、モータ制御部85は、各サーボモータが有するエンコーダ(図示せず)からの信号に基づいて基板作業テーブル2(基板5)の水平面内(X軸、Y軸およびR軸方向)の位置座標、印刷テーブル3の高さ位置(Z方向)などを認識可能に構成されている。
【0043】
ここで、
図7に示すように、本実施形態では、第1印刷を行う印刷装置100の演算処理部81(
図6参照)は、基板5の搬入後、基板5と小型部品用マスク6との版合わせ動作よりも前の時点において、基板5の印刷準備動作と並行して印刷テーブル3のマスク昇降機構32を動作させ、基板5と小型部品用マスク6との間の上下方向(Z方向)の距離を、第1印刷後の基板5と小型部品用マスク6とを離間させる版離れ距離D1から、版離れ距離D1よりも小さく、かつ、小型部品用マスク6と基板5とが接触しない印刷待機距離D2に変更させる制御(先行下降動作)を行うように構成されている。これは、後述するように、
図9のステップS6における版合わせ動作の一部を、印刷準備動作中に先行して実施することに相当する。なお、本実施形態では、印刷装置100の印刷準備動作は、後述する基板搬入、基板固定、基板マーク認識および印刷位置への移動までの処理(ステップS1〜S3およびS5)を含む。
【0044】
まず、版離れ距離について説明する。版離れ距離は、印刷によって形成される半田の半田高さと、マスクのたわみ量と、基板(または基板上に形成された半田)にマスクが接触しないことを確実にするための安全マージンとによって決定される。
【0045】
小型部品用マスク6の場合、第1印刷後の版離れ距離D1は、印刷高さ(版合わせ時の高さ位置)H0を基準にとり、半田Sd1の半田高さH1(基板5上の半田の最大高さ)、小型部品用マスク6のたわみ量ΔH1、安全マージンH
mとすると、下式で表される。
D1=H1+ΔH1+H
m
【0046】
一方、小型部品用マスク6(印刷装置100)による第1印刷前の状態では、未印刷の基板5には半田Sd1が形成されていない。このため、第1印刷前の状態では、小型部品用マスク6のたわみ量ΔH1を考慮して、基板5と小型部品用マスク6とが非接触のまま、下式に示す印刷待機距離D2まで印刷テーブル3(小型部品用マスク6)を下降させることが可能となる。
D2=ΔH1+H
m
つまり、第1印刷前の状態では、第1印刷後の最大半田高さH1に相当する距離だけ、小型部品用マスク6を下降させておくことが可能である。これにより、印刷装置100による小型部品用マスク6の版合わせ前に、版離れ距離D1から、基板5とは干渉しない印刷待機距離D2まで印刷テーブル3を予め下降させておく(小型部品用マスク6を基板5に接近させる)ことが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、
図8に示すように、第2印刷を行う印刷装置200の演算処理部81(
図6参照)は、第1印刷後の基板5の搬入後、基板5と大型部品用マスク7との版合わせ動作よりも前の時点において、基板5の印刷準備動作と並行して印刷テーブル3のマスク昇降機構32を動作させ、基板5と大型部品用マスク7との間の上下方向の距離を、第2印刷後の基板5と大型部品用マスク7とを離間させる版離れ距離D3から、版離れ距離D3よりも小さく、かつ、大型部品用マスク7と基板5とが接触しない印刷待機距離D4に変更させる制御(先行下降動作)を行うように構成されている。これは、後述するように、
図9のステップS14における版合わせ動作の一部を、印刷準備動作中に先行して実施することに相当する。なお、本実施形態では、印刷装置200の印刷準備動作は、後述する基板搬入、基板固定、基板マーク認識および印刷位置への移動までの処理(ステップS11〜S13およびS15)を含む。
【0048】
大型部品用マスク7(印刷装置200)の場合、第2印刷後の版離れ距離D3は、印刷高さ(版合わせ時の高さ位置)H0を基準にとり、半田Sd2の半田高さH2(基板5上の半田の最大高さ)、大型部品用マスク7のたわみ量ΔH2、安全マージンH
mとすると、下式で表される。
D3=H2+ΔH2+H
m
【0049】
一方、大型部品用マスク7(印刷装置200)による第2印刷前の状態では、第1印刷後の基板5には半田Sd2が形成されておらず、半田高さH1の半田Sd1のみが形成されている。このため、第2印刷前の状態では、半田Sd1の半田高さH1および大型部品用マスク7のたわみ量ΔH2を考慮して、基板5上の半田Sd1と大型部品用マスク7とが非接触のまま、下式に示す印刷待機距離D4まで大型部品用マスク7を下降させることが可能となる。
D4=H1+ΔH2+H
m
つまり、第2印刷前の状態では、第2印刷前の最大半田高さH1と第2印刷後の最大半田高さH2との差分に相当する距離だけ、大型部品用マスク7を下降させておく(大型部品用マスク7を基板5に接近させる)ことが可能である。これにより、印刷装置200による大型部品用マスク7の版合わせ前に、版離れ距離D3から、基板5とは干渉しない印刷待機距離D4まで印刷テーブル3を予め下降させておく(大型部品用マスク7を基板5に接近させる)ことが可能となる。
【0050】
ここで、半田高さH1は、小型部品用マスク6の厚みに相当することから、制御データ記憶部82bに生産対象の基板5の基板データの一部として予め格納されている。また、安全マージンH
mは、制御データ記憶部82bに予め設定された所定値である。また、マスクのたわみ量ΔH1およびΔH2は、主としてマスクの寸法(縦横、厚み)に依存する。このため、マスクの寸法と、その寸法でのたわみ量ΔHとを対応付けたテーブルが予め作成され、制御データ記憶部82bに格納されている。演算処理部81は、制御データ記憶部82bから、基板データに登録された小型部品用マスク6の寸法に対応するたわみ量ΔH1および大型部品用マスク7の寸法に対応するたわみ量ΔH2を取得するように構成されている。
【0051】
次に、
図1および
図3〜
図9を参照して、本実施形態による印刷装置100および200(基板印刷システム300)の基板印刷作業時の動作について説明する。以下では、以下の制御処理は、各印刷装置100および200の制御装置80(演算処理部81)によって行われる。なお、以下では、区別のために便宜的に、印刷装置100の演算処理部81(
図6参照)を「演算処理部81a」とし、印刷装置200の演算処理部81を「演算処理部81b」として説明する。
【0052】
まず、
図9に示すように、ステップS1〜S10において、印刷装置100による第1印刷が実施される。
図1に示すように、ステップS1において、印刷装置100の演算処理部81aは、基板作業テーブル2のY座標を搬入コンベア11の位置に一致させ、未印刷の基板5を搬送コンベア22上に搬入させる。基板5が搬送コンベア22上に搬入されると、ステップS2において、クランプユニット23(
図5参照)により基板5がクランプ(固定)される。
【0053】
ステップS3では、
図4に示すように、基板作業テーブル2がY1方向に移動して、基板認識カメラ15の下方に位置付けられ、基板認識カメラ15による基板5の基板認識マークの撮像(画像認識)が行われる。基板認識カメラ15のX方向移動と、基板作業テーブル2のY方向移動とが同期して行われることにより、基板5の所定位置に付された基板認識マーク(図示せず)が基板認識カメラ15の下方に位置付けられ、基板認識マークの撮像(画像認識)が行われる。
【0054】
このステップS3と並行して、印刷装置100の演算処理部81aは、ステップS4において小型部品用マスク6の先行下降動作(
図7参照)を実施する。演算処理部81aは、基板認識カメラ15と基板作業テーブル2とによる基板認識マークの撮像作業と並行して印刷テーブル3のマスク昇降機構32を動作させ、印刷テーブル3の小型部品用マスク6と、印刷高さH0に保持された基板5との距離が版離れ距離D1から印刷待機距離D2になるまで小型部品用マスク6を下降させる。
【0055】
次に、ステップS5において、基板作業テーブル2がY2方向に移動して小型部品用マスク6による印刷位置への移動が行われる。なお、少なくとも初回の基板印刷時には、小型部品用マスク6のマスク認識マーク(図示せず)の下方に基板作業テーブル2のマスク認識カメラ24が位置付けられ、マスク認識カメラ24によるマスク認識マークの撮像(画像認識)が行われる。ステップS3の基板認識マークの認識結果およびマスク認識マークの認識結果から、基板作業テーブル2に保持された基板5の水平方向の位置および姿勢と、印刷テーブル3に装着された小型部品用マスク6の水平方向の位置および姿勢との相対位置関係が取得される。ステップS5では、これらの画像認識結果に基づいて基板作業テーブル2が水平面内で移動することにより、基板5と小型部品用マスク6とのX方向、Y方向およびR方向の各位置座標が一致する。
【0056】
次に、ステップS6において、印刷テーブル3が小型部品用マスク6を下降させ、版合わせを行う。これにより、小型部品用マスク6が基板5に所定の押圧力で押圧されて密着する。このステップS6の版合わせの際には、印刷テーブル3(小型部品用マスク6)は、
図7に示すように、版離れ距離D1よりも小さい印刷待機距離D2だけ下降して、印刷高さH0において基板5と小型部品用マスク6との版合わせを行う。この結果、ステップS6における版合わせに要する時間(Z方向の移動距離)が最小化される。
【0057】
版合せが完了すると、ステップS7において、小型部品用マスク6を用いた第1印刷が実施される。すなわち、
図5に示すように、小型部品用マスク6上に半田が供給された状態でスキージ41を小型部品用マスク6上面に当接させ、スキージユニット4(可動梁42)がY方向駆動されること(掻き取り動作)により、小型部品用マスク6を介して基板5の上面に半田が印刷される。第1印刷の結果、
図7に示すように、小型部品用マスク6の開口パターンに応じた基板5上の位置に、半田高さH1の半田Sd1が形成される。第1印刷後、ステップS8において、基板5と小型部品用マスク6との距離が版離れ距離D1になるまで小型部品用マスク6(印刷テーブル3)がZ1方向に上昇されて、小型部品用マスク6を基板5から離間させる版離れが行われる。
【0058】
次に、ステップS9において、クランプユニット23による基板5のクランプ(固定)が解除され、基板5が搬送コンベア22上に配置される。そして、ステップS10において、
図1に示すように、基板作業テーブル2(搬送コンベア22)から第1印刷後の基板5が搬出コンベア12に搬送され、後続の印刷装置200へ搬出される。
【0059】
ステップS11以降では、印刷装置200による第2印刷が実施される。動作の内容は上記ステップS1〜S10と基本的に同様であるので、簡略化して説明する。ステップS11において、印刷装置100から搬出された第1印刷後の基板5が搬入コンベア11から基板作業テーブル2に搬入される。そして、ステップS12でクランプユニット23により基板5がクランプ(固定)され、ステップS13で基板作業テーブル2がY1方向に移動して基板認識マークの認識が行われる。
【0060】
このステップS13と並行して、印刷装置200の演算処理部81bは、ステップS14において大型部品用マスク7の先行下降動作(
図8参照)を実施する。演算処理部81bは、基板認識カメラ15と基板作業テーブル2とによる基板認識マークの撮像作業と並行して印刷テーブル3のマスク昇降機構32を動作させ、印刷テーブル3の大型部品用マスク7と、印刷高さH0に保持された基板5との距離が版離れ距離D3から印刷待機距離D4になるまで大型部品用マスク7を下降させる。
【0061】
次に、ステップS15において、基板作業テーブル2がY2方向に移動して大型部品用マスク7による印刷位置への移動が行われる。なお、印刷装置200の少なくとも初回の基板印刷時には、印刷テーブル3の大型部品用マスク7のマスク認識マークの撮像(画像認識)が行われる。基板認識マークおよびマスク認識マークの画像認識の結果に基づき、大型部品用マスク7と基板5との水平面内の位置合わせが行われる。
【0062】
次に、ステップS16において、印刷テーブル3が大型部品用マスク7を下降させ、版合わせ(
図3参照)を行う。これにより、大型部品用マスク7が基板5に所定の押圧力で押圧されて密着する。このステップS16の版合わせの際には、印刷テーブル3(大型部品用マスク7)は、
図8に示すように、版離れ距離D3よりも小さい印刷待機距離D4だけ下降して、印刷高さH0において基板5と大型部品用マスク7との版合わせを行う。この結果、ステップS16における版合わせに要する時間(Z方向の移動距離)が最小化される。
【0063】
版合せが完了すると、ステップS17において、第1印刷後の基板5に対する大型部品用マスク7を用いた第2印刷が実施される。第2印刷の結果、第1印刷による半田Sd1が形成された後の基板5に追加するようにして、大型部品用マスク7の開口パターンに応じた基板5上の位置に、半田高さH2の半田Sd2が形成される。第2印刷後、ステップS18において、基板5と大型部品用マスク7との距離が版離れ距離D3になるまで大型部品用マスク7(印刷テーブル3)がZ1方向に上昇されて、大型部品用マスク7を基板5から離間させる版離れが行われる。
【0064】
次に、ステップS19において、クランプユニット23による第2印刷後の基板5のクランプ(固定)が解除され、基板5が搬送コンベア22上に配置される。そして、ステップS20において、
図1に示すように、基板作業テーブル2(搬送コンベア22)から第2印刷後の基板5が搬出コンベア12に搬送され、後続の下流側装置Mへ搬出される。
【0065】
以上のようにして、基板5に対する印刷装置100および印刷装置200の印刷動作が行われる。
【0066】
本実施形態では、上記のように、基板5と小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)とを当接させる版合わせ動作よりも前の時点において、基板5の印刷準備動作と並行してマスク昇降機構32を動作させ、基板5と小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)との間の上下方向の距離を、印刷後の基板5と小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)とを離間させる版離れ距離D1(D3)から、版離れ距離D1(D3)よりも小さく、かつ、小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)と基板5とが接触しない印刷待機距離D2(D4)に変更させる制御を行う演算処理部81a(81b)を設ける。これにより、版合わせ動作の一部(基板とマスクとを接近させる動作)を版合わせ前の基板5の印刷準備動作中に先行(並行)して実施することができる。その結果、版合わせ動作を実施するときには、予め小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)と基板5とが印刷待機距離D2(D4)まで接近した状態から、版合わせ動作を開始することができるので、その分、版合わせのためのZ方向の移動距離を短縮することができる。以上により、版合わせ動作に要する時間を短縮することができるので、基板印刷に要する時間を短縮することができる。
【0067】
ここで、基板印刷に用いる小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)は、開口6a(7a)が所定パターンで形成された板部材であるので、基板5と小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)とを版合わせする前の基板5と小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)とが離間した状態では、上下方向にたわみが発生する。本実施形態では、上記のように、少なくとも小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)の上下方向のたわみ量ΔH1(ΔH2)を考慮して印刷待機距離D2(D4)を設定することによって、印刷待機距離D2(D4)をマスクのたわみを考慮した上で最大限小さくすることができる。これにより、版合わせ動作に先立って基板5と小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)とをできるだけ接近させることができるので、版合わせ動作に要する時間をより短縮することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、第1印刷によって基板5上に形成された半田Sd1の半田高さH1と、大型部品用マスク7の上下方向のたわみ量ΔH2とを考慮して、大型部品用マスク7に対する印刷待機距離D4を設定する。これにより、第2印刷の際、基板5上の半田Sd1と接触しないことを確保した印刷待機距離D4まで、大型部品用マスク7と第1印刷後の基板5とを予め接近させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、基板作業テーブル2と、印刷テーブル3とを設け、印刷テーブル3に設けられ小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)を上下方向に移動させるマスク昇降機構32を印刷テーブル3に設ける。これにより、基板5を保持する基板作業テーブル2側の動作とは独立して、小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)を上下方向に移動させることができる。そのため、たとえば基板5の搬入時や、基板保持(固定)動作時や、その他基板を移動させて印刷準備を行う作業中など、版合わせ前の任意のタイミングで小型部品用マスク6(大型部品用マスク7)と基板5とを印刷待機距離D2(D4)まで接近させることができる。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、本発明の基板印刷装置の一例として、プリント基板に対する半田印刷作業を行う印刷装置100(200)に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スクリ−ンマスクを用いて基板印刷を行う基板印刷装置であれば、半田以外の粘性材(たとえば、銀ペーストなどの導電性ペーストなど)の印刷装置に、本発明を適用してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、2つの印刷装置が小型部品用マスクを用いた第1印刷と大型部品用マスクを用いた第2印刷とを行うことにより、1枚の基板を印刷する基板印刷システムを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、印刷装置を単体で使用してもよい。また、本発明では、印刷装置を3つ以上備えた基板印刷システムを構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、2つの印刷装置により第1印刷と第2印刷とを行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つの印刷装置に小型部品用マスクを含む第1印刷テーブルと大型部品用マスクを含む第2印刷テーブルとを設けて、第1印刷テーブルによる小型部品用マスクを用いた第1印刷後に、第2印刷テーブルによる大型部品用マスクを用いた第2印刷を実施するように印刷装置を構成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、印刷装置100と印刷装置200との両方で先行下降動作(ステップS4およびS14)を実施する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、印刷装置100および200のうち、一方のみが先行下降動作を実施してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、基板マーク認識と並行して先行下降動作を実施する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、先行下降動作は、少なくとも版合わせ動作よりも前の時点で、他の印刷準備動作と並行して行われればよい。したがって、版離れ後、基板搬出が行われてから、次の基板の版合わせまでの間であれば、どの時点で先行下降動作が実施されてもよい。たとえば、上記ステップS1(S11)の基板搬入およびステップS2(S12)の基板固定の実行時に先行下降動作が実施されてもよい。また、基板マーク認識の後、ステップS5(S15)で基板作業テーブルが印刷位置へ移動する間に先行下降動作が実施されてもよい。また、基板搬出(ステップS10およびS20)と、次の基板搬入(ステップS1およびS11)との間で予め先行下降動作を実施しておいて、基板とマスクとの距離が印刷待機距離にある状態で基板搬入が行われるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、印刷装置の印刷テーブルにマスク昇降機構を設け、基板に対してマスク(小型部品用マスク、大型部品用マスク)を上下移動させることにより版合わせ、版離れおよび先行下降動作を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、マスク昇降機構を設ける代わりに、基板作業テーブル側に基板昇降機構を設け、マスクに対して基板を上下移動させるように印刷装置を構成してもよい。この場合には、基板の上昇による版合わせ動作よりも前の時点で、印刷準備動作と並行して版離れ距離よりも小さい印刷待機距離まで基板を上昇させるように構成すればよい。このほか、印刷テーブル側にマスク昇降機構を設けるとともに、基板作業テーブル側に基板昇降機構を設け、基板とマスクとの両方が上下に移動するように印刷装置が構成されてもよい。この場合、基板とマスクとの一方または両方の移動によって、版離れ距離よりも小さい印刷待機距離まで基板とマスクとが先行して接近するように構成すればよい。
【0077】
また、上記実施形態では、2つの印刷装置を搬送ライン上で直列に並べた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図10の変形例に示す基板印刷システム310のように、2つの印刷装置100および200をX方向の搬送ラインに対して並列に、Y方向に並ぶように設けてもよい。この場合、基板印刷システム310には、基板5をY方向に搬送して印刷装置100または200に振り分けるコンベア110と、印刷装置100による第1印刷後の基板5を上流側に戻して印刷装置200に搬送するためのコンベア120とを設ければよい。
【0078】
また、上記実施形態では、基板を保持し、水平方向に移動可能な基板作業テーブルを印刷装置に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基板作業テーブルを設けることなく、基板をX方向のみに搬送する単純なコンベアライン(基板搬送ラインの一部)によって基板が搬入および搬出される構成であってもよい。この場合、コンベアライン側に基板を所定位置で固定可能なクランプ機構を設け、印刷テーブル側のマスクを、Z方向に加えて水平方向(X方向、Y方向およびR方向)に移動可能に構成すればよい。