【文献】
高橋 政行,鹿島 康史,永安 正俊,A-17-1 ITS車々間通信における強干渉抑圧方式,電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集,2010年 8月31日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ、及びそのフィルタを具備する受信装置を説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における受信装置1の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、受信装置1は、アンテナ素子11−1、11−2、マルチパス干渉等化フィルタ12、干渉除去部13、同期検出部14、FFT部15−1、15−2、干渉除去部16、復調部17、及びP/S(Parallel / Serial:並直列)変換部18を具備している。
本実施形態における受信装置1は、マルチパス干渉等化フィルタ12を具備している点が、
図11に示した受信装置9と異なる。なお、マルチパス干渉等化フィルタ12を除く各部は、
図11において説明した各部と同じ構成を有しているので、該当する部に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0024】
図2は、本実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ12の構成を示す概略ブロック図である。ここでは、FIRフィルタ部125a、125bが7(=2k−1,k=4)つのタップを有するFIRフィルタを有している場合について説明する。
同図に示すように、マルチパス干渉等化フィルタ12は、遅延素子121a、121bと、干渉抑圧部122a、122bと、スイッチ部123a、123bと、制御部124とを備えている。
【0025】
遅延素子121aは、入力された受信信号X
1に対して、遅延を与えてから出力する。遅延素子121bは、アンテナ素子11−2により受信された受信信号X
2が入力され、入力された受信信号X
2に対して遅延を与えてから出力する。ここで、遅延素子121a、121bが入力される信号に対して与える遅延量は、予め定められた遅延量を1遅延単位とした場合において、(k−1)遅延単位分の遅延量である。
【0026】
干渉抑圧部122aは、受信信号X
1に基づいて、受信信号X
2に含まれる干渉波Iの成分を抑圧する。干渉抑圧部122aは、FIRフィルタ部125aと、減算部126aとを有している。
FIRフィルタ部125aは、アンテナ素子11−1により受信された受信信号X
1が入力され、干渉波Iの送信元からアンテナ素子11−1までのチャネル応答特性H
u1(z)と、干渉波Iの送信元からアンテナ素子11−2までのチャネル応答特性H
u2(z)とに基づいたフィルタ処理を受信信号X
1に対して行い、フィルタ処理結果を示す信号を出力する。減算部126aには、遅延素子121bから出力される受信信号X
2(被減算信号)から、FIRフィルタ部125aが出力する信号を減算し、減算の結果を示す減算信号を出力する。
【0027】
図3は、本実施形態におけるFIRフィルタ部125aの構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、FIRフィルタ部125aは、MMSE(Minimum Mean Square Error;最小平均二乗誤差)部1251と、フィルタ部1252とを有している。フィルタ部1252は、直列に接続され、アンテナ素子11−1により受信された受信信号X
1が入力されている6つの遅延素子1253b〜1253gと、受信信号X
1が入力される重み乗算器1254aと、遅延素子1253b〜1253gそれぞれに対応する重み乗算器1254b〜1254gと、重み乗算器1254a〜1254gの乗算結果の総和を算出する加算器1255とを有している。FIRフィルタ部125aには受信信号X
1が入力され、MMSE部1251が算出したタップ係数(w0,w1,w2,…,w6)に基づいて、フィルタ部1252が受信信号X
1に対してフィルタ処理を行う。ここで、各遅延素子1253b〜1253gが入力される信号に対して与える遅延量は、1遅延単位分の遅延量である。
【0028】
具体的には、重み乗算器1254aは、入力された受信信号X
1に対して、MMSE部1251が算出したタップ係数w0を乗じる。重み乗算器1254bは、遅延素子1253bが遅延させた受信信号X
1に対して、MMSE部1251が算出したタップ係数w1を乗じる。重み乗算器1254cは、遅延素子1253b、1253cが遅延させた受信信号X
1に対してMMSE部1251が算出したタップ係数w2を乗じる。重み乗算器1254dは、遅延素子1253b〜1253dが遅延させた受信信号X
1に対してMMSE部1251が算出したタップ係数w3を乗じる。重み乗算器1254eは、遅延素子1253b〜1253eが遅延させた受信信号X
1に対してMMSE部1251が算出したタップ係数w4を乗じる。重み乗算器1254fは、遅延素子1253b〜1253fが遅延させた受信信号X
1に対してMMSE部1251が算出したタップ係数w5を乗じる。重み乗算器1254gは、遅延素子1253b〜1253gが遅延させた受信信号X
1に対してMMSE部1251が算出したタップ係数w6を乗じる。
【0029】
MMSE部1251は、受信信号X
1に対してフィルタ処理をして得られた信号を受信信号X
2から減算部126aを用いて減算することにより、受信信号X
2に含まれる干渉波Iの成分を打ち消す(抑圧する)ようにタップ係数w0〜w6を算出する。例えば、受信装置1が復調するOFDM信号が送信されていない期間において、干渉波Iのみを受信しているとき、MMSE部1251は、RLS(Recursive Least Square:再帰的最小二乗法)や、LMS(Least Mean Square:最急降下法)、サンプル値を用いた直接解法であるSMI(Sample Matrix Inversion)などのアルゴリズムを用いて、減算部126aから出力する減算信号の電力が最小となるタップ係数w0〜w6を算出する。
【0030】
図2に戻って説明を続ける。干渉抑圧部122bは、干渉抑圧部122aと同様の構成を有しており、FIRフィルタ部125bと、減算部126bとを有している。FIRフィルタ部125bは、受信信号X
2が入力される点がFIRフィルタ部125aと異なるが、同じ構成を有しているのでその説明を省略する。減算部126bは、遅延素子121aから出力される受信信号X
1からFIRフィルタ部125bから出力される信号を減算し、減算の結果を示す減算信号を出力する。
【0031】
スイッチ部123aは、制御部124の制御に応じて、遅延素子121aから出力される信号と、干渉抑圧部122bから出力される減算信号とのいずれか一方を選択し、選択した信号を出力信号Y
1として出力する。スイッチ部123bは、制御部124の制御に応じて、遅延素子121bから出力される信号と、干渉抑圧部122aから出力される減算信号とのいずれか一方を選択し、選択した信号を出力信号Y
2として出力する。
制御部124は、遅延素子121aから出力される受信信号X
1と、遅延素子121bから出力される受信信号X
2と、干渉抑圧部122a、122bそれぞれから出力される減算信号とに基づいて、スイッチ部123a、123bに対する制御を行う。制御部124は、受信信号X
1、X
2ごとに設けられている入出力電力比算出部127a、127bと、基準信号選択部128とを有している。
【0032】
入出力電力比算出部127aには、遅延素子121bから出力される受信信号X
2(被減算信号)と、干渉抑圧部122aから出力される減算信号とが入力される。入出力電力比算出部127aは、減算信号の電力に対する受信信号X
2の電力の比((受信信号X
2の電力)/(減算信号の電力))を示す入出力電力比を算出し、算出した入出力電力比を受信信号X
1に対する入出力電力比として基準信号選択部128に出力する。
入出力電力比算出部127bには、遅延素子121aから出力される受信信号X
1(被減算信号)と、干渉抑圧部122bから出力される減算信号とが入力される。入出力電力比算出部127bは、減算信号の電力に対する受信信号X
1の電力の比((受信信号X
1の電力)/(減算信号の電力))を示す入出力電力比を算出し、算出した入出力電力比を受信信号X
2に対する入出力電力比として基準信号選択部128に出力する。
【0033】
基準信号選択部128は、入出力電力比算出部127a、127bが算出する入出力電力比に基づいて、受信信号X
1と受信信号X
2とのいずれかを基準信号に選択する。具体的には、基準信号選択部128は、入出力電力比算出部127aが算出した入出力電力比と、入出力電力比算出部127bが算出した入出力電力比とのうち、大きい入出力電力比に対応する受信信号を基準信号に選択する。
そして、基準信号選択部128は、基準信号に選択された受信信号を出力するように、スイッチ部123a、123bに対して制御を行う。また、基準信号選択部128は、干渉抑圧部122a、122bのうち、基準信号に基づいて干渉波を抑圧する干渉抑圧部から出力される減算信号を選択するように、スイッチ部123a、123bに対して制御を行う。
【0034】
また、基準信号選択部128は、基準信号に選択した受信信号が入力されているFIRフィルタ部125a、125bのタップ係数w0〜w6のうち、基準信号に与えられる遅延時間(k−1(=3)遅延単位)と同じ遅延時間を与えて演算するタップ係数w3を0にする制御を、FIRフィルタ部125a、125bに対して行う。
【0035】
図4は、本実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ12におけるタップ係数を設定する処理を示すフローチャートである。
マルチパス干渉等化フィルタ12において、タップ係数を設定する処理が開始されると、所望のOFDM信号が送信されていない期間、すなわち干渉波のみを受信している期間において、FIRフィルタ部125a、125bが有しているMMSE部1251は、それぞれのフィルタ部1252の7(=2k−1,k=4)つのタップ係数w0〜w6が収束するまで、所定のアルゴリズムによる演算を繰り返して行い、タップ係数w0〜w6を算出する(ステップS101)。
【0036】
FIRフィルタ部125a、125bにおいて、タップ係数が収束すると、入出力電力比算出部127aは、受信信号X
1に対する入出力電力比を算出し、入出力電力比算出部127bは、受信信号X
2に対する入出力電力比を算出する(ステップS102)。
各入出力電力比が算出されると、基準信号選択部128は、受信信号X
1をFIRフィルタ部125aの入力とする干渉抑圧部122aに対する入出力電力比が、受信信号X
2をFIRフィルタ部125bの入力とする干渉抑圧部122bに対する入出力電力比より大きいか否かを判定する(ステップS103)。
【0037】
ステップS103において、受信信号X
1に対する入出力電力比が受信信号X
2に対する入出力電力比より大きい場合(ステップS103:yes)、基準信号選択部128は、受信信号X
1を基準信号に選択する(ステップS104)。このとき、基準信号選択部128は、スイッチ部123aに対して遅延素子121aから出力される信号を選択させる制御と、スイッチ部123bに対して干渉抑圧部122aから出力される減算信号を選択させる制御とを行う。
一方、受信信号X
1に対する入出力電力比が受信信号X
2に対する入出力電力比以下の場合(ステップS103:no)、基準信号選択部128は、受信信号X
2を基準信号に選択する(ステップS105)。このとき、基準信号選択部128は、スイッチ部123aに対して干渉抑圧部122bから出力される減算信号を選択させる制御と、スイッチ部123bに対して遅延素子121bから出力される信号を選択させる制御とを行う。
【0038】
続いて、基準信号選択部128は、基準信号に選択した受信信号が入力されているFIRフィルタ部125a、125bのタップ係数w0〜w6のうち、基準信号に与えられる遅延時間(k−1(=3)遅延単位)と同じ遅延時間を与えて演算するタップ(基準タップ)のタップ係数w3を0にする制御を、FIRフィルタ部125a、125bに対して行い、干渉波Iを抑圧させる(ステップS106)。
【0039】
上述のようにFIRフィルタ部125a、125bのタップ係数が設定された場合において、マルチパス干渉等化フィルタ12が出力する出力信号Y
1、Y
2について説明する。ここでは、受信信号X
2が基準信号に選択された場合について説明する。
一般に、干渉波I、及び干渉波Iの遅延波が合成されたマルチパス干渉波のチャネル応答特性H
u1、H
u2は、FIRフィルタにより表すことができ、例えば、次式(1)により表すことができる。ここで、マルチパス干渉波とは、マルチパス環境において、遅延波を伴う干渉波のことをいう。
【0041】
ここで、H
u1(z)、H
u2(z)は、干渉波の発生源(送信元)からアンテナ素子11−1、11−2までのチャネル応答特性である。
このとき、受信信号X
1、X
2にマルチパス干渉波のみが含まれる場合、干渉波の信号をIとしたとき、受信信号X
1、X
2は、次式(2)により表される。
【0043】
式(2)により表されるマルチパス干渉波は、FIRフィルタ部125bの部分に(H
u1(z)/H
u2(z))により表されるIIRフィルタを設けることにより打ち消すことができる。しかし、IIRフィルタの適切なタップ係数を設定することは、困難であるので、マルチパス干渉波を打ち消すIIRフィルタを、例えば、次式(3)に表すように、有限のFIRフィルタにより近似して、FIRフィルタ部125bのタップ係数を算出する。
【0045】
ここで、干渉抑圧部122bが有する減算部126bは、遅延素子121aにより3遅延単位分(z−3=z−(k−1))の遅延を加えられた受信信号X
1から、FIRフィルタ部125bによりフィルタ処理された受信信号X
2を減算する。減算部126bから出力される信号Y’1は、次式(4)により表される。
【0047】
FIRフィルタ部125bにおいて、MMSE部1251が、式(4)により表される信号Y’1の受信電力を最小にするタップ係数γ0〜γ6を算出する。
式(4)から分かるように、FIRフィルタ部125bでは、アンテナ素子11−2においてアンテナ素子11−1より先に受信された干渉波((γ0+γ1z−1+γ2z−2)X
2(z))と、アンテナ素子11−2においてアンテナ素子11−1と同時に受信された干渉波(γ3z−3X
2(z))と、アンテナ素子11−2においてアンテナ素子11−1より後に受信された干渉波((γ4z−4+γ5z−5+γ6z−6)X
2(z))とに基づいて、受信信号X
1に含まれる干渉波を打ち消すことができる。
【0048】
また、式(4)は、アンテナ素子11−2においてアンテナ素子11−1より先に受信された干渉波に基づいて、受信信号X
1に含まれる干渉波を打ち消す場合、タップ係数γ0〜γ2の絶対値は大きくなる。逆に、アンテナ素子11−2においてアンテナ素子11−1より後に受信された干渉波に基づいて、受信信号X
1に含まれる干渉波を打ち消す場合、タップ係数γ4〜γ6の絶対値は大きくなる。
【0049】
また、基準信号として受信信号X
1が選択された場合、アンテナ素子11−1においてアンテナ素子11−2より先に受信された干渉波に基づいて、受信信号X
2に含まれる干渉波を打ち消すとき、FIRフィルタ部125aのタップ係数γ0〜γ2の絶対値は大きくなる。逆に、アンテナ素子11−1においてアンテナ素子11−2より後に受信された干渉波に基づいて、受信信号X
2に含まれる干渉波を打ち消す場合、タップ係数γ4〜γ6の絶対値は大きくなる。
【0050】
基準信号選択部128は、干渉抑圧部122a、122bが有するFIRフィルタ部125a、125bにおいてタップ係数が収束した後に、タップ係数γ0〜γ6のうち、干渉波を打ち消す対象の受信信号(被減算信号)に与えられた遅延量((k−1)遅延単位分の遅延量)と同じ遅延量を与えて演算をするタップのタップ係数γ3を0にする制御をFIRフィルタ部125a、125bに対して行う。
このとき、マルチパス干渉等化フィルタ12の出力信号Y
1は、次式(5)として表せる。
【0052】
また、干渉波I及び所望波Sが受信信号X
1、X
2に含まれる場合、受信信号X
1、X
2は、所望波Sの送信元からアンテナ素子11−1までの間のチャネル応答特性をH
s1(z)とし、所望波Sの送信元からアンテナ素子11−2までの間のチャネル応答特性をH
s2(z)とすると、次式(6)と表される。
【0054】
ここで、式(6)を式(5)に代入すると、次式(7)となる。
【0056】
また、式(3)を次式(8)のように変形し、
【0058】
式(7)に代入すると、出力信号Y
1を示す次式(9)が得られる。
【0060】
このとき、出力信号Y
2は、次式(10)により表される。
【0062】
式(9)と式(10)とを比べると、出力信号Y
1と出力信号Y
2とのそれぞれに含まれる所望波Sは、3(=k−1,k=4)遅延単位分(z−3)の成分の項において、相関がないことが分かる。すなわち、基準タップに対応するタップのタップ係数を0にすることにより、受信装置1が同じタイミングで受信した、受信信号X
1に含まれる所望波Sと、受信信号X
2に含まれる所望波Sとが結合することを防ぐことができる。
そして、出力信号Y
1に含まれる所望波Sと、出力信号Y
2に含まれる所望波Sとの無相関を保つことができる。これにより、アンテナ素子11−1、11−2を用いることにより得られる空間ダイバーシチ効果を保つことができる。
【0063】
これに対して、出力信号Y
1に含まれる干渉波Iと、出力信号Y
2に含まれる干渉波Iとは、タップ係数γ3を定数とする複素数のスカラ倍の関係にあることがわかる。すなわち、干渉波Iについて、出力信号Y
1と出力信号Y
2とは、複素数を定数とするスカラ倍の関係にあるので、出力信号Y
1と出力信号Y
2との位相及び振幅を調整して、逆相合成することにより、マルチパス干渉波を抑圧することができる。
【0064】
上述した出力信号Y
1と出力信号Y
2との関係を利用して、本実施形態における受信装置1は、1タップ構成の干渉除去部13、16(
図1)を用いることにより、出力信号Y
1と出力信号Y
2とに含まれるマルチパス干渉波を抑圧することができる。
【0065】
なお、
図4に示したタップ係数を設定する処理に替えて、次に示す手順でタップ係数を設定するようにしてもよい。
図5は、本実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ12におけるタップ係数を設定する処理を示す第2のフローチャートである。
図5に示す処理は、基準タップのタップ係数を0にしてから基準信号を選択する点が、
図4に示した処理と異なる。
【0066】
マルチパス干渉等化フィルタ12において、タップ係数を設定する処理が開始されると、所望のOFDM信号が送信されていない期間、すなわち干渉波のみを受信している期間において、FIRフィルタ部125a、125bが有しているMMSE部1251は、それぞれのフィルタ部1252の7(=2k−1,k=4)つのタップ係数w0〜w6が収束するまで、所定のアルゴリズムによる演算を繰り返して行い、タップ係数w0〜w6を算出する(ステップS201)。
基準信号選択部128は、基準信号に選択した受信信号が入力されているFIRフィルタ部125a、125bのタップ係数w0〜w6のうち、基準信号に与えられる遅延時間(k(=3)遅延単位)と同じ遅延時間を与えて演算するタップ(基準タップ)のタップ係数w3を0にする制御を、FIRフィルタ部125a、125bに対して行う(ステップS202)。
【0067】
基準信号選択部128が基準タップのタップ係数を0にすると、入出力電力比算出部127aは、受信信号X
1に対する入出力電力比を算出し、入出力電力比算出部127bは、受信信号X
2に対する入出力電力比を算出する(ステップS203)。
各入出力電力比が算出されると、基準信号選択部128は、受信信号X
1をFIRフィルタ部125aの入力とする干渉抑圧部122aに対する入出力電力比が、受信信号X
2をFIRフィルタ部125bの入力とする干渉抑圧部122bに対する入出力電力比より大きいか否かを判定する(ステップS204)。
【0068】
ステップS204において、受信信号X
1に対する入出力電力比が受信信号X
2に対する入出力電力比より大きい場合(ステップS204:yes)、基準信号選択部128は、受信信号X
1を基準信号に選択する(ステップS205)。このとき、基準信号選択部128は、遅延素子121aから出力される信号を選択させる制御をスイッチ部123aに対して行うとともに、干渉抑圧部122aから出力される減算信号を選択させる制御をスイッチ部123bに対して行う。
一方、受信信号X
1に対する入出力電力比が受信信号X
2に対する入出力電力比以下の場合(ステップS204:no)、基準信号選択部128は、受信信号X
2を基準信号に選択する(ステップS206)。このとき、基準信号選択部128は、スイッチ部123aに対して干渉抑圧部122bから出力される減算信号を選択させる制御と、スイッチ部123bに対して遅延素子121bから出力される信号を選択させる制御とを行う。
【0069】
このように、基準信号を選択することにより、所望波S及び干渉波Iを含む受信信号から干渉波Iを抑圧する状態、すなわちマルチパス干渉等化フィルタ12を用いて干渉波Iを抑圧する際と同じタップ係数を設定した状態で基準信号が選択されるので、干渉波Iの抑圧の精度を向上させることができる。
【0070】
(第2実施形態)
第2実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタは、基準信号を選択する際に用いる基準が異なる。具体的には、第2実施形態のマルチパス干渉等化フィルタは、入出力電力比に替えて、干渉抑圧部から出力される減算信号における標準偏差を用いて基準信号を選択する。以下、第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
図6は、第2実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ22の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、マルチパス干渉等化フィルタ22は、遅延素子121a、121bと、干渉抑圧部122a、122bと、スイッチ部123a、123bと、制御部224とを備えている。
制御部224は、受信信号X
1に対応する標準偏差算出部227aと、受信信号X
2に対応する標準偏差算出部227bと、基準信号選択部228とを有している。ここで、標準偏差算出部227aが受信信号X
1に対応するとは、標準偏差算出部227aに受信信号X
1が入力されていることをいう。
【0072】
標準偏差算出部227aには、遅延を与えられた受信信号X
1が遅延素子121aから入力されるとともに、干渉抑圧部122aから減算信号が入力される。標準偏差算出部227aは、遅延を与えられた受信信号X
1で減算信号を除算し、除算の結果に対する標準偏差を基準信号選択部228に算出する。なお、標準偏差算出部227aは、標準偏差に替えて、連続的に除算結果として得られる複素数の分散や、標準偏差、平均値、最大値などを出力するようにしてもよい。なお、減算信号を受信信号X
1で除算する際に、時間領域における除算に替えて、周波数領域で除算を行うようにしてもよい。この場合、標準偏差算出部227aは、予め定めた周波数帯域におけるパワースペクトル密度分布の標準偏差や、分散、平均値、最大値などのいずれかを統計的特徴量として、基準信号選択部228に出力する。
【0073】
標準偏差算出部227bには、遅延を与えられた受信信号X
2が遅延素子121bから入力されるとともに、干渉抑圧部122bから減算信号が入力される。標準偏差算出部227bは、標準偏差算出部227aと同様に、遅延を与えられた受信信号X
2で減算信号を除算し、除算の結果に対する標準偏差を基準信号選択部228に出力する。
基準信号選択部228は、標準偏差算出部227a、227bから入力される標準偏差を比較し、小さい標準偏差に対応する受信信号を基準信号に選択する。また、基準信号選択部228は、基準信号に選択した受信信号、又は基準信号に選択した受信信号がFIRフィルタ部125a、125bに入力されている干渉抑圧部122a、122bから出力される減算信号を選択する制御を、スイッチ部123a、123bに対して行う。
【0074】
図7は、本実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ22におけるタップ係数を設定する処理を示すフローチャートである。
マルチパス干渉等化フィルタ22において、タップ係数を設定する処理が開始されると、所望のOFDM信号が送信されていない期間、すなわち干渉波のみを受信している期間において、FIRフィルタ部125a、125bが有しているMMSE部1251は、それぞれのフィルタ部1252のタップ係数を収束するまで、所定のアルゴリズムによる演算を繰り返して行い、タップ係数を算出する(ステップS301)。
基準信号選択部228は、基準信号に選択した受信信号が入力されているFIRフィルタ部125a、125bのタップ係数のうち、基準信号に与えられる遅延時間と同じ遅延時間を与えて演算するタップ(基準タップ)のタップ係数を0にする制御を、FIRフィルタ部125a、125bに対して行う(ステップS302)。
【0075】
基準信号選択部228が基準タップのタップ係数を0にすると、標準偏差算出部227aは受信信号X
1に対する標準偏差を算出し、標準偏差算出部227bは受信信号X
2に対する標準偏差を算出する(ステップS303)。
各標準偏差が算出されると、基準信号選択部228は、受信信号X
1に対応する標準偏差が、受信信号X
2に対応する標準偏差より小さいか否かを判定する(ステップS304)。
ステップS304において、受信信号X
1に対応する標準偏差が、受信信号X
2に対する標準偏差より小さい場合(ステップS304:yes)、基準信号選択部228は、受信信号X
1を基準信号に選択する(ステップS305)。このとき、基準信号選択部228は、遅延素子121aから出力される信号を選択させる制御をスイッチ部123aに対して行うとともに、干渉抑圧部122aから出力される減算信号を選択させる制御をスイッチ部123bに対して行う。
一方、ステップS304において、受信信号X
1に対する標準偏差が、受信信号X
2に対する標準偏差以上の場合(ステップS304:no)、基準信号選択部228は、受信信号X
2を基準信号に選択する(ステップS306)。このとき、基準信号選択部228は、干渉抑圧部122bから出力される減算信号を選択させる制御をスイッチ部123aに対して行うとともに、遅延素子121bから出力される信号を選択させる制御をスイッチ部123bに対して行う。
【0076】
このように、基準信号を選択することにより、所望波S及び干渉波Iを含む受信信号から干渉波Iを安定して抑圧することができる受信信号を基準信号に選択することができ、干渉波Iの抑圧の精度を向上させることができる。
【0077】
(第3実施形態)
第3実施形態では、受信装置が3つのアンテナ素子を備えている場合における、マルチパス干渉等化フィルタについて説明する。以下、第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
図8は、第3実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ32の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、マルチパス干渉等化フィルタ32は、受信信号X
1〜X
3が入力され、出力信号Y
1〜Y
3を出力する。また、マルチパス干渉等化フィルタ32は、遅延素子121a〜121cと、干渉抑圧部122a〜122fと、スイッチ部323a〜323cと、制御部324とを備えている。
遅延素子121a〜121cは、それぞれに受信信号X
1〜X
3が入力され、入力される信号に対して(k−1)遅延単位分の遅延を与えてから出力する。
【0079】
干渉抑圧部122a、122bは、第1実施形態と同じ構成であるのでそれぞれの説明を省略する。干渉抑圧部122c〜122fは、干渉抑圧部122aと同様に、それぞれがFIRフィルタ部125c〜125fと、減算部126c〜126fとを有している。FIRフィルタ部125c〜125fはFIRフィルタ部125aと同じ構成を有し、減算部126c〜126fもまた減算部126aと同じ構成を有している。
干渉抑圧部122cにおいて、FIRフィルタ部125cには受信信号X
3が入力され、減算部126cは遅延器121aで遅延させた受信信号X
1を被減算信号とし、FIRフィルタ部125cから出力される信号を遅延器121aで遅延させた受信信号X
1から減算し、減算結果を減算信号として出力する。
干渉抑圧部122dにおいて、FIRフィルタ部125dには受信信号X
3が入力され、減算部126dは遅延器121bで遅延させた受信信号X
2を被減算信号とし、FIRフィルタ部125dから出力される信号を遅延器121bで遅延させた受信信号X
2から減算し、減算結果を減算信号として出力する。
【0080】
干渉抑圧部122eにおいて、FIRフィルタ部125eには受信信号X
1が入力され、減算部126eは遅延器121cで遅延させた受信信号X
3を被減算信号とし、FIRフィルタ部125eから出力される信号を遅延器121cで遅延させた受信信号X
3から減算し、減算結果を減算信号として出力する。
干渉抑圧部122fにおいて、FIRフィルタ部125fには受信信号X
2が入力され、減算部126fは遅延器121cで遅延させた受信信号X
3を被減算信号とし、FIRフィルタ部125fから出力される信号を遅延器121cで遅延させた受信信号X
3から減算し、減算結果を減算信号として出力する。
干渉抑圧部122a〜122fは、アンテナ素子11−1〜11−3のうち、2つのアンテナの組合せ(6通り)ごとに設けられている。干渉抑圧部122a〜122fそれぞれにおいて、一方のアンテナ素子により受信される受信信号がFIRフィルタ部125a〜125fに入力され、他方のアンテナ素子により受信される受信信号を遅延素子で遅延を加えられた信号が被減算信号として減算部126a〜126fに入力される。減算部126a〜126fは、FIRフィルタ部125a〜125fから出力される信号を被減算信号から減算し、減算結果を減算信号として出力する。
【0081】
スイッチ部323a〜323cは、それぞれがアンテナ素子11−1〜11−3に対応して設けられている。
スイッチ部323aは、遅延素子121aから出力される受信信号X
1を遅延させた信号と、干渉抑圧部122bから出力される減算信号と、干渉抑圧部122cから出力される減算信号とのいずれかを、制御部324の制御に応じて選択し、選択した信号を出力信号Y
1として出力する。
スイッチ部323bは、遅延素子121bから出力される受信信号X
2を遅延させた信号と、干渉抑圧部122aから出力される減算信号と、干渉抑圧部122dから出力される減算信号とのいずれかを、制御部324の制御に応じて選択し、選択した信号を出力信号Y
2として出力する。スイッチ部323cは、遅延素子121cから出力される受信信号X
3を遅延させた信号と、干渉抑圧部122eから出力される減算信号と、干渉抑圧部122fから出力される減算信号とのいずれかを、制御部324の制御に応じて選択し、選択した信号を出力信号Y
3として出力する。
【0082】
制御部324は、遅延素子121a〜121cから出力される受信信号X
1〜X
3を遅延させた信号と、干渉抑圧部122a〜122fから出力される各減算信号とに基づいて、スイッチ部323a〜323cに対する制御を行う。また、制御部324は、各干渉抑圧部122a〜122fが有しているFIRフィルタ部125a〜125fにおいて、タップ係数が収束した後に、基準タップのタップ係数を0にする制御を各FIRフィルタ部125a〜125fに対して行う。
制御部324は、受信信号X
1〜X
3に対応して設けられている入出力電力比算出部327a〜327cと、基準信号選択部328とを有している。
【0083】
入出力電力比算出部327aには、遅延素子121bから遅延を与えられた受信信号X
2と、干渉抑圧部122aから減算信号と、遅延素子121cから遅延を与えられた受信信号X
3と、干渉抑圧部122eから減算信号とが入力される。入出力電力比算出部327aは、第1電力比算出部3271aと、第2電力比算出部3272aとを有し、それぞれが算出した入出力電力比の総和を基準信号選択部328に出力する。このように、入出力電力比算出部327aは、受信信号X
1を基準信号とした場合に、受信信号X
2及びX
3に含まれる干渉波の抑圧量を示す指標として入出力電力比の総和を算出する。
第1電力比算出部3271aは、干渉抑圧部122aから入力される減算信号に対する受信信号X
2の電力の比((受信信号X
2の電力)/(減算信号の電力))を入出力電力比として算出する。第2電力比算出部3272aは、干渉抑圧部122eから入力される減算信号に対する受信信号X
3の電力の比((受信信号X
3の電力)/(減算信号の電力))を入出力電力比として算出する。
【0084】
入出力電力比算出部327bには、遅延素子121aから遅延を与えられた受信信号X
1と、干渉抑圧部122bから減算信号と、遅延素子121cから遅延を与えられた受信信号X
3と、干渉抑圧部122fから減算信号とが入力される。入出力電力比算出部327bは、第1電力比算出部3271bと、第2電力比算出部3272bとを有し、それぞれが算出した入出力電力比の総和を基準信号選択部328に出力する。また、入出力電力比算出部327bは、入出力電力比算出部327aと同様に、受信信号X
2を基準信号とした場合における抑圧量を示す指標として入出力電力比の総和を算出する。
第1電力比算出部3271bは、干渉抑圧部122bから入力される減算信号に対する受信信号X
1の電力の比((受信信号X
1の電力)/(減算信号の電力))を入出力電力比として算出する。第2電力比算出部3272bは、干渉抑圧部122fから入力される減算信号に対する受信信号X
3の電力の比((受信信号X
3の電力)/(減算信号の電力))を入出力電力比として算出する。
【0085】
入出力電力比算出部327cには、遅延素子121aから遅延を与えられた受信信号X
1と、干渉抑圧部122cから減算信号と、遅延素子121bから遅延を与えられた受信信号X
2と、干渉抑圧部122dから減算信号とが入力される。入出力電力比算出部327cは、第1電力比算出部3271cと、第2電力比算出部3272cとを有し、それぞれが算出した入出力電力比の総和を基準信号選択部328に出力する。また、入出力電力比算出部327cは、入出力電力比算出部327aと同様に、受信信号X
3を基準信号とした場合における抑圧量を示す指標として入出力電力比の総和を算出する。
第1電力比算出部3271cは、干渉抑圧部122cから入力される減算信号に対する受信信号X
1の電力の比((受信信号X
1の電力)/(減算信号の電力))を入出力電力比として算出する。第2電力比算出部3272cは、干渉抑圧部122dから入力される減算信号に対する受信信号X
2の電力の比((受信信号X
2の電力)/(減算信号の電力))を入出力電力比として算出する。
【0086】
基準信号選択部328は、入出力電力比算出部327a〜327cから出力される受信信号X
1〜X
3それぞれに対応する入出力電力比の総和に基づいて、受信信号X
1〜X
3のいずれかを基準信号に選択し、選択した受信信号に応じてスイッチ部323a〜323cを制御する。また、基準信号選択部328は、基準信号に選択した受信信号が入力されているFIRフィルタ部125a、125bのタップ係数のうち、選択した基準信号に与えられている遅延時間と同じ遅延時間を与えて演算するタップ(基準タップ)におけるタップ係数を0にする制御を各FIRフィルタ部125a〜125fに対して行う。
【0087】
図9は、本実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ32におけるタップ係数を設定する処理を示すフローチャートである。
マルチパス干渉等化フィルタ32において、タップ係数を設定する処理が開始されると、所望のOFDM信号が送信されていない期間、すなわち干渉波のみを受信している期間において、FIRフィルタ部125a〜125fが有しているMMSE部1251は、それぞれのフィルタ部1252のタップ係数が収束するまで、所定のアルゴリズムによる演算を繰り返して行いタップ係数を算出する(ステップS401)。
各FIRフィルタ部125a〜125fにおいてタップ係数が収束すると、各入出力電力比算出部327a〜327cは、受信信号X
1〜X
3それぞれに対する入出力電力比の総和を算出する(ステップS402)。
【0088】
入出力電力比の各総和が算出されると、基準信号選択部328は、受信信号X
1〜X
3それぞれに対応する入出力電力比の総和のうち、最大の入出力電力比の総和に対応する受信信号を検出する(ステップS403)。
ステップS403において、検出された受信信号が受信信号X
1である場合、基準信号選択部328は、受信信号X
1を基準信号に選択する(ステップS404)。このとき、基準信号選択部328は、スイッチ部323aに対して遅延素子121aから出力される受信信号X
1を選択させる制御と、スイッチ部323bに対して干渉抑圧部122aから出力される減算信号を選択させる制御と、スイッチ部323cに対して干渉抑圧部122eから出力される減算信号を選択させる制御とを行う。
【0089】
ステップS403において、検出された受信信号が受信信号X
2である場合、基準信号選択部328は、受信信号X
2を基準信号に選択する(ステップS405)、このとき基準信号選択部328は、スイッチ部323aに対して干渉抑圧部122bから出力される減算信号を選択させる制御と、スイッチ部323bに対して遅延素子121bから出力される受信信号X
2を選択させる制御と、スイッチ部323cに対して干渉抑圧部122fから出力される減算信号を選択させる制御とを行う。
【0090】
ステップS403において、検出された受信信号が受信信号X
3である場合、基準信号選択部328は、受信信号X
3を基準信号に選択する(ステップS406)、このとき基準信号選択部328は、スイッチ部323aに対して干渉抑圧部122cから出力される減算信号を選択させる制御と、スイッチ部323bに対して干渉抑圧部122dから出力される減算信号を選択させる制御と、スイッチ部323cに対して遅延素子121cから出力される受信信号X
3を選択させる制御とを行う。
【0091】
続いて、基準信号選択部328は、基準信号に選択した受信信号が入力されているFIRフィルタ部125a〜125fのタップ係数のうち、基準信号に与えられている遅延時間と同じ遅延時間を与えた演算をする基準タップのタップ係数を0にする制御を、FIRフィルタ部125a〜125fに対して行い、干渉波Iを抑圧させる(ステップS407)。
【0092】
上述のようにFIRフィルタ部125a〜125fのタップ係数が設定された場合において、マルチパス干渉等化フィルタ32が出力する出力信号Y
1〜Y
3について説明する。ここでは、受信信号X
2が基準信号に選択された場合について説明する。また、k=4とし、遅延素子121a〜121cにおける遅延量が3遅延単位であり、フィルタ部1252のタップ数が7(=2k−1)であるとする。
図10は、本実施形態におけるマルチパス干渉等化フィルタ32による干渉波Iを抑圧する処理の一例を示す概略図である。ここで、干渉波Iの発生源からアンテナ素子11−1〜11−3までのチャネル応答特性をH
u1(z)、H
u2(z)、H
u3(z)とすると、各受信信号X’1〜X’3は、次式(11)のように表される。
【0094】
FIRフィルタ部125bは、受信信号X
1に含まれるマルチパス干渉波を受信信号X
2に含まれるマルチパス干渉波により打ち消すためのタップ係数を算出する。FIRフィルタ部125fは受信信号X
3に含まれるマルチパス干渉波を受信信号X
2に含まれるマルチパス干渉波により打ち消すためのタップ係数を算出する。FIRフィルタ部125b、125fにおいて算出されたタップ係数は、次式(12)のように表される。
【0096】
ここで、所望波Sの送信元からアンテナ素子11−1〜11−3までのチャネル応答特性をH
s1(z)、H
s2(z)、H
s3(z)とし、所望波Sと干渉波Iとを受信する場合、各受信信号X
1〜X
3は、次式(13)のように表される。
【0098】
式(12)を変形すると次式(14)が得られる。
【0100】
基準タップのタップ係数(α3,β3)を0にして、干渉波Iの抑圧をすると、出力信号Y
1、Y
3は、次式(15)のように表される。
【0102】
以上より、マルチパス干渉等化フィルタ32から出力される出力信号Y
1〜Y
3は、次式(16)となる。
【0104】
式(16)において、出力信号Y
1〜Y
3それぞれに含まれる所望波Sは、3(=k−1,k=4)遅延単位分の成分の項において、相関がないことが分かる。すなわち、基準タップに対応するタップのタップ係数を0にすることにより受信装置が同じタイミングで受信した、受信信号X
1、X
3に含まれる所望波Sと、基準信号に選択された受信信号X
2が結合することを防ぐことができる。
そして、出力信号Y
1、Y
3に含まれる所望波Sと、出力信号Y
2に含まれる所望波Sとの無相関を保つことができる。これにより、アンテナ素子11−1〜11−3を用いることにより得られる空間ダイバーシチ効果を保つことができる。
【0105】
これに対して、出力信号Y
1、Y
3に含まれる干渉波Iと、出力信号Y
2に含まれる干渉はIとは、タップ係数α3、β3を定数とする複素数のスカラ倍の関係にあることが分かる。すなわち、干渉波Iについて、出力信号Y
1と出力信号Y
2とは、複素数を定数とするスカラ倍の関係にあるので、出力信号Y
1と出力信号Y
2との位相及び振幅を調整して、逆相合成することにより、出力信号Y
1、Y
2に含まれるマルチパス干渉波を抑圧することができる。また、出力信号Y
2と出力信号Y
3とは、同様に、複素数を定数とするスカラ倍の関係にあるので、出力信号Y
2、Y
3の位相及び振幅を調整して、逆相合成することにより、出力信号Y
2、Y
3に含まれるマルチパス干渉波を抑圧することができる。
【0106】
なお、第2実施形態及び第3実施形態において、マルチパス干渉等化フィルタ(12、22、32)に入力される受信信号が2つ又は3つのアンテナ素子により受信された受信信号である構成について説明したが、この構成に限ることなく、4つ以上のアンテナ素子により受信された受信信号が入力されるようにしてもよい。
また、本実施形態において、受信信号X
1〜X
3から基準信号を選択する際に、入出力電力比の総和に替えて、第2実施形態と同様に標準偏差を用いるようにしてもよい。
【0107】
なお、上述の第1〜第3実施形態において、入出力電力比や、標準偏差に基づいて、基準信号を選択する構成について説明したが、これらに替えて、以下のようにして基準信号を選択するようにしてもよい。例えば、各FIRフィルタ部のタップ係数が収束した後に、受信信号ごとに、当該受信信号が入力されるFIRフィルタ部のタップ係数の絶対値の総和を算出し、算出した総和のうち最も小さい総和に対応する受信信号を基準信号に選択するようにしてもよい。これは、タップ係数の総和が小さいほうが干渉波をより抑圧できる傾向にあるという発明者の知見に基づくものであり、このように選択することにより、干渉波を抑圧する能力を向上させることができる。
【0108】
また、上述の第1〜第3実施形態において、入出力電力比や、標準偏差に基づいて、基準信号を選択する構成について説明したが、これらに替えて、各減算信号のレベル(振幅)の標準偏差を算出し、算出した標準偏差を用いて基準信号を選択するようにしてもよい。これにより、マルチパス干渉等化フィルタ(12、22、32)から出力される出力信号の基準信号に対するスカラ倍のばらつきを抑えることができ、安定して干渉波Iを抑圧することができる。更に、複数のサブキャリアを用いて伝送を行う場合、サブキャリアごとの信号レベルの標準偏差を算出し、算出した標準偏差が最小の受信信号を基準信号にするようにしてもよい。このとき、標準偏差の算出は、時間領域におけるレベルに対して行ってもよいし、周波数領域におけるレベルに対して行うようにしてもよい。
【0109】
上述のマルチパス干渉等化フィルタは内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、マルチパス干渉等化フィルタに備えられている遅延素子、干渉抑圧部、スイッチ部、及び制御部の各機能をコンピュータに実行させるプログラムが、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、コンピュータに各機能を実現させるようにしてもよい。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。