特許第5715214号(P5715214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5715214レーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715214
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】レーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   E02B5/08 103Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-208797(P2013-208797)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-71916(P2015-71916A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2013年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154037
【氏名又は名称】株式会社表鉄工所
(73)【特許権者】
【識別番号】598168759
【氏名又は名称】有限会社ミューロン
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100097021
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 紘一
(72)【発明者】
【氏名】表 実
【審査官】 鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−053627(JP,A)
【文献】 特開2005−248684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路を遮るように設置されたスクリーンに沿って水中の塵芥をレーキが昇降動作及び回転動作を伴って掻き上げるレーキアーム回転式除塵機において、
前記レーキと、一端が該レーキに取り付けられ他端に連結軸を有するレーキアームと、一端に回転駆動部を有し他端に前記レーキアームの前記連結軸を連結するための軸穴を有する駆動部フレームと、傾斜角センサーと、を有するレーキユニットが設けられ、
前記駆動部フレームの前記軸穴の直径が前記連結軸の直径より大きく設定されて該連結軸が該軸穴に遊動可能に連結されており、
前記レーキの掻き上げ動作で該レーキが水路底部の堆積物に衝突し該レーキに所定の負荷が加わると、
前記連結軸が前記駆動部フレームの前記軸穴内部を移動してバランスをとって停止するとともに、前記レーキアームが掻き上げ動作の回転方向とは逆方向に該連結軸の前記停止位置を中心に揺動することによりレーキアームの傾斜角が変化し、
前記傾斜角センサーが前記レーキアームの傾斜角及びその変化を検出し、所定の傾斜角の変化となると前記レーキが過負荷状態と判定して該レーキの掻き上げ動作を停止させること
を特徴とするレーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構。
【請求項2】
前記傾斜角センサーが前記レーキアームの所定の位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のレーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路に設置され、水路内の塵芥をスクリーンにて捕捉し、レーキの昇降動作及び回転動作を伴った動作によって掻き上げるレーキアーム回転式除塵機において、レーキが掻揚げ動作を行う際の過負荷状態を検出する機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水処理場や河川排水処理場における下水或いは排水処理においては、処理する下水或いは排水中に含まれるごみを除去するために、流水路を遮断するように配設して該流水中のごみを捕捉するためのスクリーンを配設し、該スクリーンと噛合し、かつスクリーンに沿って移動し、スクリーンによる捕捉ごみを掻き上げ、排出するためのレーキ装置とにより構成するレーキ式除塵機を設置している。
このスクリーンは、細帯状で同サイズの平鋼の複数本を等間隔に隣接配設し、かつスクリーン前面を同一面になるように固定して構成しているものがある。
【0003】
レーキ装置には、特許文献1のように、巡回走行する可動レーキで塵芥を掻揚げられ、シュータに搬送されて排出される構成のものがある。
【0004】
また、近年、下水処理場や河川排水処理場に流入するごみを、後処理を考慮してできるだけ細塵をも除去できるよう、細塵除去用のスクリーンを用いたレーキ式除塵機を設置するようにしている。この細塵除去用のスクリーンを用いたレーキ式除塵機としては、捕捉可能なごみの大きさに応じてスクリーンの目幅を定め、このスクリーン目幅内に円滑に挿入できるようレーキ装置のレーキ爪の間隔を定めている。
【0005】
上記細塵除去を可能とするためのレーキユニットの一例として、特許文献2や図3図4の従来例のように、スクリーンに沿って往復し、また水路底部の細塵等の堆積物を掻き上げるためにレーキ先端部が揺動するような回転軸を有したレーキユニットがある。
【0006】
図3図4のようなレーキユニット200では、特に底部の堆積物を掻き上げる際、レーキユニット200が堆積物に衝突し過負荷がかかって各部を破損する可能性がある。そこで、レーキユニット200に過負荷検出用リミットスイッチ206を設け、図4(d)のように、レーキ204、レーキアーム202が掻き上げようとする方向と反対方向へ揺動してしまったときには過負荷がかかったとしてリミットスイッチ206が作動しレーキユニット200を停止させる仕組みを有している除塵機がある。なお、図3は従来例の全体図、図4は従来例のリミットスイッチ作動原理を示す図となっている。
【0007】
また、過負荷検出の他の方法として、レーキを作動させるための電動機の過電流を検出して過負荷状態を判定しレーキユニットを停止させる方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3229535号
【特許文献2】特許第4805210号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図3図4のようなレーキユニットの従来のリミットスイッチによる過負荷検出方法では、リミットスイッチの水中使用において可動部分等の耐久性に問題があった。さらに、リミットスイッチによる機械的なONOFF検出となるため、細やかな検出設定を行うことに限界があった。
また、電動機の過電流を検出する方法でも、過電流のたびに電動機に負担を掛けることとなるので電動機の寿命を縮めたり電動機の損傷に繋がるおそれがある。
【0010】
本発明の課題は、レーキアーム回転式除塵機において、レーキが掻揚げ動作を行う際の過負荷状態を検出する機構を有することによって、レーキユニットの過負荷状態を高精度に検出しさらに高耐久なレーキの過負荷検出機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、請求項1に記載のレーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構の発明は、水路を遮るように設置されたスクリーンに沿って水中の塵芥をレーキが昇降動作及び回転動作を伴って掻き上げるレーキアーム回転式除塵機において、前記レーキと、一端が該レーキに取り付けられ他端に連結軸を有するレーキアームと、一端に回転駆動部を有し他端に前記レーキアームの前記連結軸を連結するための軸穴を有する駆動部フレームと、傾斜角センサーと、を有するレーキユニットが設けられ、前記駆動部フレームの前記軸穴の直径が前記連結軸の直径より大きく設定されて該連結軸が該軸穴に遊動可能に連結されており、前記レーキの掻き上げ動作で該レーキが水路底部の堆積物に衝突し該レーキに所定の負荷が加わると、前記連結軸が前記駆動部フレームの前記軸穴内部を移動してバランスをとって停止するとともに、前記レーキアームが掻き上げ動作の回転方向とは逆方向に該連結軸の前記停止位置を中心に揺動することによりレーキアームの傾斜角が変化し、前記傾斜角センサーが前記レーキアームの傾斜角及びその変化を検出し、所定の傾斜角の変化となると前記レーキが過負荷状態と判定して該レーキの掻き上げ動作を停止させることを特徴としている。
【0012】
また、請求項2の発明は、前記傾斜角センサーが前記レーキアームの所定の位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のレーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構となっている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明のレーキの過負荷検出機構は、レーキユニットの駆動部フレームの軸穴の直径が連結軸の直径より大きく設定されて連結軸が軸穴に遊動可能に連結されており、レーキの掻き上げ動作でレーキが水路底部の堆積物に衝突すると、連結軸が駆動部フレームの軸穴内部を移動してバランスをとって停止するとともに、レーキアームが掻き上げ動作の回転方向とは逆方向に連結軸の停止位置を中心に揺動することによりレーキアームの傾斜角が変化し、傾斜角センサーがレーキアームの傾斜角及びその変化を検出し、所定の傾斜角の変化となるとレーキが過負荷状態と判定してレーキの掻き上げ動作を停止させる機構となっていて、回転軸が遊動することにより傾斜角の変化が遊動しない場合よりも顕著に変化するため、より高精度に過負荷検出を行うことができる。
【0014】
また、傾斜角センサーを適用することによって従来のリミットスイッチでの過負荷検出に比べて水中内で可動部が露出しないので耐久性がより向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るレーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構の側面図及びその作動原理を示す。(a)(b)は過負荷検出機構の作動前、(c)(d)は過負荷検出機構の作動時を示す。
図2】本発明に係るレーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構を有したレーキアーム回転式除塵機を示す。(a)は正面図、(b)は側面図を示す。
図3】従来の過負荷検出用リミットスイッチを使用したレーキアーム回転式除塵機を示す。(a)は正面図、(b)は側面図を示す。
図4】従来の過負荷検出用リミットスイッチを使用したレーキアーム回転式除塵機のリミットスイッチ作動原理を示す。(a)(b)はリミットスイッチ作動前、(c)(d)はリミットスイッチ作動時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の一例について、さらに詳しく説明する。図1は本発明に係るレーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構の側面図及びその作動原理を示す。図2図1のレーキの過負荷検出機構を有したレーキアーム回転式除塵機を示す。
図1の過負荷検出機構となるレーキユニット20は、レーキ24と、一端がレーキ24に取り付けられ他端に連結軸23を有するレーキアーム22と、一端に回転駆動部25を有し他端にレーキアーム22の連結軸23を連結するための軸穴21aを有する駆動部フレーム21と、傾斜角センサー26とを有しており、レーキユニット20はユニット自体の下降と駆動部フレーム21の回転駆動部25を中心として回転することによってレーキ24の掻き上げ動作を行う構成となっていて、レーキ24の掻き上げ動作でレーキ24が下部の堆積物Aに衝突すると、連結軸23が駆動部フレーム21の軸穴21a内部を移動してバランスをとって停止するとともに、レーキ24に所定の負荷がかかるとレーキアーム22が掻き上げ動作の回転方向とは逆方向に連結軸23の停止位置を中心に揺動することによりレーキアーム22の傾斜角が変化し、傾斜角センサー26がレーキアーム22の傾斜角及びその変化を検出し、所定の傾斜角の変化となるとレーキが過負荷状態と判定してレーキの掻き上げ動作を停止させるレーキの過負荷検出機構となっている。
【0017】
レーキユニット20は、図2に示すように、レーキアーム回転式除塵機10に搭載される。レーキアーム回転式除塵機10は、主に、水路に平板を所定の間隔で配設したスクリーン11と、レーキユニッット20に設けられたローラ12aによってレーキユニッット20をガイドするローラガイド12と、レーキユニッット20に設けられたラックホイール13aによってレーキユニッット20をスクリーン11に沿って移動させるためのラック機構13と、ラック機構13上部にはレーキ24が掬い上げた堆積物Aやスクリーン11に挟まっていたごみを排出するシュート14と、レーキユニット20等をカバーするための上部ケーシング15・下部ケーシング16と、レーキアーム回転式除塵機10を操作するための操作台17とから構成される。
【0018】
レーキユニット20の駆動部フレーム21は、回転駆動部25を有し他端にレーキアーム22の連結軸23を連結するための軸穴21aを有している。また、駆動部フレーム21にはラックホイール13aが設けられており、このラックホイール13aがレーキアーム回転式除塵機10のラック機構13に接続されることによってレーキユニット20がスクリーン11に沿うように移動可能となっている。
軸穴21aの穴径はレーキアーム22の連結軸23の直径よりも大きい径となっており、連結軸23つまりレーキアーム22が遊動可能となるような穴径となっている。
駆動部フレーム21の回転駆動部25には、回転駆動部25を軸中心に回転するための電動機付減速機25aが設けられている。
【0019】
レーキアーム22は、本実施例では側面視くの字形状で、一端にレーキ24が取り付けられ、他端には連結軸23が設けられている。また、レーキアーム22の所定の位置には傾斜角センサー26が設けられている。連結軸23は駆動部フレーム21の軸穴21aに遊動可能に連結される。
【0020】
傾斜角センサー26は防水型で水中での使用も可能なものを選定するとよい。本実施例ではレーキアーム22のくの字に折れ曲がった箇所の直上に設けられているが、これに限らず過負荷時の傾斜角の変化を検出しやすい場所に設けるとよい。また、センサの耐久性向上やメンテナンス性を考慮して常時は水のかからない位置に取り付けるとさらによい。
【0021】
レーキ24は、水路底部の堆積物Aを掻き上げるためのシャベル形状で、先端部は配設されたスクリーン11の隙間に挿入できるような櫛歯形状となっている。レーキユニット20が回転動作を行った際に、堆積物Aを掻き上げるとともに、スクリーン11の隙間に挿入され、その状態を保持したままレーキユニット20がラック機構13によって上昇してラック機構13上部に設けられたシュート14へ掬い上げた堆積物A及びスクリーン11の隙間に挟まったごみを排出する。
【0022】
また、レーキユニット20には駆動部フレーム21とレーキアーム22を連結するような構成の過負荷設定機27が設けられている。この過負荷設定機27によって、レーキ24が堆積物Aに衝突した際にどのくらいの負荷が加わったときに過負荷状態としてレーキ24及びレーキアーム22が掻き上げ方向と逆方向へ揺動するかを設定することができる。過負荷設定機27は通常バネを利用しているが、これに限らず所定の負荷がかかると掻き上げ方向と逆方向へ揺動するような機構であればよい。
【0023】
次にレーキユニット20の掻き上げ動作について説明する。通常時の水路底部に溜まったごみを掻き上げてシュート14へ排出する動作としては、まずレーキユニット20がラック13によって水路底部まで移動し、次に駆動部フレーム21に設けられた回転駆動部25を中心に図2(b)によれば反時計回りに回転し、駆動部フレーム21の軸穴21aに連結されたレーキアーム22、レーキ21が協動して反時計回りに回転することによって掻き上げる動作となり、流路底部に溜まった堆積物A及びスクリーン11に挟まったごみを掬い上げ、次にレーキユニット20がラック機構13によって上昇してレーキアーム回転式除塵機10上部に設けられたシュート14へ掬い上げた堆積物A及びごみを排出することとなっている。過負荷状態とならなければレーキアーム22の連結軸23は駆動部フレーム21の軸穴21aの略鉛直下部に位置しており、この位置を中心にレーキアーム22が回転することになる。
【0024】
次に、過負荷時の動作について図1を参照に説明する。
堆積物Aに衝突するまでは、図1(a)のように、レーキアーム22の連結軸23は駆動部フレーム21の軸穴21aの略鉛直下部に位置しており、過負荷状態とならなければこの位置を中心にレーキアーム22が回転することになる。
【0025】
堆積物Aに例えばレーキ24では掻き上げられないほどの大きい岩石や枝等が含まれていた場合、レーキ24が堆積物Aに衝突し、レーキ24が過負荷設定機27での設定負荷以上の負荷、つまり過負荷状態となると、図1(b)のように、連結軸23が駆動部フレーム21の軸穴21a内部をレーキアーム22が受ける負荷のベクトル方向へ移動してバランスをとって停止するとともに、レーキアーム22が掻き上げ動作の回転方向とは逆方向に連結軸23の停止位置を中心に揺動することによってレーキアーム22の傾斜角が変化し、傾斜角センサー26がレーキアーム22の傾斜角及びその変化を検出し、所定の傾斜角の変化となるとレーキが過負荷状態と判定してレーキの掻き上げ動作を停止させる。
連結軸23と軸穴21aが遊動可能に連結されていることにより、過負荷状態でレーキアーム22が移動するのでレーキアーム22の傾斜角の変化が遊動しない場合よりも顕著に変化するため、傾斜角センサー26の検出がより高精度に行うことができる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のレーキアーム回転式除塵機のレーキの過負荷検出機構は水路に設置されたスクリーンの除塵の際に用いられるだけでなく、回転動作を伴う掻き上げる動作を使用する機構の過負荷検出に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
A 堆積物
10 レーキアーム回転式除塵機
11 スクリーン
12 ローラガイド
12a ローラ
13 ラック機構
13a ラックホイール
14 シュート
15 上部カバー
16 下部カバー
17 操作台
20 レーキユニット
21 駆動部フレーム
21a 軸穴
22 レーキアーム
23 連結軸
24 レーキ
25 回転駆動部
25a 電動機付減速機
26 傾斜角センサー
27 過負荷設定機
図1
図2
図3
図4