(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
繰り返し送信方式は通信システムの品質を高めるために必須である。多くの方式が空間ダイバーシティ、時間ダイバーシティ、及び周波数ダイバーシティをそれぞれ増加させる方法を用いる。その中でシステムの品質を高めるための最も重要な方法の1つがHARQ方式である。
【0007】
HARQ方式の基本概念は、最初に送信されたパケットにエラーが発生して再送信が要求された場合、再送信中に同一の情報を再送信することにより、エラーを訂正するために信号電力を増加させて時間ダイバーシティ利得を得るか、又はパケットエラーを訂正するためにパリティ部の新しい部分を送信することで符号化利得を増加させるというものである。
【0008】
しかしながら、このようなHARQ方式を用いているにもかかわらず、1つの送受信アンテナを使用する特定OFDMシステムにおいては、空間ダイバーシティ利得がないため、チャネルが徐々に変更される低い移動速度環境で再送信が行われたとしても、再送信された信号が類似したチャネルを再び通過し、前記チャネルがよくない場合、パケットエラーが訂正されない可能性が高くなる。このような問題は多重アンテナ方式が適用されない多重送受信アンテナシステムで発生する。
【0009】
また、時空間符号化ベースのHARQ方式を用いる場合、空間ダイバーシティ利得は得られるが、従来の方式は、再送信中にチャネルが変更されないという仮定の下で考案されたため、移動速度が速くなると、チャネルの変更によりシンボル間の干渉が発生し、前記最初の送信は1又はそれ以上の空間多重化率で行われなければならない。これにより、様々なタイプのアンテナ構造をサポートする移動通信システムには有用でないという問題があった。
【0010】
図1は1つの送受信アンテナを有する直交周波数分割多重(OFDM)システムの構造を示すブロック図である。
図2は複数の送受信アンテナを有する直交周波数分割多重(OFDM)システムの構造を示すブロック図である。
【0011】
受信側に送信されるユーザデータ又は制御データに対応するデータビットは、チャネルエンコーダ101に入力される。チャネルエンコーダ101は、チャネルによる効果又はノイズの影響を減らすために、データビットに冗長ビット(redundant bit)を加える。チャネルエンコーダ101の出力は、マッパ102に入力されてシンボルに変換される。前記シンボルは直列/並列変換器103に入力される。直列/並列変換器103は直列データを並列データに変換する。直列/並列変換器103は、複数の直交するサブキャリアを利用してデータを受信側に送信することができる。
図2に示すように複数のアンテナを介して送信する場合、直列/並列変換器103の出力は、多重アンテナエンコーダ104に入力される。多重アンテナエンコーダ104は、データシンボルを時空間信号に変換するための時空間信号処理を行う。多重アンテナ方式の場合、送信アンテナは時空間信号をチャネルで送信するのに使用され、受信アンテナはチャネルから時空間信号を受信するのに使用される。多重アンテナデコーダ105は、受信した時空間信号をそれぞれのデータシンボルに再変換する。
【0012】
1つ又は複数のアンテナを使用するシステムは、複数のサブキャリアを介して受信した信号を並列/直列変換器106に入力する。並列/直列変換器106は、並列信号を直列信号に変換する。並列/直列変換器106の出力は、デマッパ(demapper)107に入力される。デマッパ107は、データシンボルをビット列に変換する。チャネルデコーダ108は、前記ビット列に対し、チャネル符号に対するチャネル復号化を行ってデータを推定する。
【0013】
図1及び
図2に示すようなシステムにおいて、特定繰り返し送信方式は次のような方式に分類される。
【0014】
フィードバックチャネルが1つ又は複数の送受信アンテナを利用可能な全てのシステムに適用可能な繰り返し送信方式としては、自動再送要求(Automatic Repeat Request;ARQ)方式、ハイブリッドARQ(HARQ)方式、繰り返し符号化方式などがある。
【0015】
前記ARQ方式は、送信されたパケットにエラーが発生すると同一の信号を再送信する方法を用いる。前記HARQ方式は、送信されたパケットにエラーが発生すると同一の信号又は異なるタイプの信号を再送信する方法を用いる。前記繰り返し符号化方式は、同一の信号を複数回繰り返して1つのパケットで送信する方法を用い、制御信号のように正確な受信が要求される信号の送信に用いられる方式である。
【0016】
以下、多重送受信アンテナを有するシステムにのみ適用可能な繰り返し送信方式を説明する。このような方式としては、時空間符号化方式、循環遅延ダイバーシティ方式、時空間符号化ベースのHARQ方式などがある。
【0017】
前記時空間符号化方式は、同一の信号をその後のタイムスロットで異なる送信アンテナを介して送信する方法を用いる。前記循環遅延ダイバーシティ方式は、同一の信号をアンテナ毎に異なる循環遅延及び異なる電力レベルで送信する方法を用いる。前記時空間符号化ベースのHARQ方式は、最初の送信は空間多重化方式で行い、エラーが発生すると時空間符号化方式で再送信を行う方法を用いる。
【0018】
通信システムにおいて、繰り返し送信方式は、通信環境の信頼性を高めるために様々な形態に発展してきた。前述した繰り返し送信方式は、1つの送受信アンテナ又は多重送受信アンテナを有する特定通信システムに適用可能な方式である。このような繰り返し送信方式の動作を説明すると以下の通りである。
【0019】
前記ARQ方式は、送信されたパケットにエラーが発生した場合にエラーを訂正する最も基本的な方法である。これは、送信されたパケットと同一のパケットを再送信する方式であって、受信側ではエラーが発生したパケットを廃棄して新しいパケットを待つ。
【0020】
前記HARQ方式は、前記ARQ方式とチャネル符号化を組み合わせた方式である。前記HARQ方式は一般的に2つのタイプに分類される。第1タイプは、
図3に示すようなチェイス合成(chase combining)方式である。
図3に示すように、チェイス合成方式のHARQにおいては、チャネル符号化されたパケットが送信され、最初の送信に失敗すると、再送信時に同一のパケットが送信される。このような方式は前記ARQ方式と同様であるが、前記チェイス合成方式のHARQ方式は、エラーが発生したパケットを廃棄するのではなくバッファに保存した後、再送信されたパケットと合成してエラーを修復する方式である。従って、時間ダイバーシティを利用し、かつ信号電力を増加させることにより、エラーを修復する。
【0021】
図4はIR(Increment Redundancy)タイプの構造を有するHARQ方式の他の例を示すブロック図である。IRタイプのHARQ方式は、再送信を最初の送信と同じ方式で行うのではなく、チャネル符号の追加パリティ部分を再送信することにより、チャネル符号化率を下げる効果を有してパケットのエラーを訂正する方式である。
【0022】
前記繰り返し符号化方式は、チャネル符号化されたブロックを繰り返して1つのパケットを構成して送信することにより、低いチャネル符号化率を簡単に得る方式である。
【0023】
前記時空間符号化方式は、多重アンテナ環境で同一の信号を連続的に送信すると共に、異なる送信アンテナを介して信号を送信することにより、空間ダイバーシティ利得を得る方法を用いる。下記式は最も基本的な時空間符号であって、通常2つの送信アンテナを有するシステムで使用される。
【0024】
【数1】
上記式の行列において、行は送信アンテナを示し、列は時間を示す。上記式に表されているように、データシンボルS
1は、第1アンテナを介して送信された後、共役複素数の形態で再び第2アンテナを介して送信され、データシンボルS
2は、第2アンテナを介して送信された後、データシンボル間の直交性質を維持するために、反対符号の共役複素数の形態で再び第1アンテナを介して送信される。このような方式の送信により、それぞれのデータシンボルはシンボル間の干渉なく全ての送信アンテナを介して送信され、最高のダイバーシティ利得が得られる。
【0025】
図5は循環遅延ダイバーシティ方式を示すブロック図である。循環遅延ダイバーシティ方式は、複数の送信アンテナを有するシステムにおけるOFDMシンボルの送信において、全てのアンテナが異なる遅延及び/又は大きさで信号を送信することにより、受信側で遅延された各信号を合成して周波数ダイバーシティ利得を得ることができ、送信アンテナ毎に信号を合成して検出(抽出)するので、受信機の複雑度を大幅に減らすことができるという利点を有する。
【0026】
以下、前述した時空間符号化ベースのHARQ方式を説明する。
図6は時空間符号化ベースのHARQ方式の再送信方法を説明する図である。
図6は最初の送信とそれに対するNACK(Negative Acknowledgment)信号受信時の2回目の送信を行う方式を示す。
【0027】
図6のように時空間符号化を利用して時間的に繰り返し再送信する方法は、再送信時に空間ダイバーシティ利得をさらに取得することにより、再送信された信号の電力が増加すると共にダイバーシティ利得もさらに得ることができる。
【0028】
本発明の一実施形態による本発明の特定特徴及び効果を以下に詳細に説明する。
【0029】
本実施形態は繰り返し送信方法に関する。前記繰り返し送信方法は特定データを複数回送信する方式をいう。前記繰り返し送信方法によりデータを複数回送信する場合、送信されるデータは同一のデータでもよく異なるデータでもよい。例えば、同一のデータを複数回にわたって受信側に送信することができる。また、複数の同一のデータを特定の1単位時間に送信することもできる。さらに、最初の送信時には特定データを送信し、2回目の送信時には最初に送信されたデータに所定のデータ処理を行ったデータを送信することもできる。さらに、最初の送信時には特定データを送信し、2回目の送信時には最初に送信されたデータの一部を送信することもできる。
【0030】
前記繰り返し送信方法の一例として、再送信方式がある。前記再送信方式は、受信側が受信したデータを正常に復元(復号化)できない場合、送信側が前記受信側にデータを再び送信する方式をいう。すなわち、最初の送信に失敗すると、再送信を行う。前記再送信により送信されるデータは、前記最初に送信されたデータと同一のデータでもよく、前記最初に送信されたデータに所定のデータ処理を行ったデータでもよく、前記最初に送信されたデータの一部でもよい。
【0031】
図7は本発明の一実施形態により繰り返し送信方式が適用される概念を示すブロック図である。
図7は例示的な実施形態の最も一般的な概念を説明するものである。
【0032】
図7の例はOFDMシンボルに対して時間ドメインでの循環遅延を行った信号を繰り返し送信する方式を示す。前記循環遅延は、循環シフトと同じ概念であり、OFDMシンボル内に含まれるサンプルを特定回数だけ循環遅延させる方式である。前記OFDMシンボルは、1回のIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)又はIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)演算により処理されたデータの集合であり、一般的に同一の時間周期で送信される特徴がある。前記サンプルは、各OFDMシンボルに含まれるデータを示し、ユーザデータ又は制御信号に該当する。
図7は1つのOFDMシンボルにN個のサンプルが含まれる例を示し、前記Nは通信のために使用されるサブキャリアの数と同一でもよい。
【0033】
図7においてODFMシンボルは、IFFT又はIDFT演算が行われたOFDMシンボルを示す。すなわち、
図7の循環遅延は、IFFT又はIDFT演算が行われたOFDMシンボルを時間ドメインで特定サンプルだけ循環遅延させることを示す。
【0034】
図7はN個のデータストリームを送信する例を示す。各データストリームには異なる遅延値を有する循環遅延が適用される。すなわち、データ「s」に対応する第1データストリームには遅延値「0」が適用され、g0の電力が供給される。また、データ「s(d
1)」に対応する第2データストリームには遅延値「d
1」が適用され、g1の電力が供給される。さらに、データ「s(d
N)」に対応する第Nデータストリームには遅延値「d
N」が適用され、gNの電力が供給される。このような第1〜第Nデータストリームは、所定のG個のサンプルに相当する循環プレフィックス(Cyclic Prefix;CP)を挿入し、アンテナを介して送信することができる。
【0035】
図7の例においては、N個の異なる循環遅延を適用できる。また、N個の異なる電力制御を行うことができる。例えば、1人のユーザに対する送信が問題となる場合、変化するチャネル環境に応じて様々な循環遅延又は様々な電力制御を行うことができる。また、再送信が問題となる場合、再送信回数に応じて様々な循環遅延又は様々な電力制御を行うことができる。さらに、複数のユーザに対する送信が問題となる場合、各ユーザに対して最適化された様々な循環遅延又は様々な電力制御を行うことができる。前述したように、様々な通信環境によって循環遅延又は電力制御値が変化することが好ましい。より能動的な方式で循環遅延又は電力制御値を調節するためには、受信側からフィードバックされる情報を利用することがより好ましい。すなわち、d1〜dN又はg0〜gNの値は、受信側からのフィードバック情報を利用して制御することができる。
【0036】
図7の例においては、アンテナの数に制限がなく、様々なアンテナ方式を適用できる。その詳細な適用方法は以下に説明する。
【0037】
図7の例において、前記データ「s」〜「s(d
N)」は1つのデータフレーム又は複数のデータフレームに含まれるが、その詳細な方法は以下に説明する。
【0038】
図7の例において、前記データ「s」〜「s(d
N)」は受信側から送信されるACK/NACK信号による再送信信号であり得るが、その詳細な再送信方法は以下に説明する。
【0039】
図7の例をまとめると以下の通りである。本実施形態で提案する時間的繰り返し信号に循環遅延ダイバーシティを利用する方法の基本概念は、
図7に示す通りである。すなわち、
図7のように時間的繰り返し送信信号を送信する場合、繰り返される各信号は、同一又は異なる電力を有すると共に異なる循環遅延を有することが好ましい。
【0040】
以下、
図8及び
図9を参照して本実施形態による再送信方法を説明する。
【0041】
図8は本実施形態により再送信を行う概念を示すブロック図である。
図9は再送信を行う方式を示すブロック図である。
【0042】
図8及び
図9に示すように、1回目の送信において循環遅延が行われていないデータ「s」を送信し、1回目の再送信においてd
1の循環遅延が行われたデータ「s(d
1)」を送信する。前記再送信は、NACK信号が受信された場合に行われることが好ましい。前記再送信はN回繰り返すことができ、N回繰り返される場合、少なくともN個の異なる循環遅延値によって循環遅延が行われることが好ましい。N回目の再送信によりd
Nの循環遅延が行われた「s(d
N)」を送信する。
【0043】
再送信時には電力制御が行われることが好ましい。前記電力制御は
図9のg0〜gNによって行われる。
【0044】
時間的繰り返し信号に循環遅延ダイバーシティを利用する本実施形態は、時間に応じて繰り返し送信するいかなる方式にも適用できる。
【0045】
本実施形態をHARQ方式又は繰り返し符号化方式に適用した場合、既存の方式に比べて周波数ダイバーシティ利得を高めることができる。
【0046】
また、再送信中に、同一のチャネルを使用するか、異なるチャネルを使用するかに関係なく、様々な電力値及び遅延値を用いて周波数選択性(frequency selectivity)を調節することができ、いかなる場合でも高い周波数ダイバーシティ利得を得ることができる。
【0047】
図8及び
図9のように、信号が再送信されると、受信側では各信号をマルチパス信号として認識して簡単に検出することができ、周波数選択性を高めることができ、システム全体の性能が向上する。
【0048】
前述したように、本実施形態は様々な数の送受信アンテナを有する様々なシステムをサポートする。
【0049】
以下、本実施形態による再送信方法を多重アンテナシステムに適用した例を説明する。
【0050】
図10は本実施形態により複数のアンテナを介して再送信を行う概念を示すブロック図である。
図11は複数のアンテナを介して再送信を行う方式を示すブロック図である。
【0051】
図10の例は異なるアンテナを介した再送信に関する。すなわち、1回目の送信は第1アンテナを介して行い、1回目の再送信は第2アンテナを介して行い、2回目の再送信は第3アンテナを介して行う。また、前記1回目の送信においては循環遅延が行われていない送信データ「s」を送信し、前記1回目の再送信においてはd
1の循環遅延が行われた再送信データ「s(d
1)」を送信し、前記2回目の再送信においてはd
2の循環遅延が行われた再送信データ「s(d
2)」を送信する。
【0052】
図11の例は
図10の概念を適用した例である。図に示すように、最大N回の再送信を行うことができ、再送信される各データは異なるアンテナを介して送信することができる。
図11の例はN回の再送信にN個のアンテナが使用される例であるが、アンテナの総数に制限はない。例えば、再送信が4回であり、送信アンテナが2つである場合、1回目の再送信及び3回目の再送信は第1アンテナを介して送信し、2回目の再送信及び4回目の再送信は第2アンテナを介して送信する方式も可能である。
【0053】
図11の例は再送信されるデータに所定の電力制御を行った例である。前述したように、前記電力制御又は循環遅延は、受信側からフィードバックされる情報に基づくことができる。
【0054】
図10及び
図11の再送信方法を用いると、アンテナ毎に異なるチャネルが形成され、空間ダイバーシティ利得と共に周波数ダイバーシティ利得を得ることができる。前述した
図10及び
図11の例と異なる方式で再送信を行うこともできる。
【0055】
すなわち、多重アンテナ方式のうち、空間多重化利得を得てシステムの容量を増加させる空間多重化方式を適用できる。その一例は
図12及び
図13に示す通りである。
【0056】
図12は本実施形態により複数のアンテナを介して再送信を行う他の概念を示すブロック図である。
図13は複数のアンテナを介して再送信を行う方式を示すブロック図である。
【0057】
図12は、
図10及び
図11の例とは異なり、複数のアンテナの全てでデータ再送信が行われる例である。
図12においてS1、S2、・・・SMは異なるOFDM信号である。例えば、信号S1〜SMは、別個のOFDM信号でもよく、異なるM人のユーザのための信号でもよい。
図12の例において、第1アンテナ〜第Mアンテナはそれぞれ特定データを送信する。例えば、第1アンテナはS1に関する再送信のために使用され、第2アンテナはS2に関する再送信のために使用され、第MアンテナはSMに関する再送信のために使用される。
【0058】
図13に示すように、1回目のデータ送信時には、循環遅延が行われていないデータS1〜SMを送信することができる。これに対する1回目の再送信を行う場合は、各データS1〜SMに特定循環遅延値(d
1)による循環遅延を行うことができる。
【0059】
図に示すように、1回目の送信又はそれに対する再送信を行う場合、チャネル環境などの制御情報によってg0〜gMの値を決定して電力制御を行うことができる。また、N回目のデータ送信を行う場合、図に示すようにd
Nの循環遅延が行われたデータを複数のアンテナを介して送信することができる。
【0060】
図12の方式に時間ベースのアンテナ回転方式を適用すると、
図14及び
図15に示す方式でデータを繰り返し送信することができる。
【0061】
図14は本実施形態により複数のアンテナを介して再送信を行うさらに他の概念を示すブロック図である。
図15は複数のアンテナを介して再送信を行う方式を示すブロック図である。
【0062】
図14は複数のアンテナの全てでデータ再送信が行われる例である。
図14においてS1、S2、・・・SMは異なるOFDM信号である。
図14において、複数のアンテナのいずれか1つを介して特定データS1が送信されると、その後S1を除いた残りのデータが送信される。例えば、第1アンテナは、S1を送信した後、S1の代わりにデータS2を送信し、その後データS3などを送信することができる。また、複数のアンテナにより特定データが送信されるので、結局、特定時間にはデータS1〜SMが受信側に送信される。
【0063】
図15に示すように、1回目のデータ送信時には、循環遅延が行われていないデータS1〜SMを送信することができる。これに対する1回目の再送信を行う場合は、各データS1〜SMに特定循環遅延値(d
1)に基づいた循環遅延を行うことができる。ここで、S1を送信した第1アンテナは、アンテナ回転方式を適用するために、S1(d
1)の代わりにSM(d
1)を送信する。また、S2を送信した第2アンテナは、アンテナ回転方式を適用するために、S2(d
1)の代わりにS1(d
1)を送信する。さらに、SMを送信した第Mアンテナは、アンテナ回転方式を適用するために、SM(d
1)の代わりにSM−1(d
1)を送信する。
【0064】
図に示すように、1回目の送信又はそれに対する再送信を行う場合、チャネル環境などの制御情報によってg0〜gMの値を決定して電力制御を行うことができる。また、N回目のデータ送信を行う場合、(図に示すようにdNの)循環遅延が行われたデータを複数のアンテナを介して送信することができる。
【0065】
図14及び
図15のように、時間によって各信号の送信アンテナを変えて送信を行うと、空間ダイバーシティ利得をさらに利用することができる。
【0066】
図12及び
図14の例においては、前述したように、異なる循環遅延及び異なる電力制御を行うことができる。また、
図12及び
図14とは異なり、エラーが発生した信号のみを再送信することもできる。また、再送信時の各循環遅延値及び電力値は、フィードバック情報として受信機から受信することもでき、送信機が任意の値を適用することもできる。
【0067】
繰り返し符号化を提案する循環遅延ダイバーシティ方式に適用可能な方式は、
図16及び
図17の例により達成できる。
【0068】
図16は1つのフレームに含まれるデータを示すブロック図である。
図17は
図16のデータフレームを生成する方法を示すブロック図である。
【0069】
繰り返し符号化は、同一のデータを繰り返して1つのフレームに含める方式である。同一のデータが繰り返されることによって、送信時の符号化率が下がる効果が生じ、これにより正確なデータ送信が行われる効果が生じる。
【0070】
本実施形態による繰り返し符号化方法は、
図16に示すデータを生成することができる。すなわち、同一のデータに対して異なる循環遅延を行った値を含むデータブロックを生成して受信側に送信する。
【0071】
図17の例は
図16のデータを生成する方法を示す。
図17は、同一のデータSに対し、循環遅延を行っていないデータS、特定遅延値d
1による循環遅延を行ったデータS(d
1)、及び特定遅延値d
Nによる循環遅延を行ったデータS(d
N)を1つのフレームに含める例を示す。
【0072】
図16及び
図17の例によれば、連続的に循環遅延させたOFDMシンボルを繰り返し回数であるN回だけ送信する。このような繰り返し符号化送信により、受信側は、さらなる周波数ダイバーシティ利得だけでなく信号電力まで得ることができ、高い性能を得ることができる。
【0073】
このような繰り返し符号化方法は、時間ドメイン又は周波数ドメインで行うことができる。
図7〜
図17の例では時間ドメインでサンプルを循環させて循環遅延を行う方法を説明したが、これは単に例示に過ぎず、周波数ドメインで位相シーケンスを割り当てることにより、時間ドメインでサンプルを循環遅延させるのと同様の効果を得ることができる。本実施形態で提案する繰り返し信号送信方法で用いる循環遅延方法は、特定方法に限定されるものではなく、前記周波数ドメインでの演算により循環遅延を行う方法も本発明の範囲に属する。
【0074】
以下、周波数ドメインでの演算により循環遅延方式で信号を送信する方法を説明する。
【0075】
図18は周波数回転(循環シフト)により循環遅延送信方式を実現する方法を示すブロック図である。
【0076】
OFDM、SC−FDMAなどのマルチキャリアシステムにおいて、データ送信のために使用されるサブキャリアの数に応じてIFFT演算(又は、それに相当するIDFT演算)を行う。循環遅延送信方式は、IFFT演算が行われた後に時間ドメインでOFDMシンボルに含まれるサンプルを(特定回数だけ)循環シフトさせる方法により実現することもでき、IFFT演算が行われる前に周波数成分に対して特定位相成分を加える方法により実現することもできる。すなわち、IFFT演算が行われる前に、周波数循環シフトにより循環遅延方式を実現できる。
【0077】
図18に示すように、IFFT演算が行われる前の信号に特定位相シーケンスを乗算すると、時間ドメインでの循環遅延と同様の効果が生じる。
【0078】
図19及び
図20は循環遅延を行う場合における信号成分の変化を示す図である。
【0079】
図19は循環遅延が行われる前の元の信号成分を示す。元の信号を時間ドメインで所定の循環遅延値d
1だけ循環遅延させると、元の信号の信号成分は
図20のように変化する。すなわち、d
1の時間遅延を行うと、d
1に相当する特定のθ
1により位相回転(循環シフト)を行うのと同様の効果が生じる。すなわち、時間ドメインでd
1の時間遅延を行うのと、周波数ドメインで各サブキャリアに所定の成分を加えるのとでは、同様の効果がある。
【0080】
まとめると、
図19の信号に所定の位相シーケンスC
1を乗算して循環遅延を行うことができ、位相シーケンスC
1は下記式2のように表される。
【0081】
【数2】
図21は特定信号に異なる3つの位相シーケンスを乗算した場合における信号成分の変化を示す図である。
【0082】
図21は、特定位相シーケンスC(1)が周波数インデックス1〜5に該当する信号に乗算され、特定位相シーケンスC(2)が周波数インデックス6〜10に該当する信号に乗算され、特定位相シーケンスC(3)が周波数インデックス11以上に該当する信号に乗算される場合を示す。周波数インデックス1〜5は特定ユーザ1(UE1)のための信号でもよく、ユーザ1には特定位相値θ
1を乗算することができる。図に示すように、循環遅延が行われた値は様々な位相を有する。1つのアンテナを介して又は複数のアンテナを介して循環遅延が行われた信号が送信されると、異なる位相値によって信号の大きさが変化する。特に、チャネル符号化が行われた信号に循環遅延が適用されると、信号の大きさが変化することによって受信側での選択性が向上するという利点がある。
【0083】
本実施形態は、時間ドメインでの循環遅延又は周波数ドメインでの位相回転(循環シフト)により向上した性能を有する繰り返し信号送信方法を提供する。
【0084】
本発明で提案する循環遅延方式を用いる信号繰り返し送信方式は、再送信又は繰り返し送信する信号を循環遅延させて送信する。これにより、受信側は送信された信号を合成して検出し、周波数選択性を高めて周波数ダイバーシティ利得を得る。
【0085】
本発明は、時間的に繰り返される信号に適用可能であり、複数の送受信アンテナを有するOFDMシステムにおいては、様々な形態の送信を行うことにより、さらなる空間ダイバーシティ利得を得ることができる。
【0086】
その結果、ここに記述された低い複雑度を求める特徴により、さらなる周波数ダイバーシティ利得を得ることができる。
【0087】
本発明の概念は、OFDMシステムに遅延ダイバーシティのアイディアを適用する循環シフト送信ダイバーシティ(Cyclic Shift Transmit Diversity;CSTD)に関連する。CSTDにおいて、送信アレイ内の各アンテナエレメントは、同一のOFDM時間ドメインシンボルの循環シフトバージョンの送信を行う。ここで、各アンテナは、前記OFDMシンボルを循環シフトした後に循環プレフィックスを追加し、前記循環プレフィックスにより提供された遅延・拡散防止(delay−spread protection)が前記CSTDによる影響を受けないようにする。
【0088】
本発明は、複数のキャリアに適用できる複数の循環遅延を作成する段階と、少なくとも1つの受信側に送信しようとするデータシンボルに対し、繰り返し送信する繰り返し回数に基づいて循環遅延を行う段階と、前記循環遅延されたデータシンボルを前記複数のキャリアを利用して送信する段階とを含む、複数のキャリアを利用する繰り返し送信方法を提供する。前記送信する段階は、受信側からNACK信号を受信することによって、前記循環遅延されたデータシンボルを順次繰り返し送信する段階を含むことができる。前記送信する段階は、複数のアンテナを介して行うことができる。前記送信する段階は、1つのアンテナを介して行うことができる。前記複数のアンテナを介してそれぞれ送信されるデータシンボルの送信側は、固定することができる。前記複数のアンテナを介してそれぞれ送信されるデータシンボルの送信側は、繰り返し回数によって変更することができる。前記送信する段階は、前記循環遅延されたデータシンボルを1つのフレームに含めることで行うことができる。
【0089】
また、本発明は、複数のキャリアに対する複数の循環遅延値を提供する段階と、受信機に送信されるデータシンボルの繰り返し送信回数に応じて、前記複数の循環遅延値を用いて循環遅延手順を行う段階と、前記複数のキャリアを利用して前記循環遅延されたデータシンボルを前記受信機に送信する段階とを含む、マルチキャリアベースの無線アクセス技術における繰り返し送信方法を提供する。前記送信する段階は、前記受信機からのフィードバック情報によって前記循環遅延されたデータシンボルを順次繰り返し送信する段階を含むことができる。前記送信する段階は、複数のアンテナを介して行うことができる。前記送信する段階は、1つのアンテナを介して行うことができる。前記データシンボルは、固定された送信機の複数のアンテナを介してそれぞれ送信することができる。前記データシンボルは、繰り返し回数によって変更される送信機の複数のアンテナを介してそれぞれ送信することができる。前記送信する段階は、前記循環遅延されたデータシンボルを1つのデータフレームに挿入することで行うことができる。
【0090】
さらに、本発明は、複数のキャリアに対する複数の循環遅延値を提供し、受信機に送信されるデータシンボルの繰り返し送信回数に応じて前記複数の循環遅延値を用いて循環遅延手順を行うプロセッサと、前記プロセッサと連動し、前記複数のキャリアを利用して前記循環遅延されたデータシンボルを前記受信機に送信する送信機とを含む、マルチキャリアベースの無線アクセス技術における繰り返し送信装置を提供する。
【0091】
ここに記述された特性及び態様は、様々なタイプの通信技術(例えば、広帯域無線エアインタフェース技術、MIMO(Multiple−Input Multiple−Output)技術、高いデータレートを提供するために考案された、いわゆる3.5G又は4Gシステム、Pベースのデータサービスなどを含むが、これに限定されるものではない)及び/又は様々な通信基準(例えば、OFDM、OFDMA、3GPP HSDPA、WCDMA、UMTS、IEEE 802.11n、IEEE 802.16などを含むが、これに限定されるものではない)に関連して実現できる。このように、ここに記述された特性の少なくとも一部は、既に開発されているか、継続して開発中の標準にも適用可能である。
【0092】
前述した本発明の実施形態は、本明細書の詳細な記載内容によって限定されるのではなく、特に断らない限り、広く解釈されるべきであることを理解できるであろう。従って、請求の範囲又はその範囲の同等物における構造的及び/又は機能的な変更及び変形は、請求の範囲に含まれる。