特許第5715422号(P5715422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715422
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】歯肉ウェハー
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20150416BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   A61K9/70
   A61K31/5513
   A61K31/138
   A61K47/38
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-550060(P2010-550060)
(86)(22)【出願日】2009年2月27日
(65)【公表番号】特表2011-514353(P2011-514353A)
(43)【公表日】2011年5月6日
(86)【国際出願番号】EP2009001439
(87)【国際公開番号】WO2009115178
(87)【国際公開日】20090924
【審査請求日】2012年2月14日
(31)【優先権主張番号】102008014533.5
(32)【優先日】2008年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100151068
【弁理士】
【氏名又は名称】塩崎 進
(72)【発明者】
【氏名】アスムッセン,ボードー
(72)【発明者】
【氏名】ジモン,ミヒャエル
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特表平05−506655(JP,A)
【文献】 特開昭59−196814(JP,A)
【文献】 特表2007−502823(JP,A)
【文献】 特表2004−538085(JP,A)
【文献】 特開2001−335470(JP,A)
【文献】 特開2002−114677(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0292520(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/70
A61K 31/138
A61K 31/5513
A61K 47/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その2つの長手側部の一方の縁部に、上唇小帯または下唇小帯が切り欠きを通るような寸法および配置であるノッチを有し、20〜300μm厚さを有する材料ストリップと、少なくとも1種の有効成分とを含む、歯茎を介した有効成分の経粘膜投与のためのストリップ形状の投与形態であって、カットが最も深いノッチの箇所におけるノッチの深さが、材料ストリップの高さの2分の1よりも小さくないことを特徴とする、前記ストリップ形状の投与形態。
【請求項2】
0.3〜1.5cmの高さを有することを特徴とする、請求項1に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項3】
0.5〜1.0cmの高さを有することを特徴とする、請求項2に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項4】
1.0〜12.0cmの幅を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項5】
2.0〜6.0cmの幅を有することを特徴とする、請求項4に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項6】
ノッチが、楔形、長方形、先端が尖ったテーパー状、または少なくとも末端が多角形であるか、または、略楕円形もしくは略円形の切り欠きであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項7】
ノッチが、最も幅広い箇所において1〜10mmの幅を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項8】
ノッチが、カットの最も深い箇所において2〜13mmの深さを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項9】
材料ストリップが、使用者の歯茎の形状に適合する軟質材料で作製されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項10】
有効成分が、活性化粧品成分または活性医薬成分であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項11】
材料ストリップが多層であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のストリップ形状の投与形態。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のストリップ形状の投与形態の、歯茎の粘膜を介した薬剤の経粘膜投与のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯茎の粘膜を介して有効成分を投与するための、ストリップ形状の投与形態(form of administration)に関する。
【0002】
口内への適用のためのストリップ形状の製品は、化粧品分野でデンタルケア製品として販売されている。例えば、市販の歯用ホワイトニングストリップであって、歯漂白組成物を含み、歯と漂白組成物との長期にわたる接触を達成するために歯の上に置かれるものがある。かかる歯用ホワイトニングストリップは、例えば、US 5,879,691、US 6,045,811およびUS 6,136,297の特許明細書、ならびに出願公開US 2006/0292520 A1に記載されている。
【0003】
活性医薬成分の経口投与のためのストリップ形状の製品は、口内で崩壊する投与形態の形で入手可能である。これらのストリップ形状の投与形態は、通常「口内薄片」または「ウェハー」と呼ばれる。すでに上市されているこのタイプの製品は、例えば、Triaminic(登録商標)、Theraflu(登録商標)、Gas-X(登録商標)またはBenadryl(登録商標)の商標で販売されている製品である。これらの製品は、投与形態が口内で迅速に崩壊するように設計された医薬製剤である。その急速な崩壊は、それに含まれる活性医薬成分の嚥下を容易にすることを意図したものである。嚥下の後、活性医薬成分は、胃腸管で吸収される。これらの市販のストリップ形状の投与形態により投与される活性医薬成分は、したがって、「初回通過」代謝を受ける。
【0004】
「初回通過」代謝を回避する1つの可能性は、粘膜を直接介した活性医薬成分の吸収である。粘膜中の血液循環は毛細血管網を介してなされ、これにより、全身血液循環への有効成分の直接的なアクセスが可能となる。このため、口腔粘膜の毛細血管網への有効成分の拡散によって、「初回通過」代謝を回避することが可能である。これを達成するために、有効成分が時期尚早に嚥下されるのを防がなければならず、粘膜を介した口腔内でのその吸収を増強しなければならない。
【0005】
口唇、頬、硬口蓋および軟口蓋、舌および口腔底が口腔を規定する。口腔の粘膜へのアクセスは容易であるため、口腔は有効成分の経粘膜投与に特に適した部位である。口腔粘膜は、舌下粘膜、頬側粘膜、歯茎の粘膜、口蓋の粘膜、ならびに口唇の粘膜を含む。口腔内の特定の適用部位は、有効成分の生物学的利用性に影響を及ぼし得る。口腔において、有効成分の経粘膜吸収は、主に非角化粘膜、とりわけ、頬の領域および舌の下で主になされる。しかしながら、有効成分はまた、歯茎の角化組織を介して吸収され得る。歯茎を適用部位に選ぶと、3つの大きな利点が得られる:(A)全身血液循環への良好なアクセスが可能な、極めて強い血液循環、(B)そこに適用される投与形態に作用する弱い機械的ストレス、例えば咀嚼運動、(C)活性医薬成分の低減した量が嚥下されるようにする、投与形態の周囲に流入するごくわずかの唾液。
【0006】
生物学的利用性に影響する重要な要素は、吸収能のある(absorptive)上皮組織と活性医薬物質との接触時間である。原理上、急速崩壊性の投与形態でも確かに部分的な吸収は起るが、それは有効成分が経粘膜吸収に関する有利な物理化学的性質、例えば、低い分子量、親油性などを有する場合のみである。大多数の有効成分、特に、経粘膜投与が有利であるペプチド剤において、吸収能のある粘膜表面との長い接触時間が、有効成分が治療効果を達成するのに必要な量で吸収されるのを可能にするために極めて重要である。
【0007】
スプレー液以外で、口腔粘膜を介して有効成分を投与するために市販されているものは、とりわけ種々の錠剤型製剤である。舌下錠、例えば、ニコチンを含有するNicorette(登録商標)マイクロタブ、または有効成分としてアポモルフィンを含有するUprima(登録商標)錠などがある。さらに、バッカル錠、例えば、フェンタニルを含有するFentora(登録商標)、または有効成分としてプロクロルペラジンを含有するBuccastem(登録商標)などがある。しかしながら、かかる錠剤は、(A)これらが舌の下に異物を有している感覚をもたらすことによる不快な口あたり、(B)吸収の程度の変動性、および(C)完全な錠剤が嚥下される危険性が除外できないこと、を含む、いくらかの不利点を有する。
【0008】
これらの不利点を回避するか、または少なくとも改善するために、それによって有効成分が口腔内で粘膜を介して確実に投与され得る投薬形態(dosage form)であって、該投薬形態が患者の邪魔にならない口内の部位に適用され、長期間にわたっても装着され得るものを有することが望ましい。加えて、誤適用を回避するために、投薬形態が、使用者に自明の正しい位置のみが可能であるように適合していることが有利である。
【0009】
この目的は、本発明により、口腔内適用のための、特に外側歯茎の領域を被覆するための、ストリップ形状の投与形態を提供することによって、驚くほど簡単な方法で達成される。本発明による投与形態は、歯茎の粘膜との緊密な接触および吸収能のある組織上での長い滞留時間を可能にし、それによって歯茎の粘膜を介した有効成分の経粘膜吸収を強化する。
【0010】
本発明の主題は、材料ストリップ(strip of material)と少なくとも1種の有効成分とを含む、歯茎を介した有効成分の経粘膜投与のためのストリップ形状の投与形態である。
【0011】
本発明によるストリップ形状の投与形態は、材料ストリップの2つの長手側部(longitudinal side)のうちの一方の縁部(edge)にノッチ(notch)を有する。本発明による投与形態において、ノッチは通常長手縁部の中央に設けられる。ノッチは、しかしまた、材料ストリップの端部(end)の一方により近く設けられていてもよい。このノッチは、投与形態を使用したときに、上唇小帯(Frenulum labii superioris)または下唇小帯(Frenulum labii inferioris)がその間を通る材料ストリップにおける切り欠き(cut-out)である。小帯は口腔粘膜で覆われた、口腔前庭に突き出た結合組織の細い襞であり、口の正中面を、口唇の内部から歯槽突起の歯肉へ向けて伸びている。上唇小帯は、下唇小帯より明瞭である。本発明による投与形態の材料ストリップにおけるノッチは、したがって、本発明の投与形態が歯茎上に正しく配置されることを確実にする。薬物動態学的再現性、適用の安全性、および患者のコンプライアンスが、特に長期間投与することを要する医薬に関し、それによって顕著に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明による投与形態の上歯茎上および下歯茎上の正しい配置を例示した図である。
図2A-2E】図2A−2Eは、本発明による投与形態の種々の態様を示した図である。
図3A-3E】図3A−3Eは、ノッチの種々の可能な構成を示した図である。
【0013】
以下に、本発明による投与形態を、図面を参照してより詳細に説明する。図面は本発明を例示によってのみ解説するためのものであり、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0014】
本発明による投与形態(1)、または、本発明によるストリップ形状の投与形態の材料ストリップは、それぞれ、好ましくは0.3cm〜1.5cmの高さ(h)、より好ましくは0.5cm〜1.0cmの高さを有する。
【0015】
本発明による投与形態、または、本発明による投与のストリップ形状の投与形態(1)の材料ストリップは、それぞれ、好ましくは1.0cm〜12.0cmの幅(b)、より好ましくは2.0cm〜6.0cmの幅を有する。
【0016】
本発明による投与形態(1)、または、本発明によるストリップ形状の投与形態の材料ストリップは、それぞれ、好ましくは10μm〜500μmの厚さ(d)、より好ましくは20μm〜300μmの厚さを有する。
【0017】
本発明のストリップ形状の投与形態(1)は、様々な幾何学的形状を有していてもよい。好ましくは、投与形態は、弧状の輪郭、角のある(angular)輪郭、直線状の(rectilinear)輪郭、または前記輪郭の組合せから生じる輪郭を有する。特に好ましい幾何学的形状は、図2A〜2Eに示してある。
【0018】
本発明による投与形態(1)は、その2つの長手縁部の一方にノッチ(2)を有する。「ノッチ」は、材料ストリップの長手縁部の一方に提供されるギャップ、切り込みまたは切り欠きを意味するものとする。材料ストリップの2つの長手縁部の一方に位置するノッチ(2)は、ほぼあらゆる形状であってよい。特に好ましくは、ノッチ(2)は、弧状の輪郭、角のある輪郭もしくは直線状の輪郭、または前記輪郭の組合せから生じる輪郭を有する。ノッチは、例えば、楔形、長方形、先端が尖ったテーパー状(tapered to a point)、少なくとも末端が多角形(terminally polygonal)となるよう、または、略楕円形もしくは略円形の切り欠きとなるよう構成されてもよい。とりわけ好ましいノッチ(2)の構成は、図3A〜3Eに示してある。
【0019】
ノッチ(2)は、カットが最も深いノッチ(2)の箇所において、好ましくは2mm〜13mmの深さ(t)を有する。
好ましい態様において、ノッチ(2)の深さは、材料ストリップの高さ(h)の10分の1、9分の1、8分の1、7分の1、6分の1、5分の1、4分の1、3分の1または2分の1よりも小さくない。
【0020】
好ましい態様において、ノッチ(2)の深さ(t)は、材料ストリップの高さ(h)の10分の9、9分の8、8分の7、7分の6、6分の5、5分の4、4分の3、3分の2または2分の1を超えない。
【0021】
ノッチ(2)は、その最大幅に関して、好ましくは1mm〜10mmの幅(w)を有する。ノッチの最大幅は、通常、ノッチの縁部が材料ストリップの長手縁部と出合うところである。
【0022】
好ましい態様において、ノッチ(2)の幅は、材料ストリップの幅(b)の2分の1〜833分の1、好ましくは10分の1〜100分の1に達する。
【0023】
ノッチは、投与形態が正しく歯茎上に置かれた場合に、上唇小帯(3)または下唇小帯(4)が切り欠きを通るような寸法および配置とする。ノッチは、投与形態が歯茎上において予め定められた部位でのみ使用可能となり、この部位が繰返し適用する場合においても同じまま維持され、それによって、投薬形態に対し、そしてしたがって、生物学的利用性に対して影響を及ぼす要因が常に不変のまま維持されることを確実にする。
【0024】
本発明によるストリップ形状の投与形態(1)は、堅い材料でできていても、軟質の材料でできていてもよい。ヒトによって、および/または、動物において用いられる医薬および/または化粧品に適した多数の材料、すなわち望まない副作用が少しもない材料が考慮される。望まない副作用は、例えば毒性作用、刺激(irritation)の惹起またはアレルギー反応の誘発などである。適切な材料は、例えば、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、コポリマーフィルム、紙、ワックス、織物(不織布、編布(knitted fabric)および織布)、チョーク(chalk)、フィルム、ゲルおよび木質複合材料(wood composite)、ならびに前記材料の組合せであってもよい。
【0025】
ストリップ用材料として適切な具体的な高分子は、セルロースエーテル、アクリル酸メチル、ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなど、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリレートポリマー、架橋ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルキルエーテル−マレイン酸イミドコポリマーおよびカルボキシビニルポリマーからなる高分子の群から選択されてもよい。
【0026】
適切な高分子はまた、マリンコロイド、天然ガムおよび多糖類からなる高分子の群から選択されてもよい。これらの高分子は、例えば、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、アカシアガム、アラビアガム、グアーガム、プルラン、寒天、キチン、キトサン、ペクチン、カラヤガム、ゼイン、ホルデイン、グリアジン、イナゴマメミール(carob meal)、トラガカントおよび他の多糖類、澱粉、例えばマルトデキストリン、アミロース、アミロペクチン、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、コメ澱粉、タピオカ澱粉、エンドウ澱粉、サツマイモ澱粉、オオムギ澱粉、コムギ澱粉、ワックス状トウモロコシ澱粉、化工澱粉、デキストリン、レバン、エルシナンおよびグルテンなど、および、タンパク質、例えば、コラーゲン、ホエイタンパク質、カゼイン、乳タンパク質、大豆タンパク質、ゼラチン、ワックスおよびコロホニー、ならびに合成ロウおよび蜜ロウなどを含む。
【0027】
前記高分子の2種または3種以上を組合わせることによって、材料ストリップの特性、例えば、粘膜付着性、柔軟性、溶解性挙動、膨潤挙動などを、所望および要求に応じて適合させることができる。
【0028】
材料ストリップまたは材料ストリップの複数の層は、少なくとも1種の高分子を含み、これは材料ストリップまたは1もしくは2以上の層の主要成分(essential component)となる。高分子の分量は、各場合において、それぞれ材料ストリップまたは層に対して、少なくとも5重量%であり、90重量%を超えず、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%である。
【0029】
材料ストリップまたは材料ストリップの個々の層は、化学的または物理的特性、例えば、柔軟性、粘膜付着特性、崩壊性、膨潤性および/または拡散特性などを制御するために、賦形剤または添加物をさらに含んでもよい。
【0030】
賦形剤または添加物として考慮されるものは、特に、抗酸化剤、乳化剤、ゲル化剤、風味増強剤、矯味剤、フレーバー、甘味料、安定化剤、pH調整剤、酸性化剤、バルク剤、防腐剤、着色剤、増粘剤、可塑剤および湿潤剤を含む群から選択される物質である。当業者は、医薬用途のために承認された好適な賦形剤および添加物を承知している。
【0031】
多くの有効成分、特にペプチド薬剤は、粘膜を介して不十分にしか吸収されないため、いわゆる増強剤、すなわち吸収を可能にする、および/または、促進する物質の添加が極めて重要である。
【0032】
増強剤は、以下の物質または物質の群から選択することができる:飽和または不飽和脂肪酸、炭水化物、直鎖状または分枝状脂肪アルコール、胆汁酸塩および胆汁酸誘導体、シクロデキストリン、ジメチルスルホキシド、合成および非イオン性乳化剤、リン脂質、プロピレングリコール、デカノール、ドデカノール、2−オクチルドデカノール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよび他の糖アルコール、イソプロピリデングリセロール、トランスクトール(=ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、DEET(=N,N−ジエチル−m−トルエンアミド)、ソルケタール、エタノール、1−2−プロパンジオールまたは他のアルコール、メントールおよび他の精油または精油の成分、ラウリン酸ジエタノールアミド、D−アルファ−トコフェロールおよびデクスパンテノール、キレート剤、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)など。このリストは、網羅的ではない。
【0033】
これらの賦形剤の分量は、各場合において、それぞれ材料ストリップまたは材料ストリップの層に対して、好ましくは0.5〜40重量%、とりわけ1〜30重量%とすることができる。
【0034】
材料ストリップは、投与形態を歯茎に適用した後特定の期間内に歯茎上で分解する材料で作製することができる。投与形態は、分解する前に、口腔内または歯茎の粘膜に活性成分を放出してもよく、および/または、有効成分の放出は投与形態の分解の後に生じてもよい。投与形態の分解はいかなる様式で生じてもよく、例えば、機械的、化学的または物理的ストレスによって生じてもよい。したがって、投与形態は、直接または化学的反応の後、溶解によって分解してもよい。機械的ストレスの場合、これは、例えば、剪断プロセスまたは破砕(grinding)プロセスであってもよい。物理的ストレスとしては、増大した温度を挙げることができる。本発明による投与形態は、例えば、互いに視覚的に識別できない小片に崩壊してもよく、または、連続的なゲル層が形成されてもよい。しかしながら、材料ストリップはまた、投与形態の使用中に、唾液に溶解する水溶性成分に崩壊してもよい。
【0035】
本発明による投与形態の他の態様において、材料ストリップは、水に分散可能な、水不溶性であるが分解性の、少なくとも1種の高分子からなる。これは、高分子が小断片に解体(break down)することを意味する。高分子は水不溶性であるが、膨潤性である。高分子が使用中に解体しない他の態様において、高分子は、撥水性高分子、または耐水性の(water-stable)親水性高分子、例えば、一部のタイプのセルロース、例えば紙などであってもよい。いくつかの態様において、歯肉ストリップは、フィルム形成材料の混合物を含んでもよい。
【0036】
水不溶性材料ストリップの場合、または、多層材料ストリップの水不溶性層の場合、使用後に残っている1または2以上の層は、所定期間後、歯茎から取り除かれなければならない。
【0037】
本発明による投与形態(1)は、単純な態様において、単層材料ストリップを含むが、材料ストリップはまた、複数の層または板状物(ply)からなってもよい。
【0038】
例えば、材料ストリップは、高分子および/または接着剤を含む第1の層、有効成分または機能的組成物を含む第2の層、および、さらなるもしくは追加の成分を提供するか、または投与形態に特定の特性を与える1もしくは2以上の追加の層を含んでもよい。
【0039】
特に好ましい態様において、外層のうちの1つは、投与形態の粘膜への接着を促進するため、および、直接接触を提供することにより粘膜を介した有効成分の吸収を促進するために、粘膜付着性であってもよい。
【0040】
多層材料ストリップは、特に、患者が正しい側、すなわち、そこから有効成分が歯肉の粘膜に放出され得る側を粘膜に適用することを確実にするために、マーキングが施されていてもよい。このマーキングは、例えば、複数の層のうちの1つにおける印(imprint)、色のついた層、または他のマーキングであってもよい。
【0041】
水不溶性層は保護層として用いることができ、それは有効成分が口腔に放出されるのを防ぎ、放出が歯肉組織へ向けて生じることを確実にする。さらにまた、有効成分を水不溶性層、いわゆるマトリックス層に埋め込むことができ、有効成分はそこから長い適用期間にわたり、複数の孔を介した拡散によって放出される。一旦有効成分が放出されると、投与形態は、それが非消化性材料からなる場合は、除去する必要がある。
【0042】
本発明によるストリップ形状の投与形態(1)は、有効成分を含む。有効成分は活性医薬成分、すなわち治療目的、予防目的、または診断目的の薬剤であってもよく、あるいは、それは活性化粧品成分であってもよい。
【0043】
経粘膜投与形態による投与が有利な、多数の適切な有効成分が存在し、中でも、鎮痛薬、抗不整脈剤、抗痴呆剤、止痢剤、制吐剤、抗癲癇薬、抗高血圧剤、抗眩暈剤、コルチコイド、ホルモン、強心剤、冠血管剤(coronary agent)、片頭痛鎮痛剤、神経弛緩薬、精神薬理学剤、鎮静剤などの群に存在する。
【0044】
歯肉からの吸収に関して、以下の有効成分、または、その誘導体および塩のそれぞれが、特に好ましい:アルプラゾラム、アポモルフィン、アセチルサリチル酸、ブプレノルフィン、カプトプリル、クロルプロマジン、コデイン、シアノコバラミン、デキサメタゾン、デキストロメトルファン、ジアゼパム、ジクロフェナク、ジルチアゼム、ドンペリドン、エルゴタミン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、フェンタニル、イソソルビドジニトレート、レボノルゲストレル、ロペラミド、ロラゼパム、メタドン、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、メトクロプラミド、メトロニダゾール、ミコナゾール、モルヒネ、ナルブフィン、ニフェジピン、ニコチン、ニトログリセリン、ノレルゲストロミン、酢酸ノルエチステロン、ノスカピン、オランザピン、オメプラゾール、オキサゼパム、オキシブチニン、ペチジン、プロクロルペラジン、プロプラノロール、リスペリドン、ロチゴチン、テストステロン、チモロール、ベラパミル、ビタミンB12
【0045】
より一層好ましいのは、ペプチド薬剤、中でも<10kDaの分子量を有するタンパク質、例えばカルシトニン、デスモプレシン、GLP−1アナログ、例えばエキセナチドなど、グルカゴン、GnRHアナログ、例えばブセレリンなど、インシュリンおよびそのアナログ、ロイエンケファリン、ナファレリン、オキシトシン、プロチレリン、バソプレシンおよびソマトスタチンアナログ、例えばオクトレオチドなどの、口腔粘膜を介した非経腸適用である。このリストは、網羅的ではない。記載された投与形態は、原則として任意の適切な有効成分と共に用いることができる。
【0046】
本発明による投与形態(1)の材料ストリップは、有効成分のためのキャリアとして機能する。有効成分のためのキャリアであるとは、有効成分のあらゆる種類の包含物(containment)を意味する。有効成分は、例えば、分散物、エマルジョンまたは溶液の形で、窪みまたはポケット中の貯留物(depot)として含まれていてもよい。しかし、材料ストリップはまた、有効成分の分散物、エマルジョンまたは溶液をしみ込ませてもよく、または、有効成分含有コーティングを備えていてもよい。
【0047】
例1:
単層の構成を有する粘膜付着性歯肉ウェハーを、以下の組成(重量パーセント表示)を用いて調製した:
ロラゼパム 7.81%
カルボキシルメチルセルロースナトリウム 7LF 25cP 60.69%
グリセリン 18.0%
ベータ−シクロデキストリン 10.0%
メントール 2.5%
サッカリンナトリウム 1.0%
【0048】
個々のウェハーの形状は、図2Cに示す態様と一致し、41mmの幅(b)、8mmの高さ(h)、5mmのノッチの幅(w)、4mmのノッチの深さ(t)および4.2mmの側面湾曲(lateral curvatures)半径を有していた。単位面積質量(乾燥)は、40g/mであり、厚み(d)は、50μmであった。
これらの寸法で、ウェハーの面積は3.2cmであり、それは1.0mgの一回量のロラゼパムを含んでいた。
【0049】
例2:
二層の構成を有する歯肉ウェハーを調製し、それは、保護層としての第1の水不溶性層と、有効成分を含む第2の粘膜付着性層を有していた。
【0050】
有効成分含有層は歯茎に適用されるためのものであり、一方、水不溶性層は口内での有効成分の溶解を減らし、それによって有効成分の嚥下を減らすためのものである。2つの層を識別するために、粘膜付着性層を白で着色し、保護層を赤で着色した。
【0051】
保護層は、以下からなっていた(重量パーセント表示):
エチルセルロースN100 50.0%
エチルセルロースN 50 15.0%
ミグリオール812 34.0%
赤色酸化鉄(iron oxide red)E 1.0%
保護層は、45g/mの単位面積質量(乾燥)および60μmの厚さを有した。
【0052】
有効成分プロプラノロールを含む粘膜付着性層は、以下からなっていた(重量パーセント表示):
プロプラノロールHCl 10.416%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース50cPs 73.084%
ポリエチレンオキシドWSR N−10 7.0%
グリセリン 7.0%
二酸化チタン 2.5%
層は、150g/mの単位面積質量および110μmの厚さを有した。
【0053】
二層ウェハーの厚さ(d)は、170μmであった。個々の二層ウェハーの他の寸法は、単層の態様に関して例1に示した寸法と一致した。3.2cmの総面積で、一回量のプロプラノロールは5.0mgであった。
図1
図2A-2E】
図3A-3E】