特許第5715160号(P5715160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニヴェルシテ ド ボルドー アンの特許一覧 ▶ アンスティテュ ポリテクニーク ド ボルドーの特許一覧 ▶ セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス)の特許一覧 ▶ ユニヴェルシテ ボルドー セガランの特許一覧

特許5715160膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用
<>
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000002
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000003
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000004
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000005
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000006
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000007
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000008
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000009
  • 特許5715160-膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715160
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】膵臓β細胞又はランゲルハンス島のアクティビティを測定するセンサ、係るセンサの製造及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/04 20060101AFI20150416BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20150416BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20150416BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   A61B5/04 A
   A61B5/04 300J
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-548425(P2012-548425)
(86)(22)【出願日】2011年1月12日
(65)【公表番号】特表2013-517029(P2013-517029A)
(43)【公表日】2013年5月16日
(86)【国際出願番号】EP2011050359
(87)【国際公開番号】WO2011086105
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2013年12月18日
(31)【優先権主張番号】1050202
(32)【優先日】2010年1月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512183806
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド ボルドー アン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE BORDEAUX 1
(73)【特許権者】
【識別番号】512183817
【氏名又は名称】アンスティテュ ポリテクニーク ド ボルドー
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT POLYTECHNIQUE DE BORDEAUX
(73)【特許権者】
【識別番号】510073202
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス)
(73)【特許権者】
【識別番号】503127873
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ボルドー セガラン
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】カタルジ ボグダン
(72)【発明者】
【氏名】ルノー,シルヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ラウー,マテュー
(72)【発明者】
【氏名】シャルペンティエール,ジレ
(72)【発明者】
【氏名】ボルナ,ヤニック
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6605039(US,B2)
【文献】 特表2005−510312(JP,A)
【文献】 国際公開第03/045493(WO,A2)
【文献】 特表2002−531194(JP,A)
【文献】 国際公開第00/033065(WO,A1)
【文献】 特表2003−522558(JP,A)
【文献】 国際公開第00/074753(WO,A1)
【文献】 特開2008−039624(JP,A)
【文献】 特開2005−168455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04
A61B 5/0408
A61B 5/0478
A61B 5/0492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電極のセットと、
微小電極のセット上に設けられる膵臓β細胞又はランゲルハンス島とを含むセンサであって、
前記微小電極のセットは、前記膵臓β細胞又はランゲルハンス島により生成される電気信号をそれらの生理的活性化の間に、実時間で且つ連続的に、動的に測定する、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記微小電極のセットは、電位の形式で電気信号を測定する、
請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
処理ユニットの少なくとも1つのセットを更に含み、
前記処理ユニットのそれぞれは、微小電極に結合され、測定された電気信号を形成し、実時間で且つ連続的に、患者のインスリンの必要な量を示す少なくとも1つのパラメータを抽出する、
請求項記載のセンサ。
【請求項4】
前記処理ユニットは、活動電位を検出する、
請求項2又は3記載のセンサ。
【請求項5】
前記インスリンの必要な量を示す前記少なくとも1つのパラメータを、インスリンディスペンサを制御する制御信号に変換するレギュレータを含む、
請求項記載のセンサ。
【請求項6】
少なくとも前記微小な電極のセットを含む半導体基板を含む、
請求項記載のセンサ。
【請求項7】
前記膵臓β細胞又はランゲルハンス島へのアクセスを必要とする液体をフィルタリングし、重量が65kDaよりも大きい前記液体の分子を阻止する半透過性の膜組織を更に含む、
請求項記載のセンサ。
【請求項8】
患者の体に埋め込まれる、
請求項7記載のセンサ。
【請求項9】
前記膵臓β細胞又はランゲルハンス島は、豚、マウス又はヒト由来である、
請求項記載のセンサ。
【請求項10】
処理ユニットの少なくとも1つのセットを更に含み、
前記処理ユニットのそれぞれは、微小電極に結合され、測定された前記電気信号を形成
し、有害分子をスクリーニングする生理学的研究、治療目的の生理学的研究、幹細胞から
膵臓β細胞への細胞の分化をモニタする生理学的研究のため、前記膵臓β細胞又はランゲ
ルハンス島の電気的活動の状態を示す少なくとも1つのパラメータを抽出する、
請求項1又は2記載のセンサ。
【請求項11】
ある量のインスリンを患者の体に投与するインスリンディスペンサを含む装置であって、
当該装置は、請求項1乃至9の何れか記載のセンサを含む、
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
患者の体に埋め込まれる、
請求項11記載の装置。
【請求項13】
微小電極のセットを有する基板を提供するステップと、
前記基板をプラズマにより清浄するステップと、
前記微小電極のセット上に前記膵臓β細胞又はランゲルハンス島を設けるステップと、
を含むことを特徴とする請求項記載のセンサを製造する方法。
【請求項14】
有害分子をスクリーニングする生理学的研究、治療目的の生理学的研究、幹細胞から膵臓β細胞への細胞の分化をモニタする生理学的研究向けの請求項1記載のセンサ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、限定されるものではないが、インスリン投与による糖尿病の治療で使用されるセンサの分野に関する。
また、本発明は、患者の体に埋め込み可能であって、ある量のインスリンを投与するインスリンディスペンサを含むことが可能な装置の分野に関する。
【0002】
さらに、本発明は、係るセンサ及び係る装置を製造する方法及び係るセンサの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、過剰に高い血糖レベル(血糖)により引き起こされる。これは、患者の体がグルコースを代謝させることができないことを意味する。
【0004】
グルコースの代謝は、膵臓におけるランゲルハンス島の膵臓β細胞により分泌されるホルモンであるインスリンに依存する。
【0005】
糖尿病をもつ患者のなかには、膵臓β細胞が破壊されているか又は不十分であり、もはやインスリンの分泌がないか又は十分な量での分泌がない患者がある(「タイプ1」の糖尿病と呼ばれる)。
【0006】
いわゆる「タイプ1」の糖尿病のコンテクストにおいて、治療は、一般的に、一日当たり数回にわたり、インスリンの投与量を患者の体に注入し、患者の食生活をモニタすることからなる。
【0007】
「タイプ2」と呼ばれる別のタイプの糖尿病をもつ制限された数の人(患者の細胞は、インスリンによりグルコースを捕捉して使用し、インスリンに対して感度が低くなるように指定される)は、インスリンの注入を使用する。
【0008】
インスリンの注入に加えて、患者の健康にとって弊害をもたらす低血糖の状態に患者がないことを確認するため、一日当たり数回にわたり、患者の血糖レベルをモニタすることも必要である。
【0009】
さらに、インスリンの必要は、人の身体的且つ知的な状態及びアクティビティに依存する。
【0010】
血糖を決定するため、一般的に以下が行われる。
【0011】
患者の指が針で刺され、血液の滴を形成するように押される。血糖を決定するために指定される装置に接続されるタブは、血液の滴に適用される。装置は、一般的にLCDスクリーンで、患者の血糖レベル(血糖)を示す。従って、この動作は面倒である。
【0012】
この理由のため、血糖をモニタすることができ、患者の需要に良好に適したインスリンの注入レートを保証することができる、より制限的でない解決策が求められている。
【0013】
最近の開発は、連続的な血糖のモニタリングを可能にしている。
【0014】
1つの解決策は、ブドウ糖酸化酵素にリンクされる電極を含む電気化学センサを患者の体に導入することからなる。ブドウ糖酸化酵素は、酸素の存在下で、過酸化水素水及びグルコノラクトンを生成するように、血液に存在するグルコースに反応する。次いで、過酸化水素水は、酸化され、電極により水に変換され、電極は、血中ブドウ糖濃度に比例する電流を発生する。
【0015】
この解決策の主な問題点は、使用される技術が血糖のみを検出し、他のホルモン調節物質又はグルコースの代謝を検出しないため、インスリンの必要性に関する情報が収集することができないこと、及びグルコース恒常性、すなわち血糖バランスを維持して、このバランスから体が離れる傾向がある外的制約にも係らず機能するのを可能にする人体の能力を考慮することができないことである。さらに、情報は、実時間で収集することができない。
【0016】
表面増感ラマン分光法、蛍光分光法、リバース・イオンフォレーシス、光音響分光法、サーマル又はインピーダンス分光法、電磁場測定のような、非侵襲的なソリューションが存在する。
【0017】
しかし、これら非侵襲のソリューションは、例えば病院の環境といった、コンスタントな医療のモニタリングの外での使用向けに適さない。
【0018】
上述された全ての従来の解決策は、単一のパラメータ、すなわち血糖レベルを使用して、インスリン及び/又はグルコースの必要を決定しているが、他のホルモン、脂質及びアミノ酸のような他の化合物は、インスリン及び/又はグルコースの必要を生理的に変える。従って、血糖レベルは、インスリン及び/又はグルコースの実際の必要を常に単独で反映しない。この理由のため、生理的な状態を考慮した複雑なアルゴリズムは、単一のパラメータの使用を克服する必要がある。
【0019】
さらに、係る解決策は、患者の健康にとって危険な低血糖状態の検出において信頼性の低い結果を生成する。
【0020】
最終的に、係る解決策は、インスリンが次から次へと投与されるのを可能にする。次から次へとインスリンを投与することは、インスリン耐性、すなわち、インスリンの存在にもかかわらず、患者の体がグルコースを上手く代謝しないケースが回避されるのを可能にする。
【0021】
また、膵臓β細胞に関する研究の分野では、新たな治療の原理又は有害な物質に関する研究は、比較的複雑であり、スクリーニングアプローチが困難である。また、これらの研究は、遺伝子治療の使用を必要とし、従って、膵臓β細胞の陰性状態を変更する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、本発明は、上述された問題点の少なくとも1つを克服することが意図される。 また、膵臓β細胞又はランゲハンス島の電気的な活動に関する物質の影響を明らかにするため、膵臓β細胞又はランゲハンス島の状態の長期の観察に関する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1に係るセンサが本発明により提案される。
膵臓β細胞又はランゲハンス島を使用する1つの利点は、センサが、上述されたグルコースセンサよりも患者の生理学的状態に近い情報を提供することができることである。
【0024】
別の利点は、特に、有害分子又は治療の分子をスクリーニングするため、膵臓β細胞又は島を研究するために、係るセンサがクローン膵臓β細胞又はプライマリ膵臓β細胞又は体外の島を研究するために使用されることである。
【0025】
また、係るセンサは、幹細胞から膵臓β細胞への細胞の発達(differentiation)の間に、及び任意にランゲハンス島へのその構築の間に、細胞がモニタされるのを可能にする。
【0026】
このセンサの他の任意且つ限定するものではない特徴は、請求項2乃至10でカバーされる。
【0027】
本発明は、請求項11又は12に係る装置に関する。
【0028】
また、本発明は、請求項13に係る、係るセンサ及び係る装置を製造する方法に関する。
【0029】
また、本発明は、請求項14に係る、係るセンサの使用に関する。
【0030】
膵臓β細胞又はランゲハンス島を使用する利点は、センサは、上述されたグルコースセンサよりも患者の生理学的状態に近い情報を提供することである。
【0031】
本発明の更なる特徴、目的及び効果は、本発明を例示するために提供され、限定するものではない添付図面を参照して、以下の詳細な説明で明らかとなる。全ての図面において、同じ構成要素は同じ参照符号により示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】電極及び膵臓β細胞又はランゲハンス島のレベルでの、上方視点からのセンサを部分的に例示する図である。
図2】膵臓β細胞又はランゲハンス島のレベルでの、グルコース、作動電気信号、ジアゾキシド、そのグルコース応答阻害のために知られる薬剤の存在下での膵臓β細胞の反応を示すグラフである。
図3】2つの異なる濃度でのグルコースの存在下における膵臓β細胞の反応の変動を示すグラフである。
図4】インクレチンホルモンGLP-1、グルコース反応の生理的増幅の存在下での、膵臓β細胞の反応を示すグラフである。
図5】本発明の実施の形態に係る、インスリン投与装置を示す図である。
図6】本発明の別の実施の形態に係る、インスリン投与装置を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る、インスリン投与装置を示す図である。
図8】本発明の別の実施の形態に係るインスリン投与装置を示す図である。
図9】センサの製造方法の実現例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
センサ
本発明に係るセンサ2は、図1図5図7を参照して以下に記載される。
センサ2は、インスリンを投与することで、タイプ1又はタイプ2の糖尿病の治療に適した装置で使用される。
【0034】
センサ2は、主に、微小電極のセット21、膵臓β細胞23、又は微小電極のセット21にある膵臓β細胞23を含む、ランゲルハンス島230を含む。
【0035】
微小電極のセット21は、実時間で且つ連続的に、膵臓β細胞23又はランゲルハンス島230により発生される電気信号Vを、それらの生理的活性化の間に測定するために適している。
【0036】
図1に示されるように、センサ2を通して微小電極21の分散は、微小電極21が正規の且つ慣習的な配置に従ってセンサ2を一様にカバーする。微小電極21は、50μmと200μmとの間の距離だけ離れて配置される。微小電極21のセットは、平方ミリメートル当たり20個と200個の間の微小電極の密度を有する。
【0037】
図1に示される例示的な実施の形態では、センサ2は、1平方ミリメートル当たりで分散される60個の微小電極のセットを含む。微小電極21は、直径においてディスクの形状10μmを有する。
【0038】
センサ2は、60個の微小電極のセット21において膵臓β細胞23を含む。確かに、先に指定されたように、従来のセンサは、グルコノラクトンを使用して、血中レベルがインスリンの患者の必要を反映することが想定され、先に見たように必ずしも正しくないグルコースを間接的に測定する。
【0039】
膵臓β細胞の使用は、タイプ1又はタイプ2の糖尿病をもつ個人(患者)で再現されることが求められる、健康な個人の膵臓の自然の生物学的機能に近くするのを可能にする。確かに、膵臓β細胞は、インスリンを分泌することで血糖を調節する。それらの生理的活性化は、例えば電位といった電気信号を生成する。従って、膵臓β細胞の生理的活性化は、その膜組織の両側での電位における動的な変動を含む。この動的な変動は、波形と呼ばれる時間の依存した振幅プロファイルを有し、膵臓のβ細胞の生理学的作用を反映し、従って患者のインスリンの必要を反映する。例えば、当業者に知られている活動電位と呼ばれる特定のプロファイルが存在し、電位の閾値を超える電位において迅速且つ増幅された変動に対応する。
【0040】
膵臓β細胞の場合、活動電位の周波数は、インスリンの分泌につれて増加する。図3に示されるように、電位は実時間且つ連続的に、すなわち動的にミリ秒で測定される。
【0041】
ランゲハンス島の使用は、自然の生物学的機能に更に近くすることができる。これは、ランゲハンス島の細胞の3分の2を表す膵臓β細胞は、それら自然の環境にあるからである。
【0042】
膵臓β細胞又はランゲハンス島の使用は、インスリンの患者の必要量に関する情報が取得されるのを可能にし、患者の血糖が健康な個人における血糖の調整に類似するやり方で調整されるのを可能にする。
【0043】
また、センサ2は、少なくとも1つの処理ユニット25のセットを含む。次いで、微小電極21は、測定された電気信号を形成し、インスリンの必要を示す少なくとも1つのパラメータPを抽出するために単一の処理ユニット25に結合される。
【0044】
また、パラメータPは、生理学的研究のため、膵臓β細胞23又はランゲハンス島230の電気的活性の状態を示す。この生理学的研究は、有害分子をスクリーニングするか又は幹細胞から膵臓β細胞への細胞の発達、すなわちランゲハンス島への構築を研究するために細胞をモニタすることの環境で実行される。この生理学的研究は、治療の目的で行われる。
【0045】
微小電極21当たり1つの処理ユニット25を設ける利点は、1つの処理ユニットは、測定された電気信号Vの連続的且つ実時間の処理を可能にすることである。
【0046】
好ましくは、処理ユニット25は、例えばサブミクロンのCMOS技術で製造される、カスタマイズされたアナログ超小型電子回路である。この超小型電子集積のソリューションは、高い回路の集積密度(数mm2)及び低いエネルギー消費量を得るために最適であり、センサ2の長期間の使用を可能にし、センサ2周辺の温度の増加を制限する。信号のアナログ処理は、(標準的又は専用のプロセッサでの)デジタル計算の存在なしに行うのを可能にし、従って単一の配線でそれぞれの信号を符号化することで回路への内部接続を最少にする。さらに、標準的なCMOS技術の処理ユニット25の製造は安価である。
【0047】
処理ユニット25は、サブユニット251及びサブユニット253を含む。
【0048】
信号の形成は、サブユニット251により実行され、サブユニットは、微小電極21から電気信号Vを受け、電気信号を増幅及び/又はフィルタリングタイプの数学の関数に従って処理する。電位を測定する場合、サブユニット251は、特に活動電位を検出する。
【0049】
パラメータPの抽出は、抽出サブユニット253により実行され、パラメータPの値は、形成される電気信号及びセットポイント値Vcを含むサブユニット253の入力信号に基づいて計算される。セットポイント値Vcは、膵臓β細胞23又はランゲルハンス島230の通常の活動を示す。
【0050】
また、センサ2は、インスリンの必要を示すパラメータPを、インスリンディスペンサ3を制御する制御信号Cに変換するレギュレータ26を含む。全ての処理ユニット25についてレギュレータ26が存在する。得られた制御信号Cは、処理ユニット25により抽出されたパラメータPとセットポイント値Vcとの間の差、及びこの差の導関数に依存する。特に、制御信号Cは、測定された電気信号Vの時間及び統計処理のため、形成される電気信号Vの波形に依存し、及び/又は形成される電気信号Vの周波数特性に依存する。また、レギュレータ26は、投与されるインスリンの量の相対的及び絶対的な限界のようなセーフティセットポイント、及び/又は投与されるインスリンの量における変動の限界を考慮する。
【0051】
例えば、レギュレータ26は、形成される電気信号Vの標準偏差、発信の周波数又はウェーブレットフィルタリング等に従って、閾値となる検出の変数を実現する。
【0052】
微小電極21のセット及び/又は処理ユニット25のセット及び/又はレギュレータ26は、例えばシリコンである半導体材料で製造又は配置される。
【0053】
微小電極21のセット及び/又は処理ユニット21のセット及び/又はレギュレータ26は、同じ半導体基板で生成されるか又は同じ半導体基板に配置され、或いは個別の半導体基板に配置され、次いで(金属化されたトラックM又はフレキシブルコネクションFのために)結果として電気的に相互接続される。
【0054】
例えば、図5図7に示されるように、微小電極21のセット、処理ユニット25のセット及びレギュレータ26は、個別のシリコン基板21s,25s,26sで生成され、フレキシブルコネクションFにより接続される(図5図7参照)。任意に、個別のシリコン基板21s,25s,26sは、同じ基板28に配置され、次いで当業者に知られるやり方で互いに電気的に接続される(図6参照)。
【0055】
図7の例では、微小電極21のセット及び処理ユニット25のセットは、同じシリコン基板21〜25sで直接に生成され、金属化されたトラックMにより電気的に接続される。
【0056】
図8の例では、微小電極21のセット、処理ユニット25のセット及びレギュレータ26は、同じ基板21−25−26sに直接に製造され、金属化されたトラックMにより電気的に接続される。
【0057】
半導体基板上に直接に処理ユニット25のセットを製造する利点は、膵臓β細胞23又はランゲルハンス島230により生成され、微小電極21のセットにより測定される電気信号Vの劣化、及び電気信号Vの体外の処理に関連する情報の損失が回避されることである。
【0058】
微小電極21のセット、処理ユニット25のセット及びレギュレータ26の半導体基板21s,23s,25s,21−25s,21−25−26s上での製造は、当業者に既に知られており、以下では更に詳細に説明されない。微小電極アレイ(MEA)技術の例を参照されたい。
【0059】
センサ2は、図5図8に示されるように、患者9の体に少なくとも部分的に埋め込まれるように適合される。センサ2が患者9の体に部分的に埋め込み可能である場合、少なくとも、微小電極21のセット、膵臓β細胞23又はランゲハンス島230は、患者の体内にある。好ましくは、処理ユニット25のセットは、患者9の体内にある(図7)。また、微小電極21、膵臓β細胞23又はランゲハンス島230、処理ユニット25のセット及びレギュレータ26を含むセンサ2を製造することも可能であり、患者9の体に全体的に埋め込むことができる(図8)。
【0060】
好ましくは、センサ2は、患者9の体の動脈又は腹膜近くの間質の組織に埋め込まれる。
【0061】
人体の抗体は、移植片の場合のように、異質であると認識されるか又は患者9の体の免疫系と親和性がないと認識された全ての分子を攻撃する。
【0062】
この拒否を回避するため、センサ2は、膵臓β細胞23にアクセスし、重量が65kDa(kilodalton; 1Da=1.67-10-24g)よりも重い液体に含まれる任意の分子を阻止する、例えば血液といった液体をフィルタリングするために適した半透過性の膜組織27を含む。従って、患者9の免疫系と親和性がある膵臓β細胞又はランゲハンス島を選択する必要はなく、膜組織27の存在下で、拒否の危険が低減され、免疫抑制剤を処方する必要がない。
【0063】
センサ2の電力供給は、内部又は外部である。後者の場合、電源は移動することができ、患者があちこち移動するときに患者9に同伴することができる。外部の電源は、外部の誘導により生成される。内部の電源は、バッテリにより生成される。
【0064】
膵臓β細胞23又はランゲルハンス島230は、豚、ネズミ科(例えばマウス又はラット)又はヒト由来のものである場合がある。膵臓β細胞は、クローン起源(すなわち1以上の膵臓β細胞からクローン化される)であるか、幹細胞(すなわち未だ分化されていない細胞であって、何れかのタイプの細胞に変換可能な細胞)から得られる。また、人間の膵臓β細胞は、死体、すなわちそれらの生理的機能が事後に影響される前に、ドナーから得られる。
【0065】
微小電極21での膵臓β細胞23の量は、健康な個人の膵臓における膵臓β細胞の0.01%〜1%の間である。好ましくは、膵臓β細胞23の量は、健康な個人の膵臓における膵臓β細胞の0.1%である。
【0066】
ランゲルハンス島230の数は、これらランゲルハンス島230に含まれる膵臓β細胞の量が健康な個人の膵臓における膵臓β細胞の量の0.01〜1%の間である。好ましくは、ランゲルハンス島230の数は、膵臓β細胞の量が健康な個人の膵臓における膵臓β細胞の0.1%であるように決定される。
【0067】
センサ2は、インスリン治療以外の目的で使用される。確かに、センサ2は、スクリーニングのような様々なテスト(数百更には数千のコンポーネントが少なくとも同数のセンサに配置されるテスト)のために使用されるか、臨床の分析(例えばグルコースの必要な体外測定)のために使用される。
【0068】
得られた結果
臨床検査は、図1のセンサ2に行われる。
【0069】
図2は、グルコース及びジアゾキシドの存在下で、センサ2の膵臓β細胞23の活動を示す。
【0070】
グルコースの存在は、生体内で、例えばプロファイルが健康な個人の膵臓β細胞における活動電位の形式を有する電位の形式において、電気信号の生成につながる。次いで、膵臓β細胞は、インスリンを放出する。また、ジアゾキシドは、すなわちグルコースとジアゾキシドの結合された存在下で、健康な個人の膵臓β細胞へのグルコースの影響を抑制し、膵臓β細胞は、活動電位を生成せず、従ってインスリンを分泌しないことが知られる。
【0071】
図2の最初のラインは、グルコースが20mMで存在する時間を指定し、すなわち0〜50minである。第二のラインは、ジアゾキシドが200μMで存在する時間を指定し、13前後〜16min及び27前後〜35minである。第三のラインでは、それぞれのバーは、電気信号Vで識別された活動電位の発生を表す。第四のラインは、時間の関数(分)として、これら活動電位の瞬間周波数(ヘルツでのIFR)を示す。
【0072】
センサ2の膵臓β細胞23は、ジアゾキシドがないグルコースの存在下での保持された生理的活動を有する一方、ジアゾキシドの存在下で、センサ2の膵臓βセル23は、基礎の生理的活動を有する(ゼロの膵臓β細胞23の活動)ことを見る事ができる。
【0073】
また、ジアゾキシドの影響は決定的なものではないことを見ることができる。確かに、これ以上ジアゾキシドがないとき、センサ2の膵臓β細胞23の電気的活性化は、グルコースのみの存在下で再び保持される。
【0074】
従って、センサ2の膵臓β細胞は、ジアゾキシドに関して生理的な挙動を有する。
【0075】
図3は、グルコース濃度の関数として、膵臓β細胞23で測定される電気信号Vにおいて識別される活動電位の発生における変動を示す。第一のラインは、グルコース濃度を示す。第二のラインでは、それぞれのバーは、活動電位の発生を示す。第四のラインは、アナログ形式で動的且つ連続的に測定されたときの電気信号Vを示す。活動電位の波形は、ドット付きの垂直ラインで目に見る事ができる。
【0076】
図3において、グルコース濃度が2.8mMであるときよりも、グルコース濃度が20mMであるときに、電気信号Vにおける活動電位の発生が高いことがわかる。
【0077】
従って、膵臓β細胞の電気的活動は、グルコース濃度につれて変動し、活動電位の発生は、健康な個人の膵臓の膵臓β細胞について何が生じたかに対応して、グルコース濃度につれて変動する。
【0078】
図4は、インクレチンホルモン、GLP-1のセンサ2の膵臓β細胞23の活動電位の生成への影響を示す。健康な個人について、インクレチンホルモンGLP-1は、膵臓β細胞における活動電位の生成を増加し、従ってインスリンの分泌を増加する。
【0079】
図4の第一のラインは、センサ2の膵臓β細胞23は、垂直の矢印で示されるインクレチンホルモンGLP-1と接触して配置される時間を指定する。第二のラインは、下方向のピークの形式で見る事ができる活動電位の発生と共に、実時間で動的に且つ連続的に測定される電気信号Vを示す。
【0080】
センサ2の膵臓β細胞23の電気的活性化は、インクレチンホルモンGLP-1の注入後に20秒だけ著しく増加する。これは、健康な個人の膵臓の膵臓β細胞の自然の環境で観察される。
【0081】
センサを製造する方法
図9を参照して、上述されたセンサ2を製造する方法が記載される。
本方法は、以下のステップを含む。
微小電極21、任意に処理ユニット25のセット及び/又はレギュレータ26を有する基板21s,21−25s,21〜25−26sを設ける(E1)。
プラズマにより基板21s,21〜25s,21〜25〜26sを清浄する(E2)。
微小電極21のセット上で膵臓β細胞23又はランゲハンス島230を培養する(culture: E3)。
【0082】
プラズマによる基板の清浄E2は、基板21s,21−25s,21−25−26sの表面が疎水性にするのを可能にし、基板21s,21−25s,21−25〜26s上への膵臓β細胞の付着について表面を準備する。
【0083】
膵臓β細胞23又はランゲハンス島230は、従来のやり方で得られる。
【0084】
インスリン分配装置
インスリンを分配する可能な装置1の例は、図5図8を参照して以下に記載される。
【0085】
この装置1は、ある量のインスリンを患者9の体に投与するインスリンディスペンサ3を含む。
【0086】
また、装置1は、上述されたセンサ2を含む。
【0087】
インスリンディスペンサ3は、患者9の体に埋め込み可能である。これは、インスリンディスペンサ3が患者9の体の外にある場合があるので、必須のものではない。
【0088】
インスリンディスペンサ3及びセンサ2が患者9の体に完全に埋め込み可能である場合、患者9は、彼又は彼女の体に接続された外部のオブジェクトの存在により乱されない。さらに、これは、審美的且つ心理学的に有利である。装置1の電源は、センサ2の電源と同じである。
【0089】
血糖の調整は、閉ループにおけるこの装置2により行われる。確かに、膵臓β細胞23は、膵臓β細胞23は、インスリンの患者9の必要の関数として電気信号Vを生成し、微小電極21のセットは、これら電気信号Vを測定し、処理ユニット25のセットは、電気信号を形成し、形成された電気信号からパラメータPを抽出する。このパラメータPは、レギュレータ26により受信され、レギュレータは、このパラメータPに基づいて、制御信号Cを生成して、インスリンディスペンサ3に送出する。インスリンディスペンサ3は、制御信号Cに対応するインスリンの量を投与する。投与されたインスリンは、血糖に作用し、従って患者9のその後のインスリンの必要量を変更し、血糖における低減は、活動電位の周波数における低減と共に、膵臓β細胞の活性化における低減につながり、従って、例えば食事の間といった血糖における別の増加があるまで、基準値への復帰及び制御信号Cの停止につながる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9