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前記外側ミドル陸部の前記外側サイピングは、前記内側サイピングを滑らかに延長した仮想延長線上に設けられた第1外側サイピングと、タイヤ周方向で隣り合う前記第1外側サイピングの間に設けられた第2外側サイピングとを含む請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記内側ミドル陸部の前記サイピングは、一端が前記内側ショルダー主溝に連通しかつ他端が内側ミドル陸部で終端する外側サイピングと、一端が前記センター主溝に連通しかつ他端が内側ミドル陸部で終端する内側サイピングとを含む請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
前記内側ミドル陸部の前記外側サイピングは、前記内側サイピングを滑らかに延長した仮想延長線上に設けられた第1外側サイピングのみからなる請求項3に記載の空気入りタイヤ。
前記外側ショルダー陸部には、タイヤ軸方向の外端が前記車両外側の接地端に連通し、かつ、タイヤ軸方向の内端が前記外側ショルダー陸部内で終端する溝幅が2mm以上の複数本の外側ショルダーラグ溝が設けられ、しかも、前記外側ショルダーラグ溝と前記外側ショルダー主溝との間をつなぐ溝及びサイピングが設けられておらず、
前記内側ショルダー陸部には、タイヤ軸方向の外端が前記車両内側の接地端に連通し、かつ、タイヤ軸方向の内端が前記内側ショルダー陸部内で終端する溝幅が2mm以上の複数本の内側ショルダーラグ溝と、前記内側ショルダーラグ溝の前記内端と前記内側ショルダー主溝との間を継ぐ内側ショルダーサイピングとが設けられている請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記内側ショルダーラグ溝及び前記外側ショルダーラグ溝は、タイヤ軸方向にのびる外側部と、タイヤ軸方向に対して傾斜している内側部とを含む請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、トレッド部の中央側に設けられたミドル陸部のパターン剛性を改善することを基本として、操縦安定性と乗り心地性とをバランスよく向上させた空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、 車両への装着の向きが指定されたトレッドパターンを具えたトレッド部を有し、前記トレッド部に、最も車両内側に位置しタイヤ周方向に連続する内側ショルダー主溝と、最も車両外側に位置しタイヤ周方向に連続する外側ショルダー主溝と、前記内側ショルダー主溝と前記外側ショルダー主溝との間をタイヤ周方向に連続するセンター主溝が設けられることにより、前記外側ショルダー主溝と車両外側の接地端とで区分された外側ショルダー陸部、前記外側ショルダー主溝と前記センター主溝で区分された外側ミドル陸部、前記センター主溝と前記内側ショルダー主溝とで区分された内側ミドル陸部、及び、前記内側ショルダー主溝と車両内側の接地端とで区分された内側ショルダー陸部を具えた空気入りタイヤであって、前記内側ミドル陸部及び前記外側ミドル陸部は、それぞれ、溝幅が2mm以上の溝が設けられておらず、かつ、幅が2mm未満のサイピングのみが設けられたリブからなり、前記内側ミドル陸部のサイピングは、前記センター主溝と前記内側ショルダー主溝との間を継ぐフルオープンサイピングを含み、前記外側ミドル陸部の前記サイピングは、一端が前記外側ショルダー主溝に連通しかつ他端が前記外側ミドル陸部で終端する外側サイピング、及び、一端が前記センター主溝に連通しかつ他端が前記外側ミドル陸部で終端する内側サイピングのみからなり、しかも、前記内側サイピングの本数は、前記外側サイピングの本数よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
また請求項2記載の発明は、前記外側ミドル陸部の前記外側サイピングは、前記内側サイピングを滑らかに延長した仮想延長線上に設けられた第1外側サイピングと、タイヤ周方向で隣り合う前記第1外側サイピングの間に設けられた第2外側サイピングとを含む請求項1に記載の空気入りタイヤである。
【0011】
また請求項3記載の発明は、前記内側ミドル陸部の前記サイピングは、一端が前記内側ショルダー主溝に連通しかつ他端が内側ミドル陸部で終端する外側サイピングと、一端が前記センター主溝に連通しかつ他端が内側ミドル陸部で終端する内側サイピングとを含む請求項1又は2記載の空気入りタイヤである。
【0012】
また請求項4記載の発明は、前記内側ミドル陸部の前記外側サイピングは、前記内側サイピングを滑らかに延長した仮想延長線上に設けられた第1外側サイピングのみからなる請求項3に記載の空気入りタイヤである。
【0013】
また請求項5記載の発明は、前記フルオープンサイピングは、タイヤ周方向で隣り合う前記第1外側サイピングの間に設けられている請求項4記載の空気入りタイヤである。
【0014】
また請求項6記載の発明は、前記フルオープンサイピングは、タイヤ周方向で隣り合う前記第1外側サイピングのタイヤ周方向の中間位置に設けられている請求項5記載の空気入りタイヤである。
【0015】
また請求項7記載の発明は、前記内側ミドル陸部の各サイピングは、円弧状に湾曲し、前記各サイピングの曲率半径の中心は、前記各サイピングに対しタイヤ周方向の一方側に位置しており、前記外側ミドル陸部の各サイピングは、円弧状に湾曲し、前記各サイピングの曲率半径の中心は、前記各サイピングに対しタイヤ周方向の他方側に位置している請求項1乃至6のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0016】
また請求項8記載の発明は、前記外側ショルダー陸部には、タイヤ軸方向の外端が前記車両外側の接地端に連通し、かつ、タイヤ軸方向の内端が前記外側ショルダー陸部内で終端する溝幅が2mm以上の複数本の外側ショルダーラグ溝が設けられ、しかも、前記外側ショルダーラグ溝と前記外側ショルダー主溝との間をつなぐ溝及びサイピングが設けられておらず、前記内側ショルダー陸部には、タイヤ軸方向の外端が前記車両内側の接地端に連通し、かつ、タイヤ軸方向の内端が前記内側ショルダー陸部内で終端する溝幅が2mm以上の複数本の内側ショルダーラグ溝と、前記内側ショルダーラグ溝の前記内端と前記内側ショルダー主溝との間を継ぐ内側ショルダーサイピングとが設けられている請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0017】
また請求項9記載の発明は、前記内側ショルダーラグ溝及び前記外側ショルダーラグ溝は、タイヤ軸方向にのびる外側部と、タイヤ軸方向に対して傾斜している内側部とを含む請求項8に記載の空気入りタイヤである。
【0018】
また請求項10記載の発明は、前記内側ショルダーサイピングは、前記内側部と同じ方向に傾斜している請求項9に記載の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0019】
内側ミドル陸部及び外側ミドル陸部は、いずれも直進走行時、主として路面と接触する。各内側ミドル陸部及び外側ミドル陸部は、それぞれ、溝幅が2mm以上の溝が設けられておらず、かつ、幅が2mm未満のサイピングのみが設けられたリブからなる。従って、本発明の空気入りタイヤは、直進走行時に路面と接触する内側ミドル陸部及び外側ミドル陸部のパターン剛性が高められる。
【0020】
内側ミドル陸部には、フルオープンサイピングが設けられる。外側ミドル陸部には、一端が陸部内で終端するいわゆるセミオープンサイピングのみが設けられる。これにより、外側ミドル陸部のパターン剛性が、内側ミドル陸部のパターン剛性よりも相対的に高められる。旋回の初期では、接地面の重心が車両外側に移動するが、外側ミドル陸部側が高いパターン剛性を具えることにより、旋回時の初期応答性が向上する。また、各サイピングは、内側ミドル陸部及び外側ミドル陸部のパターン剛性を高めつつ、リブの変形を許容するので、乗り心地の悪化が防止される。
【0021】
さらに、外側ミドル陸部において、内側サイピングの本数は、外側サイピングの本数よりも小さい。即ち、外側ミドル陸部のタイヤ軸方向内側の剛性はタイヤ軸方向外側の剛性よりも高い。外側ミドル陸部のタイヤ軸方向内側の剛性を高めることで、直進走行時、ドライバーには、しっかりとした保舵力が与えられる。
【0022】
従って、本発明の空気入りタイヤは、操縦安定性と乗り心地性とがバランスよく向上する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に利用され、車両への装着の向きが指定された非対称のトレッドパターンを具える。車両への装着の向きは、例えばサイドウォール部(図示せず)に、文字等で表示される。
【0025】
タイヤのトレッド部2には、最も車両内側に位置しタイヤ周方向に連続する内側ショルダー主溝3、最も車両外側に位置しタイヤ周方向に連続する外側ショルダー主溝4、及び、内側ショルダー主溝3と外側ショルダー主溝4との間をタイヤ周方向に連続するセンター主溝5が設けられている。これにより、本実施形態のトレッド部2には、外側ショルダー主溝4と車両外側の接地端Teoとで区分された外側ショルダー陸部6、外側ショルダー主溝4とセンター主溝5で区分された外側ミドル陸部7、センター主溝5と内側ショルダー主溝3とで区分された内側ミドル陸部8、及び、内側ショルダー主溝3と車両内側の接地端Teiとで区分された内側ショルダー陸部9を具える。
【0026】
両側の「接地端」Tei、Teoは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた正規荷重負荷状態のときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。正規状態において、車両内側及び車両外側の接地端Tei、Teo間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。タイヤの各部の寸法等は、特に断りがない場合、正規状態での値である。
【0027】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0028】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0029】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用の場合には前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0030】
本実施形態の各主溝3乃至5は、例えば、タイヤ周方向に沿った直線状をなす。このような主溝3乃至5は、各陸部6乃至9のタイヤ周方向の剛性を高く確保しつつ、溝内の水をタイヤ回転方向の後方へスムーズに排出する。従って、操縦安定性やウエット路でのブレーキ性能が向上する。
【0031】
各主溝3乃至5の溝幅W1乃至W3については、操縦安定性やウエット路でのブレーキ性能をバランス良く高めるため、例えば、トレッド接地幅TWの2〜10%が望ましい。同様の観点より、主溝3乃至5の溝深さは、例えば、4.0〜8.5mmが望ましい。
【0032】
各陸部6乃至9のタイヤ軸方向の剛性をバランスよく確保する観点より、内側ショルダー主溝3とタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L1は、トレッド接地幅TWの15〜30%が望ましい。外側ショルダー主溝4とタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L2は、トレッド接地幅TWの15〜30%が望ましい。センター主溝5とタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L3は、トレッド接地幅TWの5%以内が望ましい。なお、各主溝3乃至5の各位置は、それらの溝中心線で特定される。
【0033】
図2には、
図1の内側ミドル陸部8の拡大図が示される。
図2に示されるように、内側ミドル陸部8は、サイピングのみが設けられており、かつ、溝が設けられていないリブとして形成される。このような内側ミドル陸部8は、高いパターン剛性を有する。直進走行時、内側ミドル陸部8は、主として路面と接触する。
【0034】
本明細書において、溝とは、溝幅が2mm以上のものとして定義される。また、サイピングとは、幅が2mm未満のものとして定義される。
【0035】
内側ミドル陸部8のサイピングは、センター主溝5と内側ショルダー主溝3との間を継ぐフルオープンサイピング10と、タイヤ軸方向の外側に配されている外側サイピング11と、タイヤ赤道C側に配されている内側サイピング12とを含む。
【0036】
外側サイピング11は、例えば、一端11iが内側ショルダー主溝3に連通しかつ他端11eが内側ミドル陸部8で終端するセミオープンサイピングである。内側サイピング12は、一端12iがセンター主溝5に連通しかつ他端12eが内側ミドル陸部8で終端するセミオープンサイピングである。このような外側サイピング11及び内側サイピング12が配された内側ミドル陸部8は、パターン剛性の低下が抑制される。
【0037】
外側サイピング11は、例えば、内側サイピング12を滑らかに延長した仮想延長線12a上に設けられた第1外側サイピング11Aのみからなる。外側サイピング11の他端11eは、内側サイピングの他端12eよりもタイヤ軸方向の外側に設けられる。これにより、内側ミドル陸部8のパターン剛性の低下がさらに抑制される。内側サイピング12を滑らかに延長した仮想延長線12aとは、内側サイピング12の中心線の両端及び中点の3点を通る単一円弧の延長線として定義される。また、外側サイピング11が仮想延長線12a上に設けられるとは、仮想延長線12aが、外側サイピング11の全長さに亘って外側サイピング11に配される態様の他、外側サイピング11と交差する態様でも良い。
【0038】
外側サイピング11の他端11eと内側サイピング12の他端12eとのタイヤ軸方向の距離L4は、例えば、内側ミドル陸部8のタイヤ軸方向幅Wmの0.20〜0.30倍であるのが望ましい。タイヤ軸方向の距離L4が大きくなる場合、内側ミドル陸部8の剛性が過度に高くなり、乗り心地性が悪化するおそれがある。
【0039】
フルオープンサイピング10は、タイヤ周方向で隣り合う第1外側サイピング11Aの間に、各1本設けられている。これにより、内側ミドル陸部8のパターン剛性の低下が抑制される。
【0040】
上述の作用を効果的に発揮させるため、本実施形態のフルオープンサイピング10は、タイヤ周方向で隣り合う第1外側サイピング11Aのタイヤ周方向の中間位置に設けられている。なお、「中間位置」とは、第1外側サイピング11Aの1ピッチP1の40〜60%の位置を言う。
【0041】
本実施形態のフルオープンサイピング10、外側サイピング11、及び、内側サイピング12は、それぞれ円弧状に湾曲している。このようなサイピングは、多方向の荷重を効果的に分散させるため、旋回時の内側ミドル陸部8の捩れを抑制し、操縦安定性を向上する。
【0042】
各サイピング10乃至12の曲率半径R1の中心(図示せず)は、各サイピング10乃至12に対しタイヤ周方向の一方側(
図2では上側)に位置している。これにより、各サイピング10乃至12は、全て同一の向きに凸となるので、内側ミドル陸部8の剛性がバランス良く確保される。
【0043】
各サイピング10乃至12の曲率半径R1は、好ましくは30〜100mmである。曲率半径R1が100mmを超える場合、多方向の荷重を効果的に分散させることができないおそれがある。曲率半径R1が30mm未満の場合、内側ミドル陸部8のパターン剛性が悪化するおそれがある。曲率半径R1は、より好ましくは40〜80mmである。なお、各サイピング10乃至12の曲率半径R1は、内側ミドル陸部8の剛性を高めるため、同一であるのが望ましい。
【0044】
フルオープンサイピング10、外側サイピング11、及び、内側サイピング12のタイヤ軸方向に対する角度θ1は夫々、タイヤ軸方向外側に向かって漸減する。このため、旋回時、相対的に大きな横力が作用する内側ミドル陸部8のタイヤ軸方向外側のパターン剛性が高められる。また、直進走行時、相対的に大きな縦力が作用する内側ミドル陸部8のタイヤ軸方向内側のパターン剛性が高められる。
【0045】
上述の作用を効果的に発揮させるため、内側ミドル陸部8のサイピング10乃至12は、センター主溝5との連通位置13aでの角度θ1aが30〜60°が望ましく、内側ショルダー主溝3との連通位置13bでの角度θ2bが5〜25°が望ましい。
【0046】
内側ミドル陸部8の剛性を十分に確保するため、各サイピング10乃至12は、平行に配されるのが望ましい。
【0047】
上述の作用を効果的に発揮させるため、内側ミドル陸部8に設けられる各サイピング10乃至12の幅W4は、好ましくは0.2〜1.5mmである。内側ミドル陸部8に設けられる各サイピング10乃至12の深さ(図示せず)は、好ましくはセンター主溝5の溝深さの25〜90%である。
【0048】
図3には、外側ミドル陸部7の部分拡大図が示される。
図3に示されるように、外側ミドル陸部7は、サイピングのみが設けられ、かつ、溝が設けられていないリブとして形成される。このような外側ミドル陸部7は、高いパターン剛性を有する。直進走行時、外側ミドル陸部7は、主として路面と接触する。
【0049】
外側ミドル陸部7のサイピングは、タイヤ軸方向の外側に配されている外側サイピング15と、タイヤ赤道C側に配されている内側サイピング16のみからなる。
【0050】
内側サイピング16の本数は、外側サイピング15の本数よりも小さい。このため、外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向内側の剛性はタイヤ軸方向外側の剛性よりも高い。リブとして形成される外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向内側を外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向外側の剛性よりも高めることで、直進走行時、ドライバーには、しっかりとした保舵力が与えられる。
【0051】
外側ミドル陸部7の外側サイピング15は、一端15iが外側ショルダー主溝4に連通しかつ他端15eが外側ミドル陸部7で終端するセミオープンサイピングである。外側ミドル陸部7の内側サイピング16は、一端16iがセンター主溝5に連通しかつ他端16eが外側ミドル陸部7で終端するセミオープンサイピングである。外側ミドル陸部7は、フルオープンサイピング10が設けられた内側ミドル陸部8よりも相対的に高いパターン剛性を有する。これにより、旋回の初期において、接地面の重心がパターン剛性の高い車両外側へスムーズに移動するため、旋回時の初期応答性が向上する。
【0052】
本実施形態の外側サイピング15は、複数本の第1外側サイピング17と、複数本の第2外側サイピング18とを含む。本実施形態では、第1外側サイピング17と第2外側サイピング18とが、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0053】
第1外側サイピング17は、内側サイピング16を滑らかに延長した仮想延長線16a上に設けられている。第1外側サイピング17のタイヤ軸方向の内端17eは、内側サイピング16の他端16eよりもタイヤ軸方向の外側に設けられている。これにより、外側ミドル陸部7のパターン剛性の低下が抑制される。仮想延長線16aは、内側ミドル陸部8の内側サイピング12の仮想延長線12aと同様に定義される。
【0054】
第1外側サイピング17の内端17eと内側サイピング16の他端16eとのタイヤ軸方向の距離L5は、外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向幅Wnの0.20〜0.30倍であるのが望ましい。タイヤ軸方向の距離L5が大きくなる場合、外側ミドル陸部7の剛性が過度に高くなり、乗り心地性が悪化するおそれがある。
【0055】
第2外側サイピング18のタイヤ軸方向の長さL6は、好ましくは外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向幅Wnの0.40〜0.60倍である。これにより、外側ミドル陸部7のパターン剛性を効果的に高めることができ、操縦安定性と乗り心地性やノイズ性能とがバランス良く向上する。
【0056】
第2外側サイピング18は、タイヤ周方向で隣り合う第1外側サイピング17、17の間、好ましくはタイヤ周方向の中間位置に設けられる。これにより、外側ミドル陸部7のパターン剛性の低下が抑制される。「中間位置」とは、第1外側サイピング17の1ピッチP2の40〜60%の範囲とされる。
【0057】
本実施形態の第1外側サイピング17及び第2外側サイピング18は、外側ミドル陸部7のパターン剛性を高く確保するため、平行に配されている。
【0058】
外側ミドル陸部7の各サイピング15、16は、円弧状に湾曲している。このようなサイピングは、多方向の荷重を分散させるため、旋回時の外側ミドル陸部7の捩れを抑制する。
【0059】
各サイピング15、16の曲率半径R2の中心(図示せず)は、各サイピング15、16に対しタイヤ周方向の他方側(
図2では下側)に位置している。このように、各サイピング15、16は、全て同一の向きに凸となるので、外側ミドル陸部7の剛性がバランス良く確保される。
【0060】
各サイピング15、16の曲率半径R2は、内側ミドル陸部8の各サイピング10乃至12の曲率半径R1と同様、好ましくは30〜100mm、より好ましくは40〜80mmである。
【0061】
外側ミドル陸部7の各サイピング15、16のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、夫々、車両外側に向かって漸減している。これにより、旋回時、相対的に大きな横力が作用する外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向外側の剛性が高められる。また、直進走行時、相対的に大きな周方向力が作用する外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向内側の剛性が高められる。従って、外側ミドル陸部7のパターン剛性が高く確保される。
【0062】
上述の作用をより効果的に発揮させるため、内側サイピング16の一端16iでの角度θ2aは、30〜60°が望ましい。外側サイピング15の一端15iでの角度θ2bは5〜25°が望ましい。
【0063】
上述の作用をさらに効果的に発揮させるため、外側ミドル陸部7に設けられる各サイピング15、16の幅W5は、好ましくは0.2〜1.5mmである。同様の観点より、外側ミドル陸部7に設けられる各サイピング15、16の深さ(図示せず)は、好ましくはセンター主溝5の溝深さの25〜90%である。
【0064】
図4には、内側ショルダー陸部9の部分拡大図が示される。
図4に示されるように、内側ショルダー陸部9には、内側ショルダー陸部9内で終端する内側ショルダーラグ溝19と、サイピングのみが設けられている。これにより、内側ショルダー陸部9は、高いパターン剛性を有するリブとして形成される。
【0065】
内側ショルダーラグ溝19は、タイヤ軸方向の外端19eが車両内側の接地端Teiに連通し、かつ、タイヤ軸方向の内端19iが内側ショルダー陸部9内で終端している。このような内側ショルダーラグ溝19は、ウエット路でのブレーキ性能を向上させる。
【0066】
内側ショルダー陸部9には、内側ショルダー陸部9の踏面と内側ショルダーラグ溝19の溝壁とを面取りする面取り部19dが設けられている。内側ショルダーラグ溝19の溝壁には、該溝壁と面取り部19dとが交差する内エッジ19fが設けられている。
【0067】
内側ショルダーラグ溝19は、タイヤ軸方向にのびる外側部19aと、タイヤ軸方向に対して傾斜している内側部19bとを含む。このような外側部19aは、旋回時の横力を利用して、溝内の水をスムーズに車両内側の接地端Teiに排出する。内側部19bは、タイヤ周方向成分によって、タイヤの回転力により溝内の水を接地端Tei側に排出する。このため、ウエット路でのブレーキ性能がさらに向上する。
【0068】
本実施形態では、外側部19aと内側部19bとが滑らかに接続されている。従って、内側ショルダーラグ溝19部分の内側ショルダー陸部9の過度の剛性低下が抑制される。
【0069】
内側部19bのタイヤ軸方向に対する角度θ3が大きい場合、外側ショルダー陸部6の剛性が過度に小さくなり、操縦安定性が悪化するおそれがある。このような観点より、内側部19bの角度θ3は、0°を超えかつ、好ましくは40°以下である。角度θ3は、内側ショルダーラグ溝19のタイヤ周方向長さの中間点をタイヤ軸方向に連続して形成される溝中心線19cの角度である。
【0070】
サイピングは、内側ショルダーラグ溝19の内端19iと内側ショルダー主溝3との間を継いでいる内側ショルダーサイピング20と、内側ショルダー陸部9内で終端するクローズドサイピング21とを含む。
【0071】
内側ショルダーサイピング20は、内側部19bと同じ方向に傾斜している。これにより、内側ショルダーラグ溝19の内端19i近傍の内側ショルダー陸部9のパターン剛性の過度の低下が抑制される。このような観点より、本実施形態では、内側ショルダーラグ溝19の内エッジ19fと内側ショルダーサイピング20の一方側(
図3では下側)の端縁とが滑らかに接続されている。
【0072】
クローズドサイピング21は、タイヤ周方向に隣り合う内側ショルダーラグ溝19、19間に、各1本設けられている。クローズドサイピング21は、内側ショルダー陸部9のパターン剛性を過度に低下させることなく、内側ショルダー陸部9の変形をさらに容易にする。従って、操縦安定性と乗り心地性とが、さらに、バランスよく向上する。
【0073】
操縦安定性と乗り心地性とをさらにバランスよく向上させるため、内側ショルダーラグ溝19の溝幅W6(タイヤ周方向の最大幅)は、好ましくは内側ショルダーラグ溝19の1ピッチP3の5〜20%である。内側ショルダー陸部9のサイピング20、21の幅W7は、好ましくは0.2〜1.5mmである。同様に、内側ショルダーラグ溝19の溝深さ(図示せず)は、好ましくは4.0〜8.5mmである。内側ショルダー陸部9のサイピング20、21の深さは、好ましくは内側ショルダー主溝3の溝深さの25〜90%である。さらに、内側ショルダーラグ溝19のタイヤ軸方向の長さL7は、好ましくは内側ショルダー陸部9のタイヤ軸方向幅Wsの50〜80%である。
【0074】
図1に示されるように、外側ショルダー陸部6には、外側ショルダー陸部6内で終端しタイヤ周方向に隔設される外側ショルダーラグ溝23と、両端が外側ショルダー陸部6内で終端するクローズドサイピング24とが設けられている。外側ショルダー陸部6には、外側ショルダーラグ溝23と外側ショルダー主溝4との間をつなぐ溝及びサイピングが設けられていない。これにより、外側ショルダー陸部6のパターン剛性が、内側ショルダー陸部9のパターン剛性よりも高められ、旋回時の初期応答性がさらに向上する。
【0075】
外側ショルダーラグ溝23は、タイヤ軸方向の外端23eが車両外側の接地端Teoに連通し、かつ、タイヤ軸方向の内端23iが外側ショルダー陸部6内で終端する。
【0076】
外側ショルダーラグ溝23は、タイヤ軸方向にのびる外側部23aと、タイヤ軸方向に対して傾斜している内側部23bとを含む。
【0077】
クローズドサイピング24は、タイヤ周方向に隣り合う外側ショルダーラグ溝23、23間に設けられている。
【0078】
操縦安定性と乗り心地性とをバランスよく向上させるため、本実施形態の外側ショルダー陸部6は、内側ショルダー陸部9の内側ショルダーサイピング20を除き、タイヤ赤道C上の任意の点を中心とした内側ショルダー陸部9の点対称パターンとされている。
【0079】
外側ショルダーラグ溝23の溝幅W8(タイヤ周方向の最大幅)は、好ましくは外側ショルダーラグ溝23の1ピッチP4の5〜20%である。外側ショルダー陸部6のクローズドサイピング24の幅W9は、好ましくは0.2〜1.5mmである。同様に、外側ショルダーラグ溝23の溝深さ(図示せず)は、好ましくは4.0〜8.5mmである。外側ショルダー陸部6のクローズドサイピング24の深さは、好ましくは外側ショルダー主溝4の溝深さの25〜90%である。さらに、内側ショルダーラグ溝19のタイヤ軸方向の長さL8は、好ましくは外側ショルダー陸部6のタイヤ軸方向幅Wtの50〜80%である。
【0080】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0081】
本発明の効果を確認するために、
図1の基本パターンを有し、表1の仕様に基づいた175/65R14の空気入りタイヤがテストされた。各タイヤの主な共通仕様やテスト方法は以下の通りである。
トレッド接地幅TW:123mm
センター主溝の溝深さ:7.5mm
ショルダー主溝の溝深さ:7.5mm
各ショルダーラグ溝の溝深さ:5.8mm
各ショルダーラグ溝の溝幅:3.5mm
内側ミドル陸部及び外側ミドル陸部の各サイピングの深さ:3.5mm
各クローズドサイピングの深さ:3.5mm
各クローズドサイピングの幅:0.6mm
【0082】
<操縦安定性・乗り心地性>
各テストタイヤが、下記の条件で、排気量1200ccの乗用車の全輪に装着された。そして、5名のテストドライバーが、ドライアスファルトのテストコースを走行させ、このときの初期応答性及び保舵力等による操縦安定性、並びに、剛性感による乗り心地性に関する走行特性がドライバーの官能により評価された。結果は、実施例1を100とする評点の平均で表示されている。数値が大きいほど良好である。
リム:14×5.0J
内圧:230kPa(前輪)
内圧:200kPa(後輪)
荷重:9.0kN
【0083】
<ウエットブレーキ性能>
テストドライバーが、上記テスト車両を、水深5mmのウエットアスファルト路面のテストコースを走行させ、速度100km/hから急ブレーキを作動し、停止するまでの制動距離が計測された。結果は、制動距離の逆数であり、実施例1の値を100とする指数で表示されている。数値が大きいほど良好である。
【0084】
<ノイズ性能>
テストドライバーが、上記テスト車両を、JASO/C/606に規定する実車惰行試験に準拠して、直線状のアスファルト路面のテストコースを通過速度80km/hで50mの距離を惰行走行させた。そして、惰行走行時のコースの中間位置において、走行中心線から側方に7.5m、かつ路面から1.2mの位置に設置したリオン社製精密騒音計NL−15の定置マイクロフォンにより通過騒音の最大レベルdB(A)が測定された。結果は、測定値である。数値が小さいほど良好である。
テストの結果が表1に示される。
【0085】
【表1】
【0086】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて操縦安定性、乗り心地性、ウエットブレーキ性能及びノイズ性能が有意に向上していることが確認できた。また、内側ミドル陸部及び外側ミドル陸部のサイピングの幅を、0.2mm及び1.5mmの例についてもテストしたが、表1と同じ結果であった。