特許第5715639号(P5715639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5715639変動速度を有する移動ガラスリボンのレーザスコーリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715639
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】変動速度を有する移動ガラスリボンのレーザスコーリング
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20150423BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20150423BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20150423BHJP
【FI】
   C03B33/09
   B23K26/40
   B23K26/00 M
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-537935(P2012-537935)
(86)(22)【出願日】2010年11月2日
(65)【公表番号】特表2013-510067(P2013-510067A)
(43)【公表日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】US2010055083
(87)【国際公開番号】WO2011056781
(87)【国際公開日】20110512
【審査請求日】2013年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/257,593
(32)【優先日】2009年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】アブラモヴ,アナトリ エー
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ナイユ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェームス ダブリュー
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0264994(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B33/00−33/14
B23K26/00−26/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスシートの作製方法において、
(I) 移動するガラスリボンであって、経時変動速度Sリボンを有するリボンを形成する工程、
(II) 前記リボンの表面に、
(a) レーザでつくられた光ビームを放射する光放射デバイス及び冷却流体を放出するノズルを載せているキャリッジを、前記キャリッジの移動が(i)前記リボンの前記移動の方向に直交する直線に平行な第1の成分及び(ii)前記リボンの前記移動方向に平行な第2の成分を有するように、前記直線に対して角度αをなして傾けられている直線軌道に沿って、速度Sキャリッジで平行移動させる工程と、
(b) 前記キャリッジの前記移動の前記第2の成分が前記リボンと同一速度を保つように、前記Sキャリッジまたは前記角度αを、あるいは前記Sキャリッジ及び前記角度αのいずれも、動的に調節する工程と、
(c) 前記光放射デバイスによって放射される前記光ビームをつくる前記レーザのパワーPレーザを変えることにより、前記工程(II)(b)の前記動的調節を補償する工程と、
を含む方法によって、ベントを形成する工程、及び
(III) 前記工程(II)において形成された前記ベントに沿って、前記リボンからガラスシートを分割する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
(i) 前記Sリボンが:
リボン=S+ΔS
の形式で表され、
式中、S及びΔSはそれぞれ、前記リボン速度の公称不変成分及び経時変動成分である、
(ii) |ΔS|>0.03Sである場合、前記工程(II)(b)が前記αを変える工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i) 前記工程(II)(b)が前記αを変える工程を含み、
(ii) 前記リボンにおいて、前記光放射デバイスにより放射される前記光ビームは長さL及び幅Wを有し、
(iii) 前記光放射デバイスは前記Lを定める第1のレンズユニット及び前記Wを定める第2のレンズユニットを備え、
(iv) 前記第1のレンズユニットは少なくとも1つのレンズ素子を有し、
(v) 前記工程(II)がさらに、前記αの変化の結果としての前記直線に対する前記光ビームの方位の変化を補償するため、前記少なくとも1つのレンズ素子の角方位を調整する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(i) 前記Sリボンが:
リボン=S+ΔS
の形式で表され、
式中、S及びΔSはそれぞれ、前記リボン速度の公称不変成分及び経時変動成分である、
(ii) |ΔS|≦0.03Sである場合、前記工程(II)(b)において前記αが一定に保たれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(II)(c)の前記Pレーザの前記変化が、関係式:
dPレーザ/dSリボン=k・cotα
式中、kは定数である、
を満たすことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(II)が、
前記レーザから前記光放射デバイスに、前記レーザまたは前記レーザのための支持構造に取り付けられた第1の端及び前記直線軌道または前記直線軌道のための支持構造に取り付けられた第2の端を有するハウジングであって、前記第1の端及び前記第2の端の三次元における相互の回転及び平行移動を可能にする、少なくとも1つのジョイント及び少なくとも1つの延長チューブを有するハウジング内に前記レーザ光を入れるフレキシブルレーザビーム送出システムを含む経路に沿って、レーザ光を送る工程、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ガラスシートの作製方法において、
(I) 移動するガラスリボンを形成する工程、
(II) 前記リボンの表面に、
(a) レーザでつくられた光ビームを放射する光放射デバイス及び冷却流体を放出するノズルを載せているキャリッジを、前記キャリッジの移動が(i)前記リボンの移動方向に直交する直線に平行な第1の成分及び(ii)前記リボンの前記移動方向に平行な第2の成分を有するように、前記直線に対して角度αをなして傾けられている直線軌道に沿って、速度Sキャリッジ平行移動させる工程と、
(b) 前記キャリッジの前記移動の前記第2の成分が前記リボンと同一速度を保つように、前記Sキャリッジまたは前記角度αを、あるいは前記Sキャリッジ及び前記角度αのいずれも、動的に調節する工程と、
を含む方法により、ベントを形成する工程、及び
(III) 前記工程(II)で形成された前記ベントを用いて前記リボンからガラスシートを分割する工程、
を含み、
−(i) 前記リボンにおいて、前記光放射デバイスから放射された前記光ビームは長さL及び幅Wを有する、
−(ii) 前記光放射デバイスは前記Lを定める第1のレンズユニット及び前記Wを定める第2のレンズユニットを備える、
−(iii) 前記第1のレンズユニットは少なくとも1つのレンズ素子を有する、
−(iv) 前記キャリッジの前記移動の前記第1の成分と前記第2の成分の相対比を変えるように前記αが変えられる、及び
−(v) 前記αの前記変化の結果としての前記直線に対する前記光ビームの方位の変化を補償するため、前記少なくとも1つのレンズ素子の角方位が調節される、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記第2のレンズユニットが少なくとも1つのレンズ素子を有し、前記αが変えられても前記少なくとも1つのレンズ素子の角方位が前記キャリッジに対して一定に保たれることを特徴とする請求項3または7に記載の方法。
【請求項9】
ガラスシートを形成する方法において、
(I) 移動するガラスリボンを形成する工程、
(II) 前記リボンの表面に、
(a) レーザでつくられた光ビームを放射する光放射デバイス及び冷却流体を放出するノズルを載せているキャリッジを、前記キャリッジの移動が(i)前記リボンの移動方向に直交する直線に平行な第1の成分及び(ii)前記リボンの前記移動方向に平行な第2の成分を有するように、前記直線に対して角度αをなして傾けられた直線軌道に沿って、速度Sキャリッジ平行移動させる工程と、
(b) 前記キャリッジの前記移動の前記第2の成分が前記リボンと同一速度を保つように、前記Sキャリッジまたは前記角度αを、あるいは前記Sキャリッジ及び前記角度αのいずれも、動的に調節する工程と、
(c) 前記レーザから前記光放射デバイスに、前記レーザまたは前記レーザのための支持構造に取り付けられた第1の端及び前記直線軌道または前記直線軌道のための支持構造に取り付けられた第2の端を有するハウジングであって、前記第1の端及び前記第2の端の三次元における相互の回転及び平行移動を可能にする、少なくとも1つのジョイント及び少なくとも1つの延長チューブを有するハウジング内に前記レーザ光を入れるフレキシブルレーザビーム送出システムを含む経路に沿って、レーザ光を送る工程と、
を含む方法によってベントを形成する工程、及び
(III) 前記工程(II)で形成された前記ベントを用いて前記リボンからガラスシートを分割する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記ガラスリボンがダウンドロープロセスによって形成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年11月3日に出願された、米国仮特許出願第61/257593号の優先権の恩典を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は移動しているガラスリボンのレーザスコーリングのための方法及び装置に関し、特に、リボンの速度が経時変動する移動ガラスリボンのスコーリングのための方法及び装置に関する。
【0003】
以下の議論は、本明細書に開示される方法及び装置に対する代表的な用途である、垂直方向に移動しているガラスリボンに関する。しかし、この方位は本提示を容易にするために想定されているに過ぎず、いかなる態様においても本開示を限定すると解されるべきではない。
【0004】
同様に、本明細書に開示される方法及び装置の一適用は、例えばリボンの形成に用いられるプロセスの変動によって生じる、リボンの速度の計画されていない(意図的ではない)変動に対するが、本開示の方法及び装置が、ガラス組成、形成速度、シート寸法、等における変化にともなうような、計画された(意図的な)速度変化にも同様に適用され得ることは当然である。
【0005】
−定義−
本明細書及び特許請求の範囲に用いられるように、語句「ベント」はガラス表面に形成された切れ目を、その切れ目がガラスの厚さを完全に貫通しているか、途中までしか入っていないかにかかわらず、意味する。したがって、この語句は、完全なベント、不完全なベント、完全なメディアンクラック及び不完全なメディアンクラックを包含し、完全なベント及び完全なメディアンクラックはガラスの厚さを完全に貫通し、不完全なベント及び不完全なメディアンクラックはガラスの厚さの途中まで入る。
【0006】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられるように、語句「光放射デバイス」は、光を放射するいずれのデバイスも意味し、光を発生する能動デバイス(例えばレーザ)及び別のデバイスによって発生された光を受け取って放射する受動デバイス(例えば、レーザからビームを受け取り、そのビームを整形及び/または集束するデバイス)を含む。
【背景技術】
【0007】
ガラスのスコーリングは従来、機械工具を用いて達成されている。しかし、ガラスを加熱し、温度勾配による張力を生成するために、レーザ光、例えば波長が10.6μmの、COレーザ光を用いる別の方法がある。ガラスコーリングへのレーザの使用は、共通に譲渡された特許の、名称を「脆性材料を割断するための方法及び装置(Method and apparatus for breaking brittle materials)」とする特許文献1及び名称を「レーザスコーリングにおけるメディアンクラック深さの制御(Control of median crack depth in laser scoring)」とする特許文献2に論じられている。
【0008】
図1に示されるように、レーザスコーリング中に、スコーリング線115に沿ってガラス112の主表面114にベントが生成される。ベントを生成するため、ガラスのエッジの1つの近くでガラス表面に小さな初期きず111が形成され、初期きずは次いで、ガラス表面にかけてフットプリント113を有するレーザ光ビーム121を走らせ、冷却ノズル119でつくられる冷却域に後を追わせることによって、ベントに転換される。レーザ光ビームを用いるガラスの加熱及びその直後の冷却材を用いるガラスの急冷により、ベント形成のための初期きずの伝搬の原因となる、熱勾配及び対応する応力場が生成される。
【0009】
共通に譲渡された特許の、特許文献3は、移動しているガラスリボンのレーザスコーリングのための、リボンの移動方向に直交する線に対して角度αをなして傾けられた直線軌道に沿って走行キャリッジが移動する、システムを説明している。
【0010】
本明細書の図2及び3は特許文献3のシステムを簡略に示す。これらの図においては、ガラスリボンが参照数字12で、走行キャリッジが参照数字14で、直線軌道が参照数字15で、軌道のための支持構造(支持フレーム)が参照数字11で、またリボンを製造するための装置、例えばフージョンドロー装置が参照数字9で識別されている。特許文献3に論じられるように、固定基準フレーム(例えば図2のxyz基準フレーム)から見ると、ガラスリボンはベクトル16の方向に速度Sリボンで移動し、キャリッジはベクトル17の方向に速度Sキャリッジで移動して、Sリボン、Sキャリッジ及び角度αは関係式:
キャリッジ=Sリボン/sinα 式(1)
を満たす。
【0011】
このようにすれば、キャリッジはリボンと同一速度を保つ。さらに詳しくは、キャリッジ速度の、リボンの移動方向に平行な成分の大きさがSリボンに等しい。したがって、リボンから見ると、キャリッジは単にベクトル18の方向に、すなわちリボンの移動方向に対して垂直な直線7に沿って:
スコーリング=Sキャリッジ・cosα 式(2)
で与えられる速度でリボンにかけて移動する。
【0012】
特許文献3に説明されるように、レーザ光ビームを供給する光放射デバイス及び冷却流体(例えば水)の流れを供給するノズルはキャリッジに結合され、キャリッジが直線軌道に沿って移動すると、協働してリボンの幅にかけてベントを形成する。いくつかの実施形態において、ガラスリボンに初期きずを形成するため、機械式スコーリングヘッド(例えばスコーリングホイール)もキャリッジに結合される。あるいは、初期きずはキャリッジとは別の装置で形成することができる。
【0013】
図4は特許文献3のこれらの態様を簡略に示し、参照数字21,22及び23は、スコーリングプロセスの開始時点における、(1)冷却流体のフットプリント、(2)レーザ光ビームのフットプリント及び(3)初期きずの位置を表し、参照数字31及び32は、開始段階完了以降のある時点における、冷却流体のフットプリント及びレーザ光ビームのフットプリントを表す。
【0014】
特許文献3に論じられるように、制御システムを用いて、式(1)が満たされるようにキャリッジの移動を制御することができる。制御システムは、入力として、リボンを送るローラーまたはリボンの速度をモニタする独立センサからSリボンに関する情報を得ることができる。特許文献3は直線軌道15の傾角αの制御により式(1)を満たすことも説明している。しかし、特許文献3には、αの変化に対するSキャリッジの変化についての規準あるいはSキャリッジ及び/またはαが変化したときの有効なベント形成の維持にともなう問題が論じられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5776220号明細書
【特許文献2】米国特許第6327875号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0264994号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、上記問題に対処し、Sリボンが変化しても有効なレーザスコーリングを維持するために方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様にしたがえば、ガラスシートを作製するための、
(I) 移動するガラスリボン(13)を形成する工程であって、リボンは経時変動速度Sリボンを有するものである工程、
(II) リボンの移動方向に直交する直線(7)に沿ってリボン(13)の表面に、
(a) 光放射デバイス(51)及びノズル(119)を載せているキャリッジを、直線軌道(15)に沿って、速度Sキャリッジで平行移動させる工程であって、直線軌道は、キャリッジの移動が、(i)直線(7)に平行な第1の成分(18)及び(ii)リボン(13)の移動方向(16)に平行な第2の成分を有するように、直線(7)に対して角度αをなして傾けられており、光放射デバイス(51)はレーザ(41)によりつくられた光ビームを放射し、ノズル(119)は冷却流体を放出するものである工程と、
(b) キャリッジ(14)の移動の第2の成分がリボン(13)と同一速度を保つように、Sキャリッジまたは角度αを、あるいはSキャリッジ及び角度αのいずれも、動的に調節する工程と、
(c) 光放射デバイス(51)によって放射される光ビームをつくるレーザ(41)のパワーPレーザを変えることにより、工程(II)(b)の動的調節を補償する工程と、
を含む方法によって、ベントを形成する工程、及び
(III) 工程(II)において形成されたベントに沿って、リボン(13)からガラスシートを分割する工程、
を含む方法が開示される。
【0018】
第2の態様にしたがえば、
(i) Sリボンが:
リボン=S+ΔS
の形式で表され、
式中、S及びΔSはそれぞれ、リボンの速度の公称不変成分及び経時変動成分である、
(ii) |ΔS|>0.03Sである場合、工程(II)(b)がαを変える工程を含む、
態様1の方法が提供される。
【0019】
第3の態様にしたがえば、
(i) 工程(II)(b)がαを変える工程を含み、
(ii) リボンにおいて、光放射デバイスにより放射される光ビームは長さL及び幅Wを有し、
(iii) 光放射デバイスはLを定める第1のレンズユニット及びWを定める第2のレンズユニットを備え、
(iv) 第1のレンズユニットは少なくとも1つのレンズ素子を有し、
(v) 工程(II)がさらに、αの変化の結果としての直線に対する光ビームの方位の変化を補償するため、少なくとも1つのレンズ素子の角方位を調整する工程を含む、
態様1の方法が提供される。
【0020】
第4の態様にしたがえば、
第2のレンズユニットが少なくとも1つのレンズ素子を有し、αが変えられても、そのレンズ素子の角方位がキャリッジに対して不変に保たれる、
態様3の方法が提供される。
【0021】
第5の態様にしたがえば、
第1のレンズユニット及び第2のレンズユニットがそれぞれ1つのレンズ素子だけを備える、
態様3または態様4の方法が提供される。
【0022】
第6の態様にしたがえば、
(i) Sリボンが:
リボン=S+ΔS
の形式で表され、
式中、S及びΔSはそれぞれ、リボンの速度の公称不変成分及び経時変動成分である、
(ii) |ΔS|≦0.03Sである場合、工程(II)(b)においてαが不変に保たれる、
態様1の方法が提供される。
【0023】
第7の態様にしたがえば、
工程(II)(c)のPレーザの変化が:
dPレーザ/dSリボン=k・cotα
式中、kは定数である、
を満たす、
態様6の方法が提供される。
【0024】
第8の態様にしたがえば、
レーザが最大レーザパワーの百分率(%最大レーザパワー)で表される、及び
k<1.0である、
態様7の方法が提供される。
【0025】
第9の態様にしたがえば、
工程(II)が、レーザまたはレーザのための支持構造に取り付けられた第1の端及び直線軌道または直線軌道のための支持構造に取り付けられた第2の端を有するハウジング内にレーザ光を入れるフレキシブルレーザビーム送出システムを含む経路に沿ってレーザから光放射デバイスにレーザ光を送る工程を含み、ハウジングは、第1及び第2の端の三次元における相互の回転及び平行移動を可能にする少なくとも1つのジョイント及び少なくとも1つの延長チューブを有する、
態様1の方法が提供される。
【0026】
第10の態様にしたがえば、
ガラスシートがダウンドロープロセスにより形成される、
態様1〜9のいずれかの方法が提供される。
【0027】
第11の態様にしたがえば、
ガラスシートがディスプレイデバイスの基板である、
態様1〜10のいずれかの方法が提供される。
【0028】
第12の態様にしたがえば、ガラスシートを作製するための、
(I) 移動するガラスリボン(13)を形成する工程、
(II) 光放射デバイス(51)及びノズル(119)を載せているキャリッジを、直線軌道(15)に沿って平行移動させる工程を含む方法により、リボンの移動方向に直交する直線(7)に沿ってリボン(13)の表面にベントを形成する工程であって、キャリッジの移動が、(i)直線(7)に平行な第1の成分(18)及び(ii)リボン(13)の移動方向(16)に平行な第2の成分を有するように、直線軌道は直線(7)に対して角度αをなして傾けられ、光放射デバイス(54)はレーザ(41)によりつくられた光ビームを放射し、ノズル(119)は冷却流体を放出するものである工程、及び
(III) 工程(II)で形成されたベントを用いてリボン(13)からガラスシートを分割する工程、
−(i) 光放射デバイスから放射された光ビームは、リボン(13)において、長さL及び幅Wを有する、
−(ii) 光放射デバイス(51)はLを定める第1のレンズユニット(53)及びWを定める第2のレンズユニット(55)を備える、
−(iii) 第1のレンズユニット(53)は少なくとも1つのレンズ素子(81)を有する、
−(iv) キャリッジ(14)の移動の第1の成分(18)と第2の成分(16)の相対比を変えるようにαが変えられる、及び
−(v) αの変化の結果としての直線(7)に対する光ビームの方位の変化を補償するため、少なくとも1つのレンズ素子(81)の角方位が調節される、
を含む方法が開示される。
【0029】
第13の態様にしたがえば、
第2のレンズユニットが少なくとも1つのレンズ素子を有し、αが変えられても、そのレンズ素子の角方位がキャリッジに対して不変に保たれる、
態様12の方法が提供される。
【0030】
第14の態様にしたがえば、
第1のレンズユニット及び第2のレンズユニットがそれぞれ1つのレンズ素子だけけを備える、
態様12の方法が提供される。
【0031】
第15の態様にしたがえば、
ガラスリボンがダウンドロープロセスにより形成される、
態様12〜14のいずれかの方法が提供される。
【0032】
第16の態様にしたがえば、
ガラスシートがディスプレイデバイスの基板である、
態様12〜15のいずれかの方法が提供される。
【0033】
第17の態様にしたがえば、ガラスシートを形成するための、
(I) 移動するガラスリボン(13)を形成する工程、
(II) ガラスリボンの移動方向に直交する直線(7)に沿ってリボン(13)の表面に、
(a) 光放射デバイス(15)及びノズル(119)を載せている、キャリッジ(14)を、キャリッジの移動が、(i)直線(7)に平行な成分(18)及び(ii)リボン(13)の移動方向(16)に平行な成分を有するように、直線(7)に対して角度αをなして傾けられた直線軌道(15)に沿って平行移動させる工程であって、光放射デバイス(15)はレーザビームを放射し、ノズル(19)は冷却流体を放出するものである工程と、
(b) レーザ(41)またはレーザのための支持構造に取り付けられた第1の端(65)及び直線軌道(15)または直線軌道のための支持構造(11)に取り付けられた第2の端(67)を有するハウジング内にレーザ光(43)を入れるフレキシブルレーザビーム送出システム(61)を含む経路に沿ってレーザ(41)から光放射デバイス(51)にレーザ光(43)を送る工程であって、ハウジングは、第1の端(65)及び第2の端(67)の三次元における相互の回転及び平行移動を可能にする、少なくとも1つのジョイント(62)及び少なくとも1つの延長チューブ(64)を有するものである工程と、
を含む方法によってベントを形成する工程、及び
(III) 工程(II)で形成されたベントを用いてリボン(13)からガラスシートを分割する工程、
を含む方法が開示される。
【0034】
第18の態様にしたがえば、
フレキシブルレーザビーム送出システムがビームエキスパンダーを備える、
態様17の方法が提供される。
【0035】
第19の態様にしたがえば、
ガラスリボンがダウンドロープロセスにより形成される、
態様17または態様18の方法が提供される。
【0036】
第20の態様にしたがえば、
ガラスシートがディスプレイデバイスの基板である、
態様17〜19のいずれかの方法が提供される。
【0037】
上記の方法を実施するための装置も開示される。
【0038】
本開示の様々な態様の上記要約に用いられる参照数字は読者の便宜のために過ぎず、本発明の範囲を限定する目的はなく、またそのように解されるべきではない。より一般には、上述の全般的説明及び以下の詳細な説明が本発明の例示に過ぎず、本発明の本質及び特質の理解のための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。
【0039】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかであろうし、あるいは本明細書に説明されるように本発明を実施することによって認められるであろう。添付図面は本発明のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み込まれて、本明細書の一部をなす。本明細書及び図面に開示される本発明の様々な特徴がいずれかのまたは全ての組合せで用いられ得ることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1はレーザスコーリングプロセスを示す略図である。
図2図2は、特許文献3にしたがう、レーザスコーリングシステムを示す略図である。
図3図3図2のキャリッジの移動運動をさらに詳細に示す略図である。
図4図4は、スコーリングプロセスの開始時点及び以降のある時点における、冷却流体、レーザ光ビーム及び初期きずの位置を示す略図である。
図5図5は、(1)Sスコーリング(左縦軸)対Sリボン(横軸)(曲線57)及び(2)%最大レーザパワー(右縦軸)対Sリボン(横軸)(曲線59)を表示するグラフである。
図6図6はレーザ光を遊動光学ヘッドに供給するためのシステムを示す略図である。
図7図7は、遊動光学ヘッドにレーザ光を供給するために、フレキシブルレーザビーム送出システムを用いる実施形態の斜視図である。
図8図8図7のシステムの側面図である。
図9図9図7のシステムの上面図である。
図10図10は、本実施形態に用いられる第1及び第2のレンズユニット並びに変向ミラーの場所を示すためにハウジングの一部が取り除かれている、図7の遊動光学ヘッドの斜視図である。
図11図11図7の遊動光学ヘッドの第1のレンズユニットの斜視図である。
図12図12は、レーザビームが図7の遊動光学ヘッドを通過する際の、レーザビームの形状及び方位を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
一般に、ガラスリボンの速度は公称成分S及び公称値からの偏りΔSからなる、すなわち:
リボン=S+ΔS 式(3)
として表すことができる。
【0042】
及びΔSはいずれも時間の関数になり得る。例えば、Sは、例えば作製速度における意図的な変化の結果として変化し得るし、ΔSはプロセス条件における意図的ではない変化の結果として変化し得る。一般に、Sの変化によるSリボンの変化は、ΔSによるSリボンの変化ほど頻繁ではないであろうが、例えば一連の公称リボン速度の試験が必要になるであろう新しいプロセスのデバッグ中には、逆が真になり得る。以下の議論の目的のため、注目する時間枠にわたってSは不変であり、ΔSはS周りのリボン速度の変動を表し、意図的な変動及び意図的ではない変動のいずれをも含む。
【0043】
リボンが変化する際にキャリッジをリボンと同一速度に保つため、すなわちキャリッジの移動運動がリボンから見て直線であるためには、Sキャリッジ及びαの一方または両方を変える必要がある。一般に、αを変えるよりSキャリッジを変える方が簡単である。しかし、本開示にしたがえば、リボンから分割されたガラスシートのエッジの品質を犠牲にせずにSキャリッジを変化させ得るのは限定された範囲内でしかないことが見いだされた。
【0044】
特に、レーザスコーリングプロセスを許容されるプロセスウインドウ内に維持するためにはSキャリッジの変化にともなってレーザパワーを制御する必要があることが見いだされた。詳しくは、レーザパワーは、Sキャリッジが大きくなると強める必要があり、Sキャリッジが小さくなると弱める必要がある。しかし、システムをそのプロセスウインドウ内に維持しながらレーザパワーを変化させ得る範囲は極めて限られていることが分かった。横軸に沿ってSリボンをmm/秒単位で、左縦軸に沿ってスコーリング速度をmm/秒単位で、また右縦軸に沿ってレーザパワーを%最大パワー単位で、表示した図5にこの効果が示される。本図に示される曲線は3.8°のα値に対して得られた測定データに基づいている。
【0045】
図5のデータを得た実験により、リボンから分割されたガラスシートのエッジ特性は、リボンの公称速度(この場合は50mm/秒)を中心に±3%の狭い範囲内において、反復して許容範囲内にあることが明らかになった。すなわち、上の式(3)に関し、キャリッジ速度とレーザパワー調節の組合せは、|ΔS|≦0.03・Sである場合にはリボン速度の変化に適応するために用いることができるが、|ΔS|>0.03・Sである場合、高信頼度エッジ品質を得るためにはαも変える必要がある。
【0046】
図5はSリボンの変化の補償に必要なレーザパワーの変化がSリボンの線形関数であり得ることも明らかにする。そのような線形依存性により、レーザスコーリングプロセスの制御が容易になり得る。そのような実施形態に対し、dPレーザ/dSリボンは:
dPレーザ/dSリボン=k・cotα
と書くことができ、ここでkは定数である。すなわち、SキャリッジがSリボンの上昇に整合するために上昇するときのスコーリング速度の上昇速度はcotα(すなわち、dSスコーリング/dSリボン=cotαである;上の式(1)及び(2)を見よ)であるが、高信頼度エッジ形成を維持するために必要なレーザパワーの上昇速度は、kの値に依存して、cotαより小さくなるか、cotαより大きくなるか、またはcotαに等しくなり得る。図5のデータの場合、レーザパワーが%最大パワーで表されていれば、kは1.0より小さい。明らかであろうように、いずれかの特定の用途及びレーザパワーに対するいずれかの特定の単位(例えば、%最大パワー、ワット、等)に対するkの値は、本開示から当業者によって容易に決定され得る。
【0047】
図6〜9は、Sリボンの変化、例えば>0.03・Sの変化に適応させるために角度αを変えるために用いることができる装置を示す。特に、図6はこの目的のために用いることができる装置の全体構成の例を簡略に示し、図7〜9は特定の実施形態例を示す。図6において、個々のガラスシートが分割されるガラスリボンは参照数字13で、可動キャリッジのための直線軌道は参照数字15で、またリボンを作製する装置、例えばフージョンドロー装置は参照数字9で表される。提示を簡略化するため、キャリッジは遊動光学ヘッド51で表されるが、キャリッジに、冷却流体のためのノズルを有する、別の装置が含まれ得ることは理解されるであろう。遊動光学ヘッド51は、レーザ41でつくられたレーザビーム43を受け取り、ビームをリボン13に向けて送る。図1〜4に関して上で論じたように、レーザビームは冷却流体と組み合わされて、ガラスに形成された初期きずを延長して、個々のガラスシートがそこでリボンから分割されるベントをリボンの幅にわたって形成する。
【0048】
図6において、レーザから光を受け取り、光を遊動光学ヘッドに送るに適するアパーチャまたは開口(図示せず)を有するハウジング19内に配置された、ミラー45及び47によって遊動光学ヘッドに誘導されている、レーザビームが示される。ミラー45及び47の位置及び角方位は、角度αが変えられてもレーザビームの照準が誘導ヘッドに合わせられたままであるように、能動制御下におくことができる。2つのミラーしか示されていないが、望ましければさらにミラーを用いることができる。
【0049】
ミラーの位置及び角方位は、αの変化に適応するために用いられるだけでなく、(例えば、室温からガラスリボンの製造にともなう高い動作温度への)温度の変化、機械的振動、等によって生じるレーザ41と軌道15の間の相対移動を補償するためにも用いられ得る。所要パワーレベルのため、レーザ41は一般に極めて大きくかつ重く、したがって製造環境においては軌道15に用いられる支持構造とは別の支持構造に取り付けられることが多いであろう。この結果、レーザ41と軌道15は相互に対する相対移動を受け、したがって遊動光学ヘッドへのレーザビームの連続照準合わせが必要になり得る。そのような連続照準合わせは、レーザ(及び/またはその支持システム)及び直線軌道(及び/またはその支持システム)の位置に関して入力データを適する変換器から得るコンピュータ制御システムを用いて、ミラー45及び47の方位及び/または位置を能動的に変えることによって達成することができる。
【0050】
図7〜9は、αの変化に、また温度、機械的振動、等によるレーザ41と軌道15の相対位置の変化にも、受動的に適応することができる、一実施形態を示す。この実施形態は、レーザ41またはレーザのための支持構造に取り付けられた第1の端65及び直線軌道15または直線軌道のための支持構造、例えば図7〜9の支持構造11に取り付けられた第2の端67を有する、ハウジングにレーザ光を入れるフレキシブルレーザビーム送出システム61を備える。直線軌道15への第2の端67の取付けには、角度αが変化しても、軌道、第2の端及び光学ヘッドがαの変化時にユニットとして移動するから、レーザビームの照準は遊動光学ヘッド51に合わせられたままであるという利点がある。
【0051】
図7〜9に示されるように、送出システムのハウジングは、第1の端65及び第2の端67に三次元における相互の回転及び平行移動を可能にする、少なくとも1つのジョイント62及び少なくとも1つの延長チューブ64を備える。このようにすれば、送出システムの第1の端及び第2の端は、レーザからシステムへの光入力または遊動光学ヘッドへの光出力のいずれも実質的に劣化させずに、相互に移動することができる。これは、設置することができ、したがって担当者の介在なしに長時間にわたってはたらくことを可能にし得る、頑健なシステムを提供するから、重要な利点である。少なくとも1つのジョイントと少なくとも1つの延長チューブの組合せも、スコーリングシステムの設置、位置合せ及び保守/修理を容易にする。この点に関し、ビーム照準精度要件は極めて厳格であり、例えば、遊動光学ヘッドの中心線からのビーム中心の偏差に適する仕様は、送出システムの最終ミラーから3mないしさらに大きな距離において±100μm以下であり得ることに注意すべきである。
【0052】
同じく図7〜9に示されるように、フレキシブルレーザビーム送出システム61は、遊動光学ヘッドへの、したがってガラスリボン上への、レーザ光の転送を容易にするためにビームエキスパンダー63を備えることができる。同時係属の、共通に譲渡された、名称を「非平坦材料のスコーリング(Scoring of Non-Flat Materials)」とする、米国特許出願第12/220948号の明細書(以降、’948出願明細書)を参照のこと。送出システムは円偏光子も備えることができる(図7〜9には示されていない)。システムは、米国ミシガン州ウィクソム(Wixom)のAmerican Laser Enterprisesによって製造される装置のような、市販装置を用いて構成することができる。
【0053】
遊動光学ヘッド51に移れば、図10に示されるように、遊動ヘッドは、リボン13上のレーザビームの長さを制御する第1のレンズユニット53,レーザビームの幅を制御する第2のレンズユニット55及びビームをリボンに向けて送る変向ミラー69を有することができる。第1のレンズユニットは、例えば、図2のz軸に沿う方向(すなわち、図2の紙面に垂直な方向)にビームを拡大する単円柱負レンズ素子を有することができ、第2のレンズユニットは、例えば、軌道15の中心線を通って図2のx-y平面に平行な平面において軌道15に直交する方向にビームを収斂する単円柱正レンズ素子を有することができる。もちろん、第1のレンズユニット及び第2のレンズユニットのいずれかにまたはいずれにもさらに多くのレンズ素子を用いることができる。
【0054】
図12は伝搬しているビームへの第1のレンズユニット及び第2のレンズユニットの効果を示す。本図に示されるように、円形断面83を有し、矢印91の方向に伝搬しているビームが遊動光学ヘッドに入る。ビームはビームを拡大する第1のレンズユニット53に入り、よってビームは第1のレンズユニットを出るときに参照数字85で示される形状を有する。その後、ビームは第2のレンズユニットを通過し、ミラー69によりリボン上に反射される。図12において、第2のレンズユニットとミラーの組合せの効果は参照数字93で表される。軌道15が水平であれば、リボンにおいて得られるビームは、図12において参照数字89で識別される形状及び方位を有するであろう。しかし、軌道15が角度αをなして水平下に傾けられると、リボンにおいて、ビームは図12に参照数字87で識別される方位をとる。すなわち、ビームは上方に角度αだけ回される。
【0055】
式(1)が満たされるようにSキャリッジ及びαが選ばれれば、斜めビームはそのまま直線、例えば線7に沿ってリボンにかけて平行移動するが、ビームの長軸はもはやその直線に沿ってはいないことに注意すべきである。実際上、ビームの経路とビームの長軸の間のそのような不一致の結果、ビームの長軸はもはや冷却流体及び初期きずがとる経路と完全には合っていないから、信頼度が低いスコーリング及び/または劣ったエッジ品質が得られることになり得る。
【0056】
この問題に対処するため、レンズ素子81の円柱軸(または、用いられていれば、複数のレンズ素子の円柱軸)を回転させて、ビームの長軸をリボンの表面にかけてのビームの移動方向と合わせることができるように、第1のレンズを図11に示されるように構成することができる。図11に示されるように、レンズユニット53は、駆動する小歯車77を駆動するステップモーター75が取り付けられ、レンズ素子81が取り付けられている大歯車79を小歯車77が駆動する、ハウジング73を備えることができる。ステップモーターは、レンズ素子81の方位を軌道15の角度と整合させるコントローラ(図示せず)によって作動される。特に、図12に示されるように、コントローラはレンズ素子(または複数のレンズ素子)の円柱軸を軌道15に平行な軸のまわりで、回転されたビーム87がビーム方位89と一致する回転方向に、αだけ回転させる。
【0057】
図10に示されるように、第2のレンズユニット55にも、ユニットの円柱軸の方位を変えるためのステップモーター及び歯車列を装備することができる。しかし、実際上、第2のレンズユニットの円柱軸とリボン上のスコアリング線に対する法線との間の不一致は第1のレンズユニットの円柱軸とスコーリング線の間の不一致に比べてほとんど問題にならないことが分かった。したがって、多くの用途に対し、第2のレンズユニットはキャリッジに対して固定された方位を有することができ、したがって光学システムの複雑さを軽減し、コストを低減することができる。
【0058】
理解されるであろうように、図10及び11に示される装置は説明のための例に過ぎず、様々な別の機構を第1のレンズユニット及び第2のレンズユニットの(1つまたは複数の)レンズ素子の円柱軸の方位を変えるために用いることができる。さらに、「第1のレンズユニット」及び「第2のレンズユニット」の呼称は、ユニットがレーザビームにはたらく順序を意味すると解されるべきではない。図面には第1のレンズユニットが第2のレンズユニットに先行するように示されているが、望ましければ、ユニットは逆の配置をとることができる。第1のレンズユニット及び第2のレンズユニットはスコーリングシステムの仕様にしたがって、様々な規定特性を有することができる。’948出願明細書は、本開示に関連して用いられ得る第1のレンズユニット及び第2のレンズユニットに対する、光学能、間隔、等の代表例を含んでいる。’948出願明細書の規定特性は市販のZEMAX光学設計ソフトウエア(ZEMAX Development Corporation; 米国ワシントン州ベルビュー(Bellevue))を用いて得られている。同様に、本開示の光学システムに対する規定特性は、ZEMAXまたはその他の市販または特注の光学設計プログラムを用いて、得ることができる。
【0059】
実際上、上で論じた様々な態様はリボン速度の変化を自動的に補償するシステムを形成するために組み合わせて用いることができる。例えば、コントローラは、所望のプロセスウインドウ内のレーザスコーリング及びエッジ品質を達成するため、Sリボンに関するデータを用いて、(1)Sキャリッジ、(2)Pレーザ、(3)軌道15の角度α及び(4)レーザビームの長軸(または長軸及び短軸の両者)の方位を同時に調節することができる。フレキシブルレーザビーム送出システムの仕様により、手作業の介入を必要とせずに、そのような調節を実時間で行うことができる。
【0060】
上記のことから分かるように、本開示はレーザスコーリングを容易にする方法及び対応する装置を提供し、ひいては、清浄で強度の高いエッジ、ガラスの組成及び厚さへの不感性、及びリボン運動の最小の擾乱という恩恵を提供する。さらに、軌道角αを大きくすることで、深いスコーリングまたは完全切断を可能にする、低められたスコーリング速度でレーザスコーリングを実施することができる。
【0061】
本開示の範囲及び精神を逸脱しない様々な改変が当業者には明らかであろう。例えば、スコーリングを一方向だけで実施し、次いで次のスコーリングのためにリセットする代わりに、スコーリングを両走行方向に、例えば、図2において左から右に、次いで右から左に、以降同様に、実施できるようにシステムを構築することができる。添付される特許請求の範囲は、上記のタイプ及びその他のタイプの本明細書に述べられる実施形態の、改変形態、変形形態及び等価形態を包含するとされる。
【符号の説明】
【0062】
7 ガラスリボン移動方向に対して垂直な直線
9 ガラスリボン製造装置
11 支持構造(支持フレーム)
13 ガラスリボン
14 走行キャリッジ
15 直線軌道
16,17,18 ベクトル
41 レーザ
51 光放射デバイス
53,55 レンズユニット
61 フレキシブルレーザビーム送出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12