特許第5715660号(P5715660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5715660光サンプリング装置および光サンプリング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715660
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】光サンプリング装置および光サンプリング方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 11/00 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   G01J11/00
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-110530(P2013-110530)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-228504(P2014-228504A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079337
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 誠志
(72)【発明者】
【氏名】森 隆
【審査官】 喜々津 徳胤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−141335(JP,A)
【文献】 特開2011−021957(JP,A)
【文献】 特開2010−190693(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/111223(WO,A1)
【文献】 特開2001−189699(JP,A)
【文献】 特開平09−243972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J11/00
G01R13/34
H04B10/00−10/90
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング用光パルス(Ps(i))を所定周期で出射する光パルス発生部(21)と、
相互吸収飽和特性を有する電界吸収型光変調器(23)と、
被測定光信号(Px)および前記サンプリング用光パルスを前記電界吸収型光変調器の光導波路に入射させて、前記被測定光信号に対するサンプリングを行なわせ、該サンプリングで得られたサンプル光(Px(i))を出射させる入出射インタフェース部(24)と、
前記入出射インタフェース部から出射された前記サンプル光の強度を検出するサンプル光強度検出部(30、40)とを備えた光サンプリング装置において、
前記光パルス発生部は、前記サンプリング用光パルスの強度を可変制御できるように構成され、
前記入出射インタフェース部は、前記サンプリング用光パルスのうち、前記電界吸収型光変調器を通過した成分である通過光パルス(Ps(i)′)を前記サンプル光と区別して出射するように構成され、
さらに、
前記通過光パルスの強度を検出する通過光パルス強度検出部(31、40)と、
前記光パルス発生部を制御して前記サンプリング用光パルスの強度を可変して、前記通過光パルス強度検出部で検出される強度を測定する入出力特性測定手段(32)と、
前記入出力特性測定手段の測定結果から、前記通過光パルス強度検出部で検出される強度が増加し始める前記サンプリング用光パルスの強度のしきい値を求めるしきい値算出手段(33)と、
前記しきい値算出手段で求めたしきい値に基づいて、前記被測定光信号のサンプリングに用いる前記サンプリング用光パルスの強度を設定する光パルス強度設定手段(34)とを設けたことを特徴とする光サンプリング装置。
【請求項2】
前記入出力特性測定手段の測定結果から、前記サンプリング用光パルスの強度の変化に対する前記通過光パルス強度検出部で検出される強度の変化の傾きを求める傾き算出手段(35)と、
前記傾き算出手段で求めた傾きに基づいて、前記被測定光信号、前記サンプル光、前記サンプル光強度検出部で検出される信号の少なくとも一つに対する振幅補正処理を行なう振幅補正手段(36)とを設けたことを特徴とする請求項1記載の光サンプリング装置。
【請求項3】
前記入出射インタフェース部は、
前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側に接続された第1の光合分波部(25)と前記光導波路の他端側に接続された第2の光合分波部(26)とを含み、
前記被測定光信号を前記第1の光合分波部を介して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から入射させ、前記サンプリング用光パルスを前記第2の光合分波部を介して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の他端側から入射させるとともに、
前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の他端側から出射される前記サンプル光を前記第2の光合分波部を介して出射させ、前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から出射される前記通過光パルスを前記第1の光合分波部を介して出射させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光サンプリング装置。
【請求項4】
前記入出射インタフェース部の前記第1の光合分波部は、
前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から出射される前記通過光パルスを前記第1の光合分波部から出射する状態と、前記被測定光信号を前記第1の光合分波部を介して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側へ入射する状態とを切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の光サンプリング装置。
【請求項5】
前記サンプリング用光パルスの波長が前記被測定光信号の波長と異なっており、
前記入出射インタフェース部の前記第1の光合分波部は、
前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から前記通過光パルス強度検出部側へ光を出射する方向の透過率が、前記通過光パルスの波長より前記被測定光信号の波長の方が低く設定され、且つ前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から前記被測定光信号の入射端側に光を出射する方向の透過率が、前記被測定光信号の波長より前記通過光パルスの波長の方が低く設定された波長選択性を有していることを特徴する請求項3記載の光サンプリング装置。
【請求項6】
前記入出射インタフェース部は、
前記第1の光合分波部から出射される前記通過光パルスと、前記第2の光合分波部から出射される前記サンプル光とを切り替えて共通光路から出射するように構成され、
前記入出射インタフェース部の前記共通光路から出射される光を共通の受光器(41)で受け、前記通過光パルスの強度と前記サンプル光の強度とを切り替えて検出するように
構成されていることを特徴する請求項3〜5のいずれかに記載の光サンプリング装置。
【請求項7】
前記サンプリング用光パルスの波長が前記被測定光信号の波長と異なっており、
前記入出射インタフェース部は、
前記被測定光信号と前記サンプリング用光パルスとを光合波部(28)で合波して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から入射させ、該光導波路の他端側から出射される光を光分波部(29)で受けて、前記サンプル光の波長を含む波長成分と前記通過光パルスの波長を含む波長成分を分離することを特徴とする請求項1または請求項2記載の光サンプリング装置。
【請求項8】
前記サンプリング用光パルスの波長が前記被測定光信号の波長と異なっており、
前記入出射インタフェース部は、
前記被測定光信号と前記サンプリング用光パルスとを光合波部(28)で合波して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から入射させ、該光導波路の他端側から出射される光のうち前記通過光パルスの波長を含む波長成分と前記サンプル光の波長を含む波長成分とを切り替えて共通光路から出射するように構成され、
前記入出射インタフェース部の前記共通光路から出射される光を共通の受光器(41)で受け、前記通過光パルスの強度と前記サンプル光の強度とを切り替えて検出するように
構成されていることを特徴する請求項1または請求項2記載の光サンプリング装置。
【請求項9】
前記入出射インタフェース部は、前記サンプル光と前記通過光パルスとをそれぞれ異なる光路から出射させ、
該入出射インタフェース部から異なる光路でそれぞれ出射される前記サンプル光と前記通過光パルスとを、前記サンプル光強度検出部と前記通過光パルス強度検出部がそれぞれ独立した受光器(30a、31a)で受光してそれぞれの強度を検出することを特徴とする請求項1〜5、7のいずれかに記載の光サンプリング装置。
【請求項10】
前記入出射インタフェース部は、前記サンプル光と前記通過光パルスとが互いに時間軸上で重複しないように所定の時間差を付与して共通光路から出射するように構成され、
前記サンプル光強度検出部および前記通過光パルス強度検出部は、
前記入出射インタフェース部の前記共通光路から出射される光を共通の受光器(41)で受け、該受光器の出力信号から前記サンプル光に対応する信号成分と前記通過光パルスに対応する信号成分とを前記時間差に基づいて識別してそれぞれの強度を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3、5、7のいずれかに記載の光サンプリング装置。
【請求項11】
被測定光信号(Px)およびサンプリング用光パルスを電界吸収型光変調器(23)に入射させて、前記電界吸収型光変調器の相互吸収飽和により前記被測定光信号のサンプリングを行なわせ、該サンプリングで得られたサンプル光(Px(i))を電界吸収型光変調器から出射させ、該サンプル光の強度を検出する光サンプリング方法において、
前記サンプリング用光パルスの強度を可変して、該サンプリング用光パルスのうち、前記電界吸収型光変調器を通過した成分である通過光パルスの強度を測定する段階と、
前記測定結果から、前記通過光パルスの強度が増加し始めるサンプリング用光パルスの強度のしきい値を求める段階と、
前記求めたしきい値に基づいて、前記被測定光信号のサンプリングに用いる前記サンプリング用光パルスの強度を設定する段階とを含むことを特徴とする光サンプリング方法。
【請求項12】
前記測定結果から、前記サンプリング用光パルスの強度の変化に対する通過光パルス強度の変化の傾きを求める段階と、
前記求めた傾きに基づいて、前記被測定光信号、前記サンプル光、該サンプル光の強度検出結果の少なくとも一つに対する振幅補正処理を行なう段階と含むことを特徴する請求項11記載の光サンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界吸収型光変調器に被測定光信号とサンプリング用光パルスを入射して、被測定光信号のサンプリングを行なう技術に関し、特に、電界吸収型光変調器内の光結合損失の変化やサンプリング用光パルスに対する吸収飽和特性の変化による測定再現性の低下を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電界吸収型光変調器(EA変調器)の相互吸収飽和特性を用いて光信号のサンプリングを行なう技術が従来より種々提案されている。
【0003】
電界吸収型光変調器の相互吸収飽和特性とは、電界吸収型光変調器の光導波路に入射する光の強度によって光導波路中の光の吸収が変化し、光導波路に入射された別の光の透過率が変化する現象である。通常は光の強度が増加すると吸収が低下し、ピークパワーの大きな光パルスを入射することによって透過率が大きく変化し、光ゲートスイッチとして動作させることができる。
【0004】
この電界吸収型光変調器の電極に逆バイアス電圧を予め印加して光がほとんど透過しない状態(オフ状態)としておき、所定強度のサンプリング用光パルスを電界吸収型光変調器の光導波路に入射すると、サンプリング用光パルスが入射された時に光導波路は光が透過する状態(オン状態)となるので、別途電界吸収型光変調器の光導波路に入射された被測定光信号をサンプリングすることができる。
【0005】
図23の(a)、(b)は、電界吸収型光変調器を用いた光サンプリング装置の構成例である。
【0006】
図23の(a)は、入射する被測定光信号Pxの波長λxに対して、光パルス発生部11から一定周期Tsで出射されるサンプリング用光パルスPs(i)の波長λsが異なっている場合に用いられる構成であり、サンプリング用光パルスPs(i)と被測定光信号Pxとを光合波部12で合波して電界吸収型光変調器13の一端側に入力する。
【0007】
電界吸収型光変調器13は、前記した相互吸収飽和特性により被測定光信号Pxに対して光サンプリングゲートとして動作し、サンプリング用光パルスPs(i)が所定強度以上で入射された時に被測定光信号を通過させる。以下、このサンプリングされた被測定光信号Pxをサンプル光Px(i)という。また、サンプリング用光パルスPs(i)のうちの一部も電界吸収型光変調器13を通過して他端側から出射する。以下、サンプリング用光パルスPs(i)のうち電界吸収型光変調器13を通過した成分を通過光パルスPs(i)′という。
【0008】
この電界吸収型光変調器13の他端から出射された光は波長フィルタ14に入射され、サンプル光Px(i)の波長成分(λx)だけが抽出されて受光器15に入射され、その強度に対応した大きさの電気信号Ex(i)に変換される。
【0009】
一方、図23の(b)の構成は、被測定光信号Pxとサンプリング用光パルスPs(i)の波長が同一でも異なっていても対応できる構成であり、被測定光信号Pxを電界吸収型光変調器13の一端に入射し、サンプリング用光パルスPs(i)を、方向性結合型の光合分波部17を介して電界吸収型光変調器13の他端に入射している。
【0010】
この構成の場合でも、電界吸収型光変調器13は、サンプリング用光パルスPs(i)が所定強度以上で入射された時にオン状態となり、サンプル光Px(i)を他端側から出射する。ただし、サンプリング用光パルスPs(i)の成分は電界吸収型光変調器13に対する入射方向の違いにより他端側に出射さないので、そのサンプル光Px(i)を光合分波部17を介して受光器15に入射して、電気信号Ex(i)に変換する。
【0011】
ここで、被測定光信号Pxの波形の繰り返し周期Txに対してサンプリング周期Tsを十分短くでき、且つ受光器15およびそれに続く回路の応答速度がそのサンプリング周期Tsに対応していればよいが、実際にはそのような高速なサンプリングを行なうことは極めて困難である。このため、被測定光信号Pxの波形の繰り返し周期Txの整数倍(N・Tx)に対して所定時間差Δtをもつサンプリング周期Tsでサンプリングを行うことで、実質的にΔtの時間間隔のサンプリング値を得る等価サンプリング方式が用いられる。
【0012】
即ち、図24の(a)のような一定周期で同じ波形が繰り返される被測定光信号Pxに対し、図24の(b)のように、被測定光信号Pxの波形の繰り返し周期の整数倍に対してして時間差Δtをもつ周期のサンプリング用光パルスPs(i)を与えることで得られるサンプル光Px(i)のエンベロープは、図24の(c)の破線で示すように、被測定光信号Pxの時間軸が拡大された波形となり、低速の受光器でエンベロープ波形を測定することが出来る。これにより被測定光信号の波形を測定することが出来る。
【0013】
なお、上記のように、電界吸収型光変調器を用いて光信号を等価サンプリング方式でサンプリングする技術は、次の特許文献1、2等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開WO2008/087809
【特許文献2】国際公開WO2008/146684
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように電界吸収型光変調器を用いて光信号をサンプリングするものにおいて、電界吸収型光変調器に入射するサンプリング用光パルスの強度が変化すると、電界吸収型光変調器のゲートが開いた時の光透過率およびゲートの時間幅が変化する。
【0016】
また、たとえ、光パルス発生器の出力端や電界吸収型光変調器の入力端でサンプリング用光パルスの強度を一定に保った場合でも、温度変化や経時変化によって電界吸収型光変調器内の光結合損失が変化したり、サンプリング用光パルスによる吸収飽和特性が変化すると、ゲート開時の光透過率およびゲートの時間幅が変化する。
【0017】
これらの要因による光透過率や時間幅の変化により、測定波形の振幅や時間分解能が変化し、高速の被測定光信号を再現性よくサンプリングすることが出来なくなるという問題があった。
【0018】
本発明は、この問題を解決して、サンプリング用光パルスの強度変化、電界吸収型光変調器内の光結合損失変化や吸収飽和特性変化があっても、高速の被測定光信号を再現性よく測定することができる光サンプリング装置および光サンプリング方法を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の光サンプリング装置は、
サンプリング用光パルス(Ps(i))を所定周期で出射する光パルス発生部(21)と、
相互吸収飽和特性を有する電界吸収型光変調器(23)と、
被測定光信号(Px)および前記サンプリング用光パルスを前記電界吸収型光変調器の光導波路に入射させて、前記被測定光信号に対するサンプリングを行なわせ、該サンプリングで得られたサンプル光(Px(i))を出射させる入出射インタフェース部(24)と、
前記入出射インタフェース部から出射された前記サンプル光の強度を検出するサンプル光強度検出部(30、40)とを備えた光サンプリング装置において、
前記光パルス発生部は、前記サンプリング用光パルスの強度を可変制御できるように構成され、
前記入出射インタフェース部は、前記サンプリング用光パルスのうち、前記電界吸収型光変調器を通過した成分である通過光パルス(Ps(i)′)を前記サンプル光と区別して出射するように構成され、
さらに、
前記通過光パルスの強度を検出する通過光パルス強度検出部(31、40)と、
前記光パルス発生部を制御して前記サンプリング用光パルスの強度を可変して、前記通過光パルス強度検出部で検出される強度を測定する入出力特性測定手段(32)と、
前記入出力特性測定手段の測定結果から、前記通過光パルス強度検出部で検出される強度が増加し始める前記サンプリング用光パルスの強度のしきい値を求めるしきい値算出手段(33)と、
前記しきい値算出手段で求めたしきい値に基づいて、前記被測定光信号のサンプリングに用いる前記サンプリング用光パルスの強度を設定する光パルス強度設定手段(34)とを設けたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項2の光サンプリング装置は、請求項1記載の光サンプリング装置において、
前記入出力特性測定手段の測定結果から、前記サンプリング用光パルスの強度の変化に対する前記通過光パルス強度検出部で検出される強度の変化の傾きを求める傾き算出手段(35)と、
前記傾き算出手段で求めた傾きに基づいて、前記被測定光信号、前記サンプル光、前記サンプル光強度検出部で検出される信号の少なくとも一つに対する振幅補正処理を行なう振幅補正手段(36)とを設けたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項3の光サンプリング装置は、請求項1または請求項2記載の光サンプリング装置において、
前記入出射インタフェース部は、
前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側に接続された第1の光合分波部(25)と前記光導波路の他端側に接続された第2の光合分波部(26)とを含み、
前記被測定光信号を前記第1の光合分波部を介して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から入射させ、前記サンプリング用光パルスを前記第2の光合分波部を介して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の他端側から入射させるとともに、
前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の他端側から出射される前記サンプル光を前記第2の光合分波部を介して出射させ、前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から出射される前記通過光パルスを前記第1の光合分波部を介して出射させることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項4の光サンプリング装置は、請求項3記載の光サンプリング装置において、
前記入出射インタフェース部の前記第1の光合分波部は、
前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から出射される前記通過光パルスを前記第1の光合分波部から出射する状態と、前記被測定光信号を前記第1の光合分波部を介して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側へ入射する状態とを切り替えるように構成されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項5の光サンプリング装置は、請求項3記載の光サンプリング装置において、
前記サンプリング用光パルスの波長が前記被測定光信号の波長と異なっており、
前記入出射インタフェース部の前記第1の光合分波部は、
前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から前記通過光パルス強度検出部側へ光を出射する方向の透過率が、前記通過光パルスの波長より前記被測定光信号の波長の方が低く設定され、且つ前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から前記被測定光信号の入射端側に光を出射する方向の透過率が、前記被測定光信号の波長より前記通過光パルスの波長の方が低く設定された波長選択性を有していることを特徴する。
【0024】
また、本発明の請求項6の光サンプリング装置は、請求項3〜5のいずれかに記載の光サンプリング装置において、
前記入出射インタフェース部は、
前記第1の光合分波部から出射される前記通過光パルスと、前記第2の光合分波部から出射される前記サンプル光とを切り替えて共通光路から出射するように構成され、
前記入出射インタフェース部の前記共通光路から出射される光を共通の受光器(41)で受け、前記通過光パルスの強度と前記サンプル光の強度とを切り替えて検出するように
構成されていることを特徴する。
【0025】
また、本発明の請求項7の光サンプリング装置は、請求項1または請求項2記載の光サンプリング装置において、
前記サンプリング用光パルスの波長が前記被測定光信号の波長と異なっており、
前記入出射インタフェース部は、
前記被測定光信号と前記サンプリング用光パルスとを光合波部(28)で合波して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から入射させ、該光導波路の他端側から出射される光を光分波部(29)で受けて、前記サンプル光の波長を含む波長成分と前記通過光パルスの波長を含む波長成分を分離することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項8の光サンプリング装置は、請求項1または請求項2記載の光サンプリング装置において、
前記サンプリング用光パルスの波長が前記被測定光信号の波長と異なっており、
前記入出射インタフェース部は、
前記被測定光信号と前記サンプリング用光パルスとを光合波部(28)で合波して前記電界吸収型光変調器の前記光導波路の一端側から入射させ、該光導波路の他端側から出射される光のうち前記通過光パルスの波長を含む波長成分と前記サンプル光の波長を含む波長成分とを切り替えて共通光路から出射するように構成され、
前記入出射インタフェース部の前記共通光路から出射される光を共通の受光器(41)で受け、前記通過光パルスの強度と前記サンプル光の強度とを切り替えて検出するように
構成されていることを特徴する。
【0027】
また、本発明の請求項9の光サンプリング装置は、請求項1〜5、7のいずれかに記載の光サンプリング装置において、
前記入出射インタフェース部は、前記サンプル光と前記通過光パルスとをそれぞれ異なる光路から出射させ、
該入出射インタフェース部から異なる光路でそれぞれ出射される前記サンプル光と前記通過光パルスとを、前記サンプル光強度検出部と前記通過光パルス強度検出部がそれぞれ独立した受光器(30a、31a)で受光してそれぞれの強度を検出することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項10の光サンプリング装置は、請求項1〜3、5、7のいずれかに記載の光サンプリング装置において、
前記入出射インタフェース部は、前記サンプル光と前記通過光パルスとが互いに時間軸上で重複しないように所定の時間差を付与して共通光路から出射するように構成され、
前記サンプル光強度検出部および前記通過光パルス強度検出部は、
前記入出射インタフェース部の前記共通光路から出射される光を共通の受光器(41)で受け、該受光器の出力信号から前記サンプル光に対応する信号成分と前記通過光パルスに対応する信号成分とを前記時間差に基づいて識別してそれぞれの強度を検出するように構成されていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項11の光サンプリング方法は、
被測定光信号(Px)およびサンプリング用光パルスを電界吸収型光変調器(23)に入射させて、前記電界吸収型光変調器の相互吸収飽和により前記被測定光信号のサンプリングを行なわせ、該サンプリングで得られたサンプル光(Px(i))を電界吸収型光変調器から出射させ、該サンプル光の強度を検出する光サンプリング方法において、
前記サンプリング用光パルスの強度を可変して、該サンプリング用光パルスのうち、前記電界吸収型光変調器を通過した成分である通過光パルスの強度を測定する段階と、
前記測定結果から、前記通過光パルスの強度が増加し始めるサンプリング用光パルスの強度のしきい値を求める段階と、
前記求めたしきい値に基づいて、前記被測定光信号のサンプリングに用いる前記サンプリング用光パルスの強度を設定する段階とを含むことを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項12の光サンプリング方法は、請求項11記載の光サンプリング方法において、
前記測定結果から、前記サンプリング用光パルスの強度の変化に対する通過光パルス強度の変化の傾きを求める段階と、
前記求めた傾きに基づいて、前記被測定光信号、前記サンプル光、該サンプル光の強度検出結果の少なくとも一つに対する振幅補正処理を行なう段階と含むことを特徴する。
【発明の効果】
【0031】
このように、本発明では、被測定光信号のサンプリングを行なうために電界吸収型光変調器に入射するサンプリング用光パルスの強度を断続的にまたは連続的に可変しながら、電界吸収型光変調器を通過した通過光パルスの強度を測定し、その測定結果から、通過光パルスの強度が増加し始めるサンプリング用光パルスの強度のしきい値を求め、その求めたしきい値に基づいて、被測定光信号のサンプリングに用いるサンプリング用光パルスの強度を設定するようにしている。
【0032】
ここで、電界吸収型光変調器を通過した通過光パルスの強度が増加し始める点は、電界吸収型光変調器の相互吸収飽和の開始点に相当し、電界吸収型光変調器のゲート動作の基準とみなすことができる。
【0033】
したがって、上記のように通過光パルスの強度が増加し始めるときのサンプリング用光パルスの強度(しきい値)を基準とし、その強度の定数倍、例えば1倍、1.5倍、2倍等を被測定光信号のサンプリングに用いる最適な強度として設定する。
【0034】
この強度設定処理を、例えば装置起動時、一定期間経過毎あるいは温度が一定以上変化した時等に行なうことで、電界吸収型光変調器の動作点を常に適正状態に維持でき、温度変化や経時変化によるサンプリング用光パルスの電界吸収型光変調器への入射経路の特性変化や、電界吸収型光変調器自身の光結合損失変化や吸収飽和特性変化等によって生じるゲート開時の光透過率およびゲートの時間幅変化を未然に防ぐことができ、長期間にわたって高速の被測定光信号を再現性よくサンプリングすることが出来る。
【0035】
また、電界吸収型光変調器に入射されるサンプリング用光パルスの強度を断続的または連続的に可変しながら、その電界吸収型光変調器を通過した通過光パルスの強度変化を測定したときの測定結果から、サンプリング用光パルスの強度変化に対する通過光パルス強度の変化の傾きを求め、その傾きに基づいて、被測定光信号、サンプル光、サンプル光の強度検出結果の少なくとも一つに対する振幅補正処理を行なうことで、さらに再現性の高いサンプリングを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態の構成図
図2】光パルスに対する電界吸収型光変調器の入出力特性図
図3】光パルスに対する電界吸収型光変調器の入出力特性図
図4】光パルスに対する電界吸収型光変調器の入出力特性図
図5】光パルスに対する電界吸収型光変調器の入出力特性図
図6】電界吸収型光変調器の入出力特性からしきい値と傾きを求める方法の説明図
図7】入出射インタフェース部の第1の合分波部と第2の合分波部の具体例を示す図
図8】入出射インタフェース部の第1の合分波部と第2の合分波部の具体例を示す図
図9】入出射インタフェース部の第1の合分波部と第2の合分波部の具体例を示す図
図10】入出射インタフェース部の第1の合分波部と第2の合分波部の具体例を示す図
図11】入出射インタフェース部の第1の合分波部と第2の合分波部の具体例を示す図
図12】入出射インタフェース部の第1の合分波部と第2の合分波部の具体例を示す図
図13】サンプル光と通過光パルスとを共通光路から出射する入出射インタフェース部の構成例を示す図
図14】サンプル光と通過光パルスとを共通光路から出射する入出射インタフェース部の構成例を示す図
図15図14の要部の構成例を示す図
図16図14の要部の別の構成例を示す図
図17図14の要部の構成例を示す図
図18】被測定光信号とサンプリング用光パルスの波長が異なる場合に適用可能な入出射インタフェース部の構成例を示す図
図19】被測定光信号とサンプリング用光パルスの波長が異なる場合に適用可能で、且つサンプル光と通過光パルスとを共通光路から出射させる入出射インタフェース部の構成例を示す図
図20】被測定光信号とサンプリング用光パルスの波長が異なる場合に適用可能で、且つサンプル光と通過光パルスとを共通光路から出射させる入出射インタフェース部の構成例を示す図
図21】被測定光信号とサンプリング用光パルスの波長が異なる場合に適用可能で、且つサンプル光と通過光パルスとを共通光路から出射させる入出射インタフェース部の構成例を示す図
図22】被測定光信号とサンプリング用光パルスの波長が異なる場合に適用可能で、且つサンプル光と通過光パルスとを共通光路から出射させる入出射インタフェース部の構成例を示す図
図23】電界吸収型光変調器を用いた光サンプリング装置の構成図
図24】電界吸収型光変調器を用いた光サンプリング装置の動作例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態の光サンプリング装置20の構成を示している。
【0038】
図1において、光パルス発生部21は一定周期Tsのサンプリング用光パルスPs(i)を発生する。この光パルス発生部21は、例えば、半導体レーザ等の発光素子から出射された連続光をパルス変調してサンプリング用光パルスPs(i)を生成する構造や、モード同期レーザ等のパルス発振によりサンプリング用光パルスをPs(i)を生成する構造を有しており、そのサンプリング用光パルスPs(i)の強度を外部からの制御で可変できるように構成されている。
【0039】
その強度可変は、発光素子自体の駆動電流の可変制御、光源の出射光やパルス変調後の光を受ける光減衰器の減衰量の可変制御、あるいは光源の出射光やパルス変調後の光を受ける光増幅器の増幅度の可変制御で行なうことができる。なお、サンプリング用光パルスPs(i)の強度の可変制御は、光パワーの絶対値、相対値のいずれで指定してもよく、また光パルスのピークパワー、平均パワーのいずれで指定してもよい。
【0040】
被測定光信号Pxとサンプリング用光パルスPs(i)は光サンプリング部22に入射される。光サンプリング部22は、電界吸収型光変調器23と入出射インタフェース部24によって構成される。
【0041】
電界吸収型光変調器23は、予め電極(図示せず)に逆バイアス電圧を印加して、光導波路を光がほとんど透過しない状態にされていて、その光導波路に入射される光の強度が所定値以下の範囲ではその光導波路に入射した光を吸収し、入射される光の強度が前記所定値を越える範囲では光導波路に入射した光を透過させる相互吸収飽和特性を有し、所定値以上の強度で入射されるサンプリング用光パルスPs(i)によりゲートを開いて、そのとき入射されている被測定光信号Pxの成分を通過させる。
【0042】
入出射インタフェース部24は、被測定光信号Pxおよびサンプリング用光パルスPs(i)を電界吸収型光変調器23の光導波路に入射させて、サンプリング用光パルスPs(i)による相互吸収飽和により被測定光信号のサンプリングを行なわせ、そのサンプリングで得られたサンプル光Px(i)を出射させる。また、サンプリング用光パルスPs(i)のうちの電界吸収型光変調器23を通過した成分である通過光パルスPs(i)′をサンプル光Px(i)と区別できるようにして出射する。この区別は、両者の出射光路を別々にする方法、両者の出射時間に差を付与する方法等がある。
【0043】
入出射インタフェース部24の構成は、後述するように種々の変形が可能であるが、ここでは、電界吸収型光変調器23の光導波路の一端側に接続された第1の光合分波部25と、他端側に接続された第2の光合分波部26により構成されている。これら二つの光合分波部25、26は方向性結合特性を有しており、被測定光信号Pxを第1の光合分波部25を介して電界吸収型光変調器23の一端側に入射し、サンプリング用光パルスPs(i)を第2の光合分波部26を介して電界吸収型光変調器23の他端側から入射して、サンプリングを行なわせている。
【0044】
また、電界吸収型光変調器23の他端側から出射されるサンプル光Px(i)を第2の光合分波部26を介してサンプリング用光パルスPs(i)の入射光路と異なる光路から出射し、電界吸収型光変調器23の一端側から出射される通過光パルスPs(i)′を第1の光合分波部25を介して被測定光信号Pxの入射光路と異なる光路から出射する。
【0045】
この入出射インタフェース部24の構成例では、電界吸収型光変調器23に対する被測定光信号Pxとサンプリング用光パルスPs(i)の入射方向が逆向きであるので、両者の波長の同異に関わらずそれぞれの通過成分を2つの光合分波部25、26から互いに独立した光路から区別して出射することができる。
【0046】
入出射インタフェース部24から出射されたサンプル光Px(i)は、サンプル光強度検出部30に入射される。サンプル光強度検出部30は、サンプル光Px(i)を受光器30aで受光してその強度に応じた大きさの電気信号Exに変換し、A/D変換器30bでデジタル値Dx(i)に変換して出力する。このA/D変換器30bのサンプリングは、光パルス発生部21が出力するサンプリング用光パルスPs(i)と同期しているものとする。
【0047】
また、入出射インタフェース部24から出射された通過光パルスPs(i)′は、通過光パルス強度検出部31に入射される。通過光パルス強度検出部31は、通過光パルスPs(i)′を受光器31aで受光してその強度に応じた大きさの電気信号Es(i)′に変換し、A/D変換器31bでデジタル値Ds(i)′に変換して出力する。このA/D変換器31bのサンプリングは、光パルス発生部21が出力するサンプリング用光パルスPs(i)と同期しているものとする。
【0048】
ここで、二つの強度検出部30、31による光強度の測定は、必ずしも光パワーの絶対値を測定する必要は無く、光パワーに比例した相対値を測定しても良い。また、サンプル光強度検出部30、通過光パルス強度検出部31は、光パルスのピークパワーを検出する方式でも、光パルスの平均パワーを検出する方式でも、受光器またはA/D変換器の帯域制限によって鈍ったパルスのピークを検出する方式でも良い。なお、これら二つの強度検出部30、31は、後述するように共通の強度検出部40で兼用することができる。
【0049】
通過光パルス強度検出部31の出力値Ds(i)′は、入出力特性測定手段32に入力される。入出力特性測定手段32は、所定のタイミング、例えば装置起動時や一定時間経過毎や温度が一定以上変化した時等に、被測定光信号Pxを測定する段階に先立って、光パルス発生部21を制御し、サンプリング用光パルスPs(i)の強度を断続的または連続的に可変しながら、通過光パルス強度検出部31の出力値Ds(i)′を測定する。このとき、被測定光信号Pxは入射されていてもいなくてもどちらでもよい。
【0050】
また、しきい値算出手段33は、入出力特性測定手段32の測定結果から、通過光パルス強度検出部31で検出される通過光パルスの強度が増加し始めるサンプリング用光パルスの強度をしきい値SHとして求める。
【0051】
また、光パルス強度設定手段34は、しきい値算出手段33で求めたしきい値SHに基づいて、被測定光信号Pxを測定する段階におけるサンプリング用光パルスの最適な強度を決定して、光パルス発生部21にその強度設定を行なう。
【0052】
また、傾き算出手段35は、入出力特性測定手段32の測定結果から、入出力特性の傾きkを求める。
【0053】
振幅補正手段36は、傾き算出手段35で求めた傾きkに基づいて、サンプル光強度検出部30の出力値Dx(i)に対する振幅補正処理を行なう。
【0054】
なお、この例では、振幅補正手段36がサンプル光強度検出部30の出力値Dx(i)に対する演算処理で振幅補正を行なう構成としているが、振幅補正手段36は、光減衰器や光増幅器あるいはその両者の組合せで、入射する被測定光信号Pxや、サンプル光Px(i)に対する減衰率や増幅度を、傾きkに基づいて可変制御することで、最終的に出力される強度値Dx(i)の補正処理を行なうものであってもよい。この場合、入力端から光サンプリング部22の間の光路、光サンプリング部22からサンプル光強度検出部30までの光路のうちの少なくとも一つに、光減衰器や光増幅器等を挿入して、その減衰量や利得を可変すればよい。また、受光器30aとA/D変換器30bの間に電気減衰器や電気増幅器を挿入して、その減衰量や利得を可変してもよい。
【0055】
ここで、光サンプリング部22に入射されるサンプリング用光パルスPs(i)の強度と、通過光パルスPs(i)′の強度との関係について説明する。
【0056】
サンプリング用光パルスPs(i)の強度が所定値以下の場合、その光パルスが電界吸収型光変調器23にて吸収され、ほとんど出力されないが、サンプリング用光パルスPs(i)の強度が所定値を越えると、電界吸収型光変調器23での吸収が少なくなり(吸収飽和)、サンプリング用光パルスPs(i)の一部が電界吸収型光変調器23を透過して出射されるようになる。
【0057】
このため、光サンプリング部22に入射されるサンプリング用光パルスPs(i)の強度と光サンプリング部22から出射される通過光パルスPs(i)′の強度との関係は、図2のような特性F1となる。但し、図2の横軸と縦軸は同一スケールではなく、電界吸収型光変調器23や入出射インタフェース部24の損失により出力光パルス強度の方が小さくなる。ここで、出力光パルスの強度が増加しはじめる点をしきい値(SH1)と呼び、このしきい値(SH1)を越える範囲では、電界吸収型光変調器23の吸収飽和が起こり、光ゲートが開く。
【0058】
つまり、通過光パルスPs(i)′の強度が増加し始める点は、電界吸収型光変調器23の吸収飽和、即ち相互吸収飽和の開始点に相当し、電界吸収型光変調器23のゲート動作の基準とみなすことができる。
【0059】
したがって、通過光パルスPs(i)′の強度が増加し始めるときのサンプリング用光パルスPs(i)の強度(しきい値SH1)を基準とし、その強度の定数倍、例えば1倍、1.5倍、2倍等を被測定光信号のサンプリングに用いる最適な強度として設定すれば、温度などの環境変化や経時変化による電界吸収型光変調器23の特性変化があっても動作点を適正値に設定することができる。
【0060】
例えば、あるタイミングにおいて、図2のように、しきい値SH1、傾きk1の入出力特性F1が得られた場合、強度(ここではピーク強度とする)が、しきい値SH1のQ倍(Q≧1)のサンプリング用光パルスPs(i)を与えると、ゲートが開いて、特性F1の入射強度Q・SH1に対応した強度の通過光パルスPs(i)′が出射されるととともに、被測定光信号Pxのサンプリングが行なわれる。
【0061】
また、この特性F1の傾きk1は、電界吸収型光変調器23のゲートが開いている状態における光サンプリング部22のサンプリング用光パルスPs(i)に対する透過率に相当している。今この状態の傾きk1を基準値とする。
【0062】
図2の特性F1を基準にして、例えば、電界吸収型光変調器23のサンプリング用光パルスPs(i)を入力する側の結合損失が増加した場合や入出射インタフェース部24の第2の光合分波部26の損失が増加した場合、図3の特性F2のように、しきい値SH2が大きくなり傾きk2が小さくなる。
【0063】
この図3の特性F2で、図2に示した強度のサンプリング用光パルスPs(i)を与えた場合、電界吸収型光変調器内部の光導波路に入射されるサンプリング用光パルスの強度が小さくなるため、一般にゲート開時間が小さくなり、ゲート開時の光導波路の透過率が小さくなる。その結果、被測定光信号Pxの測定波形の時間分解能が小さくなり、振幅が小さくなる。また、通常、被測定光信号Pxに対する電界吸収型光変調器の結合損失や光合分波部26の損失も同様に増加するため、傾きk2の低下に応じてサンプル光の振幅がさらに低下する。
【0064】
したがって、この場合、図3の破線で示しているように、サンプリング用光パルスの強度をQ・SH2に増加設定する。これによってゲート開時間およびゲート開時の光導波路の透過率が基準状態と等しくなり、被測定光信号Pxの波形測定の時間分解能が基準状態に維持される。
【0065】
また、振幅補正手段36によりデジタル値Dx(i)に対してk1/k2倍の振幅補正を行なうことで、損失増加に伴う振幅減少分を補正することができ、前記時間分解能とともに標準状態と同等の波形測定が維持できる。
【0066】
また、電界吸収型光変調器23の吸収飽和が発生するサンプリング用光パルスの強度が増加した場合は、図4の特性F3のように、特性F1の基準状態に対して傾きk3は変化せず、しきい値SH3のみが大きくなる。この状態で図2と同強度のサンプリング用光パルスを与えた場合、一般的にゲート開時間が短くなり、ゲート開時の透過率が小さくなる。その結果、被測定光信号Pxの測定波形の時間分解能が小さくなり、振幅が小さくなる。
【0067】
したがって、この場合には、図4の破線で示しているように、サンプリング用光パルスの強度をQ・SH3に増加設定する。これによってゲート開時間およびゲート開時の透過率が基準状態と等しくなり、被測定光信号Pxの測定波形の時間分解能および振幅が基準状態に維持される。また、傾きk3はk1と等しいので振幅補正を行なう必要はない。
【0068】
また、電界吸収型光変調器23のサンプリング用光パルスを入力する側と逆側の結合損失が増加した場合、電界吸収型光変調器23の吸収飽和が発生した時の損失が増加した(ゲートが開いた時の光透過率が減少した) 場合、あるいは、第1の光合分波部25の損失が増加した場合には、図5の特性F4のように、しきい値SH4は基準状態と変わらないが、傾きk4が小さくなる。
【0069】
したがって、この場合は、サンプリング用光パルスPs(i)の強度は基準状態と同一(Q・SH4=Q・SH1)でよく、ゲート開時間は基準状態と等しい。
【0070】
そして、通常、被測定光信号Pxに対する電界吸収型光変調器の結合損失、ゲート開時の損失、光合分波部25の損失も同様に増加するため、傾きk4の低下に応じて被測定光信号の測定波形の振幅が小さくなる。したがって、振幅補正手段36によりデジタル値Dx(i)に対して、k1/k4倍の振幅補正を行なうことで、損失増加に伴う振幅減少分を補正することができ、基準状態と同等の波形測定が維持できる。
【0071】
上記のように、サンプリングに用いるサンプリング用光パルスPs(i)と通過光パルスP(i)′の強度の入出力特性からそのしきい値を求め、そのしきい値を動作点の基準としてサンプリング用光パルスPs(i)の強度を設定して被測定光信号に対するサンプリングを行なうことで、特にサンプリングの時間分解能(ゲートオン時間)を一定に保つことができ、再現性の高いサンプリングが行なえる。
【0072】
また、入出力特性の傾きにより、被測定光信号、サンプル光あるいはその強度検出結果の少なくとも一つに対する振幅補正を行なうことで、最終的な測定波形の振幅に対する再現性も確保することができ、より高い再現性で波形測定を行なうことができる。
【0073】
なお、サンプリング用光パルスPs(i)の強度を設定する方法として、単に電界吸収型光変調器23の両端の間の損失や光サンプリング部22全体の損失を測定してその損失に応じてサンプリング用光パルスPs(i)の強度を可変する方法、即ち、通過光パルスPs(i)′の強度が一定となるようにフィードバック制御する方法も考えられるが、これでは、図3図4図5に示した特性変化(F2、F3、F4)を区別して抽出することは出来ないため、振幅補正を行なうべき特性変化に対してもサンプリング用光パルスの強度を制御することになり、サンプリング用光パルスの強度を適正に設定することはできない。
【0074】
しきい値算出手段33によるしきい値SHの算出方法および傾き算出手段35による傾きkの算出方法の一例を説明すると、図6の(a)のように、入出力特性の複数の測定点に対する近似線L(直線または曲線)の式を求め、その近似線Lと横軸との交点を算出してしきい値SHとし、近似線Lの傾き(あるいはその平均値)を傾きkとする方法や、図6(b)のように、入出力特性の微分をとり、微分値が最大となる値、あるいはしきい値より入力光パルス強度が十分大きい領域における微分値の平均値を傾きkとし、k/2となる点をしきい値SHとする。
【0075】
また、図6の(c)のように、入出力特性の2階微分をとり、その値が最大となる点をしきい値SHとする方法でもよい。
【0076】
次に、上記実施形態における入出射インタフェース部24の具体例について説明する。
図7は、第1の光合分波部25として、光を一方向に伝搬させるアイソレータ25aと光を一定割合で合分波する光ファイバカプラ25bで構成し、第2の光合分波部26としても同様に、光を一方向に伝搬させるアイソレータ26aと光を一定割合で合分波する光ファイバカプラ26bで構成している。
【0077】
また、図8は、図7の光ファイバカプラ25b、26bの代わりに、光を一定割合で合分波するハーフミラー25c、26cを用いている。
【0078】
図9は、第1の光合分波部25および第2の光合分波部26を、それぞれ光サーキュレータ25d、26dで構成した例である。
【0079】
上記、図7図9の構成においては、第1の光合分波部25と第2の光合分波部26の構成要素を同等としていたが、第1の光合分波部25の構成要素として図7図9の任意の構成を用い、第2の光合分波部26の構成要素としても図7図9の任意の構成を用いることができる。
【0080】
また、図10は、サンプリング用光パルスPs(i)の波長λsを被測定光信号Pxの波長λxよりも短波長に設定し、第1の光合分波部25および第2の光合分波部26を、それぞれWDMカプラ25e、26eで構成した例であり、図11は、WDMカプラ25e、26eの代わりに、ダイクロイックフィルタ25f、26fを用いている。
【0081】
WDMカプラ25e、26eは、3つの端子a〜cを有し、そのうちの第1端子aと第2端子bの間は、波長λxを含む帯域の光を導波し、波長λsを含む帯域の光を導波せず、第2端子bと第3端子cの間は、波長λsを含む帯域の光を導波するが、波長λxを含む帯域の光は導波しない波長に依存した導波特性を有しており、被測定光信号のうち、電界吸収型光変調器23で反射した戻り光が通過パルス強度検出部31に入射されることや、サンプリング用光パルスのうち、電界吸収型光変調器23で反射した戻り光がサンプル光強度検出部30に入射されることを防ぐことができる。
【0082】
また、ダイクロイックフィルタは、どちらから入射した場合でも波長λxを含む帯域の光を反射せずに通過させ、波長λsを含む帯域の光を透過せずに反射する波長に依存した透過反射特性を有しており、被測定光信号のうち、電界吸収型光変調器23で反射した戻り光が通過パルス強度検出部31に入射されることや、サンプリング用光パルスのうち、電界吸収型光変調器23で反射した戻り光がサンプル光強度検出部30に入射されることを防ぐことができる。
【0083】
この図10図11の構成例についても、第1の光合分波部25および第2の光合分波部26のいずれか一方をWDMカプラで構成し、他方をダイクロイックフィルタで構成してもよい。
【0084】
上記各実施例は、被測定光信号Pxが入射している状態であっても、そのサンプリングに適したサンプリング用光パルスの強度設定が可能な例であったが、サンプリング用光パルスの強度を適正値に設定する際に、被測定光信号の入射は必須条件ではない。
【0085】
したがって、図12に示すように、第1の光合分波部25の代わりに光スイッチ25gを用いて、サンプリング用光パルスPs(i)の強度設定処理を行なう際には、光スイッチ25gを通過光パルス強度検出部31側に接続し、サンプリング用光パルスPs(i)の強度設定処理が終了した段階で、光スイッチ25gを被測定光信号側に接続してサンプリングを行なうようにしてもよい。この光スイッチ25gの切替えは、入出力特性測定手段32によって行なえばよい。
【0086】
この場合、被測定光信号Pxに対するサンプリング時に、電界吸収型光変調器23を通過した通過光パルスPs(i)′が被測定光信号の入射端側に出力されるのを防ぐために、被測定光信号入射端に光アイソレータを追加してもよい。
【0087】
前記各実施例では、サンプル光強度検出部30と通過光パルス強度検出部31がそれぞれ独立に設けられていたが、これらの強度検出部を共通化することもできる。その場合には、サンプル光Px(i)と通過光パルスPs(i)′とを共通光路から出射させる必要がある。
【0088】
例えば、図13に示す入出射インタフェース部24のように、第1の光合分波部25から出射された通過光パルスPs(i)′と第2の光合分波部26から出射されたサンプル光Px(i)とを光スイッチ27dに入射し、通過光パルスPs(i)′とサンプル光Px(i)のいずれか一方を選択して共通光路から出射させる。
【0089】
そして、この共通光路から出射された光を共通の強度検出部40の受光器41で受け、その出力をデジタル値に変換する。
【0090】
この構成では、サンプリング用光パルスPs(i)の強度設定の際には、光スイッチ27dを第1の光合分波部25側に設定して、通過光パルスPs(i)′の強度に対応したデジタル値Ds(i)′を出力させ、被測定光信号Pxのサンプリングを行なう際には、光スイッチ27dを第2の光合分波部26側に設定して、サンプル光Px(i)の強度に対応したデジタル値Dx(i)を出力させる。
【0091】
また、図14に示す入出射インタフェース部24のように、第1の光合分波部25から出射された通過光パルスPs(i)′と、第2の光合分波部26から出射されたサンプル光Px(i)とを時間差合波部27に入射し、両者が互いに重複しないように所定の時間差を付与して共通光路から出射する。
【0092】
そして、この共通光路から出射された光を、共通の強度検出部40の受光器41で受け、その出力信号を信号分離部42に入力し、サンプル光に対応する信号成分Dx(i)と通過光パルスに対応する信号成分Ds(i)″とを前記時間差に基づいて識別分離して出力する。
【0093】
ここで、時間差合波部27は、例えば図15のように、通過光パルスPs(i)′に遅延器27aで時間Δtの遅延を与え、その遅延した通過光パルスPs(i)″とサンプル光Px(i)とを合波器27bで合波すればよい。なお、遅延器27aをサンプル光Px(i)側に挿入して合波してもよい。遅延器27aとしては、所定の長さの光ファイバや所定の距離の空間を伝搬させる光遅延器を用いることができる。
【0094】
また、被測定光信号波長λxとサンプリング用光パルス波長λsが異なる場合においては、図16のように、通過光パルスPs(i)′とサンプル光Px(i)とを合波器27bで合波し、その合波光を波長分散媒体27cに入射し、両波長成分に対して波長の違いによる伝搬時間差Δtを与えて出射してもよい。
【0095】
また、信号分離部42としては、例えば図17の(a)に示すように、受光器41の出力信号を受ける二つのA/D変換器42a、42bで構成し、一方のA/D変換器42aには、サンプリング用光パルスPs(i)に同期したクロックCs(t)を与え、他方のA/D変換器42bには、クロックCs(t)に対してΔt遅延したクロックCs(t+Δt)を与えることで、Δtの時間差を持って入力される各信号Ex(i)、Es(i)″にそれぞれ対応したデジタル値Dx(i)、Ds(i)″を分離出力することができる。
【0096】
また、信号分離部42として、例えば図17の(b)に示すように、受光器41の出力信号をA/D変換器42cに入力し、サンプリング用光パルスPs(i)に同期したクロックCs(t)と、クロックCs(t)に対してΔt遅延したクロックCs(t+Δt)の論理和に従ったタイミングでA/D変換し、それぞれクロックCs(t)とクロックCs(t+Δt)で動作するフリップフロップやスイッチ(42d、42e)を用いてA/D変換器42cから出力されるデジタル値をDx(i)とDs(i)″に分離出力することもできる。
【0097】
上記実施形態の入出射インタフェース部24は、被測定光信号Pxとサンプリング用光パルスPs(i)を、電界吸収型光変調器23の両端から互いに逆方向に入射させていたが、被測定光信号波長λxとサンプリング用光パルス波長λsが異なる場合では、図18の入出射インタフェース部24のように、被測定光信号Pxとサンプリング用光パルスPs(i)とを光合波部28で合波して、電界吸収型光変調器23の一端に入射し、電界吸収型光変調器23の他端から出射されるサンプル光Px(i)と通過光パルスPs(i)′を光分波部29で分波することもできる。
【0098】
この場合、光合波部28としては、前記した光ファイバカプラ、ハーフミラー、WDMカプラ、ダイクロイックフィルタのいずれも使用可能である。
【0099】
また、光分波部29は、サンプル光Px(i)と通過光パルスPs(i)′とをその波長の違いによって分離し異なる光路から出射するものであればよく、前記したWDMカプラ、ダイクロイックフィルタも使用可能である。
【0100】
また、光分波部29の代わりに、図19のように波長分散媒体27cを用いれば、サンプル光Px(i)と通過光パルスPs(i)′とに時間差を与えて共通光路から出射することができ、この光を前記した共通の強度検出部40に入射することで、サンプル光Px(i)の信号成分と通過光パルスPs(i)′の信号成分を分離できる。
【0101】
また、図20のように、光分波部29で別光路に分離されたサンプル光Px(i)と通過光パルスPs(i)′とを前記した時間差合波部27に入射して、両者の間に所定時間差Δtを与えて共通光路から出射し、前記したように共通の強度検出部40に入射することで、サンプル光Px(i)の信号成分と通過光パルスPs(i)′の信号成分を分離できる。
【0102】
また、図21のように、光分波部29の代わりに波長可変フィルタ50を用い、サンプリング用光パルスPs(i)の強度設定の際には、波長λsの成分だけを通過させ、共通の強度検出部40の受光器41に入射させて、その出力をA/D変換器43でデジタル値Ds(i)′に変換し、被測定光信号Pxに対するサンプリングを行なう際には、波長λxの成分だけを通過させ、強度検出部40の受光器41に入射させて、その出力をA/D変換器43でデジタル値Dx(i)に変換する構成も可能である。
【0103】
また、図22のように、光分波部29で別光路に分波されたサンプル光Px(i)と通過光パルスPs(i)′をスイッチ51で選択して共通光路から前記図21と同じ強度検出部40に入射させる構成も可能である。
【0104】
なお、図21の構成における波長可変フィルタ50の通過波長の切り替えや、図22の構成におけるスイッチ51の切り替えは、前記した入出力特性測定手段32の制御により行なえばよい。
【0105】
なお、上記した各実施形態のサンプリング用光パルスPs(i)の周期は、図24に示したように、被測定光信号Pxの繰返し周期の整数倍に対して時間差をもつ等価サンプリング方式に限定されるものではなく、被測定光信号Pxの繰返し周期の整数倍に同期してサンプリングを行ない、被測定光信号Pxの遅延時間を可変して波形を取得する方法や、被測定光信号Pxの繰返し周期と非同期でサンプリングを行ない、そのサンプリングで得られたサンプル光のデータから被測定光信号Pxの波形を再構成するソフトウエア同期法を用いる場合であってもよい。また、以上のようにして得られた被測定光信号の波形を表示器に表示したり、波形からQファクタ等の信号品質を求めることも可能である。
【符号の説明】
【0106】
20……光サンプリング装置、21……光パルス発生部、22……光サンプリング部、23……電界吸収型光変調器、24……入出射インタフェース部、25……第1の光合分波部、26……第2の光合分波部、27……時間差合波部、28……光合波部、29……光分波部、30……サンプル光強度検出部、31……通過光パルス強度検出部、32……入出力特性測定手段、33……しきい値算出手段、34……光パルス強度設定手段、35……傾き算出手段、36……振幅補正手段
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