【課題を解決するための手段】
【0010】
前述および他の利点は、選択される反応性ホスホナート部分および選択される反応パートナーを具現化し、かつそれらから出発して製造された新規なホスホナート化合物を用いて、今や達成することができる。
【0011】
用語「パーセント」または「%」は、本出願をとおして使用される場合、異なって定義されない限り「質量パーセント」または「質量%」を表す。また、用語「ホスホン酸」と「ホスホナート」とは、もちろん媒体で優勢なアルカリ性/酸性条件に依存するが交換可能に使用される。用語「反応性」ホスホナートは、単に、ホスホナート出発部分Bを用いると特許請求の範囲に記載されるホスホナート化合物を合成するのに使用できる容易性を強調するための意味を有するだけである。
【0012】
今や、多数の個々の種から選択される反応性ホスホナート部分および反応パートナーを含むホスホナート化合物が発見された。より詳細には、ここで本発明は、以下の一般式:
T−B
[式中、Bは、以下の式:
−X−N(W)(ZPO
3M
2)
を有する部分を含むホスホナートであり、ここで、Xは場合によりC
1−C
12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC
2−C
50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、およびSR’(ここで、R’は、C
1−C
12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換される);および[A−O]
x−A(ここで、Aは、C
2−C
9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
Zは、C
1−C
6のアルキレン鎖であり;
Mは、HおよびC
1−C
20の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖から選択され;
Wは、H、ZPO
3M
2および[V−N(K)]
nKから選択され、ここで、Vは場合によりC
1−C
12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC
2−C
50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’またはSR’(ここで、R’は、C
1−C
12の直鎖、分枝鎖、環
状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換される);および[A−O]
x−A(ここで、Aは、C
2−C
9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;そして
Kは、ZPO
3M
2またはHであり、nは、0〜200の整数であり;
かつここで、Tは以下:
(i) MOOC−X−N(U)−;
(ii) MOOC−C(X
2)
2−N(U)−;
(iii) MOOC−X−S−;
(IVi) [X(HO)
n'(N−U)
n']
n''−;
(Vi) U−N(U)−[X−N(U)]
n'''−;
(VIi) D−S−;
(VIIIi) CN−;
(VIIIi) MOOC−X−O−;
(IXi) MOOC−C(X
2)
2−O−;
(Xi) NHR’’−;および
(XIi) (DCO)
2−N−;
からなる群から選択される部分であり、ここで、M、Z、WおよびXは上に定義されるとおりであり;Uは、直鎖、分枝鎖、環状または芳香族のC
1−C
12炭化水素鎖、HおよびX−N(W)(ZPO
3M
2)から選択され;X
2は、独立してH、場合によりC
1−C
12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換される直鎖、分枝鎖、環状または芳香族のC
1−C
20の炭化水素鎖(場合によりOH、COOH、R’O、R’Sおよび/またはNH
2部分によって置換される)から選択され;n’、n’’およびn’’’は独立して1〜100の整数から選択され;DおよびR’’は独立して場合によりC
1−C
12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC
1−C
50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’およびSR’(ここで、R’は、C
1−C
12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換される)から選択され;およびA’O−[A−O]
x−A(ここで、Aは、C
2−C
9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数であり、そしてA’は場合によりC
1−C
12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC
1−C
50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’およびSR’(ここで、R’は、上記の意味を有する)部分によって置換されてもよい)から選択され;そしてDもまたHと表わされることができるが;
以下の化合物は除外される:
エチレンジアミン−N−ホスホノメチル−N’−モノコハク酸、1,6−ヘキサメチレンジアミン−N−ホスホノメチル−N’−モノコハク酸、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジアミノ−N−ホスホノメチル−N’−モノコハク酸、1,2−プロピレンジアミン−N−ホスホノメチル−N’−モノコハク酸、1,3−プロピレンジアミン−N−ホスホノメチル−N’モノコハク酸、およびエチレン−ビス(オキシエチレンニトリロ)−N−ホスホノメチル−N’−モノコハク酸]
の新規なホスホナート化合物に関する。
【0013】
本発明の新規ホスホナート化合物は、実際に具現化され、1つの実施において、以下の一般式:
Y−X−N(W)(ZPO
3M
2)
に対応するホスホナートを、(i)〜(XIi)で番号付けされた部分よりなる群から選択される反応パートナーと反応させることによって製造され得る。ホスホナート化合物におけるYは、pKaが4.0と等しいかまたは4.0より小さい、好ましくは1.0と等しいかまたは1.0より小さい共役酸である置換基を表す。
【0014】
pKa値は、以下の式:
pKa=−log
10Ka
として表され得るよく知られた変数であって、ここで、Kaは、熱力学的酸解離定数を示す。
【0015】
全ての酸物質のpKa値は、文献によって知られているかまたは必要に応じて簡単に測定することができる。
【0016】
Yは、好ましくは、Cl、Br、I、HSO
4、NO
3、CH
3SO
3、およびp−トルエンスルホン酸ならびにそれらの混合物から選択され得る。
【0017】
X、R’、AおよびVの定義において、C
x−C
yの直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖は、好ましくはそれぞれの鎖長を有する直鎖または分枝鎖のアルカン−ジイルである。環状の炭化水素鎖は、好ましくはC
3−C
10−シクロアルカン−ジイルである。芳香族の炭化水素鎖は、好ましくはC
6−C
12−アレーン−ジイルである。前述の炭化水素鎖が置換される場合、好ましくはそれぞれの鎖長の直鎖または分枝鎖のアルキルを有するC
3−C
10−シクロアルキル、またはC
6−C
12−アリールである。これら全ての基は、それぞれの記号を用いて掲記されている基でさらに置換され得る。
【0018】
さらに特に好ましいアルカン部分の鎖長が、特定の記号を用いて掲記されている。環状部分、シクロヘキサン−ジイルの場合にはシクロヘキサン部分、特にシクロヘキサン−1,4−ジイル部分がより好ましい。芳香族部分は、好ましくは、フェニレンまたはフェニルであり、場合に応じて、フェニレンについては、1,4−フェニレンが特に好ましい。
【0019】
ホスホナートBの反応パートナーの個々の部分は、以下のような種から有利に選択され得る:
部分 好ましい 最も好ましい
X C
2−C
30 C
2−C
12
[A−O]
x−A [A−O]
x−A
V C
2−C
30 C
2−C
12
[A−O]
x−A [A−O]
x−A
ここで、XおよびVの両方は独立して、
A C
2−C
6 C
2−C
4
x 1−100 1−100
Z C
1−C
3
M H、C
1−C
6 H、C
1−C
4
n 1−100 1−25
【0020】
反応パートナーTの個々の種の特定の例は、通常、以下のラジカルとして列挙される:(i) 式MOOC−X−N(U)−のアミノ酸;
(ii) 式MOOC−C(X
2)
2−N(U)−のα−アミノ酸;
(iii) 式MOOC−X−S−のチオ酸;
(IVi) 式[X(HO)
n'(N−U)
n']
n''−のアミノアルコール(化合したポリ種および/またはモノ種を含む);
(Vi) 式U−N(U)−[X−N(U)]
n'''−に対応するジアミンおよびポリアミン;
(VIi) 式D−S−のチオール;
(VIIi) 式CN−のシアン化物;
(VIIIi) 式MOOC−X−O−のヒドロキシ酸;
(IXi) 式MOOC−C(X
2)
2−O−のα−ヒドロキシ酸;
(Xi) 式NHR’’−のアミン;および
(XIi) 式(DCO)
2−N−のイミド。
【0021】
(ii)の好ましい種において、X
2は、以下の部分;SR’、OR’、COOH、NH
2およびOHのいずれか1つまたはそれ以上によって置換され得る。同様の好ましいα−アミノ酸の例は、グルタミン酸、メチオニン、リジンおよびトレオニンである。(XIi)におけるDは、独立して選択され得る。
【0022】
反応パートナーTにおける個々の部分は、ホスホナートBの反応パートナーに関して列挙されている、好ましい種およびもっとも好ましい種を含めて、同様に与えられた部分から有利に選択され得る。これは、特に、パートナーTの式(e)におけるすべての構成要素に対して適用される、さらなる(Bに対する)パートナーTの要素は、以下の意味を有する。
【0023】
部分 好ましい 最も好ましい
X
2 H、C
1−C
12 H、C
1−C
10
n’、n’’ 1−50 1−25
n’’’ 1−100 1−50
R’’ C
1−C
30 C
1−C
16
A’O−[A−O]
x−A A’O−[A−O]
x−A
D C
1−C
30、H C
1−C
16、H
A’O−[A−O]
x−A A’O−[A−O]
x−A
ここで、R’’およびDの両方は独立して、
A C
2−C
6 C
2−C
4
x 1−100 1−100
A’ C
1−C
30
W ZPO
3M
2
U H、C
1−C
8、 好ましいものと同様
−X−N(ZPO
3M
2)(ここで、XはC
2−C
12であり、ZはC
1−C
3である)
【0024】
その結果、反応パートナーTおよび前駆体の適切な種の例は、以下に掲記される:
A 種 前駆体
(i) 6−アミノヘキサン酸 H
(*)
(ii) アスパラギン酸;リジン H
(iii) チオグリコール酸 H、アルカリ金属
(IVi) ポリ(アミノアルコール) H
ジプロパノールアミン H
2−(2−アミノエトキシ)エタノール H
(Vi) ポリ(エチレンイミン) H
ポリアリルアミン H
(VIi) チオール、チオール酸 H、アルカリ金属
(VIIi) シアン化物 H、アルカリ金属
(VIIIi) ヒドロキシ酸 H
(IXi) α−ヒドロキシ酸 H
(Xi) アミン H
(XIi) イミド H、アルカリ金属
(*) 対応するラクタムが使用される場合を除く。
【0025】
(Vi)におけるアミン部分は、直鎖ポリエチレンイミンのように炭化水素鎖中に組み込まれていてもよく、またはポリアリルアミンにおけるようにアルキル鎖に単結合を介して結合されていてもよく、または分枝ポリエチレンイミンのように両方の構造の混合であってもよい。同様のことが、(IVi)における窒素および酸素に当てはまる。特に、OHとして確認される酸素は、炭化水素鎖の一部であり得るか、単結合を介してその鎖に結合され得るか、または両方の構造の混合であり得る。
【0026】
反応パートナーTの炭化水素部分は、ノルマル種および分枝種を含んでいてもよく、それらによって表されてもよい。例として、用語「ブチル」は、公知の異性体のいずれか一つを表し得、例えば、n−ブチル;イソ−ブチル;sec−ブチル;およびt−ブチルを表し得る。同じように、光学炭素原子を含むパートナーTの定義は、異性体のいずれか一つ(すなわち、D種、L種、D,L種およびそれらの組み合わせ)をいう。
【0027】
本発明の一つの側面において、反応パートナーTの好ましい種は、(i);(ii);(IVi);(Vi);(Xi)および(XIi)の群から選択され得る。同様の好ましい種の例は、以下によって表される:
(i)カプロラクタムまたは6−アミノヘキサン酸;2−ピロリドンまたは4−アミノブタン酸;およびラウリルラクタムまたは12−アミノドデカン酸;
(ii)グルタミン酸;メチオニン;リジン;アスパラギン酸;フェニルアラニン;グリシン;およびスレオニン;
(IVi)2−エタノールアミン;6−アミノヘキサノール;4−アミノブタノール;ジ−(2−エタノールアミン);ジプロパノールアミン;2−(2−アミノエトキシ)エタノール;および3−プロパノールアミン;
(Vi)ジアミノトルエン;1,6−ヘキサメチレンジアミン;1,4−ブタンジアミン;1,2−エチレンジアミン;直鎖または分枝鎖のポリエチレンイミン;およびポリアリルアミン;
(Xi)メチルアミン;エチルアミン;プロピルアミン;ブチルアミン;ヘキシルアミン;ヘプチルアミン;オクチルアミン;ノニルアミン;デシルアミン;ドデシルアミン;アニリン;および直鎖種または分枝鎖種を含むC
12−C
22脂肪性アミン;および
(XIi)フタルイミド;スクシンイミド;およびマレイミド。
【0028】
本発明の別の側面において、反応性パートナーTの好ましい種は、(iii);(VIi);(VIIIi);および(IXi)の群から選択され得る。同様の好ましい種の例は、以下によって表される:
(iii)チオグリコール酸;およびシステイン;
(VIi)メチルチオール;エチルチオール;プロピルチオール;ペンチルチオール;ヘキシルチオール;オクチルチオール;チオフェノール;チオナフトール;デシルチオール;およびドデシルチオール;
(VIIIi)3−ヒドロキシプロパン酸;4−ヒドロキシブタン酸;5−ヒドロキシペンタン酸;および2−ヒドロキシ酢酸;ならびに、
(IXi)酒石酸;ヒドロキシコハク酸;およびα−ヒドロキシイソ酪酸。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、化合物において、
(i)基TにおけるXは、CH(COOH)−CH
2ではなく、
かつ、化合物において、
(ii)CX
22は、−CH(CH
2−COOH)−ではない。
【0030】
本発明の特に好ましい実施形態において、基(i)は、以下の基:
MOOC−X’−N(U)− (i')
であり、ここで、
X’は、CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−CH
2−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
5−または−(CH
2)
11−であり、
MおよびUは、上記で与えられる意味を有し;
そして/または、
基(ii)は、以下の基:
MOOC−C(X
2’)
2−N(U)− (ii')
であり、ここで、
−C(CX
2')
2−は、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−CH(CH(CH
3)
2)−、−CH(CH
2−CH(CH
3)
2)−、−CH(CH(CH
3)(C
2H
5))−、−CH(CH
2−CH
2−S−CH
3)−、−CH(CH
2OH)−、−CH(CH(OH)−CH
3)−、−CH(CH
2−SH)−、−CH(CH
2−CH
2−COOH)−または−CH(CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−NH
2)−であり、そして
MおよびUは、上記で与えられる意味を有する。
【0031】
本発明のホスホナート化合物は、関連する分野において型どおりに利用可能な従来の手段を用いて製造され得る。一つのアプローチにおいて、反応性ホスホナートおよび反応パートナーは、水性媒体中で、両種の化学量論的割合を、それによって必要な置換度を考慮して、加えることによって結合させる。本発明のホスホナート化合物の製造方法は、以下の一般式:Y−X−N(W)(ZPO
3M
2)を有するホスホナート化合物(ここで、Yは、pKaが4と等しいかまたは4より小さい、好ましくはpKaが1と等しいかまたは1より小さい共役酸である置換基である)を、一般には0℃よりも高い温度にて、通常10℃から200℃、好ましくは50℃から140℃の範囲の温度にて、7またはそれよりも高いpH、しばしば8〜14の範囲のpHを有する水性媒体中において、(i)〜(XIi)の群から選択される反応物と反応させることを含む。適切な圧力抑制に供することを条件に、例えば標準圧力容器を用いてより高い反応温度を使用することが可能である。pH値は、その反応温度にて反応媒体中で測定される。好ましい実施において、製造方法は、アルカリ金属ヨウジド(例えば、ヨウ化物に対するT部分のモル比は、5000:1から1:1の範囲内であるように)の存在下で行われる。ヨウ素イオンは触媒として作用し、それによってB部分と反応パートナーTとの反応を促進する。最小レベルのヨウ素イオンの存在によって、(例えば、対応する塩素構造と比較して)より反応性の誘導体のその場での形成がもたらされる。
【0032】
ホスホナートの回収は、好ましくは、当業者によって自体公知の方法によって行われる。例えば、遊離ホスホン酸は、例えば濃塩酸を用いた反応混合物の酸性化によって沈澱し、濾過され、洗浄され、そして乾燥され得る。さらなる精製は、例えば再結晶化またはクロマトグラフィー法によって行われる。
【0033】
本発明のホスホナートT−Bは、好ましくは、化学工業および製薬工業、繊維工業、石油工業、製紙工業、製糖業、ビール工業、農薬工業および農業において使用される。
好ましい使用は、分散剤、水処理剤、スケール防止剤、医薬品および医薬品中間体、洗剤、二次石油採収剤、肥料ならびに微量栄養素(植物用)としての使用である。
本発明のホスホナート化合物は、実施例IからXXを用いて説明される。その趣旨で、ホスホナート部分B前駆体を、反応パートナーT前駆体と以下のように反応させる。