(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715437
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】骨ねじ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/68 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
A61B17/58 310
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-35428(P2011-35428)
(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公開番号】特開2011-177507(P2011-177507A)
(43)【公開日】2011年9月15日
【審査請求日】2013年12月16日
(31)【優先権主張番号】10154810.5
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/308,464
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート・マティス
【審査官】
堀川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0298889(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0318981(US,A1)
【文献】
米国特許第04484570(US,A)
【文献】
特表平09−509333(JP,A)
【文献】
国際公開第01/026568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨ねじであって、
第1の端(2)および第2の端(3)を有する管状体(1)を備え、前記管状体は空洞を規定する管状壁を有し、半径方向における前記壁の厚み(d)は前記空洞の内側半径(r)よりも小さく、前記管状壁を完全に貫通して前記空洞内におよぶ複数の凹部(5,5′)が設けられ、前記骨ねじはさらに、
前記管状壁の外部管状表面部上の外部骨ねじ山(4,4′)と、
ドライバに係合して前記骨ねじを骨の中で前進させるように構成された、前記第1の端(2)における頭部(8)と、
前記第2の端における先端部(9,9′)とを備え、
前記管状体、前記頭部および前記先端部は一体成形され、
前記先端部(9′)は、該先端部を完全に貫通する同軸ボア(91)を含み、
前記骨ねじは、他の同軸ボア(21)を有する案内部材(20)をさらに備え、前記他の同軸ボア(21)は前記案内部材を貫通して前記案内ワイヤ(100)を案内し、
前記案内部材(20)はその全体が前記筒状体(1)の中に配置される、骨ねじ。
【請求項2】
前記頭部(8)は、前記第1の端(2)における前記管状体の内径以上の直径の同軸ボア(83)を有する、請求項1に記載の骨ねじ。
【請求項3】
前記頭部(8)は、前記管状体の外径よりも大きい最大外径を有する、請求項1または2に記載の骨ねじ。
【請求項4】
前記頭部(8)は、前記管状体の前記第1の端に隣接する実質的に平坦な表面部を含む、請求項1から3のいずれかに記載の骨ねじ。
【請求項5】
前記案内部材(20)は、前記頭部の前記同軸ボア(83)を閉鎖するために前記同軸ボア(83)に挿入可能なプラグ状部材(20)である、請求項2に記載の骨ねじ。
【請求項6】
前記頭部(8)は、前記管状体の前記第2の端(3)と反対の方向を向いている上側(81)に凹部(84)を有し、前記凹部(84)は前記ドライバとの嵌合係合を与えるための構造を有する、請求項1から5のいずれかに記載の骨ねじ。
【請求項7】
前記管状体の前記壁の厚み(d)は、前記管状体の前記外径の約15%よりも小さい、請求項1から6のいずれかに記載の骨ねじ。
【請求項8】
前記骨ねじ山(4)は、前記管状壁の外面全体に沿って延在する、請求項1から7のいずれかに記載の骨ねじ。
【請求項9】
前記管状体(1)は円筒形である、請求項1から8のいずれかに記載の骨ねじ。
【請求項10】
前記先端部(9)は、前記第2の端で前記管状体を閉鎖するように構成される、請求項1から9のいずれかに記載の骨ねじ。
【請求項11】
前記案内部材(20)は前記管状体に挿入可能である、請求項1から10のいずれかに記載の骨ねじ。
【請求項12】
前記案内部材が、摩擦によって前記管状体(1)内に保持されるようなサイズのプラグ状部材である、請求項1から11のいずれかに記載の骨ねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨ねじに関する。特に、本発明は固定ねじとして使用可能な骨ねじ、および周囲の骨材料と融合する融合ねじに関する。
【背景技術】
【0002】
融合ねじとして使用可能な骨ねじがUS2004/0015172 A1から公知である。この骨ねじは、骨ねじ山および自身の壁に複数の凹部を有する管状のねじ山部と、管状のねじ山部に接続され得る頭部および先端部とを含む。使用時、管状部に骨材料または他の成長促進材料が充填され得、次に先端部および/または頭部が管状部に接続される。ねじは通常、予め準備された骨のコア孔に挿入される。ねじを骨に挿入した後、ねじと周囲の骨材料との融合が起こる。ねじは、骨の砕けた部分や分裂した部分をねじによって繋ぐための牽引要素として作用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US2004/0015172 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、骨の中での位置を挿入後に修正することができ、かつ必要であれば後で容易に取出すことができる、上記の型の改良された骨ねじを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は請求項1に係る骨ねじによって達成される。さらなる発展が従属項で与えられる。
【0006】
本発明に係る骨ねじは、融合を支持する物質で充填可能であり、正確に位置決め可能である。骨ねじが予め準備されたコア孔に挿入されると、外壁面における骨ねじ山が骨に係合し、ねじは、スクリュードライバでねじを骨により深くねじ込むことによって前進する。骨ねじの位置を調整するために、ねじを緩めて位置を動かすことが必要であり得る。これは、骨ねじの頭部および管状体が緩みや分離の危険性がなく堅固に接続されているため、容易である。
【0007】
骨ねじは骨固定具として作用し得るか、骨の破損部を接続するために、または弱い骨を強化するための支持梁として使用され得る。
【0008】
状況によっては、周囲の骨材料と既に融合した可能性のある埋込まれた骨ねじを後の段階で取出すことが臨床的に必要であり得る。頭部および管状体は一体成形されているため、周囲の骨材料と既に融合した骨ねじを取出すことができる。
【0009】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面によって本発明の実施例の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施例に係る骨ねじの斜視分解図である。
【
図2】ねじ軸に沿って切取られた、
図1の骨ねじの断面側面図である。
【
図4】壁の開口部の変形例における、
図1の骨ねじの管状体の拡大部を示す図である。
【
図5】変形実施例における
図1の骨ねじの断面図である。
【
図6】さらなる変形実施例における
図1の骨ねじの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から
図3に示されるような実施例に係る骨ねじは、第1の端2、第2の端3、およびねじ軸Lを有する管状体1を含む。管状体は実質的に円筒形である。管状体は、空洞を規定する管状壁を有する。管状壁の外面には、いわゆる骨ねじ山4が設けられている。示されるような実施例では、骨ねじ山4は管状体1の全長に沿って設けられている。骨ねじ山4は、骨ねじが骨にねじ込まれると骨に切込むように構成される。さらに、管状壁を完全に貫通して空洞内におよぶ複数の開口部5が管状壁に配置される。開口部5はダイヤモンド形状として示されており、骨ねじ山4の頂同士の間に配置される。しかし、開口部5の形状および配置の任意の他の変形例も想定できる。
【0012】
管状体1によって与えられる空洞は、たとえば骨片などの骨材料を収容するのに好適な体積を有する。管状体1の壁の厚みは、管状体によって形成される空洞の内側半径rよりも小さい。より好ましくは、管状体の壁の厚みは、管状体の外径の約15%よりも小さい。
【0013】
第1の端2に隣接して、頭部8が管状体1と一体成形される。第2の端3に隣接して、先端部9が管状体1と一体成形される。この結果、骨ねじは一体型ねじである。頭部8は、管状体1の骨ねじ山の外径よりも大きい最大外径を有する。特に
図2に示されるように、頭部8は、管状体1と反対の方向を向いている上側81、および管状体1の方向を向いている下側82を有する。上側81の表面はレンズ形状、ドーム形状、平坦またはその他の形状であり得る。下側82の表面は、骨の表面に接するための平坦部を含む。示される実施例では、下側82全体が平坦である。
【0014】
同軸ボア83が上側81から下側82に延在し、管状体1によって形成される空洞に繋がっている。さらに、スクリュードライバに係合するための凹部84が上側81に設けられている。示される実施例では、凹部は星型である。しかし、凹部は、スクリュードライバに嵌合係合可能な六角形または他の多角形状などの、いずれの他の好適な形状であってもよい。凹部84の内径は、同軸ボア83の内径よりも大きい。同軸ボア83のサイズは小さな骨部を導入できるほど十分大きいため、凹部84および同軸ボア83を通じて骨ねじに骨片または他の骨材料を充填することができる。
【0015】
先端部9は、その中をチャネルが貫通していない固体先端部として形成される。
骨ねじは、たとえばステンレス鋼またはチタンなどの生体適合性金属、たとえばニチノールなどのNi−Ti合金などの生体適合性金属合金からなるか、たとえばPEEKなどの生体適合性プラスチック材料からなる。
【0016】
骨ねじの管状体または他の部分は、内部成長促進材料でコーティングされ得るか、骨または血管の内部成長を向上させるために粗面化され得る。
【0017】
使用時、まず、管状体1によって与えられる空洞に骨片が充填される。このようにして準備された骨ねじは次に、予め準備された骨のコア孔に挿入され得る。コア孔内の骨ねじの位置の軽微な修正は、ねじが逆に回されるようにスクリュードライバを逆方向に回転させることによってなされ得る。いくつかの臨床応用例では、骨ねじは、破損した骨の断片を圧縮することによって接続する圧縮ねじとして用いられる。下側に設けられる平坦面は、骨の表面に対する接合点として作用する。一定時間が経過すると、周囲の骨と骨ねじとの融合が起こる。周囲の骨材料と既に融合した可能性のある埋込まれた骨ねじを後の段階で取出すことができる。
【0018】
異なる体積の空洞、異なる直径および異なる長さを有するいくつかの骨ねじのキットが提供され得る。医師は適切な骨ねじを選択し、骨ねじに骨材料を充填し、骨ねじを骨に挿入する。骨ねじは単体であるので、取扱いが容易である。
【0019】
骨ねじ山の変形例が
図4に示される。骨ねじ山の頂4′は一定の間隔で中断され、すなわち、頂部4a′が管状体1の外壁面の周りに螺旋線上に配置される。頂部は、螺旋の方向および逆方向に延在する傾斜面4bを有し得る。開口部5′は楕円形状である。
【0020】
さらに、変形実施例が
図5に示される。この骨ねじの変形実施例は、頭部8の側に空洞を閉鎖するためのプラグ部材10が付加的に設けられているという点で、
図1から
図3に示される実施例と異なる。プラグ部材10は、凹部84に収まることによってボア83およびしたがって空洞が閉鎖されるような輪郭およびサイズを有する。プラグ部材10は、スクリュードライバまたは保持具に係合するための係合部11を有し得る。
【0021】
使用時、空洞に骨材料を充填した後、かつ骨ねじをコア孔に挿入する前に、プラグ部材10が挿入され得る。代替的に、プラグ部材は、骨ねじがコア孔に挿入されて最終位置に配置された後に挿入され得る。
【0022】
さらなる変形実施例が
図6に示される。この変形実施例に係る骨ねじは、案内ワイヤ100を自身の内部に案内可能であるようなサイズのチャネル91を有するカニューレ挿入先端部9′を含む。さらに、管状体に挿入可能な案内部材20が設けられ得る。案内部材20は、主に摩擦によって管状体1内に保持されるようなサイズのプラグ状部材であり得る。案内部材20は、案内ワイヤ100がその中を貫通でき案内部材20によって案内されるようなサイズの同軸ボア21を有する。
【0023】
さらなる変形実施例では、案内部材20の代わりに、
図5に示されるプラグ部材10は、案内ワイヤ100を自身を貫通して案内するための同軸ボアを含む。
【0024】
案内ワイヤともに用いられ得る変形実施例は、最小侵襲手術(MIS)に特に適用される。この場合、案内ワイヤは患者の皮膚に差込まれ、骨ねじが配置されなければならない位置に案内ワイヤが達するまで、組織を通って前進する。案内ワイヤは、適切な方向および深さまで骨に挿入される。骨ねじは次に、骨の表面に達するまで、自身を貫通する案内ワイヤに沿って案内され、その後、案内ワイヤによって案内される骨にねじ込まれる。
【0025】
骨ねじのさらなる変形例が可能である。たとえば、先端部は、骨を切断するように構成された自動切断先端部として形成され得る。
【0026】
頭部8は、管状体1の最大外径以下の最大外径を有し得るため、骨ねじは、骨ねじのどの部分も骨の表面から突出することなく一定の深さまで骨に埋められ得る。
【符号の説明】
【0027】
1 管状体、2 第1の端、3 第2の端、4、4′ 外部骨ねじ山、8 頭部、9、9′ 先端部、10、20 プラグ部材、21、83 同軸ボア、84 凹部、100 案内ワイヤ。