(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チョークバルブとスロットルバルブとを有する気化器を備えたエンジンと、前記エンジンにより駆動される消防用ポンプと、前記消防用ポンプに呼び水をする真空ポンプと、前記エンジンにより駆動される軸に取り付けられた駆動プーリと、前記真空ポンプの駆動軸に取り付けられた被駆動プーリと、回動自在に支持されたテンションレバーに取り付けられて第1の位置と第2の位置との間を前記テンションレバーとともに回動させられるテンションプーリと、前記駆動プーリと被駆動プーリとテンションプーリとに巻き掛けされて、前記テンションプーリが第1の位置にあるときに弛緩状態にされて前記駆動プーリから被駆動プーリへの動力の伝達を断ち、前記テンションプーリが前記第2の位置に変位する過程で緊張状態にされて前記駆動プーリから被駆動プーリに動力を伝達する状態になるベルトと、前記真空ポンプを駆動する際に前記テンションレバーを一方向に回動させて前記テンションプーリを前記第1の位置から第2の位置に回動させ、前記真空ポンプを停止させる際に前記テンションレバーを他方向に回動させて前記テンションプーリを前記第2の位置から第1の位置に回動させるテンションプーリ操作機構と、前記チョークバルブの全閉位置側への操作と全開位置側への操作とを行なうチョークバルブ操作機構と、前記スロットルバルブを操作するスロットルバルブ操作機構とを備えた可搬式動力消防ポンプにおいて、
前記チョークバルブが全閉位置側に操作された状態で前記エンジンが回転しているときに前記テンションレバーを一方向に回動させて前記テンションプーリを前記第1の位置から第2の位置まで変位させる過程で生じる前記テンションレバーの変位を前記チョークバルブに伝達して前記チョークバルブを強制的に全開位置に戻すチョークバルブ戻し機構を具備したことを特徴とする可搬式動力消防ポンプ。
前記真空ポンプを駆動する際に生じる前記テンションレバーの一方向への回動変位を前記スロットルバルブに伝達して、前記エンジンの回転速度を前記真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度とするように前記スロットルバルブの開度を調整するスロットル開度調整機構を更に具備したことを特徴とする請求項1に記載の可搬式動力消防ポンプ。
前記チョークバルブ戻し機構は、前記テンションレバーと回動中心軸線を共有し、かつ前記テンションレバーに対して相対的に回動し得るように設けられたチョーク戻しレバーと、前記テンションレバーに設けられていて、前記テンションプーリが前記第2の位置に変位する過程で前記チョーク戻しレバーに接触して該チョーク戻しレバーを前記テンションレバーとともに回動させるレバー駆動部と、前記チョークバルブを全開位置に戻すべく前記チョーク戻しレバーの回動変位を前記チョークバルブに伝達するチョーク戻し用変位伝達機構とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の可搬式動力消防ポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されたチョーク自動解除装置によった場合には、ブースト圧によりチョークバルブが開く前にスロットルバルブを開く操作が行なわれたときに、ブースト圧の大幅な低下によりチョークバルブの係止を外すことができなくなって、エンジンがストールするおそれがある。消火活動の開始が遅れるのを防ぐため、このような事態が生じることは極力避けることができるようにしておくことが好ましい。
【0006】
本発明の目的は、チョークバルブを閉じた状態でエンジンを始動した後に、チョークバルブを全開位置に戻す操作を確実に行なわせて、チョークバルブの戻し忘れによりエンジンが不調になるのを確実に防ぐことができるようにした可搬式動力消防ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、チョークバルブとスロットルバルブとを有する気化器を備えたエンジンと、エンジンにより駆動される消防用ポンプと、消防用ポンプに呼び水をする真空ポンプと、エンジンにより駆動される軸に取り付けられた駆動プーリと、真空ポンプの駆動軸に取り付けられた被駆動プーリと、回動自在に支持されたテンションレバーに取り付けられて第1の位置と第2の位置との間を前記テンションレバーとともに回動させられるテンションプーリと、駆動プーリと被駆動プーリとテンションプーリとに巻き掛けされて、前記テンションプーリが第1の位置にあるときに弛緩状態にされて前記駆動プーリから被駆動プーリへの動力の伝達を断ち、前記テンションプーリが前記第2の位置に変位する過程で緊張状態にされて前記駆動プーリから被駆動プーリに動力を伝達する状態になるベルトと、真空ポンプを駆動する際にテンションレバーを一方向に回動させてテンションプーリを第1の位置から第2の位置に回動させ、真空ポンプを停止させる際にテンションレバーを他方向に回動させてテンションプーリを第2の位置から第1の位置に回動させるテンションプーリ操作機構と、チョークバルブの閉位置側への操作と全開位置側への操作とを行なうチョークバルブ操作機構と、スロットルバルブを操作するスロットルバルブ操作機構とを備えた可搬式動力消防ポンプを対象とする。
【0008】
本発明においては、チョークバルブが閉位置側に操作された状態でエンジンが回転しているときにテンションレバーを一方向に回動させてテンションプーリを第1の位置から第2の位置まで変位させる過程で生じるテンションレバーの変位をチョークバルブに伝達してチョークバルブを強制的に全開位置に戻すチョークバルブ戻し機構を設けた。
【0009】
上記の可搬式動力消防ポンプを使用する際には、エンジンを始動した後、消防用ポンプに呼び水を行なうために、テンションプーリを第2の位置に変位させてベルトを緊張状態にすることにより真空ポンプを動作させる操作が必ず行なわれる。従って、上記のように、テンションプーリを第1の位置から第2の位置まで変位させる過程で生じるテンションレバーの変位をチョークバルブに伝達してチョークバルブを強制的に全開位置に戻すチョークバルブ戻し機構を設けておくと、チョークバルブを確実に全開位置に戻すことができ、チョークバルブの戻し忘れによりエンジンがストールしたり不調になったりして、消火活動が妨げられるのを防ぐことができる。
【0010】
本発明の好ましい態様では、真空ポンプを駆動する際に生じるテンションレバーの一方向への回動変位をスロットルバルブに伝達して、エンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度とするようにスロットルバルブの開度を調整するスロットル開度調整機構が更に設けられる。
【0011】
上記のようなスロットル開度調整機構を設けておくと、真空ポンプを駆動する際に、エンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度に自動的に調整することができるため、消防ポンプを起動する際の操作を簡単にすることができ、作業員の熟練度の如何に関わりなく、火災現場に到着した後、消火活動を開始するまでの一連の操作を間違いなく行なわせることができる。
【0012】
本発明の好ましい態様では、チョークバルブ戻し機構を、テンションレバーと回動中心軸線を共有し、かつテンションレバーに対して相対的に回動し得るように設けられたチョーク戻しレバーと、前記テンションレバーに設けられていて、テンションプーリが第2の位置に変位する過程でチョーク戻しレバーに接触して該チョーク戻しレバーをテンションレバーとともに回動させるレバー駆動部と、チョークバルブを全開位置に戻すべくチョーク戻しレバーの回動変位をチョークバルブに伝達するチョーク戻し用変位伝達機構とを備えた構成とする。
【0013】
上記のようにチョークバルブ戻し機構を構成すると、簡単な構成で、テンションレバーの変位をチョークバルブに確実に伝達して、チョークバルブを全開位置に戻す操作を確実に行なわせることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様では、上記スロットル開度調整機構を、テンションレバーと回動中心軸線を共有し、かつテンションレバーに対して相対的に回動し得るように設けられてテンションプーリが第1の位置から第2の位置に変位する過程でレバー駆動部により駆動されてテンションレバーとともに回動する補助スロットルレバーと、エンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度とするべく補助スロットルレバーの回動変位をスロットルバルブに伝達する回転速度調整用変位伝達機構とを備えた構成とする。
【0015】
上記のようにスロットル開度調整機構を構成すると、エンジンを始動した後、ベルトを緊張させて真空ポンプを起動するまでの間に、テンションレバーの変位を補助スロットルレバーと回転速度調整用変位伝達機構とを通してスロットルバルブに伝達して、エンジンの回転速度を真空ポンプを駆動するのに適した規定の回転速度に調整する操作を確実に行なわせることができる。従って、ベルトを緊張させて真空ポンプを起動する操作を行なった後、遅滞なく真空ポンプの回転速度を規定の回転速度として、消防用ポンプへの呼び水を速やかに行なわせることができ、消防用ポンプから放水を行なわせるまでの準備作業を短時間で行なわせることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様で用いる補助スロットルレバーは、エンジンがアイドリング状態にあり、かつテンションプーリが第1の位置にあるときにレバー駆動部に接触した状態にあってテンションプーリが第1の位置から第2の位置への変位を開始すると同時にレバー駆動部により駆動されてエンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度に調整する動作を行なうように設けられる。またチョーク戻しレバーは、テンションプーリが第1の位置にあり、かつチョークバルブが全開位置にあるときに、レバー駆動部から設定角度離れた位置にあって、テンションプーリが第1の位置にある状態でチョークバルブが全閉状態にされたときにレバー駆動部に接触する位置まで回動するように設けられる。
【0017】
上記のように構成すると、真空ポンプをエンジンにより駆動する操作を開始すると同時に、エンジンの回転速度を規定の回転速度とするための操作を開始させて、ベルトが緊張状態にされて真空ポンプがエンジンに接続されるまでの間に、エンジンの回転速度を規定の回転速度に調整することができるので、真空ポンプがエンジンにより駆動される状態になったときに、エンジンに過大な負担がかかってエンジンがストールするおそれをなくすことができる。
【0018】
また上記のように構成すると、エンジンを始動した後、エンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した回転速度まで上昇させる過程でチョークバルブを全開位置に戻すことができるので、チョークバルブを戻すタイミングが早すぎてエンジンがストールする事態が生じるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エンジンを始動した後に必ず行なわれる真空ポンプの起動過程で生じるテンションレバーの変位をチョークバルブに伝達して、チョークバルブを強制的に全開位置に戻すチョークバルブ戻し機構を設けたので、チョークバルブを確実に全開位置に戻すことができ、チョークバルブの戻し忘れによりエンジンがストールしたり不調になったりして、消火活動が妨げられるのを防ぐことができる。
【0020】
本発明において、真空ポンプを駆動する際に生じるテンションレバーの一方向への回動変位をスロットルバルブに伝達して、エンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度とするようにスロットルバルブの開度を調整するスロットル開度調整機構を更に設けた場合には、真空ポンプを駆動する際に、エンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度に自動的に調整することができるため、真空ポンプを起動する際の操作を簡単にすることができ、作業員の熟練度の如何に関わりなく、火災現場に到着した後、消火活動を開始するまでの一連の操作を間違いなく行なわせることができるという利点が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1において、1は取っ手1a,1aを有する可搬式動力消防ポンプの台、2は台1に支持された消防用ポンプ駆動用のエンジンである。3はエンジンを始動するリコイルスタータ、4は気化器であり、図示しないエアフィルタから気化器4を通してエンジン2の吸気マニホルド2aに混合気が供給される。気化器4は、チョークバルブを操作するチョークレバー4aと、スロットルバルブを操作するスロットルレバー4bとを有している。図示してないが、消防用ポンプはエンジン2の下方に配置されて、エンジン2とともに台1に支持されている。
【0023】
図2に示されているように、エンジンのクランク軸2bに、歯付きプーリ10が取り付けられ、エンジンのケーシングに対して回転自在に支持されたカム軸11にプーリ10よりも大径のカムプーリ12が取り付けられている。歯付きプーリ10及びカムプーリ12にタイミングベルト13が巻き掛けされ、エンジンのクランク軸2bの回転がタイミングベルト13を通してカムプーリ12に伝達されるようになっている。
【0024】
カムプーリ12が取り付けられたカム軸11にはまた駆動プーリ14が取り付けられ、図示されていない真空ポンプの駆動軸6に被駆動プーリ15が取り付けられている。真空ポンプは、被駆動プーリ15の下方に配置されて台1に対して支持されている。また第1ないし第3の角部17a1ないし17a3を有するほぼ三角形の本体部17aを備えたテンションレバー17が、その本体部の第1の角部17a1及び第2の角部17a2をそれぞれ駆動プーリ14の側方及び被駆動プーリ15の側方に位置させ、第3の角部17a3を駆動プーリ14及び被駆動プーリ15と反対側に位置させた状態で設けられていて、その第1の角部17a1が、エンジン2に対して固定されたプーリカバー8(
図1参照)に軸16を介して支持されている。テンションレバー17の本体部17aの第2の角部17a2に、テンションプーリ19が軸18を介して回転自在に支持されている。テンションプーリ19は、軸16の中心軸線を回動中心として、
図1、
図2,
図4及び
図5に示す第1の位置と、
図6に示す第2の位置との間をテンションレバー17と共に回動させられる。テンションプーリ19が第1の位置にあるときのテンションレバー17の位置をテンションレバーの第1の位置とし、テンションプーリ19が第2の位置にあるときのテンションレバーの位置をテンションレバーの第2の位置とする。
【0025】
駆動プーリ14と被駆動プーリ15とテンションプーリ19とに真空ポンプ駆動用ベルト20が巻き掛けされている。ベルト20は、テンションプーリ19が
図1,
図2,
図4及び
図5に示す第1の位置にあるときに弛緩状態にあって駆動プーリ14から被駆動プーリ15への動力の伝達を断った状態にあり、テンションプーリ19が
図6に示す第2の位置に変位する過程で緊張状態にされて、駆動プーリ14から被駆動プーリ15に動力を伝達する状態になる。
【0026】
テンションレバー17の本体部17aの軸16により支持された第1の角部17a1には、被駆動プーリ15側に突出した腕部17bが設けられている。プーリカバー8には、腕部17bに接触してテンションレバー17の回動範囲を規制するストッパ21が固定されている。腕部17bがストッパ21に接触した状態にあるときにテンションプーリ19が第1の位置に位置するようにストッパ21の位置が設定されている。テンションレバーの腕部17bの先端とフレーム板8に固定されたバネ保持部材22との間にテンションレバー17を図面上時計方向に付勢する引っ張りバネ23が設けられ、バネ23により、テンションレバー17及びテンションプーリ19が第1の位置側に付勢されている。またテンションレバー17の本体部の第2の角部17a2に突設された腕部17cの先端にベルト押え25が取り付けられ、テンションレバー17及びテンションプーリ19が第1の位置にあるときに、ベルト押え25が、ベルト20のテンションプーリ19が接する面と反対側の面を押えるようになっている。
【0027】
テンションレバー17の本体部17aの第3の角部17a3には、ピン27が取り付けられており、真空ポンプ操作ワイヤ26の一端に固定された連結具26aがピン27に取り付けられている。真空ポンプ操作ワイヤ26は、台1に対して固定されたフレーム(図示せず。)に取り付けられた調整式取付け金具28と、調整式取付け金具28に一端が接続されたアウタチューブ29とを通して、図示しない操作盤に取り付けられた真空ポンプ操作ハンドル30に接続されている。本実施形態では、操作ハンドル30を図示の矢印A方向に引いた際にテンションレバー17がバネ23の付勢力に抗して図面上反時計方向に回動してテンションプーリ19を第1の位置から第2の位置に回動させ、操作ハンドル30に加えていた引っ張り力を緩めた際に、バネ23の付勢力によりテンションレバー17が時計方向に回動してテンションプーリ19を第1の位置に復帰させると共に、操作ハンドル30を矢印Aと反対方向に変位させて元の位置に戻すようになっている。
【0028】
本実施形態では、操作ハンドル30とワイヤ26とにより、真空ポンプを駆動する際にテンションレバー17を一方向に回動させてテンションプーリ19を第1の位置から第2の位置に回動させ、真空ポンプを停止させる際にテンションレバー17を他方向に回動させてテンションプーリ19を第2の位置から第1の位置に回動させるテンションプーリ操作機構が構成されている。
【0029】
エンジンの気化器4に設けられたチョークレバー4aには、チョークロッド31の一端が連結されている。チョークロッド31の他端は、図示しない操作盤に摺動自在に取り付けられたチョークノブ32に連結され、チョークノブ32を図示の矢印B方向に引いた際にチョークバルブが全閉位置まで回動し、チョークノブ32を戻した際にチョークバルブが全開位置に戻されるようになっている。本実施形態では、チョークロッド31とチョークノブ32とにより、チョークバルブの全閉位置側への操作と全開位置側への操作とを行なうチョークバルブ操作機構が構成されている。
【0030】
図3に示されているように、気化器4のスロットルレバー4bの先端にロッド33の一端が回動自在に連結され、ロッド33の他端は、ガバナ装置(調速機)に設けられたガバナシャフト34aに取り付けられたガバナレバー34の先端に回動自在に連結されている。ガバナ装置は、エンジンの出力軸に接続された軸に取り付けられて、エンジンの回転により生じる遠心力によって外側に振り出される振り子動作を行なうガバナウェイトと、ガバナウェイトの回動に伴ってスライド動作を行なうスライダと、このスライダの変位をガバナレバー34に伝達する機構とを備えた公知のものである。ガバナ装置は、エンジンの回転に伴ってガバナレバー34を
図3において時計方向に回動させて、エンジンの回転速度の上昇に伴ってスロットルバルブの開度を小さくする方向にスロットルレバー4bを回動させようとする。ガバナレバー34には、エンジンに固定された調整式取付け金具35とこの調整式取付け金具に接続されたアウタチューブ36とによりガイドされたスロットルワイヤ37の一端がガバナスプリング38を介して接続され、スロットルワイヤ37の他端が、操作盤に取り付けられたスロットル操作レバー39に接続されている。ガバナレバー34は、ガバナ機構による付勢力とガバナスプリング38の付勢力とがバランスした位置に保持される。ガバナレバー34のバランス位置(スロットルバルブの開度)は、スロットル操作レバー39により適宜に調整することができる。本実施形態では、ガバナレバー34を備えたガバナ機構と、スロットルワイヤ37と、ガバナスプリング38と、スロットル操作レバー39とにより、エンジンの回転速度を調節するべくスロットルバルブを操作するスロットルバルブ操作機構が構成されている。
【0031】
本実施形態においては、テンションレバー17と回動中心軸線を共有し、かつテンションレバー17に対して相対的に回動し得るようにして軸16により支持されたチョーク戻しレバー41と、同じくテンションレバー17と回動中心軸線を共有し、かつテンションレバー17及びチョーク戻しレバー41の双方に対して相対的に回動し得るようにして軸16により支持された補助スロットルレバー42とが設けられている。またテンションレバー17の腕部17bの先端には、チョーク戻しレバー41側及び補助スロットルレバー42側に起立したレバー駆動部17dが形成されていて、テンションレバー17及びテンションプーリ19が第1の位置から第2の位置に変位する過程でレバー駆動部17dがチョーク戻しレバー41及び補助スロットルレバー42に接触して、チョーク戻しレバー41及び補助スロットルレバー42をテンションレバー17とともに回動させるようになっている。
【0032】
チョーク戻しレバー41の先端には、プーリカバー8に取り付けられた調整式取付け金具45とこの調整式取付け金具に一端が接続されたアウタチューブ46とによりガイドされたチョーク戻しワイヤ47の一端が接続されている。アウタチューブ46の他端は、エンジンに固定された調整式取付け金具48に接続され、調整式取付け金具48から導出されたチョーク戻しワイヤ47の他端がチョークロッド31に設けられたピン31aに回動自在に連結されている。
【0033】
本実施形態では、チョーク戻しワイヤ47と、調整式取付け金具45及び48と、アウタチューブ46と、チョークロッド31とにより、チョークバルブを全開位置に戻すべくチョーク戻しレバー41の回動変位をチョークバルブに伝達するチョーク戻し用変位伝達機構が構成され、このチョーク戻し用変位伝達機構と、テンションレバー17と回動中心軸線を共有し、かつテンションレバー17に対して相対的に回動し得るように設けられたチョーク戻しレバー41と、テンションレバー17に設けられてテンションプーリ19が第1の位置から第2の位置に変位する過程でチョーク戻しレバー41に接触して該チョーク戻しレバー41をテンションレバー17とともに回動させるレバー駆動部17dとにより、チョークバルブが全閉位置側に操作された状態でエンジンが回転しているときに、真空ポンプを駆動するためにテンションレバー17を一方向に回動させてテンションプーリ19を第1の位置から第2の位置まで変位させる過程で生じるテンションレバー17の変位をチョークバルブに伝達して、チョークバルブを強制的に全開位置に戻すチョークバルブ戻し機構が構成されている。
【0034】
補助スロットルレバー42の先端には、プーリカバー8に固定された調整式取付け金具50とこの調整式取付け金具に一端が接続されたアウタチューブ51とによりガイドされた補助スロットルワイヤ52の一端が接続されている。補助スロットルワイヤ52の他端は、図示しないフレームに固定されてアウタチューブ51の他端に接続された調整式取付け金具53から導出されて、ガバナスプリング38を介してガバナレバー34の先端に連結されている。
【0035】
本実施形態では、補助スロットルワイヤ52と、調整式取付け金具50及び53と、アウタチューブ51と、ガバナスプリング38(
図3参照)と、ガバナレバー34と、ガバナロッド33とにより、エンジン2の回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度とするように補助スロットルレバー42の変位をスロットルバルブに伝達する回転速度調整用変位伝達機構が構成され、この変位伝達機構と、テンションレバー17と回動中心軸線を共有し、かつテンションレバー17及びチョーク戻しレバー41に対して相対的に回動し得るように設けられて、テンションプーリ19が第1の位置から第2の位置に変位する過程でレバー駆動部17dにより駆動されてテンションレバー17とともに回動する補助スロットルレバー42とにより、真空ポンプを駆動する際に生じるテンションレバー17の一方向への回動変位をスロットルバルブに伝達して、エンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度とするようにスロットルバルブの開度を調整するスロットル開度調整機構が構成されている。
【0036】
本実施形態においては、真空ポンプ操作ハンドル30を初期位置から図示の矢印A方向に一杯に引いた際に、テンションレバー17が第1の位置から第2の位置まで回動し、このテンションレバー17の回動に伴って、テンションプーリ19が
図1、
図2、
図4及び
図5に示す第1の位置から、
図6に示した第2の位置まで回動してベルト20を緊張状態にするように、真空ポンプ操作ハンドル30の操作量と、テンションレバー17の回動角度との間の関係が設定されている。
【0037】
また補助スロットルレバー42は、
図1に示したように、テンションプーリ19が
図1、
図2、
図4及び
図5に示す第1の位置にあり、かつエンジンがアイドリング状態にあるときにレバー駆動部17dに接触した状態にあって、テンションプーリ19が第2の位置への回動変位を開始すると同時にレバー駆動部17dにより駆動されてテンションレバー17の回動方向と同方向への回動を開始するように設けられており、テンションプーリ19が第1の位置から第2の位置まで回動した際に生じる補助スロットルレバー42の回動により、エンジンのスロットルバルブの開度が、エンジンの回転速度を真空ポンプの駆動に適した規定の回転速度とする開度に調整されるように、テンションレバー17が第1の位置から第2の位置まで回動する間に生じる補助スロットルレバー42の回動角度が設定されている。
【0038】
また
図1,
図2及び
図4に示すように、テンションレバー17及びテンションプーリ19が第1の位置にあり、かつチョークノブ32が引かれていない状態(チョークバルブが全開している状態)にあるときに、チョーク戻しレバー41がレバー駆動部17dから設定角度だけ離れた位置に位置し、チョークバルブを全閉状態にする位置までチョークノブ32が引かれたときに、チョーク戻しレバー41がチョーク戻しワイヤ47により引かれて設定角度回動して、
図5に示すように、第1の位置にあるテンションレバー17のレバー駆動部17dに接触する位置に達するように、チョークノブ32の操作量と、チョーク戻しレバー41の回動量との間の関係が設定されている。
【0039】
上記の各部により本実施形態の可搬式動力消防ポンプが構成されている。本実施形態の可搬式動力消防ポンプの動作を
図4ないし
図6の動作説明図を用いて説明する。なお
図4ないし
図6において、駆動プーリ14、被駆動プーリ15、テンションレバー17、テンションプーリ19及びベルト20を含む真空ポンプの操作機構部とチョーク戻しレバー41及び補助スロットルレバー42とは、
図2と同じ方向から見た状態で示しているが、説明の便宜上、気化器4と、気化器4に接続されている部材とについては、
図3と同じ方向から見た状態で示している。
【0040】
エンジンを始動する前の初期状態においては、各部が
図4に示された状態にある。この状態では、チョークノブ32が引かれておらず、気化器4のチョークバルブは全開状態にある。また真空ポンプ操作ハンドル3も引かれておらず、テンションプーリ19は、ベルト20を弛緩状態にする位置である第1の位置に配置されている。スロットル操作レバー39は、気化器4のスロットルバルブの開度を、エンジンのアイドリング運転時の開度に調整する位置にある。この初期状態では、テンションレバー17が第1の位置にあり、テンションプーリ19が第1の位置にある。この時補助スロットルレバー42は、テンションレバー17に一体に設けられたレバー駆動部17dに接触した状態にあり、チョーク戻しレバー41は、レバー駆動部17dから設定角度だけ離れた位置にある。
【0041】
消防ポンプを運転する際には、消防用ポンプ(図示せず。)の吸込み口に接続されたホースの先端を水中に投入し、エンジン2を始動する。エンジンを始動する際には必要に応じて、
図5に示すようにチョークノブ32を矢印B方向に引いて、気化器4のチョークバルブを全閉位置に変位させる操作を行なう。チョークノブ32を矢印B方向に引くと、チョーク戻しワイヤ47を介してチョーク戻しレバー41が
図5において時計方向に回動させられて、同図に示すように、チョーク戻しレバー41が補助スロットルレバー42とともにレバー駆動部17dに接触した状態になる。
【0042】
この状態でリコイルスタータ3を操作してエンジン2を始動させる。これによりエンジン2が回転し、駆動プーリ14が回転するが、
図5に示すようにテンションプーリ19が第1の位置にあるときには、ベルト20が弛緩した状態にあって、駆動プーリ14の回転を被駆動プーリ15に伝達することができないため、真空ポンプは停止した状態にある。
【0043】
エンジンを始動した後、消防用ポンプに呼び水を行なうために、
図6に示すように真空ポンプ操作ハンドル30を矢印A方向に引く。真空ポンプ操作ハンドル30を矢印A方向に引くと、テンションレバー17が図面上反時計方向に回動し、テンションプーリ19を
図5に示す第1の位置から
図6に示す第2の位置に回動させる。これによりベルト20が緊張状態にされるため、駆動プーリ14からベルト20を介して被駆動プーリ15に動力が伝達され、真空ポンプが駆動される。これにより消防用ポンプに呼び水が行なわれ、放水し得る状態になる。
【0044】
また
図6に示すように、真空ポンプ操作ハンドル30を矢印A方向に引くと、テンションレバー17の図面上反時計方向への回動に伴って、レバー駆動部17dが補助スロットルレバー42及びチョーク戻しレバー41を一緒に反時計方向に回動させる。補助スロットルレバー41が回動すると、補助スロットルワイヤ52とガバナスプリング38とを介してガバナレバー34がスロットルバルブを開く側に変位するため、エンジン2の回転速度が上昇させられる。
【0045】
本実施形態においては、真空ポンプ操作ハンドル30を矢印A方向に一杯に引いてテンションプーリ19を第2の位置に変位させた際に、エンジンの回転速度が真空ポンプを動作させるのに適した規定の回転速度になるように、真空ポンプ操作ハンドル30を矢印A方向に一杯に引いた際の補助スロットルレバー42の回動角度が設定されている。従って、真空ポンプ操作ハンドル30を引くことにより、真空ポンプを駆動状態にすると同時に、エンジンの回転速度を真空ポンプを駆動するのに適した規定の回転速度まで上昇させることができ、真空ポンプによる消防用ポンプの呼び水を支障なく行なわせることができる。
【0046】
従来の可搬式動力消防ポンプでは、エンジンを始動した後、エンジンの回転速度を真空ポンプを駆動する速度に調整する操作をスロットル操作レバー39を手動操作することにより行なっていたが、本実施形態の可搬式動力消防ポンプでは、真空ポンプ操作ハンドル30を引いた際に、エンジンの回転速度を真空ポンプを駆動する速度に調整する操作を自動的に行なわせることができる。
【0047】
また
図6に示したように、真空ポンプ操作ハンドル30を引いてテンションレバー17を回動させた際に、レバー駆動部17dが補助スロットルレバー42と共にチョーク戻しレバー41を回動させ、チョーク戻しレバー41の回動変位をチョーク戻しワイヤ47を介してチョークロッド31に伝達して、チョークロッド31と一体で動作するチョークノブ32をチョークバルブを開く側に変位させることができるため、真空ポンプ操作ハンドル30を引ききるまでの間にチョークバルブを全開状態に戻すことができる。従って、チョークの戻し忘れによりエンジンが不調になったり、ストールしたりするのを確実に防ぐことができる。
【0048】
真空ポンプ操作ハンドル30が元の位置に戻されると、テンションレバー17がバネ2によって
図4に示す第1の位置に戻されるため、レバー駆動部17dがチョーク戻しレバー41及び補助スロットルレバー42から離れる。この状態では、補助スロットルレバー42がガバナレバー34とともに回動するのを許容する。ガバナレバー34がアイドリング運転時の位置に戻されたときに補助スロットルレバー42がレバー駆動部17dに接触した状態になる。チョーク戻しレバー41は、次にチョークノブ32が引かれるまでの間、チョークバルブを全開状態にする位置に保持される。