特許第5715181号(P5715181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5715181-光パルス試験装置 図000002
  • 特許5715181-光パルス試験装置 図000003
  • 特許5715181-光パルス試験装置 図000004
  • 特許5715181-光パルス試験装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715181
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】光パルス試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   G01M11/00 R
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-89122(P2013-89122)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-211406(P2014-211406A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大石 泰之
(72)【発明者】
【氏名】牧 達幸
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−501157(JP,A)
【文献】 特開昭61−050033(JP,A)
【文献】 特開昭58−066037(JP,A)
【文献】 特開2004−132846(JP,A)
【文献】 特開平03−223632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物である光ファイバ(16)内にパルス光を出射する光源(3、4)と、
前記パルス光によって前記光ファイバ内で発生する戻り光を検出して電気信号に変換するAPD(Avalanche Photo−Diode)(6)と、
前記APDで変換された電気信号を線形増幅する線形増幅部(8)と、
前記APDで変換された電気信号を対数増幅する対数増幅部(9)と、
前記APDで変換された電気信号を受けて、前記線形増幅部に送るか、又は前記対数増幅部に送るかを切替える切替部(7)と、
前記線形増幅部又は前記対数増幅部で増幅された電気信号をサンプリングし、A/D(Analog to Digital)変換するA/D変換部(10)と、
前記A/D変換部がA/D変換した電気信号を受けて、前記戻り光の全区間の時間波形を記録する波形記録部(12)と、
を備える光パルス試験装置。
【請求項2】
アベレージング処理を行って時間波形を生成するアベレージング測定と、リアルタイムに時間波形を更新するリアルタイム測定のいずれを行うかを選択するモード選択部(1)と、
前記モード選択部から前記アベレージング測定と前記リアルタイム測定のいずれが選択されているかの情報を受け取り、
前記アベレージング測定が選択されているときは前記A/D変換部がA/D変換した電気信号を所定のパルス発生回数分アベレージングして前記戻り光の全区間の時間波形を生成し、該生成した時間波形を前記波形記録部に送り、
前記リアルタイム測定が選択されているときは前記A/D変換部がA/D変換した電気信号をそのまま前記波形記録部に転送する加算部(11)とを更に備え、
前記切替部は、前記モード選択部から前記アベレージング測定と前記リアルタイム測定のいずれが選択されているかの情報を受け取って、前記アベレージング測定が選択されているときは前記電気信号を前記線形増幅部に送り、前記リアルタイム測定が選択されているときは前記電気信号を前記対数増幅部に送るように切替える、
請求項1に記載の光パルス試験装置。
【請求項3】
前記切替部が前記線形増幅部を選択すると前記光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足するか否かを判定するダイナミックレンジ判定部(15)を更に備え、
前記ダイナミックレンジ判定部が前記光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足しないと判定したときは、前記切替部は前記電気信号を前記線形増幅部に送り、
前記ダイナミックレンジ判定部が前記光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足すると判定したときは、前記切替部は前記電気信号を前記対数増幅部に送るように切替える、
請求項1に記載の光パルス試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光ファイバ等の長手方向の特性を測定する光パルス試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光パルス試験装置はパルス光を光ファイバに入射し、その際に生じる戻り光の時間変化を測定することにより、光ファイバの長手方向の特性を把握する試験装置である。この戻り光は極微弱な信号のため、戻り光を受光器で受光した後、線形増幅回路で増幅し、さらにアベレージング処理をして正確な時間波形を得ている。
【0003】
アベレージング処理では数千回にも及ぶ加算演算を伴うため、アベレージング処理には膨大な時間がかかってしまう。しかしながら、光ファイバの敷設工事や保守点検の現場では、リアルタイムに更新される波形を確認しながら作業を進めたいという要望がある。この要望に応えるため、精細な測定結果よりも早く結果を把握したいという用途においては、アベレージング処理をしないリアルタイム測定機能を備えた光パルス試験装置もある(例えば、特許文献1)。
【0004】
長さ100kmの光ファイバの全長にわたってリアルタイム測定を行ったときの時間波形の例を図4に示す。図4において、縦軸は光ファイバからの戻り光の強度を示し、横軸は光パルス試験装置から光ファイバ内で戻り光の発生する場所までの距離を示している。光ファイバの遠端(横軸で100kmの位置)でフレネル反射が生じていることが分かる。しかし、距離40kmを超えるあたりから遠端にかけての時間波形はノイズに埋もれて観察できない。これは、光パルス試験装置の受信部のダイナミックレンジが不足しているためである。
【0005】
このような光パルス試験装置の受信部のダイナミックレンジ不足を回避するため、特許文献1に記載の光パルス試験装置では、リアルタイム測定機能で測定を始める前に、ユーザがマーカ等を用いて光ファイバの測定をしたい距離位置を設定していた。このようにユーザが測定したい距離位置を設定した後に、光パルス試験装置は、ユーザが設定した距離位置における波形の信号対雑音比(S/N比)が最適な状態になるように、線形増幅回路の利得を切り替えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008/004443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光パルス試験装置のユーザとしては、リアルタイム測定機能を使用する作業の都度、マーカ等を用いて、測定したい位置を設定する必要があった。そのため、例えば複数の光ファイバ位置をそれぞれ測定する場合や、複数の光ファイバを切り替えながら測定する場合などでは、マーカ等で測定したい位置を設定するための作業に時間を費やしてしまうという問題があった。
【0008】
本願発明は、リアルタイム測定機能を使用する場合であっても、マーカ等で測定したい位置を設定することなく光ファイバ全体の特性を測定することが可能な光パルス試験方法及び光パルス試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明の光パルス試験装置は、APDで変換された電気信号を線形増幅する線形増幅部と、APDで変換された電気信号を対数増幅する対数増幅部と、前記APDで変換された電気信号を線形増幅部に送るか、又は対数増幅部に送るかを切替える切替部とを備える。
【0010】
具体的には、本願発明の光パルス試験装置は、被測定物である光ファイバ(16)内にパルス光を出射する光源(3、4)と、前記パルス光によって前記光ファイバ内で発生する戻り光を検出して電気信号に変換するAPD(Avalanche Photo−Diode)(6)と、前記APDで変換された電気信号を線形増幅する線形増幅部(8)と、前記APDで変換された電気信号を対数増幅する対数増幅部(9)と、前記APDで変換された電気信号を受けて、前記線形増幅部に送るか、又は前記対数増幅部に送るかを切替える切替部(7)と、前記線形増幅部又は前記対数増幅部で増幅された電気信号をサンプリングし、A/D(Analog to Digital)変換するA/D変換部(10)と、前記A/D変換部がA/D変換した電気信号を受けて、前記戻り光の全区間の時間波形を記録する波形記録部(12)と、を備える。
【0011】
本願発明によれば、リアルタイム測定機能を使用する場合であっても、マーカ等で測定したい位置を設定することなく光ファイバ全体の特性を測定することが可能な光パルス試験装置を提供することができる。
【0012】
本願発明には、アベレージング処理を行って時間波形を生成するアベレージング測定と、リアルタイムに時間波形を更新するリアルタイム測定のいずれを行うかを選択するモード選択部(1)と、前記モード選択部から前記アベレージング測定と前記リアルタイム測定のいずれが選択されているかの情報を受け取り、前記アベレージング測定が選択されているときは前記A/D変換部がA/D変換した電気信号を所定のパルス発生回数分アベレージングして前記戻り光の全区間の時間波形を生成し、該生成した時間波形を前記波形記録部に送り、前記リアルタイム測定が選択されているときは前記A/D変換部がA/D変換した電気信号をそのまま前記波形記録部に転送する加算部(11)とを更に備え、前記切替部は、前記モード選択部から前記アベレージング測定と前記リアルタイム測定のいずれが選択されているかの情報を受け取って、前記アベレージング測定が選択されているときは前記電気信号を前記線形増幅部に送り、前記リアルタイム測定が選択されているときは前記電気信号を前記対数増幅部に送るように切替えることを含んでもよい。

【0013】
アベレージング測定かリアルタイム測定かの選択によって、自動的に線形増幅部か対数増幅部かを選択させることができる。
【0014】
本願発明には、前記切替部が前記線形増幅部を選択すると前記光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足するか否かを判定するダイナミックレンジ判定部(15)を更に備え、前記ダイナミックレンジ判定部が前記光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足しないと判定したときは、前記切替部は前記電気信号を前記線形増幅部に送り、前記ダイナミックレンジ判定部が前記光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足すると判定したときは、前記切替部は前記電気信号を前記対数増幅部に送るように切替えることを含んでもよい。
【0015】
ダイナミックレンジ判定部の判定結果に応じて、自動的に線形増幅部か対数増幅部かを選択させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、リアルタイム測定機能を使用する場合であっても、マーカ等で測定したい位置を設定することなく光ファイバ全体の特性を測定することが可能な光パルス試験方法及び光パルス試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に係る光パルス試験装置の構成を示す。
図2】実施形態1に係る光パルス試験装置において、リアルタイム測定機能を用いて測定された時間波形の一例を示す。
図3】実施形態2に係る光パルス試験装置の構成を示す。
図4】従来の光パルス試験装置において、リアルタイム測定機能を用いて測定された時間波形の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本願発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本願発明の実施の例であり、本願発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る光パルス試験装置の一例を示す。実施形態1に係る光パルス試験装置は、モード選択部1、タイミング制御部2、光源の一部としてのLD(Laser Diode)ドライバ3、光源の一部としてのLD4、合波分波部5、受光部の一部としてのAPD(Avalanche Photo−Diode)6、受光部の一部としての切替部7、受光部の一部としての線形増幅部8、受光部の一部としての対数増幅部9、A/D変換部10、加算部11、波形記録部12、遠端検出部13、及び距離レンジ選択部14を備える。合波分波部5には、被測定物である光ファイバ16が接続されている。
【0019】
モード選択部1は、アベレージング測定を行うかリアルタイム測定を行うかを選択する。この選択は、図示しないユーザインタフェースによってユーザによって選択されても良いし、他の測定条件等の情報から自動的に選択されるようにしても良い。
【0020】
タイミング制御部2は、被測定物である光ファイバの長さに応じて、パルス光を出射する繰り返し周期を決定する。即ち、パルス光を出射する繰り返し周期が、被測定物である光ファイバを光が伝搬する時間よりも長く、例えば、1〜10倍程度となるように、パルス光を出射するタイミングを制御する。
【0021】
ここで、測定を開始する時点では、被測定物である光ファイバの長さが既知である場合と、既知でない場合がある。既知でない場合は、最初に、十分に長い繰返し周期でパルス光を出射し、後述する距離レンジ選択部14で選択された距離レンジに応じて、タイミング制御部2が繰返し周期を決定するようにすれば良い。あるいはまた、ユーザに光ファイバの長さを入力させるようにしても良い。
【0022】
LDドライバ3は、タイミング制御部2からの指示によってLD4を駆動する。
【0023】
LD4は、合波分波部5を介してパルス光を被測定物である光ファイバ16内に出射する。
【0024】
APD6は、パルス光によって光ファイバ16内で発生する戻り光を、合波分波部5を介して検出し、電気信号に変換する。なお、戻り光に十分な光量がある場合は、APD6に替えて、一般的なPD(Photo−Diode)を用いても良い。
【0025】
切替部7は、モード選択部1からアベレージング測定とリアルタイム測定のいずれが選択されているかの情報を受け取り、受け取った情報に応じて、APD6で変換された電気信号を線形増幅部8に送るか、対数増幅部9に送るかを選択的に切替える。ユーザがアベレージング測定を希望している場合は、線形増幅部8を選択する。一方、ユーザがリアルタイム測定を希望している場合は、対数増幅部9を選択する。
【0026】
線形増幅部8は、一般的な増幅器を用いており、電気信号を線形増幅する。
【0027】
対数増幅部9は、対数増幅器を用いており、電気信号を対数増幅する。対数増幅部9に入力される電流をIinとすると、対数増幅部9から出力される電圧Voutは、次の式で表される。
【0028】
Vout = Vy × log(Iin/Iref) (1)
ここで、Vyは対数増幅部9のスロープ電圧、Irefはリファレンス電流である。また、対数の底は通常10であるが、他の底であっても良い。
【0029】
A/D変換部10は、線形増幅部8又は対数増幅部9で増幅された電気信号をサンプリングし、A/D変換する。 更に、電気信号が対数増幅8で対数増幅された場合は、A/D変換された後に、(1)式の逆変換(指数変換)を行って、線形のデジタル値にする。
【0030】
加算部11は、モード選択部1からアベレージング測定とリアルタイム測定のいずれが選択されているかの情報を受け取り、アベレージング測定が選択されている場合は、A/D変換部10がA/D変換したデジタル値を所定のパルス発生回数分アベレージングして、戻り光の全区間の時間波形を生成する。リアルタイム測定が選択されている場合は、アベレージングしないでデジタル値をそのまま波形記録部に転送する。なお、リアルタイム測定が選択されている場合であっても、小回数(例えば10回)のパルス発生回数分の戻り光をアベレージングするようにしても良い。
【0031】
波形記録部12は、加算部11の生成した全区間の時間波形を記録する。
【0032】
遠端検出部13は、波形記録部12により記録された時間波形から光ファイバ16の遠端位置を検出する。
【0033】
距離レンジ選択部14は、遠端検出部13で検出された遠端位置に基づいて、全区間の時間波形を表示するために最適な横軸の距離レンジを選択する。選択された距離レンジは波形記録部12に送られて時間波形とともに記録される。また、選択された距離レンジは更に、タイミング制御部2にも送られるようにしても良い。これは、LD4が送出するパルス光の繰り返しタイミングが被測定ファイバ16のファイバ長に依存するためである。
【0034】
なお、図1には示されていないが、光パルス試験装置は、波形記録部12に記録された時間波形を表示する表示部を備えていても良い。あるいはまた、波形記録部12に記録された時間波形を外部に送信するインタフェースを備え、外部の例えばパソコン上に表示させるようにしても良い。
【0035】
実施形態1に係る光パルス試験装置において、リアルタイム測定機能を用いて測定された時間波形の一例を図2に示す。被測定ファイバ16は、従来の光パルス試験装置において測定された図4のものと同一である。図4では観察できなかった距離40kmから遠端にかけての時間波形が、図2では明確に観察できる。この結果、リアルタイム測定であっても、マーカ等で測定したい位置を設定することなく光ファイバ全体の特性を測定することが可能となっている。
【0036】
(実施形態2)
図3に、実施形態2に係る光パルス試験装置の一例を示す。本実施形態に係る光パルス試験装置は、ダイナミックレンジ判定部15を更に備えている点で、実施形態1に係る光パルス試験装置とはその構成が異なる。したがって、実施形態1と同じ構成要素については同一の構成番号を付して、ダイナミックレンジ判定部15以外の説明は省略する。
【0037】
実施形態1に係る光パルス試験装置の説明で述べられているとおり、線形増幅部8を使用すると光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足する場合には、切替部7が対数増幅部9を選択することが適切である。しかしながら、光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足しないならば、分解能の観点から線形増幅部8を選択した方が対数増幅部9を選択するよりも有利である。そのため、ダイナミックレンジ判定部15は、後述するように様々な方法によって、線形増幅部8を使用すると光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足するかどうかを判定する。
【0038】
切替部7は、ダイナミックレンジ判定部15によって判定された結果に基づいて、APD6で変換された電気信号を線形増幅部8に送るか、対数増幅部9に送るかを選択的に切替える。線形増幅部8を使用してもダイナミックレンジが不足しないと判定された場合は、線形増幅部8を選択する。一方、線形増幅部8を使用するとダイナミックレンジが不足すると判定された場合は、対数増幅部9を選択する。
【0039】
ダイナミックレンジ判定部15が判定を行うためには、以下のような様々な方法がある。第1の方法として、距離レンジ選択部14で選択された距離レンジに基づいて判定することができる。従来の光パルス試験装置においてリアルタイム測定機能を用いて測定された図4の時間波形の例からわかるように、距離レンジが40km未満であれば、線形増幅部8を使用しても光パルス試験装置のダイナミックレンジが不足しないと推定できる。なお、光パルス試験装置の構成部品を変更すればダイナミックレンジが不足しない距離レンジは当然に変わるので、40km未満という距離レンジの範囲は一例に過ぎない。
【0040】
第2の方法として、ユーザに被測定ファイバ16のファイバ長を入力させる方法がある。ファイバ長がわかれば、第1の方法と同様にして、線形増幅部8を使用するとダイナミックレンジが不足するか否かが推定できる。
【0041】
第3の方法として、ユーザが特定のファイバ位置やファイバ区間のリアルタイム測定を希望している場合は、ダイナミックレンジが不足しないと判定する方法がある。
【0042】
第4の方法として、まず切替部7を強制的に線形増幅部8に接続するように切替えてから一度リアルタイム測定を行い、波形記録部12で記録された最大の戻り光強度と遠端直前の戻り光強度との差を調べる方法がある。このようにして得られた光強度の差があらかじめ設定された規定値より大きければ、ダイナミックレンジが不足すると判定して、切替部7を対数増幅部9に接続するように切替えれば良い。
【0043】
以上のように、ダイナミックレンジ判定部15が判定を行うためには様々な方法があるが、これらのうちのどれか一つを採用しても良いし、複数の方法を組み合わせても良い。
【0044】
(実施形態3)
実施形態1や実施形態2に係る光パルス試験装置では、切替部7がいったん線形増幅部8か対数増幅部9かを切替えた後は、測定終了まで切替の状態を維持していた。実施形態3に係る光パルス試験装置は、その構造は実施形態1又は実施形態2に係る光パルス試験装置と同じであるが、1つのパルス光に対する戻り光の受光中に、切替部7が線形増幅部8から対数増幅部9へ、あるいは対数増幅部9から線形増幅部8へ送り先を切替えるようになっている。
【0045】
例えば、切替部7は、光ファイバ16の近端から所定の距離までの戻り光を受光しているとき(換言すれば、パルス光を出射してから所定の時間まで)は、APD6で変換された電気信号を線形増幅部8に送り、光ファイバ16の近端から所定の距離を超えた部分の戻り光を受光しているときは、APD6で変換された電気信号を対数増幅部9に送るように切替える。
【0046】
このような構成であれば、近端から所定の距離までは高い分解能で測定でき、しかも全区間の時間波形はダイナミックレンジが不足することなくリアルタイム測定をすることができる。
【0047】
逆に、切替部7は、光ファイバ16の近端から所定の距離までの戻り光を受光しているときは、APD6で変換された電気信号を対数増幅部9に送り、光ファイバ16の近端から所定の距離を超えた部分の戻り光を受光しているときは、APD6で変換された電気信号を線形増幅部8に送るように切替えるようにしても良い。この場合は、所定の距離から遠端までは分解能よく測定でき、しかも全区間の波形をリアルタイム測定することができる。
【0048】
このように、本願発明に係る光パルス試験装置は、切替部7が自動的に線形増幅部8又は対数増幅部9を選択するようになっているため、リアルタイム測定機能を使用する場合であっても、マーカ等で測定したい位置を設定することなく光ファイバ全体の特性を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:モード選択部
2:タイミング制御部
3:LDドライバ
4:LD
5:合波分波部
6:APD
7:切替部
8:線形増幅部
9:対数増幅部
10:A/D変換部
11:加算部
12:波形記録部
13:遠端検出部
14:距離レンジ選択部
15:ダイナミックレンジ判定部
16:光ファイバ
図1
図2
図3
図4