(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715310
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】羽口部と熱風送風管との間の高炉用シール接続システム、及びかかるシステムを有する製鋼溶鉱炉
(51)【国際特許分類】
C21B 7/16 20060101AFI20150416BHJP
F27B 1/16 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
C21B7/16 306
F27B1/16
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-540417(P2014-540417)
(86)(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公表番号】特表2015-502454(P2015-502454A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】EP2012071901
(87)【国際公開番号】WO2013068333
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】91897
(32)【優先日】2011年11月9日
(33)【優先権主張国】LU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513200003
【氏名又は名称】ポール ワース エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】トッカート,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロナルディ,エミール
(72)【発明者】
【氏名】ジュング,ブノワ
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭46−000001(JP,A)
【文献】
特公昭44−015042(JP,B1)
【文献】
特開平04−228509(JP,A)
【文献】
米国特許第05209657(US,A)
【文献】
米国特許第05462433(US,A)
【文献】
米国特許第03545736(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/16
F27B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼溶鉱炉の如き溶鉱炉の羽口部(4)と空気送風管(3)との間のシール接続システムであって、該空気送風管(3)の端(33)が該羽口部(4)の後端に向けて押圧され、該羽口部(4)と該空気送風管(3)とを相対的に回転自在に維持して該羽口部(4)と該空気送風管(3)の中心軸を同一にする接続システムであって、
該接続システムは、該空気送風管(3)の該端(33)と該羽口部(4)との間に位置し、該羽口部(4)に固定して配設される付加的な環状送風管シート(5)であって、該空気送風管(3)の該端(33)が該シート(5)の後面(55、55´)に対向して位置すると共に固定ガスケット(53)が該シート(5)と該羽口部(4)との間に配置されることで、該シート(5)が該羽口部(4)の後面(44)に対向してシール状態で位置するようなシート(5)と、該空気送風管(3)の該端(33)と該シート(5)との間の接触領域の周囲に配設される変形可能なシーリングスリーブ(6)であって、一端は該シート(5)にシール状態で接続されると共に他端は該空気送風管(3)の外側壁にシール状態で接続されるベローズ補償器から構成されたシーリングスリーブと、を具備することを特徴とする接続システム。
【請求項2】
該シート(5)は該羽口部(4)の平坦後面(44)に対向して位置する前面(51)を有する、請求項1に記載の接続システム。
【請求項3】
該シート(5)は該羽口部(4)の後方部分に形成された受容部(44)に位置し中心軸を同一にする、請求項1又は2に記載の接続システム。
【請求項4】
環状溝(52)が該シート(5)の前面(51)に形成されていると共に、該固定ガスケット(53)が該溝(52)に配置されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の接続システム。
【請求項5】
該シート(5)は鋼鉄製である、請求項1乃至4のいずれかに記載の接続システム。
【請求項6】
該空気送風管(3)と接触する該シート(5)の該後面(54)は円錐面(55´)を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の接続システム。
【請求項7】
該空気送風管(3)と接触する該シート(5)の該後面(54)は、該空気送風管(3)の該端(33)の球状凸面と対応する球状凹面(55)を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の接続システム。
【請求項8】
該スリーブ(6)は、該シート(5)に溶接することによってシール状態で取り付けられる、請求項1乃至7のいずれかに記載の接続システム。
【請求項9】
該スリーブ(6)は、該空気送風管(3)の外側金属壁(31)に溶接することによってシール状態で取り付けられる、請求項1乃至7のいずれかに記載の接続システム。
【請求項10】
該スリーブ(6)は、該空気送風管(3)の外側金属壁(31)に付設されたフランジ(34)に溶接することによってシール状態で取り付けられた請求項1乃至7のいずれかに記載の接続システム。
【請求項11】
複数の羽口部(4)と対応する複数の送風支管(10)を有し、該送風支官の各々は請求項1乃至10のいずれかに記載の接続システムによって該羽口部(4)に接続された空気送風管(3)を有する、製鋼溶鉱炉。
【請求項12】
該羽口部(4)に燃料ガス又は再循環ガスを供給するためのシステムを有する、請求項11に記載の製鋼溶鉱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼溶鉱炉の如き高炉に用いられる、羽口部と熱風送風管との間のシール接続システムに関する。本発明はまた、かかるシステムを有する製鋼溶鉱炉にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、予熱された空気が送風支管として知られるアッセンブリーによって高炉内に噴射される。かようなアッセンブリーは、高温空気環状管と羽口部とを接続し、炉壁に配設される。かかる炉壁は高炉シャフト内に開口されている。一般的には、
図1に示すように、送風支管10は複数個の独立要素から構成され、夫々の独立要素は外側金属覆い及び内側耐火性ライニングが施されている。
【0003】
送風支管10は、
高温空気環状管1から斜め下方に延びる下方管11と、
エルボー12と、
エルボーに強固に取り付けられ、実質的水平であり、送風管の先端が羽口部4の後端と接触した状態で保持される送風管3と、
を有する。
【0004】
内部の循環式冷却水によって冷却された銅製羽口部4は溶鉱炉の金属壁21に取付けられた羽口ホルダー、又は羽口冷却部、42に嵌合され、金属壁の内側耐火性ライニング22内に延在している。
【0005】
送風管3は、内側に難燃材32が塗布された鋼鉄製外側壁31を有する。
図2及び
図3に示すとおり、かかる外側壁は、羽口部4の後端に形成された円錐台形状壁41に対して回転自在である球状壁を形成すべく、送風管の前端、又は先端、33に向かって延びている。
【0006】
送風支管は、上側タイロッド23及び横タイロッド24のように連結式タイロッドによって、炉の外側金属壁21に支持される。横タイロッド24が羽口部に送風管を保持している。炉壁及び送風支管を構成する種々の要素の両方は必然的に温度変動の影響を受けるため、かかる炉壁及び要素の熱変形を許容すべく、これらのタイロッドは所定の自由度を有する送風支管アッセンブリーを備えている。
【0007】
上述した変形が生じうるにもかかわらず、種々の要素間にシールを提供するために、ベローズ補償システム13が使用されている。かかるシステム13は、シールを維持する間、2つの要素間での接続において、軸方向であろうと回転方向であろうと相対的な動きを吸収することができ、タイロッドがベローズ補償器によって要素間に機械的接続を提供することができる。かような補償システムは、例えばEP0453739に記載されていて、これは一般的には、環状管と送風支管との間をシールするのに使用されると共に、空気下降管と送風管が取り付けられるエルボーとの間をシールするのにも使用されている。
【0008】
炉の耐火壁の壁内であってジョイントの構成上、上記補償システムが使用できない場所において、送風管の端と羽口部との間のジョイントに最良なシールを提供することが必要とされることを考慮すれば、上記補償システムが羽口部を変形する所定の能力を有していることは有用である。従ってこのジョイントは、送風支管の重量と送風支管を炉の外側金属壁に接続する連結式タイロッド24によって生じる張力の作用下で、羽口部の後端に対して中心側に位置する送風管の端付近に配設される。送風管と羽口部との間の角度オフセットを引き起こす熱変形を許容するために、送風管端は凸面球状面を有し、羽口部の後端に形成された対応する円錐台形状又は凸面と接触する。送風管の端の球状面は送風管の外側鋼鉄壁の後端付近に形成されている。羽口部は一般的に銅製である。
【0009】
送風管と羽口部との間のボールジョイント接続を形成するこの配置は、羽口部に対向して送風管を位置するだけで羽口部と送風管の中心軸を一致させ、相対的に角度が変化する間、送風管の鋼鉄と羽口部の銅との間の金属同士の接触が送風管と羽口部との間で実質的に直線状の接触を維持し、かくして、送風管と羽口部との間の金属の所定レベルの接触が維持される。
【0010】
US3545736は、環状空間が管状メタルジャケットと送風管の難燃性部分との間に配設されたシステムをも開示している。かかるジャケットは羽口部に対向して配設されると共に反対に回転自在な第一端を具備する。かかるジャケットは、それ自身がジャケットの第二端に対してシールされた状態で位置する送風支管のエルボーによって、羽口部に対して押圧される。この配置の目的は、送風支管のエルボーと送風管との間で維持された軸方向空間を通って高温ガスが環状空間内に進入することができるようにすることで、送風管の難燃性部分の外側と内側との間の温度変化を制限することである。このシステムにおいても、それらの角度が相対的に変位する際には、所定程度のシールがジャケットの第一端と羽口部との間で得られる。
【0011】
しかしながら、難燃性の送風管が羽口部に対して直接押圧される際においては、完璧なシールを提供することができない。従って、前記高温噴射空気が高濃度酸素である場合にあっては、噴射空気の限定的な漏れが生じる。しかしながら、近年の燃焼排ガス再循環技術を実行する際にあっては、このガスは高温噴射空気で再噴射される。この燃焼排ガスは実際とても危険であり、従って最小レベルの漏れでさえ許容されることはない。従来の溶鉱炉であっても、更なる安全のために高温噴射空気の漏れを減らすことが求められている。
【0012】
従って本発明の目的の一つは、送風管と溶鉱炉の羽口部との間の不適切なシールの問題を解決することである。本発明の更なる目的は、送風管と羽口部との間のジョイントを囲繞する領域での限定的な空間に適しており、送風支管を設置する際にはいかなる押圧も生じず、送風支管用の支持または取付手段にいかなる変化をも生じない送風管と羽口部との間の新規なシール接続システムを提供することである。
【0013】
これらの目的を考慮すると、本発明は、製鋼溶鉱炉の如き溶鉱炉の羽口部と空気送風管との間のシール接続システムであって、送風管端が羽口部の後端方向に押圧され、羽口部と空気送風管とが回転自在である間は中心軸を同一にする接続システムを提供する。本発明によると、この接続システムは、送風管端と羽口部との間に位置し、羽口部に固定して配設される付加的な環状送風管シートであって、送風管端が前記シートの後面に対向して位置すると共に固定ガスケットが前記シートと羽口部との間に配置されることで、前記シートが羽口部の後面に対向してシール状態で位置するようなシートと、送風管端とシートとの間の該接触領域の周囲に配設される変形可能なシールスリーブであって、一端が前記シートにシール状態で接続されると共に他端が送風管にシール状態で接続されるシールスリーブと、を具備することを特徴とする接続システムである。
【発明の概要】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明は、一方、送風管とそのシートとの間においては、変形可能なシールスリーブによって送風管とシートが相互に回転自在になる補助シールを配設し、他方、送風管シートと羽口部との間においては、送風管シートが羽口部に対して固定されることで形成されるシールを配設することを提案している。
【0015】
好ましくは、送風支管を炉の外側金属壁に接続する周知技術によって送風管がシートに押圧される際に羽口部の後面に対向して押圧されるように、環状溝がシートの前面に形成されていると共に、シーリングガスケットが前記溝に配設されている。他の特別な配置によれば、かかるシートが羽口部の後部に配設された受容部に配設されると共に中心軸が一致せしめられ、かかるシートの前面が前記受容部の底壁近傍に配設される羽口部の平坦後面に対向して位置する。
【0016】
送風管シートは鋼鉄製であるのが好ましい。送風管と接触するシートの後端面は円錐面或いは送風管端の凸面の形状に実質上対応する凹面である。本態様においては、シートの中心軸と、従って羽口部の中心軸と、送風管の中心軸とが一致することが保証され、シートに付設している送風管もシールに従来技術である送風管と羽口部との間の直接接触と同様な態様で寄与するが、本発明によると、前記シールはシーリングスリーブによって向上する。
【0017】
シーリングスリーブはベローズ補償器であるのが好ましく、その片端は例えば溶接によるシール状態で送風管シートに取り付けられる。補償器の他端は溶接のようなシール態様で送風管の外側金属壁或いは前記金属壁に付加されたフランジに直接取り付けられる。送風管端とシートが離隔して位置する場合であっても、それらの間のシールは維持される。
【0018】
本発明は、複数の羽口部と、上述した接続システムによって羽口部を補助する送風管を夫々有する複数の送風支管を備える製鋼溶鉱炉にも関する。本発明にかかるシステムは特に、燃料ガス又は再循環ガス或いは羽口部への燃焼排ガスを供給するシステムを有する溶鉱炉を想定している。それは従来型の溶鉱炉にもまた使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の他の顕著な特徴及び特色は、添付した図面を例示として参照し、以下の2つの態様についての詳述により開示されるであろう。
【
図1】従来技術における溶鉱炉の壁の適当な位置での、送風支管の全体断面図。
【
図2】従来技術において、横方向タイロッドによって送風管が羽口部にどのように支持されていたかを示す、送風支管の部分平面図。
【
図3】従来技術における、送風管と羽口部との間の接触領域の詳細断面図。
【
図4】本発明の第一の実施形態における、送風管と羽口部との間の接続領域の断面図。
【
図5】本発明の第二の実施形態における、送風管と羽口部との間の接続領域の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従来技術を示す
図1乃至
図3についての言及は既になされている。
【0021】
図4は、送風管の端33と羽口部4との間に位置する送風管シート5の存在によって特徴づけられる本発明の第一の実施形態を示す。送風管シートは鋼鉄製環状部材であり、それは羽口部4の後端に配設された円筒型受容部43内に位置し、羽口部と中心軸が一致している。
【0022】
環状溝52は、シートと羽口部との間のシールを提供することを目的として、シートの前面51に配設され、そしてガスケット53を受ける。
【0023】
送風管シート5は前記要素間で最良な接触シールを維持する間、送風管とシートが相互に回転することができるように、その後面54(送風管側の)に、送風管の端33の凸面に対応する凹面回転楕円面55を有する。
【0024】
ベローズ補償器6は、送風管の金属壁31と一体に、シートの後面54とフランジ34の間にシール状態でマウントされ、そして一般には溶接による同様のシール状態でそこへ接続される。ベローズ補償器は鋼鉄製、好ましくはステンレス、である。ベローズ補償器は一般にシートとフランジ夫々に溶接されて取り付けられている。結果として、送風管とそのシートは羽口部の受容部43に送風管シートを挿入せしめることによる組み立ての最終工程前に予め組み立てておくことに注意されたい。ベローズ補償器と共にシーリングガスケットを支持する送風管シートは、必要ならば、摩耗部品として交換してもよい。
【0025】
送風管が羽口部方向に押圧される際には、従来システムで前述したように、送風管シートの前面51が受容部43の底面である平坦後面44に対向して位置し、シールがガスケット53により前記シートと羽口部との間に付与される。周知の態様により羽口部は水で冷却されるので、シーリングガスケット53は温度上昇に耐えうる材料である必要はない。このガスケットは例えば、ドーナツ型シリコンガスケット又は渦巻き型ステンレス黒鉛鋼であってよい。
【0026】
図5はかかるシステムにおける他の実施形態を示している。この実施形態においては、送風管の端33に位置する送風管シートの面55´は円錐台形状面であり、ベローズ補償器6は送風管の金属壁31に溶接して直接取り付けられている。