特許第5715198号(P5715198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5715198ロボット用駆動ケーブルの処理構造体及びそれを具備するロボット装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715198
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ロボット用駆動ケーブルの処理構造体及びそれを具備するロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   B25J19/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-141689(P2013-141689)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-13343(P2015-13343A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2014年8月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 渉
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−014159(JP,A)
【文献】 特開2012−000740(JP,A)
【文献】 特開昭61−182791(JP,A)
【文献】 実開昭60−097290(JP,U)
【文献】 実開昭60−146694(JP,U)
【文献】 特開昭60−259397(JP,A)
【文献】 特開2011−115922(JP,A)
【文献】 特開2013−141732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット用駆動ケーブルの処理構造体であって、
ロボットは、該ロボットが任意の位置及び姿勢を有するように動作可能な動作部と、前記ロボットの位置及び姿勢とは無関係に固定される非動作部と、を備えており、
前記ロボットの前記動作部は、
旋回軸線回りに旋回可能であるように前記非動作部に取付けられる旋回胴と、
前記旋回軸線に対して垂直な方向に延在する第1の回転軸線回りに回転可能であるように前記旋回胴に取付けられる第1のアームと、
前記第1の回転軸線に対して平行な方向に延在する第2の回転軸線回りに回転可能であるように前記第1のアームに取付けられる第2のアームと、を備えており、
駆動ケーブルは、前記旋回胴、前記第1のアーム及び前記第2のアームを駆動するモータに動力を供給する動力ケーブルと、前記モータとの間で信号を送受信するのに使用される信号ケーブルと、を少なくとも含んでおり、
当該処理構造体は、前記駆動ケーブルをそれぞれ摺動不能に固定する、第1の固定部材と、該第1の固定部材とは別個の第2の固定部材と、を備えており、
前記第1の固定部材は、前記旋回胴の後方において前記旋回胴と一体的に旋回するように設けられており、
前記第2の固定部材は、前記第1の回転軸線に対して平行な方向において前記第1の固定部材から離間するように前記非動作部に設けられており、
前記駆動ケーブルは、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間において、上方に向かって凸状に湾曲して延在するように前記第1の固定部材及び前記第2の固定部材によって固定される、ロボット用駆動ケーブルの処理構造体。
【請求項2】
ロボット用駆動ケーブルの処理構造体であって、
ロボットは、該ロボットが任意の位置及び姿勢を有するように動作可能な動作部と、前記ロボットの位置及び姿勢とは無関係に固定される非動作部と、を備えており、
前記ロボットの前記動作部は、
旋回軸線回りに旋回可能であるように前記非動作部に取付けられる旋回胴と、
前記旋回軸線に対して垂直な方向に延在する第1の回転軸線回りに回転可能であるように前記旋回胴に取付けられる第1のアームと、
前記第1の回転軸線に対して平行な方向に延在する第2の回転軸線回りに回転可能であるように前記第1のアームに取付けられる第2のアームと、を備えており、
駆動ケーブルは、前記旋回胴、前記第1のアーム及び前記第2のアームを駆動するモータに動力を供給する動力ケーブルと、前記モータとの間で信号を送受信するのに使用される信号ケーブルと、を少なくとも含んでおり、
当該処理構造体は、前記駆動ケーブルをそれぞれ摺動不能に固定する、第1の固定部材と、該第1の固定部材とは別個の第2の固定部材と、を備えており、
前記第1の固定部材は、前記旋回胴の後方において前記旋回胴と一体的に旋回するように設けられており、
前記非動作部は、外部からアクセス可能なように開放されていて前記ロボットを載置可能な支持構造体を備えており、前記第2の固定部材が前記支持構造体の内部において、前記旋回軸線から前方にオフセットされた位置に設けられており、
前記駆動ケーブルは、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間において、前記旋回軸線を横切って前記支持構造体の内部に延在するように前記第1の固定部材及び前記第2の固定部材によって固定される、ロボット用駆動ケーブルの処理構造体。
【請求項3】
前記支持構造体が前記ロボットとは別体である、請求項2に記載のロボット用駆動ケーブルの処理構造体。
【請求項4】
前記駆動ケーブルは、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間において、前記旋回胴の後方に向かって凸状に湾曲して延在するように前記第1の固定部材及び前記第2の固定部材によって固定される、請求項2又は3に記載のロボット用駆動ケーブルの処理構造体。
【請求項5】
前記支持構造体が、前記旋回軸線に対して直角に延在する第1のプレートと、前記第1のプレートから離間していて前記第1のプレートに対して平行に延在する第2のプレートと、前記第1のプレート及び前記第2のプレートを連結するように前記旋回軸線に対して平行に延在する少なくとも1つの支持柱から形成される、請求項2から4のいずれか1項に記載のロボット用駆動ケーブルの処理構造体。
【請求項6】
前記ロボットが、アーク溶接ロボット、スポット溶接ロボット、マテリアルハンドリングロボット又は塗装ロボットである、請求項1から5のいずれか1項に記載のロボット用駆動ケーブルの処理構造体。
【請求項7】
求項1から5のいずれか1項に記載のロボット用駆動ケーブルの処理構造体と、前記旋回胴、前記第1のアーム及び前記第2のアームを含む、多関節ロボットと、を具備するロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット用駆動ケーブルの処理構造体及びそのような処理構造体を具備するロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロボットを意図したとおり動作させるのには、各関節に設けられるサーボモータに必要な動力を供給する動力ケーブル、及び各サーボモータ又はサーボモータの回転動作を検出する検出器との間で信号を送受信する信号ケーブルなどが必要である。ロボットに配設される駆動ケーブル(以下、本明細書において、ロボットの動作及びその制御に必要なケーブル類を「駆動ケーブル」と称する。)には、ある程度の余長を持たせておき、各関節が回転する際に過度の力が駆動ケーブルに作用しないようにすることが望ましい。その一方で、余長を有する駆動ケーブルにおいては、ロボットの位置及び姿勢によっては過度の弛みが生じることがあるので、周囲に存在するハンド、治具、ワーク、他のロボットなどと干渉しないようにすることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、ロボットが載置される中空の支持構造体を利用して、支持構造体の内部空間においてケーブルを固定しかつ配線コネクタに接続可能にしたロボットのケーブル処理構造体が開示されている。他の関連技術においては、駆動ケーブルが円柱状の支持構造体の周囲に巻き付けられた構成を有する処理構造体が使用されている。また別の関連技術においては、ロボットの支持構造体から後方に離間した位置に駆動ケーブルを固定する固定部材が配置された構成を有する処理構造体が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−14159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の処理構造体では、支持構造体の内部空間内に駆動ケーブルを導入するのが容易ではなく、ロボットの組立工程及び保守工程が複雑化する。また、駆動ケーブルの余長部分を確保するためのスペースが必要なので、支持構造体が大型化する。また、支持構造体の内部空間のスペース要件を厳格化すると、ロボットが動作する際に駆動ケーブルが支持構造体に接触して破損するのを防止するために、駆動ケーブルの余長部の長さ及び余長部が延在する方向などを詳細に決定する必要がある。
【0006】
駆動ケーブルを支持構造体の周囲に巻き付ける構成を有する処理構造体では、駆動ケーブルが支持構造体又は支持構造体に取付けられるカバーなどに接触して破損するのを防止することを目的として保護部材が必要になる。また、固定部材をロボットの支持構造体の後方に有する処理構造体では、ロボット後方のスペースに対する突出部分が大きくなり、ロボット装置が全体として大型化する。
【0007】
したがって、取扱いが容易で作業効率を向上させるロボット用駆動ケーブルの処理構造体が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に係る1番目の態様によれば、ロボット用駆動ケーブルの処理構造体であって、ロボットは、該ロボットが任意の位置及び姿勢を有するように動作可能な動作部と、前記ロボットの位置及び姿勢とは無関係に固定される非動作部と、を備えており、前記ロボットの前記動作部は、旋回軸線回りに旋回可能であるように前記非動作部に取付けられる旋回胴と、前記旋回軸線に対して垂直な方向に延在する第1の回転軸線回りに回転可能であるように前記旋回胴に取付けられる第1のアームと、前記第1の回転軸線に対して平行な方向に延在する第2の回転軸線回りに回転可能であるように前記第1のアームに取付けられる第2のアームと、を備えており、駆動ケーブルは、前記旋回胴、前記第1のアーム及び前記第2のアームを駆動するモータに動力を供給する動力ケーブルと、前記モータとの間で信号を送受信するのに使用される信号ケーブルと、を少なくとも含んでおり、当該処理構造体は、前記駆動ケーブルをそれぞれ摺動不能に固定する、第1の固定部材と、該第1の固定部材とは別個の第2の固定部材と、を備えており、前記第1の固定部材は、前記旋回胴の後方において前記旋回胴と一体的に旋回するように設けられており、前記第2の固定部材は、前記第1の回転軸線に対して平行な方向において前記第1の固定部材から離間するように前記非動作部に設けられており、前記駆動ケーブルは、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間において、上方に向かって凸状に湾曲して延在するように前記第1の固定部材及び前記第2の固定部材によって固定される、ロボット用駆動ケーブルの処理構造体が提供される。
本願に係る2番目の態様によれば、ロボット用駆動ケーブルの処理構造体であって、ロボットは、該ロボットが任意の位置及び姿勢を有するように動作可能な動作部と、前記ロボットの位置及び姿勢とは無関係に固定される非動作部と、を備えており、前記ロボットの前記動作部は、旋回軸線回りに旋回可能であるように前記非動作部に取付けられる旋回胴と、前記旋回軸線に対して垂直な方向に延在する第1の回転軸線回りに回転可能であるように前記旋回胴に取付けられる第1のアームと、前記第1の回転軸線に対して平行な方向に延在する第2の回転軸線回りに回転可能であるように前記第1のアームに取付けられる第2のアームと、を備えており、駆動ケーブルは、前記旋回胴、前記第1のアーム及び前記第2のアームを駆動するモータに動力を供給する動力ケーブルと、前記モータとの間で信号を送受信するのに使用される信号ケーブルと、を少なくとも含んでおり、当該処理構造体は、前記駆動ケーブルをそれぞれ摺動不能に固定する、第1の固定部材と、該第1の固定部材とは別個の第2の固定部材と、を備えており、前記第1の固定部材は、前記旋回胴の後方において前記旋回胴と一体的に旋回するように設けられており、前記非動作部は、外部からアクセス可能なように開放されていて前記ロボットを載置可能な支持構造体を備えており、前記第2の固定部材が前記支持構造体の内部において、前記旋回軸線から前方にオフセットされた位置に設けられており、前記駆動ケーブルは、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間において、前記旋回軸線を横切って前記支持構造体の内部に延在するように前記第1の固定部材及び前記第2の固定部材によって固定される、ロボット用駆動ケーブルの処理構造体が提供される。
本願に係る3番目の態様によれば、2番目の態様におけるロボット用駆動ケーブルの処理構造体において、前記支持構造体が前記ロボットとは別体である。
本願に係る4番目の態様によれば、2番目又は3番目の態様におけるロボット用駆動ケーブルの処理構造体において、前記駆動ケーブルは、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間において、前記旋回胴の後方に向かって凸状に湾曲して延在するように前記第1の固定部材及び前記第2の固定部材によって固定される。
本願に係る5番目の態様によれば、2番目から4番目のいずれかの態様におけるロボット用駆動ケーブルの処理構造体において、前記支持構造体が、前記旋回軸線に対して直角に延在する第1のプレートと、前記第1のプレートから離間していて前記第1のプレートに対して平行に延在する第2のプレートと、前記第1のプレート及び前記第2のプレートを連結するように前記旋回軸線に対して平行に延在する少なくとも1つの支持柱から形成される。
本願に係る6番目の態様によれば、1番目から5番目のいずれかの態様におけるロボット用駆動ケーブルの処理構造体において、前記ロボットが、アーク溶接ロボット、スポット溶接ロボット、マテリアルハンドリングロボット又は塗装ロボットである。
本願に係る7番目の態様によれば、番目から5番目のいずれかの態様におけるロボット用駆動ケーブルの処理構造体と、前記旋回胴、前記第1のアーム及び前記第2のアームを含む、多関節ロボットと、を具備するロボット装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を有する処理構造体によれば、アクセスが困難な支持構造体の内部に駆動ケーブルを通して配設する必要がないので、作業効率が向上する。また、支持構造体を大型化することなく駆動ケーブルに十分な余長を付与できるので、ロボットの可動範囲を容易に増大できるようになる。さらに、ロボットを設置するのに必要な後方のスペースをコンパクトにできる。
また、支持構造体がロボットとは別体に形成される場合、ロボットを支持構造体に固定することによって、1番目の態様に係る処理構造体から2番目の態様に係る処理構造体に容易に切換可能になる。2番目の態様によれば、ロボットの旋回胴の周りに障害物となりうる構成要素が存在しないので、ロボットの可動範囲、特に旋回胴の可動範囲を容易に拡大できる。
また、4番目の態様において、駆動ケーブルは、第1の固定部材と第2の固定部材との間において、旋回胴の後方に向かって凸状に湾曲するように延在しているので、第2のアームが回転して支持構造体に接近しても、第2のアームと駆動ケーブルが接触する虞がない。したがって、第2のアームの広い可動範囲を確保できるようになる。
また、上記構成を有するロボット装置によれば、処理構造体に関連して前述した利点を同様に享受できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係るロボット用駆動ケーブルの処理構造体を概略的に示す側面図である。
図2図1の処理構造体を概略的に示す背面図である。
図3】第2の実施形態に係るロボット用駆動ケーブルの処理構造体を概略的に示す側面図である。
図4図3の処理構造体を概略的に示す背面図である。
図5図3の線V−Vに沿って見た断面図である。
図6】ロボットを180度だけ旋回させた状態を示す、図5に対応する図である。
図7】本発明を適用可能なアーク溶接ロボットを概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図示される実施形態の構成要素は、本発明の理解を助けるために縮尺が適宜変更されている。同一又は対応する構成要素には、複数の実施形態を通して同一の参照符号が使用され、重複した説明は適宜省略される。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係るロボット用駆動ケーブルの処理構造体10を概略的に示す側面図である。図は、処理構造体10の背面図である。処理構造体10は、図示されるような多関節ロボット20において使用される駆動ケーブル50を配設するのに使用されるものであり、ロボット20とともにロボット装置を形成する。
【0013】
ロボット20は、ロボット20の設置面(図示せず)に固定されていてロボット20の非動作部を形成する基部21と、基部21に取付けられていて旋回軸線O回りに旋回可能な旋回胴22と、旋回胴22に取付けられていて旋回胴22に対して第1の回転軸線X1回りに回転可能な第1のアーム24と、第1のアーム24に取付けられていて第1のアーム24に対して第2の回転軸線X2回りに回転可能な第2のアーム26と、ロボット20の先端に設けられていて各種ツールを装着可能な手首部28と、を備えている。また、ロボット20は、各関節において回転動作をもたらすモータ(サーボモータ)30を備えている。
【0014】
ロボット20においては、旋回胴22,第1のアーム24、第2のアーム26及び手首部28が動作部を形成しており、それらが制御指令に従って動作することによって、ロボット20が任意の位置及び姿勢を有するようになっている。なお、図示されるロボット20は、本発明を適用可能なロボットの一例にすぎず、他の任意の構成を有するロボットであってもよい。
【0015】
駆動ケーブル50は、各モータ30に動力を供給する動力ケーブルと、モータ30及びモータ30の回転動作を検出するエンコーダなどの検出器との間で信号を送受信する信号ケーブルと、から形成される、複数のケーブルの束である。駆動ケーブル50には、その他追加のケーブルが含まれていてもよい。図1及び図2において、駆動ケーブル50は、視認性を考慮して別々に示されているものの、通常はクリップ、クランプ、バンドなどの結束手段によって互いに束ねられており、対応するモータ30の近傍において分岐されるようになっている。
【0016】
駆動ケーブル50は、基端側、すなわちロボット20の基部21の近傍において、第1の固定部材52及び第2の固定部材54によって固定されている。本実施形態において、第1の固定部材52は、旋回胴22と一体的に旋回するように旋回胴22の後方に設けられている。第1の固定部材52は、駆動ケーブルを摺動不能に固定する公知の固定構造を有しており、例えばクリップ、クランプ又はバンドが含まれるものの、それらには限定されない。
【0017】
なお、本明細書において、「摺動不能に固定する」とは、駆動ケーブルがその長手方向において実質的に摺動できないように駆動ケーブルの一部を固定的に保持した状態を意味する。また、「後方」、「側方」などの用語によって表される方向は、特段言及されない限り、旋回胴22の基準位置、すなわち旋回角度が0度であるときの旋回胴22から見た方向を意味する。また、「前方」は、旋回胴22から見てロボット20の手首部28が概ね位置する方向を意味する。例えば図1は、旋回角度が0度のときのロボット20を示しており、したがって、図1の左側が「前方」、右側が「後方」である。また、本明細書で使用される「左右」方向は、同様に旋回胴22を基準として定められていて、図2の左右方向に一致する。
【0018】
第2の固定部材54は、旋回胴22の動作とは無関係に固定されたロボット20の基部21から左側に延出される延長部材32に設けられている。第2の固定部材54は、第1の固定部材52と同様の構成又は異なる構成を有しており、第2の固定部材54によって駆動ケーブル50が摺動不能に固定されるようになっている。なお、基部21とは別個の延長部材32が設けられることなく、基部21それ自体が左側に向かって延在する延長部を有するように形成されていて、基部21の延長部に第2の固定部材54が設けられていてもよい。このように、延長部材32又は基部21に形成される延長部を利用して第2の固定部材54を設置することによって、基部21の寸法を可能な限り小型化できる。
【0019】
図2に示されるように、第1の固定部材52と第2の固定部材54とは、互いに第1のアーム24の回転軸線X1の方向において互いに離間した位置に設けられている。そして、駆動ケーブル50は、それら第1の固定部材52と、第2の固定部材54との間において、上方に向かって凸状に湾曲した余長部50aを有している。図2に示されるように旋回胴22における旋回角度が0度のとき、駆動ケーブル50には、逆U字形状、放物線形状及び円弧形状など必要に応じて適切な形状を有するように余長部50aが形成される。余長部50aの長さは、具体的には、予定される旋回胴22の旋回角度及び第1のアーム24の可動範囲、駆動ケーブル50の可撓性、引張強度などの種々の要因を考慮して決定される。
【0020】
なお、図示される実施形態において、第2の固定部材54は、旋回胴22の左側に設けられているものの、これは旋回胴22及び第1のアーム24との位置関係に応じて定まるものである。例えば、第1のアーム24が、図示される位置とは反対側、すなわち旋回胴22の左側に設けられている場合、第2の固定部材54は、旋回胴22の右側に設けられる。このように、旋回胴22及び第1のアーム24の位置関係を考慮して第2の固定部材54を配置することによって、第2の固定部材54及び駆動ケーブル50の余長部50aが第1のアーム24と接触するのを防止できる。
【0021】
本実施形態に係る処理構造体によれば、駆動ケーブル50の余長部50aがロボット20の側方において上方に湾曲状に形成されるようになる。この余長部によって旋回胴の旋回動作に起因する駆動ケーブルのねじれ及び曲げの少なくとも一方を吸収できるようになる。また、図1から分かるように駆動ケーブル50がロボット20の後方のスペースに突出することを最小限に留めることができる。ロボットの後方の空間は、通常ロボットの動作には利用されない空間であり、後方の空間はできる限りロボット及びその周辺機器によって占有されないことが望ましい。本実施形態によれば、駆動ケーブル50に十分な大きさの余長を付与しながら、ロボット20の後方のスペースを確保できるので有利である。
【0022】
また、本実施形態によれば、駆動ケーブルを収容するための別個の支持構造体が不要であるので、ロボット20の基部21を小型化でき、ロボット装置の取扱いが容易になるとともに、ロボット20の設置スペースをコンパクトにできる。また、駆動ケーブルが支持構造体に接触しても破損しないように従来使用されていたケーブル用の保護カバーが不要になるので、コストを削減できる。さらに、支持構造体に巻き付けたり、支持構造体の内部にケーブルを通したりする作業も不要であるので、駆動ケーブルの配設及び取外しが容易になり、作業効率が向上する。
【0023】
図3は、第2の実施形態に係るロボット用駆動ケーブルの処理構造体12を概略的に示す側面図である。図4は、図3の処理構造体12を概略的に示す背面図である。図5は、図3の線V−Vに沿って見た断面図である。本実施形態において、ロボット20は架台60の上に載置されている。架台60は、ロボット20の基部21とともに、ロボット20の位置及び姿勢とは無関係にロボット20の設置面(図示せず)に固定される。
【0024】
架台60は、旋回軸線Oに対して直角に延在していてロボット20の基部21を載置可能な概ね直方体の形状を有する上方プレート62と、上方プレート62から鉛直方向(旋回軸線Oに対して平行な方向)に所定の距離だけ離間していて上方プレート62に対して平行に延在する概ね直方体の形状を有する下方プレート64と、上方プレート62及び下方プレート64との間において、鉛直方向に延在する2つの支持柱66と、を備えている。支持柱66は互いに離間して延在するとともに、旋回軸線Oからオフセットされた位置にそれぞれ設けられている。支持柱66は、図示される円柱の形状に限定されず、多角柱の形状を有していてもよい。このように、架台60は、プレートと、柱体を組合せた構造を有している。したがって、外部から容易に架台60の内部空間にアクセス可能になっている。
【0025】
処理構造体12は、第1の固定部材52と、第2の固定部材56と、を有している。第1の固定部材52は、前述した第1の実施形態に関連して説明したものと同様である。それに対し、本実施形態における第2の固定部材56は、架台60の内部において支持柱66にまたがって取付けられている(図5参照)。したがって、第2の固定部材56は、旋回軸線Oからオフセットされた位置に設けられている。
【0026】
そして、駆動ケーブル50は、第1の固定部材52と第2の固定部材56との間において、後方に向かって凸状に湾曲するように延在する余長部50bを有している。余長部50bは、第1の実施形態における余長部50aと同様に、逆U字形状、放物線形状及び円弧形状などの形状を有しうる。駆動ケーブル50は、架台60の開放された後方から第2の固定部材56まで延在している。図5において太い実線は第1の固定部材52と第2の固定部材56との間に延在する駆動ケーブル50を示しており、太い破線は、第2の固定部材56から外部に延出する駆動ケーブル50を示している。
【0027】
図6は、旋回胴22が基準位置にある図5に示された状態からロボット20を180度だけ旋回させた状態を示す、図5に対応する図である。図5及び図6に示されるいずれの状態においても駆動ケーブル50は、旋回軸線Oを横切るように架台60の内部において延在している。このように、架台60の内部において、駆動ケーブル50が第2の固定部材56を支点として自由に曲げられるようになっているので、ロボット20の動作、特に旋回胴22の旋回動作によって駆動ケーブル50に作用しうる引張作用及び圧縮作用を効果的に吸収できるようになっている。
【0028】
なお、架台は、図示される形状に限定されず、他の構成を有していてもよい。例えば、架台は1つの支持柱を有していてもよいし、又は3つ以上の支持柱を有していてもよい。この場合、第2の固定部材は、支持柱の少なくともいずれか1つに固定される。なお、第2の固定部材は、上方プレート及び下方プレートの少なくとも一方に取付けられてもよい。架台はその他種々の構成を有しうるものの、少なくとも後方において開放されていて、駆動ケーブルを後方から架台の内部に容易に導入できるようになっていることが好ましい。
【0029】
本実施形態においては、駆動ケーブル50が開放された架台60の後方から架台60の内部に引き入れられているので、駆動ケーブル50を第2の固定部材56に固定する際に作業者が、架台60の内部に位置する第2の固定部材56に容易にアクセスできるので、駆動ケーブル50の配設及び取外しの際の作業効率が向上する。また、ロボット20が架台60に載置されていて旋回胴22の周りに障害物となりうる構成要素が存在しないので、ロボット20の可動範囲、特に旋回胴22の可動範囲を容易に拡大できる。
【0030】
架台60は、ロボット20と一体に形成されていてもよいし、又はロボット20とは別個の構成要素であってもよい。架台60がロボット20とは別体に形成される場合、図1及び図2に示されるロボット20を架台60に載置して固定することによって、第1の実施形態に係る処理構造体10から第2の実施形態に係る処理構造体12へと、駆動ケーブル50の配設の態様を容易に切換えられるようになる。例えばロボット20の可動範囲、特に旋回胴22の可動範囲を拡大することが望まれる場合、第2の実施形態に係る処理構造体12に容易に変更できるので有利である。
【0031】
さらに、駆動ケーブル50は、第1の固定部材52と第2の固定部材56との間において、旋回胴22の後方に向かって凸状に湾曲するように延在しているので、第2のアーム26が回転して架台60に接近した場合であっても、第2のアーム26と駆動ケーブル50とが接触するのを回避できる。したがって、第2のアーム26の広い可動範囲を確保できるようになる。それに対し、駆動ケーブル50が、第1の固定部材52と第2の固定部材56との間において、旋回胴22の前方に向かって凸状に湾曲するように延在している場合は、第2のアーム26が架台60に接近した際に、第2のアーム26が駆動ケーブル50に接触する虞があるので、第2のアーム26の可動範囲が制限される場合がある。
【0032】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る処理構造体12をアーク溶接ロボット20’に適用した実施例を示す図である。図7においては、視認性を考慮して駆動ケーブルは図示されておらず、アーク溶接を実行するのに必要な追加のケーブルのみが示されている。
【0033】
アーク溶接ロボット20’は、手首部28に装着されたツール70と、ツール70によって保持される溶接トーチ72と、溶接トーチ72に一端が連結されていて溶接トーチ72にアーク溶接を実行するに必要なガスを供給するワイヤを内包するコンジット74を送給するワイヤ送給装置76と、を備えている。ワイヤ送給装置76には、電源ケーブル78が接続されている。電源ケーブル78及びコンジット74は、ばね86によって垂下される保持部材88によって保持されている。
【0034】
本実施形態においては、図示されない駆動ケーブルとともにガスホース82と、ワイヤ送給装置76の制御ケーブル84と、が第1の固定部材52及び第2の固定部材56によって固定されている。これらガスホース82及び制御ケーブル84は、モータ30を駆動する駆動ケーブルと同様の経路を通ってワイヤ送給装置76まで配設されている。したがって、アーク溶接ロボット20’を駆動ケーブルの処理構造体12と組合せて使用し場合でも、処理構造体12に関連して前述した利点を享受できる。
【0035】
図示されないものの、アーク溶接ロボットを第1の実施形態に係る処理構造体10と組合せて使用可能であることは当業者に自明である。また、アーク溶接ロボット以外にも、スポット溶接ロボット、マテリアルハンドリングロボット及び塗装ロボットなど他の公知のロボットを本発明に係る処理構造体と組合せて使用できることは当業者に自明である。
【0036】
以上、本発明の種々の実施形態及び変形例を説明したが、他の実施形態及び変形例によっても本発明の意図される作用効果を奏することができることは当業者に自明である。特に、本発明の範囲を逸脱することなく前述した実施形態及び変形例の構成要素を削除ないし置換することが可能であるし、公知の手段をさらに付加することが可能である。また、本明細書において明示的又は暗示的に開示される複数の実施形態の特徴を任意に組合せることによっても本発明を実施できることは当業者に自明である。
【符号の説明】
【0037】
10 処理構造体
12 処理構造体
20 ロボット
21 基部
22 旋回胴
24 第1のアーム
26 第2のアーム
28 手首部
30 モータ
32 延長部材
50 駆動ケーブル
50a 余長部
50b 余長部
52 第1の固定部材
54 第2の固定部材
56 第2の固定部材
60 架台
62 上方プレート(第1のプレート)
64 下方プレート(第2のプレート)
66 支持柱
70 ツール
72 溶接トーチ
74 コンジット
76 ワイヤ送給装置
78 電源ケーブル
82 ガスホース
84 制御ケーブル
86 ばね
88 保持部材
O 旋回軸線
X1 第1の回転軸線
X2 第2の回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7