特許第5715679号(P5715679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5715679
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】取り外し可能な竜頭
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/10 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   G04B37/10 C
   G04B37/10 Z
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-260873(P2013-260873)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-119463(P2014-119463A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2013年12月18日
(31)【優先権主張番号】12197843.1
(32)【優先日】2012年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508289992
【氏名又は名称】メコ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ブリスワルテル
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ・ツィング
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭47−005512(JP,B1)
【文献】 実公昭43−010215(JP,Y1)
【文献】 特開平07−198863(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01124167(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面のスカート(111)と一体のカバー(112)で形成されたキャップ(11)を備えた時計の竜頭であって、取り外し可能なデッキリング(60)を備え
前記取り外し可能なデッキリング(60)は、形状記憶合金で作製されていることを特徴とする、竜頭(1)。
【請求項2】
前記形状記憶合金の転移温度は、腕時計の操作温度範囲から十分外れた温度であることを特徴とする、請求項1に記載の時計の竜頭(1)。
【請求項3】
前記転移温度は、−25度未満であることを特徴とする、請求項2に記載の時計の竜頭(1)。
【請求項4】
環状断面の直径(t)を有するOリングジョイント(5)を被覆し,前記キャップ(11)の下面(116)に設けられた肩部(1161)に設けられる前記取り外し可能なデッキリング(60)は、前記取り外し可能なデッキリング(60)の内周と前記竜頭(1)の中央パイプ(2)の外周との間に、前記環状断面の直径(t)の1.5倍以下であるスペース(e)を確保できることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の時計の竜頭(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの第1の把持領域(1162)は、前記取り外し可能なデッキリング(60)に対して竜頭(1)に設けられることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の時計の竜頭(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの第2の把持領域(61)は、前記取り外し可能なデッキリング(60)に直接形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の時計の竜頭(1)。
【請求項7】
側面のスカート(111)と一体のカバー(112)で形成されたキャップ(11)を備えた時計の竜頭であって、取り外し可能なデッキリング(60)を備えた時計の竜頭(1)の取り外し可能なデッキリング(60)の組み入れ方法および取り外し方法であって
前記方法は、前記取り外し可能なデッキリング(60)を変形させる工程を含み、プラスチックを変形させることが必要である、方法。
【請求項8】
前記取り外し可能なデッキリング(60)を変形させる前記工程は、手動で達成される、請求項7に記載の時計の竜頭(1)の取り外し可能なデッキリング(60)の組み入れ方法および取り外し方法。
【請求項9】
前記取り外し可能なデッキリング(60)は、形状記憶材料で作製され、前記取り外し可能なデッキリング(60)を手動で変形させる前記ステップは、前記取り外し可能なデッキリング(60)を、前記デッキリングの超弾性特性が最大10%になる操作温度範囲外の温度にする加熱または冷却工程の後に行われる、請求項8に記載の時計の竜頭(1)の取り外し可能なデッキリング(60)の組み入れ方法または取り外し方法。
【請求項10】
前記取り外し可能なデッキリング(60)は、2通りの記憶効果を有するように設定された形状記憶材料で作製される、請求項7に記載の時計の竜頭(1)の取り外し可能なデッキリング(60)の組み入れ方法または取り外し方法。
【請求項11】
前記取り外し可能なデッキリング(60)は、組み入れた状態では円形であり、変形した状態では楕円形である、請求項7〜10のうちいずれか一項に記載の時計の竜頭(1)の取り外し可能なデッキリング(60)の組み入れ方法または取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にシールパッキンを交換するために取り外すことのできる時計の竜頭に関する。
【背景技術】
【0002】
竜頭は、機械式腕時計の調整部材として広く使用されている。また、竜頭は、腕時計ケースの中央部分に入れ込むまたはねじ込まれる管に取り付けられ、巻き上げ用または制御用の巻真の端部に組み立てられ、いくつかの異なる軸方向の位置を取ることができ、その位置で竜頭は、例えば腕時計の香箱の巻き上げ、時間設定、日付調整など、様々な種類の機能を実行することができる。
【0003】
ねじ込み式竜頭は、竜頭の巻き上げ用または制御用の巻真に対する腕時計のシール性を向上させるために、腕時計に広く用いられている。この種の竜頭は、作動できるようにするために、ねじ抜き位置になければならないという特質を有し、竜頭の軸方向の位置を変更して調整モードを規定することができる。ねじ込み位置では、竜頭は、管にロックされ、管は、中央部分の内部に固定され、好ましくはこの管部分の下部に、ケースの中央部分の外側に突出している突出部分を有してシールパッキンを圧縮し、これによって腕時計のシール性を向上させている。そのため、ねじ込み位置は、腕時計を着用する際の正常な位置であり、特に、深海ダイビングなどの水中活動中に使用する場合に、最良のシール特性を発揮する最適な位置である。
【0004】
これらのねじ込み式竜頭を腕時計の中央部分に組み入れるための公知の製造方法および組み入れ方法がいくつか存在する。竜頭端部の面に付けられた印がある場合、竜頭をねじ込んだ後に竜頭をケースに対する所定位置に設置するための角度方向調整装置も存在する。これに当てはまるのは、例えば竜頭が豪華で高品質の商品に取り付けられる場合である。
【0005】
ほとんどの竜頭は、ねじ込み式で向きを変更できるかどうかに関わらず、一般に、カバーで形成されたキャップであって、上面に商標またはロゴを取り付けることができるキャップと、側面のスカートであって、内部に固定用の管を収容するスカートとを備えている。この種の竜頭を管に対して確実にシールするために、1つ以上のシールパッキンが、スカートの下方端部に設けられ、管の外面とスカートとの間で径方向に圧縮され、端を折り曲げたリングまたは嵌め込み式のリングで被覆されている。このような被覆用リングは、竜頭を操作する際にシールパッキンを軸方向に保持するために使用され、一般に「デッキリング」とも呼ばれる。
【0006】
これらの竜頭にみられる1つの欠点は、デッキリングが竜頭のスカートの下面に恒久的に固定されているために、竜頭を分解する際にパッキンに横からアクセスできない場合、摩耗したシールパッキンを取り換えることが不可能なことがあるという点である。したがって、例えば販売後のアフターサービス中に、竜頭のシール特性が経年により劣化している場合は、竜頭全体を取り換える必要があることがあるが、これは非常に不経済である。
【0007】
欧州特許第0655664号には、竜頭のプッシュボタンのシールパッキンを、竜頭下面の溝に嵌合する隙間のある弾性リングを用いてガイド管に圧縮させて保持する、デッキリングに対する代替策が提供されている。このような隙間のある弾性リングは、サークリップとも呼ばれ、巻真周りの溝内に部品を、サークリップよりも大きなサイズの部分に対して組み入れて保持するための止め部材として用いられることが多く、サークリップは、ペンチを使用すると扱いやすく、ペンチは、サークリップ端部の孔に係入し、サークリップの組み入れおよび取り外しに使用される。しかし、時計の竜頭は、最大でもせいぜい数ミリメートルという極小サイズであるため、竜頭の取り扱いは、単に組み立てるだけでも極めて困難であり、その後に行われる任意の分解操作は特に不都合である。その上、サークリップが特殊な形状であるため、突起部を有する竜頭のスカートの下端部に溝を設けて軸方向の保持面を形成する必要があり、欧州特許第0655664号に開示の発明で提供されているようなサークリップでは、サークリップが不本意にねじれて外れないようになっている。これでは竜頭の機械加工が複雑になるため、製造コストがさらに高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0655664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、簡易で経済的な構造である従来の竜頭であって、リングの端を折り曲げ、かつ/またはサークリップを取り扱うという面倒な操作を一切行うことなく組み立てることができるが、シール特性を損なうこともなく、さらに容易に分解できる竜頭を提供することによって、前述の先行技術の欠点を克服するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、側面のスカートと一体化したカバーで形成されたキャップを備えた竜頭であって、取り外し可能なデッキリングを備えることを特徴とする竜頭に関する。
【0011】
本発明は、この種の竜頭のデッキリングを取り外すことを実行する方法であって、デッキリングを変形させる工程を含むことを特徴とする方法にも関する。
【0012】
提供する対策の1つの利点は、従来の竜頭の構造をほとんど修正することも、事実上竜頭の部品を一切修正することも必要なく、同等のシール特性および保持特性を確保する上に、パッキンに横からアクセスできない場合でも、例えば摩耗したシールパッキンを交換することができる点である。
【0013】
提供する対策の他の1つの利点は、シールパッキンを適所に設置でき、竜頭内でより迅速に取り換えることができる点である。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付した図面を参照して非限定的に挙げた好適な実施形態についての以下の詳細な説明からさらに明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】先行技術による公知のサークリップを示す図である。
図2】先行技術による取り外し不可能なデッキリングを備えた竜頭の半断面図である。
図3】本発明の取り外し可能なデッキリングを備えているが管のない竜頭の半断面図である。
図4】中央部分に固定するための管を取り外した状態にある、図3の竜頭の下面図であり、さらに詳細には、取り外し可能なデッキリングに対して設けた特定の把持領域を示す図である。
図5】本発明の代替実施形態に従って使用した取り外し可能なデッキリングの特定の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、先行技術による公知のサークリップCを示し、このサークリップは、組み入れた状態で両端が互いに接近している隙間のある弾性リングからなり、筒状の巻真の形状と合致する円形の内縁を形成し、サークリップは、この巻真周りに適合するように形成されている。この種のサークリップの組み入れおよび取り外しを容易にするために、サークリップの両端の突出部に開口部Oを設けてサークリップを把持し、取り扱いができるようにする。
【0017】
本発明の範囲内では、隙間のあるこの種のサークリップを使用せずに、以下「デッキリング(deck rings)」と称する閉鎖リングを使用する。したがって、このデッキリングの方が弾性的に変形しにくく、組み入れ、および竜頭内部にあるこのデッキリングのハウジングからの取り外しが容易で、シールパッキンを損傷したり、シールパッキンの輪郭およびシール面を傷づけたりするおそれがない。
【0018】
図2は、従来のねじ込み式竜頭1の回転軸A−Aに沿った中心から右半部分を破断した断面図を示しており、この竜頭の上にはロゴLが見え、このロゴはこの場合「Ω」であり、キャップ11のカバー112の外面113上に形成されている。キャップの外周には、ユーザが使用中に竜頭1を把持しやすくするための歯部Dも示されている。竜頭1は、ねじ管8にねじ込んだ状態で示され、一方ねじ管は、第1の雄ねじ81を介して腕時計ケース(図示せず)の中央部分にねじ込むように形成されており、雌ねじ82は、管形状の中央パイプ2の雄ねじ21と協働する。キャップ11は、カバー112および軸方向スカート111で形成され、この両者は、共に竜頭1内部の中央開口部115(わかりやすいように、以下に説明する図3のみに図示)を規定し、この中央開口部には、中央部分と一体化したねじ管8の端部だけでなく、中央パイプ2も構成されている。図示した実施形態によれば、中央パイプ2は、キャップ11と一体化しているが、変形例によれば、腕時計の中央部分に対するキャップ11の角度方向を制御するための中間素子で構成されていてもよい。
【0019】
中央パイプ2の内部に収容されているピストン7は、巻真(図示していないが、慣習的にはめくら穴の中の雌ねじ71を介してピストン7の下端部72に取り付けられる)と一体化し、ムーブメントと相互作用する。ピストンは、キャップ11のカバー112の内面114に接して停止しているばね3に対して摺動することができ、特に、このピストンによって、竜頭1を管2から抜き、竜頭を使用して機能を調整する際に(例えば、時刻を設定したり、日付を調整したり、手動でムーブメントを巻き上げるため)、キャップ11を中央部分から浮かせることができる。
【0020】
ねじ管8とキャップ11の軸方向スカート111との間には、シールパッキン、典型的にはOリングジョイント5を挿入して、竜頭の管に対するシール性を確実にする。竜頭1をねじ込んだ状態では、ジョイント5は、第1のリングを形成する横材4と、第2のリングを形成して竜頭1の下面116でジョイントを覆う、取り外し不可能なデッキリング6との間に軸方向に保持される。ジョイント5は、ねじ管8の突出部83に対して強く圧縮され、突出部の厚みは、取り外し不可能なデッキリング6と中央パイプ2との間にある軸方向のスペースeと一致し、その結果、竜頭がねじ込み位置にあるときは、シール特性を最良にすることができる。圧着操作の後、竜頭1の下面116の表面と水平に同一平面になるように、取り外し不可能なデッキリング6を竜頭の下面116に構成した溝1160の内部に収容している。
【0021】
図3は、本発明による竜頭1を示し、この竜頭の全体構造は図2のものと同じだが、図3は前記ねじ管8を取り外した状態であり、この状態で、デッキリングは取り外し可能になる(符号60)。すなわちデッキリングをキャップ11に組み入れ、その後、取り出すことができる。符号はすべて図2の符号と同じだが、図示しなくなった管8に関する符号、および肩部1161に取って代わった溝1160、すなわち軸方向の保持面を持たなくなった溝に関する符号を除く。ここで、シールパッキン5を緩めると、このシールパッキンは、ドーナツ型で、環状面の直径tを有することがわかり、中央開口部115が竜頭内部にあり、この中央開口部には、特に中央パイプ2が収容されていることもわかる。取り外し可能なデッキリング60の内周と竜頭の中央パイプ2の外周との間に確保できる径方向スペースeの割合が、環状断面の直径tの約1.5倍以下である場合、シールパッキンを取り外し可能なデッキリング60の内側を通して把持し、シールパッキンを損傷することなく、よってシールパッキンのシール性能を損なうことなく取り換えることは困難である。したがって、取り外し可能なデッキリング60をあらかじめ取り出しておくことが有益であり、ひいては必要でもあるだろう。
【0022】
取り外し可能なデッキリング60は、慣習的な嵌め込み操作によって、または楕円形に変形させることによって、竜頭1のキャップ11に取り付けることができる。竜頭およびデッキリングの壁は、筒状または円錐状とすることができる。しかしながら、本発明による好適な実施形態によれば、取り外し可能なデッキリング60は、形状記憶材料で作製され、よって、デッキリングをあらかじめ変形させることができ、竜頭1の下面の肩部1161に設置した時点で元の形状に戻るようにすることができ、これによって、デッキリングを組み入れる操作が容易になるとともに、近傍にあるどの素子も部品も傷つけることなくデッキリングを取り外すことができる。
【0023】
取り外し可能なデッキリング60が形状記憶合金で作製されている場合、好ましくは腕時計の操作温度範囲である約摂氏−20度〜+50度から転移温度が十分離れている合金を選定して、取り外し可能なデッキリング60が極端な使用状態で不注意に取り出されるのを防止する。本発明の好適な実施形態によれば、この材料には、超弾性特性、すなわち約−30度で可逆的に変形できる特性を有するニチノール(ニッケル50%とチタン50%)を選定する。そのため、組み入れ操作は、例えば−55度の凍結スプレーを当ててデッキリングを冷却して、8%を上回る変形率に耐性のある温度にすることからなる操作とすることができる。例えばペンチを用いて、取り外し可能なデッキリング60の直径上の対面する点に応力を印加することで、取り外し可能なデッキリング60はやや楕円形になり、デッキリングは、キャップ11の下面にあるデッキリング用のハウジングに設けられる。そのためデッキリングは、室温で約10秒後に元の円形に戻ってシールパッキン5をその場に保持することができる。
【0024】
組み立て操作および分解操作を容易にするために、少なくとも1つの第1の把持領域1162を、図2および図4に示した竜頭1の下面116に設けることができる。竜頭1を図示した好適な実施形態によれば、複数の第1の把持領域1162は、竜頭1の下面図を示している図4に見られるように設けられ、この図にはこのほかにも、竜頭の歯部D、中央パイプ2およびピストン7の六角形の端部が示され、凹形の4つの第1の把持領域は、竜頭の下面116のそれぞれ12時、3時、6時および9時の位置にある。この各々の凹部によって、取り外し可能なデッキリング60を把持するための工具を外部から係合させてデッキリングを把持することができる。これらの複数の把持領域を、特に取り外し可能なデッキリング60の直径に沿って対にして形成する利点は、リングを変形させるために取り外し操作が手動による介入を必要とする場合に、取り外す最中に取り外し可能なデッキリング60に力を加えてやや楕円形になるようにすることができる点である。
【0025】
一変形例によれば、取り外し可能なデッキリング60は、2通りの記憶効果を持つように、すなわち、常温で第1の円形状になって、組み入れた状態でシールパッキンをキャップに当接させて保持する効果と、第2の形状、例えば楕円形になって、臨界点である変形閾値を越える温度に達した際に取り外せる効果とを持つように設定された形状記憶材料で作製することができる。例えばニチノールの場合、デッキリングの温度が−30度未満に下がった際にデッキリングを自動的に取り外すためには、竜頭に凍結スプレーを噴射する必要があるだけである。
【0026】
取り外し可能なデッキリング60を組み入れるためにどちらの方法を選ぶとしても、デッキリングが形状記憶材料でできている場合は、分解操作にはプラスチックを変形させることが必要であり、この変形は、手動によるものでも自動的なものであってもよく、超弾性特性を有する温度の前後である臨界温度の閾値をデッキリングが超えるための予備加熱または予備冷却工程の後に行う。このように、デッキリングは、竜頭1の他の部分と相互作用する必要なく取り外し可能に作製され、これによってシールパッキン5をさらに容易に取り換えることができる。
【0027】
代替実施形態によれば、取り外し可能なデッキリング60は、図4に示した第1の把持領域1162のように竜頭に形成した把持領域を介さずに、図5に見られる凹部61のように実際のデッキリングに直接形成した第2の把持領域を介して、デッキリングの組み入れまたは取り外しのために把持しやすいように作製する。第1の把持領域1162に対して、これらの第2の把持領域61を、取り外し可能なデッキリング60の直径に沿って対向する対に形成し、このデッキリングを把持しやすくすることが有利となるが、これらの凹部を構成することで、変形中に取り外し可能なデッキリング60が弱まることにもなる。
【0028】
特許請求した本発明について、主にねじ込み式竜頭1の非限定的な例に関して説明してきたが、本発明は、いかなる種類の竜頭にもいかなる形状のデッキリング60にも適用でき、デッキリングは、様々な形状のキャップ11に適合させるにあたり、円形であってもなくてもよいことは明らかであろう。
【符号の説明】
【0029】
1 竜頭
2 中央パイプ
3 ばね
4 横材
5 ジョイント
6、60 デッキリング
61 第2の把持領域
7 ピストン
8 ねじ管
11 キャップ
21、81 雄ねじ
71、82 雌ねじ
72 下端部
83 突出部
111 スカート
112 カバー
113 外面
114 内面
115 中央開口部
116 下面
1160 溝
1161 肩部
1162 第1の把持領域
A 回転軸
C サークリップ
e スペース
D 歯部
L ロゴ
t 直径
O 開口部
図1
図2
図3
図4
図5