特許第5715245号(P5715245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5715245半導体製造装置部品の洗浄装置および気相成長装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715245
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】半導体製造装置部品の洗浄装置および気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150416BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20150416BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   H01L21/304 645Z
   H01L21/205
   C23C16/44 J
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-514961(P2013-514961)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2012001829
(87)【国際公開番号】WO2012157161
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2013年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-112426(P2011-112426)
(32)【優先日】2011年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-162261(P2011-162261)
(32)【優先日】2011年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】水田 正志
(72)【発明者】
【氏名】矢口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】錦織 豊
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−109928(JP,A)
【文献】 特開2009−124050(JP,A)
【文献】 特開2009−188198(JP,A)
【文献】 特開昭64−065023(JP,A)
【文献】 特開2010−016200(JP,A)
【文献】 特開2002−191901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/205
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品の洗浄装置であって、
前記半導体製造装置部品を保持する部品保持部と、
前記窒化物半導体と反応するハロゲン含有ガスを導入するガス導入管と、
前記窒化物半導体と前記ハロゲン含有ガスとの反応生成物を捕捉する捕捉手段と、
前記反応生成物を排出するガス排出管と、
洗浄処理部と、
前記捕捉手段を冷却するための冷却部と、
を備え、
前記洗浄処理部の内部に前記部品保持部が配置され、前記冷却部の内部に前記捕捉手段が配置されており、
前記冷却部が、前記捕捉手段内部の温度を調節する機能を備え、
前記捕捉手段内部の温度を調節する機能が、低温にすることによって前記反応生成物を捕捉した後、高温に切り替えることによって、捕捉した前記反応生成物を再び蒸気にすることができる機能である半導体製造装置部品の洗浄装置。
【請求項2】
請求項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記捕捉手段が、冷却パネルである、半導体製造装置部品の洗浄装置。
【請求項3】
請求項またはに記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記捕捉手段が、前記反応生成物と反応しない材料からなる、半導体製造装置部品の洗浄装置。
【請求項4】
請求項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記捕捉手段が、石英からなる、半導体製造装置部品の洗浄装置。
【請求項5】
請求項乃至いずれか一項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記反応生成物からガリウム化合物を回収する回収手段をさらに備える、半導体製造装置部品の洗浄装置。
【請求項6】
請求項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記回収手段では、NHと前記反応生成物とを反応させることにより、前記ガリウム化合物を回収する、半導体製造装置部品の洗浄装置。
【請求項7】
請求項乃至いずれか一項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記ガス導入管と前記ガス排出管とを閉じて、前記ハロゲン含有ガスを装置内に保持して使用する、半導体製造装置部品の洗浄装置。
【請求項8】
請求項乃至いずれか一項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記部品保持部に、前記半導体製造装置部品の表面全体が処理されるように、前記半導体製造装置部品を引っ掛けて保持するための引っ掛け部が形成されている、半導体製造装置部品の洗浄装置。
【請求項9】
ガリウムを含有する第一原料ガスと、アンモニアを含有する第二原料ガスとを、反応槽内の基板に対して供給し、前記基板上に一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体を形成する気相成長装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
ハロゲン含有ガスを導入するガス導入管と、
前記窒化物半導体と前記ハロゲン含有ガスとの反応生成物を捕捉する捕捉手段と、
前記反応生成物を排出するガス排出管と、
前記反応槽と、
前記捕捉手段を冷却するための冷却部と、
を備え、
前記反応槽の内部に前記基板保持部が配置され、前記冷却部の内部に前記捕捉手段が配置されており、
前記冷却部が、前記捕捉手段内部の温度を調節する機能を備え、
前記捕捉手段内部の温度を調節する機能が、低温にすることによって前記反応生成物を捕捉した後、高温に切り替えることによって、捕捉した前記反応生成物を再び蒸気にすることができる機能である気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体製造装置部品の洗浄装置および気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体製造装置( 以下、「半導体製造装置」という。)では、シリコンウエハー上にGaN(窒化ガリウム)やAlGaN(窒化ガリウムアルミニウム)などの窒化物を堆積させて半導体を製造する。この過程で、半導体製造装置内のウエハー上に堆積すべきGaNなどの半導体薄膜が、ウエハーを保持するウエハートレーやガス流路など、ウエハー以外の各種部品に付着してしまう。
ウエハー以外の部品に付着したGaNなどは、不要な汚染物となり、窒化物半導体を製造する上で障害になるため、汚染部品を洗浄して上記の窒化物を除去する必要がある。
【0003】
一般的には、GaNやAlGaNなどの窒化物を、塩素系ガスを主成分とする洗浄ガスと反応させて、半導体製造装置部品に付着した窒化物を除去している。
【0004】
特許文献1(特開2006−332201号公報)では、窒化物半導体製造装置内の汚染された部品を、500℃以上1000℃以下の温度において、塩素系ガスを主成分とする洗浄ガスと接触させる洗浄方法が記載されている。この文献では、汚染された部品の窒化物は洗浄ガス中の塩素系ガスと反応する。生成する反応生成物は500℃以上の温度で気化して除去されるとされている。また、この方法は1000℃以上の高温にする必要がないので、ウエハートレーの熱変形がおこらないとされている。
【0005】
また、特許文献2(特開2010−245376号公報)では、洗浄ガス導入管が反応室内の下部に配置されている洗浄装置が記載されている。洗浄ガス導入管が反応室内の下部に配置されているので、反応室内に導入された洗浄ガスは、遮熱部材に衝突して分流することがない。そのため、洗浄ガスを汚染部品の洗浄に効率良く利用することができるとされている。
【0006】
また、特許文献3(特開2010−212400号公報)では、洗浄ガス導入管と排出ガス排出管とを有する反応管の両端開口部を閉塞する封止キャップの封止面側に、封止面との間に空間を有するように近接して設けられた防着板を備える、窒化物半導体装置部品の洗浄装置が記載されている。防着板により、封止キャップの内壁への反応生成物の付着を抑制することができる。そのため、洗浄後に反応管を開放して洗浄した部品を取り出す際に、この反応生成物と空気中の水分とが反応して有毒なガスが発生することがなく、作業者は安全に洗浄作業ができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−332201号公報
【特許文献2】特開2010−245376号公報
【特許文献3】特開2010−212400号公報
【特許文献4】特開2007−109928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3のような方法では、GaNやAlGaNなどの窒化物と塩素系ガスとの反応生成物が、半導体製造装置部品や洗浄装置内に付着する場合があり、洗浄操作中に反応生成物の除去を連続的におこなう必要があった。このとき、未使用洗浄ガスの一部も反応生成物とともに除去されることになるため、洗浄ガスを連続的に装置内に供給する必要があった。そのため、汚染物を除去するのに必要な洗浄ガスの使用量が多かった。
【0009】
一方、特許文献4(特開2007−109928号公報)には、窒化物半導体製造装置内の汚染された部品を、塩素系ガスを主成分とする第1の洗浄ガスと接触させて汚染物質を除去し、第2の洗浄ガスと接触させて部品に残留している塩素系物質を除去することを特徴とする窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法が記載されている。そして、特許文献4には、第1の洗浄ガスとの接触と第2の洗浄ガスとの接触がバッチ処理(封じ切り)方式にておこなわれることが記載されている。
この文献では、封じ切り方式の方が通気処理(気流)方式よりも塩素ガスの使用量を低減できることが示されている。
【0010】
本発明者らは、特許文献4に記載の方法にしたがって、封じ切り方式で半導体製造装置部品の洗浄を試みてみたところ、たしかに気流方式よりも塩素ガスの使用量をある程度低減することができた。しかしながら、洗浄効率はまだまだ低く、さらなる改善の余地があることを確認した。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、洗浄ガスの使用量を低減でき、洗浄効率に優れた、半導体製造装置部品の洗浄方法および半導体製造装置部品の洗浄装置を提供するものである。
【0012】
また、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、歩留まりに優れた気相成長装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
また、本発明によれば、
一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品の洗浄装置であって、
上記半導体製造装置部品を保持する部品保持部と、
上記窒化物半導体と反応するハロゲン含有ガスを導入するガス導入管と、
上記窒化物半導体と上記ハロゲン含有ガスとの反応生成物を捕捉する捕捉手段と、
上記反応生成物を排出するガス排出管と
を備えた、半導体製造装置部品の洗浄装置が提供される。
【0016】
この発明によれば、洗浄装置に反応生成物を捕捉する捕捉手段を設けることによって、反応生成物が捕捉手段に捕捉されるため、反応生成物が半導体製造装置部品や洗浄装置内の望ましくない部分に付着することを抑制できる。したがって、洗浄ガスの導入と反応生成物の除去を連続的におこなう必要がなく、付着した窒化物半導体を除去するのに必要な洗浄ガスの使用量を低減できる。
【0017】
さらに、本発明によれば、
ガリウムを含有する第一原料ガスと、アンモニアを含有する第二原料ガスとを、反応槽内の基板に対して供給し、上記基板上に一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体を成長させる気相成長装置であって、
上記基板を保持する基板保持部と、
ハロゲン含有ガスを導入するガス導入管と、
上記窒化物半導体と上記ハロゲン含有ガスとの反応生成物を捕捉する捕捉手段と、
上記反応生成物を排出するガス排出管と
を備えた、気相成長装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、洗浄ガスの使用量を低減でき、洗浄効率に優れた、半導体製造装置部品の洗浄方法および半導体製造装置部品の洗浄装置が提供される。
【0019】
さらに本発明によれば、歩留まりに優れた気相成長装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
図1】第一の実施形態における洗浄装置の構成を示す断面図である。
図2】第一の実施形態における洗浄装置の構成を示す断面図である。
図3】第二の実施形態における洗浄装置の構成を示す断面図である。
図4】第二の実施形態における洗浄装置の構成を示す断面図である。
図5】第二の実施形態における洗浄装置の構成の一部を示す断面図である。
図6】第二の実施形態における洗浄装置の構成の一部を示す断面図である。
図7】第三の実施形態における気相成長装置の構成を示す断面図である。
図8】第三の実施形態における気相成長装置の構成を示す断面図である。
図9】第三の実施形態における気相成長装置の構成の一部を示す断面図である。
図10】第三の実施形態における気相成長装置の構成の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0022】
(第一の実施形態)
<洗浄装置>
以下、第一の実施形態における半導体製造装置部品の洗浄装置100について説明するが、第一の実施形態における洗浄装置100はこれらに限定されるものではない。
【0023】
図1は、第一の実施形態における洗浄装置の構成を示す断面図である。洗浄装置100は、一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品101を保持する部品保持部102と、部品保持部102を収納する反応槽103と、窒化物半導体と反応するハロゲン含有ガスを導入するガス導入管104と、反応槽103で生じた反応生成物を排出するガス排出管105とから構成されている。
また、必要に応じて、反応槽103の周囲には、反応槽103内を加熱する加熱装置106と、反応槽103の内部の圧力をモニターする圧力計108とをそれぞれ設けることができる。
【0024】
反応槽103の材質は、とくに限定されないが、例えば石英などの耐熱性材料により形成されている。反応槽103の内部には、半導体製造装置部品101を保持する部品保持部102が設けられている。
また、反応槽103の形状や大きさは、とくに限定されないが、洗浄をおこなう半導体製造装置部品101の大きさや処理量によって適宜決められる。
【0025】
部品保持部102は 半導体製造装置部品101を保持するための部材であり、例えばカーボンや石英などの耐熱性材料により形成されている。この部品保持部102は 半導体製造装置部品101を支持することができ、かつその状態を保持できるように構成されている。このとき、半導体製造装置部品101の表面全体が処理されるように保持されることが好ましい。
【0026】
半導体製造装置部品101を保持する構成は、とくに限定されないが、例えば部品保持部102の表面に半導体製造装置部品101の一部分を挿入できる溝を設けておく構成が挙げられる。半導体製造装置部品101をその溝へ差し込むことによって保持できる。
また、部品保持部102には、半導体製造装置部品101を引っ掛けて保持するための引っ掛け部が形成されている構成でもよい。この引っ掛け型の部品保持部102は、半導体製造装置部品101を引っ掛けて保持するため、半導体製造装置部品101と部品保持部102との接触面積を最小限にすることができ、半導体製造装置部品101の未洗浄部分を最小にすることができる。
【0027】
また、部品保持部102には、複数の貫通孔が形成されていてもよい。複数の貫通孔が形成されていると、下方から供給されるハロゲン含有ガスが上方向へ流れやすくなる。これにより、部品保持部102に保持された半導体製造装置部品101にハロゲン含有ガスが接触しやすくなり、部品保持部102の洗浄処理がより一層効率的におこなえる。なお、部品保持部102が半導体製造装置部品101を保持できる強度を維持できるものであれば、貫通孔の形状はとくに限定されない。例えば、貫通孔の形状は四角形や丸形でもよい。また、部品保持部102に貫通孔を形成する以外に、部品保持部102を格子状に形成してもよい。
【0028】
ハロゲン含有ガスは、ハロゲン含有ガスが充填された容器109から、ガス導入管104を通って反応槽103の内部に導入される。また、必要に応じて、ハロゲン含有ガスの導入とともに、不活性ガスが充填された容器110から反応槽103の内部に不活性ガスを導入し、ハロゲン含有ガスの濃度を調節することもできる。このとき、ハロゲン含有ガスおよび不活性ガスの導入量は、ガス導入弁111によって調節できる。
【0029】
ガス排出管105は、ガス排出弁112を介して真空ポンプ113に接続されており、これにより反応槽103の内部を減圧状態とすることができる。さらに、ガス排出管105および真空ポンプ113は、必要に応じて、図示しない排ガス除害処理装置に接続でき、反応槽103から排出される反応生成物を無害化させて、大気中に排出することができる。
【0030】
また、図1ではガス導入管104およびガス排出管105は、反応槽103の下部に接続している記載を示したが、反応槽103の側部や上部でもよく、接続部位はとくに限定されない。
【0031】
加熱装置106は、とくに限定されないが、例えば反応槽103の内部を加熱できる加熱手段と、この加熱手段の出力を調整して、反応槽103の内部を一定の温度に保持できる温度調整器とから構成される。加熱手段は、とくに限定されないが、発熱線、ランプ加熱など公知の加熱手段が使用でき、半導体製造装置部品101を加熱できるものなら何でもよい。
【0032】
また、図2に示すように、洗浄装置100は、排出される反応生成物から窒化物半導体を回収する回収手段114を、さらに備えていてもよい。回収手段114は、例えばガス排出管105に接続された回収部115と、NH(アンモニア)ガスが充填された容器116とから構成されており、排出された反応生成物が回収部115の内部に捕捉されるようになっている。さらに、回収部115は容器116と接続されており、これにより回収部115の内部にNHガスを導入することができる。
【0033】
回収部115は、とくに限定されないが、例えばカーボン、石英、ステンレス鋼、ハステロイ、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ珪素など、耐熱性およびハロゲン含有ガスへの耐食性を有する材料から形成されている。また、回収部115には、例えば、反応生成物を導入できる導入口と、NHガスを導入できる導入口と、排ガスを排出できる排出口がそれぞれ設けられている。
【0034】
半導体製造装置部品101は、とくに限定されないが、窒化物半導体を製造する装置であるMOCVD装置などの、付着物による汚染が激しい部品を適用することができる。とくに、サセプタやウエハートレーなどの反応炉周辺の部品に対して効果的である。
【0035】
<洗浄方法>
つぎに、洗浄装置100を用いて、窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品101を洗浄する方法について説明する。第一の実施形態における半導体製造装置部品101の洗浄方法は、窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品101を、反応槽103の内部に配置する第一工程と、反応槽103の内部を減圧状態とした後、ガス導入管104からハロゲン含有ガスを導入する第二工程とをおこない、その後、ハロゲン含有ガスを反応槽103の内部に保持し、半導体製造装置部品101に付着した窒化物半導体を除去する第三工程とを有する。ここで、第三工程での反応槽103の内部の圧力は、10kPa以上90kPa以下である。
【0036】
以下、各工程について詳細に説明する。
(第一工程)
はじめに、半導体装置内の窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品101を取り外して、反応槽103内の部品保持部102に配置する。このとき、配置する半導体製造装置部品101の数は、とくに限定されないが、1部品であってもよいし、1部品以上であってもよい。
【0037】
つぎに、反応槽103の内部を、加熱装置106によって後述する所望の温度まで加熱し、さらに真空ポンプ113によって減圧状態とする。ここで、反応槽103の内部の圧力は1kPa以下が好ましく、とくに0.1kPa以下が好ましい。上記上限値以下とすると、導入するハロゲン含有ガスの量を増やすことができ、同時に望ましくない残留ガスによる副反応を抑制して、反応生成物をより一層効率良く除去できる。
ここで、反応槽103の内部を減圧状態にしてから加熱してもよく、加熱操作と減圧操作を同時におこなってもよい。最終的に上記の温度および圧力になればよく、加熱操作と減圧操作の順番はとくに限定されない。
【0038】
(第二工程)
反応槽103の内部が所望の圧力になった後、ガス導入弁111を開いて、ハロゲン含有ガスを反応槽103の内部に導入する。
【0039】
ハロゲン含有ガスは、例えば、Cl、HCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、BCl、CHCl、CHCl、CHClなどの分子内に塩素を含む化合物の1種または2種以上の混合物が用いられる。これらの中では、価格、反応性などのバランスからClがとくに好ましい。
【0040】
また、必要に応じてハロゲン含有ガスの導入とともに、容器110から不活性ガスを反応槽103の内部に導入してもよい。不活性ガスの導入により、ハロゲン含有ガスの濃度を調節することができる。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなどのハロゲン含有ガスと反応しない任意のガスの1種または2種以上の混合ガスを用いることができる。
【0041】
なお、上記の不活性ガスを導入したときの反応槽103内のハロゲン含有ガス濃度は、とくに限定されないが、濃度が高すぎると半導体製造装置部品自体が腐食する場合があるため、部品の種類によって適宜設定される。
【0042】
不活性ガスを導入したときの反応槽103内のハロゲン含有ガス濃度は、とくに限定されないが、5体積%以上が好ましく、とくに10体積%以上が好ましい。上記下限値以上とすると、窒化物半導体とハロゲン含有ガスとの反応速度が速くなり、半導体製造装置部品に付着した窒化物半導体をより一層効率良く除去できる。
ハロゲン含有ガス濃度は、とくに限定されないが、100体積%以下が好ましく、とくに80体積%以下が好ましい。上記上限値以下とすると、ハロゲン含有ガス量が少なくて済み、また装置構成部品の腐食を抑えることができる。
【0043】
(第三工程)
反応槽103の内部が所望の温度、圧力になった後、ハロゲン含有ガスを反応槽103の内部に一定の時間保持する。このとき、半導体製造装置部品101に付着した窒化物半導体はハロゲン含有ガスと反応し、ハロゲン化ガリウムなどの反応生成物が生成される。この反応生成物は直ちに蒸発して蒸気となり、反応槽103の内部を漂う。
【0044】
第三工程において反応槽103の内部圧力は、10kPa以上であり、好ましくは12kPa以上であり、さらに好ましくは15kPa以上である。内部圧力を上記下限値以上とすると、窒化物半導体とハロゲン含有ガスとの反応速度が速くなり、半導体製造装置部品に付着した窒化物半導体を効率良く除去できる。
また、内部圧力は、90kPa以下であり、好ましくは85kPa以下であり、さらに好ましくは80kPa以下である。内部圧力を上記上限値以下とすると、反応生成物の平均自由工程を長くできるため、反応生成物の拡散効率が増し、窒化物とハロゲン含有ガスとの反応効率を上げることができる。
したがって、洗浄ガスの導入と反応生成物の除去を連続的におこなう必要がなく、付着した窒化物半導体を除去するのに必要な洗浄ガスの使用量を低減できる。
【0045】
第三工程における反応槽103の内部温度は、とくに限定されないが、500℃以上が好ましく、とくに750℃以上が好ましい。内部温度を上記下限値以上とすると、反応生成物の揮発速度が速くなり、半導体製造装置部品に付着した窒化物半導体をより一層効率良く除去できる。
また、内部温度は、とくに限定されないが、1000℃以下が好ましく、とくに800℃以下が好ましい。内部温度を上記上限値以下とすると、半導体製造装置部品101の熱変形をより一層防止することができる。
【0046】
第三工程におけるハロゲン含有ガスの保持時間は、とくに限定されないが、反応槽103の大きさや半導体製造装置部品101の処理量などによって適宜設定される。
【0047】
また、第三工程では、ガス導入弁111およびガス排出弁112は密閉性を保つために、完全に閉じているのが好ましいが、閉じていなくてもよい。例えば、反応槽103の内部圧力が上記の圧力範囲を満たすように、ガス導入弁111およびガス排出弁112を調節してもよい。
【0048】
(第四工程)
また、第一の実施形態における半導体製造装置部品101の洗浄方法は、窒化物半導体とハロゲン含有ガスとの反応生成物を除去する第四工程をさらにおこなうのが好ましい。具体的には、ハロゲン含有ガスを反応槽103の内部に一定時間保持後、ガス排出弁112を開いて、ガス排出管105から反応生成物の蒸気を除去する。
【0049】
このとき、ガス導入管104を開いて、容器110から反応槽103に不活性ガスを導入し、反応槽103の内部を大気圧に戻した後、反応生成物の蒸気を排出するのがさらに好ましい。不活性ガスを導入することにより、反応生成物の蒸気が不活性ガスにより押し出され、蒸気をより一層効率良く排出することができる。このとき使用する不活性ガスは、とくに限定されないが、前述の不活性ガスを使用してもよいし、他のガスを使用してもよい。
【0050】
また、第一の実施形態における半導体製造装置部品101の洗浄方法は、上記の第二工程から第四工程までを2回以上おこなうのが好ましい。2回以上おこなうと、半導体製造装置部品101の表面がさらに活性化され、窒化物とハロゲン含有ガスとの反応効率をより一層上げることができる。繰り返し回数は、とくに限定されないが、反応槽103の大きさや半導体製造装置部品101の処理量などによって適宜設定される。
【0051】
(第五工程)
また、第一の実施形態における半導体製造装置部品101の洗浄方法は、反応生成物からガリウム化合物を回収する第五工程をさらにおこなうのが好ましい。回収方法は、とくに限定されないが、例えば図2に示すように、ガス排出管105から排出された反応生成物の蒸気を回収部115に捕捉する。その後、容器116から回収部115にNHガスを導入し、反応生成物とNHとを反応させ、ガリウム化合物などの固体を生成させる。この第五工程をおこなうことにより、有害な排ガスの量を低減することができる。
【0052】
以上、図面を参照して本発明の第一の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0053】
第一の実施形態では、真空ポンプ113がガス排出管105に接続されている場合を示したが、他の部位に真空ポンプ113を接続する構成を採用することもできる。
【0054】
また、第一の実施形態では、半導体製造装置部品101を洗浄する場合を示したが、半導体製造装置本体を反応槽103の内部に配置して洗浄してもよい。ただし、この場合は、半導体製造装置自体が損傷しないように注意する必要がある。
【0055】
また、第四工程の後に、水素、メタン、エタンなどの分子内に水素を含む水素系ガスと、これを希釈するアルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスからなる混合ガスを導入し、部品に付着して残留しているハロゲン化合物を除去する工程をさらにおこなう構成を採用することもできる。
【0056】
(第二の実施形態)
つぎに、第2の実施形態に係る洗浄装置100について説明する。第2の実施形態は、窒化物半導体とハロゲン含有ガスとの反応生成物を捕捉する捕捉手段117を備えている以外は、基本的には第1の実施形態に係る洗浄装置100と同様である。そのため、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0057】
<洗浄装置>
図3は、第二の実施形態における洗浄装置の構成を示す断面図である。洗浄装置100は、一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品101を保持する部品保持部102と、部品保持部102を収納する反応槽103と、窒化物半導体と反応するハロゲン含有ガスを導入するガス導入管104と、窒化物半導体とハロゲン含有ガスとの反応生成物を捕捉する捕捉手段117と、反応生成物を排出するガス排出管105とから構成されている。
【0058】
洗浄装置100は、図4に示すように、洗浄処理部118と、捕捉手段117を冷却するための冷却部119とをさらに備え、洗浄処理部118の内部に部品保持部102が配置され、冷却部119の内部に捕捉手段117が配置されている構成を取ることがより好ましい。
こうした構成を取ることにより、半導体製造装置部品の洗浄処理と反応生成物の捕捉を明確に分けることができる。さらに、冷却部119により、捕捉手段117に捕捉された反応生成物の蒸気を冷却し、反応生成物を析出させることができるため、反応生成物が半導体製造装置部品や洗浄装置内の望ましくない部分に付着することをより一層抑制でき、反応生成物をより一層効率よく捕捉することができる。
【0059】
また、捕捉手段117は、とくに限定されないが、冷却パネルが好ましい。冷却パネルを用いることにより、反応生成物の蒸気をより一層効率よく冷却できるため、反応生成物をより一層効率よく捕捉することができる。
【0060】
また、捕捉手段117は、とくに限定されないが、例えばカーボン、石英、ステンレス鋼、ハステロイ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素など、反応生成物と反応しない材料から形成されているのが好ましい。とくに石英が、耐熱性に優れることから好ましい。ここでの反応とは、腐食などの不可逆的な反応をいう。ただ単に析出している場合や吸着している場合は含まない。
【0061】
また、冷却部119は、捕捉手段117内部の温度を調節する機能を備えていることが好ましい。低温にすることによって反応生成物を捕捉した後、高温に切り替えることによって、捕捉した反応生成物を再び蒸気にすることができる。そのため、ガス排出管105から反応生成物をより一層効率よく排出することができる。
【0062】
上述の捕捉手段117内部の温度を調節する機能は、例えば、温度制御流体循環器120などが挙げられる。温度制御流体循環器120から例えば水を冷却部119に流すことによって、冷却部119を低温にすることができる。また、温度制御流体循環器120から例えば油を流すことによって、冷却部119を高温にすることができる。
【0063】
冷却部119を冷却する水の温度は0℃以上40℃以下が好ましい。また、冷却部119を温める油の温度は80℃以上200℃以下が好ましい。
【0064】
ガス導入管104の接続部位は、図3では反応槽103の上部に接続している記載を示したが、反応槽103の側部や下部でもよく、接続部位はとくに限定されない。
また、ガス排出管105の接続部位は、とくに限定されないが、捕捉手段117に接続されていることが好ましい。こうした接続により、捕捉手段117に捕捉された反応生成物を効率良く排出することができる。
【0065】
また、図5に示すように、洗浄装置100は、排出される反応生成物から窒化物半導体を回収する回収手段114を、さらに備えていてもよい。回収手段114は、例えばガス排出管105に接続された回収部115と、NH(アンモニア)ガスが充填された容器116とから構成されており、排出された反応生成物が回収部115の内部に捕捉されるようになっている。さらに、回収部115は容器116と接続されており、これにより回収部115の内部にアンモニアガスを導入することができる。
【0066】
回収部115は、とくに限定されないが、例えばカーボン、石英、ステンレス鋼、ハステロイ、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ珪素など、耐熱性およびハロゲン含有ガスへの耐食性を有する材料から形成されている。また、回収部115には、例えば、反応生成物を導入できる導入口と、アンモニアガスを導入できる導入口と、排ガスを排出できる排出口がそれぞれ設けられている。
【0067】
また、図6に示すように、洗浄装置100は、ガス排出管105と回収部115との間に、複数のトラップ121を設けてもよい。トラップ121はガス排出管105から排出された反応生成物を溜めることができる。
【0068】
また、洗浄装置100が回収手段114を備える場合、ガス排出管105からトラップ121または回収部115までの距離は短い方が好ましい。距離を短くすることで、反応生成物の蒸気が拡散する距離を短くでき、途中で析出するのをより一層防ぐことができる。
【0069】
半導体製造装置部品101は、とくに限定されないが、窒化物半導体を製造する装置であるMOCVD装置などの、付着物による汚染が激しい部品を適用することができる。とくに、サセプタやウエハートレーなどの反応炉周辺の部品に対して効果的である。
【0070】
<洗浄方法>
つぎに、第二の実施形態における洗浄装置100を用いた、窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品101の洗浄方法について説明するが、第二の実施形態における洗浄方法はこれらに限定されるものではない。なお、ここでも、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0071】
第二の実施形態における半導体製造装置部品101の洗浄方法は、窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品101を、装置内に配置する第一工程と、ガス導入管104からハロゲン含有ガスを導入し、半導体製造装置部品101に付着した窒化物半導体を除去する第二工程と、ハロゲン含有ガスと窒化物半導体との反応で生じた反応生成物を捕捉する第三工程とを有している。
【0072】
以下、各工程について詳細に説明するが、各工程はこれらに限定されるものではない。
(第一工程)
はじめに、半導体装置内の窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品101を取り外して、反応槽103内の部品保持部102に配置する。洗浄装置100が洗浄処理部118と冷却部119とをさらに備えている場合は、洗浄処理部118内に部品保持部102を配置する。このとき、配置する半導体製造装置部品101の数は、とくに限定されないが、1部品であってもよいし、2部品以上であってもよい。
【0073】
つぎに、必要に応じて、反応槽103または洗浄処理部118の内部を、加熱装置106によって後述する所望の温度まで加熱する。ここで、さらに真空ポンプ113によって反応槽103または洗浄処理部118の内部を減圧状態としてもよい。
【0074】
このとき、反応槽103または洗浄処理部118の内部の圧力は1kPa以下が好ましく、とくに0.1kPa以下が好ましい。上記上限値以下とすると、導入するハロゲン含有ガスの量を増やすことができ、同時に望ましくない残留ガスによる副反応を抑制して、反応生成物をより一層効率良く除去できる。
ここで、反応槽103の内部を減圧状態にしてから加熱してもよく、加熱操作と減圧操作を同時におこなってもよい。最終的に上記の温度および圧力になればよく、加熱操作と減圧操作の順番はとくに限定されない。
【0075】
(第二工程)
反応槽103の内部が所望の温度、圧力になった後、ガス導入弁111を開いて、ハロゲン含有ガスを反応槽103の内部に導入する。ハロゲン含有ガスは、第一の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0076】
第二工程では、半導体製造装置部品101に付着した窒化物半導体はハロゲン含有ガスと反応し、ハロゲン化ガリウムなどの反応生成物が生成される。この反応生成物は直ちに蒸発して蒸気となり、反応槽103または洗浄処理部118および捕捉手段117の内部を漂う。
このとき、ガス導入弁111およびガス排出弁112を閉じて、ハロゲン含有ガスを装置内に保持して、ハロゲン含有ガスと窒化物半導体との反応をおこなうのが好ましい。ハロゲン含有ガスを装置内に保持することによって、ハロゲン含有ガスと窒化物半導体との反応率を向上させることができ、ハロゲン含有ガスの使用量をより一層低減することができる。ただし、ガス導入弁111およびガス排出弁112は完全に閉じていなくてもよい。
【0077】
ハロゲン含有ガスを装置内に保持する場合は、反応槽103または洗浄処理部118の内部が所望の圧力になった後、ガス導入弁111を閉じて、ハロゲン含有ガスを反応槽103または洗浄処理部118および捕捉手段117の内部に一定の時間保持する。
【0078】
第二工程における反応槽103または洗浄処理部118の内部圧力は、好ましくは10kPa以上であり、より好ましくは12kPa以上である。内部圧力を上記下限値以上とすると、窒化物半導体とハロゲン含有ガスとの反応速度が速くなり、半導体製造装置部品に付着した窒化物をより一層効率良く除去できる。
また、内部圧力は、好ましくは90kPa以下であり、より好ましくは85kPa以下である。内部圧力を上記上限値以下とすると、反応生成物の平均自由工程を長くできるため、反応生成物の拡散効率が増し、窒化物とハロゲン含有ガスとの反応効率をより一層上げることができる。
【0079】
第二工程における反応槽103または洗浄処理部118の内部温度は、とくに限定されないが、500℃以上が好ましく、とくに750℃以上が好ましい。内部温度を上記下限値以上とすると、反応生成物の揮発速度が速くなり、半導体製造装置部品に付着した窒化物半導体をより一層効率良く除去できる。
また、内部温度は、とくに限定されないが、1000℃以下が好ましく、とくに800℃以下が好ましい。内部温度を上記上限値以下とすると、半導体製造装置部品101の熱変形をより一層防止することができる。
【0080】
第二工程におけるハロゲン含有ガスの保持時間は、とくに限定されないが、反応槽103の大きさや半導体製造装置部品101の処理量などによって適宜設定される。
【0081】
(第三工程)
つづいて、ハロゲン含有ガスと窒化物半導体との反応で生じた反応生成物を、捕捉手段117によって捕捉する。例えば、温度制御流体循環器120から水を冷却部119に流し、捕捉手段117を冷却する。すると、反応生成物の蒸気は、捕捉手段117の内部で冷却され、捕捉手段117の表面に析出して捕捉される。
なお、第二工程と第三工程は同時におこなうことが好ましい。
【0082】
反応槽103または洗浄処理部118の内部に、ハロゲン含有ガスを一定時間保持後、ガス排出弁112を開いて、ガス排出管105から、未反応のハロゲン含有ガスや捕捉されなかったガスなどの排気ガスを排出する。
【0083】
このとき、ガス導入管104を開いて、容器110から反応槽103に不活性ガスを導入し、反応槽103の内部を大気圧に戻した後、排気ガスを排出するのがさらに好ましい。不活性ガスを導入することにより、排気ガスが不活性ガスにより押し出され、排気ガスをより一層効率良く排出することができる。このとき使用する不活性ガスは、とくに限定されないが、前述の不活性ガスを使用してもよいし、他のガスを使用してもよい。
また、第二の実施形態における洗浄装置100を用いた、半導体製造装置部品101の洗浄方法は、上記のハロゲン含有ガスの導入から排気ガスの排出までを2回以上おこなうのが好ましい。2回以上おこなうと、半導体製造装置部品101の表面がさらに活性化され、窒化物とハロゲン含有ガスとの反応効率をより一層上げることができる。繰り返し回数は、とくに限定されないが、反応槽103または洗浄処理部118の大きさや半導体製造装置部品101の処理量などによって適宜設定される。
【0084】
(第四工程)
また、第二の実施形態における洗浄装置100を用いた、半導体製造装置部品101の洗浄方法は、捕捉された反応生成物を排出する第四工程をさらにおこなうのが好ましい。反応生成物を排出する方法は、とくに限定されないが、例えば温度制御流体循環器120から高温の油を冷却部119に流し、捕捉手段117を温める。すると、捕捉手段117の表面に析出した反応生成物は、再び、蒸気となり、ガス排出管105から排出される。
【0085】
このとき、ガス導入管104を開いて、容器110から反応槽103に不活性ガスを導入し、反応槽103の内部を大気圧に戻した後、反応生成物の蒸気を排出するのがさらに好ましい。不活性ガスを導入することにより、反応生成物の蒸気が不活性ガスにより押し出され、蒸気をより一層効率良く排出することができる。このとき使用する不活性ガスは、とくに限定されないが、前述の不活性ガスを使用してもよいし、他のガスを使用してもよい。
【0086】
また、第二の実施形態における洗浄装置100を用いた、半導体製造装置部品101の洗浄方法は、上記の第一工程から第三工程までを繰り返しおこない、捕捉手段117に捕捉された反応生成物を一定量溜めてから、第四工程をおこなうのが好ましい。繰り返し回数は、とくに限定されないが、反応生成物の捕捉量によって適宜設定される。
【0087】
(第五工程)
また、第二の実施形態における洗浄装置100を用いた、半導体製造装置部品101の洗浄方法は、反応生成物からガリウム化合物を回収する第五工程をさらにおこなうのが好ましい。回収方法は、とくに限定されないが、例えば図5に示すような装置を用いておこなうことができる。はじめに、ガス排出管105から排出された反応生成物の蒸気を回収部115に捕捉する。その後、容器116から回収部115にアンモニアガスを導入し、反応生成物に含まれるハロゲン化ガリウムなどとアンモニアとを反応させ、ガリウム化合物などの固体を生成させる。この第五工程をおこなうことにより、有害な排ガスの量を低減することができる。
【0088】
また、図6に示すように、洗浄装置100は、ガス排出管105と回収部115との間の、複数のトラップ121に排出された反応生成物を捕捉して一定量溜めてから、回収部115に反応生成物を送ってもよい。こうした構成を取ることにより、ガリウム化合物の回収工程を段階的におこなうことができる。
【0089】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0090】
第二の実施形態では、真空ポンプ113がガス排出管105に接続されている場合を示したが、他の部位に真空ポンプ113を接続する構成を採用することもできる。
【0091】
また、第二の実施形態では、半導体製造装置の部品101を洗浄する場合を示したが、半導体製造装置本体を反応槽103の内部に配置して洗浄してもよい。ただし、この場合は、半導体製造装置自体が損傷しないように注意する必要がある。
【0092】
(第三の実施形態)
<気相成長装置>
つづいて、第3の実施形態に係る気相成長装置200について説明する。
【0093】
はじめに、第三の実施形態における気相成長装置200の構成について説明する。図7は、第三の実施形態における気相成長装置200の構成を示す断面図である。
気相成長装置200は、ガリウムを含有する第一原料ガスと、アンモニアを含有する第二原料ガスとを、反応槽203内の基板201に対して供給し、基板201上に一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体を成長させる装置である。そして、気相成長装置200は、反応槽203と、基板保持部202と、ガス導入管204と、捕捉手段217と、ガス排出管205とを備えている。
ガス導入管204からは、ガリウムを含有する第一原料ガスや、アンモニアを含有する第二原料ガスを、基板201に向けて供給できる。さらに、ガス導入管204からは、ハロゲン含有ガスを反応槽203内に導入でき、気相成長装置200内の各種部品から付着した汚染物を除去できる。除去された汚染物はガス排出管205から排出できる。
【0094】
また、必要に応じて、気相成長装置200は反応槽203の周囲に、反応槽203内を加熱する加熱装置206と、反応槽203の内部の圧力をモニターする圧力計208とをそれぞれ設けることができる。
【0095】
反応槽203は、とくに限定されないが、例えば石英などの耐熱性材料により形成されている。反応槽203の内部には、基板保持部202が配置され、基板保持部202上に窒化物半導体を成長させる基板201が配置される。
また、反応槽203の形状や大きさは、とくに限定されないが、基板201の大きさや処理量によって適宜決められる。
【0096】
捕捉手段217は、GaNなどの汚染物とハロゲン含有ガスとの反応によって生じる反応生成物を捕捉する役割を担う。従来の気相成長装置を用いて窒化物半導体を製造すると、GaNなどの汚染物が基板を保持するトレーやガス流路など、基板以外の各種部品にも付着してしまう。そのため、新たな半導体を製造する前に、一度汚染された部品を洗浄する必要があった。
一方、第三の実施形態における気相成長装置200では、窒化物半導体を製造後、ガス導入管204を通じて反応槽203内に、ハロゲン含有ガスを導入し、反応槽203内の各種部品の洗浄を気相成長装置200内でおこなう。
【0097】
このとき、捕捉手段217は、ハロゲン含有ガスと汚染物との反応生成物を捕捉する役割を担う。反応生成物は捕捉手段217に捕捉されるため、反応生成物が他の部品などに付着することを抑制でき、効率よく付着した汚染物を除去できる。よって、捕捉手段217を備える気相成長装置200は、一度汚染された部品を取り外して洗浄する必要がなく、窒化物半導体を歩留まり良く製造できる。
【0098】
気相成長装置200は、図8に示すように、捕捉手段217を冷却するための冷却部219をさらに備え、反応槽203の内部に基板保持部202が配置され、冷却部219の内部に捕捉手段217が配置されている構成を取ることがより好ましい。
こうした構成を取ることにより、気相成長装置200内の部品の洗浄処理と、反応生成物の捕捉を明確に分けることができる。さらに、冷却部219により、捕捉手段217に捕捉された反応生成物の蒸気を冷却し、反応生成物を析出させることができるため、反応生成物が気相成長装置200内の部品に付着することをより一層抑制でき、反応生成物をより一層効率よく捕捉することができる。
【0099】
捕捉手段217は、反応生成物を捕捉できるものであればとくに限定されないが、冷却パネルが好ましい。冷却パネルを用いることにより、反応生成物の蒸気を効率よく冷却できるため、反応生成物をより一層効率よく捕捉することができる。
【0100】
また、捕捉手段217は、とくに限定されないが、例えばカーボン、石英、ステンレス鋼、ハステロイ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素など、反応生成物と反応しない材料から形成されているのが好ましい。とくに石英が、耐熱性に優れることから好ましい。ここでの反応とは、腐食などの不可逆的な反応をいう。ただ単に析出している場合や吸着している場合は含まない。
【0101】
また、冷却部219は、捕捉手段217内部の温度を調節する機能を備えていることが好ましい。低温にすることによって反応生成物を捕捉した後、高温に切り替えることによって、捕捉した反応生成物を再び蒸気にすることができる。そのため、ガス排出管205から反応生成物をより一層効率よく排出することができる。
【0102】
上述の捕捉手段217内部の温度を調節する機能は、例えば、温度制御流体循環器220などが挙げられる。温度制御流体循環器220から冷却水を冷却部219に流すことによって、冷却部219を低温にすることができる。また、温度制御流体循環器220から油を流すことによって、冷却部を高温にすることができる。
【0103】
冷却部219を冷却する冷却水の温度は0℃以上40℃以下が好ましい。また、冷却部219を温める油の温度は80℃以上200℃以下が好ましい。
【0104】
基板保持部202は 基板201を保持するための部材であり、例えばカーボンや石英などの耐熱性材料により形成されている。この基板保持部202は基板201を支持することができ、かつその状態を保持できるように構成されている。
【0105】
ガリウムを含有する第一原料ガスや、アンモニアを含有する第二原料ガスは、第一原料ガス生成室223や第二原料ガスが充填された容器218から、ガス導入管204を通って反応槽203の内部に導入される。このとき、第一原料ガスおよび第二原料ガスの導入量は、ガス導入弁211によって調節できる。
【0106】
ハロゲン含有ガスは、ハロゲン含有ガスが充填された容器210から、ガス導入管204を通って反応槽203の内部に導入される。また、必要に応じて、ハロゲン含有ガスの導入とともに、不活性ガスが充填された容器222から不活性ガスを導入し、ハロゲン含有ガスの濃度を調節することもできる。このとき、ハロゲン含有ガスおよび不活性ガスの導入量は、ガス導入弁211によって調節できる。
ガス導入管204の一方の口は反応槽203内に接続され、他方の口はハロゲン含有ガスが充填された容器210や第一原料ガス生成室223、第二原料ガスが充填された容器218、不活性ガスが充填された容器222に接続されている。
【0107】
ガス排出管205は、ガス排出弁212を介して真空ポンプ213に接続されており、これにより反応槽203の内部を減圧状態とすることができる。さらに、ガス排出管205および真空ポンプ213は、必要に応じて、図示しない排ガス除害処理装置に接続でき、反応槽203から排出される反応生成物を無害化させて、大気中に排出することができる。
【0108】
ガス導入管204の接続部位は、図7、8では反応槽203の上部に接続している記載を示したが、反応槽203の側部や下部でもよく、接続部位はとくに限定されない。また、それぞれのガスに対して、ガス導入管204が一つの場合を示したが、ガス導入管204は、一つである必要はなく、それぞれのガスについて専用のガス導入管を設けてもよいし、図7および図8のように共通のガス導入管であってもよい。
【0109】
ガス排出管205の接続箇所は、とくに限定されないが、図7および図8のように捕捉手段217に接続されていることが好ましい。こうした接続により、捕捉手段217に捕捉された反応生成物を効率良く排出することができる。
【0110】
加熱装置206は、とくに限定されないが、例えば反応槽203の内部を加熱できる加熱手段と、この加熱手段の出力を調整して、反応槽203の内部を一定の温度に保持できる温度調整器とから構成される。加熱手段は、とくに限定されないが、発熱線、ランプ加熱など公知の加熱手段が使用でき、気相成長装置200内を加熱できるものなら何でもよい。
【0111】
また、図9に示すように、第三の実施形態における気相成長装置200は、排出される反応生成物からガリウム化合物を回収する回収手段214を、さらに備えていてもよい。回収手段214は、例えばガス排出管205に接続された回収部215と、アンモニアが充填された容器216とから構成されており、排出された反応生成物が回収部215の内部に捕捉されるようになっている。さらに、回収部215は容器216と接続されており、これにより回収部215の内部にアンモニアを導入することができる。
【0112】
回収部215は、とくに限定されないが、例えばカーボン、石英、ステンレス鋼、ハステロイ、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ珪素など、耐熱性およびハロゲン含有ガスへの耐食性を有する材料から形成されている。また、回収部215には、例えば、反応生成物を導入できる導入口と、アンモニアを導入できる導入口と、排ガスを排出できる排出口がそれぞれ設けられている。
【0113】
また、図10に示すように、気相成長装置200は、ガス排出管205と回収部215との間に、複数のトラップ221を設けてもよい。トラップ221はガス排出管205から排出された反応生成物を溜めることができる。
【0114】
また、気相成長装置200が回収手段214を備える場合、ガス排出管205からトラップ221または回収部215までの距離は短い方が好ましい。距離を短くすることで、反応生成物の蒸気が拡散する距離を短くでき、途中で析出するのをより一層抑制できる。
【0115】
つづいて、気相成長装置200の使用方法について説明する。主に、窒化物半導体の製造と、気相成長装置200内の各種部品に付着した汚染物を取り除く洗浄操作とからなる。
【0116】
<窒化物半導体の製造>
はじめに、第三の実施形態における気相成長装置200を用いた、窒化物半導体の製造について説明するが、気相成長装置200による窒化物半導体の製造方法はこれらに限定されるものではない。
【0117】
窒化物半導体を製造する場合は、一般的に気相成長法、とくにMOCVD(Metal Organic Chemical Vapour Deposition;有機金属気相成長)法あるいはHVPE(Hydride Vapour Phase Epitaxy;ハイドライド気相成長) 法が用いられている。
第三の実施形態における気相成長装置200では、とくに限定されないが、一般的なMOCVD法やHVPE法を使用して基板201上に窒化物半導体層を成長させる。以下、HVPE法による窒化物半導体の製造について説明する。
【0118】
まず、反応槽203内には、基板201を載置し、反応槽203内を一定の温度に昇温する。つぎに、第一原料ガス生成室223からガリウムを含有する第一原料ガスを、ガス導入管204を通じて反応槽203内に導入する。ここで、第一原料ガス生成室223について説明する。この第一原料ガス生成室223は、ハロゲン含有ガスが充填された容器209に接続しているとともに、内部にGaを収容するソースボートを含んでいる。ハロゲン含有ガスを第一原料ガス生成室223に導入すると、原料のGaとハロゲン含有ガスが反応してGaClなどの第一原料ガスが生成する。
なお、容器210に充填されるハロゲン含有ガスは、例えば、Cl、HCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、BCl、CHCl、CHCl、CHClなどの分子内に塩素を含む化合物の1種または2種以上の混合物が用いられる。これらの中では、価格、反応性などのバランスからClがとくに好ましい。
【0119】
つぎに、ガリウムを含有する第一原料ガスの導入と同時に、容器218に充填されたアンモニアを含有する第二原料ガスを反応槽203内に導入する。すると、第一原料ガスであるGaClと第二原料ガスであるアンモニアとが反応してGaNと塩化水素と水素が生成し、GaNが基板201上に窒化物半導体層として成長する。塩化水素と水素とは排気ガスとして排出され、人体に有害な塩化水素は、図示しない除害装置で除去される。
【0120】
なお、第三の実施形態において、窒化物半導体層を形成する方法は、以上に説明したHVPE法に限られず、他の方法を用いてもよい。
【0121】
(洗浄操作)
以下、気相成長装置200内の各種部品に付着した汚染物を取り除く洗浄操作について説明するが、気相成長装置200による汚染物を取り除く洗浄操作はこれらに限定されるものではない。
【0122】
はじめに、窒化物半導体層を形成した基板201を反応槽203から取り出し、必要に応じて、反応槽203の内部を、加熱装置206によって後述する所望の温度まで加熱する。ここで、さらに真空ポンプ213によって反応槽203の内部を減圧状態としてもよい。
【0123】
このとき、反応槽203の内部の圧力は1kPa以下が好ましく、とくに0.1kPa以下が好ましい。上記上限値以下とすると、導入するハロゲン含有ガスの量を増やすことができ、同時に望ましくない残留ガスによる副反応を抑制して、反応生成物をより一層効率良く除去できる。
ここで、反応槽203の内部を減圧状態にしてから加熱してもよく、加熱操作と減圧操作を同時におこなってもよい。最終的に上記の温度および圧力になればよく、加熱操作と減圧操作の順番はとくに限定されない。
【0124】
反応槽203の内部が所望の温度、圧力になった後、ガス導入弁211を開いて、ハロゲン含有ガスを反応槽203の内部に導入する。
ハロゲン含有ガスは、例えば、Cl、HCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、BCl、CHCl、CHCl、CHClなどの分子内に塩素を含む化合物の1種または2種以上の混合物が用いられる。これらの中では、価格、反応性などのバランスからClがとくに好ましい。
【0125】
また、必要に応じてハロゲン含有ガスの導入とともに、容器210から不活性ガスを反応槽203の内部に導入してもよい。不活性ガスの導入により、ハロゲン含有ガスの濃度を調節することができる。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなどのハロゲン含有ガスと反応しない任意のガスの1種または2種以上の混合ガスが用いられる。
【0126】
なお、上記の不活性ガスを導入したときの反応槽203内のハロゲン含有ガス濃度は、とくに限定されないが、濃度が高すぎると気相成長装置200内の各種部品自体が腐食する場合があるため、汚染の程度などによって適宜設定される。
【0127】
不活性ガスを導入したときの反応槽203内のハロゲン含有ガス濃度は、とくに限定されないが、5体積%以上が好ましく、とくに10体積%以上が好ましい。上記下限値以上とすると、汚染物とハロゲン含有ガスとの反応速度が速くなり、気相成長装置200内の各種部品に付着した汚染物をより一層効率良く除去できる。
ハロゲン含有ガス濃度は、とくに限定されないが、100体積%以下が好ましく、とくに80体積%以下が好ましい。上記上限値以下とすると、ハロゲン含有ガス量が少なくて済み、また装置構成部品の腐食を抑えることができる。
【0128】
各種部品に付着した窒化ガリウムなどの汚染物はハロゲン含有ガスと反応し、ハロゲン化ガリウムなどの反応生成物が生成される。この反応生成物は直ちに蒸発して蒸気となり、反応槽203および捕捉手段217の内部を漂う。
このとき、ガス導入弁211およびガス排出弁212を閉じて、ハロゲン含有ガスを装置内に保持して、ハロゲン含有ガスと汚染物との反応をおこなうのが好ましい。ハロゲン含有ガスを装置内に保持することによって、ハロゲン含有ガスと汚染物との反応率を向上させることができ、ハロゲン含有ガスの使用量をより一層低減することができる。ただし、ガス導入弁211およびガス排出弁212は完全に閉じていなくてもよい。
【0129】
ハロゲン含有ガスを装置内に保持する場合は、反応槽203の内部が所望の圧力になった後、ガス導入弁211を閉じて、ハロゲン含有ガスを反応槽203および捕捉手段217の内部に一定の時間保持する。
【0130】
このとき、反応槽203の内部圧力は、10kPa以上が好ましく、とくに12kPa以上が好ましい。内部圧力を上記下限値以上とすると、汚染物とハロゲン含有ガスとの反応速度が速くなり、気相成長装置200内の各種部品に付着した汚染物をより一層効率良く除去できる。
また、内部圧力は、90kPa以下が好ましく、とくに85kPa以下が好ましい。内部圧力を上記上限値以下とすると、反応生成物の平均自由工程を長くできるため、反応生成物の拡散効率が増し、汚染物とハロゲン含有ガスとの反応効率をより一層上げることができる。
【0131】
このときの反応槽203の内部温度は、とくに限定されないが、500℃以上が好ましく、とくに750℃以上が好ましい。内部温度を上記下限値以上とすると、反応生成物の揮発速度が速くなり、気相成長装置200内の各種部品に付着した汚染物をより一層効率良く除去できる。
また、内部温度は、とくに限定されないが、1000℃以下が好ましく、とくに800℃以下が好ましい。内部温度を上記上限値以下とすると、気相成長装置200内の各種部品の熱変形をより一層防止することができる。
【0132】
ハロゲン含有ガスの保持時間は、とくに限定されないが、反応槽203の大きさや気相成長装置200内の各種部品の処理量などによって適宜設定される。
【0133】
ハロゲン含有ガスと汚染物との反応で生じた反応生成物は、捕捉手段217によって捕捉される。例えば、温度制御流体循環器220から水を冷却部219に流し、捕捉手段217を冷却する。すると、反応生成物の蒸気は、捕捉手段217の内部で冷却され、捕捉手段217の表面に析出して捕捉される。
【0134】
反応槽203の内部に、ハロゲン含有ガスを一定時間保持後、ガス排出弁212を開いて、ガス排出管205から、未反応のハロゲン含有ガスや捕捉されなかったガスなどの排気ガスを排出する。
【0135】
このとき、ガス導入管204を開いて、容器210から反応槽203に不活性ガスを導入し、反応槽203の内部を大気圧に戻した後、排気ガスを排出するのがさらに好ましい。不活性ガスを導入することにより、排気ガスが不活性ガスにより押し出され、排気ガスをより一層効率良く排出することができる。このとき使用する不活性ガスは、とくに限定されないが、前述の不活性ガスを使用してもよいし、他のガスを使用してもよい。
また、第三の実施形態における気相成長装置200を用いた、気相成長装置200内の各種部品の洗浄操作は、上記のハロゲン含有ガスの導入から排気ガスの排出までを2回以上おこなうのが好ましい。2回以上おこなうと、各種部品の表面がさらに活性化され、汚染物とハロゲン含有ガスとの反応効率をより一層上げることができる。繰り返し回数は、とくに限定されないが、反応槽203の大きさや各種部品の処理量などによって適宜設定される。
【0136】
また、第三の実施形態における気相成長装置200を用いた、気相成長装置200内の各種部品の洗浄操作は、捕捉された反応生成物の排出をさらにおこなうのが好ましい。反応生成物を排出する方法は、とくに限定されないが、例えば温度制御流体循環器220から高温の油を冷却部219に流し、捕捉手段217を温める。すると、捕捉手段217の表面に析出した反応生成物は、再び、蒸気となり、ガス排出管205から排出される。
【0137】
このとき、ガス導入管204を開いて、容器210から反応槽203に不活性ガスを導入し、反応槽203の内部を大気圧に戻した後、反応生成物の蒸気を排出するのがさらに好ましい。不活性ガスを導入することにより、反応生成物の蒸気が不活性ガスにより押し出され、蒸気をより一層効率良く排出することができる。このとき使用する不活性ガスは、とくに限定されないが、前述の不活性ガスを使用してもよいし、他のガスを使用してもよい。
【0138】
また、第三の実施形態における気相成長装置200を用いた、気相成長装置200内の各種部品の洗浄操作は、捕捉手段217に捕捉された反応生成物を一定量溜めてから、捕捉された反応生成物を排出するのが好ましい。繰り返し回数は、とくに限定されないが、反応生成物の捕捉量によって適宜設定される。
【0139】
また、第三の実施形態における気相成長装置200を用いた、気相成長装置200内の各種部品の洗浄操作は、反応生成物からガリウム化合物を回収することをさらにおこなうのが好ましい。回収方法は、とくに限定されないが、例えば図9に示すような装置を用いておこなうことができる。はじめに、ガス排出管205から排出された反応生成物の蒸気を回収部215に捕捉する。その後、容器216から回収部215にアンモニアガスを導入し、反応生成物に含まれるハロゲン化ガリウムなどとアンモニアとを反応させ、ガリウム化合物などの固体を生成させる。この反応生成物からガリウム化合物を回収することにより、有害な排ガスの量を低減することができる。
【0140】
また、図10に示すように、気相成長装置200は、ガス排出管205と回収部215との間の、複数のトラップ221に排出された反応生成物を捕捉して一定量溜めてから、回収部215に反応生成物を送ってもよい。こうした構成を取ることにより、ガリウム化合物の回収を段階的におこなうことができる。
【0141】
以上、図面を参照して本発明の第三の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0142】
第三の実施形態では、HVPE法による成長を例に挙げたが、MOCVD法や原子層堆積法(ALD)などに本発明を適用することも可能である。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
(実施例1)
以下、実施例1〜7および比較例1〜2では、図1に示す洗浄装置を用いた。
GaNが付着した半導体製造装置部品を反応槽内の部品保持部に配置し、反応槽内の温度を750℃とし、圧力を0.1kPa以下とした。つぎに、Nガスを反応槽内に導入して圧力を20kPaとし、その後、Clガスを反応槽内に導入して圧力を40kPaとした(Clガス圧力は20kPa)。このまま10分間保持した後、排気弁を開いて反応生成物の蒸気を排出した。
つづいて、Nガスの導入により、反応槽内を大気圧に戻した後、GaNが付着した部品の重さを測定した。ここで、使用したClガス量および除去されたGaN量から、下記(1)式を用いて反応効率を算出した。
反応効率[%]=100×(除去されたGaNのモル数×1.5)/(使用したClのモル数)(1)
なお、GaNを1モル除去するのに必要なClガス量は理論的には1.5モルである。
除去されたGaNは3.5g(0.042モル)、使用したClガス量は合計3.2L(0.13モル)であった。よって、反応効率は48.2%であった。
【0145】
(実施例2)
上記のNガスの導入、Clガスの導入、10分間保持、反応生成物の排出、の一連の操作を4回にした以外は実施例1と同様の洗浄処理をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0146】
(実施例3)
GaNが付着した半導体製造装置部品を反応槽内の部品保持部に配置し、反応槽内の温度を730℃とし、圧力を0.1kPa以下とした。つぎに、Nガスを反応槽内に導入して圧力を10kPaとし、その後、Clガスを反応槽内に導入して圧力を30kPaとした。このまま10分間保持した後、排気弁を開いて反応生成物の蒸気を排出した。つづいて、上記のNガスの導入、Clガスの導入、10分間保持、反応生成物の排出、の一連の操作を2回おこなった。
つづいて、Nガスの導入により、反応槽内を大気圧に戻した後、GaNが付着した部品の重さを測定した。ここで、使用したClガス量および除去されたGaN量から、上記(1)式を用いて反応効率を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0147】
(実施例4〜7、比較例1)
反応槽内の圧力を表1に記載した値にそれぞれ設定した以外は実施例3と同様の洗浄処理をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0148】
(比較例2)
GaNが付着した部品を反応槽内の部品保持部に配置し、反応槽内の温度を800℃とした。つぎに、排気弁を開いた状態で、ClガスとNガスとの混合ガスを反応槽内に30分間供給した。ここで、Clガスの流量は0.3L/minとし、Nガスの流量は0.3L/minとした。
反応槽内をN置換した後、GaNが付着した部品の重さを測定した。除去されたGaNは1.0g(0.011モル)、使用したClガス量は合計9.0L(0.37モル)であった。よって、反応効率は5%であった。
【0149】
(評価結果)
以上の評価結果を表1に示す。洗浄方式を封じ切り方式とし、反応槽内の圧力を90kPa以下とすることにより、比較例1、2に比べて反応効率を向上させることができた。
また、洗浄回数を増やすことによって、反応効率をさらに向上できた。
【0150】
【表1】
【0151】
(実施例8)
以下、実施例8では、図4および図5に示す洗浄装置を用いた。
GaNが付着した半導体製造装置部品を洗浄処理部内の部品保持部に配置し、洗浄処理部内の温度を750℃とした。また、温度制御流体循環器により、水温25℃の水を2L/minで冷却部に循環させた。その後、真空ポンプを作動させ、洗浄処理部内の圧力を0.1kPa以下とした。
つぎに、Nガスを洗浄処理部内に導入して圧力を20kPaとし、その後、Clガスを反応槽内に導入して圧力を40kPaとした。このまま10分間保持した後、排気弁を開いて排気ガスを排出した。上記のNガスの導入、Clガスの導入、10分間保持、排気ガスの排出、の一連の操作は合計4回おこなった。
つぎに、温度制御流体循環器により、100℃の油を3L/minで冷却部に循環させ、冷却部内の冷却パネルを温めた。つづいて、Nガスの導入により、装置内を大気圧に戻した後、ガス排気弁を開けて、反応生成物であるGaClの蒸気を回収部に導入した。これと同時に、回収部にNHガスを導入し、GaClとNHとを反応させた。冷却部内の冷却パネルに付着したガリウム塩化物が無くなったら、NHガスの導入弁を閉じた。
さらに、10分間Nガスを装置内に導入した後、GaNが付着した部品を取り出し、重さを測定した。ここで、使用したClガス量および除去されたGaN量から、下記(1)式を用いて反応効率を算出した。
反応効率[%]=100×(除去されたGaNのモル数×1.5)/(使用したClのモル数)(1)
なお、GaNを1モル除去するのに必要なClガス量は理論的には1.5モルである。
除去されたGaNは28.1g(0.336モル)、使用したClガス量は合計12.8L(0.520モル)であった。よって、反応効率は96.9%であった。
また、回収部からはNHCl、Gaを含んだオリゴマ(NHGaCl、GaNなどのガリウム化合物が捕捉された。
【0152】
この出願は、2011年5月19日に出願された日本出願特願2011−112426号および2011年7月25日に出願された日本出願特願2011−162261号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以下、参考形態の例を付記する。
<付記>
(付記1)
一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品を、ガス導入管とガス排出管とを備えた装置内に配置する第一工程と、
前記装置内を減圧状態とした後、前記ガス導入管からハロゲン含有ガスを導入する第二工程と
をおこない、その後、
前記ハロゲン含有ガスを前記装置内に保持し、前記半導体製造装置部品に付着した前記窒化物半導体を除去する第三工程と
をおこなう、半導体製造装置部品の洗浄方法であって、
前記第三工程での前記装置内の圧力が、10kPa以上90kPa以下である、半導体製造装置部品の洗浄方法。
(付記2)
付記1に記載の半導体製造装置部品の洗浄方法において、
前記装置内に生成する反応生成物を除去する第四工程をさらに含む、半導体製造装置部品の洗浄方法。
(付記3)
付記2に記載の半導体製造装置部品の洗浄方法において、
前記第四工程では、前記装置内に不活性ガスを導入し、前記反応生成物の蒸気を前記装置外に排出する、半導体製造装置部品の洗浄方法。
(付記4)
付記2または3に記載の半導体製造装置部品の洗浄方法において、
ガリウム化合物を回収する第五工程をさらに含む、半導体製造装置部品の洗浄方法。
(付記5)
付記4に記載の半導体製造装置部品の洗浄方法において、
前記第五工程では、NHと前記反応生成物とを反応させることにより、前記ガリウム化合物を回収する、半導体製造装置部品の洗浄方法。
(付記6)
付記2乃至5いずれか一つに記載の半導体製造装置部品の洗浄方法において、
前記第二工程から前記第四工程までを2回以上おこなう、半導体製造装置部品の洗浄方法。
(付記7)
付記1乃至6いずれか一つに記載の半導体製造装置部品の洗浄方法において、
前記第二工程では、前記装置内に不活性ガスをさらに導入する、半導体製造装置部品の洗浄方法。
(付記8)
付記1乃至7いずれか一つに記載の半導体製造装置部品の洗浄方法において、
前記第三工程での前記装置内の温度が、500℃以上1000℃以下である、半導体製造装置部品の洗浄方法。
(付記9)
一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体が付着した半導体製造装置部品の洗浄装置であって、
前記半導体製造装置部品を保持する部品保持部と、
前記窒化物半導体と反応するハロゲン含有ガスを導入するガス導入管と、
前記窒化物半導体と前記ハロゲン含有ガスとの反応生成物を捕捉する捕捉手段と、
前記反応生成物を排出するガス排出管と
を備えた、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記10)
付記9に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
洗浄処理部と、前記捕捉手段を冷却するための冷却部とをさらに備え、
前記洗浄処理部の内部に前記部品保持部が配置され、前記冷却部の内部に前記捕捉手段が配置される、
半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記11)
付記10に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記冷却部が、前記捕捉手段内部の温度を調節する機能を備える、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記12)
付記9乃至11いずれか一つに記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記捕捉手段が、冷却パネルである、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記13)
付記9乃至12いずれか一つに記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記捕捉手段が、前記反応生成物と反応しない材料からなる、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記14)
付記13に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記捕捉手段が、石英からなる、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記15)
付記9乃至14いずれか一つに記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記反応生成物からガリウム化合物を回収する回収手段をさらに備える、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記16)
付記15に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記回収手段では、NHと前記反応生成物とを反応させることにより、前記ガリウム化合物を回収する、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記17)
付記9乃至16いずれか一つに記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記ガス導入管と前記ガス排出管とを閉じて、前記ハロゲン含有ガスを装置内に保持して使用する、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記18)
付記9乃至17いずれか一つに記載の半導体製造装置部品の洗浄装置において、
前記部品保持部に、前記半導体製造装置部品の表面全体が処理されるように、前記半導体製造装置部品を引っ掛けて保持するための引っ掛け部が形成されている、半導体製造装置部品の洗浄装置。
(付記19)
ガリウムを含有する第一原料ガスと、アンモニアを含有する第二原料ガスとを、反応槽内の基板に対して供給し、前記基板上に一般式AlInGa1−x−yN(ただし、x、yは0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物半導体を形成する気相成長装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
ハロゲン含有ガスを導入するガス導入管と、
前記窒化物半導体と前記ハロゲン含有ガスとの反応生成物を捕捉する捕捉手段と、
前記反応生成物を排出するガス排出管と
を備えた、気相成長装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10