(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の手法を採用した場合には、端子接続部からボディ部に対して大きな応力が加わることとなってしまい、ボディ部にクラック等の破損が生じてしまうおそれがある。ボディ部の破損を防止するためには、端子接続部の外径と被取付部の内径との径差を小さくすればよいが、この場合には、端子接続部の抜けが発生しやすくなってしまう。すなわち、端子接続部の抜け防止、及び、ボディ部の破損防止は、いわばトレードオフの関係にあり、両者をともに実現することは非常に難しい。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、端子接続部の抜け防止及び、ボディ部の破損防止の双方を実現することができるプラグ接続具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0009】
構成1.本構成のプラグ接続具は、少なくとも一端側が筒状をなす樹脂製のボディ部と、
前記ボディ部の一端側の内周面に囲まれた空間に配置され、自身の一端側に点火プラグの端子電極が接続される端子接続部とを備え、
前記端子接続部のうちの少なくとも一部が、前記ボディ部の一端側の内周面により形成された環状の被取付部に挿入されたプラグ接続具であって、
前記端子接続部のうち前記被取付部に挿入される部位には、
前記被取付部から径方向内側に向けた圧力が外周面に加えられる凸部と、
前記凸部よりも一端側において前記凸部に隣接し、自身の外径が前記凸部の外径よりも小さい凹部とが設けられ、
前記端子接続部の中心軸に沿った前記凸部の長さをA(mm)とし、前記中心軸に沿った前記凹部の長さをB(mm)としたとき、A≧1.5、B≧2.0、
3.5≦A+B≦25.5、及び、A/B≦7/4を満たすことを特徴とする。
【0010】
上記構成1によれば、凸部の長さAが1.5mm以上とされているため、被取付部から凸部に対して十分に大きな力が加わることとなる。そのため、被取付部により凸部を強固に保持することができる。
【0011】
また、凸部の圧接に伴い被取付部の一部は、凹部側へと押し出されることとなるため、被取付部のうち凹部の形成範囲に対応する部位は、内周側へと張り出す形となる。そのため、凸部は、被取付部のうち内周側へと張り出した部位へと引っ掛かった状態となる。
【0012】
そして、上記構成1によれば、凹部の長さBが2.0mm以上とされているため、被取付部のうち凸部が引っ掛かる部位の長さを十分に大きなものとすることができる。そのため、前記凸部が引っ掛かる部位の強度を効果的に高めることができ、端子接続部の抜け方向に沿った力に対する前記部位の耐力を向上させることができる。その結果、長さAを1.5mm以上とし、被取付部により凸部を強固に保持できることと相俟って、端子接続部の抜けをより確実に防止することができる。
【0013】
さらに、上記構成1によれば、A/B≦7/4とされており、凸部の圧接に伴い凹部側へと押し出される樹脂(被係止部)の量に相当する長さAに対して、押し出された樹脂の逃げ場となる、凹部及び被取付部間の空間の大きさに相当する長さBが十分に大きなものとされている。従って、押し出された樹脂に起因する、ボディ部へと加わる応力を低減させることができる。その結果、ボディ部におけるクラック等の破損をより確実に防止することができる。
【0014】
構成2.本構成のプラグ接続具は、上記構成1において、B≧2.5を満たすことを特徴とする。
【0015】
上記構成2によれば、凹部の長さBが2.5mm以上とされているため、被取付部のうち凸部が引っ掛かる部位の強度を一層大きなものとすることができる。その結果、端子接続部の抜けをより効果的に防止することができる。
【0016】
構成3.本構成のプラグ接続具は、上記構成1又は2において、前記凸部の外周には、前記凸部の周方向と交差する方向に沿って延びる複数の溝部が形成され、
前記凸部の周方向に沿った、前記溝部の幅が0.05mm以上0.25mm以下とされることを特徴とする。
【0017】
点火プラグの取付けられた内燃機関等の振動等により、プラグ接続具に対して点火プラグの端子電極の周方向に沿ったトルクが加わることがある。ここで、トルクが加えられたことにより、端子電極に対して端子接続部が回転してしまうことは特段問題とはならないが、ボディ部に対して端子接続部が回転してしまうと、ボディ部に対して端子接続部が緩んでしまうおそれがある。端子接続部の緩みが生じてしまうと、点火プラグに対するプラグ接続具の取付状態が不安定となってしまったり、プラグ接続具を介した点火プラグへの通電に支障が生じてしまったりするおそれがある。
【0018】
そこで、端子接続部の外周に径方向外側に突出する複数の突起を設け、ボディ部に対して前記突起を食い込ませることで、ボディ部に対する端子接続部の回転を抑制し、端子接続部の緩みを防止する手法が考えられる。しかしながら、当該手法では、ボディ部に対する端子接続部の回転を十分に抑制することができず、依然として端子接続部の緩みが生じてしまうおそれがある。
【0019】
この点、上記構成3によれば、凸部の外周には、凸部の周方向と交差する方向に沿って延びる複数の溝部が形成されており、当該溝部の幅が0.25mm以下とされている。従って、突起が被取付部に食い込むのではなく、被取付部(樹脂)が溝部を埋めるようにして溝部の奥側へと入り込むこととなり、被取付部及び凸部間の摩擦力を増大させることができる。さらに、溝部の奥側に入り込んだ樹脂の存在により、被取付部(ボディ部)に対する端子接続部の回転を規制することができる。これらの作用効果が相俟って、ボディ部に対して端子接続部が回転してしまうことをより確実に防止でき、ひいては端子接続部の緩みを極めて効果的に抑制することができる。
【0020】
加えて、被取付部及び凸部間の摩擦力を増大させることができるため、端子接続部の抜け防止効果をより向上させることができる。
【0021】
また、上記構成3によれば、溝部の幅が0.05mm以上とされているため、溝部に対して樹脂を容易に入り込ませることができる。さらに、溝部に入り込んだ樹脂は、凸部の周方向に沿って比較的大きな厚さを有することとなるため、被取付部に対する端子接続部の回転規制効果をより確実に発揮させることができる。
【0022】
構成4.本構成のプラグ接続具は、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、前記凸部の外周には、前記凸部の周方向と交差する方向に沿って延びる複数の溝部が形成され、
前記中心軸に沿った前記溝部の長さを0.3mm以上としたことを特徴とする。
【0023】
上記構成4によれば、端子接続部の中心軸に沿った広範囲において、被取付部(樹脂)が溝部に対して入り込むこととなるため、溝部に入り込んだ樹脂による、端子接続部の回転規制効果を一層向上させることができる。その結果、端子接続部の緩みをより一層確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1(a)は、プラグ接続具としてのプラグキャップ1の断面図であり、
図1(b)は、プラグキャップ1の正面図である。
【0026】
プラグキャップ1は、屈曲形状をなすボディ部としてのターミナルボディ2、ターミナルボディ2の一端側に取付けられたプラグ側ゴム部材3、及び、ターミナルボディ2の他端側に取付けられたコード側ゴム部材4などから構成されるものである。
【0027】
前記ターミナルボディ2は、筒状をなし、耐熱性及び耐電圧性に優れる熱硬化性樹脂(例えば、不飽和ポリエステル樹脂)により形成されている。また、ターミナルボディ2は、略中間部分において鋭角状に屈曲されており、第1軸線CL1に沿って延びる比較的大径の第1ボディ構成部21と、第1軸線CL1と交差する第2軸線CL2に沿って延び、第1ボディ構成部21よりも小径の第2ボディ構成部22とから構成されている。
【0028】
さらに、ターミナルボディ2の内部には、第1軸線CL1に沿って延びる第1軸孔51と、第2軸線CL2に沿って延びる第2軸孔52とからなる軸孔5が形成されている。第1軸孔51には、点火プラグの端子電極や絶縁碍子(ともに図示せず)が挿通される筒状の第1挿通部53が形成されている。一方で、第2軸孔52には、図示しない点火コイルやディストリビュータから延びるプラグコード(図示せず)が挿通される筒状の第2挿通部54が形成されている。
【0029】
加えて、ターミナルボディ2の一端側には、外周側に突出し、第1軸線CL1を中心とする環状をなす係止部23が形成されている。
【0030】
前記プラグ側ゴム部材3は、所定のゴム(例えば、シリコーンゴムやEPDMゴム等)により筒状に形成されており、比較的小径の小径部31と、当該小径部31よりも大径の大径部32とを備えている。
【0031】
前記小径部31は、その内径が点火プラグの絶縁碍子の後端部の外径よりも若干小さくなるように構成されており、小径部31の内周面には、径方向内側に向けて突出形成された環状の突条部31Pが設けられている。そして、点火プラグにプラグキャップ1が接続された際には、小径部31が点火プラグの絶縁碍子により押し広げられるとともに、前記絶縁碍子の外周面に対して前記突条部31Pが密着し、その結果、第1挿通部53内への水の浸入が防止される。
【0032】
また、前記大径部32は、前記小径部31の他端側に形成されるとともに、大径部32の内周面には、凹状をなす環状の被係止部33が形成されている。プラグ側ゴム部材3は、大径部32内にターミナルボディ2の一端部が嵌合されるとともに、被係止部33に対して前記係止部23が係止されることで、ターミナルボディ2の一端部に取付けられている。
【0033】
前記コード側ゴム部材4は、所定のゴム(例えば、シリコーンゴムやEPDMゴム等)により形成されており、第2軸線CL2に沿って延びる筒状をなしている。また、コード側ゴム部材4は、比較的小径の小径部41と、当該小径部41よりも一端側に形成され、小径部41よりも大径の大径部42とを備えている。さらに、小径部41の内周面には、径方向内側に向けて突出形成された環状の突条部41Pが複数設けられている。そして、プラグコードがプラグキャップ1に接続された際には、小径部41がプラグコードにより押し広げられるとともに、プラグコードの外周面に対して前記突条部41Pが密着する。その結果、第2挿通部54内への水の浸入が防止される。
【0034】
また、コード側ゴム部材4は、前記大径部42内にターミナルボディ2の他端部が嵌合されることで、ターミナルボディ2の他端部に取付けられている。尚、大径部42は、その内周面が凹凸のない平坦状に形成されており、大径部42の内周面及びターミナルボディ2の他端側外周面とは広範囲に亘って面接触するようになっている。そのため、大径部42及びターミナルボディ2間において大きな摩擦力を生じさせることができ、ターミナルボディ2からのコード側ゴム部材4の抜けを防止できるようになっている。尚、ターミナルボディ2の他端側に、外周側に突出する係止部を設けるとともに、大径部42の内周に凹状の被係止部を設け、前記被係止部に前記係止部を係止することで、コード側ゴム部材4の抜け防止を図ることとしてもよい。
【0035】
さらに、前記軸孔5内には、前記点火プラグ及びプラグコードを電気的に接続するための電気的接続部6が設けられている。当該電気的接続部6は、コード取付ねじ61、抵抗体62、コンタクトスプリング63、及び、端子接続部64が直列的に接続されることで構成されている。
【0036】
コード取付ねじ61は、導電性金属(例えば、真鍮)により形成されており、第2軸線CL2に沿って延びる木ねじ形状とされている。また、コード取付ねじ61のねじ形状部分は、前記第2挿通部54に向けて突き出して配置されている。そして、プラグコードを接続する際には、プラグコードの端部を第2挿通部54に挿通しつつ、プラグコードの端部をコード取付ねじ61にねじ込むことで、プラグコード内の導線とコード取付ねじ61とが電気的に接続されるようになっている。尚、コード取付ねじ61の基端部外周には、円環状をなす2枚のワッシャー65,66が嵌め込まれている。当該ワッシャー65,66により、コード取付ねじ61がターミナルボディ2に固定されるとともに、プラグコードを接続する際などにおけるコード取付ねじ61の倒れが防止されるようになっている。
【0037】
前記抵抗体62は、円柱状をなすとともに、導電性セラミックから形成されており、所定の電気抵抗(例えば、5kΩ)を有している。また、抵抗体62の両端部には、有底筒状をなす金属製のコンタクトキャップ67,68が配設されており、コンタクトキャップ67を介して、抵抗体62とコード取付ねじ金具61とが電気的に接続されている。
【0038】
前記コンタクトスプリング63は、導電性金属(例えば、ステンレス)からなる金属線が螺旋状に巻回されてなり、一方の端部が前記コンタクトキャップ68を介して抵抗体62に接触しており、他方の端部が端子接続部64に接触している。コンタクトスプリング63により耐振動性が高まることとなり、コード取付ねじ61から端子接続部64までの間が安定した状態で電気的に接続されるようになっている。
【0039】
端子接続部64は、導電性金属(例えば、真鍮)により有底円筒状に形成されており、ターミナルボディ2の一端側の内周面に囲まれた空間(第1軸孔51内)に配置されている。また、端子接続部64は、その一端側に位置する円筒状の筒状部64Aと、当該筒状部64Aよりも小径であり、内部が中実とされた円柱状の柱状部64Bとを備えている。そして、ターミナルボディ2の一端側内周面により形成され、第1軸線CL1に沿って一定の内径を有する環状の被取付部24に対して、筒状部64Aが嵌入されることで、端子接続部64がターミナルボディ2に固着されている。
【0040】
また、筒状部64Aは、プラグキャップ1を点火プラグに接続した際に、点火プラグの端子電極が挿通されることで、前記端子電極と接続される。加えて、筒状部64Aは、その一端部が前記第1挿通部53内に配置されており、当該一端部の外周には、環状のコネクタスプリング64Cが取付けられている。そして、筒状部64Aに前記端子電極を接続したときには、前記コネクタスプリング64Cから前記端子電極に対して径方向内側に向けた締付力が加わることとなり、その結果、端子接続部64を点火プラグに対して安定した状態で接続できるようになっている。
【0041】
さらに、
図2に示すように、端子接続部64のうち前記被取付部24に挿入される部位には、凸部641と凹部642とが設けられている。
【0042】
凸部641は、前記被取付部24の内径よりも若干大きい外径を有しており(例えば、被取付部24の内径が5.9mmであるときに、凸部641の外径は6.0mm)、自身の外周面に対して被取付部24から径方向内側に向けた圧力が加えられている。
【0043】
尚、本実施形態では、熱硬化性樹脂を型成形し、ターミナルボディ2を得るとともに、
図3(a),(b)に示すように、成形直後で比較的高温のターミナルボディ2の被取付部24に対して端子接続部64が挿入される。そして、ターミナルボディ2が冷却されることで、ターミナルボディ2が収縮し、その結果、被取付部24から端子接続部64に対して比較的大きな圧力が加えられるようになっている。
【0044】
図2に戻り、凹部642は、凸部641よりも一端側において凸部641と隣接しており、自身の外径が凸部641の外径よりも小さなものとされている。尚、本実施形態において、凸部641及び凹部642は、端子接続部64の中心軸CL3に沿ってそれぞれ一定の外径を有するように構成されている。
【0045】
また、凸部641の圧接に伴い被取付部24の一部は、凹部642側へと押し出され、
図4に示すように、凹部642の形成範囲に対応する被取付部24は、内周側(凹部642側)に張り出すような状態となっている。そのため、凸部641は、被取付部24のうち内周側に張り出した部位に引っ掛かった状態となっている。
【0046】
図2に戻り、本実施形態では、端子接続部64の中心軸CL3に沿った凸部641の長さをA(mm)とし、前記中心軸CL3に沿った凹部642の長さをB(mm)としたとき、A≧1.5、B≧2.0(より好ましくは、B≧2.5)、及び、A/B≦7/4を満たすように構成されている。尚、A+Bは、通常3.5mm以上25.5mm以下であり、好ましくは、4.0mm以上20.5mm以下であり、より好ましくは、5.0mm以上20.5mm以下であり、さらに好ましくは、5.5mm以上9.0mm以下である。
【0047】
併せて、本実施形態では、凸部641の外周に、凸部641の周方向と直交する方向に沿って延びる複数の溝部643が形成されている。溝部643は、凸部641の外周面に転造加工を施すことにより形成されており、凸部641の周方向に沿って等間隔(例えば、0.3mm以上0.8mm以下ごと)に設けられている。そして、
図5に示すように、凸部641の周方向に沿った各溝部643の幅Wが0.05mm以上0.25mm以下とされている。尚、本実施形態において、各溝部643の深さDは、所定数値範囲内(例えば、0.05mm以上0.15mm以下)とされている。
【0048】
また、
図2に示すように、前記中心軸CL3に沿った溝部643の長さLは0.3mm以上とされている。尚、本実施形態では、前記中心軸CL3に沿った凸部641の形成範囲の全域に亘って溝部643が設けられているため、凸部641の長さAと溝部643の長さLとは等しいものとなっている(つまり、長さLは、その上限である長さAと等しいものとなっている)。
【0049】
以上詳述したように、本実施形態によれば、凸部641の長さAが1.5mm以上とされているため、被取付部24から凸部641に対して十分に大きな力が加わることとなる。そのため、被取付部24により凸部641を強固に保持することができる。
【0050】
また、凹部642の長さBが2.0mm以上とされているため、被取付部24のうち凸部641が引っ掛かる部位の長さを十分に大きなものとすることができる。そのため、前記凸部641が引っ掛かる部位の強度を効果的に高めることができ、端子接続部64の抜け方向に沿った力への前記部位の耐力を向上させることができる。その結果、長さAを1.5mm以上とし、被取付部24により凸部641を強固に保持できることと相俟って、端子接続部64の抜けをより確実に防止することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、A/B≦7/4とされており、凸部641の圧接に伴い凹部642側へと押し出される樹脂の量に相当する長さAに対して、押し出された樹脂の逃げ場となる、凹部642及び被取付部24間の空間の大きさに相当する長さBが十分に大きなものとされている。従って、押し出された樹脂に起因する、ターミナルボディ2へと加わる応力を低減させることができる。その結果、ターミナルボディ2におけるクラック等の破損をより確実に防止することができる。
【0052】
併せて、凸部641の外周には複数の溝部643が形成されており、当該溝部643の幅Wが0.25mm以下とされている。従って、被取付部24(樹脂)が溝部643を埋めるようにして溝部643の奥側へと入り込むこととなり、被取付部24及び凸部641間の摩擦力を増大させることができる。さらに、溝部643の奥側に入り込んだ樹脂の存在により、被取付部24(ターミナルボディ2)に対する端子接続部64の回転を規制することができる。これらの作用効果が相俟って、ターミナルボディ2に対して端子接続部64が回転してしまうことをより確実に防止でき、ひいては端子接続部64の緩みを極めて効果的に抑制することができる。
【0053】
また、溝部643の幅Wが0.05mm以上とされているため、溝部643に対して樹脂を容易に入り込ませることができる。さらに、溝部643に入り込んだ樹脂は、凸部641の周方向に沿って比較的大きな厚さを有することとなるため、被取付部24に対する端子接続部64の回転規制効果をより確実に発揮させることができる。
【0054】
加えて、溝部643の長さLが0.3mm以上とされているため、中心軸CL3に沿った広範囲において、樹脂が溝部643に対して入り込むこととなる。そのため、溝部643に入り込んだ樹脂による、端子接続部64の回転規制効果を一層向上させることができ、端子接続部64の緩みをより効果的に抑制することができる。
【0055】
次いで、上記実施形態によって奏される作用効果を確認すべく、凸部の長さA、及び、凹部の長さBを種々変更した端子接続部を有してなるプラグキャップのサンプルを複数作製し、各サンプルについて固着力評価試験を行った。
【0056】
固着力評価試験の概要は次の通りである。すなわち、
図6に示すように、端子接続部の柱状部が外部に露出するように、ターミナルボディから第2ボディ構成部等を取り除いた上で、端子接続部に対して、ターミナルボディに対する端子接続部の挿入方向とは反対方向に向けて荷重を加えた。そして、各サンプルにおいて、ターミナルボディから端子接続部が外れた際の荷重(固着力)を10回ずつ測定するとともに、前記固着力の平均値(平均固着力)を算出した。
【0057】
ここで、前記固着力が、端子接続部から点火プラグの端子電極を引き抜く際に要する力よりも大きなものであれば、端子接続部から端子電極を引き抜く方向にプラグキャップへと力を加えた際に、ターミナルボディから端子接続部が外れることなく、端子接続部から端子電極を引き抜くことができるといえる。そして、端子電極を端子接続部に接続した状態においては、端子接続部から端子電極を引き抜くために、約200Nの力が必要である。
【0058】
この点を鑑みて、固着力評価試験においては、平均固着力が200N以上250N未満となった場合に、ターミナルボディからの端子接続部の抜けを効果的に防止できるとして「○」の評価を下し、平均固着力が250N以上300N未満となった場合に、端子接続部の抜けを一層効果的に防止できるとして「◎」の評価を下し、平均固着力が300N以上となった場合に、端子接続部の抜けを極めて効果的に防止できるとして「☆」の評価を下すこととした。一方で、平均固着力が200Nを下回った場合には、端子接続部の抜けが懸念されるとして「×」の評価を下すこととした。
【0059】
また、凸部の長さA、及び、凹部の長さBを種々変更した端子接続部を用意し、ターミナルボディの被取付部に対する端子接続部の挿入に伴い、ターミナルボディにクラック等の破損が生じるか否かを確認することを、各端子接続部ごとに複数回ずつ行い、破損の発生率を計測した。
【0060】
表1に、固着力評価試験の試験結果を示し、表2に、各端子接続部における破損の発生率を示す。
【0061】
尚、各サンプルともに、ターミナルボディの被取付部の内径を5.9mmとし、凸部の外径を6.0mmとし、凹部の外径を5.8mmとした。
【0064】
表1に示すように、凸部の長さAを1.5mm以上とするとともに、凹部の長さBを2.0mm以上としたサンプルは、優れた固着力を有し、端子接続部の抜けを十分に防止できることが分かった。これは、次の(1)及び(2)が相乗的に作用したことによると考えられる。
(1)長さAを1.5mm以上としたことで、被取付部から凸部に対して十分に大きな力が加わり、被取付部により凸部が強固に保持されたこと。
(2)長さBを2.0mm以上としたことで、被取付部のうち凸部が引っ掛かる部位の強度が高まり、端子接続部の抜け方向に沿った力に対する前記部位の耐力が向上したこと。
【0065】
また、長さBを2.5mm以上としたサンプルは、さらに優れた固着力を有し、端子接続部の抜けを極めて効果的に防止できることが確認された。これは、被取付部のうち凸部が引っ掛かる部位の強度が飛躍的に高まったためであると考えられる。
【0066】
さらに、表2に示すように、A/B≦7/4を満たすサンプルは、ターミナルボディの破損を極めて効果的に抑制できることが明らかとなった。これは、次の理由によると考えられる。すなわち、被取付部のうち凸部に圧接された部位の一部は凹部側へと押し出され、凹部及び被取付部との間の空間(つまり、樹脂の逃げ場)の大きさが十分でない場合には、押し出された樹脂に起因して、ターミナルボディに対してその内周から外周側に向けた応力が加わってしまい、破損の発生を招いてしまう。これに対して、A/B≦7/4としたことで、凹部側に押し出される樹脂の量に相当する長さAに対して、前記空間の大きさに相当する長さBが十分に大きなものとなり、ひいてはターミナルボディに対して加わる応力がより確実に低減し、その結果、ターミナルボディの破損が抑制されたと考えられる。
【0067】
上記試験の結果より、ターミナルボディからの端子接続部の抜けを抑制しつつ、ターミナルボディの破損をより確実に防止するという観点から、A≧1.5、B≧2.0、及び、A/B≦7/4を満たすように構成することが好ましいといえる。
【0068】
また特に、ターミナルボディに対する端子接続部の固着力をより一層高め、端子接続部の抜けをより確実に防止するという点から、B≧2.5を満たすことがより好ましいといえる。
【0069】
次いで、溝部の幅Wを種々変更した端子接続部を有してなるプラグキャップのサンプルを複数作製し、各サンプルについて、緩みトルク評価試験と、上述の固着力評価試験とを行った。
【0070】
尚、緩みトルク評価試験の概要は次の通りである。すなわち、
図7に示すように、端子接続部の柱状部が外部に露出するように、ターミナルボディから第2ボディ構成部等を取り除いた上で、端子接続部の柱状部に対して回転力(トルク)を加えた。そして、各サンプルにおいて、ターミナルボディに対して端子接続部が回転した際の力(緩みトルク)を10回ずつ測定するとともに、前記緩みトルクの平均値(平均緩みトルク)を算出した。
【0071】
ここで、前記緩みトルクが、点火プラグの端子電極に対して端子接続部を回転させるために必要なトルクよりも大きなものであれば、ターミナルボディに対してトルクが加わったときに、端子電極に対する端子接続部の回転は生じるものの、ターミナルボディに対する端子接続部の回転は生じなくなる。そのため、ターミナルボディに対する端子接続部の回転に伴う、端子接続部の緩みは生じにくくなる。そして、一般に端子電極を端子接続部に接続した状態において、端子電極に対して端子接続部を回転させるためには、約0.5N・mのトルクが必要である。
【0072】
この点を鑑みて、緩みトルク評価試験においては、平均緩みトルクが0.5N・m以上1.0N・m未満となった場合に、ターミナルボディに対する端子接続部の緩みをより確実に防止できるとして「○」の評価を下し、平均緩みトルクが1.0N・m以上となった場合に、端子接続部の緩みを極めて効果的に防止できるとして「◎」の評価を下すこととした。一方で、平均緩みトルクが0.5N・mを下回った場合には、端子接続部の緩みが懸念されるとして「×」の評価を下すこととした。
【0073】
表3に、固着力評価試験の試験結果を示し、表4に、緩みトルク評価試験の試験結果を示す。
【0074】
尚、各サンプルともに、ターミナルボディの被取付部の内径を5.9mmとし、凸部の長さAを2.0mmとし、凹部の長さBを3.5mmとした。さらに、凸部の外径を6.0mmとし、凹部の外径を5.8mmとし、溝部の長さLを2.0mmとした。
【0077】
表3及び表4に示すように、溝部の幅Wを0.25mm以下としたサンプルは、端子接続部の抜け及び緩みの双方を極めて効果的に抑制できることが分かった。これは、幅Wを2.5mm以下としたことで、被取付部(樹脂)が溝部を埋めるようにして溝部の奥側へと入り込んだため、被取付部及び凸部間の摩擦力が増大するとともに、前記溝部の奥側に入り込んだ樹脂の存在により、被取付部(ターミナルボディ)に対する端子接続部の回転が抑制されたためであると考えられる。
【0078】
上記試験の結果より、端子接続部の抜け防止効果を一層高めるとともに、ターミナルボディに対する端子接続部の緩みをより確実に抑制するためには、溝部の幅Wを0.25mm以下とすることが好ましいといえる。
【0079】
次に、溝部の長さLを種々変更した端子接続部を有してなるプラグキャップのサンプルを複数作製し、各サンプルについて上述の緩みトルク評価試験を行った。表5に、当該試験の試験結果を示す。
【0080】
尚、各サンプルともに、ターミナルボディの被取付部の内径を5.9mmとし、凸部の長さAを2.0mmとし、凹部の長さBを3.5mmとした。さらに、凸部の外径を6.0mmとし、凹部の外径を5.8mmとし、溝部の幅Wを0.25mmとした。
【0082】
表5に示すように、溝部の長さLを0.3mm以上としたサンプルは、端子接続部の緩みをより確実に防止できることが分かった。これは、端子接続部の中心軸に沿った広範囲において、被取付部(樹脂)が溝部に対して入り込むこととなり、ターミナルボディに対する端子接続部の回転規制効果が向上したためであると考えられる。
【0083】
また特に、溝部の長さLを1.0mm以上とすることで、平均緩みトルクが1.5N・m以上となり、端子接続部の緩みを極めて効果的に防止できることが明らかとなった。
【0084】
上記試験の結果より、ターミナルボディに対する端子接続部の緩みをより一層確実に防止すべく、溝部の長さLを0.3mm以上とすることが好ましいといえる。
【0085】
また、端子接続部の緩み抑制効果をより一層高めるためには、溝部の長さLを1.0mm以上とすることがより好ましいといえる。
【0086】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0087】
(a)上記実施形態では、本発明の技術思想がプラグキャップ1において具現化されているが、端子接続部と、これを内周にて保持する樹脂製のボディ部とを有し、点火プラグに接続されるプラグ接続具であれば、本発明の技術思想を適用することができる。従って、例えば、端子接続部とボディ部とを自身の端部に有してなるプラグコードに対して、本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0088】
(b)上記実施形態において、溝部643は、凸部641の周方向と直交する方向に延びる形状とされているが、溝部の形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば、
図8(a)に示すように、溝部644が、凸部641の周方向と直交する方向に延びる溝と、凸部641の周方向に沿って延びる溝とを有するように構成してもよい。また、例えば、
図8(b)に示すように、溝部645が、凸部641の周方向に対して斜めに延びるように構成してもよい。また、
図8(c)に示すように、溝部646が、凸部641の周方向に対して斜めに延びる溝と、当該溝に対して交差する溝とを有するように構成してもよい(すなわち、溝部646をダイヤモンドパターン状としてもよい。)尚、凸部641の周方向に対して斜めに延びる溝部を設ける場合には、ターミナルボディ2に対する端子接続部64の緩みをより確実に防止すべく、凸部641の周方向に対して溝部が3°以上傾いていることが好ましい。
【0089】
(c)上記実施形態において、凸部641から凹部642にかけての外径や、凹部642からその一端側に位置する凹部642よりも大径の部位にかけての外径は、急激に変化するように構成されている。これに対して、
図9に示すように、凸部641から凹部642にかけての外径等が緩やかに変化するように構成してもよい。
【0090】
(d)上記実施形態では、凸部641の外周に溝部643が設けられているが、溝部643を設けることなく、凸部641の外周を平坦状に形成してもよい。
【0091】
(e)上記実施形態において、ターミナルボディ2は鋭角状に屈曲する形状とされているが、ターミナルボディ2の形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば、ターミナルボディを屈曲させることなく、ストレート状としてもよい。また、ターミナルボディを直角に屈曲させることとしてもよいし、鈍角状に屈曲させることとしてもよい。
【0092】
(f)上記実施形態における電気的接続部6の構成は例示であって、電気的接続部の構成はこれに限定されるものではない。従って、例えば、抵抗体62を設けることなく、電気的接続部を構成することとしてもよい。
【0093】
(g)上記実施形態では、ターミナルボディ2を形成する樹脂として不飽和ポリエステル樹脂が例示されているが、ターミナルボディ2を形成する樹脂はこれに限定されるものではない。従って、例えば、フェノール樹脂等を用いることとしてもよい。また、ターミナルボディ2を形成する樹脂としては、熱硬化性樹脂が好適に用いられるが、耐熱性に優れた樹脂であればよく、所定の耐熱性を有する熱可塑性樹脂(例えば、PPS樹脂等)を用いることも可能である。
【0094】
尚、ターミナルボディ2を形成する樹脂として不飽和ポリエステル樹脂を用いた場合には、端子接続部64の圧接に伴うターミナルボディ2におけるクラックの発生がより懸念されるが、本発明を採用することで、当該懸念を払拭することができる。換言すれば、本発明は、ターミナルボディ2を不飽和ポリエステル樹脂により形成する場合において、特に有効である。
【0095】
(h)上記実施形態では、プラグ側ゴム部材3やコード側ゴム部材4を形成するゴムとしてEPDMゴムやシリコーンゴムが例示されているが、プラグ側ゴム部材3等を形成するゴムはこれに限定されるものではない。従って、例えば、アクリルゴム等、内燃機関の発熱に対して十分な耐熱性を有するゴムを用いて、プラグ側ゴム部材3等を形成することとしてもよい。