【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例について、
図1〜
図9を用いて説明する。本実施例では、可変速駆動手段として、インダクションモータをインバータで駆動及び速度制御するものを例にするが、永久磁石モータを制御装置(インバータと呼ぶ事もある)で駆動及び速度制御するものでもよい。又、圧力検出手段を圧力センサで例示している。
【0027】
図1は、本実施例において、ポンプを1台運転する場合の運転特性図であり、限界電流を用いた選定図も示している。縦軸に給水圧力ヘッドH(m)とモータ電流(ポンプモータをインバータで駆動したときのモータ電流であり、例えばインバータの表示部で表示される。)を示し、横軸に使用水量Q(m
3/min)を示している。
【0028】
曲線Aは,インバータ周波数が最高周波数f0のときのポンプQ−H性能曲線であり、通常は商用周波数(50又60Hz)が用いられるが、これに限定されることはなく、これを超えた倍ヘルツの120Hzを適用しても良い。このようにすれば、ポンプの羽根車径を小さく設計することができ小形軽量化することができる。これは、ポンプ吐出し量は周波数に、ポンプ全揚程は周波数の2乗、ポンプ軸動力は周波数の3乗に比例するためである。
【0029】
曲線Gは、このときのインバータ駆動時モータ電流を示すインバータ電流曲線であり、使用水量の変化に対応して示している。Itはこれの定格電流を示す。前記周波数f0(ポンプQ−H性能曲線A)で大水量まで運転すると定格電流Itを越えてしまう領域がある(
図1参照)。但し、リミットロード特性を有するポンプはこの限りではない。即ち、曲線G上のO00点で定格電流Itをオーバーする。この時、ポンプの吐き出し水量はQ0、全揚程はH0でポンプQ−H性能A上の点O0にある(座標(Q0、H0、f0))。
【0030】
同様に曲線Bは、インバータ周波数がf1の時のポンプQ−H性能曲線、曲線Hはインバータ周波数がf1の時のインバータ電流曲線であり、O10点で定格電流をオーバーする。この時、ポンプの吐出し水量はQ1、全揚程はH1でポンプQ−H性能曲線B上の点O1にある(座標(Q1、H1、f1))。
【0031】
同様に曲線Cと曲線Iは、インバータ周波数がf2の時のQ−H性能曲線とインバータ電流曲線であり、定格電流をオーバーしない点はそれぞれO2、O20である(座標はQ2、H2、f2)。
【0032】
同様に曲線Dと曲線Jは、インバータ周波数がf3の時のQ−H性能曲線とインバータ電流曲線であり、定格電流をオーバーしない点はそれぞれO3、O30である(座標はQ3、H3、f3)。又、HS0、HS1、HS2、HS3は、それぞれポンプQ−H性能A,B,C,Dの締め切り圧力ヘッドである。
【0033】
これら、O0、O1、O2、O3を結んだ曲線Fが限界電流線であり、この線より左側の領域で使用すれば定格電流Itを越えることはなく、過負荷運転することはない。この限界電流線は、4本のQ−H性能曲線A,B,C,Dで作成されたが、これに限定されることなく適宜、増やしても、減らしても良い。更に、限界電流線Fは、定格電流線上にあるので安全を見て左側にずらしてもよい。
【0034】
そして、この限界電流線Fを含み、O0、O3、O4、O5(水量Q5、揚程H4)、O6(水量Q6、揚程H2)で囲んだ領域Eにより、選定図を作成する。この領域Eは、限界電流線Fより左側の領域となるので、運転時に定格電流Itを越えることはない。
【0035】
更に、ポンプQ−H性能曲線Aの上の、O7点(座標(Q7、H7、f0))、O8点(座標(Q8、H8、f0))、締め切り点HS0(座標(水量0、HS0、f0))、O4点(座標(Q4、H4、f0))、O0点(座標(Q0、H0、f0))の5点で、ポンプQ−H性能曲線の方程式を与えるデータを構成する。
【0036】
図2は、ポンプ2台を並列運転した場合の運転特性図及び選定図を示している。同図は
図1に示すポンプQ−H性能曲線と限界電流線を、全揚程を変えずに水量を2倍にして示したものである。即ち、曲線K、L、M、Nはそれぞれ最高周波数f0(2f0は2台並列の意味)、周波数f1(2f1は2台並列の意味),f2(2f2は2台並列の意味),f3(2f3は2台並列の意味)でポンプを2台並列運転した時の合成したQ−H性能曲線図である。又、O0´、O1´、O2´、O3´の各点は
図1のO0、O1、O2、O3の各点の水量を2倍した点であり2台並列運転時も定格電流をオーバしないことは前述から明らかである。これらのO0´、O1´、O2´、O3´の各点を結んで2台並列運転時の限界電流線F´を求める。更に、この限界電流線F´を含みO0´、O3´、O4´、O4(水量Q4、揚程H4)、O9(水量Q9、揚程H2)で囲んだ領域E´により、選定図を作成する。
【0037】
同様にして、3台以上の複数ポンプ並列運転時の限界電流線及び選定図を求められるが説明は省略する。
【0038】
従来は、
図11、
図12に示すように最高周波数運転時のポンプQ−H性能と、この時運転電流が定格電流を超えない十分小さな領域で選定図を作成していたが、本実施例では、限界電流線を用いて運転領域を決めているので、選定図の選定範囲を拡大することができ、定格電流(最大限)までポンプ性能を有効に活用することができる。このことは、給水装置の選定に際し、余裕を持たせて上位(出力容量)の機種を選定する必要がなく、適切な容量の給水装置を選定することで、低コスト、節電を図ることができる。
【0039】
次に、
図3により目標圧力を求める演算式(末端圧力一定制御)の生成方法について説明する。
図3は、
図1のポンプ1台運転特性図および選定図に、1点の要求仕様点と、目標値である配管抵抗曲線と、目標圧力を求める演算式を生成するのに必要なパラメータを記入している。要求仕様点は機種選定等のために1点与えられる。この要求仕様点がその機種の選定図に入っている機種が選定される(
図3参照)。
【0040】
全揚程H00に基づいて次の手順により下限目標圧力ヘッドPL(水量0の点)を求める。このポイントをO01とする。
PL=Ha+Hp=((PM−10)/1.2)+10
ここで、Haは実揚程、Hpは所要末端圧力ヘッドで約10m、PMは上限座標の圧力目標値(曲線AとQの交点)である。
【0041】
簡易計算例を用いて根拠を示すと次のとおりとなる(
図13参照)。
H00(仕様点で全揚程に相当)=Ha(実揚程)+配管抵抗(Hf)+Hp(所要末端圧力ヘッド)
H00=Ha+0.2Ha+10 (配管抵抗(Hf)=0.2Ha)
PL=Ha+Hp=H00−Hfとして求めることができる。
Ha=(H00−10)/1.2
PL=Ha+Hp=((H00−10)/1.2)+10
尚、上記簡易計算例を使用する代わりに、傾きtan(例えばPM/PLの比率)を用いても良い。例えば、tan=80%、PL=0.8*H00である。
【0042】
次に、前記O01と仕様点O00(Q00、H00)を通る配管抵抗曲線Qを引く。Qは、直線や二次曲線で近似されることが多く、本実施例では直線近似の例で示す。配管抵抗曲線Qの方程式は(1)式となる。
Hx=f(Q)=((H00−PL)*Qx/Q00)+PL------------------------------(1)
Q00、H00は、要求仕様の水量と揚程であり、後述の設定手段から入力するパラメータで、PLは前述のようにH00から算出される。Qxは変数である。
【0043】
ところで、上記のようにして求めた配管抵抗曲線Qは、仕様点(Q00、H00)によって
図3に示すように、ポンプQ−H性能曲線A、又は限界電流線Fのいずれかと交わる。
【0044】
以下、仕様点(Q00、H00)、配管抵抗曲線Q、限界電流線F、ポンプQ−H性能曲線Aにより目標圧力の演算式を生成するアルゴリズムを説明する。
【0045】
(配管抵抗曲線がポンプQ−H性能曲線と交わる場合)
内容は、特許文献1に示されているのでここでは要点のみを記載する。即ち、前述したポンプ性能データ5点より例えばニュートン補間法を用いて補間方程式を求める。この補間方程式と上記(1)式とで連立方程式を解き、求めた揚程HXがPMであり、上限座標の圧力目標値となる。この時の周波数目標値は前述のf0である。下限座標の周波数目標値f10は、下限圧力目標値PLと、ポンプ性能データ5点の締め切り圧力ヘッドHS0と、この時の周波数f0から次のようにして求められる。
f10=f0√(PL/HS0)----------------------(4)
(配管抵抗曲線が限界電流線と交わる場合)
前記配管抵抗曲線Qを延長し、限界電流線Fとの交点が上限座標の圧力目標値PM´となる。
【0046】
限界電流線Fを表す方程式は(2)、(3)式で示すことが出来る。
Hx=f(Q)=((H0−H3)/(Q3−Q0))*(QX−Q0)+Q0--------(2)
Q0、Q3、H3、H0は限界電流線上のデータであり、後述の設定手段から入力するパラメータ、Qxは変数である。
fx=f(H)=((f0−f3)/(H0−H3))*(H0−Hx)+f3--------(3)
f0、f3は限界電流線上のデータであり、後述の設定手段から入力するパラメータ、fxは変数である。
【0047】
(1)(2)式を連立方程式にして解くと、QXとHXの根が得られる。得られたHXが上限座標の圧力目標値PMである。又、得られた根Hxを(3)式に代入するとfxが得られる。得られたfxが上限座標の周波数目標値である。
【0048】
下限座標の周波数目標値f10は、前述の配管抵抗曲線がポンプQ−H性能曲線と交わる場合で示した方法と同じであり、上記(4)式で求められる。
【0049】
別な方法の求め方を示すと、次の手順となる。得られた周波数fxからこれに近い周波数、締め切り圧力をそれぞれ選ぶ。
図3の例の場合、周波数はf2、f3、ポンプ締め切り圧力はHS2(f2時)、HS3(f3時)である。
周波数fxに対応する締め切り圧力Hsを
Hs=((HX−H3)/(H2−H3))*(HS2−HS3)+HS3-----------(5)
によって求める。結果を前述と同様(4)式に代入するとf10は求まる。
【0050】
更に、末端圧力一定制御の演算式は、以上のようにして求めた下限座標O01(PL、f10)と上限座標O00(PM=Hx、fx)とを結ぶ曲線Q(配管抵抗曲線と同じ符号を用いている)である。即ち次の(6)、(7)式で求めることができる。
(直線近似の場合)
Hy=((PM−PL)/(f0−f10))×(f0−Nx)+PL----------------(6)
(2次曲線の場合)
Hy=((PM−PL)/(f0−f10)
2)×(f0−Nx)
2+PL----------------(7)
ここで、f0は、配管抵抗曲線がポンプ性能曲線と交わる場合はf0、配管抵抗曲線が限界電流線と交わる場合はfxである。Nxは変数で、現在運転している周波数を(6)又は(7)式に代入すると目標圧力Hyが求まる。即ち、給水圧力がこの目標圧力Hyと等しくなるよう運転周波数を制御するのである。
【0051】
尚、(6)、(7)式の出所根拠は特許文献1に示されている。又、演算式(6)(7)のPH=PLとした吐出圧力一定制御もこの末端一定制御の特異解としてこれに含まれるものである。
【0052】
このように、末端圧力一定制御の演算式の生成及び運転に必要なパラメータの設定を、目標圧力を1点(仕様点のQ0、H0)のみを設定し、残りのパラメータはインバータ限界電流、周波数及びポンプQ−H性能関係から求めて、限界電流のチエックを省略し簡便化を図ることができる。又、どのような性能を有するポンプにも末端圧力一定制御を適用することができ、さらに、限界電流線を利用して選定図を作成するようにしたのでポンプ性能を能力一杯活用することができ、選定図を拡大することができる。
【0053】
図4は、
図2のポンプ2台並列運転特性図、及び選定図に要求仕様点を記入し、目標値である配管抵抗曲線を示したものであり、目標圧力を求める演算式を生成するのに必要なパラメータを示している。更に、要求仕様点も
図3で示したように、配管抵抗曲線がポンプ性能曲線と交わる場合と限界電流線と交わる場合と2例を示している。
図2の説明から明らかであるから結果の演算式のみを記載する。
(Qの方程式)
Hx=f(Q)=((H00´−PL)*Qx/Q00´)+PL----------------------(8)
Q00´、H00´は要求仕様であり後で述べる設定手段から入力するパラメータ、 PLは前述のようにH00´から算出される。Qxは変数である。ここで、要求仕様のQ00´、H00´は(1)式で示した要求仕様のQ00、H00と区別して表示している。
【0054】
(配管抵抗曲線がポンプQ−H性能曲線と交わる場合)
内容は、特許文献1に示されているのでここでは要点のみを記載する。即ち、前述のポンプ1台の例で示したポンプ性能データ5点より水量を2倍して例えば補間方程式を求める。これと上記(8)式とで連立方程式を解き、求めた揚程HXがPHであり、上限座標の圧力目標値であとなる。又、この時の周波数目標値は前述のf0である。又、下限座標の周波数目標値f20は下限圧力目標値PMとポンプ性能データ5点の締め切り圧力ヘッドHS0とこの時の周波数f0から次のようにして求められる。
f20=f0√(PM/HS0)----------------------(9)
(配管抵抗曲線が限界電流線と交わる場合)
(限界電流線F´を表す方程式)
Hx=f(Q)=((H0−H3)/(2Q3−Q0))*(QX−2Q0)+2Q0
…(10)
2Q0、2Q3、H3、H0は、限界電流線上のデータであり、あと後で述べる設定手段から入力するパラメータ、Qxは変数である。
fx=f(H)=((f0−f3)/(H0−H3))*(H0−Hx)+f3---(11)
f0、f3は限界電流線上のデータであり、あと後で述べる設定手段から入力するパラメータ、fxは変数である。
【0055】
(8)(10)式を連立方程式にして解くとQXとHXの根が得られる。又、得られた根Hxを(11)式に代入するとfxが得られる。得られたHXが上限座標の圧力目標値であり、fxが周波数目標値である。次に、下限座標の周波数目標値f20は、前述の配管抵抗曲線がポンプQ−H性能曲線と交わる場合で示した方法と同じである。(9)式に同じ。
別な方法の求め方を前述の(5)式と同様に求めることができる。
【0056】
更に、末端圧力一定制御の演算式は以上のようにして求めた下限座標(PM、f20)と上限座標(PH=Hx、fx又はf0)とを結ぶ曲線Qである。即ち次の(12)式、(13)式で求めることができる。
(直線近似の場合)
Hy=((PH−PM)/(fx又f0−f20))×(fx又はf0−Nx)+PM----
(12)
(2次曲線の場合)
Hy=((PH−PM)/(fx又f0−f20)
2)×(fx又fx−Nx)
2+PM----
(13)
ここで、Nxは変数であり、現在運転している周波数を(12)、(13)式に代入すると目標圧力Hyが求まる。
【0057】
以上に述べた1台以上の複数台ポンプの末端圧力制御手順を整理すると以下のとおりとなる。
(a)ポンプ性能データを与える締め切り圧力ヘッドを含む5点の性能データとこの性能データを与える周波数、限界電流線を表すデータ少なくても2種類、2座標(水量、揚程)、(揚程、周波数)、配管抵抗曲線の傾き等を設定手段で設定して記憶部に記憶しておく。これらのデータをパラメータ称する。
(b)要求仕様(水量、揚程)を入力する。入力手段は(A)の設定手段と同じもの。
(c)入力した要求仕様に基づいて、配管抵抗曲線の方程式を生成するのに必要な2座標(水量、揚程)を求める。この2座標を通る方程式を生成する。限界電流線を表す2座標よりこれを通る方程式を2種類生成する。ポンプ性能データからこれの方程式を生成する。
(d)入力した要求仕様より目標圧力を求める演算式を生成する2座標(周波数、目標圧力値)を求める。先ず、要求仕様により上限座標の圧力目標値を次のどちらの方法を用いて求めるかを選択する。
【0058】
1)配管抵抗曲線の方程式とポンプ性能曲線の方程式を連立方程式にして解く。
2)配管抵抗曲線の方程式と限界電流線の方程式を連立方程式にして解く。
要求仕様がポンプ性能曲線と限界電流線との交点より、水量判定では小、揚程判定では高のとき1)を選択する。そうでなければ2)を選択する。
次に、下限座標の周波数を求める。1)を選択した場合は、ポンプ性能曲線の締め切り圧力と周波数(上限周波数である。)及び下限目標圧力から下限座標の周波数を演算して求める。2)を選択した場合、上限目標圧力とこのときの周波数を求める。この周波数に対応した締め切り圧力を求め、これらと、下限目標圧力から下限座標の周波数を演算して求める。
(e)(d)で求まった2座標より目標圧力求める演算式を生成する。
(f)〜(e)で求めたパラメータに基づいて、1台以上のポンプの始動、停止の運転パ
ラメータを設定する。
【0059】
図5は、本実施例の給水装置の配管系統図及び制御回路図をポンプ2台の例で示したものである。
1−1,1−2は吸込み管、2−1〜2−4は仕切り弁である。3−1,3−2はそれぞれモータ4−1,4−2によって駆動され、吸込み管1−1、1−2を介して吸込み側の水を需要側へ送水するポンプ(それぞれ1号ポンプ、2号ポンプと呼ぶ)である。5−1、5−2はそれぞれ逆止め弁、6は給水管、7は圧力タンク、8は給水管6に備わり、ここの圧力を検出し、これに応じて圧力信号を発する圧力センサ(圧力検出手段)である。9−1,9−2は前記逆止め弁5の上流側に位置し給水管6の途中に設置したフロースイッチであり、過少水量使用状態となると信号を発する。PWは電源、ELB1、ELB2はそれぞれ1号ポンプ系及び2号ポンプ系の漏電遮断器であり、これ以降の系統の漏電保護を行う。
【0060】
INV1、INV2は、それぞれモータ4−1、4−2を可変速駆動する1号ポンプ系及び2号ポンプ系のインバータ(可変速駆動手段)であり、後で述べる制御装置CUからの速度指令信号f1又はf2によって所定の周波数、電圧を与える。又、これらの指定周波数に対し、インバータの現在周波数としてf10、f20を制御装置CUに返す。更に、電流、周波数、圧力、運転及び故障状態を表示、あるいはキー入力スイッチ等を備える入力手段のコンソールCONS1、CONS2を備えている。そして、INV1、INV2は、運転指令信号RUN1、RUN2がONすると始動し、OFFすると停止する。尚、簡単にするため前述のf10、f20を省略してf1、f2で兼ねても良い。RUN1、RUN2信号を省略してf1、f2の出力で始動、出力停止で停止としても良い。
【0061】
R,Sは制御電源、TRはトランスであり、その二次側は制御装置CUの電源端子に接続している。制御装置CUは、運転及び故障状態を表示、および各種データを入力するキー入力スイッチ等を備える入力手段のコンソールCONS3を備える。そして、インバータの現在周波数f10、f20、圧力センサの信号S0、フロースイッチの信号S1,S2を入力する入力部、運転用スイッチSSの入力端子を備え、インバータへの速度指令信号f1同じく運転信号RUNをリレーへ出力する出力端子を備える。
【0062】
更に、制御装置CUは、マイコンCPUと記憶部Mを有し、記憶部MはEEPROMとRAMで構成され、コンソールCONS3で入力された、ポンプ性能データ、限界電流データ、給水ユニット要求仕様データが記憶される。マイコンCPUは、上記したポンプ性能データ、限界電流データ、給水ユニット要求仕様データに基いて、末端圧力一定制御の演算式を自動生成する。ポンプ1台運転の場合は、
図5より2号ポンプ系を省略すれば良い。
【0063】
上記構成において、制御装置CUは、予め記憶しているポンプ性能データと限界電流データを用い、入力する要求仕様に基づいて、末端圧力一定制御の演算式を自動生成し、運転に必要なパラメータを自動設定するようにしたので、過負荷(過電流)とならならず、チエックする必要がない。
【0064】
以下、制御装置CUでどのように処理するかについて、フローチャートの
図6、
図7、
図8、メモリマップ
図9により詳細に説明する。
【0065】
図6において、600ステップで、例えば、次の601ステップのイニシャル処理に備えて割り込み禁止処理D1を実行する。イニシャル処理では、レジスタ、割り込みベクタ、メモリー、スタックポインタなど各種の初期化処理を実行し起動準備を行う。そして、602ステップで、
図9のメモリマップに示すパラメータで初期化の必要なものは初期化し、半固定データは半固定データとし、それぞれ記憶部Mのアドレスに予め保存する。
【0066】
図9に示すように、末端圧一定制御演算式を生成するパラメータとして、入力された要求仕様(仕様点)Q00,H00と、傾きtan等運転に必要なパラメータをEEPROMのM0、M1、M33に記憶し、Hon、Hoff、Hton、Htoff等の、パラメータは初期値として妥当なデータが記憶部MのRAMに保存される。ポンプQH性能5点データ(Q0、H0、f0)、(Q4、H4、f0)、(Q7、H7、f0)、(Q8、H8、f0)、(0、HS0、f0)この時の周波数f0、限界電流データ等(Q0、H0、f0)、(Q1、H1、f1)、(Q2、H2、f2)、(Q3、H3、f3)、締め切り圧力データ(HS0、f0)、(HS1、f1)、(HS2、f2)、(HS3、f3)が半固定でータとして、記憶部MのEEROM(M09、M10、...)に予め保存される。
図6の603ステップでは、PL、PM、PH、f10,f20のパラメータを、例えば設計値で初期化しておく。
【0067】
604ステプでは割り込み処理可能とし、605ステップでタイマ処理Δtを実行し、割り込みを待つ。当然、割り込みが発生し、
図7の処理Xと処理Yの実行を許可する。
【0068】
図7の処理Xの703ステップで、パラメータ設定用のキーが押されたかを判定する。例えばアップ、ダウン両キーの長押しでキーが押されたと判定する。YESであれば705ステップへ、NOであれば704ステップへ進む。705ステップではパラメータ設定処理及び各種演算を実行する。これの詳細は
図8のとおりである。
【0069】
図8において、入り口の200ステップで特定のキー(例えばアップキー、ダウンキー、保存キー同時)の押し下げで、個別設定(半固定データ)のパラメータ設定か自動設定(演算して求める)のパラメータ設定かを判定する。YES(前記キーの同時押し下げ)と判定した場合は、説明は省略しているが、前述の初期値で設定した半固定データのパラメータ(ポンプQH性能5点データ、限界電流データ、締め切り圧力データ等)を個別に読み出して設定及び変更を行うことも出来る。NOと判定した場合は、201ステップへ進み、ポンプ台数のチエックを実行する。ここでは、ポンプ1台を例に説明する。
【0070】
ステップ202、203で、要求仕様Q00、H00が設定手段(CON3)により設定され入力されると、前述した方程式のどの組み合わせか選択するかの判定仕様Q0、H0を固定メモリより読み出し、203,204ステップで判定する。Q00>Q0、且つH00<H0であれば、配管抵抗曲線とポンプQ−H性能曲線による方程式を解いて各種パラメータを求める処理(1)に進む。Q00=<Q0且つH00=>H0であれば、配管抵抗曲線と限界電流線による方程式を解いて各種パラメータを求める処理(2)に進む。
【0071】
処理(1)では、処理A、処理B、208ステップ、処理Eの順番に実行する。処理(2)では処理A、処理C、処理D、処理Eの順番に実行する。ここで、
処理A:要求仕様Q00、H00から下限目標圧力PLを求め、前述した方程式(1)を
生成する。
処理B:Q−H性能データ5点(固定データ)をメモリより読み出して、前述したQ−H
性能方程式を生成する。
処理C:限界電流線データ4点(最低2点)をメモリより読み出して、前述した限界電流
線方程式(2)、(3)を生成する。
処理D:締め切り圧力を設定する。
処理E:ここの処理では、前述したとおり末端圧力一定制御の演算式を生成するための
パラメータ(PL、f10)、(PM又はHX、f0又はfX)又は(PM、
f20)、(PH又はHX、f0又はfx)等、及びポンプ運転に必要なパラメ
ータHon、Hoff、Hton、Htoff等を求める。
【0072】
即ち、処理(1)において、処理A、Bで方程式(1)とQ−H性能曲線との連立方程式を解いて、Hxを求める。これがパラメータPM(PM=Hx)となる。又、Q−H性能曲線を与えるインバータ周波数はf0である。こうして上限座標PM、f0が得られる。処理EではポンプQ−H性能データ5点のうちの締め切り圧力HS0と、周波数f0及び配管抵抗曲線方程式の生成時に求めた下限座標の圧力目標値PLから
周波数目標値f10(f0√(PL/HS0))を求める。
【0073】
こうして、上下限座標より末端圧力一定制御の演算式(6)、又は式(7)が得られる。次に、求めた下限目標圧力値PLに基づいて、次のようにポンプ運転停止圧力パラメータを設定する。
ポンプ始動圧力Hon:Hon=PL+α(0〜5m程度に選ぶ)
ポンプ停止圧力Hoff:Hoff=PL+β(Hon+0〜5m程度に選ぶ)
このようにして、末端圧力一定制御の演算式の生成、運転に必要なパラメータが全て設定される。
【0074】
処理(2)において、処理A、Cで方程式(1)、式(2)の連立方程式を解いてHxを求め、これを(3)式に代入して、インバータ周波数fxを求める。求めたHxが上限座標の圧力目標値であり、fxが目標周波数値である。処理Dでは、求めたfxに基づいて、締め切り圧力HSを求める。先ず、周波数fxからこれに近い周波数、締め切り圧力をそれぞれ選び、(5)式によりHSを求める。下限座標の目標圧力値と周波数目標値は処理(1)と同様にPLからf10(f0√(PL/HS0))を求める。
【0075】
上下限座標が求まると処理(1)と同様に末端圧力一定制御の演算式(6)又は式(7)が得られ、下限目標圧力値PLに基づいて、処理(1)と同様にポンプ運転停止圧力パラメータが設定される。
図7の706ステップで、保存キーが押されたか判定し、押されておれば、以上で得られたパラメータは、707ステップでメモリマップ
図9に示すように記憶される。708ステップでは設定終了キーが押されたか判定し、押されていれば709ステップへ処理を進め、
図6のメイン処理の605ステップに戻る。又、以上の処理は割り込み処理での実行であり、運転中であっても必要に応じて随時設定変更することが出来る。
【0076】
次に605ステップの割り込み処理待ちの状態で、
図7の処理Yの割り込み処理を説明する。712ステップでは、圧力センサによる給水管の給水圧力の検出処理を実行し、検出結果が記憶部MのAN0(M111)に保存される。更に、713ステップで、メモリーM112、M113には、変数Nxに代入するインバータ現在周波数f0、f10のデータが保存される。尚、メモリーMのRAMに格納した値は変数として用いる。又、停電復帰時に再度パラメータを設定しなくても済むようにするため、PL、PM、Hon、Hoff、f10、ポンプ複数運転時(後述)に関連したパラメータPH、Hton、Htoff、f20等のデータは、RAMに保存しているデータと同じものをEEPROMにも保存しておく。このようにしておけば、停電復帰時にEEPROMに前記パラメータが保存されているので支障なく運転再開することができる。停電復帰時に再度、パラメータ設定をするという面倒さを解決することができる。
【0077】
さて、このようにして、
図6の606ステップでは、圧力センサの検出した圧力データAN0が、始動圧力ヘッドHon(αが0の時はPL)以下になるまで判定する。Hon以下であれば、607ステップに進み、ポンプ1台を始動指令してインバータINV1は、周波数f10(
図5に示す信号f1又はf2)を出力する。そして、608ステップで、目標圧力をH0=PL(初回はPLと603ステップで初期設定されている。)とセットして次の609ステップへ進む。
【0078】
609ステップでは、セットされた目標圧力を読み出し、圧力センサーの検出した給水管圧力H(=AN0)と比較する。比較の結果、H0+2m<H(=AN0)ならば、目標圧力ヘッドH0より給水圧が高いこと示しており、610ステップ以降の減速処理を実行する。609ステップでH0−2m>H(=AN0)ならば、目標圧力ヘッドH0より給水圧が低いこと示しており、616ステップ以降の増速処理を実行する。609ステップでH0+2m=>H(=AN0)=>H0−2mならば、目標圧力ヘッドH0と給水圧が等しいこと示しており611ステップへ進み、ここで目標圧力を更新する処理を実行する。更新のための目標圧力は、前述で求めた演算式(6)又(7)を読み出し、現在のインバータ周波数を変数Nxに代入することにより求まる。この後、609ステップへ戻りこれ以降の処理を続ける。
【0079】
610ステップでは減速処理を実行し、次の612ステップで指令した周波数が一致したか確認し、一致していれば613ステップへ進む。ここで、フロースイッチ9−1(又は9−2)が動作しているか判定する。同フロースイッチは流量スッチであり、ここを流れる流量が例えば10l(リットル)/min以下でON、15l/min以上でOFFする。使用水量が少なく10l/min以下であれば614ステップへ進み、ポンプを停止処理する。そして、615ステップへ進み、交互切り替え処理を実行して605ステップへ戻り、これ以降の処理を続ける。ここで言う交互切り替え処理とは、ポンプが2台の時、均等運転のため休止しているポンプを次発ポンプに設定し、運転が出来るよう準備することを意味する。
【0080】
616ステップでは、増速処理を実行し、次の617ステップで指令した周波数が一致したか確認し、一致していれば618ステップへ進む。ここでは、現在周波数が最高周波数に到達しているか判定し、否であれば最高周波数になるまで増速処理を続ける。618ステップの処理で最高周波数に到達していれば、次の619ステップで、給水圧力H(=AN0)が並列導入圧力Hton以下となっているか判定する。YESであれば、620ステップで並列運転処理に入っていく。2台並列運転では、1台が最高速度で固定速運転し、もう1台が変速運転を行う。この時の末端圧力一定制御の演算式を生成するパラメータは、下限座標が圧力目標値PM、周波数目標値がf20、上限座標が圧力目標値PH、周波数目標値がf0である。
【0081】
これらのパラメータにより末端圧力一定制御の前記演算式(11)又は式(12)で示すように生成される。又、並列導入圧力Hton、並列解除圧力Htoffのそれぞれのパラメータ、次のようにして求められる。
Hton:Hton=PM−γ(γは0〜2m)
Htoff:Htoff=PM+γ(γは0〜2m)
並列運転中に使用水量が減少すると変速ポンプは最低周波数f20に到達し、目標圧力はPMとなる。更に減少すると給水圧力がPMを超えHtoffとなる。そして、所定時間経過すると2台運転中の1台を停止する。停止すると前述した1台運転の処理に戻る。