特許第5715541号(P5715541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715541
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】カッタビット
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   E21D9/087 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-226044(P2011-226044)
(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公開番号】特開2013-87426(P2013-87426A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】高倉 克彦
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−150806(JP,A)
【文献】 特開2009−097285(JP,A)
【文献】 実開平07−004594(JP,U)
【文献】 特開平06−264688(JP,A)
【文献】 特開昭62−268495(JP,A)
【文献】 特開2009−287186(JP,A)
【文献】 実開昭60−100496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/087
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材と前記母材に固定された刃材とを備えるカッタビットであって、
前記母材には、その先端面に開口する凹部が形成されており、
前記凹部の開口幅は、当該凹部の内部の最大幅寸法よりも小さく、
前記刃材は、前記先端面に固着された上段刃部と凹部に埋め込まれた下段刃部とを有することを特徴とする、カッタビット。
【請求項2】
母材と前記母材に固定された刃材とを備えるカッタビットであって、
前記母材には、その先端面に開口する凹部が形成されており、
前記刃材は、前記先端面に固着された上段刃部と凹部に埋め込まれた下段刃部とを有しているとともに中央部にくびれ部分を有しており、
前記くびれ部分は、前記凹部の開口部に位置していることを特徴とする、カッタビット。
【請求項3】
前記刃材が、前記母材にろう付けされていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のカッタビット。
【請求項4】
前記母材の背面に肉盛り溶接が施されるか、または、超硬チップが貼着されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカッタビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山の切削を行うカッタビットに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法、推進工法、TBM等によるトンネル工事、現場打ち杭の施工、地中連続壁の施工等に伴う掘削孔や掘削溝等の施工は、カッタビットが設置された掘削機により行う。
【0003】
カッタビットは、地山の切削に伴い磨耗する。磨耗したカッタビットは、掘削作業を中断して交換する必要があるが、掘削作業を中断すると、工期短縮化の妨げになるとともに、工事費の低減化の妨げになる。
【0004】
カッタビット全体を強度の高い材料により構成すれば、カッタビットの交換頻度を低減させることが可能であるものの、コストが高くなるとともに、掘削機への取り付け方法も制限されてしまう。
そのため、長距離掘削に耐え得る機能を有しており、交換作業を省略あるいは交換作業の回数を低減させることを可能とした安価なカッタビットが開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、図6の(a)に示すように、二次ビット102の外面を一次ビット102により覆った二重ビット100であって、一次ビット101が切削により磨耗すると、一次ビット101のシャンク103が自動的に剥がれ落ち、二次ビット102が露出することで、切削能力の低下が抑制されている。
【0006】
また、特許文献2には、図6の(b)に示すように、ビット本体201の外面に複数のチップ202,202,…が積層されたカッタビット200であって、磨耗したチップ202が剥がれ落ちて新たなチップ202が露出することで、切削能力の低下が抑制されたカッタビット200が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−327266号公報
【特許文献2】特開2010−150806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の二重ビット(カッタビット)100は、離脱した一次ビット101のシャンク103が掘削土砂とともにチャンバー内に取り込まれて、回収が困難になる場合があった。掘削土砂にシャンク103が紛れていると、掘削土砂を搬出する際に各種設備機器が破損するおそれがある。
【0009】
また、特許文献2のカッタビット200は、掘削時の衝撃により、チップ202が剥がれ落ちる可能性がある。チップ202が所定の磨耗量に達する前に剥がれ落ちると、予定外のカッタビット200の交換作業が必要になる場合がある。
【0010】
本発明は、前記の問題点を解決するものであり、磨耗に伴う交換の頻度を減らし、掘削機等の損傷のリスクを低減することを可能としたカッタビットを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の第一のカッタビットは、母材と前記母材に固定された刃材とを備えるものであって、前記母材には、その先端面に開口する凹部が形成されており、前記凹部の開口幅は、当該凹部の内部の最大幅寸法よりも小さく、前記刃材は、前記先端面に固着された上段刃部と凹部に埋め込まれた下段刃部とを有することを特徴としている。
【0012】
かかるカッタビットによれば、下段刃材が凹部に埋め込まれた状態で刃材が母材に固定されているため、刃材が剥がれ落ちることが防止されている。そのため、刃材等の破片により設備機器が損傷することを防止できる。また、長期間カッタビットを使用することが可能となり、交換作業の手間を省略あるいは低減できる。なお、カッタビットは、凹部に埋めこまれているため、外的な衝撃に対しても剥がれ落ちることが防止されている。
【0013】
第二のカッタビットは、母材と前記母材に固定された刃材とを備えるものであって、前記母材には、その先端面に開口する凹部が形成されており、前記刃材は、前記先端面に固着された上段刃部と凹部に埋め込まれた下段刃部とを有しているとともに中央部にくびれ部分を有しており、このくびれ部分が前記凹部の開口部に位置していることを特徴としている
【0014】
かかるカッタビットによれば、上段刃部が磨耗すると、次第に下段刃部が現れるようになり、下段刃部の露出とともに刃材の鋭さが復帰する。また、刃材は、くびれ部分により凹部に嵌合された状態で固定されているため、脱落することが防止されている。
【0015】
前記刃材が、前記母材にろう付けされていれば、両者を強固に固定することができる。
【0016】
前記母材の背面に肉盛り溶接が施されるか、または、超硬チップが貼着されていれば、母材の背面側の磨耗を遅らせることができるので、長期間カッタビットを使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカッタビットによれば、磨耗に伴う交換の頻度を減らし、掘削機等の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一の実施の形態に係るカッタビットを示す斜視図である。
図2】(a)〜(d)は、図1に示すカッタビットの使用状況を示す側面図である。
図3】第二の実施の形態に係るカッタビットを示す斜視図である。
図4】(a)は図3に示すカッタビット側面図、(b)は同拡大図である。
図5】(a)〜(d)は、図3に示すカッタビットの使用状況を示す側面図である。
図6】(a)および(b)は、従来のカッタビットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第一の実施の形態に係るカッタビット1は、図1に示すように、母材10と、母材10に固定された刃材20とを備えている。
【0020】
母材10は、いわゆるシャンク材である。
本実施形態の母材10は、刃材20よりも膨張係数が大きく、かつ、構造部材として十分な剛性、強度を有する材料により構成されている。本実施形態では、母材10を構成する材料として、SS材やS45C材等を使用するが、母材10を構成する材料は限定されるものではない。
【0021】
母材10の背面14は、地山G(切削面)に対向する面であり、先端部(欠損部11)側に向うに従って底面16から離れるように傾斜している。母材10の前面15は、カッタビット1の進行方向前側の面であり、先端部(欠損部11)側に向うに従って後面17から離れるように傾斜している。背面14の延長面と前面15の延長面とが交わる角部が鋭角となる。母材10の底面は、図示せぬカッタヘッドに当接する面であり、後面17は、カッタビット1の進行方向後側の面である、母材10の底面16と後面17は、直角に交わっている。なお、母材10の形状は限定されない。
【0022】
母材10の先端部の角部分(背面14と前面15とが交わる角部分)には、刃材20を収容する欠損部11が形成されている。また、母材10には、欠損部11(先端面13)に開口する凹部12が形成されている。
【0023】
欠損部11は、先端面13のうち、前面15と交差する平面部分13aは底面16と平行であり、背面14と交差する平面部分13bは後面17と平行である。平面部分13a,13bは、側面視八字状に配置されている。なお、欠損部11の断面形状は限定されない。
【0024】
母材10の背面14の先端部(欠損部11の後)には、図1および図2の(a)に示すように、補助チップ18が貼り付けられている。補助チップ18は、超硬チップを板状に薄く加工したものであって、表面が母材10の背面と面一となるように、母材10の背面14に形成された切り欠きにろう付けされている。なお、補助チップ18の固定方法は、これに限定されるものではない。また、補助チップ18は、1枚の板材であってもよいし、複数の板材が並設されたものであってもよい。
【0025】
また、母材10の背面14には、補助チップ18の後部に肉盛り溶接19が施されている。母材10は、肉盛り溶接19により背面14の一部が盛り上がっている(増厚されている)。なお、肉盛り溶接19は、耐磨耗を目的として、硬い金属層を背面14に溶着させたものである。
【0026】
図2の(a)に示すように、凹部12の内壁面は、四つの平面により形成されているが、それぞれ、母材10の背面14、前面15、底面16および後面17と平行となるように形成されている。凹部12の開口幅は、凹部12の内部の最大幅寸法よりも小さい。なお、凹部12の形状は限定されない。
【0027】
刃材20は、母材10よりも磨耗しにくい超硬チップにより構成された部材であり、中央部がくびれている。
本実施形態の刃材20は、先端面13に固着された上段刃部21と凹部12に埋め込まれた下段刃部22とが一体に形成された2段構造からなる。
【0028】
上段刃部21は、背面(第一チップ背面)21aおよび前面(第一チップ前面)21bが外部に面した状態で母材10の欠損部11に配設されている。
図2の(a)に示すように、第一チップ背面21aは母材10の背面14と直線を呈しているとともに、第一チップ前面21bは前面15と直線を呈している。すなわち、第一チップ背面21aは、背面14と面一であり、第一チップ前面21bは、前面15と面一である。上段刃部21は、第一チップ背面21aと第一チップ前面21bとにより、先端が鋭角を呈している。
【0029】
上段刃部21は、その底面(第一チップ底面)21cおよび後面(第一チップ後面)21dがそれぞれ母材10の先端面13の平面部分13a,13bにろう付け30されている。
なお、上段刃部21の固定方法はろう付けに限定されるものではなく、例えば、加圧圧着により固定してもよい。
【0030】
下段刃部22は、凹部12に挿入した状態で、その背面(第二チップ背面)22a、前面(第二チップ前面)22b、底面(第二チップ底面)22cおよび後面(第二チップ後面)22dが、それぞれ母材20の背面14、前面15、底面16および後面17と平行となる形状を呈している。
【0031】
第二チップ背面22a、第二チップ前面22b、第二チップ底面22cおよび第二チップ後面22dは、凹部12の内壁面にろう付けされている。
【0032】
刃材20よりも母材10の方が線膨張係数が大きいので、ろう付け後(冷却後)は母材10によって下段刃部22が締め付けられ、より強固に固定される。
なお、下段刃部22の固定方法は、ろう付けに限定されるものではなく、例えば、加圧圧着により固定してもよい。
【0033】
第二チップ背面22aは、第一チップ背面21aからオフセットされており、刃材20の背面側は段差を有している。同様に、第二チップ前面22bは、第一チップ前面21bからオフセットされており、刃材20の前面側は段差を有している。
【0034】
これらの段差により、刃材20の中央部がくびれた状態となる。なお、第二チップ背面22aは第一チップ背面21aと平行であり、第二チップ前面22bは第一チップ前面21bと平行である。
下段刃部22を凹部12に挿入すると、刃材20の中央部のくびれ部分が、凹部12の開口部に位置するようになる。
【0035】
カッタビット1により切削を行うと、図2の(b)に示すように、上段刃部21の先端側から磨耗する。
【0036】
上段刃部21の磨耗が進行すると、図2の(c)に示すように、母材10の背面14および前面15も磨耗する。
【0037】
上段刃部21が磨耗すると、次第に下段刃部22が現れるようになり、平面部分13a,13bが消失したときには、図2の(d)に示すように、下段刃部22によって切削が行われるようになる。
第二チップ背面22aと第二チップ前面22bは、母材10の背面14と前面15の形状に応じて傾斜しているため、下段刃部22の露出とともに刃材20の鋭さが復帰する。
【0038】
以上、第一の実施の形態のカッタビット1によれば、刃材20は凹部12に埋め込まれた状態で固定されているため、衝撃により剥がれ落ちることがない。
また、刃材20が脱落することもないため、回収作業や回収装置が不要である。
【0039】
刃材20は、凹部12内においてろう付けされているため、線膨張係数の大きい母材10が熱により膨張して刃材20を締め付けて、ろう付け強度以上に固定されている。そのため、刃材20が母材10から脱落する可能性は低い。
【0040】
また、刃材20は、上段刃部21と下段刃部22とにより、長い(高い)超硬チップが形成されるため、カッタビット1を交換することなく長期間掘進することができる。
【0041】
母材10に刃材20を埋め込む構成であるため、母材(シャンク材)10の一部がかたまりの状態で剥がれ落ちることはなく、したがって、掘削機等に悪影響を及ぼすことがない。
【0042】
刃材20の後部に補助チップ18が貼着されているため、刃材20の後部の磨耗の進行が先行することを防止し、刃材20が抜け落ちることが防止されている。
また、母材10の背面14に肉盛り溶接19が施されているため、刃部20よりも柔らかい素材からなる母材10のみが先行して磨耗してしまうことが防止されている。
このように、補助チップ18の貼着および肉盛り溶接19が施されていることで、カッタビット1をより長く使用することができる。
【0043】
第二の実施の形態に係るカッタビット1は、図3に示すように、母材10と、母材10に固定された刃材20とを備えている。
【0044】
母材10は、いわゆるシャンク材である。
第二の実施の形態の母材10の構成は、第一の実施の形態の母材10と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0045】
刃材20は、母材10よりも磨耗し難い超硬チップにより構成された部材である。
本実施形態の刃材20は、先端面13に固着された上段刃部21と凹部12に埋め込まれた下段刃部22とを備える2層構造により構成されているが、一体成型されたものではなく、二部材からなる。
【0046】
上段刃部21は、側面視V字状を呈する部材からなり、背面(第一チップ背面)21aおよび前面(第一チップ前面)21bが外部に面した状態で母材10の欠損部11に配設されている。
図4の(a)に示すように、第一チップ背面21aは母材10の背面14と直線を呈しているとともに、第一チップ前面21bは前面15と直線を呈している。上段刃部21は、第一チップ背面21aと第一チップ前面21bとにより、先端が鋭角を呈している。
【0047】
上段刃部21は、図4の(b)に示すように、その底面(第一チップ底面)21cおよび後面(第一チップ後面)21dの角部に、下段刃部22の先端部を収納する溝21eが形成されている。溝21eは側面視V字状を呈しており、凹部12に対向している。溝21eの開口幅は、凹部12の開口幅と等しい。
なお、第一チップ底面21cと第一チップ後面21dは、直角を呈している。
【0048】
上段刃部21は、第一チップ底面21cと第一チップ後面21dとを、母材10の先端面13の平面部分13a,13bにろう付け30することで母材10に固定されている。
なお、溝21eに挿入された下段刃部22と上段刃部21との間は、固定されていない。
【0049】
上段刃部21は、異なる2方向(平面部分13a,13b)においてろう付けされているため、固定度が高い。
なお、上段刃部21の固定方法はろう付けに限定されるものではなく、例えば、加圧圧着により固定してもよい。
【0050】
下段刃部22は、凹部12に挿入した状態で、その背面(第二チップ背面)22a、前面(第二チップ前面)22b、底面(第二チップ底面)22cおよび後面(第二チップ後面)22dが、それぞれ母材20の背面14、前面15、底面16および後面17と平行となる形状を呈している。
【0051】
下段刃部22は、先鋭部(鋭角部)を有する側面視四角形状の部材であり、第二チップ背面22a、第二チップ前面22b、第二チップ底面22cおよび第二チップ後面22dが、凹部12の内壁面にろう付けされている。
下段刃部22の先端部(第二チップ背面22aと第二チップ前面22bの角部)は、上段刃部21の溝21eに挿入されているのみで、固定されていない。
【0052】
刃材20よりも母材10の方が線膨張係数が大きいので、ろう付け後(冷却後)は母材10によって下段刃部22が締め付けられ、より強固に固定される。
なお、下段刃部22の固定方法は、ろう付けに限定されるものではなく、例えば、加圧圧着により固定してもよい。
【0053】
下段刃部22の先端部は、凹部12から突出していて、上段刃部21の溝21eに挿入されている。
そして、第二チップ背面22aは、第一チップ背面21aからオフセットされており、刃材20の背面側は段差を有していて、第二チップ前面22bは、第一チップ前面21aからオフセットされており、刃材20の前面側は段差を有している。なお、第二チップ背面22aは第一チップ背面21aと平行であり、第二チップ前面22bは第一チップ前面21bと平行である。
【0054】
カッタビット1により切削を行うと、図5の(a)に示すように、上段刃部21の先端側から磨耗する。
【0055】
上段刃部21の磨耗の進行に伴い、母材10の背面14および前面15が磨耗すると、図5の(b)に示すように、上段刃部21と母材10との固定面積(ろう付け面積)が小さくなり、やがて上段刃部21が剥がれ落ちる。
【0056】
上段刃部21が剥がれ落ちると、図5の(c)および(d)に示すように、下段刃部22の先端部が露出する。下段刃部22の露出とともに刃材20の鋭さが復帰する。
【0057】
以上、第二の実施の形態のカッタビット1によれば、上段刃部21は欠損部11にはめ込まれているため、衝撃により剥がれ落ちることがない。また、下段刃部22は凹部12に埋め込まれた状態で固定されているため、衝撃により剥がれ落ちることがない。
また、刃材20が脱落することもないため、回収作業や回収装置が不要である。
【0058】
刃材20は、ろう付けされているため、線膨張係数の大きい母材10が熱により刃材20を締め付けて、ろう付け強度以上に固定されている。そのため、刃材20が母材10から脱落する可能性は低い。
【0059】
また、刃材20は、上段刃部21と下段刃部22との組み合わせにより、長い(高い)超硬チップが形成されるため、カッタビット1を交換することなく長期間掘進することができる。
【0060】
一体に形成された母材10に刃材20を埋め込む構成であるため、母材(シャンク材)10の一部が剥がれ落ちて、掘削機等に悪影響を及ぼすことがない。
【0061】
上段刃部21の後部に補助チップ18が貼着されているため、上段刃部21の後部の磨耗の進行が先行することを防止し、上段刃部21が抜け落ちることが防止されている。
また、母材10の背面14に肉盛り溶接19が施されているため、刃部20よりも柔らかい素材からなる母材10のみが先行して磨耗してしまうことが防止されている。
このように、補助チップ18の貼着および肉盛り溶接19が施されていることで、カッタビット1をより長く使用することができる。
【0062】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0063】
本発明のカッタビット1は、トンネル施工に使用するシールド機、推進機、TBMや、現場打ち杭の施工、地中連続壁の施工等に伴う掘削孔や掘削溝等の施工に使用する掘削機等、あらゆる種類の掘削機に適用することができる。
また、カッタビット1は、先行ビット、メインビット、双頭ビット等、あらゆる種類のカッタビットに適用することができる。
【0064】
カッタビット1をより長く使用することを目的として、母材10の背面14に補助チップ18を貼着するとともに肉盛り溶接19を施す場合について説明したが、補助チップ18の貼着および肉盛り溶接19は、必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
また、補助チップ18の貼着または肉盛り溶接19のいずれか一方のみを行ってもよい。また、母材10の前面15や側面に対しても、肉盛り溶接を施したり超硬チップを貼着させてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 カッタビット
10 母材
12 凹部
13 先端面
18 補助チップ(超硬チップ)
19 肉盛り溶接
20 刃材
21 上段刃部
22 下段刃部
30 ろう付け
図1
図2
図3
図4
図5
図6