(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715238
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】圧縮機の制御方法
(51)【国際特許分類】
F04C 28/00 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
F04C28/00 A
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-505280(P2013-505280)
(86)(22)【出願日】2011年4月8日
(65)【公表番号】特表2013-525665(P2013-525665A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】BE2011000019
(87)【国際公開番号】WO2011130807
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2013年6月12日
(31)【優先権主張番号】2010/0253
(32)【優先日】2010年4月20日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】フベルランド フィリプ グスターフ エム
(72)【発明者】
【氏名】ジャンセン スティジュン ジョセフ リタ ジョハンナ
(72)【発明者】
【氏名】パーネル ウウェ
(72)【発明者】
【氏名】ベイエンス フィリプ ペトルス アイ
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−200546(JP,A)
【文献】
特開2001−050185(JP,A)
【文献】
特開2004−316462(JP,A)
【文献】
特開2002−138977(JP,A)
【文献】
特開平8−42489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00−29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が入口と出口とを有する一つ以上のターボ圧縮機エレメント(2、2A、2B)から成る、ターボ圧縮機の制御方法であり、全負荷または部分負荷から0負荷への移行の間に、上述のターボ圧縮機エレメント(2、2A、2B)のうち少なくとも第一圧縮機エレメントが、
−この第一圧縮機エレメントの前記入口の圧力を、少なくとも一時的に低減するステップと;
−該ステップに続いて、若しくは同時に、又は該ステップと部分的に同時に、若しくは部分的に続いて、この第一圧縮機エレメントの速度および/または駆動トルクを、より低い値または0に低減するステップと
を含むプロセスAを経ること、
且つ、0負荷から部分負荷または全負荷への移行の間に、少なくとも第一圧縮機エレメント(2、2A、2B)が、
−この第一圧縮機エレメントの速度および/または駆動トルクを、公称値または公称値範囲内の増加するステップと;
−該ステップに続いて、若しくは同時に、又は該ステップと部分的に同時に、若しくは部分的に続いて、この第一圧縮機エレメントの前記入口の圧力を制御した形で増加させるステップと
を含むプロセスBを経ることを特徴とし、さらに、
前記プロセスAが、前記第一圧縮機エレメントの前記入口圧力を低減させるステップの少なくとも前に、その出口圧力を低減させるステップを含み、
前記プロセスBが、前記第一圧縮機エレメントの前記入口圧力を増加させるステップの少なくとも後に、その出口圧力を増加させるステップを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第一圧縮機エレメントの前記出口圧力が、この第一圧縮機エレメントの圧力側の、または前記当該の第一圧縮機エレメントから下流の圧縮機エレメントの出口の、放風弁(9)を開くことにより低減されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一圧縮機エレメント(1)の前記出口圧力が、この第一圧縮機エレメントの圧力側の、または前記当該の第一圧縮機エレメントから下流の圧縮機エレメントの出口の、放風弁(9)を閉じることにより高められることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセスBが、前記第一圧縮機エレメントの前記入口圧力を、公称値に増加させるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一圧縮機エレメント(2、2A、2B)の前記入口圧力が、この当該の第一圧縮機エレメントの前記入口の、または前記当該の第一圧縮機エレメントから上流の圧縮機エレメントの入口の、入口弁(5)を開閉することにより変えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一圧縮機エレメント(2、2A、2B)の前記入口圧力が、前記当該の第一圧縮機エレメントから上流の放風弁(9)を開閉することにより変えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第一圧縮機エレメント(2、2A、2B)の前記入口圧力が、前記当該の第一圧縮機エレメントから上流の圧縮機エレメントの作動モードを調節することにより変えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一圧縮機エレメント(2、2A、2B)の前記入口圧力が、速度制御可能なスクリュ圧縮機エレメントの形で構成された、前記当該の第一圧縮機エレメントから上流の圧縮機エレメントを制御することにより変えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一圧縮機エレメント(2A、2B)の前記出口圧力が、前記当該の第一圧縮機エレメントから下流の圧縮機エレメントの作動モードを調節することにより変えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記当該の第一圧縮機エレメントから下流の前記圧縮機エレメントが、速度制御可能なスクリュ圧縮機エレメントであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
直接駆動圧縮機エレメントまたは少なくとも一つの直接駆動圧縮機エレメントを伴う圧縮機に適用されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記入口および/または放風弁が、一つの構成要素に統合されることを特徴とする、請求項2及び/または3と組み合わせた請求項5および/または6に記載の方法。
【請求項13】
前記入口および/または放風弁が、機械的および/または電気的に連結され、一緒に制御されることを特徴とする、請求項2および/または3と組み合わせた、請求項12ならびに/あるいは請求項5および/または6に記載の方法。
【請求項14】
直接駆動ターボ圧縮機エレメントの形で構成される圧縮機エレメント(2、2A、2B)に適用されることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
上述の全ての圧縮機エレメントが、一つのハウジングに組み込まれることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
プロセスAにおいて、この第一圧縮機エレメントの速度および/または駆動トルクの、より低い値または0への低減の前記ステップが、前記第一圧縮機エレメントの前記入口圧力の前記低減のステップに後続して、または部分的に後続して行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
各々が入口と出口とを有する一つ以上のターボ圧縮機エレメント(2、2A、2B)を有するターボ圧縮機の、全負荷もしくは部分負荷から0負荷へまたはその逆への移行期間中の、エネルギー損失を低減させる方法であり、少なくとも上述のターボ圧縮機エレメント(2、2A、2B)のうち少なくとも第1圧縮機エレメントにつき、全負荷または部分負荷から0負荷への移行が、
−この第一圧縮機エレメントの前記入口圧力の、前記少なくとも一時的な低減のステップと;
−該ステップに続いて、若しくは同時に、又は該ステップと部分的に同時に、若しくは部分的に続いて、この第一圧縮機エレメントの速度および/または駆動トルクを、より低い値または0に低減するステップと
を含むプロセスAにより実行され、
0負荷から部分負荷または全負荷への移行が、
−この第一圧縮機エレメントの速度および/または駆動トルクの、公称値または公称値範囲内への増加のステップと;
−該ステップに続いて、若しくは同時に、又は該ステップと部分的に同時に、若しくは部分的に続いて、この第一圧縮機エレメントの前記入口圧力を制御した形で増加させるステップと
を含むプロセスBにより実行される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ以上の圧縮機エレメントを有する圧縮機であり、各圧縮機エレメントが入口と出口とを備え、該圧縮機が圧縮ガスを使用する負荷に接続されうる、圧縮機の制御方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、全負荷もしくは部分負荷から0負荷へ、またはその逆への移行の間に、エネルギーを節約することを目的とし、該圧縮機は、上述の圧縮機エレメント(単数または複数)の速度を公称速度またはある公称速度範囲内に制御する制御ユニットを含む。
【背景技術】
【0003】
多くの場合、例えば圧縮機が圧力ネットワークに圧縮ガスを提供する場合には、圧縮機出口の圧縮ガスの流量がある程度制御可能であることが望ましい。このような状況では、供給されるガス流量が、圧力ネットワークにおける消費に応じて調節されるのが好ましい。
【0004】
圧縮機に属する圧縮機エレメントの少なくとも一つがスクリュタイプである場合には、基本的に効率を犠牲にせずに、供給されるガス流量が周知の方法で制御されうる。
【0005】
このような場合には、圧縮機エレメントの入口圧力は通常一定速度で低減される(しかし圧縮機エレメントがターボタイプにより構成される場合には以上の限りではない)。
【0006】
圧縮機がターボタイプの場合には、大体一定の流量で作動し、ターボ圧縮機が公称速度で動作するのが好ましい。圧縮機は公称速度で、圧縮機がその最適作動点で作動する全負荷で作動する。
【0007】
出口流量は、圧縮機の速度を変動させることにより、または、入口案内羽根および/もしくはディフューザ案内羽根を用いて、エネルギー効率の良い方法で限定的に変動させられうる。
【0008】
必要な流量がさらに低減した場合には、他の方法を適用して出口流量が制御される。
【0009】
従来、圧縮機出口の圧縮ガスの余剰部分が、放風弁を用いて放風される。
【0010】
別の周知の方法は、圧縮機の出口の全流量を、定期的に放風するステップ、または圧力ネットワーク内の圧力がある値未満に低下するまで再循環させるステップからなり、その後圧縮機が再び全流量を供給する。
【0011】
このようにしてターボ圧縮機は、供給される流量を必要な流量に常に調節できる。
【0012】
周知の方法の重要な欠点は、エネルギー集約型であることである。
【0013】
供給される流量を低減するための、エネルギー効率のより良い別の方法は、調節可能な入口案内羽根、あるいはディフューザ案内羽根を設置することであり、流量が変化する度に、(圧縮機ステージの入口および出口でそれぞれ)流れの入射角が調節される。この欠点は、比較的高い複雑さと、これに伴う生産コストである。
【0014】
記載されている全ての方法において、負荷から無負荷の状態へ、またはその逆へと進む際に、圧縮機の速度が同じに保たれる。
【0015】
速度制御された遠心式圧縮機の供給流量をさらに低減する別の方法は、その速度を低減することであり、先または同時に放風弁を用いて出口圧力が低減され、低い無負荷電力が得られる。こうして圧縮機が、圧力ネットワークに流量を供給しなくなる。
【0016】
しかしこの欠点は、遠心式圧縮機の電力が終圧にあまり依存しないため、負荷状態と無負荷状態との間およびその逆の移行の際に有意な損失が起こることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、一つ以上の圧縮機エレメントを有する圧縮機の制御方法を提供することにより、上述の欠点および/またはその他の欠点の一つ以上に対する解決策を提供することであり、該方法において、各圧縮機エレメントは、入口と出口とを有し、全負荷または部分負荷から0負荷への移行の間に、少なくとも第一圧縮機エレメントが、
−この第一圧縮機エレメントの入口の圧力を少なくとも一時的に低減するステップと;
−該ステップに続いて、若しくは同時に、又は該ステップと部分的に同時に、若しくは部分的に続いて、この第一圧縮機エレメントの速度および/または駆動トルクを、より低い値または0に低減するステップと
を含むプロセスAを経、
且つ、0負荷から部分負荷または全負荷への移行の間に、少なくとも第一圧縮機エレメントが、
−該第一圧縮機エレメントの速度および/または駆動トルクを、公称値または公称値範囲内に増加するステップと;
−該ステップに続いて、若しくは同時に、又は該ステップと部分的に同時に、若しくは部分的に続いて、この第一圧縮機エレメントの前記入口の圧力を制御した形で増加させるステップと
を含むプロセスBを経る。
【0018】
「入口圧力の制御された増加」とは、例えば、弁、圧縮機エレメントまたは同様のもの等の圧縮機のある構成要素を、制御ユニットを用いて制御することにより、この入口圧力を能動的に増加させることを意味する。
【0019】
第一圧縮機エレメントの入口圧力を低減する前に、プロセスAには、例えばこの第一圧縮機エレメントの圧力側の放風弁を開くことにより、出口圧力を低減するステップも含まれるのが好ましい。
【0020】
本発明の好適な態様によれば、第一圧縮機エレメントの入口圧力を適切なレベルにした後、プロセスBには、例えばこの第一圧縮機エレメントの圧力側の放風弁を閉じることにより、出口圧力を増加させるステップも含まれる。
【0021】
本発明による方法の利点は、全負荷と部分負荷もしくは0負荷との間、および/またはその逆の移行期間のエネルギー損失が、圧縮機エレメントの速度を制御する既存の方法と比較して、限定的であることである。
【0022】
例えば、プロセスAを経る際には、第一圧縮機エレメントがより少ない力を吸収する。あるいは、このプロセスAの間に圧縮機エレメントをあるトルクで駆動したときに、第一圧縮機エレメントの速度が、全負荷から部分負荷または0負荷への移行の間によりゆっくりと減少する。具体的場合には、第一圧縮機エレメントが、自らの空気抵抗のみにより失速するように、この駆動トルクが0に等しくなりうる。
【0023】
ある時間経過後に第一圧縮機エレメントが全負荷で作動するコマンドを再度受け取らなければ、速度は設定最低速度で安定する。
【0024】
このようなプロセスAを経る際には、入口圧力が低減され第一圧縮機エレメントがより長時間高速のままであるため、この時間スパンの間の全負荷への移行に必要とされるエネルギーはわずかである。入口圧力の低減の追加的利点は、設定最低速度が公称速度に比較的近く、最低トルクを受けるため、多くのエネルギーを必要とせずに最小限の必要エネルギーで行われうることである。また、圧縮機エレメントが最低速度で動作した場合に、既存の方法と比較して全負荷への移行に必要なエネルギーがより少ない。
【0025】
加えて、プロセスBを経る際には、一部負荷または0負荷から全負荷へ切り替える際に圧縮機エレメントを公称速度にするのにより少ないエネルギーが使用される。
【0026】
あるいは、同じ利用可能なモータトルクで、またはあるトルク制御を伴って、全負荷への移行に必要な合計必要時間が低減でき、これはエネルギー面の利点を意味する。加えて、圧縮機が圧縮空気の必要量の変化に対してより速やかに反応することが可能となる。このようにしてユーザは、ある利用可能な設備で、より正確でより効率的な圧力制御を実現できる。この具体的場合は、駆動トルクがモータにより供給される最大トルクに等しく、圧縮機エレメントが可能な限り速やかに公称速度にされるものでありうる。
【0027】
本発明の特性をより良く示すために、本発明による好適な方法を、添付の図面を参照しながら、限定的性質を伴わずに例として以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の方法により制御される圧縮機を概略的に示す。
【0029】
図1は、この非限定的な例においては圧縮機エレメント2を一つだけ、この場合にはターボタイプのものを含む、圧縮機1を示しており、この圧縮機エレメントは、一以上の圧縮ガスユーザが接続されている圧力ネットワーク3に、圧縮ガスを供給する。
【0030】
圧縮機エレメント2の吸入側の入口管は、入口弁5を有し、圧縮機エレメント2の圧縮されるガスの入口に接続している。
【0031】
この場合の入口弁5は、完全に閉じた状態でも、ある最低ガス流量が圧縮機エレメント2に通ることを可能にするよう構成されるが、これに限られない。このような入口弁5は、図面に示されない別形によれば、例えば、閉止弁が完全に閉じた状態でこの閉止弁を横断する流れを可能にするバイパス管が横断している閉止弁の形で入口弁5を構成することにより実現されうるが、これに限られない。あるいは、このような入口弁5は、例えばこの弁体および/またはこの弁座を通して流通開口部を提供することにより、閉じた状態で弁座を通る通路を完全には閉じない弁体を含みうる。
【0032】
圧縮機エレメント2の圧縮ガスの出口は、逆止弁7を伴う出口管6を介して、圧力ネットワーク3に接続されている。上述の逆止弁7は、従来の方法で構成でき、ばねを用いて弁座に対して押圧される弁体から成りうるが、本発明によれば、上述の逆止弁7が、空気式または電気駆動式の弁さらには三方弁等、別のタイプの弁として構成されることは除外されない。
【0033】
本発明によれば、圧縮機エレメント2が、ターボタイプ以外の別のタイプの圧縮機エレメントの形で、例えば速度制御されたスクリュ圧縮機エレメントの形で構成されることは、除外されない。
【0034】
圧縮機エレメント2の出口と逆止弁7との間に、放風弁9を含む分岐8があり、その上にノイズダンパ10が取り付けられるのが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。逆止弁7が三方弁で代用される上述の場合には、この三方弁は放風弁9にも代用されうる。
【0035】
このような場合には、圧縮機エレメント2は、制御ユニット13を有するモータ12の軸11により直接駆動され、この場合それは直接駆動圧縮機エレメントと呼ばれる。
【0036】
本発明の方法による圧縮機1の駆動は非常に単純であり、以下の通りである。
【0037】
圧縮機エレメント2が、例えば空気であるがこれに限られないガスを、入口管4を通して引き込む。この空気が、圧縮機エレメント2内で周知の方法で圧縮されて、出口管6を介して圧力ネットワーク3に供給される。
【0038】
全負荷では、圧縮機エレメント2が、ある流量の圧縮空気をその出口に供給する。このモードでは、圧縮機エレメント2が、公称速度またはある公称速度範囲内で作動し、入口弁5が開いており、放風弁9は閉じている。
【0039】
圧縮機エレメント2は、全負荷で圧縮機エレメント2が最適に機能する、言い換えると、供給される空気量あたりのエネルギー消費、すなわちエネルギー原単位が、最も低くなるように設計され、公称速度で駆動される。当然ながら目標は、圧縮機エレメント2を、常に上述の最適作動領域で作動させることである。
【0040】
圧力ネットワーク3から圧縮空気が取り除かれない場合には、圧縮機エレメント2が依然として全負荷モードで作動しており、継続的に圧縮空気を供給するため、上述のネットワーク内の圧力が増加する。圧力ネットワーク3内の圧力が上昇する。本発明によれば、全負荷から0負荷へのこの移行の間に、圧縮機エレメント2の出口圧力を低減するために放風弁9を開くステップを好ましくは含む、プロセスAを経ることができる。その結果、圧縮空気が、大気中に放風される。放風弁9は、放風されたガスを再循環させるためのリザーバに通じていてもよい。
【0041】
放風弁9を開くことにより、圧縮機エレメント2の出口の圧力が低減されるため、上述のように制御弁、例えば三方弁などの別のタイプの弁から成ってもよい逆止弁7が閉じられ、圧縮機エレメント2が圧力ネットワーク3から隔離される。
【0042】
そして、プロセスAを経る際には、圧縮機エレメント2の入口の圧力が低減されるが、これは例えば入口弁5を閉じることにより実現される。「入口弁を閉じる」という用語は、本明細書において、この入口弁が有効に完全に閉じられることを必ずしも意味しない。実際には、この入口弁5を通る小量の流れがまだ可能であるように、入口弁5が完全に閉じた状態で100%閉ざされていなくてよい。この低減された入口圧力で、例えば低減されたトルクを供給するモータ12により、圧縮機エレメント2の速度が低減される。
【0043】
本発明によれば、速度の低減は、例えば周波数制御を伴うVSDモータを使用し、これを適切な方法で制御することによっても実現されうる。
【0044】
本発明による速度を低減させるステップは、上述の入口圧力低減のステップの後に、もしくはこの入口圧力低減と共に、またはこの入口圧力低減と一部同時および一部後に、行われうる。
【0045】
入口圧力の低減の結果、圧縮に必要な電力が大きく減少し、圧縮機エレメント2が、トルクが低減したときにもより長い間高速でとどまる。
【0046】
圧縮機エレメント2の速度が低下すると、引き込まれる質量流量も低下し、その結果入口弁5における圧力降下が低下する。速度が低下すると同時に弁5をさらに閉じることにより、上述の弁5における圧力降下が増加されうる。
【0047】
入口弁5をさらに閉じることにより、この弁5における圧力降下を増加させることは、スクリュタイプの圧縮機が使用される場合に適切である。このような場合には、代替的に、入口弁5が一度で最終的な閉じた状態にされてもよい。
【0048】
遠心式圧縮機が使用される場合には、弁を同じ状態に保ち、入口圧力を再び上昇させることが選択されうる。周知のように、遠心式圧縮機は、低速度では有意な圧力を実現できない。
【0049】
もし最終的に、超低速度の無負荷状態に達することが必要である場合には、かかる圧縮機エレメントの入口および出口圧力が互いに近くなければならないことを意味する。
【0050】
圧力ネットワーク3の圧縮空気の除去が増加しない場合には、速度は、例えば設定された低減されたトルクに依存しうる値で究極的に安定する。
【0051】
圧力ネットワーク3の圧縮空気の除去が増加した場合には、0負荷から部分負荷または全負荷への移行があることを意味するが、本発明によれば、この移行状態の間にプロセスBを経ることができ、該プロセスでは、例えばモータトルクの増加により、速度が公称速度または公称速度範囲に再び増加され、その後圧縮機エレメント2の入口圧力が、例えば入口弁5を開くことにより、好ましくは入口圧力が公称値に達するまで、制御された様式で増加され、圧縮機エレメント2の出口圧力が増加されるのが好ましい。
【0052】
ここでも、モータの周波数制御により速度制御が実現されてもよい。
【0053】
この場合、放風弁9を閉じることにより出口圧力が高められる。逆止弁7が開き、このようにして、圧縮機エレメント2が再び圧力ネットワーク3に圧縮空気を供給できる。
【0054】
その具体例は、入口弁5が最初(ほぼ)閉じている状況である。最初の速度が低い場合には、入口弁5における圧力降下がほぼ0であることを意味し(弁を通る質量流量が非常に低いため)、したがって、第一圧縮機エレメントの入口圧力は、(入口弁5が大気入口に取り付けられていると仮定すると)大気圧にほぼ等しくなる。同じ弁の状態で速度を増加させることにより、入口弁5における圧力降下が増加する結果、入口圧力がまず低下する。公称速度に達すると、入口弁5が開かれて入口圧力が再び大気圧に上昇させられればよく、それから放風弁が閉じられて、出口圧力が上昇して逆止弁が開く。この移行の間に、入口圧力は等しく低い。
【0055】
全負荷から部分負荷へ、またはその逆への移行時には、空気を圧縮するためにトルクが用いられない。これらの移行段階の間には、圧縮機エレメント2が低減した入口圧力で作動するように、入口弁5が閉じられる。
【0056】
その結果、比較的高い最低安定速度が維持されうることが明らかであり、最低トルクにより速度が再び公称速度に増加され、または同じトルクにより公称速度へのより速い加速が実現されうる。
【0057】
圧縮機エレメント2の速度が、モータ12のトルクを制御することにより変えられる場合には、全負荷から0負荷への移行の間にトルクが0に等しく、0負荷から全負荷への移行の間には、圧縮機エレメント2が最大モータトルクにより駆動されるように、構成されるのが好ましい。
【0058】
このようにして、全負荷または部分負荷から0負荷へ、およびその逆への間の移行期間中のエネルギー損失が制限されうる。これは、本発明による方法の最も重要な利点でもある。
【0059】
さらに、記載される本発明は、例えば比較的高価な入口案内羽根またはディフューザ案内羽根と比較して、比較的コスト面で有利である。
【0060】
全負荷から部分負荷もしくは0負荷へ、またはその逆への移行の際の上述のステップは、上述の順序で、または同時もしくは部分的に同時に、行われうる。
【0061】
図1においては、入口弁5および放風弁9が、二つの別々の構成要素として示されている。放風弁9および入口弁5を一つの構成要素に統合することも可能である。
【0062】
別の実施形態においては、放風弁9および入口弁5が、制御も一緒にできるように、機械的および/もしくは電気的に、または別の方法で、連結されうる。
【0063】
上述の実施例においては、空気供給が停止されるように、圧縮機エレメント2の入口管4内にある入口弁5を閉じることにより、入口圧力が調節される。しかし、上述の入口の圧力変化は、本発明の範囲を逸脱することなく、他の方法によりもたらされてもよい。例えば、入口圧力が大気圧より大きい場合には、大気中にガスを放風する放風弁が開かれうる。その結果、入口圧力も下がることになる。
【0064】
したがって、
図2に示される状況では、速度制御可能なスクリュ圧縮機エレメントの形で構成されるのが好ましいが必ずしもそうである必要はない、当該の圧縮機エレメント2Bから上流の第二圧縮機エレメント2Aの作動モードを調節することにより、上述の圧力減少が実現される。あるいはこれは、放風弁または入口弁などを備えた、スクリュ圧縮機エレメントでありうる。
【0065】
多段圧縮機では、圧縮機エレメントの出口圧力を、当該の圧縮機エレメントから下流の圧縮機エレメントの作動モードを調節することにより変えることも可能である。あるいは、当該の圧縮機エレメントから下流の圧縮機エレメントが、速度制御可能なスクリュ圧縮機エレメントでありうる。
【0066】
本発明による方法は、同一のモータにより直接または他の方法で駆動される少なくとも二つの圧縮機エレメントを有する圧縮機にも適用されうる。
【0067】
本発明は、例として記載され図面に示されている実施形態に決して限定されず、このような方法が、各種の別形により本発明の範囲内で実現されうる。