特許第5715208号(P5715208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715208
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】射出成形機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   B29C45/76
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-175789(P2013-175789)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-44315(P2015-44315A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2014年9月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大野 大
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−062885(JP,A)
【文献】 特開2003−334840(JP,A)
【文献】 特開2012−135949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機本体の異常状態を検出する異常検出手段を有する射出成形機の制御装置において、
前記異常検出手段が前記射出成形機の異常状態を検出すると、前記射出成形機の動作を停止させる動作停止手段と、
前記異常検出手段により検出した異常の種類に対応して、動作可能とするまでの条件を設定する条件設定手段と、
該条件設定手段の設定した条件を満たすまで動作再開を禁止する動作再開禁止手段と
前記射出成形機の動作の停止を解除するための異常解除操作手段と、を有し、
前記動作停止手段によって停止された前記射出成形機の動作の再開は、前記条件設定手段により設定された条件を満たし、かつ、前記異常解除操作手段に異常解除操作が行われると可能となることを特徴する射出成形機の制御装置。
【請求項2】
異常検出後、前記射出成形機を停止させてからの経過時間を計時する計時手段を有し、
前記動作再開禁止手段は、前記計時手段の計時する時間が、前記条件設定手段の設定した時間を経過するまで動作再開を禁止することを特徴する請求項1記載の射出成形機の制御装置。
【請求項3】
前記射出成形機は、
前記射出成形機の駆動部を駆動するサーボモータ、前記サーボモータを制御するサーボアンプおよび前記サーボモータと前記サーボアンプを接続する動力線と、
前記サーボモータ、前記サーボアンプ、前記動力線の少なくとも1つを温度測定対象とし、該温度測定対象の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定対象ごとに、動作を停止させる基準値となる温度を設定する基準値設定手段とを有し
前記動作停止手段は、前記温度測定対象のいずれかの個所の温度が前記基準値設定手段で設定された基準値を超えたときに動作を停止させ、
前記条件設定手段は、前記基準値より低い動作可能温度を設定し、
前記動作再開禁止手段は、前記基準値を超えた前記温度測定対象の温度が、前記動作可能温度に降下するまで動作再開を禁止することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御装置。
【請求項4】
前記射出成形機は、
前記射出成形機の駆動部を駆動するサーボモータ、前記サーボモータを制御するサーボアンプおよび前記サーボモータと前記サーボアンプを接続する動力線と、
前記サーボモータ、前記サーボアンプ、前記動力線の少なくとも1つを温度算出対象とし、該温度算出対象に流れる電流によって発熱する発熱量から該温度算出対象の温度を算出する温度算出手段と、
前記温度算出対象ごとに、動作を停止させる基準値となる温度を設定する基準値設定手段とを有し
前記動作停止手段は、前記温度算出対象のいずれかの個所の算出された温度が前記基準値設定手段で設定された基準値を超えたときに動作を停止させ、
前記条件設定手段は、前記基準値より低い動作可能温度を設定し、
前記動作再開禁止手段は、前記基準値を超えた前記温度測定対象の算出された温度が、前記動作可能温度に降下するまで動作再開を禁止することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御装置。
【請求項5】
前記射出成形機は、
前記射出成形機の駆動部を駆動するサーボモータ、前記サーボモータを制御するサーボアンプおよび前記サーボモータと前記サーボアンプを接続する動力線と、
前記サーボモータ、前記サーボアンプ、前記動力線の少なくとも1つを温度監視対象とし、
該温度監視対象の実温度を測定する温度測定手段と、
該温度監視対象に流れる電流によって発熱する発熱量から該温度監視対象の温度を計算温度として算出する温度算出手段と、
前記温度監視対象ごとに、動作を停止させる基準値となる温度を設定する基準値設定手段とを有し
前記動作停止手段は、前記温度監視対象のいずれかの個所の計算温度が前記基準値設定手段で設定された基準値を超えたときに動作を停止させ、
前記条件設定手段は、前記基準値より低い動作可能温度を設定し、
前記動作再開禁止手段は、前記基準値を超えた前記温度監視対象の実温度が、前記動作可能温度に降下するまで動作再開を禁止することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機の制御装置、特に射出成形機の異常状態を検出する異常検出手段を有する射出成形機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機においては、固定プラテンと、可動プラテンの背後に配置されたリアプラテンが複数のタイバーによって結合されており、タイバーに沿って可動プラテン及びリアプラテンが移動する。また、固定プラテンと可動プラテンの互いに対向する金型取付面には、それぞれ金型が取り付けられており、型締及び型開き動作を行う。
また、射出ユニットを固定プラテンに対して前後進させ、射出ユニットのシリンダ先端の射出ノズルを、固定プラテンに取り付けられた固定金型の樹脂注入口に密着させて、スクリュー回転により溶融した樹脂をシリンダ前方に送り込み、スクリューを前進移動させることによって、溶融した樹脂を金型内に射出している。
【0003】
図1は、射出ユニットを含んだ射出成形機の全体構成を示した図であり、射出部の射出シリンダ部11の先端の射出ノズル12を固定プラテン33に固定された固定側金型40bの樹脂注入口に密着させている状態を示している。
射出成形機は、基台上に型締部及び射出部を備える。射出部は樹脂材料(ペレット)を加熱溶融し、当該溶融樹脂を金型40(40a,40b)のキャビティ内に射出するものである。型締部は主に金型40の開閉を行うものである。
【0004】
射出部においては、射出シリンダ部11の先端に射出ノズル12が取り付けられ、射出シリンダ部11内には、スクリュー13が挿通されている。なお、符号14は射出シリンダ部11に樹脂を供給するホッパである。
型締部は、リアプラテン31、可動プラテン30、基台上に固定された固定プラテン33を備える。リアプラテン31と固定プラテン33とは複数本のタイバー41で連結されている。
【0005】
また、射出成形機においては、可動プラテン30を前後進させるトグルリンク機構や、射出シリンダ部11に挿通されているスクリュー13など、回転させたり前後進させたりする機構が備えられており、それぞれにサーボモータ2が備えられている。また、それぞれのサーボモータ2に対応して、サーボモータ2を駆動するためにサーボアンプ4が設けられており、サーボモータ2とサーボアンプ4との間はケーブル8で接続されている。
【0006】
射出成形機の制御装置においては、射出成形機内のさまざまな箇所で発生する異常を検出し、必要に応じた運転を停止させ、異常状態を報知させる機能を有している。異常状態の例としては、直前のサイクルで成形された成形品が金型内に残留していることによる異常を検出すると、制御装置は運転を停止させて、操作者に異常を報知する。その場合には、停止時間による生産性の低下を防ぐため、通常操作者は直ちに残留した成形品を除去し、異常状態を解除させて連続的な運転(連続運転)を再開させる。
【0007】
射出成形機はこのような連続運転を行っているときには、定格を超える高負荷な条件で使用されることがある。このような高負荷な条件において、許容される負荷と時間を超えると、射出成形機に用いられているサーボモータ2、サーボアンプ4、ケーブル8等に焼損が起きる場合があるため、許容を超えた過負荷異常として検出する。この場合は、射出成形機の制御装置は連続運転を停止させて、操作者に異常を報知する。
【0008】
また、特許文献1には、射出成形機の射出モータ制御方法として、1射出成形サイクルに亘る射出モータ駆動電流による発熱量の積分値が連続定格電流が流れる場合の発熱量の許容積分値を上回るようなオーバーヒート状態が成立したか否かを判別し、オーバーヒート状態の成立時に所定の回避動作を行うようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平4−46215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
射出成形機の制御装置が検出する多くの異常は、制御装置が検出した異常を操作者が解除させることによって、連続運転を再開させることが可能である。しかしながら、過負荷異常の場合には、即時に連続運転を再開させると、再び温度の基準値を超えてしまうおそれがあり、そのようなことを繰り返すと、装置の寿命を著しく短縮させてしまう場合がある。
【0011】
図7は、この従来技術における運転停止状況とモータ内部温度との関係を示した図である。図7に示されているように、モータの過負荷異常を示す値として基準値が設定されている。そして、モータが過負荷異常となることによって、モータ内部温度が基準値を超えると、それを制御装置が検出することによって異常と判断して、運転が停止される。しかし、異常を解除させて短時間で運転を再開させると、異常が解除されたとしても、モータの駆動によって所定量の熱は発生することから、また基準値を超えてしまって運転を停止することとなってしまう。
【0012】
このように放熱が不十分な状態で連続運転を再開させると、再度過負荷異常を検出してしまう場合があるため、連続運転可能な適切な成形条件を見つけることが困難となる場合がある。これを解決するために、より定格の大きな駆動装置を用いることもできるが、この場合は装置が大型化することにより、価格も高くなってしまうおそれがある。
【0013】
また、特許文献1に開示された技術は、射出モータの駆動電流から算出される発熱量の積分値を許容値と比較して判別を行っているため、駆動電流以外のその他の要因によっては、実際のオーバーヒートの値とは離れた結果となる場合がある。
【0014】
そこで本発明は、射出成形機を大型化することなく、異常状態による生産性の低下を最小限にとどめて、装置寿命を確保することができる射出成形機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の請求項1に係る発明では、射出成形機本体の異常状態を検出する異常検出手段を有する射出成形機の制御装置において、前記異常検出手段が前記射出成形機の異常状態を検出すると、前記射出成形機の動作を停止させる動作停止手段と、前記異常検出手段により検出した異常の種類に対応して、動作可能とするまでの条件を設定する条件設定手段と、該条件設定手段の設定した条件を満たすまで動作再開を禁止する動作再開禁止手段と、前記射出成形機の動作の停止を解除するための異常解除操作手段と、を有し、前記動作停止手段によって停止された前記射出成形機の動作の再開は、前記条件設定手段により設定された条件を満たし、かつ、前記異常解除操作手段に異常解除操作が行われると可能となることを特徴する射出成形機の制御装置が提供される。
請求項1に係る発明では、射出成形機において、異常状態の種類に応じてそれぞれ動作可能とするまでの条件を設けることによって、異常状態による生産性の低下を最小限にとどめつつ、装置寿命を確保することが可能となる。また、異常解除操作手段を設け、条件設定手段により設定された条件を満たし、かつ、異常解除操作手段に異常解除操作が行われたことによって、射出成形機の動作の再開が行われるようにしたことによって、単に条件設定手段により設定された条件を満たしただけではなく、より確実に確認した後の異常解除操作によって動作を再開させることによって、より安全性を高めることが可能となる。
【0016】
本願の請求項2に係る発明では、異常検出後、前記射出成形機を停止させてからの経過時間を計時する計時手段を有し、前記動作再開禁止手段は、前記計時手段の計時する時間が、前記条件設定手段の設定した時間を経過するまで動作再開を禁止することを特徴する請求項1記載の射出成形機の制御装置が提供される。
請求項2に係る発明では、異常状態の種類に応じてそれぞれ設定された時間を経過するまで射出成形機の動作再開を禁止することによって、設定された時間の経過によって、サーボモータ内部の温度が低下する。これにより、放熱がじゅうぶん行われた後に連続運転が再開されるため、射出成形機の異常を解消したにもかかわらず、異常と検知する温度を超えてしまうといったことがなくなり、適切に連続運転をすることが可能となる。
【0017】
本願の請求項3に係る発明では、前記射出成形機は、前記射出成形機の駆動部を駆動するサーボモータ、前記サーボモータを制御するサーボアンプおよび前記サーボモータと前記サーボアンプを接続する動力線と、前記サーボモータ、前記サーボアンプ、前記動力線の少なくとも1つを温度測定対象とし、該温度測定対象の温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定対象ごとに、動作を停止させる基準値となる温度を設定する基準値設定手段とを有し前記動作停止手段は、前記温度測定対象のいずれかの個所の温度が前記基準値設定手段で設定された基準値を超えたときに動作を停止させ、前記条件設定手段は、前記基準値より低い動作可能温度を設定し、前記動作再開禁止手段は、前記基準値を超えた前記温度測定対象の温度が、前記動作可能温度に降下するまで動作再開を禁止することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御装置が提供される。
請求項3に係る発明では、温度測定対象の温度を測定する温度測定手段を有し、温度測定手段が測定した実温度が基準値を超えたときに動作を停止させて、その後基準値よりも低い動作可能温度に降下するのを検出するまで動作再開を禁止することにより、放熱がじゅうぶん行われた後に連続運転が再開されるため、射出成形機の異常を解消したにもかかわらず、異常と検知する温度を超えてしまうといったことがなくなり、適切に連続運転をすることが可能となる。
【0018】
本願の請求項4に係る発明では、前記射出成形機は、前記射出成形機の駆動部を駆動するサーボモータ、前記サーボモータを制御するサーボアンプおよび前記サーボモータと前記サーボアンプを接続する動力線と、前記サーボモータ、前記サーボアンプ、前記動力線の少なくとも1つを温度算出対象とし、該温度算出対象に流れる電流によって発熱する発熱量から該温度算出対象の温度を算出する温度算出手段と、前記温度算出対象ごとに、動作を停止させる基準値となる温度を設定する基準値設定手段とを有し前記動作停止手段は、前記温度算出対象のいずれかの個所の算出された温度が前記基準値設定手段で設定された基準値を超えたときに動作を停止させ、前記条件設定手段は、前記基準値より低い動作可能温度を設定し、前記動作再開禁止手段は、前記基準値を超えた前記温度測定対象の算出された温度が、前記動作可能温度に降下するまで動作再開を禁止することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御装置が提供される。
請求項4に係る発明では、温度算出対象に流れる電流によって発熱する発熱量から温度算出対象の温度を算出し、計算された温度が基準値を超えたときに動作を停止させて、その後温度算出手段によって算出された計算温度が所定の温度より低い動作可能温度に降下するまで動作再開を禁止することにより、放熱がじゅうぶん行われた後に連続運転が再開されるため、射出成形機の異常を解消したにもかかわらず、異常と検知する温度を超えてしまうといったことがなくなり、適切に連続運転をすることが可能となる。
【0019】
本願の請求項5に係る発明では、前記射出成形機は、前記射出成形機の駆動部を駆動するサーボモータ、前記サーボモータを制御するサーボアンプおよび前記サーボモータと前記サーボアンプを接続する動力線と、前記サーボモータ、前記サーボアンプ、前記動力線の少なくとも1つを温度監視対象とし、該温度監視対象の実温度を測定する温度測定手段と、該温度監視対象に流れる電流によって発熱する発熱量から該温度監視対象の温度を計算温度として算出する温度算出手段と、前記温度監視対象ごとに、動作を停止させる基準値となる温度を設定する基準値設定手段とを有し前記動作停止手段は、前記温度監視対象のいずれかの個所の計算温度が前記基準値設定手段で設定された基準値を超えたときに動作を停止させ、前記条件設定手段は、前記基準値より低い動作可能温度を設定し、前記動作再開禁止手段は、前記基準値を超えた前記温度監視対象の実温度が、前記動作可能温度に降下するまで動作再開を禁止することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御装置が提供される。
請求項5に係る発明では、温度監視対象に流れる電流によって発熱する発熱量から温度監視対象の温度を算出し、計算された温度が基準値を超えたときに動作を停止させて、その後温度測定手段によって測定された温度監視対象の温度が所定の温度よりも低い動作可能温度に降下するのを検出するまで動作再開を禁止することにより、放熱がじゅうぶん行われた後に連続運転が再開されるため、射出成形機の異常を解消したにもかかわらず、異常と検知する温度を超えてしまうといったことがなくなり、適切に連続運転をすることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、射出成形機を大型化することなく、異常状態による生産性の低下を最小限にとどめて、装置寿命を確保することができる射出成形機の制御装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】射出成形機と制御装置の全体構成を示す図である。
図2】第1の実施形態における動作の流れを示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態における射出成形機の運転及び停止状態と、モータ内部温度との関係を示す図である。
図4】第2の実施形態における動作の流れを示すフローチャートである。
図5】第3の実施形態における動作の流れを示すフローチャートである。
図6】第4の実施形態における動作の流れを示すフローチャートである。
図7】従来技術における射出成形機の運転及び停止状態と、モータ内部温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における射出成形機と制御装置の構成を示す全体図である。従来技術と同一の構成については同一の符号を付して説明は省略する。本実施形態においては、駆動機構に設けられているサーボモータ2、サーボモータ2を駆動するためのサーボアンプ4、サーボモータ2とサーボアンプ4との間を接続するケーブル8の温度を測定するための温度測定装置6が設けられている。そして、温度測定装置6で測定された各部位の温度は制御装置50に送られている。制御装置50内には、温度算出手段52とタイマ54が備えられている。
【0023】
本実施形態においては、射出成形機において異常を検出したときに、異常の種類に応じて、1サイクル終了まで運転を継続した後に停止するものと、即時停止するものに分けられて、あらかじめ設定されている。また、即時停止するものは、操作者が制御装置50の操作盤から異常の解除操作を行うと運転再開可能なものと、異常の検出直後にカウント開始したタイマが、異常の種類に応じてあらかじめ記憶された時間経過するまで、運転再開できないものとに分けられている。
【0024】
図2は、本実施形態における動作の流れを示すフローチャートである。以下、ステップ毎に説明する。
・(ステップSA1)制御装置が、射出成形機の異常状態を検出したかどうかを判定する。検出した場合(YES)は、ステップSA2に進み、検出していない場合(NO)は、ステップSA1を繰り返して異常状態を検出するまで待機する。
・(ステップSA2)異常の種類を特定する。
・(ステップSA3)射出成形機の運転を停止する。
・(ステップSA4)特定された異常の種類に応じたタイマ時間を設定する。
【0025】
・(ステップSA5)タイマの計時を開始する。
・(ステップSA6)異常解除操作が行われたかどうかを判定する。解除操作が行われた場合(YES)は、ステップSA7に進み、行われていない場合(NO)は、ステップSA6を繰り返して解除操作が行われるまで待機する。
・(ステップSA7)タイマが設定された時間を経過してタイマアップしたかどうかを判定する。タイマアップした場合(YES)は、ステップSA8に進み、タイマアップしていない場合(NO)は、ステップSA7を繰り返してタイマアップするまで待機する。
・(ステップSA8)運転再開を許可する。
・(ステップSA9)全体の運転サイクルが終了したかどうかを判定する。運転サイクルが終了した場合(YES)は終了し、運転サイクルが終了していない場合(NO)は、ステップSA1に戻る。
【0026】
図3は、本実施形態による射出成形機の運転及び停止状態と、モータ内部温度との関係を示す図である。初期条件においては、運転開始後モータ内部温度が上昇して基準値を超えたところで、異常状態と検出して運転を停止させている。本実施形態においては、図2のフローチャートのステップSA4にみられたように、異常の種類に応じたタイマ時間を設定し、その間は運転の再開が制限されているため、その間にサーボモータ内部の温度が低下することとなる。図3に示されているように、本実施形態においては、設定されたタイマ期間の間、運転再開が制限されているため、サーボモータ内部の温度が低下しており、その後連続運転を再開しても、温度が基準値に達することがなく、問題なく連続運転が可能となっている。
【0027】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態における動作の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、タイマによる計時に代えて、実際にサーボモータ、サーボアンプ、動力線の温度を測定する点が第1の実施形態とは異なっている。以下、ステップ毎に説明する。
・(ステップSB1)サーボモータ、サーボアンプ、動力線の温度が基準値を超えたかどうかを判定する。ここで、基準値の値はサーボモータ、サーボアンプ、動力線ごとに異なる値に設定することもできるし、共通の温度を用いることもできる。超えた場合(YES)は、ステップSB2に進み、超えていない場合(NO)は、ステップSB1を繰り返して異常状態を検出するまで待機する。
・(ステップSB2)射出成形機の運転を停止する。
【0028】
・(ステップSB3)サーボモータ、サーボアンプ、動力線の温度が所定の温度を下回ったかどうかを判定する。下回った場合(YES)は、ステップSB4に進み、下回っていない場合(NO)は、ステップSB3を繰り返して所定の温度を下回るまで待機する。
・(ステップSB4)射出成形機の運転再開を許可する。
・(ステップSB5)全体の運転サイクルが終了したかどうかを判定する。運転サイクルが終了した場合(YES)は終了し、運転サイクルが終了していない場合(NO)は、ステップSB1に戻る。
【0029】
(第3の実施形態)
図5は、本実施形態における動作の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、実際にサーボモータ、サーボアンプ、動力線の温度を測定することに代えて、サーボモータ、サーボアンプ、動力線に流れる電流値による発熱量から算出される温度が基準値を超えたかどうかを判定し、運転再開時に、実際にサーボモータ、サーボアンプ、動力線の温度が所定の温度を下回ることを測定することに代えて、サーボモータ、サーボアンプ、動力線に流れる電流値による発熱量から算出される温度が所定の温度を下回るかどうかを判定する点が第2の実施形態とは異なっている。算出にあたっては、射出成形機が配置されている周辺環境は通常の射出成形機の配置環境であるものとして算出を行っている。射出成形機の配置環境は、人の手によって操作されることが一般的であるため、過剰に温度が高いということはなく、逆に温度が低い場合には、算出した結果よりも実際の温度の方が安全方向に振れるため問題がない。以下、ステップ毎に説明する。
・(ステップSC1)サーボモータ、サーボアンプ、動力線に流れる電流値による発熱量から算出される温度が基準値を超えたかどうかを判定する。ここで、基準値の値はサーボモータ、サーボアンプ、動力線ごとに異なる値に設定することもできるし、共通の温度を用いることもできる。超えた場合(YES)は、ステップSC2に進み、超えていない場合(NO)は、ステップSC1を繰り返して異常状態を検出するまで待機する。
・(ステップSC2)射出成形機の運転を停止する。
【0030】
・(ステップSC3)算出される温度が所定の温度を下回ったかどうかを判定する。下回った場合(YES)は、ステップSC4に進み、下回っていない場合(NO)は、ステップSC3を繰り返して所定の温度を下回るまで待機する。
・(ステップSC4)射出成形機の運転再開を許可する。
・(ステップSC5)全体の運転サイクルが終了したかどうかを判定する。運転サイクルが終了した場合(YES)は終了し、運転サイクルが終了していない場合(NO)は、ステップSC1に戻る。
【0031】
(第4の実施形態)
図6は、本実施形態における動作の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、運転再開時に、実際にサーボモータ、サーボアンプ、動力線の温度が所定の温度を下回ることを測定して判定する点が第3の実施形態とは異なっている。以下、ステップ毎に説明する。
・(ステップSD1)サーボモータ、サーボアンプ、動力線に流れる電流値による発熱量から算出される温度が基準値を超えたかどうかを判定する。ここで、基準値の値はサーボモータ、サーボアンプ、動力線ごとに異なる値に設定することもできるし、共通の温度を用いることもできる。超えた場合(YES)は、ステップSD2に進み、超えていない場合(NO)は、ステップSD1を繰り返して異常状態を検出するまで待機する。
・(ステップSD2)射出成形機の運転を停止する。
【0032】
・(ステップSD3)サーボモータ、サーボアンプ、動力線の温度が所定の温度を下回ったかどうかを判定する。下回った場合(YES)は、ステップSD4に進み、下回っていない場合(NO)は、ステップSD3を繰り返して所定の温度を下回るまで待機する。
・(ステップSD4)射出成形機の運転再開を許可する。
・(ステップSD5)全体の運転サイクルが終了したかどうかを判定する。運転サイクルが終了した場合(YES)は終了し、運転サイクルが終了していない場合(NO)は、ステップSD1に戻る。
【符号の説明】
【0033】
2 サーボモータ
4 サーボアンプ
6 温度測定装置
8 ケーブル
11 射出シリンダ部
12 射出ノズル
13 スクリュー
14 ホッパ
30 可動プラテン
31 リアプラテン
33 固定プラテン
40 金型
40a 可動側金型
40b 固定側金型
50 制御装置
52 温度算出手段
54 タイマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7