(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715148
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】電荷信号をデジタル信号に変換するためのデジタル電荷増幅器および方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20150416BHJP
G01P 15/09 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
G01L1/16 G
G01P15/09 V
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-540243(P2012-540243)
(86)(22)【出願日】2010年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-512416(P2013-512416A)
(43)【公表日】2013年4月11日
(86)【国際出願番号】CH2010000289
(87)【国際公開番号】WO2011063536
(87)【国際公開日】20110603
【審査請求日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】1814/09
(32)【優先日】2009年11月25日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】502281471
【氏名又は名称】キストラー ホールディング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100138346
【弁理士】
【氏名又は名称】畑中 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100159525
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 和幸
(72)【発明者】
【氏名】アムシュトゥッツ、レオ
(72)【発明者】
【氏名】ネフ、クルト
(72)【発明者】
【氏名】オッター、ダニエル
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−241921(JP,A)
【文献】
特開2003−032117(JP,A)
【文献】
特表2001−520391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
H03M 1/52
G01P 15/09
H03F 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電測定素子によって出力された正および負の電荷信号(Q)を測定素子の現在の測定値に比例するデジタル信号(D)に変換するための電荷増幅器回路であって、検出された電荷(Q)を電圧(U2)に変換するための電荷入力および電圧出力を有する電荷増幅器(V1)を含み、
2つの出力を含む補償回路(K)が電荷増幅器(V1)の電圧出力の下流に接続されていることを特徴とし、
第1の出力は、電荷増幅器(V1)の電荷入力に接続され、第2の出力は、2つの入力(Z+、Z−)を有するカウンタに接続され、
一方で補償回路(K)は、電圧(U2)に比例し、入力信号(Q)を補償するために第1の出力によって電荷増幅器(V1)の電荷入力に送られる、補償電荷(Qk+またはQk−)をそれぞれ生成することができ、
他方で補償回路(K)は、生成された各々の補償電荷(Qk+またはQk−)の大きさに比例する複数のパルス(P+、P−)を生成して、前記パルスを第2の出力によって補償電荷(Qk+またはQk−)と逆符号のカウンタ(Z)の入力(Z−、Z+)に送ることができ、
それまでに入力された電荷量子の和に比例する所望のデジタル信号(D)がカウンタ(Z)の出力に得られる回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、補償回路(K)が増幅器入力における電荷変動に比例する個数の増分パルス(P)を生成するためのパルス発生器(G)を含むことを特徴とする前記回路。
【請求項3】
請求項2に記載の回路であって、2つのANDゲート(&1、&2)がパルス発生器(G)の下流に並列に接続され、
前記ゲートがさらに入力側で電荷増幅器(V1)の出力と並列に接続され、また
各々出力側ではカウンタの入力(Z−またはZ+)にそれぞれ接続され、
ここで、電圧(U2)の符号に依存してパルスがゲート(&1または&2)を通過してカウンタ(Z)の入力(Z−またはZ+)において検出されることを特徴とする前記回路。
【請求項4】
請求項3に記載の回路であって、電荷増幅器(V1)の出力とANDゲート(&1または&2)との間にそれぞれ並列に接続された2つの補償増幅器(V2、V3)によって特徴付けられる前記回路。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の回路であって、補償電荷(Qk+およびQk−)を生成するための2つの電流源(Ik+、Ik−)によって特徴付けられる前記回路。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項に記載の回路であって、各々電流源(Ik+、Ik−)の一方の出力の下流にある2つのスイッチ(S1、S2)によって特徴付けられ、それらはまた、各々入力側でANDゲート(&1、&2)の出力の一方に接続されており、スイッチ(S1、S2)がパルス継続時間の間に電流源(Ik+、Ik−)からの電流を電荷増幅器(V1)の電荷入力へ送ることができる前記回路。
【請求項7】
請求項6に記載の回路であって、ダイオード(D1、D2)によって特徴付けられ、それらが下流でスイッチ(S1、S2)の各々の1つと直列に接続されている前記回路。
【請求項8】
請求項4あるいは5の1項に記載の回路であって、電流源(Ik+、Ik−)の各々の1つの出力の下流にある2つのスイッチ(S1、S2)によって特徴付けられ、
入力側で補償増幅器(V2およびV3)の出力の1つにそれぞれ接続され、
補償増幅器(V2)の出力電圧が正の場合に電流源(Ik+)からの電流を通過させ、あるいは
補償増幅器(V3)の出力電圧が負の場合に電流源(Ik−)からの電流を通過させる前記回路。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の回路であって、トランジスタまたは機械的スイッチが少なくとも部分的にスイッチとして使用されることを特徴とする前記回路。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項記載の回路であって、カウンタがカウンタをゼロにリセットするためのリセット・スイッチおよび/または計数プロセスを始動させるための始動スイッチ(S)を含むことを特徴とする前記回路。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項記載の回路であって、カウンタパルスを、電気的にまたは誘導的にまたは容量的にまたは光学カプラまたはトランスミッタおよびレシーバ・アンテナによって、非変調であるいは変調して搬送波上でカウンタへ送信できる手段によって特徴付けられる前記回路。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項記載の回路であって、デジタル信号(D)が電圧信号であることを特徴とする前記回路。
【請求項13】
圧電測定素子によって出力された正および負の電荷信号を、前記測定素子における現在の測定値に比例するデジタル信号(D)に変換するための方法であって、
電荷増幅器(V1)が入力電荷信号(Q)をアナログ電圧信号(U2)に変換する工程と、
電圧信号(U2)が電荷増幅器(V1)の下流で補償回路(K)に送られる工程と、
一方で補償回路(K)が電圧(U2)に比例する補償電荷(Qk+またはQk−)をそれぞれ生成して、入力信号(Q)を補償するために第1の出力によって電荷増幅器(V1)の電荷入力へ送る工程と、
他方で補償回路(K)が生成された各々の補償電荷(Qk+またはQk−)の大きさに比例する複数のパルス(P+、P−)を生成して、第2の出力によって補償電荷(Qk+またはQk−)と逆符号のカウンタ(Z)の入力(Z−、Z+)に送る工程と、
前記カウンタ(Z)がパルスを加算して、対応する和を所望のデジタル信号(D)として配信する工程を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術的主題領域)
本発明は、圧電測定素子によって出力された正および負の電荷信号Qを測定素子における現在の測定値に比例するデジタル信号に変換するための電荷増幅器回路に関するものであり、検出された電荷Qを電圧U2に変換するための電荷入力および電圧出力を有する電荷増幅器V1を含む。発明は、さらに電荷信号をデジタル信号Dに変換するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
電荷増幅器は、特に圧電センサに関連して必要とされる。それは、それらが測定値を電荷の形で出力するからである。そのようなセンサは、例えば力、圧力、加速度、膨張、モーメントおよび関連する物理現象を検出する。そのようなセンサが可動部品、例えば車の車輪に搭載されれば、測定信号は、非接触送信手段によって固定装置に送信できるようにデジタル化される。このために、決定された測定値は、一般に電荷増幅器で増幅され、さらにアナログ・デジタル変換器(A/Dコンバータ)で変換されて、最終的に送信される。
【0003】
電荷Qの変動から生ずる電流と同じ効果を持つ、増幅器入力における不可避な干渉電流のせいで、増幅器出力電圧は、それの元の値から変動する。すなわちドリフトする。この干渉効果を減らすために、しばしば電荷増幅器と並列に抵抗が接続される。それは、ドリフトによる出力電圧の増大を許容レベルに制限する。しかし抵抗もまた測定信号に対して同様に作用する。それによって電荷増幅器の下限周波数は、しばしばもはや許容できない値にまで増大する。もし測定手順が短時間の単一イベントのみを検出するのであれば、測定手順の直前にリセット・スイッチを駆動することによってこの干渉効果を相殺することができる。より長時間の測定手順の場合、抵抗の値の選択によっては、しばしば、結果の下限周波数と電荷増幅器の残留ドリフトとの間の妥協が不満足なものとなる。さらに移動する測定対象などで測定値を非接触で送信する場合には、固定された電子機器からリセット・スイッチを駆動するという別の工夫が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(発明の説明)
本発明の目的は、圧電測定信号を変換するための電荷増幅器のための回路の仕様を特定することであり、それは、上述の問題点を低減できるし、さらにアナログ・デジタル変換器を使用せずに、非接触手段によって容易に送信可能な信号を供給できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明のアイデアは、増幅器の出力信号がゼロに近い値に連続的に設定されて、リセット・スイッチが不要となるというものである。さらに出力信号がパルスの形で提供されるため、それを少ない干渉で容易に送信できる。パルス周波数は、電荷の変動レートに比例する。パルスは、カウンタで加算され、最後にカウンタがリセットされたときからの電荷の変動に比例する値を表す。それは、測定素子における現在の測定値に比例する。
【0006】
(図面の簡単な説明)
以下で発明について図面を参照しながらより詳細に説明する。それらは、
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】パルス化補償電流を備えた例示的実施の形態における、本発明による回路の模式図。
【
図5】トランジスタを使用した、本発明による回路の好適な実施の形態。
【
図6】一定の補償電流を備えた、本発明による回路の好適な実施の形態。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明を実施する方法)
図1は、本発明による電荷増幅器回路の機能の簡略図を示す。検出すべき電荷Qは、圧電測定素子によって生成され、帰還キャパシタを備えた増幅器V1の入力に供給される。増幅器出力電圧U2が基準値Uref+またはUref−をそれぞれ越えるかあるいは下回ると、直ちに補償回路Kが決められた補償電荷Qk+またはQk−をネットワークR2/C2を介して増幅器入力に供給する。これは、それの出力電圧U2が再び限度Uref+とUref−との間に収まるまで続けられる。正の電荷単位Qk+ごとにパルスP−が出力され、また負の電荷単位Qk−ごとにパルスP+が出力される。
【0009】
これらのパルスは、V1の入力における電荷変動に対する、あるいは入力電流に対する増分信号(incremental signal)である。
【0010】
これらのパルスをアップ/ダウン・カウンタZで加算することによって、それまでに入力された合計電荷の尺度が得られ、最終的には測定素子に存在する現在の測定値に比例する望みのデジタル信号Dが供給される。好ましくは、この信号Dは、電圧信号である。
【0011】
この回路は、簡単な設備でパルス送信できるため、デジタル測定値の処理や移動する対象物での測定に特に有利である。
【0012】
圧電測定技術の例に見られるような、従来技術に従って電荷信号を処理するための典型的な回路が
図2に示されている。圧電測定素子は、この出願では通常電荷増幅器と呼んでいる積分増幅器V1の入力へ電荷源Qとして接続される。この電荷増幅器V1と並列にキャパシタC1およびリセット・スイッチSRが接続される。リセット・スイッチSRをクローズすることによって、キャパシタC1が放電する。このスイッチがオープンされたあと、その時点以降に供給された電荷QがキャパシタC1に到達し、値Q/C1を有する電圧を増幅器出力に誘起する。もしデジタル信号Dが必要であれば、増幅器出力電圧がアナログ・デジタル変換器A/Dに送られて、その出力に並列または直列の信号Dが得られる。
【0013】
キャパシタC1と並列に接続される抵抗R1は、ドリフトによる出力電圧の増加を許容レベルに制限するためのものである。
【0014】
図3は、本発明による回路の例示的実施の形態を簡略化した形で示す。増幅器V1の前にある部品は、各々の圧電測定デバイスに存在する部品を表している。Qは、電荷源であり、圧電測定素子によって生成される。dQ/dtは、Qの変動によって流入する電流を表す。電荷源、ケーブルおよび増幅器入力を含む入力回路の、Cqは合計の容量、Rqは合計のリーク抵抗を含むものとする。Uofは、増幅器の電圧オフセットであり、Iofは、オフセット電流である。I1は、源から増幅器の入力へ流れる合計電流であって、dQ/dt、IofおよびUof/Rqから生ずる成分を含む。U2=0の出力状態において、入力電流I1は、最初、増幅器V1の入力へ非常に小さい入力電圧U1と、電流I1の時間積分の値をC1で除した値を有する出力電圧U2とを誘起する。もしU2が値Uref+を超えると(入力における負電荷の増加に対して)、比較増幅器V2が応答して正の出力信号を供給する。パルス発生器Gから正確に定義された幅を有するパルスが2つのANDゲート&1および&2に到達する。V2の出力電圧が正であるかぎり、これらのパルスは、ANDゲート&1の出力に到達する。それらは、スイッチS1を駆動し、それによって各パルス長の間電流源Ik+をオープンにする。このため、各々のパルスによって、補償電流源Ik+にパルス長を乗じた値に等しい明確に定義された補償電荷Qk+がネットワークR2、C2、C3に到達する。この電荷Qkは、増幅器入力に到達して、源によってV1に出力される電荷の少なくとも一部分を補償する。十分な数の補償電荷のあとで、入力電荷Qがほぼ完全に補償されると、U2がふたたび値Uref+を下回り、それによってGからの後続パルスは、もはやANDゲート&1を通過しないようになる。ANDゲートによって出力されるパルスは、パルスPとして出力にも到達する。これらのパルスの数は、入力に流れ込んだ電荷を補償電荷Qkで除したものに等しく、従って入力信号の尺度になる。Qが正の符号を持つ(正電荷が増加する)場合には、V3、ANDゲート&2、S2およびIk−が同様に機能し始め、出力パルスP+を誘起する。
【0015】
これらのパルスは、増幅器入力における電荷変動に比例する増分信号である。パルスP+の周波数は、正電荷の増加の尺度であり、同様にパルスP−の周波数は、電荷減少の尺度である。
【0016】
しかし最も興味あるのは、通常、特別な瞬間からの電荷変動の積分である。この場合、パルスは、アップ/ダウン・カウンタで加算される。パルスP+およびP−は、2チャンネル送信経路Uウムラウトを通過してカウンタZの2つの入力に到達する。このカウンタは、リセット・スイッチRによってゼロに初期セットされる。測定プロセスの冒頭で、カウンタは、スイッチSによって始動させられる。もし特定の時点で測定値を固定したければ、その時点でカウンタを停止させることができ、増幅器V1でのドリフト効果の如何に関わらずその信号をカウンタに保存することができる。カウンタZに収容された、電荷Qに比例する値は、既知のやり方でデジタル信号Dとして並列または直列に読み出され、そのあとでさらに処理することができる。
【0017】
増幅器入力における干渉の源は、物理現象によるものであり、完全に解消することはできない。それは、確かに小さくはできてもIofおよびUofを完全にゼロにできないし、従って絶縁抵抗Rqが常に有限値を有するためである。従ってこの進歩した回路にあっても、電荷Qの真の静的な測定は、実際上行うことができず、抵抗R2は、干渉電流を消散させるために有限値を有しなければならない。しかし、干渉なしに容易に送信される増分信号が存在するし、電荷増幅器上のリセット回路も必要ない。それどころかカウンタは、任意の時点で容易かつ迅速にゼロにセットできる。
【0018】
急激に変動する信号の(短時間のうちに電荷が大きく変動する)場合、カウンタは、予めゼロにセットされて、予期される信号のステップ変動の直前に始動されるのが有利である。
【0019】
周期的な信号の場合も、カウンタは、イベント駆動のやり方で、例えば各周期プロセスの冒頭で周期的にゼロにセットすることができる。
【0020】
図6は、
図3に示された回路と本質的に同じ機能を有するが、幾分異なるふうに構築された回路を示している。
【0021】
それが異なる点は、増幅器V2の出力電圧が正のとき、スイッチS1がオープンし、ネットワークR2/C2を介して増幅器入力へ補償電流Ik+を供給し、U2がふたたび値Urefよりも低くなるまでそれを続けるという事実である。V2の出力電圧は、また同時にANDゲート&4にも供給され、それは、補償電流Ikが流れる間、パルス発生器Gのパルスを、出力への出力パルスP−として出力する。従ってそれらのパルスの数は、また補償電荷に比例し、最終的にはデジタル信号Dの配信につながる。
【0022】
入力における電荷の正の変動に対して本質的に同じことがV3、S2および&3にあてはまる。スイッチS1およびS2は、補償電流の切り換えだけを行う。
【0023】
これらの説明から、従来の回路タイプに対して発明の以下の特徴が特に明らかである。
【0024】
−測定信号は、直に増分的であり、カウンタを使用する場合には、中間のアナログ・デジタル変換器なしでデジタル的である。
【0025】
−低レベルの干渉で、信号の非接触送信が容易に可能である。
【0026】
−測定装置のゼロ設定が外部カウンタ上で実行可能であり、電荷増幅器自体にはスイッチング操作が必要ない。
【0027】
−カウンタを停止すると、測定信号は、任意の時間長だけ保存される。
【0028】
−増幅器出力、ひいては増幅器入力における電圧が通常かなり小さいという事実によって、ほんの有限の大きさしかない、入力における絶縁抵抗の効果が低減される。
【0029】
(コンポネントの機能およびサイズ決定指針(
図3および
図6を参照))
図3の回路のパルス発生器Gの周波数は、入力に期待される最大のステップ電荷がデジタル信号の許容できる遅延に相当する時間内に補償されるように十分高く設定されるべきである。可能な最大周波数は、選ばれたパルス幅によって決まる。
図6の回路では、パルス発生器Gの周波数は、測定信号の十分な分解能を得るためと、ドリフト効果およびその他のタイプの干渉によって引き起こされる短時間の補償電流を十分よく分解して、P+およびP−パルスを加算するカウンタのゼロ点ドリフトがそれ以上発生しないようにするために十分高くなければならない。
【0030】
基準電圧Urefは、安定性の理由から少なくとも値Qk/C1を有しなければならない。ここで、Qkは、
図3の回路または
図6の回路の補償電荷単位であって、それぞれ補償プロセスにおいて入力に配信される本質的に最小の電荷を表している。
【0031】
特に興味深いのは、R2が小さい値、極端にはR2=0オームに選ばれる特別な場合である。その場合、補償電荷Qkは、増幅器入力へ直接到達する。キャパシタC2およびC3は、もはや何の効果も持たず、省くことができる。電圧U3は、ほぼ値U1を取り、従って無視しうるほど小さい。
【0032】
図4は、
図3の回路図の一部を示しており、4つのコンポネントが追加されている。スイッチS1およびS2は、半導体スイッチとして構成されるのが好ましい。これらのスイッチのリーク電流が許容できないほど大きい場合には、スイッチと直列に高インピーダンスのダイオードD1およびD2を挿入することによってそれらを減らすことができる。抵抗R3およびR4を用いてダイオードを順方向にバイアスするのが有利である。特にもしR2が高インピーダンスを有するのであれば、U3は、ゼロボルトから相当に外れた値を獲得することができる。その場合、これらの抵抗は、ダイオードよりも幾分小さい値を有するべきであるが、その場合でもそこを流れるIkの成分が無視しうるほど小さくなるように十分高くなければならない。図示された例で、この回路は、U3が|11V|の値を超えないかぎり動作する。
【0033】
(例示的実施の形態)
図5は、多くの可能な例示的実施の形態の1つを示す。
図3の模式回路の実施を表すこの例で、(
図3の)スイッチS1およびS2は、電流源に集積化されている。ANDゲート&1と&2の両方とも、一方でパルスP+およびP−を出力し、他方でトランジスタT1からT4を介して電流源を制御する。各々のケースで電流源は1つの増幅器と1つのトランジスタによって既知のやり方で構成される。
【0034】
ここには6個のトランジスタが、接合FETまたはMOSFETのいずれかに関わらず、区別なくFETトランジスタとして示されている。
【0035】
これら2つのANDゲート&1および&2がゼロの出力信号を有するとき、トランジスタT1からT4は導通し、T5およびT6は、ブロックされて、補償電荷の生成はない。
【0036】
補償電荷Qk+の生成は、次のように説明される。&1の両入力に正の信号が存在すれば、&1の出力電圧は、ゼロと異なる。&1は、それの出力電圧がそのとき負になるように設計されなければならない。自己導通トランジスタT1は、それによってブロックされ、結果的に自己ブロック・トランジスタT3と同じようになる。増幅器V4の+入力には、この時点で電圧分割器R9およびR11によって形成された電圧が存在する。従って、抵抗R13には、抵抗R9と同じ電圧が存在し、従ってこの抵抗を通る電流が所望の補償電流となる。これは、トランジスタT5を流れる。従って&1のオープンしている時間が終了すると、補償電荷Qk+がネットワークR2、C2、C3に流れ込んでいることになる。
【0037】
もし&2の両方の入力が正であれば、&2の出力電圧は、ゼロと異なる。&2は、それの出力電圧がそのときに正となるように設計されなければならない。従ってT2、T4、V5およびT6において同じように補償電荷Qk−の生成が起こるが、ただ符号が逆である。
【0038】
従来の増幅器の切換可能な測定範囲は、使用されているキャパシタC1の容量に逆比例する。しかし本発明によるこの電荷増幅器では、広い測定範囲の変換がいまや可能であり、必要なのは1つのキャパシタC1だけである。異なる測定範囲を選択できるように異なる容量を有する異なるキャパシタC1.1、C1.2…C1.3間でスイッチングすることは、ここでは冗長である。それは、どの場合でも増分電荷のみが検出されるためである。従ってこのキャパシタC1には、特にそれの絶縁性に関して特別な制約がない。C1両端の電荷損失は、無視しうる。それは、C1両端の電圧が短時間だけ留まり、増幅が存在しえないためである。従って、小さい容量のキャパシタC1を選ぶことができる。大きい容量のキャパシタは、大型になるので、空間も節約されることになる。
【0039】
またR1は、完全に省くことができる。
【0040】
同じ目的で、例のなかで使用されているものと異なる他のコンポネントを使用することも発明人の観点から代替的な解決策となると考えられる。
【符号の説明】
【0041】
(参照記号のリスト)
Q 電荷源(例えば、圧電測定センサ)、またはそれによって出力される電荷Q。
【0042】
dQ/dt 増幅器V1へ電荷源によって出力される電流。
【0043】
Cq 電荷源、ケーブルおよび増幅器入力の電気容量。
【0044】
Rq 電荷源、ケーブルおよび増幅器入力の絶縁抵抗。
【0045】
Rz 増幅器出力によってC1に供給できる電流が十分でないか、さもなければC1を望ましくないほど大きくしなければならない場合には、電荷の急激な上昇時に増幅器V1のオーバードライブを防止するために、場合によっては決まった抵抗値を直列接続することにより人為的に増やされることが可能な供給ケーブルの抵抗。
【0046】
Iof 増幅器V1のオフセット電流。
【0047】
Uof 増幅器V1のオフセット電圧。
【0048】
I1 合計の入力電流。dQ/dt+Iof+Uof/Rq。
【0049】
U1 増幅器V1の入力電圧。
【0050】
V1 高インピーダンス増幅器。
【0051】
C1 増幅器V1の帰還容量。これは、一般に従来の電荷増幅器よりも本質的に小さいものに選ぶことができる。それは、増幅器V1がオーバードライブされることなしに、補償回路によって補償しきれない入力電荷を吸収できるだけの大きさであればよい。
【0052】
U2 増幅器出力の電圧。補償回路によってこれは<|Uref|の値に繰り返し設定される。
【0053】
Uref+/Uref− 補償回路の活動をトリガする基準電圧。
【0054】
V2,V3 増幅器。U2と基準電圧Urefとの間の比較のための比較器として機能する。
【0055】
G パルス発生器。決まった幅と周波数のパルスを供給する。
【0056】
&1,&2 ANDゲート。両入力が正の信号を有するときに正の出力信号を出力する。それらの出力は、スイッチS1およびS2を駆動する。
【0057】
&3,&4 ANDゲート。V2またはV3の出力信号が正の場合に、パルス発生器Gからのパルスを出力へ切り替える。
【0058】
S1,S2 スイッチ。補償電流Ik+およびIk−を切り替える。
図3の場合には、それらは、またパルス発生器Gからのパルスを出力へ切り替える。
【0059】
Ik+,Ik− 明確に定義された電流源。パルス発生器Gのパルス長の間、ネットワークR2、C2、C3に対して正確な電荷Qk+またはQk−を各々供給する。
【0060】
R2,C2 増幅器入力へ補償電荷を送信するために使用される。R2は、最大の入力エラー電流(Iof+Uof/Rq)がU3 max/R2よりも小さくなるように十分小さい値に選ばれなければならない。それは、エラー電流が流れ出すことができるのは、R2を通してのみだからである。
【0061】
C3 補償電荷のステップ変動を濾過するのに役立ち、それによってU3を安定化する。出力信号に大きな影響を与えないようにするために、C3は、C2よりも小さく選ぶのが有利である。
【0062】
U3 C3両端の電圧。許可された制御範囲全体にわたって可変である。
【0063】
Uウムラウト 出力パルスP+およびP−のための、電気的、光学的、誘導的、容量的または高周波手段によるトランスミッタおよびレシーバ・アンテナを介した2チャンネル送信経路。
【0064】
Z P+およびP−パルスを加算するためのカウンタ。カウンタは、正および負の値を出力するように設計するのが有利である。
【0065】
D 並列または直列のデジタル・カウンタ出力。
【0066】
R カウンタをゼロにセットするためのリセット・スイッチ。
【0067】
S 計数プロセスを始動させるための始動スイッチ。
【0068】
Qk 測定装置の分解能を決める。例えば1000ステップ(1%)の分解能が必要であれば、そして測定範囲を完全に利用するのであれば、Qkは、最大入力電荷のせいぜい1/1000であるべきである。パルス発生器Gのパルス幅およびIkの値は、それに従って選択される。